往復機関100の一例について、図1A〜1Dを参照して以下に記載する。以下の説明から明白になるように、機関100は、従来の往復機関設計で一般的に使用されるいくつかの特徴を含み、かかる特徴は既知の技術に従って提供されてもよいことを認識されたい。
図1A及び1Bを参照すると、機関100は、一般的に、概して従来の構造のものであってもよい、クランク軸110、シリンダ120、及びピストン130を含む。従来の往復機関装置のように、シリンダ120は内部チャンバ121を画成し、ピストン130はチャンバ121内部に位置付けられ、ピストン130は、クランク軸110に接続されると共にチャンバ121内部で往復運動するように構成される。
この場合、機関100は単一のシリンダ120及びピストン130を有するが、既知の技術に従って、複数のシリンダ120及びそれに対応するピストン130を有する機関構成が使用されてもよいことが認識されるであろう。多シリンダ機関の構成では、各ピストン130は共通のクランク軸110に接続されてもよく(但し、これは必須ではない)、シリンダ120は、一般的な直列型、V型、星型、及び平型の機関構成に見られるような、様々な幾何学形状で配置されてもよい。
いずれの場合も、機関100は、シリンダ120に取り付けられると共に、ピストン130とは反対側の端部でチャンバ121を閉止する、ヘッド140を更に含む。上述したような多シリンダ機関の構成は、各シリンダ120に対応する複数のヘッド140を含んでもよく、或いは、一つを超えるシリンダ120に共通の一つ以上のヘッド140を含んでもよいことに留意されたい。
チャンバ121とインターフェース接続するヘッド140の下面の更なる詳細が、図1Cに示されている。ヘッド140は、チャンバ121と、ヘッド140に形成された開口部144、146に接続されたそれぞれのマニホルド(図示なし)との間を流体連通させる、二つ以上のポート143、145を含むポート群141、142を含む。
この場合、ヘッド140は二つのポート群141、142を含んでいる。特に、吸気ポート群141は、二つの吸気ポート143を介してチャンバ121と吸気開口部144に接続された吸気マニホルド(図示なし)との間で流体を伝達するために設けられ、排気ポート群142は、二つの排気ポート145を介してチャンバ121と排気開口部146に接続された排気マニホルド(図示なし)との間で流体を伝達するために設けられる。
ポート群141、142それぞれを介して伝達される流体は、往復機関100のタイプに応じて決まることが認識されるであろう。内燃機関では、吸気マニホルドは混合気を供給し、それが吸気ポート群141を介してチャンバ121内へと伝達されて燃焼してもよく、燃焼生成物は、排気ポート群142を介してチャンバ121から排気マニホルド内へと伝達されてもよい。或いは、空気機関では、加圧空気が吸気マニホルドによって供給され、吸気ポート群141を介してチャンバ121内へと伝達されて膨張してもよく、膨張した空気は、排気ポート群142を介してチャンバ121から排気マニホルド内へと伝達されてもよい。
この例の目的のため、機関100は空気機関として動作するように構成されることが想定されるが、機関100の特徴は任意の適切な往復機関のタイプに適用されてもよいことが認識されるであろう。また、この例は二行程の往復機関サイクルを採用するであろうことに留意されたく、但し同様の原理は、四行程サイクル又は他の機関サイクルで使用するのに適用されてもよいことが理解されるであろう。
いずれの場合も、機関100は、ポート群141、142毎に、ヘッド140に連結された弁装置161、162(概して、図1Dの上面図に示される)を更に含む。各弁装置161、162は、ポート143、145毎に、それぞれのポート143、145を通る流体フローを動作可能に制御する弁163、165を含む。
従って、この例では、吸気ポート群141の吸気ポート143を通る流体フローを制御する吸気弁163を含む吸気弁装置161が設けられ、同様に、排気ポート群142の排気ポート145を通る流体フローを制御する排気弁165を含む排気弁装置162が設けられる。この例では各弁装置161、162に二つの弁163、165があるが、弁装置161、162に二つを超える弁163、165が設けられてもよく、弁163、165の数は、それぞれのポート群141、142におけるポート143、145の数に対応することを理解されたい。
各弁装置161、162は、弁163、165に連結されたブリッジ171、172を含む。この例では、吸気ブリッジ171は二つの吸気弁163に連結され、排気ブリッジ172は二つの排気弁165に連結される。ブリッジ171、172は、ヘッド140に対して各ブリッジ171、172が移動することによって、それらに連結されたそれぞれの弁163、165の動作を同期させるように構成される。
各弁装置161、162はまた、ピストン130の往復運動に基づいてそれぞれのブリッジ171、172を移動させる、アクチュエータ181、182を含む。従って、各ブリッジ171、172は、弁163、165が機関100の動作に合わせてそれぞれのポート143、145を流れる流体フローを制御できるように移動することができる。
アクチュエータ181、182の動作は、様々な異なる方法でピストン130の往復運動に基づいて制御されてもよい。例えば、アクチュエータ181、182は、接続されたピストン130の往復運動に対応するであろうことが理解されるようなクランク軸110の回転位置に基づいて、アクチュエータ181、182がそれぞれのブリッジ171、172を移動させるように、クランク軸110に機械的に連結されてもよい。アクチュエータ181、182は、タイミングベルト又はタイミングチェーンの接続を使用することなどによって、クランク軸110に回転可能に連結されたカム軸上のカムの形態で提供されてもよい。各カムは、それぞれのブリッジ171、172と係合して、カムの外形に応じた特定の方法でブリッジを移動させてもよい。カムをアクチュエータ181、182として使用するような配置の更なる詳細については、後述の例で提供する。
或いは、ピストン130の位置又はクランク軸の回転位置を感知するセンサ(図示なし)が設けられてもよく、アクチュエータ181、182は、センサが提供する信号に基づいて動作させてもよい。この場合、アクチュエータ181、182は、感知した位置に従って要求に応じて電気機械的に作動してもよく、このことによって、機械的に連結された配置の下で可能になるであろう、ブリッジ171、172の更に高度に制御された移動又は複雑な移動が可能になってもよい。
いずれの場合も、各ブリッジ171、172は、それぞれのポート群141、142のポート143、145を通る流体フローを制御する弁163、165に連結され、その結果、各ポート群141を介してチャンバ121に流入する、又はそこから流出する流体の制御を同期させる。これにより、機関100は、まとめて配置され、共に同期して制御される複数の吸気ポート143及び/又は排気ポート145を備えることが可能になる。しかしながら、この例では吸気ポート143及び排気ポート145それぞれに対してポート群141、142が設けられるが、これは必須ではなく、上述の例のように、別個の従来的な弁付きの吸気又は排気ポートの配置が、ポート群141、142と共に使用されてもよい場合があり得る。
上述の往復機関100の配置は、比較的真直ぐな機械的配置を使用して、複数のポート143、145を同時に制御するための有効な技術を提供する。中を通るガスフローを制御するため、対応する弁163、165によって制御される複数の吸気及び排気ポート143、145の群を使用することは、一般に、弁163、165のサイズを増大させる必要なしにより多量のガス流量に備え、それによって応答性及びエネルギー効率を確保する助けとなるので、単一の吸気及び排気ポートを使用するのと比べて有益である。しかしながら、従来の機関では、複数の弁の制御は複雑さの著しい増加に結び付いていた。
対照的に、上述した配置によって、ポート群141、142に対応する複数の弁163、165を、ブリッジ171、172を使用して信頼性の高い方法で同時に制御することができ、従来の弁制御技術と比べて複雑さが大幅に低減される。この配置はまた、弁163、165の応答性における実質的な改善に結び付き、そのことが効率の改善に寄与し得る。
機関100が空気機関として動作するように構成されるこの例では、吸気ブリッジ171は、一般に、対応するアクチュエータ181によって移動して、ピストン130が上死点又はその付近の位置から下降行程へと(即ち、ヘッド140から離れる方向で)移動するにつれて、吸気弁163によって吸気ポート143を介して加圧空気をチャンバ121内へと供給することができるので、加圧空気がピストン130を駆動し、動力をクランク軸110に送達することができる。
図1A及び1Bを比較することによって認識されるように、これらの図はそれぞれ、ピストン位置が異なる機関100を示している。特に、図1Aは、ピストン130が上死点を通過した後に下降行程を開始した直後の機関100を示しており、アクチュエータ181、182が吸気及び排気ブリッジ171、172を上昇位置へと上方に移動させている。他方で、図1Bは、ピストン130が下死点(上死点後180°)を通過した後に上昇行程を開始した直後の機関100を示しており、この場合、アクチュエータ181、182は吸気及び排気ブリッジ171、172を降下位置へと下方に移動させている。
空気モータに関連して、図1Aは、加圧ガスが仕事をすることによってピストン130が駆動される、仕事行程中のスナップショットを示していることが理解されるであろう。図1E及び1Fはそれぞれ、図1Dに示されるような吸気弁アセンブリ161及び排気弁アセンブリ162を通る断面図を示している。
図1Eを参照すると、吸気ブリッジ171の上昇位置によって吸気弁163が持ち上げられて開き、それによって吸気弁シール164が吸気ポート143から係脱されている。これにより、矢印101によって示されるように、吸気開口部144を通して吸気チャンバ147内へと供給される加圧空気が、吸気ポート143を通り抜けてチャンバ121に入ることができる。このように、加圧ガスがピストン130に作用して、機関100の仕事行程を駆動することができる。
図1Eと同じピストン130位置における排気アセンブリ162の構成要素を示している図1Fを参照すると、排気ブリッジの上昇位置によって排気弁165の弁シール166が排気ポート145と係合され、それによって排気ポートが閉じて、加圧ガスがチャンバ121から逃げるのを防いでいることが認識されるであろう。
図1Bは、ピストン130が膨張したガスをチャンバ121から排出する、戻り行程中のスナップショットを示している。図1G及び1Hは、それに対応する吸気弁アセンブリ161及び排気弁アセンブリ162の断面図を提供する。
図1Gに関して、吸気アクチュエータ181は吸気ブリッジ171を降下位置へと移動させており、これによって次いで吸気弁163が下降して、吸気弁シール164が吸気ポート143を閉じると共に、加圧ガスが戻り行程中にチャンバ121に入るのを防いでいる。
図1Hでは、排気ブリッジ172の降下位置によって、排気弁165の排気弁シール166が下方方向で排気ポート145から係脱されるので、排気ポート145が開き、排気ポートを介して排気ガスを排気チャンバ148に排出し、次いで、矢印102によって示されるように排気開口部146を通してヘッド140の外に排出することができる。
ブリッジ171、172は、シリンダ一つ当たり複数の吸気及び/又は排気弁を備えた従来の機関と比べて、機関100の機械的な複雑さを大幅に低減させることができる。例えば、各ポート群141、142に対してブリッジ171、172を使用することは、従来の設計のような各弁に対する別個のアクチュエータ(カム、ロッカーアームなど)とは対照的に、各ポート群141、142の制御のためにだけ、適切なアクチュエータ181、182を提供する必要があることを意味する。これにより、機関100の設計において、可動部品の数、並びに磨耗及び/又は故障が起こり得る箇所の数を低減することができる。
上述した機械的な複雑さの低減に続いて、弁装置161、162の移動質量を、等価な従来の弁及びアクチュエータの等価な移動質量と比べて低減することができ、これにより、ポート143、144、145、146の制御における応答性を改善することが可能であり得る。換言すれば、ブリッジ171、172によって、流体フローをチャンバ内へ又はチャンバ外へと切り替える際の速度及び有効性の改善を容易にすることができる。これにより、次いで、機関100がより速い回転速度で動作することができ、並びに/又は従来の配置を使用しては利用可能でないタイミングパラメータの下で、ポート143、145を制御することができる。このことによって、機関100が、等価の従来設計の機関に関して別の形では利用可能であり得る、より高い性能及び/又は効率を有することが可能になり得ることが認識されるであろう。
機械的に連結されたアクチュエータ181、182の場合、従来の弁システムと比べて弁装置161、162の機械的な複雑さが低減されることは、弁163、165を動作させるのに機関100にかかる負荷の低減にも結び付き、その結果、従来設計と比べて機関100の効率を更に向上させることが可能になり得る。
アクチュエータ181、182によって引き起こされるブリッジ171、172の特定の移動は、ブリッジ171、172に連結された弁163、165のタイプ、流体フローの要件など、様々な要因に応じて選択されてもよいことが認識されるであろう。上記に例証したように、ブリッジ171、172を上昇させることによって、関連する弁163、165が、吸気弁163のようにヘッド140に入るか、又は排気弁165のようにチャンバ121に入るかどちらによって開くように構成されているかに応じて、これらの弁を確実に開くか又は閉じてもよい。或いは、アクチュエータ181、182は、ブリッジ171、172の一方又は両方をヘッド140に向かって下降させて、弁163、165を確実に開くか又は閉じるかしてもよい。いくつかの例では、アクチュエータ181、182は、ブリッジ171、172を確実に上昇及び下降させて、弁163、165を確実に開閉するように構成されてもよい。
従って、弁163、165の構成、並びにアクチュエータ181、182によって引き起こされるブリッジ171、172の移動に応じた弁の特定の開閉挙動は、特に制限されないが、後述の例で明白になるように、特定の用途において特定の配置が有利なことがあることが認識されるであろう。
上述の配置によって、また、従来にない設計及び動作原理を有する弁163、165の使用が可能になり得る。例えば、ブリッジ171は、アクチュエータ181、182及び弁163、165がどのように構成されているかに応じて、押す作用又は引く作用によって弁163、165を開閉できるようにする。これにより、一般的には標準のポペット弁装置を使用する従来的な現代の弁付き機関と比べて、ポート143、145を通る流体フローを制御するのに弁163、165をどのように使用できるかについて、より高い柔軟性が可能になる。
例えば、弁163、165の少なくとも一部は、ヘッド140に引き込まれて開き、それによって弁163、165の一部がチャンバ121に侵入するのを回避するように構成されてもよい。これは、一般的には封止プラグがチャンバに侵入するように押されて開くので、使用の際にピストンと干渉するのを回避するために慎重に設計する必要がある標準のポペット弁と比べて、事実上逆向きの動作を表す。かかる逆向きの動作により、従来の機関では弁との干渉を回避するために別の形で必要とされることがある、シリンダ内の死空間を最小限に抑えることによって、更なる効率の改善が可能になり得る。更に、このような方法で弁163、165の動作を反転できることにより、機関100の動作全体を通して圧力差をより良好に利用して、弁163、165の開放又は閉止を支援する設計を可能にすることができる。
この場合、吸気弁163は上述したような逆向きの動作を有し、排気弁165は、従来の内燃機関の弁に類似した開放動作を有する。
上述したようなブリッジ171、172の使用によって、また、弁163、165を開位置及び閉位置へと確実に駆動させ、その結果、別の形では、従来はカムによって能動的に開くのみであってばねによって閉じるポペット弁を使用する従来の機関の高速動作で直面する、弁の浮揚の影響を除去することができる。
所望に応じて機関100の性能を調整するため、各ポート群141、142に関して流体フローを制御する弁163、165の特定の開閉のタイミングが選択されてもよいことが認識されるであろう。空気機関としての機関100の動作に適したタイミングの特定の例が図1I〜1Pに提供されており、それらの図は、上死点位置に対して測定したピストン位置に対する吸気及び排気弁163、165の位置を示すため、図1E〜1Hに示されるものに対して垂直な断面図を示している。
図1Iは、上死点後(ATDC)0°で開いており、その結果、吸気チャンバ内に供給された加圧空気が吸気ポート143を介してチャンバ121に入るようにすることによって仕事行程を開始している、吸気弁163を示している。この構成は、図1Jに示されるような上死点後90°を経て、図1Kに示されるように吸気弁163が閉じる、上死点後約156°まで継続させることができる。その直後に、上死点後165°を示している図1Lに示されるように排気弁165が開く。加圧空気のクロスブリード(cross-bleed)を防ぎ、結果としてその消耗を防ぐため、排気弁165は吸気弁163が閉じた後にのみ開かれる。
図1Mに示されるように、ピストン130は、排気弁165が開いたままで上死点後180°(又は下死点)を経て移動し、この後で戻り行程が開始され、その行程全体を通して、今度は膨張したチャンバ121内のガスが排気ポート145を介して排出される。図1Nは、上死点後270°を通る連続した戻り行程を示している。上死点後355°で、図1Oに示されるように、排気弁165は次の仕事行程に備えて閉じられる。ピストン130は最終的に図1Pに示されるような上死点位置に戻り、そこで吸気弁163が再び開き、機関100の次のサイクルが開始される。
機関100は既知の機関製造技術及び従来の材料を使用して構築されてもよいことが認識されるであろう。一例では、シリンダ120及びチャンバ121は、クランク軸110を封入するクランク室101の一部として形成されてもよい。クランク室101、シリンダ120、ピストン130、連接棒131、ヘッド140、弁アセンブリ161、162の部品など、機関の構成要素/アセンブリは、動作要件に応じて、鋼、アルミニウム合金、セラミックス、プラスチックなどを含む任意の適切な材料から製造されてもよい。
好ましい構築技術の更なる詳細、及び任意選択の特徴の例について、機関の実施形態についての以下の詳細な例を参照して次に記載する。
上述の往復機関100の特徴を具体化する空気機関200の一例について、図2A〜2Eを参照して次に記載する。上述の例で考察したものに類似した構成要素には、上記で使用した参照番号に100を加えた類似の参照番号を割り当てている。
図2A及び2Bを参照すると、空気機関200は、四つのシリンダ220が取り付けられた中央のクランク室201を含んでいるのを見ることができる。この例では、クランク室201は、ねじなどの適切な締結具を使用して共に締結された、機械加工されたアルミニウムプレートから形成される。しかしながら、空気機関200に対する特定の設計要件を条件として、様々な異なるクランク室構築技術が使用されてもよいことが認識されるであろう。設置の目的でエンジンマウント202がクランク室201に適合されてもよい。
クランク室201は、クランク室201構造に取り付けられた軸受(図示なし)によって一般的に支持される、クランク軸210を収容する。少ない摩擦で良好な支持を確保するのにはころ軸受が好ましいが、玉軸受又はジャーナル軸受など、他のタイプの軸受が使用されてもよいことが認識されるであろう。
空気機関200の四つのシリンダ220は、二つのバンク内でクランク室201から延在する。この例では、空気機関200はV4構成を有する。換言すれば、空気機関200の四つのシリンダは、「V」字形でクランク軸210を中心にして配置された、四つのシリンダ220とその中に位置付けられた対応するピストン230とを含む。この場合、「V」字の両方の脚にあるシリンダ220のそれぞれのバンクは、90°の角度で相互にずらされる。
シリンダ220は、アルミニウム、又は使用中のチャンバ内における動作条件に耐えるのに適した他の任意の材料から形成されてもよい。
図2Dは、クランク室201を除去してクランク軸210及びピストン230の詳細を露出させた、空気機関200の更なる図を示している。ピストン230が各シリンダ220の内部に設けられ、連接棒131を使用してクランク軸210に取り付けられている。
クランク軸210は、二つのウェブ212間をそれぞれ延在し、クランク軸210の回転軸からずらされている、二つのクランクピン211を含む。クランク軸210の更なる詳細は図12A及び12Bで見ることができる。
クランクピン211は二つの連接棒231にそれぞれ連結され、それらが次いで、シリンダ220のバンクによって形成される「V」字の各脚にあるそれぞれのピストン230に連結される。シリンダ220のバンク間の角度が90°であることによって、クランク軸210の回転位置に対して四つのピストン230の角度がそれぞれ90°ずれることを考慮して、クランクピン211はそれぞれ相互から180°ずらされる。これには、それぞれのシリンダ220内におけるピストン230の位置が互い違いになることにより、空気機関200が動力を均等に送達することができ、また適切な弁タイミングを用いて、始動電動機などを要することなく、仕事行程の重なりによって空気機関200を自動始動させることができるという効果がある。
シリンダ220、ピストン230、及びヘッド240の相互関係の更なる詳細は、図2Eの断面図で見ることができる。見えているピストン230は、連接棒231によってクランクピン211に接続されているのを見ることができる。一般的に、軸受232が、連接棒231の一端とクランクピン211との間の接続部に設けられる。ピストン230を連接棒231の他端に接続するのにはガジョンピン233が使用され、別の軸受234もこの接続部に設けられてもよい。
この例では、ピストン230は、アセチルなどのエンジニアリングプラスチック材料から形成される。しかしながら、任意の適切な材料が使用されてもよいことが認識されるであろう。ピストン230の設計において適切な軽量化機能の形成と合わせて比較的軽量の材料を使用することは、ピストン230の重量を低減する助けとなり、従って、空気機関200の動作中にピストン230を移動させるのに要するエネルギーを低減する助けとなる。この例では、ピストン230には、シールガイド235内に位置付けられた空気圧シール(図示なし)が取り付けられる。或いは、ガイドリングシールなど、他のタイプのシールが使用されてもよい。いずれの場合も、これにより、潤滑システムを要することなく空気機関200の動作を可能にすることができる。しかしながら、従来の潤滑ピストン構成が使用されてもよいことが認識されるであろう。ピストン230は、使用の際に望ましい加圧ガスフロー及び圧力印加特性を提供することができる、凹状のピストン面を含んでもよい。
それぞれのヘッド240は各シリンダ220に適合され、各ヘッド240は、図2A及び2Bに全体的に示されるような、また上記の例に関して上述したように動作する、それぞれの吸気弁装置261及び排気弁装置262を含む。
ヘッド240は規格化された設計を有してもよいので、同じヘッド240の構成要素を、空気機関200上におけるシリンダの位置に関係なく各シリンダ220に適合させることができる。各シリンダ220に対して共通のヘッド240設計を使用することは、空気機関を構築するのに要する固有の部品数を低減する助けとなるので、望ましい場合があることが認識されるであろう。
ヘッド240は、柔軟な位置付けを容易にするため、二つの面にそれぞれの吸気開口部244及び排気開口部246を含んでもよい。例えば、シリンダバンクの一方でシリンダ上に適合されたヘッド240では、吸気マニホルド及び排気マニホルドはそれぞれ、ヘッド240の一方の面で吸気開口部253及び排気開口部254に接続されてもよく、開口部244、246の少なくとも一方をヘッド240の他方の面で覆うため、その面にカバープレート250が取り付けられてもよい。他方のシリンダバンクにあるヘッド240の開口部244、246の使用は、ヘッド240の別の面にある開口部253、254にマニホルドを接続することによって逆転されてもよい。この例では、カバープレート250は、吸気開口部244を開いたままにするので、加圧空気を各面からヘッド240に供給することができるが、排気開口部146は閉じるので、排気空気は、図2Bに部分的に示されるような排気マニホルド配管251を介して、一方の面でのみヘッド240を出る。
ヘッド240は、異なる弁タイミング特性を可能にする、異なる弁装置261、262構成に適応してもよい。各ヘッド240は機械加工されたアルミニウムから作られてもよいが、異なる材料が使用されてもよいことが認識されるであろう。
この例で示されるヘッド240は単一部品から形成されているが、複数の部品からヘッド240を構築することが可能であろうことが理解されるであろう。これにより、単一部品へと容易に機械加工することができない、複雑な内部ポーティングの幾何学形状が可能になり得る。ヘッド240の複数の部品は、任意の適切な締結技術を使用して共に機械的に締結されてもよい。複数部品を通って画成されることがあるポーティングの良好な封止を確保するため、ヘッド240部品の間にガスケットが位置してもよい。
また、この例はシリンダ220及びヘッド240を提供するのに離散的な構成要素を含むが、いくつかの実施形態では、シリンダ220及びヘッド240は、鋳造及び/又は機械加工プロセスを使用して形成されてもよい、単一部品として一体的に形成されてもよいことが認識されるであろう。
この例は各シリンダ220に対して別個のヘッド240を提供するが、複数のシリンダ220のバンクに単一の構成要素が取り付けられ、それによって上述したような特徴をそれぞれ有する複数の有効なヘッドを統合してもよいことが認識されるであろう。これにより、規格化されたヘッド240を各シリンダ220に使用するという共通性の利点がなくなることがあるが、このことによって更なる減量を可能にすることができ、機関200の大量生産に有用なことがある。
図2Eの断面図は、ヘッド240内に形成された排気ポーティング内に位置付けられた、排気弁265の詳細を明らかにしている。弁263、265はそれぞれ、弁ガイド267を使用してヘッド240の内部で支持されている。弁ガイド267は、ポート243、245に対して正確に位置付けられるように、弁263、265の安定した横方向保持を提供する一方で、滑らかな軸方向の開閉動作を可能にする。
この例では、弁ガイド267は取外し可能であり、吸気弁263又は排気弁265のどちらを支持するのに使用されるかにかかわらず同一の構造を有する。
図2Eでは、吸気及び排気ブリッジ271、272が、ブリッジ271、272を移動させるそれぞれのアクチュエータとして役立つ、吸気及び排気カム281、282によって移動させられることも見ることができる。特に、カム281、282は、ブリッジ271、272に連結された一つ以上のカムフォロワ277と係合し、対応するピストン230の回転位置に基づいてカム軸280上で回転する。各カムフォロワ277は、それぞれのブリッジ271、272に取り付けられた軸上で支持される円筒ころの形態で提供されてもよい。弁装置261、262の動作の更なる詳細については以下で適時に提供する。
カム軸280及び装着されたカム281、282の更なる詳細を図13で見ることができる。この例では、吸気カム281は、吸気ブリッジ271を持ち上げることによって約156°の吸気弁263開放をもたらすローブ設計を有する。それはピストンの仕事行程の大部分にわたり、従来の空気機関設計に比べて、加圧ガスがピストン130に対して露出する時間が例外的に長いことが認識されるであろう。排気カム282は、排気ブリッジ272を持ち上げることによって170°の排気弁265閉止をもたらすローブ設計を有する。吸気カム281及び排気カム282のローブは、一般的にカム軸の同じ側で突出し、その結果、排気弁265が閉じられる一方で吸気弁263が開かれて、仕事行程中に加圧ガスが逃げることが回避される。
図2Cは、多数のカバーが取り付けられた空気機関200を示している。これらのカバーは、空気機関200の内部構成要素を外部環境から保護するため、及び/又は操作者が内部構成要素に接触しないように保護するために使用されてもよい。
シリンダカバー205は、シリンダ220及び内部に位置付けられたピストン230の周りにおいて所望の熱的特性及び/又は防護壁を提供するように、実際のシリンダ220を封入するために設けられてもよい。ヘッドカバー206は、吸気及び排気弁装置261、262の作動構成要素を封入するために、またその結果、可動部品と誤って接触することによって生じることがある危険を緩和すること、並びに/又は機械的故障が生じた場合に空気機関200から部品が投げ出されるリスクを低減することの助けとなるように、設けられてもよい。狭窄の危険を防ぐため、又はクランク軸210をカム軸280に連結するのに使用されるタイミングベルトが、故障が生じた場合に投げ出されるのを防ぐため、タイミングプーリカバー207も設けられてもよい。
シリンダ220のバンク間に架かるバレーカバー(valley cover)208が設けられてもよく、加圧空気を吸気開口部244に供給する、又は排気空気をヘッド240の排気開口部246から除去する、マニホルド配管(図示なし)を保護してもよい。この場合、バレーカバーは、吸気マニホルド配管を吸気開口部244から経由させてもよいカットアウト209を含む。
図3A〜3Dは、空気機関200の分離したヘッド140及びそれに対応する弁アセンブリ261、262の様々な図を示している。
吸気弁アセンブリ261は吸気ブリッジ271に連結された二つの吸気弁263を含み、排気弁アセンブリ262は単一の排気ブリッジ272に連結された四つの排気弁265を含み、従って、二つを超える弁265を含む弁群を有する場合を例証している。各弁263、265は、ヘッド240内で、肩付きのねじ込み式位置決めシステムを使用して、ヘッド240に対して位置が固定されている弁ガイド267によって支持されており、位置決めシステムによって、スタッドプレート278が次に弁ガイド267に取り付けられる。弁263、265は、弁ガイド267を通って長手方向で形成されたアパーチャを通って摺動移動するので、ブリッジ271、272の移動に応じて、弁263、265の直線運動のみが可能である。しかしながら、弁263、265のかかる直線運動は望ましいが必須ではなく、弁263、265の非線形運動を可能にする代替の配置が提供されてもよいことが認識されるであろう。
各ブリッジ271、272は、ヘッド240の上面に連結されたスタッドプレート278から外向きに延在するスタッド273によって支持される。ブリッジ271、272は、ブリッジ271、272がスタッド273の長手方向軸線と並ぶ方向で移動できるようにしてスタッド273に連結され、この場合、この移動方向は、それぞれのピストン230の往復運動方向とも並ぶ。各スタッド273は、ブリッジ271、272をヘッド240に向かって付勢する付勢部材のための保定具275を含む。この例では、ばね274が各スタッド273上に設けられ、これらのばね274は付勢部材として役立つ。しかしながら、いくつかの例では、それぞれの弁263、265を開閉するのにブリッジ271、272をアクチュエータによって両方向で移動させる場合など、付勢部材が不要な場合があることが認識されるであろう。しかしながら、ばね274は、閉止動作の衝撃を緩和し、磨耗を低減する助けとするため、依然として設けられてもよい。
各ブリッジ271、272の移動は、カム軸280上に装着されたカム281、282によって引き起こされる。カム軸タイミングプーリ283はカム軸280の一端に装着され、タイミングベルト(図示なし)が、クランク軸210の一端に装着されたクランク軸タイミングプーリ214にカム軸タイミングプーリ283を接続する。図2Bを参照すると、カム軸タイミングプーリ283とクランク室201内部に位置するクランク軸タイミングプーリ214の一つとの間でタイミングベルト(図示なし)を延在させるため、クランク室201がスロット203を含むことが分かるであろう。
この例では、それぞれのプーリ283、214は、クランク軸210が丸一回転するとカム軸280が丸一回転する1:1のタイミング関係を提供するように、合致する寸法及び歯車歯の数を有する。これにより、空気機関200の動作に適した二行程の弁タイミングを提供している。内燃機関に対して望ましいことがあるように、四行程のタイミングのために2:1のタイミング関係が使用されてもよいことが認識されるであろう。
図3Cに示されるように、カム281、282は、カム軸280が回転するにつれてそれぞれのブリッジ271、272を周期的に持ち上げる(raise lift)ように外形が作られ、回転するカムの外形に基づいてブリッジ271、272が滑らかに移動できるように、一つ以上のカムフォロワ277がブリッジ271上に設けられてもよい。ブリッジ271、272は、カム281、282内に形成されたローブによって上昇位置へと直接持ち上げられるが、別の方法として、ばね274の作用によってブリッジ271、272が降下位置に向かって付勢され、カム281、282とそれぞれのカムフォロワとの間の係合が確保されることが認識されるであろう。
各ブリッジ271、272に対して設けられるばね274は、それぞれのブリッジの所望の動作に応じて異なるばね剛性を有してもよい。例えば、吸気弁263は、吸気ブリッジ271によって確実に持ち上げられて開かれるまで、吸気チャンバ247内の加圧ガスによって吸気弁263を閉位置で保定する傾向があるように設計されているので、吸気ブリッジ271と共に使用されるばね274は比較的低いばね剛性を有してもよい。
上述したように、吸気弁263の逆向きの動作が、空気機関の実施形態で使用するのにより適していることがある。この例では、吸気弁263の開放は、吸気アクチュエータ281が吸気ブリッジ271を上方に移動させることによって確実に制御され、吸気弁263はばねによって閉じられる。加圧ガスが吸気弁263を閉位置で維持するのを支援することができるので、ばね274は比較的軽いばね剛性を有してもよい。
吸気ブリッジ271のばね274に関する特定のばね剛性は、閉止状態において圧力荷重が加えられる吸気弁263の表面積に関連して選択されるので、適切な閉止力が要求に応じて加えられるが、吸気弁263を開くために吸気ブリッジ271に余分な力を加える必要性は回避される。これは、使用の際における吸気弁263の高い応答性を確保する助けとなり得る。対照的に、排気ブリッジ272と共に使用されるばね274は、排気弁265が排気ブリッジ272によって確実に持ち上げられて閉位置へと至らないときに、チャンバ221内部の排気弁265面に及ぼされる力よりも僅かに大きい力を加えるように計算された張力のみを必要とする。
いずれの場合も、動作中に適用されるガス圧力を考慮して、各ブリッジ271、272に対してばね274を適切に選択することは、望ましい高速の弁開閉性能を確保する助けとなり得る。更に、適切なばね274の選択を、弁263、265及び対応するポート243、245の特定の設計構成と結び付けることで、弁の上下振動(磨耗)、弁の伸びなど、多くの従来的な弁の問題を排除する助けとなり、また、排気弁265に関して閉止作用の衝撃緩和をもたらすと共に、吸気弁263に関して開放力要件を低減することができる。
代替の配置では、吸気弁263は、排気弁265と類似の構成を有してもよいので、開いたときに降下して(即ち、ピストン230に向かって)チャンバ221に入り、上方に(即ち、ピストン230から離れる方向で)移動することによって閉じられる、ほぼ従来のポペット弁シールを有する。このような形で構成された吸気弁263の動作は、排気弁265のように、吸気アクチュエータ281(即ち、カムなど)が吸気ブリッジ271をヘッドから離れる方向で上方に移動させると、吸気弁263を確実に閉じることを伴うであろう。
上述した代替の吸気弁263構成におけるこの確実な閉止作用は、加圧ガス供給による吸気弁263の意図しない開放を防ぐであろう。吸気弁263は、この場合は付勢部材(即ち、ばね)の影響下で開かれ、この開放作用は加圧空気の供給によって支援されるであろう。状況によっては、付勢部材は必要でないことがあり、開放を加圧空気のみによってもたらすことができるが、閉止のときの衝撃緩和効果を提供すると共に、開放動作の応答性の改善を支援するため、依然としてばねが組み込まれることがある。
排気弁265において、また上述した代替の吸気弁263構成において、ほぼ従来のポペット弁シール設計を使用しているにもかかわらず、ブリッジ271の使用による特定の開閉形態は、弁が確実に開かれ弁の閉止がばね張力に依存する、従来の内燃機関におけるポペット弁の実装と比べて、やはり逆になっていることに留意されたい。従って、機関200の弁動作は従来の機関ほどばねに依存していない。
いずれの場合も、ばね274は完全にヘッドの外部に位置してもよく、その結果、空気機関200の使用中に気流又は温度変動に暴露されないことに留意されたい。更に、この例においてばね274が外部に配置されることで、ヘッド240を通る気流は制限されない。
空気機関200における弁263、265の開閉運動は、ピストン230の往復運動方向と並んでもよいことが認識されるであろう。必須ではないものの、これによって、ピストンの往復運動に対して相当の角度で作用する弁を有する多くの従来の機関設計と比べて、機械的に単純化された配置が可能になる。例えば、弁263、265全ての動作を制御する吸気及び排気ブリッジ271、272は、同じカム軸280上に設けられたカム281、282を使用して移動させることができる。対照的に、従来の角度を付けた弁配置は、通常、各弁に対する別個のカムと共に、シリンダのどちらかの面で弁に対して別個のカム軸を要するであろう。しかしながら、機関の代替実施形態において、各ブリッジ271、272を作動させるのに別個のカム軸がやはり使用されてもよいことが認識されるであろう。
更に、両方のピストン230面に関して、またブリッジ271、272及びそれぞれのアクチュエータ281、282に関して、弁263、265が直線的に作動することは、(角度力とは対照的に)直接力を加えることによってエネルギー効率を改善する助けとなり、また磨耗特性も改善することができる。
図2Aに戻ると、カム軸280はヘッド240上に装着されたカム軸受284によって支持されてもよいことが分かるであろう。カム軸受284は、カム281、282設計が異なるサイズのローブを備えることができるように、ヘッド240の上方におけるカム軸280の相対的な位置付けを調節できるように構成されてもよく、それによって次いで、弁263、265の異なる開放挙動が引き起こされる。この例では、空気機関200のシリンダバンクを横切って、単一のカム軸280が二つのシリンダ220に使用される。これにより、単一のタイミングプーリ283を各シリンダバンクに使用することができる。しかしながら、別個のカム軸が各シリンダに対して設けられてもよいことが認識されるであろう。
弁タイミングは、カム軸280をクランク軸210位置に対して回転させることによって、弁263、265の開閉のタイミングを進めること及び遅らせることに関して調節することができる。また、カム軸280をクランク軸210に対して180°回転させることによって、空気機関200を逆方向で動作させることが可能であってもよい。
図3Dは、シリンダ220とインターフェース接続する、ヘッド240の下面の更なる詳細を示している。シリンダ220と係合してチャンバ221を閉止する、シリンダキャップ249が設けられる。ポート243、245はシリンダキャップ249内に形成される。この場合、二つの吸気ポート243は四つの排気ポート245と比べて大幅に直径が小さいことが認識されるであろう。
排気ポート群242と比べて吸気ポート群241の直径及びポートの数がこのように異なることによって、チャンバ121に入ることができる加圧ガスと比べて、著しく多量の体積流量の排気ガスをチャンバ121から除去することができる。このことにより、空気機関200の仕事行程中における加圧ガスの膨張を説明することができるので、チャンバ121を出入りするガスの総質量はほぼ等しくなることが理解されるであろう。このように、吸気ポート243と比べて大容積の排気ポート245又はより多数の排気ポート245を通して排気することによって、性能効率が獲得されてもよい。
図3Eは、図3Dに類似しているが、弁支持体267及び弁263、265の更なる詳細を見せるためにヘッド240を表示していない図を示している。
ヘッド240、弁263、265、及びそれぞれのブリッジ271、272の全体設計により、弁263、265の移動に関する最小限の要件によって最大限の開放又は閉止動作を達成可能にすることができることに留意されたい。そのため、このことによって、あまり侵略的でない設計のカムローブを有するカム281、282を使用可能にすることができ、それによって、動作がより滑らかになると共に磨耗が低減されるという利益を提供することができる。
ヘッド240の構造の特徴は、図6A〜6Cで更に詳細に見ることができる。この例では、ヘッド240は、穿孔及び他の機械加工プロセスによってアルミニウムの固形ブロックから製造される。吸気開口部244及びそれらの間に画成される吸気チャンバ248は、ヘッド240の幅を横切る穴を穿孔することによって形成することができ、また、排気開口部246及び排気チャンバ249は同様の方法で形成されてもよい。
ガイドアパーチャ601はヘッド240の上面から穿孔されてもよく、排気アパーチャ604は、ヘッド240の奥行を通して穿孔を続けて排気ポート245を形成することによって形成することができる。ヘッド240の下面には、排気ポート245の肩部が機械加工されて、排気弁座605を形成してもよい。吸気ポート243に関しては、吸気アパーチャ604は、ヘッド240全体を通して同じ直径では延在せず、ヘッドの下面の手前で止まって、吸気弁263の封止を可能にする吸気弁座603を形成するため、環状の材料を残す。
この例は単一部品構造のヘッド240を示しているが、上述したように、複数部品構造を使用して、より複雑な内部の幾何学形状が形成されてもよいことが認識されるであろう。
認識されるように、ヘッド240は、シリンダ構成に関係なく標準部品としての使用を容易にする対称的な幾何学構成を有する。更に、その設計により、異なるタイプの弁263、265又は異なる動作形態を使用して、柔軟性を改善することができる。
吸気ブリッジ271の詳細を図7A及び7Bで見ることができる。吸気ブリッジ271は単一の吸気ブリッジ本体701から形成される。吸気弁アパーチャ702によって吸気弁263をブリッジに連結することができ、一方で、図3A〜3Dに示されるように、吸気ブリッジ271をスタッド273上で支持できるように、支持アパーチャ703が設けられる。支持アパーチャ703は、付勢ばね274を受け入れるため、その長さの大部分で拡大直径を有する。吸気ブリッジ271はまた、一般的に、カットアウト704のどちらかの面にあるカムフォロワ支持アパーチャ276が支持する軸上に装着される、カムフォロワ277を保定するためのカムフォロワカットアウト704を含む。
排気ブリッジ272の詳細を示す図8A及び8Bを参照すると、排気ブリッジ272は吸気ブリッジとほぼ同様の構造を有するが、四つの排気弁265を受け入れるように適合されていることが認識されるであろう。従って、排気ブリッジ272は、カムフォロワ支持アパーチャ276を通って画成される中央面を中心にして対称的に離隔された、四つの排気弁アパーチャ802を含む。この場合、吸気ブリッジ272に使用されるのと類似の構造である二つのカムフォロワ277を保持する、二つのカムフォロワカットアウト804がある。支持アパーチャ803も吸気ブリッジ272に使用されるものと類似しており、固有の部品数を最小限に保つ助けとなる。
図9A及び9Bに示されるように、吸気弁263は、吸気ブリッジ271上のそれぞれの吸気弁アパーチャ702を通り抜ける弁棒901を含む。吸気弁263は、任意の既知の技術を使用して吸気ブリッジ271に連結されてもよく、好ましくは、吸気弁263の開閉動作を微細に調節できるように、ねじ付き部分及びナット又は他の適切な締結具の使用などによって連結を調節することができる。
上述したように、この例の吸気弁263は従来のポペット弁とは逆向きの動作を有し、それによって、閉じたときの加圧ガスに対する封止を改善することができる。吸気弁263は、その下面に吸気弁シール264を画成する吸気弁プラグ902を含み、そのプラグは、ヘッド240内部の吸気弁座603と係合するように構成された先細の吸気弁座係合部分903によって取り囲まれる。
更に従来的な弁構造を有する排気弁265が、図10A及び10Bにより詳細に示されている。排気弁265は、排気弁プラグ1002から延在する排気弁棒1001を含み、排気弁シール264が下面に画成されているが、この場合、排気弁座係合部分1003は排気弁プラグ1002とは反対側の上面部位に形成される。このように、排気弁265が排気ブリッジ272によって持ち上げられると、排気弁座係合部分1003はヘッド240の下面に形成された排気弁座605と係合する。
図11A及び11Bは、使用の際に各弁263、265を支持しガイドするのに使用されるような弁ガイド267の詳細を示している。弁ガイド267のガイド本体1101は中央のガイドアパーチャ1102を含み、そこを通して、支持されている弁263、265の心棒901、1001が使用の際に直線的に移動することができる。ガイドフランジ1103は、弁ガイド267を対応するガイドアパーチャ601に入れるのに使用され、ヘッド240に形成された吸気及び排気アパーチャ602、604内で弁ガイド267を位置付ける肩部機構を含んでもよい。
この設計の弁アセンブリ261、262は、ブリッジ271、272及び弁263、265を提供する別個の構成要素のアセンブリを含むように示されているが、いくつかの実施形態では、上述した弁アセンブリ261、262のこれら及び他の要素が一体的に形成されてもよいことを理解されたい。
上述したように、空気機関200のV4構成によって、四つのピストン230それぞれの往復運動が相互に90°ずらされる。図2Dに示されるクランク軸210位置における四つのピストン230のずらされた位置が、弁263、265の内部位置と共に、図4A〜4Hに示されている。
図4A及び4Bはそれぞれ、上死点位置に接近している第1のピストン230の側面図及び正面図を示している。排気カム282が排気ブリッジ272を持ち上げており、それによって排気弁265が閉位置で堅く保持されている。他方で、吸気カム281は吸気ブリッジ271を持ち上げていないが、ばね274が、吸気弁263が閉位置で下方に付勢されるのを確保する助けとなっている。
また、ピストン230が上死点に近いとき、チャンバ221内には事実上無駄な空間がないことに留意されたい。このことは、吸気弁263が仕事行程の開始時にヘッド240に入って開くことによって可能であり、その結果、ピストン230と干渉するリスクがない。対照的に、チャンバ121に入って開く従来の弁は、上死点にあるピストン230の上方に適切な容積が設けられるか、又はピストン面が、弁が上死点若しくはその付近で開いた場合に弁との接触を回避するための窪みを有さない限り、ピストンと干渉することがある。結果として、シリンダに対する行程長さの無駄が最小限であるか又は無駄がなく、このことによって、吸気弁263が開くと直ぐに、ピストン230の面に対して十分に加圧されたガスを事実上瞬間的に加えることができる。
図4C及び4Dは、図4A及び4Bに示される第1のピストン230から90°ずれた、第2のピストン230を示している。この場合、第2のピストン230は仕事行程を通過している。排気ブリッジ272が排気カム282によって持ち上げられているため、排気弁265は閉じたままであり、吸気弁263も、吸気ブリッジ271が吸気カム281によって持ち上げられていることにより、第2のピストンに対して開いている。
図4E及び4Fは、上述の第2のピストン230から更に90°ずれて、第3のピストン230が下死点及びその仕事行程の終わりに接近している、第3のピストン230を示している。吸気弁263は、この場合、吸気ブリッジ271上のばね274の付勢作用によって閉じられている。ばね274はまた、排気ブリッジ272を降下位置へと付勢しており、それによって排気弁265がチャンバ121に入って開いている。このように、排気弁265は、戻り行程の間に排気ガスをチャンバ121から排出できる状態になっている。
図4G及び4Hは、第3のピストン230からもう一度90°ずらされており、この場合は上死点後約270°である、第4のピストン230を示している。図4E及び4Fのように、排気ガスを排出できるように排気弁265は開いているが、吸気弁263は閉位置へと付勢されたままである。
図4A〜4Hに示されるピストンそれぞれに対する相対的な弁タイミングの全体は、図5A〜5Dに示されるそれぞれのタイミング図を比較することによって、より良好に認識することができる。タイミング図はそれぞれ、第1のピストンが上死点位置にあるときに0°に設定されている絶対クランク角に対して、吸気弁263及び排気弁265がいつ開くかを示している。
第1のピストン位置が絶対クランク角と直接一致する図5Aで見ることができるように、吸気弁263は、上死点から上死点後約156°まで開いており、その後に吸気弁263は閉じられ、排気弁265は上死点後約165°で開く。排気弁は、上死点後355°まで行程の残り全体にわたって開いたままである。
図5B〜5Dはそれぞれ、第2、第3、及び第4のピストン230の同様のタイミングサイクルを示しているが、タイミング線図がピストン230の局所的位置ではなく絶対クランク角を参照しているため、それぞれ90°ずれている。これにより、吸気弁263が開かれ、加圧ガスがそれぞれのピストン230を能動的に駆動する期間同士の重なり合いが可視化されている。任意の絶対クランク角において、吸気弁263が開いているピストン230が少なくとも一つあることになり、ほとんどのクランク角において、吸気弁263が開いているピストン230が実際には二つあることになることが認識されるであろう。
これにより、加圧ガスが常に、仕事行程に沿った少なくとも一つのピストン230を駆動し始めることができるようになるので、特別な始動手順を何ら用いることなく、単純に加圧ガスをヘッド240の吸気開口部244に供給することによって、空気機関200を容易に自動始動させることができる。
一般的には吸気マニホルドを介して、加圧空気をヘッド240の吸気開口部244に供給することによって、空気機関200を動作させてもよいことが認識されるであろう。排気生成物は、一般的には別個の排気マニホルドを介して、ヘッド240の排気開口部246から除去することができる膨張した空気であろう。一般的に、排気空気は大気圧又は大気圧付近になり、空気機関200内で急膨張するため、周囲条件と比べて大幅に低温であり得る。
発電システムは、適切な加圧空気源に接続された空気機関200を利用してもよい。一例では、空気機関200には、適切な圧力容器に貯蔵された加圧空気が供給されてもよい。空気機関に対する加圧空気のフローは、空気機関200が展開する動作速度及び動力を変動させるように制御されてもよい。別の例では、発電システムは、要求に応じて貯蔵されるか又は空気機関に直接供給されてもよい加圧空気を発生させる、空気圧縮機を含んでもよい。加圧空気が貯蔵される場合、加圧空気を要望に応じて空気機関に供給できるように、高圧貯蔵タンクを使用して貯蔵が行われてもよい。これにより、空気機関200に対する加圧空気の供給圧力及び流量を更に制御し、それによって要求に応じて動力出力を制御することもできるようになる。
好ましくは、空気圧縮機は容易に利用可能な電源によって動力供給され、空気機関200は、加圧空気を利用して他の用途に有用な回転力を送達することができる。空気圧縮機に動力供給する電源は、太陽電池などの再生可能電源を含んでもよい。或いは、空気圧縮機は、従来の機関によって、又は配電網によって供給されるか若しくは電池に貯蔵された電力によって、動力供給されてもよい。
加圧空気源を使用して展開した回転力を電力に変換できるようにするため、発電機が空気機関200のクランク軸210に連結されてもよい。これにより、電力又は化学燃料は利用可能でないが、貯蔵された加圧空気を運搬するか又は空気圧縮機を使用して空気を局所で圧縮する能力がある遠隔の用途において、空気機関200を有用に適用することが可能になり得る。また、発電機によって電力を蓄電池に供給することなどによって、空気機関200が発生させた動力を後で使用するために貯蔵できることが認識されるであろう。
上述したように、排気流として空気機関200から出力される膨張したガスは、周囲の大気よりも著しく低温のことがある。この冷却された排気流はまた、空気調和又は発熱機器の冷却など、他の冷却用途に使用されてもよい。
一例では、空気機関200からの冷却された排気流は、遠隔での採鉱用途などにおいて、ディーゼル発電機を冷却するのに使用されてもよい。空気圧縮機はディーゼル機関によって動力供給されてもよく、それが生成する加圧空気は空気機関200を動作させるのに使用されてもよく、空気機関は次いで発電機に連結されて、ディーゼル発電機が生成する電力を補足する。次に、冷却された空気機関200からの排気を、ディーゼル発電機を冷却する冷却システムに供給することができる。
別の例では、空気機関200は、長距離輸送原動機トラック用など、車両動力プラントで使用されてもよい。車両動力プラントは、貯蔵するか又は空気機関200に直接供給することができる、加圧空気の供給を生成するための圧縮機に動力供給する内燃機関を含んでもよい。トラック発電所の一例では、空気圧縮機は、最大効率で一定して動作することができ、別の方法ではトラック自体を駆動するのに要するであろう容量よりも著しく容量が低くてもよい、ディーゼル機関によって便利に動力供給されてもよい。しかしながら、空気機関200は、加圧空気を使用してトラックを駆動するのに十分な動力を送達するようにサイズ決めされてもよい。効率の利益は、ディーゼルモータを稼働させてトラック自体を駆動する代替例と比べて、ディーゼル圧縮機の効率的な動作によって実現することができる。別の方法ではディーゼル機関以外の内燃機関が使用されてもよいことが認識されるであろう。
上述したような車両動力プラントはまた、使用中の燃焼機関を冷却するのに、空気機関200からの低温の排出空気を有益に使用してもよい。これにより、車両動力プラントの効率を更に改善することができ、また、特に極端な環境条件において、且つ/又は車両を多用する間、過熱から守る助けとなり得ることが認識されるであろう。
かかる車両動力プラントはまた、空気圧縮機が供給する加圧空気を貯蔵する能力を含んでもよく、それによって加圧空気を要望に応じて空気機関200に供給できるようにすることができる。いくつかの例では、貯蔵された加圧空気は、別の方法では空気圧縮機によって提供されるよりも、多量の流量で供給されてもよく、従って必要な場合に空気機関200によって余分な動力を送達することができる。車両が下り坂を走行中又は制動中など、動力需要が少ない期間中に空気機関200が要しない余分な加圧空気は、後で使用するために貯蔵されてもよい。
この配置は、トラックを駆動するのに電動機が使用する電気をディーゼル駆動の発電機が発生させる、採掘トラックで使用されるシステムと多少類似していることが認識されるであろう。この配置は、より単純な機械系と置き換えることによって、高価な電池システム及び高電流配線の必要性を排除することができる。また、同様の車両動力プラント装置が、船、タンク、ヘリコプター、掘削機などを含む他のタイプの車両に提供されてもよいことが認識されるであろう。同様の装置はまた、穿孔機器など、回転動力がいずれにせよ求められる固定機器で使用されてもよい。
上述のことを考慮して、空気機関200を使用するシステムは、従来の技術に特に適していないことがある状況において、動力の効率的な発生を可能にしてもよいことが認識されるであろう。大量の加圧空気を、必要に応じて空気機関200が使用するために便利に貯蔵することができ、再生資源を使用して、加圧空気の新たな供給を連続して生成できることに留意されたい。対照的に、大量の電気エネルギーを電池に貯蔵することは、一般に実現可能でない。
往復機関の上述の特徴は、加圧ガスの運動力を活用する独自に効率的な方法に寄与する。上述したような好ましい実施形態は、加圧空気中に貯蔵されるエネルギーの消耗を著しく低減する特徴を組み合わせて、エネルギーの入力を無比の効率レベルまで活用する。
この効率は、上記に詳細に開示した独自の機械的に操作される弁及びヘッドの構成によって達成されてもよい。弁及びヘッドの構成によって(二行程構成で動作する180度以内の)長い仕事行程が可能になり、迅速かつ精密な繰返し性と、フロー動作及びガス移送の制御と効率が提供される。これにより、(他の類似の往復機関設計と比べて)大幅に高い、入力エネルギーに対する動力及びトルクの出力をもたらすことができる。
考察したようなブリッジの使用を含む弁装置の設計によって、燃料源が克服すべき内部抵抗が低減された機関を生成することができ、そのことが、より効率的な動作に結び付き得る。機関は、弁が開いていてシリンダ内の空気を圧縮する必要性がないか否かに関係なく、機関の比較的簡単な転換をもたらす、本質的に低い回転慣性で構築されてもよい。これにはいくつかの理由があり、その一部について以下に提示するが、下記は網羅的な一覧ではないことが理解されるべきである。
第一に、弁装置の設計によって、弁をそれらの休止状態に戻すのに高張力のばねを使用する必要なしに、弁が動作できることに留意されたい。従って、機関の回転は高張力のばねによる抵抗を克服する必要がなく、即ち、弁システムを動作させるのに拡張されるエネルギーがより少なく、クランク軸においてより多くの動力が利用可能である。このことは、弁をできるだけ高速で素早く閉じるため、ばね張力が非常に高いばねを機関が有する、ドラッグレース用の車で見出されるような高性能機関と対比させることができる。
上述の弁装置は、かかるばね構成の必要性を排除することができる。ばねなどの付勢部材が要する唯一の力は、弁の面に及ぼされる内部チャンバ圧力によって加えられる力を克服するのに必要な力である。そのため、弁の表面に作用する力よりも僅かだけ高張力の付勢部材が、厳密に必要なもの全てである。実際に、空気機関用の吸気弁の場合、一般的には最も圧力が高いのは弁の反対側であることを考えて、付勢部材は不要なこともあるが、ばねは、衝撃緩和のため、又は弁の応答性を支援するために依然として使用されてもよい。
更に、弁装置は比較的少ない弁移動で動作することができ、カムの形態のアクチュエータの場合、このことによって、従来のカムで動作する弁設計よりもカムの幾何学形状を小さくできることに留意されたい。これにより、一回転当たりに要するカムの接触速度を低減することができ、また磨耗を低減することができ、各カムローブの重量及び送りが低減されてもよい場合に、カム軸のバランスにとって有益である。
コンパクトな配置で弁が直線的に作動できるようにすることで、機関設計も、より本質的な機関動力を克服することを要する角度移動及び長い移動距離の機械的な欠点を除去することによって、従来の角度付きのポペット弁装置及び特に従来のロッカーアームシステムと比べて著しく改善される。カムがアクチュエータとして使用される弁装置の実施形態は、カムローブがブリッジのカムフォロワに直接作用して、弁に結合されたブリッジを有効かつ確実に移動させるという利益を有する。そのため、ブリッジシステムによって、より有利なてこ比を有するこの機械的な欠点が排除される。また、機関の実施形態は、クランク軸とカム軸との間の接続において好適な機械的利点を使用することにより、機関に対する本質的な制限が低減されることによって機械効率を改善することもできる。好ましい実施形態では、カム軸タイミングプーリは、ローブの最高点におけるカムの直径の二倍以下である。
上述したように、上記で考察した往復機関構成の態様は、内燃機関への応用も見出すことができる。例えば、コンパクトかつ機械的に単純化された構成で複数の弁の動作を同時に制御するブリッジを含む弁装置は、内燃機関でも有用であってもよい。上述の例は、クランク軸に対するカム軸のタイミングを変更して四行程動作を可能にすること、及び吸気弁を排気弁と同様に再構成することなどによって、内燃機関の用途に適用されてもよいことが理解されるであろう。
内燃機関1400の例示的な実施形態が図14A〜14Dに示されている。この例は、図1A〜1Pを参照して記載したものに類似しており、そのため、同様の特徴には同様の参照番号が割り当てられていることに留意されたい。
この例による内燃機関1400は、一般に、クランク軸110(図示なし)と、内部チャンバ121を画成するシリンダ120と、チャンバ内に位置付けられるピストン130であって、クランク軸110に接続されると共にチャンバ121内部で往復運動するように構成されたピストン130とを含む。
内燃機関はヘッド140も含むが、この場合、ヘッド140は、図14B〜14Dに示されるような点火プラグなどの点火源1410、又は他のあらゆる既知のタイプの点火源1410を受け入れるため、上述の例とは異なる構造特徴を含んでもよい。点火源1410はディーゼル機関の場合は必須ではないが、ヘッド140は機関のタイプに応じて他の適合を依然として含んでもよいことが認識されるであろう。例えば、ヘッド140は、ディーゼル機関の場合、予熱プラグ、燃料噴射器などを受け入れるように適合されてもよい。
上述の例のように、ヘッド140はシリンダ120に取り付けられ、ピストン130とは反対側の端部でチャンバ121を閉止し、またヘッド140は、チャンバ121とそれぞれのマニホルドとの間を流体連通させる、二つ以上のポート143、145を含むポート群141、142を含む。この場合、吸気ポート群141は二つの吸気ポート143を含み、排気ポート群142は二つの排気ポート145を含む。ポート群141、142毎に、ヘッド140に連結された弁装置161、162が設けられる。各弁装置161、162は、ポート群141、142のポート143、145毎に、それぞれのポート143、145を通る流体フローを動作可能に制御する弁163、165を含む。
ブリッジ171、172は各弁装置161、162の弁163、165に連結され、ヘッド140に対するそれぞれのブリッジ171、172の移動によって、それに連結された弁163、165の動作が同期される。ピストン130の往復運動に基づいて各ブリッジ171、172を移動させるため、アクチュエータ181、182が設けられる。
図14B〜14Dで見ることができるように、吸気ポート143及びそれに対応する吸気弁163の構成は、より具体的に空気機関に関連する上述の例とは異なる。特に、この場合の吸気弁163は、両方のタイプの弁163、165が、チャンバ121に入ることによってそれらそれぞれのポート143、145を開き、ほぼ類似の弁シール164、165構成を有するという点で、排気弁165に類似している。図14Cは、ピストン130が上死点を過ぎて吸気行程を開始する際の開いた吸気弁163を示しており、図14Dは、ピストン130が排気行程で上方に移動する際の開いた排気弁165を示している。ピストン130面は、点火源1410との干渉、及びピストン130が上死点にあるときに開くとチャンバ121内へと突出する吸気弁163との干渉を回避して、ピストン130とヘッド140との間の死空間を低減できるように、窪みを含んでもよいことに留意されたい。
上述の空気機関の例における吸気弁163はヘッド140に入ることによって開くことができ、そのことは、供給された加圧空気によって吸気弁163に加えられる圧力を考慮すると有益であり得ることが想起されるであろう。かかる配置は、空気が供給され、燃焼によってチャンバ121内で発生する圧力に耐えるように弁シール164、165がより良好に適合された、内燃機関1400の場合にはほとんど有益ではない。
従って、上述した例の排気弁165と同様に、吸気弁163及び排気弁165は、それぞれのアクチュエータ181、182がブリッジ171、172をヘッド140から離れる方向で移動させると、それぞれ確実に閉じられてもよい。吸気弁163及び排気弁165は、ばねなどの付勢部材によって開かれてもよいが、アクチュエータ181、182によってブリッジ171、172をヘッド140に向かって移動させて、弁163、165を確実に開くことも可能である。
このような方式でそれぞれ確実に閉じられる吸気弁163及び排気弁165を使用した同様の配置は、上述したものに類似した空気機関でも使用できることに留意されたい。また、内燃機関の例における弁163、165は、或いは、アクチュエータ181、182によって確実に開かれ、付勢部材によって閉じられてもよいことも認識されるべきである。
いずれの場合も、それぞれのブリッジ171、172がアクチュエータ181、182によって移動して、対応する弁163、165の動作の同期をもたらす弁装置161、162を使用することで、上述の例について考察したのと同様の利益が提供されることが理解されるであろう。
更に、内燃機関に適用した場合、従来の内燃機関のようにばね張力が弁を戻すのに依存することなく、弁163、165を確実に閉じる(かつ任意に確実に開く)ことができるので、上述したような弁装置161、162によって、弁の耐久性及び作動速度の改善を可能にできると考えられる。これは、特に、閉弁応答性が動作速度に関する制限因子になり得る高性能機関において有益になる。上述の例によるいくつかの機関では、ばねは、弁の開放又は閉止を引き起こすのに必要ではないことがあり、衝撃緩和効果をもたらすためにのみ必要なことがある。
上述の考察を考慮して、弁を確実に閉じた弁装置は、特に内燃機関において、望ましい性能の改善を示す場合があることが認識されるであろう。かかる弁装置の例は多弁機関に関連して既に記載してきたが、同様の原理は、単一の吸気弁及び単一の排気弁のみを有する機関にも有用に適用されてもよい。
従って、単一の吸気弁及び単一の排気弁を有する機関に関する、弁装置1560及びそれに対応するヘッド1540の一例について、図15A及び15Bを参照して次に記載する。
図15A及び15Bに示される弁装置及びヘッド140を利用する往復機関は、クランク軸、内部チャンバを画成するシリンダ、及びチャンバ内に位置付けられるピストンであって、クランク軸に接続されると共にチャンバ内部で往復運動するように構成されたピストンの、一般的な往復機関の特徴を含むが、弁装置1560及びヘッド1540の特定の構成がこの例における基本的関心であることを考えて、これらの特徴を表示していないことが理解されるであろう。
機関は、シリンダに取り付けられると共にピストンとは反対側の端部でチャンバを閉止するヘッド1540と、弁装置1560とを更に含む。ヘッド1540は、チャンバとそれぞれのマニホルドとの間を流体連通させるポートを含み、弁装置1560は、ポートを通る流体フローを動作可能に制御する弁1563を含む。
この場合、弁装置1560には単一の弁1563のみが設けられている。この弁1563は、この例の目的のため、吸気弁1563であるものと想定される。完全にするため、別の弁1565が図15Aに示されており、これは排気弁1565であるものと想定される。同様の弁装置を排気弁1565に使用することができるが、明瞭にするために、これは図15Aでは見えなくされていることが理解されるであろう。
弁装置1560は弁263に連結されたブリッジ1570を含み、ブリッジ1570が第1の方向で移動すると弁263が閉じ、ブリッジ1570が第2の方向で移動すると弁263が開く。弁装置1560は、ピストンの往復運動に基づいてブリッジ1570を第1の方向で移動させ、それによって弁を確実に閉じる閉止アクチュエータ1580と、ブリッジ1570を第2の方向に向かって付勢する少なくとも一つの付勢部材1574とを更に含む。
弁装置1560のこの形態によって、閉止アクチュエータ1580がブリッジ1570に作用すると、付勢部材に対抗して弁1563を閉位置へと機械的に移動させることができるが、閉止アクチュエータ1580がブリッジに作用していないとき、付勢部材1574は弁1563を自然な開位置に戻すのに使用されてもよい。結果として得られる弁動作は、弁が従来式で機械的に開き、ばねに依存して弁を閉止状態に戻す、内燃機関などにおける従来のポペット弁の動作とは反対である。
上述したように、かかる従来の配置と比べると、確実に弁が閉じられる弁装置を提供することには著しい利点がある。繰り返して言うと、これらの利点としては、従来の確実に開く弁構成の代わりに確実に閉じる弁装置1560が使用された場合に、機関の回転に対する固有の抵抗が著しく低減されることが挙げられる。
従来の内燃機関における主要な回転抵抗源は、従来の確実に開く弁を信頼性高く閉じるために要するばね張力であることに留意されたい。従来の機関のばねは、ばね張力及び弁の質量を含む要因に依存するそれら固有の動的応答特性によって、所与の速度で弁をその閉止位置に戻すことのみが可能である。高い動作速度では、弁がうまく閉じられない時間があり得る。この問題は弁の浮揚として知られている。従来の内燃機関において弁が十分な時間閉じない場合、その結果、まだ開いている弁を通って外に出る加圧ガスが低減されることによって動力が失われるか、或いはより決定的には、弁とピストンとの間に干渉が起こり、そのことが弁及び/又はピストンに対して広範囲な損傷を引き起こし得る。従って、従来、弁の浮揚によって従来の機関の最大動作速度が制限されてきた。
従来的に、従来のポペット弁構成における弁の浮揚の問題は、ばねの特性を制御することによって部分的にのみ緩和されてきた。例えば、より高い動作速度が従来の機関によって必要な場合、弁が信頼性高く閉位置へと戻ることができることを確保するため、より重い弁ばねを要することがある。これは、弁を開く間にばねが圧縮されたときのカム軸に対する荷重の増加を犠牲にして成り立ち、これによって次いで、タイミングベルトなどを使用してカム軸が機関に連結されるという共通のシナリオにおいて、より高い回転抵抗が発生する。
対称的に、この例のような弁装置1560では、弁の浮揚によって高速で弁が適切に閉じないという問題が排除される。弁1563は、ピストンの往復運動に基づいて確実に閉じるので、更に増加した機関速度で閉位置へと移動させることができ、弁1563の閉止動作において、ばね又は他の時限的な付勢装置には依存しない。
弁装置1560は、ブリッジ1570に連結されたばねなどの付勢部材1574を含むが、これは単に弁1563の開放動作を容易にするためにのみ設けられることがある。この例では、弁装置1560は、閉止アクチュエータ1580が弁1563を確実に閉じるのに使用されていないときは常に、付勢部材1574によって弁1563が開くようにして構成される。この構成は、従来の構成で要するであろうばね張力と比べて、求められるばね張力が大幅に低減されることが見出されている。
特に、弁1563を開くのに要するばね張力は、弁1563を開く必要があるときに弁1563の面に加えられる最大内部チャンバ圧力を単に相殺するように計算されてもよい。必要なばね張力は、速度の増加にかかわらず、回転範囲全体を通して一定のままであることに留意されたい。弁装置1560の好ましい実施形態では、付勢部材1574が弁1563を開くのに使用されるばねのばね張力は、対応するサイズ及び性能の従来の内燃機関における同様の弁を閉じるのに要するばね張力の約半分に設定することができる。
従って、弁1563を確実に閉じる弁装置1560は、比較的低いばね張力を有するばねを使用できるようにすることによって、固有の抵抗を低減する助けとなることが認識されるであろう。
この例では、ブリッジ1570が第1の方向で移動するとブリッジ1570はヘッド1540から離れる方向で移動し、ブリッジ1570が第2の方向で移動するとブリッジ1570はヘッド1540に向かって移動する。これにより、弁1563がほぼ従来の弁シール1564装置を有し、弁シール1564をチャンバ内へと延在させることによって開き、シール1564をヘッド1540に形成されたポート内に設置することによって閉じることができる。しかしながら、ブリッジ1570の作動を通して確実に弁を閉じられるようにする、他の構成が可能であってもよいことが認識されるであろう。
図15Aに示されるように、弁装置1560は、点火プラグ1510などの点火源を含む内燃機関に組み込まれてもよい。弁装置1560は、従来の点火プラグ1510をピストン面に対して垂直に位置付けることができるような方法で、位置付け可能であることが認識されるであろう。
ディーゼル機関などの他の内燃機関では、点火プラグ1510は必要でないことがあるが、予熱プラグ又は燃料噴射器など、他の標準的な機関の機構が提供されてもよい。或いは、弁装置1560は、上述したのと同様の方法で動作してもよい、加圧ガスによって駆動されるように構成された加圧ガス機関と共に使用されてもよい。
図15A及び15Bに示されるような、弁装置1560の更なる(任意ではあるが)好ましい特徴について次に記載する。
上述の例のように、閉止アクチュエータは、少なくとも一つのカム1581が上に装着されたカム軸1580の形態で提供されてもよい。この点に関して、単一のカム1581が示されているが、図19及び20の例に関してより詳細に後述するように、それぞれのフォロワを有する複数のカムが、共通のカム軸上で離隔されて設けられてもよい。この例を説明する目的で、単一のカム1581に言及するが、これは限定を意図するものではないことが認識されるであろう。
カム軸1580は、一般的に、機関のクランク軸に回転可能に連結される。このように、カム1581は、クランク軸の回転位置に応じてブリッジ1570の移動を制御するように構成されてもよい。オーバーヘッドカム1581装置を使用して、弁装置1560をヘッド1540の上方で装着できることが認識されるであろう。次いで、ブリッジ1570は、図15Aに示されるように、カム1581を係合するカムフォロワ1577を含んでもよい。従って、これによって、弁1563を要求に応じて開閉するため、クランク軸の回転運動を弁1563の必要な移動へと変換する低摩擦装置が提供される。
ブリッジ1570は、弁1563が連結される第1のブリッジ部分1571(若しくは主要ブリッジ本体)と、カムフォロワ1577を含む第2のブリッジ部分1572(若しくはブリッジキャップ)とを含んでもよい。この特定の例では、ブリッジ1570は、第1のブリッジ部分1571と第2のブリッジ部分1572との間にキャビティを画成し、それによってカム軸1580がキャビティを通って延在することができる。ブリッジ1570のこの構造的構成によって、ブリッジ1570をカム1581のローブによって作動させたときに、弁1563を持ち上げて閉位置に至らせることができる、便利な幾何学的配置がもたらされる。
上述したように、各付勢部材は、ブリッジ1570に連結されたばね1573の形態で提供されてもよい。この例では、カム軸1580上のカム1581(若しくは他の任意の適切な閉止アクチュエータ)を使用してブリッジ1570を第1の方向で移動させるとばね1574が圧縮されて弁1563を確実に閉じて、圧縮されたばね1574がブリッジ1570を第2の方向で押しやり、それによって、カム1581が弁1563を確実に閉じるのに使用されていないときは弁1563が開かれるようにして、各ばね1574がブリッジ1570に連結される。
換言すれば、ばね1574は、弁1563を機械的に閉じている間、カム1581がカムフォロワ1577に作用することによって克服される付勢張力を提供し、弁1563の開放は、付勢張力を解除することによって達成される。
図15A及び15Bに示されるように、各ばね1574は、ヘッド1540から外向きに延在するスタッド1573上に装着されてもよい。上述したのと同様の配置で、各ばね1574は保定具1575を使用してスタッド1573上で保定されてもよく、それによってばね1574がブリッジ1570に有効に連結される。この例では、弁装置1560は、弁1563を中心にして対称的に配置された一対のばね1574を含んで、ブリッジ1570の付勢を釣り合わせ、それによって弁1563が直線的に開かれることを確保する。
複数の弁の動作を同期させるのに使用されるブリッジを有する機関の上述の例を考慮して、図15A及び15Bを参照して記載したタイプの弁装置1560はまた、複数の弁と共に使用されてもよいことが更に認識されるであろう。これを例証するため、図16は、上述のものにほぼ類似しているが、同じブリッジ1570に連結された二つの弁1563を含む、弁装置1660の更なる例を示している。各弁1563は、それぞれのポートを通る流体フローを動作可能に制御するためのものであり、それにより、ブリッジ1570の移動によって二つの弁1563の動作が同期される。
図16及び図15Bを比べることで、この弁装置1660は上述したものとほぼ類似の特徴を含むが、いくつかの特徴は、上述の例における単一の弁1563の代わりに二つの弁1563を受け入れるように、複製されるか又は別の方法で適合されていることが理解されるであろう。いずれの場合も、同様の動作原理が適用され、複数の弁1563の動作を機械的に同期させることの更なる利益が得られると共に、必要であれば単一のカム1581を使用して複数の弁を動作させることができる。
図15A、15B、及び16の例は、弁1563の確実な閉止のみを確保する、カムなどによって提供される閉止アクチュエータ1580を含む配置を示しているが、弁1563の確実な開放も可能にする、機関の他の例が提供されてもよいことが認識されるであろう。一例では、弁装置1560は、ピストンの往復運動に基づいてブリッジ1570を第2の方向で移動させ、それによって弁1563を確実に開く、開放アクチュエータを更に含んでもよい。これは、例えば、閉止アクチュエータを提供するカムとは反対の方向でブリッジを作動させるように構成された追加のカムを使用することによって達成されてもよく、その場合、二つのカムは、任意のある瞬間にカムの一方のみがブリッジを確実に作動させることを確保するため、補完的な外形を有するのが好ましいことが認識されるであろう。
機関が弁の確実な閉止のみを行い、弁を開くのには付勢部材を使用するように構成されるか、又は機関が弁の確実な開閉の両方を行うように構成されるかとは関係なく、弁装置はそれにかかわらず付勢部材を含んでもよく、付勢部材が弁を閉じる際の衝撃を緩和するように構成されてもよい。
弁装置1860の更なる例を図18A及び18Bに示す。弁装置1860は、全体的に、図15A及び15Bにおける弁装置1560の上述の例に類似しており、共通の特徴には上述の例と同じ参照番号が割り当てられている。しかしながら、この場合、弁装置1860は、弁が閉じているときの弁とポートとの間のシールを破壊するために、著しい圧力を克服する必要があるような場合に、弁の開放を改善する追加の特徴を含む。
かかる状況は、例えば、内燃機関において、燃焼後の圧力増加に対抗して排気弁を開く必要がある場合に発生することがある。付勢部材は、上述の例のように、閉止アクチュエータが弁を確実に閉じるのに使用されていないときに弁を開かせるように構成されてもよく、これには、強力なばね又は他の適当に強力な付勢部材を使用して、弁シールを信頼性高く破壊し、チャンバ内の圧力に対抗して弁を開くことを必要とすることがある。より強力な付勢部材を使用することにより、機関の動作に対する抵抗が望ましくなく増加することがある。
図18A及び18Bの例では、ブリッジ1570を第2の方向で(この例ではヘッド1540に向かって)移動させて、弁1563が閉じた後のポート(図示なし)と弁1563との間のシールを確実に破壊するシール破壊アクチュエータ1885を、弁装置1860の一部として提供することによって、この潜在的な問題に対処している。
このように、シール破壊アクチュエータ1885は、弁1563を確実に開く上述した開放アクチュエータの特別な形態として作用する。開放アクチュエータは、ブリッジ1570を第2の方向で移動させて弁1563を完全に開くのに使用されてもよいが、このことはシール破壊アクチュエータ1885にとって必須ではない。より正確に言えば、シール破壊アクチュエータ1885は、チャンバ圧力を克服し、シールを破壊して、付勢部材1574によってもたらされる残りの開放移動を可能にするのに十分な、ブリッジ1570の移動を単に提供するように構成されてもよい。これにより、付勢部材が弁シールを破壊するのに十分な付勢力を提供する必要がなくなるので、比較的弱い付勢部材1574の使用を可能にできることが認識されるであろう。シール破壊アクチュエータ1885は、弁1563の開放を開始するのに、機関サイクルの短いセグメントでのみブリッジ1570に作用してもよい。
閉止アクチュエータは、上述の例のように、クランク軸に回転可能に連結されたカム軸1580上に装着された、第1のカム1581によって提供されてもよい。この例では、シール破壊アクチュエータは、同じカム軸1580上に装着された第2のカム1885によって提供されてもよい。第1のカム1581及び第2のカム1885は、このように、クランク軸の回転位置に応じてブリッジ1570の移動を制御するように構成される。閉止アクチュエータ及びシール破壊アクチュエータは、同じカム軸1580上に設けられるので、直接同期されるであろうことが認識されるであろう。
図18Aで最も良く分かるように、第1のカム1581は第1のカムローブを含み、第2のカム1885は第2のカムローブを含む。カム軸1580が回転すると、第1のカムローブはブリッジ1570を第1の方向で押しやり、それによって弁1563を確実に閉じ、第2のカムローブはブリッジ1570を第2の方向で押しやって、シールを確実に破壊する。
このタイプのカム装置は、主要な閉止用カム(第1のカム1581)と、シールを破壊するために短く跳ね返り、ばねなどの形態の付勢部材1574が弁1563を開位置へと付勢できるような機能を与える、補助的な「キッカー」カム(第2のカム1885)とを含むと言うことができる。
キッカーカム(第2のカム1885)によって提供されるシール破壊アクチュエータは、弁1563に対してある程度の運動量を付与してもよく、それが、付勢部材1574による著しい付勢力を要することなく、弁1563を開位置に向かって移動させることも支援できることが認識されるであろう。しかしながら、付勢部材1574は、開放アクチュエータが使用される場合に、上述したように弁1563を閉じる際の衝撃を緩和するのに依然として使用されてもよい。
この動作を可能にするため、ブリッジ1570は、第1のカム1581を係合する第1のカムフォロワ1577と、第2のカム1885を係合する第2のカムフォロワ1879とを含んでもよい。図示される例では、第2のカムフォロワ1879は第2のカム1885を係合し、その結果、第1のカムフォロワ1577が第1のカム1581から係脱されたとき、即ち閉止アクチュエータが弁1563を確実に閉じていないとき、弁シールを破壊することが認識されるであろう。
図15A及び15Bを参照して記載した上述の例のように、ブリッジは、弁1563が連結される第1のブリッジ部分1571と、第1のカムフォロワ1577を含む第2のブリッジ部分1572とを含んでもよい。しかしながら、この例では、第1のブリッジ部分1571は第2のカムフォロワ1879を更に含んでもよい。この例では、カム軸1580は、第1及び第2のブリッジ部分1571、1572の間を、特に上述したようにそれら二つの間に形成されるキャビティ内に延在する。これによってコンパクトな配置が可能になる。
いくつかの例では、弁1563は、弁1563を予負荷する予荷重ばね(図示なし)などを含む弁カートリッジを使用して、ブリッジ1570に連結されてもよい。第2のカムフォロワ1879は弁カートリッジと統合されてもよいので、予荷重ばねも、弁1563に対するシール破壊アクチュエータの作用の衝撃をある程度緩和する。
図18Bに示されるように、シール破壊アクチュエータを提供する第2のカム1885は、第1のカム1581からずらして間隔を空けてカム軸1580上に位置付けられ、第2のカムフォロワ1879は同じ量だけ第1のカムフォロワ1577からずらされる。このタイプのずらした配置は必須ではないが、これは、同じカム軸1580上で別個のカムを使用できるようにし、また第1のブリッジ部分1571にやはり連結される弁1563との干渉を回避するのに必要なことがある。
図18A及び18Bに示される弁装置1860は、付勢部材1574に完全に依存して弁1563を開く弁装置と比べて、付勢ばねによる回転抵抗の量を低減させることができるが、弁1563を確実に開くのに開放アクチュエータが使用されるような場合のように、機関サイクルの開放部分全体を通してアクチュエータとブリッジ1570との間の係合を要しないことが認識されるであろう。従って、これは、弁1563の確実な開閉の両方を完全にするのに必要なことがある、厳しい製造公差の必要性を除去する助けとなり得る。
上述の技術は、より一般にはピストン機械にも適用することができる。この点に関して、ピストン機械という用語は、往復機関並びに圧縮機を包含するものと理解される。
一例では、圧縮機は、上述した往復機関と実質的に類似した配置を有することができる。しかしながら、この例では、弁作動のタイミングは一般的には修正され、従って、図1A〜1Dの往復機関を使用するためのタイミング構成について、図17A〜17Cを参照して以下に記載する。
この例では、弁165は、空気をチャンバ148からピストンチャンバ121内へと流す吸気弁として作用し、弁163は、チャンバ147を介して加圧空気を供給する排気弁として作用する。
図17Aは、TDCで閉じている吸気弁165及び排気弁163を示している。軸110が回転するにつれて、吸気弁165はATDC5°で開くが排気弁163は閉じたままであり、この構成はATDC180°まで保持されて、ピストンの下降行程の間に空気をピストンチャンバ121に引き込むことができる。ATDC180°で、排気弁163は開き、吸気弁165は閉じて、チャンバ147を介して加圧空気を供給することができる。この構成は、排気弁163が閉じるTDCまで継続させることができ、プロセスを繰り返すことができる。
弁装置の更なる例について、図19A及び19Bを参照して以下に記載する。
この例では、弁装置は、第1及び第2のブリッジ部分1971、1972を含むブリッジ1970を含む。第1のブリッジ部分1971は、延在する第2のブリッジ部分に連結するアーム1971.1を含むので、ブリッジ1970はカム軸が中を通り抜ける開口部Oの周りで延在する。この例では二つのアームが示されているが、これは単に例証のためであり、実際上は任意の数のアームを使用することができる。このように、単一のアームを使用して「C字形」のブリッジを画成することができるが、例えば平行に離隔したアーム対の形態の、二つを超えるアームを使用して、強度を付加することができる。また、ブリッジは二つの本体部分から形成されているが、これは必須ではなく、単一の本体部分を使用できることが認識されるであろう。
第1のブリッジ部分1971は、車軸1978を介して回転可能に装着された第2のカムフォロワ1979を支持する。弁シール1964も、弁棒で第2のブリッジ部分の開口部をねじ込み係合することなどによって、適切な連結具を使用して、弁棒1963を介して第1のブリッジ部分1971に連結される。
第2のブリッジ部分1972は、車軸1976を介して回転可能に装着された第1のカムフォロワ1977を支持し、第2のブリッジ部分を通り抜けてアーム1971.1に入るボルト1972.1などの適切な連結具を介して、又は干渉結合などを通して、第1のブリッジ部分1971のアームに連結することができる。
この例では、閉止アクチュエータはカム軸1980上に装着されたカム1981の形態で提供され、それが第1のカムフォロワ1977と係合し、それによってカム軸が回転する際のブリッジ1970の移動を制御する。このように、カム1981は、カム軸の回転位置に応じてブリッジ1970の移動を制御するように構成されてもよい。特に、カム1981は、図20A〜20Cに示されるように、ブリッジ1970を第1の方向1991で押しやるのに使用することができ、それによって弁シール1964が弁座を封止係合し、次にブリッジ1970を解除してブリッジ1970が第2の方向で移動できるようにし、それによって弁シール1964が解除される。
上述したように、弁の開放を支援するために、付勢機構を使用することができる。この例では、カム軸1980上に装着された第2のカムの形態のシール破壊アクチュエータ1985は、ブリッジ1970を第2の方向1992で押しやるのに使用される。図18A及び18Bにおける上述の例では、付勢機構はシールを破壊する「キッカー」カムとして使用され、ばねなどの第2の付勢機構は弁を開いたままにする。しかしながら、この例では、第2のカム1985はシールが閉じるのを防ぐように動作し、カムローブは第2のカムフォロワ1979を係合する。これは、特に、例えば高回転のシナリオの間に起こるような、弁シール1964が上下振動して、サイクルの開放部分の間に弁を閉じるような状況である。第2のカム1985を設けることによって、弁シール1964が第1のカムの作用によって確実に閉じられるまで閉位置に戻るのを防ぐ。
弁の開放及び/又は誤った弁の閉止防止を支援するため、ばね又は第2のカム1985のどちらか一つ以上を提供することができるが、これらは全ての状況において必要なわけではなく、別の方法として、上述したように、例えば低回転の状況で、ばね又は第2のカム1985を有さない配置を使用できることが認識されるであろう。このように、例えば、第2のブリッジ部分1972.2に連結された一つ以上のばね1972.4がブリッジに作用して、ブリッジを第2の方向で押しやり、それによって弁上で、第2のカム1985の代わりに、又はそれに加えて助けとすることができる。これはまた、弁を設置する際の衝撃を緩和すると共に直線的にガイドする助けとすることができる。それに加えて、この例では、ばね1972.4を、外部のガイドと協働することができる円筒状のハウジング内に装着して、ブリッジの直線運動が達成されることを確保する助けとすることができる。いずれの場合も、この例では、第1のカム1981は、必要なドエル角及び持上げ高さに関して弁のパラメータを決定するように外形が作られる。第1のカム1981は、動作サイクル全体を通して弁に対して設定されるサイクルパラメータを制御し、特に、弁の閉止と、弁が閉じることによって弁座に与えられる圧力の量を決定する。第1のカム1981はまた、持上げ高さと、どのような方法で弁を持ち上げ、また弁座に戻すかを決定し、第2のカム1985は、弁を開くと共に意図しない弁の閉止を防ぐように動作する。
上記において、第1及び第2のカム1981、1985は連動して動作して、弁を確実に開閉し、それによってばねなどの別個の付勢手段の必要性を回避していることが認識されるであろう。使用される特定の配置には多数の利益がある。
第一に、カム1981、1985をブリッジ1970の開口部内に設けることによって、カムフォロワを開口部の反対側に設けることができるので、第1及び第2のカムフォロワ1977、1979がブリッジを反対方向で確実に押しやる。これによって完全な直線移動が可能になり、それにより、ロッカーアーム及びピボットを使用することによって引き起こされる非能率及び付加的な磨耗が回避される。
第二に、これによってカムを共通のカム軸上に同軸で設けることができて、第1及び第2のカムの完全な同期が確保される。これは、一部の機関で起こるタイミングの問題を防ぐ助けとなり得る。
第三に、図示される構成では、第2のカム1985は第1のカム1981よりも小さい。これにより、カム軸1980及びカム1981、1985を単一体から機械加工することができる。この点に関して、材料のロッドを最初に機械加工して第1のカム1981の外形とし、第2のカム1985を作り出すために、第1のカムの位置の中間にある領域を更に機械加工することができる。
更に、この例では、第2のカム1985及び第2のカムフォロワ1979はブリッジ1970と位置合わせされ、第1のカム1981及び第1のカムフォロワ1977はブリッジ1970からずらされる。それに加えて、この例では、二つの第1のカム1981及び二つの第2のフォロワ1977がブリッジ1970のどちらかの面に対称的に装着されて、ブリッジに対する力が釣り合うことが確保され、それによって磨耗が低減されると共に効率が向上する。これは必須ではなく、例えば、任意の数の第1若しくは第2のカム1981、1985及びそれに対応するカムフォロワ1977を設けること、又は第1及び第2のカム1981、1985及びカムフォロワ1977、1979をそれぞれ、いずれもブリッジ1970からずれないようにしてブリッジ内に設けることを含めて、任意の適切な配置を使用できることが認識されるであろう。
それに加えて、この例では、ブリッジ1970は、機関又は他のピストン機械内の組立てを容易にするため、二つのブリッジ部分から形成される。これにより、弁シール1964を機関のヘッド内に設置し、第1のブリッジ部分1971を装着し、第2のブリッジ部分1972が第1のブリッジ部分1971に連結される前に、カム軸を位置付けることができる。またこれにより、例えば可変の張力調整を提供するため、ブリッジの調節が可能になり、それによって長時間使用した後の弁座の伸びに適応する。特に、かかる調節は、一般的には機関内でよりアクセスしやすい第2のブリッジ部分1972を使用して行えばよく、調節プロセスがより簡単になる。
一例では、これは、第2のブリッジ部分1972の残りの部分に対して移動させることができる、第2のブリッジ部分1972の調節可能な区画1972,2を使用して達成することができ、それによってカムフォロワ1977の位置を調節できる。しかしながら、例えばシミング(shimming)などを使用して、二つのブリッジ部分を有するブリッジを使用せずに調節することも可能であることが認識されるであろう。
それに加えて、第2のブリッジ部分1972は、第1のカムフォロワ1977を第2の方向1922で第1のカム1981に向かって押しやる、波形ばね又は他の付勢機構などのばね1972.3を組み込むことができる。これには、第1のカムフォロワ1977と第1のカム1981との間の確実な係合を確保することを含む、多数の利益があり得る。これはまた、カムローブ間の移行に対する緩衝を提供し、それによって弁のチャターを低減する助けとすることができ、また、より大きい生産時の公差を許容することによって装置の製造がより簡単になり、磨耗及び調節性が良好になる。このことも弁を閉じる際の衝撃を緩和する助けとなり、それが次いで弁座の磨耗を低減する助けとなる。これは、非線形的配置の場合は当てはまらないであろう、簡単な方法で達成できることが認識されるであろう。第2のカムフォロワ1979を第2のカム1985に向かって押しやるため、ばね1972.3を第1のブリッジ部分1971内に設けることによって、又は第1及び第2のカムフォロワ1977、1979両方と関連づけられたばね若しくは他の付勢機構を設けることによって、同様の利益を獲得できることが認識されるであろう。
上述の配置は、多数のブリッジ1970を、各ブリッジ1970の開口部Oを通って延在する共通のカム軸を介して動作させる、複数のインライン弁装置を含むように更に拡張させることができる。これにより、カム軸の構成に基づいて弁同士が簡単に同期するタイミングで、複数の弁を同時に作動させることができる。この点に関して、カム軸を単一の単位体から形成することができ、これによって弁の相対的タイミングのずれが防止されて、長時間の使用後であっても弁が同期して動作することが確保される。
従って、上述の例は、ポートを通る流体フローを動作可能に制御する弁と、第1の方向で直線移動することによって弁を閉じ、第2の方向で直線移動することによって弁を開くようにして、弁に連結されたブリッジと、第1のカムローブを有する回転可能な第1のカムを含み、第1のカムが回転すると、第1のカムローブがブリッジを第1の直線方向で押しやり、それによって弁を確実に閉じる、閉止アクチュエータと、ブリッジを第2の方向で移動させ、それによって弁を少なくとも確実に開く開放アクチュエータとを含む、ピストン機械で使用される弁装置について記載している。
これにより、弁の直線的な開放を達成するのにブリッジを使用できるようにする機構が提供されて、磨耗を低減すると共に動作効率を向上することができる。
一例では、弁装置は、ブリッジ上に装着された第1のカムフォロワを含み、第1のカムフォロワは第1のカムと協働して、ブリッジを第1の直線方向で移動させる。しかしながら、別の方法として、カムは、別個の離散的なフォロワを要することなくブリッジを直接係合することができる。
いずれの場合も、第1のカムは、第1のカムフォロワ(若しくはカムによって係合されるブリッジの部分)と弁との間に位置付けられて、弁を閉じるのに使用される弁から離れる第1の方向でブリッジを直線運動させることができる。これにより、カムローブが弁の確実な閉止を確保して、より信頼性の高い弁閉止が可能になる。
一例では、第1のカムフォロワはブリッジに移動可能に装着される。これは、第1のカムフォロワを付勢ばねによってブリッジに対して第2の方向で押しやることを可能にするため、配置の許容差を提供するため、或いは第1のカムフォロワの位置を第1又は第2の方向のどちらかで調節し、それによって弁リフトの程度を調節できるようにするために使用することができる。或いは、第2のカムフォロワをブリッジに対して移動可能に装着及び/又は付勢することによって、同様の効果を達成することができる。
開放アクチュエータは、一般的に、第2のカムローブを有する回転可能な第2のカムを含み、第2のカムが回転すると、第2のカムローブがブリッジを第2の直線方向で押しやり、それによって弁を確実に開く。しかしながら、別の方法として付勢ばねを使用することができる。
第2のカムを使用する場合、弁装置は、一般的に、ブリッジ上に装着された第2のカムフォロワを含み、第2のカムフォロワは第2のカムと協働して、ブリッジを第2の直線方向で移動させる。この場合、第2のカムフォロワは通常、第2のカムと弁との間に位置付けられる。
この配置では、第2のカムは、例えば第1及び第2のカムを共通のカム軸上に設けることによって、第1のカムと同軸で、また回転方向で変化しないように装着される。これは、カムを製造し、これらをカム軸に取り付けることによって達成することができるが、より一般的には、第1及び第2のカムはカム軸の一部として一体的に形成される。
弁装置は、共通のカム軸に沿って離隔された少なくとも二つの第1のカムを含むことができ、少なくとも二つの第1のカムは、ブリッジ上に装着された対応する少なくとも二つの第1のカムフォロワと協働する。これを使用して、ブリッジに加えられる力を釣り合わせることができる。
或いは、弁装置は、共通のカム軸に沿って離隔された少なくとも二つの第2のカムを含むことができ、少なくとも二つの第2のカムは、ブリッジ上に装着された対応する少なくとも二つの第2のカムフォロワと協働する。
更なる例では、第2のカムローブは、第1のカムローブがブリッジを第1の直線方向で押しやっていないとき、第1の直線方向でのブリッジの移動を更に制限する。
一例では、弁装置は第1及び第2ブリッジ部分を含む。必須ではないものの、これは、例えば弁の構成要素へのアクセスをより簡単にすることによって、弁装置の構築及びメンテナンスの観点で有利であり得る。
この例では、第1及び第2のブリッジ部分はそれらの間に開口部を画成し、カム軸は使用の際に開口部を通って延在する。それに加えて、弁は第1のブリッジ部分に連結することができ、弁装置は、第2のブリッジ部分上に装着された第1のカムフォロワと、第1のブリッジ部分に連結された第2のカムフォロワとを含む。
弁装置は、ブリッジから横方向にずらされた少なくとも一つのカム及びカムフォロワを含むことができ、より一般的には、カム及びカムフォロワは、ブリッジに加えられる力を釣り合わせるため、ブリッジのどちらかの面に対称的に装着される。
弁装置はまた、一般的に、離隔された配置の複数の弁、ブリッジ、及び開放アクチュエータを含み、各開放アクチュエータは少なくとも一つの第1のカムを含み、各第1のカムは共通のカム軸上に装着される。
従って、上述の技術、特に弁制御プロセスは、往復機関、圧縮機などを含むがそれらに限定されない、任意のピストン機械に適用できることが認識されるであろう。
この点に関して、かかるピストン機械は、一般的に、回転軸と、内部チャンバを画成するハウジングと、チャンバ内に位置付けられ、軸に接続されると共に、軸が回転するとチャンバの内部で移動するように構成されたピストンと、チャンバとそれぞれのマニホルドとの間を流体連通させる、ハウジング内に設けられたポートと、弁装置とを含み、弁装置は、ポートを通る流体フローを動作可能に制御する弁と、弁に連結され、第1の方向で移動することによって弁を閉じ、第2の方向で移動することによって弁を開くブリッジと、ピストンの往復運動に基づいてブリッジを第1の方向で移動させ、それによって弁を確実に閉じる閉止アクチュエータと、ブリッジを第2の方向に向かって付勢する少なくとも一つの付勢部材とを含む。
上述の配置は特定の動作効率を提供する。特に、従来のピストン機関/圧縮機装置の場合のように、付勢ばねを使用して弁を押しやって閉じるのとは対照的に、アクチュエータを使用して弁を確実に閉じる。この場合、はるかに弱いばねを使用して弁を開くことができるので、弁を開閉するのに要するエネルギー全体が、標準的な弁装置と比べて著しく低減される。
一例では、これは、カムの回転サイクルの大部分に関して、ブリッジを持ち上げることができ、したがって弁を閉じることができる、細長いローブを有するカムを使用して達成されることが認識されるであろう。このように、弁を機械的に閉じ、次に弱いばねを使用して弁を開くことができるようにして、エネルギー効率が向上する。この効率の向上は、内燃機関の場合は6〜8%程度、場合によっては他の用途でははるかに高いものであり得る。
上述の配置の別の利益は、ブリッジの使用によって弁の直線的な作動が可能になることである。特に、回転カムを使用してブリッジを直線移動させ、更に弁の直線移動に結び付けることができる。このように、上述したように、このことがエネルギー効率及び磨耗特性の更なる改善に結び付き得る。
このことから、上述の配置はまた、ピストン機械で使用される弁装置に関することができ、弁装置は、ポートを通る流体フローを動作可能に制御する弁と、弁に連結され、第1の方向で直線移動することによって弁を閉じ、第2の方向で直線移動することによって弁を開くブリッジと、カムローブを有する回転可能なカムを含み、カムが回転すると、カムローブがブリッジを第1の直線方向で押しやり、それによって弁を確実に閉じる、閉止アクチュエータと、ブリッジを第2の直線方向で付勢して、弁がアクチュエータによって確実に閉じられていないときに弁を開く、少なくとも一つの付勢部材とを含むことが認識されるであろう。
また、上述の技術は、弁群を備えたピストン機械に適用できることが認識されるであろう。この例では、ピストン機械は、回転軸と、内部チャンバを画成するハウジングと、チャンバ内に位置付けられ、軸に接続されると共に、軸が回転するとチャンバの内部で移動するように構成されたピストンと、シリンダに取り付けられ、ピストンとは反対側の端部でチャンバを閉止すると共に、チャンバとそれぞれのマニホルドとの間を流体連通させる二つ以上のポートを含む少なくとも一つのポート群を含むヘッドと、ポート群毎に、ヘッドに連結された弁装置とを含み、各弁装置は、ポート群のポート毎に、それぞれのポートを通る流体フローを動作可能に制御する弁と、弁に連結され、ヘッドに対して移動することによって弁の動作を同期させるブリッジと、ブリッジを移動させるアクチュエータとを含む。
上述の弁装置は、二行程設計の空気機関又は四行程設計の内燃機関、並びに圧縮機などを含むがそれらに限定されない、広範囲の用途で使用できることが認識されるであろう。
弁装置は、好ましい実装に応じて異なる数のローブを含むことができる。例えば、二行程の配置で使用される場合、カムは一般的に弁セット一つ当たり一つのローブを有するが、四行程設計の場合は、弁又は弁セット一つ当たり二つ以上、より一般的には三つのローブを使用することができる。
多くの構成要素が異なる用途間で交換可能であるので、例えば、空気機関で使用される多段のクランク軸及び/又はツインアームの連接棒を、IC機関で使用できることが認識されるであろう。
システムは、逆向きの弁及び標準的な弁の両方を含むがそれらに限定されない、広範囲の弁構成と共に使用することができる。一つの特定の例では、空気機関及びIC機関の両方において、ブリッジをヘッドから離れる方向で持ち上げることによって弁が閉じ、ブリッジをヘッドに向かって下げることによって弁が開く。
システムは、弁棒の張力の変化を簡単に受け入れて、弁座/押し棒装置の伸びに適応するように弁装置を調節するのをより簡単にすることができる。それに加えて、組込み式の張力調整デバイスを使用して、IC機関が動作する際の熱によって生じる弁棒の膨張を相殺することができる。
装置を、共通のカム軸によって駆動される単一の弁又は複数弁のセット内で使用し、それによって複数の弁同士のタイミングを維持できることを確保することができる。
弁装置は、特に二行程方式において、効率を改善するために往復圧縮機で使用することができる。この例では、二行程動作及び低い内部チャンバ圧力により、付勢デバイスが使用されてもよい。対照的に、IC機関では、かかる付勢は不要なことがあり、その代わりに「キッカー」装置を使用して弁の開放を容易にすることができるが、やはりこれも必須ではないことがある。使用されると、キッカーカムは開放を行うが、主要なカムローブのパラメータに依存して、ブリッジの運動を、また従って一つ以上の弁のタイミングを決定する。
一つの特定の配置では、ブリッジの使用によって、フォロワを弁棒の軸と実質的にインラインで提供することができ、即ち運動が直線的であり、従って上述したように磨耗が低減されると共に効率が改善されるので、特に有益である。
本明細書及び以下の特許請求の範囲全体を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除いて、「備える(comprise)」という語句、及びその変化形(「comprises」又は「comprising」など)は、規定された整数若しくは整数群又は工程群を含むが、他のあらゆる整数若しくは整数群を除外しないことを示唆するものと理解される。
多数の変更及び修正が明白になるであろうことが、当業者には認識されるであろう。当業者にとって明白になるであろう、かかる変更及び修正は全て、上記で広範囲に記載した本発明の趣旨及び範囲内にあるものと見なされるべきである。