図1から図21は、本発明の第1の実施形態に係る撮像ユニット(撮像装置)10とその構成要素を示している。以下の説明における前後、左右、上下の各方向は図中に記載した矢線方向を基準としており、被写体(物体)側が前方となる。図1及び図2に外観形状を示すように、撮像ユニット10は前後方向に薄く左右方向に長い横長形状をなしている。
図3に示すように、撮像ユニット10の撮像光学系は、第1群(前方レンズ群)G1、第2群(後方レンズ群)G2、第3群(後方レンズ群)G3、第4群(後方レンズ群)G4を有し、第1群G1に含まれる第1プリズム(反射素子)L11と第4群G4の右方(像側)に位置する第2プリズムL12でそれぞれ略直角に光束を反射させる屈曲光学系となっている。図14から図21に示すように、第1プリズムL11は、前方を向く入射面L11−aと、右方を向く出射面L11−bと、入射面L11−a及び出射面L11−bに対して斜設された反射面L11−cと、入射面L11−a、出射面L11−b及び反射面L11−cを接続する一対の側面L11−dを有している。図3及び図4に示すように、第1群G1は、第1プリズムL11の入射面L11−aの前方(被写体側)に位置する第1レンズ(前方レンズ)L1と、第1プリズムL11と、第1プリズムL11の出射面L11−bの右方(像側)に位置する第2レンズL2とから構成される。第1レンズL1は、入射面L1−aを物体側に向け、出射面L1−bを第1プリズムL11の入射面L11−aに向けた単レンズである。第2群G2から第4群G4はそれぞれ、プリズムなどの反射素子を含まないレンズ群である。
図3に示すように、前方から後方に向かう第1光軸(第1の光軸)O1に沿って第1レンズL1に入射した被写体からの光束は、入射面L11−aを通して第1プリズムL11に入り、第1プリズムL11の反射面L11−cによって第2光軸(第2の光軸)O2に沿う方向(左方から右方)に反射されて出射面L11−bから出射される。続いて光束は、第2光軸O2上に位置する第2レンズL2と第2群G2から第4群G4までの各レンズを通り、入射面L12−aを通して第2プリズムL12に入り、第2プリズムL12の反射面L12−cによって第3光軸O3に沿う方向(後方から前方に向かう方向)に反射されて出射面L12−bから出射され、撮像センサ14の撮像面上に結像される。第1光軸O1と第3光軸O3は略平行であり、第2光軸O2と共に同一の平面内に位置する。撮像ユニット10は第2光軸O2に沿う方向に長い形状をなしており、第1群G1は撮像ユニット10の長手方向の一端部(左側の端部)に近い位置に寄せて配置されている。
第1光軸O1と第2光軸O2と第3光軸O3を含む仮想の平面を基準平面P1(第1の平面)とし、この基準平面P1に直交して第1光軸O1を含む仮想の平面を基準平面P2(第2の平面)とする。第1の実施形態の撮像ユニット10では、図2、図9、図11、図16、図17、図18、図19に基準平面P1を示し、図2、図4、図11、図16、図17、図20、図21に基準平面P2を示している。
第1レンズL1は、被写体側を向く入射面L1−aを平面とし、第1プリズムL11に向く出射面L1−bを凹面としており、第2光軸O2が延びる側の周縁部の一部を基準平面P2に沿う方向に切り欠いたDカット形状をなしている。第1プリズムL11の入射面L11−aと出射面L11−bは略垂直な関係にあり、反射面L11−cは入射面L11−aと出射面L11−bに対して約45度の角度で斜設されている。第1プリズムL11と同様に、第2プリズムL12の入射面L12−aと出射面L12−bは略垂直な関係にあり、反射面L12−cは入射面L12−aと出射面L12−bに対して約45度の角度で斜設されている。
撮像ユニット10はハウジング(支持部材)20を有する。図1、図2、図5から図7に示すように、ハウジング20は、後方に向けて開かれた箱状部22と、箱状部22の左方に位置する第1支持部23と、箱状部22の右方に位置する第2支持部24とを有する。図示を省略するが、箱状部22の内部に第2群G2を保持するレンズ枠と第3群G3を保持するレンズ枠が支持されている。第1支持部23と第2支持部24にはプリズム保持枠(反射素子支持部)23aとプリズム保持枠24aが形成されており、プリズム保持枠23aに第1プリズムL11が支持され、プリズム保持枠24aに第2プリズムL12が支持される。さらに、第1支持部23には第1群G1の第2レンズL2が固定的に支持され、第2支持部24には第4群G4が固定的に支持される。第2支持部24のプリズム保持枠24aの前方に形成した開口内に、撮像センサ14を支持する撮像センサ基板15(図3)が固定される。ハウジング20の後部は後方支持板21(図1、図2、図5及び図6)によって塞がれる。後方支持板21には、ハウジング20の第1支持部23の後方位置に組付開口21a(図6)が形成されている。
第2群G2を保持するレンズ枠(図示略)と第3群G3を保持するレンズ枠(図示略)はそれぞれ、箱状部22内で第2光軸O2に沿って直進移動可能に支持されており、第2支持部24に支持した2つのレンズ駆動モータM(図1、図2、図5及び図6)の駆動力によって各レンズ枠が第2光軸O2に沿って進退移動する。撮像ユニット10の撮像光学系は焦点距離可変であり、第2光軸O2に沿う第2群G2と第3群G3の移動によってズーミング(変倍)動作が行われる。また、第2光軸O2に沿う第3群G3の移動によってフォーカシング動作が行われる。
撮像ユニット10は、手振れなどの振動を原因とする像面上での像振れを軽減させる防振(像振れ補正)機構を備えている。この防振機構は、第1群G1中の第1レンズL1を、第1光軸O1を延長した軸上の点である揺動中心A1(図4)を中心とする仮想の球面に沿って揺動させるものである。この第1レンズL1における揺動動作を球心揺動と呼ぶ。図中における第1光軸O1は、防振動作を行なっていない光学設計上の基準状態(球心揺動の中心位置)での第1レンズL1の光軸を示している。以下では、この第1レンズL1の基準状態を防振初期位置と呼ぶ。
第1レンズL1は第1レンズ枠(可動部材)30に固定的に支持されており、第1レンズ枠30はセンサホルダ(支持部材)31に対して球心揺動可能に支持され、センサホルダ31はハウジング20の第1支持部23に対して固定的に支持される。ハウジング20の第1支持部23にはさらに、第1レンズ枠30を囲む形状のカバー部材32が取り付けられる。第1レンズ枠30に支持される一対の永久磁石81、82(図6から図9、図12、図13、図15、図16、図18、図20)と、カバー部材32に支持される一対のコイル83、84(図5から図7、図16(B))が、第1レンズ枠30(第1レンズL1)を駆動させる電磁アクチュエータ(ボイスコイルモータ)を構成している。図16(B)では、カバー部材32を省略した状態でコイル83とコイル84を仮想線(一点鎖線)で示している。この電磁アクチュエータにより駆動される第1レンズ枠30(第1レンズL1)の位置検出は、センサホルダ31に支持される一対のホールセンサ85、86(図5から図11)を用いて行われる。
永久磁石81と永久磁石82はそれぞれ扁平な直方体であり、互いの形状及び大きさは略同一である。永久磁石81、82はそれぞれ、図8、図9、図16(A)及び図18に示す磁極境界線Q1、Q2を挟んだ一方の側にN極を有し他方の側にS極を有している。なお、図では磁極境界線Q1、Q2として示しているが、永久磁石81、82には厚みがあるため、実際のN極とS極の境界は、磁極境界線Q1、Q2を永久磁石81、82の厚み方向に連続させて形成される仮想の面となる。図16(B)に示すように、コイル83とコイル84はそれぞれ、略平行な一対の長辺部83a、84aと該一対の長辺部83a、84aを接続する一対の湾曲部83b、84bを有する細長形状の空芯コイルであり、一対の長辺部83a、84aが延びる長手方向の大きさや、一対の長辺部83a、84aを横断する横幅方向の大きさに比して、空芯部分が貫通する方向の厚みが小さい薄型の扁平コイルとなっている。永久磁石81の磁極境界線Q1とコイル83の一対の長辺部83aの延設方向が略平行で、永久磁石82の磁極境界線Q2とコイル84の一対の長辺部84aの延設方向が略平行である。コイル83とコイル84の互いの形状及び大きさは略同一である。コイル83とコイル84はそれぞれコイル支持部材87、88(図1、図2、図5から図7)に支持されている。
図12から図21に示すように、第1レンズ枠30は、第1レンズL1を内部に嵌合固定させる枠状のレンズ保持部40と、支持部41と、一対の磁石保持部(アクチュエータ支持部)42、43とを有している。支持部41と磁石保持部42、43はいずれも基準平面P2よりも左方(第2光軸O2に沿う反射後の光束の進行方向と反対側)の位置で枠状のレンズ保持部40に接続している。磁石保持部42、43は、第1光軸O1を中心とするレンズ保持部40の周方向において互いの位置を異ならせている。支持部41は、レンズ保持部40のうち磁石保持部42と磁石保持部43の間の周方向位置から後方に向けて延びる後方延出部(第1の延設部)41aと、後方延出部41aの後端付近から基準平面P2(第1光軸O1)に接近する方向に向けて延設される片持状のピボットアーム(第2の延設部)41bを有している。後方延出部41aの延設方向(前後方向)に対してピボットアーム41bの延設方向(左右方向)は略垂直の関係になっており、図4などから分かるように、支持部41は後方延出部41aとピボットアーム41bによる略L字状の形状を有する。ピボットアーム41bの先端には、後方に向けて突出するピボット凸部44が形成されている。ピボット凸部44は後方に進むにつれて径を小さくする先細の円錐状体であり、先端が滑らかな円球状(凸状球面)になっている。ピボットアーム41bの先端にはさらに、ピボット凸部44の突出方向と反対の前面側に湾曲面41cが形成されている。湾曲面41cは、前方に向けて凸となる球状の面として形成されており、湾曲面41bを含む球面の中心は揺動中心A1と一致する。
第1レンズ枠30の支持部41における後方延出部41aは、レンズ保持部40のうち最も左方に位置する部分から後方に向けて延設した脚部として形成されている。図4、図14(A)、図15、図16(A)、図17(A)及び図21(A)に示すように、後方延出部41aは、第1プリズムL11の左端部(入射面L11−aと反射面L11−cの間の稜線)よりも左方(基準平面P2から遠い側)に位置しており、図16(A)や図17(A)のように第1光軸O1に沿って見たときに、後方延出部41aが第1プリズムL11と重ならない。後方延出部41aのうち右方(基準平面P2側)に向く面は、レンズ保持部40の内周形状に対応した湾曲状の凹面として形成されている(図13、図14、図16(A)、図19(B))。一方、後方延出部41aのうち左方に向く面は、基準平面P2と略平行な平面になっている(図12、図15から図18、図20、図21)。後方延出部41aの後端には、前方から後方に進むにつれて徐々に右方に向けて延びる傾斜接続部41dが形成されており、傾斜接続部41dに続けてピボットアーム41bが形成されている(図4、図13、図14、図15、図16(B)、図17、図18、図19(B)、図20、図21)。後方延出部41aにはさらに、レンズ保持部40に接続する前端部分から傾斜接続部41dが形成されている後端部分に至るまでの範囲で、幅方向の両側に一対の補強リブ41eが形成されている(図13、図14、図15、図16(B)、図17、図19(B)、図21)。一対の補強リブ41eは、上下方向に離間して後方延出部41aの両側に沿って形成されており、レンズ保持部40の内径方向(基準平面P2に近づく方向)に向けて後方延出部41aの両側部分の肉厚を大きくさせている。
第1レンズ枠30の磁石保持部42と磁石保持部43はそれぞれ、レンズ保持部40から斜め後方に向けて突出形成されており、レンズ保持部40から離れて先端側(後方)に向かうにつれて第1光軸O1からの距離を大きくするように傾斜している。第1レンズ枠30が防振初期位置にある状態で、磁石保持部42と磁石保持部43が基準平面P1を挟んで略対称な位置関係となる。磁石保持部42に形成した凹部に永久磁石81が嵌合保持され、磁石保持部43に形成した凹部に永久磁石82が嵌合保持される。磁石保持部42と磁石保持部43はそれぞれ、保持する永久磁石81と永久磁石82を囲む方形の枠状部として形成されている。
第1レンズ枠30はさらに、支持部41における後方延出部41aの後端部(ピボットアーム41bの基部付近)にガイド部45を有している。図14、図15、図17、図18に示すように、ガイド部45は後方に向けて開放された溝部を有しており、一対の対向面45aが溝部の両側の壁面を構成している。一対の対向面45aは互いに略平行な平面であり、第1レンズ枠30が防振初期位置にある状態で、一対の対向面45aが基準平面P1を挟んで略対称に位置する。図18から図21に示すように、ピボット凸部44とガイド部45は前後方向において略同じ位置に設けられている。
ハウジング20のプリズム保持枠23aに保持された第1プリズムL11は、入射面L11−aが第1光軸O1上に位置して前方を向き、出射面L11−bが第2光軸O2上に位置して右方を向く。ハウジング20は、プリズム保持枠23aの左方と後方に挿入空間23bを有する。図5から図7に示すように、プリズム保持枠23aから後方に向けて一対の支持座25が突出しており、各支持座25の先端(後方を向く端部)には、支持座25よりもさらに後方に突出する円筒状の延長突出部26が設けられている。一対の支持座25と一対の延長突出部26は、基準平面P1を挟んだ一方と他方の領域に略対称の位置関係で配置されている。各支持座25の内部には前後方向へ軸線を向けたネジ孔25a(図6)が形成され、このネジ孔25aは延長突出部26の端面に開口している。支持座25及び延長突出部26に加えてさらに、プリズム保持枠23aから後方に向けてバネ支持突起27が突設されている(図4、図6及び図7)。また、プリズム保持枠23aの左側を向く面には、付勢アーム支持突起28とその両側に位置する一対の保持壁29が形成されている(図4から図7)。バネ支持突起27と付勢アーム支持突起28は基準平面P1上に位置し、一対の保持壁29は基準平面P1を挟んで略対称に位置している。
図4から図7に示すように、ハウジング20の挿入空間23b内に付勢アーム(付勢手段)36とコイルバネ(付勢手段)37が設けられる。付勢アーム36は、互いに略直交する関係の第1板状部36aと第2板状部36bで形成されるL字状をなし、第2板状部36bのうち第1板状部36aが接続する側と反対の端部に押圧段部36cを有する。押圧段部36cは、第2板状部36bと略平行な板状の部位であり、第2板状部36bに対して第1板状部36aの突出方向と反対方向へ段差状に突出している。第1板状部36aには第1係合孔36dが形成され、第2板状部36bには第2係合孔36eが形成されている。第1係合孔36dと第2係合孔36eはそれぞれ第1板状部36aと第2板状部36bの長手方向に延びる長孔となっている。第1板状部36aの端部には、第1板状部36aに対して略直角に曲げられた屈曲支持部36fが形成されている。
図4に示すように、第1係合孔36dに付勢アーム支持突起28を係合させ、支持突起27を第2係合孔36eに対して挿入させることにより、付勢アーム36がハウジング20のプリズム保持枠23aに支持される。図4と図7に示すように、付勢アーム36の組み付けに先立ってバネ支持突起27の外側にコイルバネ37が挿入される。ハウジング20に組み付けられた付勢アーム36は、第1板状部36aが第1光軸O1に沿う方向に延設されて概ね基準平面P2と平行に配置され、第2板状部36bが第2光軸O2と略平行に延設されて基準平面P1や基準平面P2に対して略垂直に配置される。押圧段部36cは、第2板状部36bよりも後方に位置して、基準平面P1や基準平面P2に対して略垂直に配置される。付勢アーム36のうち、第1板状部36aと第2板状部36bはいずれも基準平面P2よりも左方に位置しており、押圧段部36cが第1光軸O1の延長上に位置する(図4)。また、前後方向に軸線を向けたコイルバネ37の一端がプリズム保持枠23aの後面(バネ支持突起27の基端部)に当接し、コイルバネ37の他端が付勢アーム36の第2板状部36bに当接する。コイルバネ37はバネ支持突起27によって座屈や位置ずれが防止される。
付勢アーム36は、屈曲支持部36fを付勢アーム支持突起28に対して当接させ、この当接箇所を支点として押圧段部36cの位置を前後方向に変化させる揺動を行うことができる。コイルバネ37の付勢力によって、付勢アーム36は押圧段部36cを後方に押し出す方向に付勢される。付勢アーム36は、バネ支持突起27に対する第2係合孔36eの係合によって、ハウジング20に対する上下方向への移動が規制され、揺動以外の不要な動作が制限される。また、第1板状部36aの両側に位置する一対の保持壁29によって付勢アーム36が保護される。
図10と図11に示すように、センサホルダ31は、ベース板部60と、ベース板部60から前方に向けて突出形成された一対のセンサ支持突起61、62を有している。センサ支持突起61とセンサ支持突起62はそれぞれ、図8と図9のようにセンサホルダ31と第1レンズ枠30を組み合わせたときに、第1レンズ枠30の磁石保持部42と磁石保持部43に対向する傾斜面を有しており、この傾斜面上の凹部内にホールセンサ85とホールセンサ86が嵌合支持されている。ホールセンサ85とホールセンサ86は、撮像ユニット10を制御する制御回路(図示略)と電気的に接続され、ホールセンサ85とホールセンサ86の出力情報が制御回路に伝えられる。
センサホルダ31のベース板部60には、ハウジング20の一対の支持座25に対して取り付けられる一対の取付部63と、各取付部63に前後方向へ貫通形成した円形の遊嵌孔64と、一対の取付部63の間に位置するピボット凹部(球心揺動支持部)65及び回転規制突起66が形成されている。
ピボット凹部65は、第1レンズ枠30のピボット凸部44を嵌入させることが可能な擂鉢状内面を有する凹部であり、最も深い底部は、ピボット凸部44の先端形状に対応する球面形状(凹状球面)になっている。回転規制突起66は、ピボット凹部65に対して左方に偏心した位置に、該ピボット凹部65の径方向に軸線(長手方向)を向けて形成された棒状の突起である。回転規制突起66は軸線方向のいずれの位置でも略同一の断面形状を有しており、図4のようにピボット凹部65にピボット凸部44を嵌入させた状態で、第1レンズ枠30のガイド部45の一対の対向面45aの間に回転規制突起66が挿入される(図8、図9)。ガイド部45は回転規制突起66に対して、基準平面P1に沿う方向(撮像ユニット10の左右方向や前後方向)への相対移動(摺動)が可能であり、一対の対向面45aを結ぶ方向(撮像ユニット10の上下方向)への相対移動が規制される。
図5から図7に示すように、センサホルダ31は、一対の取付部63の前面をハウジング20の一対の支持座25に対向させて、後方から前方に向けて第1支持部23の挿入空間23b内に挿入される。後方支持板21の組付開口21aを通して挿入空間23b内にセンサホルダ31を挿入していくと、一対の支持座25の先端に設けた延長突出部26がそれぞれ対応の遊嵌孔64内に進入する。一対の支持座25の先端に一対の取付部63の前面が当接するまでセンサホルダ31を前方に挿入すると、センサホルダ31のそれ以上の前方への移動(挿入)が規制される。すなわち、第1光軸O1に沿う方向(撮像ユニット10の前後方向)でのセンサホルダ31の位置が決まる。一対の遊嵌孔64と一対の延長突出部26はそれぞれ径方向に所定の隙間をもって遊嵌するように互いの径が設定されており、一対の支持座25の先端に対して被固定部63を当て付けただけの状態では、センサホルダ31はハウジング20に対して、各遊嵌孔64の内縁と各延長突出部26の外周面との間のクリアランスにより許容される範囲内で、第1光軸O1と垂直な平面に沿う移動が可能である。
センサホルダ31は、図5から図7に示す一対の取付ネジ67を用いてハウジング20の挿入空間23b内に取り付けられる。取付ネジ67は、外周面にネジ山(雄ネジ)が形成された軸部67aと、軸部67aの一端に設けられ軸部67aよりも大径の頭部67bとを有し、頭部67bのうち軸部67aが突出する側の面に環状のワッシャ68を支持している。ワッシャ68は頭部67bよりも大径である。各支持座25の内部に形成されたネジ孔25aに対して後方から取付ネジ67の軸部67aを螺合させ、ワッシャ68と支持座25との間に取付部63を挟持することにより、ハウジング20の挿入空間23b内にセンサホルダ31が支持される。このセンサホルダ31の支持状態で、センサ支持突起61とセンサ支持突起62がプリズム保持枠23aの左方に位置し、ベース板部60がプリズム保持枠23aの後方に位置し、ベース板部60上に形成したピボット凹部65が第1光軸O1の延長上に位置する(図4)。回転規制突起66は、基準平面P1上と重なる位置にあってピボット凹部65の左方に位置する。センサホルダ31は、必要に応じて第1支持部23に対する位置調整を行った上で、ハウジング20に対して固定される。センサホルダ31の固定は、接着や取付ネジ67の締め付けなどの手法で行うことができる。
第1レンズ枠30はセンサホルダ31を介して支持される。図4に示すように、第1レンズ枠30は、ハウジング20のプリズム保持枠23aとセンサホルダ31のベース板部60の間にピボットアーム41bを位置させるようにして、支持部41を挿入空間23b内に挿入している。第1レンズ枠30はセンサホルダ31に対して、ピボットアーム41bに設けたピボット凸部44をセンサホルダ31のピボット凹部65に嵌入させると共に、ガイド部45に対して回転規制突起66を挿入させて支持される。この支持状態で、ピボットアーム41bのうちピボット凸部44と逆側の湾曲面41cが、付勢アーム36の押圧段部36cの後方を向く面に当接し、湾曲面41cは、コイルバネ37の付勢力に抗して付勢アーム36を前方に向けて押圧する。すると、コイルバネ37の反発力を受けた付勢アーム36によって湾曲面41cが後方に向けて押圧されてピボット凸部44の先端がピボット凹部65の底部に押し付けられる。その結果、第1レンズ枠30がセンサホルダ31に対して、球心揺動可能でありつつ安定して支持される。この第1レンズ枠30の支持状態で、第1レンズL1が第1プリズムL11の入射面L11−aの前方に位置する。また、図8と図9に示すように、磁石保持部42がセンサホルダ31のセンサ支持突起61に隣接し、磁石保持部43がセンサホルダ31のセンサ支持突起62に隣接して位置する。
ハウジング20に対して第1レンズ枠30とセンサホルダ31を組み付ける順序としては、ハウジング20の第1支持部23に対して先に第1レンズ枠30を前方から挿入しておき、続いてセンサホルダ31を後方から組み付けて取付ネジ67による締結を行うとよい。
図1、図2、図5から図7に示すように、カバー部材32は、ハウジング20の第1支持部23を前方から覆う形状を備えており、第1支持部23の上側、下側及び左側の3面を覆う側壁70と、第1支持部23の前面を覆う前壁71を有する。前壁71には第1レンズL1を露出させる撮影開口72が形成されている。側壁70には複数の係合孔73が形成され、前壁71には複数の係合孔74が形成されている。ハウジング20の第1支持部23には、複数の係合孔73に対して係合する複数の係合突起23cと、複数の係合孔74に対して係合する複数の係合突起23dが設けられており、カバー部材32を第1支持部23に被せて各係合孔73、74を各係合突起23c、23dに係合させて、カバー部材32がハウジング20に固定的に支持される。
カバー部材32の側壁70と前壁71の境界部分に2つのコイル取付部75が形成されている。図7に示すように、各コイル取付部75には、カバー部材32の内外を連通させる貫通孔が形成されている。2つのコイル取付部75に対してコイル支持部材87とコイル支持部材88が取り付けられ、各コイル取付部75に形成した貫通孔にコイル83とコイル84が挿入される。ハウジング20に対してカバー部材32を組み付けた状態では、コイル83が永久磁石81に対向し、コイル84が永久磁石82に対向して位置する(図16(B)参照)。撮像ユニット10を制御する制御回路によってコイル83とコイル84に対する通電が制御される。
第1レンズ枠30の外周部には、第1光軸O1を中心とする周方向に略等間隔で(90°間隔で)、4つの位置制限突起46が設けられている。第1レンズ枠30が防振初期位置にあるとき、左右方向に並ぶ一対の位置制限突起46が基準平面P1上に位置し、上下方向に並ぶ一対の位置制限突起46が基準平面P2上に位置する。カバー部材32の内側には、ハウジング20に組み付けた状態で第1レンズ枠30の4つの位置制限突起46に対向する4つの位置制限面76(図4から図7)が形成されている。なお、4つの位置制限面76のうち、撮像ユニット10の下方側の位置制限面76のみは図示されていない。
以上のように第1レンズL1の支持及び駆動に関する各部材をハウジング20に対して組み付けた状態では、ハウジング20と結合されたセンサホルダ31に対して、ピボット凸部44とピボット凹部65の嵌合部分を介して第1レンズ枠30が支持される(図4)。前述のように、ピボット凹部65は、センサホルダ31のベース板部60の前面側に開口し、深くなるにつれて徐々に径を小さくする円錐状内面を有する擂鉢状の凹部であり、最も深くなる底部は凹状球面になっている。この凹状球面は、揺動中心A1(図4)を中心とする球面の一部である。ピボット凸部44は、先端側に進むにつれて徐々に径を小さくする円錐状外面を有する凸部であり、先端部分は凸状球面になっている。この凸状球面は、揺動中心A1を中心とする球面の一部である。コイルバネ37によって付勢される付勢アーム36はピボット凸部44の先端をピボット凹部65の底部に押し付ける力を付与しており、ピボット凸部44とピボット凹部65の当接部分の案内を受けることによって(ピボット凸部44をピボット凹部65に対して傾動させることによって)、第1レンズ枠30は揺動中心A1を中心とする球心揺動が可能に支持される。ピボット凸部44の先端が揺動中心A1を中心とする球面の一部となっているため、この球心揺動は、揺動中心A1の位置を変化させずに、ピボット凸部44とピボット凹部65の接点位置を変化させながら行われる。図4から分かるように、ピボット凹部65の円錐状内面部分は、ピボット凸部44の円錐状外面部分よりも中心角を大きくした円錐状に形成されており、第1レンズ枠30の球心揺動を妨げることなく実行させることができる。また、ピボット凸部44とピボット凹部65の当接部分を揺動中心A1を中心とする球面の一部(前述の凸状球面と凹状球面)とし、かつピボットアーム41bの湾曲面41cを揺動中心A1を中心とする球面の一部としたことにより、第1レンズ枠30が球心揺動する際に付勢アーム36の押圧段部36cが前後方向に変位せず、コイルバネ37のバネ荷重が変化しない(前後方向に一定の荷重を付与し、かつ前後方向以外の方向に余分な荷重を発生させない)。これにより、電磁アクチュエータによる第1レンズ枠30の駆動制御に悪影響を及ぼさず、高い精度で安定した防振制御を実現できる。
ガイド部45と回転規制突起66は、第1レンズ枠30の球心揺動を許しつつ、第1レンズL1の光軸を中心とする第1レンズ枠30の回転を規制する回転規制手段である。ここでの第1レンズL1の光軸とは、防振初期位置の光軸(すなわち図示している第1光軸O1)と防振初期位置からの球心揺動を行った状態の光軸のいずれも含む。回転規制突起66は、第1光軸O1を延長した仮想線を中心とする半径方向へ軸線(長手方向)を向けており、ガイド部45の一対の対向面45aに挟まれている。回転規制突起66は、ガイド部45の一対の対向面に挟まれる部分を円筒状の外周面としている。そして、ガイド部45が回転規制突起66を挟むことによって、第1レンズL1の光軸を中心とする第1レンズ枠30の回転が規制される。第1レンズ枠30が防振初期位置にあるときには、第1レンズL1の光軸が図中の第1光軸O1と一致するため、ガイド部45と回転規制突起66は、第1光軸O1を中心とする第1レンズ枠30の回転を規制する。一方、球心揺動によって第1レンズ枠30が防振初期位置から傾いた状態にあるときは、傾いた第1レンズL1の光軸を中心とする第1レンズ枠30の回転が、ガイド部45と回転規制突起66によって規制される。
以上のように支持された第1レンズ枠30を球心揺動させる駆動手段は、永久磁石81とコイル83、永久磁石82とコイル84で構成した2つのボイスコイルモータからなる電磁アクチュエータである。第1レンズ枠30に対して、揺動中心A1を中心とする球心揺動を許しつつ、ガイド部45と回転規制突起66によって第1レンズL1の光軸を中心とする回転を規制したことにより、推力の作用方向が異なる2つのボイスコイルモータによって第1レンズ枠30を高精度にかつ安定して球心揺動させることができる。
第1レンズ枠30を球心揺動させる駆動手段の詳細を説明する。永久磁石81と永久磁石82はそれぞれ、揺動中心A1を中心とする共通の仮想球面の接平面に沿って平面的な広がりを有する扁平な形状を有している。コイル83とコイル84はそれぞれ、揺動中心A1を中心とする共通の仮想球面の接平面と平行な方向に導線を巻き回して形成された扁平コイルである。コイル83とコイル84、ホールセンサ85とホールセンサ86はそれぞれ、第1レンズ枠30の球心揺動に関わりなく、常に基準平面P1に関して略対称に配置されている。永久磁石81と永久磁石82は、第1レンズ枠30が防振初期位置にあるときに基準平面P1に関して略対称な配置となる。揺動中心A1を中心とする仮想の球体の径方向においては、揺動中心A1に近い内径側から順にホールセンサ85、永久磁石81、コイル83が並んで配置され、永久磁石81の磁界中にコイル83とホールセンサ85が位置する。また、揺動中心A1に近い内径側から順にホールセンサ86、永久磁石82、コイル84が並んで配置され、永久磁石82の磁界中にコイル84とホールセンサ86が位置する。
永久磁石81、82の磁界内に位置するコイル83、84に通電すると、フレミングの左手の法則によって、各永久磁石81、82の磁極境界線Q1、Q2と各コイル83、84の一対の長辺部83a、84aに対して垂直な方向への推力が生じる。コイル83、84はカバー部材32を介してハウジング20に対して固定的に支持されており、永久磁石81、82は可動の第1レンズ枠30に支持されているため、各コイル83、84の通電で生じた推力は、揺動中心A1を中心とする仮想球面に沿って第1レンズ枠30を移動させる力として作用する。永久磁石81とコイル83のセットと、永久磁石82とコイル84のセットは、第1光軸O1を中心とする周方向位置を異ならせて配置されているため、この2組のボイスコイルモータの通電制御の組み合わせによって、第1レンズ枠30を自在な方向に球心揺動させることができる。前述の通り、球心揺動に際して第1レンズL1の光軸を中心とする第1レンズ枠30の回転動作はガイド部45と回転規制突起66の嵌合によって規制される。また、第1レンズ枠30に設けた4つの位置制限突起46とカバー部材32に形成した4つの位置制限面76は、第1レンズ枠30の球心揺動の機械的な移動端を決めるストッパとして機能する。これにより、永久磁石81とコイル83、永久磁石82とコイル84がそれぞれ対向しなくなるような第1レンズ枠30の逸脱動作は防止され、常に確実に第1レンズ枠30の位置を制御することができる。
第1レンズ枠30の球心揺動に応じて永久磁石81が移動して磁界が変化すると、永久磁石81に対向して位置するホールセンサ85の出力が変化し、永久磁石82が移動して磁界が変化すると、永久磁石82に対向して位置するホールセンサ86の出力が変化する。この2つのホールセンサ85、86の出力変化によって、第1レンズ枠30の駆動位置を検出することができる。
以上の構成からなる撮像ユニット10を前方に位置する被写体に向けると、該被写体の反射光(撮影光)は第1レンズL1を透過した後に入射面L11−aから第1プリズムL11の内部に入り、第1プリズムL11の反射面L11−cによって出射面L11−b側に向けて進行方向を略垂直に変換される。第1プリズムL11の出射面L11−bを出た該反射光は、第2レンズL2と第2群G2と第3群G3と第4群G4を透過した後に入射面L12−aから第2プリズムL12の内部に入り、第2プリズムL12の反射面L12−cによって出射面L12−b側に向けて進行方向を略垂直に変換され、撮像センサ14の撮像面によって撮像(受光)される。レンズ駆動モータMを利用して第2群G2や第3群G3を第2光軸O2に沿って進退させることにより、撮像光学系にズーミング(変倍)動作及びフォーカシング動作を行わせることができる。
さらに撮像ユニット10では、第1群G1のうち第1プリズムL11の前方に位置する第1レンズL1を用いて防振(像振れ補正)動作を行う。前述の通り防振機構は、ハウジング20に対して固定関係にあるセンサホルダ31とカバー部材32に対して第1レンズ枠30を球心揺動させるものである。第1レンズL1を防振用の光学要素として選択することの利点として、防振機構を備えつつ撮像ユニット10を前後方向に薄型に構成することができる。例えば本実施形態と異なり、第2群G2や第3群G3を第2光軸O2と直交する方向に移動させる防振機構を想定した場合、2群枠20や3群枠21の移動用のスペースを確保したり、2群枠20や3群枠21の駆動手段を配置したりすることによって、ハウジング20内に必要とされる前後方向のスペースが図示実施形態よりも広くなり、撮像ユニット10の厚みが増してしまう。また本実施形態の構成では、防振制御に際して駆動されるのが第1群G1の全体ではなく第1レンズL1のみであるから、可動部がコンパクトで駆動負荷が小さくて済むという利点もある。一般的な防振機構ではレンズ群全体を駆動させるが、本実施形態の第1群G1では、パワーを有する第1レンズL1と第2レンズL2の間に、光束の反射のみを行う第1プリズムL11が配されているため、第1レンズL1と第2レンズL2の間の距離が大きくなっており、第1レンズL1を単独で移動させて防振制御を行なっても収差劣化が少ない。つまり、撮像光学系としては第1レンズL1から第2レンズL2までの第1群G1全体で収差が管理されるが、防振に関しては、第1プリズムL11を挟んで光軸方向間隔が大きくなっている第1レンズL1と第2レンズL2を実質的に別のレンズ群であるように扱っても光学性能を確保できることに着眼して、第1レンズL1のみを防振用の光学要素に設定している。
第1レンズL1が防振動作を行う際に行う球心揺動は、第1光軸O1に直交する平面に沿うシフト動作に比べて、第1光軸O1に沿って撮像ユニット10を正面視したときに小さいスペースで第1レンズL1を大きく動作させることができる。そのため、撮像ユニット10を前後方向のみならず上下左右方向(撮像ユニット10の正面視)においてもコンパクトに構成しながら、防振対応可能な角度を大きくさせて防振性能を向上させることができる。
特に撮像ユニット10では、第1レンズL1の背後に第1プリズムL11を配した屈曲光学系であることに着目して、第1レンズ枠30の球心揺動の支点となる揺動中心A1の位置を、第1プリズムL11の反射面L11−cの後方位置に設定している。これにより、第1プリズムL11の裏側を第1レンズ枠30の支持機構の設置スペースとして有効活用し、スペース効率に優れた構成で球心揺動を実現している。具体的には、ピボット凸部44(ピボットアーム41b)、ピボット凹部65(センサホルダ31)、付勢アーム36、コイルバネ37、ガイド部45、回転規制突起66(センサホルダ31)といった第1レンズ枠30の支持に関係する部位が第1プリズムL11の反射面L11−cの後方位置に集約して収められている。この反射面L11−cの後方位置は、光学系の光路の外側であるため、第1レンズ枠30の支持機構を設置しても光学的な悪影響は生じない。
また、第1レンズL1の防振駆動と制御に関わる永久磁石81、82、コイル83、84、ホールセンサ85、86は、基準平面P2を挟んだ左右の領域のうち、第1プリズムL11により偏向された光束の進行方向(第2光軸O2の進行方向)と逆側の左側の領域に配されている。この領域には、撮像光学系を構成する光学要素のうち第1プリズムL11から先の(第2レンズL2以降の)光学要素が配置されていないためスペース的な制約を受けにくく、永久磁石81、82、コイル83、84、ホールセンサ85、86の配置に適している。
加えて、第1プリズムL11から先の光路上(基準平面P2よりも右側の領域)には、第2光軸O2に沿って第2群G2や第3群G3を駆動させるためのモータMなどの金属製の部品が設けられており、このような金属部品が磁性体金属からなる場合、電磁アクチュエータに接近していると防振駆動に影響を及ぼすおそれがある。基準平面P2よりも左側の領域に永久磁石81、82やコイル83、84を配したことにより、第2群G2や第3群G3の支持駆動機構が磁性体金属を含んでいる場合も電磁アクチュエータの駆動に影響が及びにくいという効果がある。
以上の撮像ユニット10における第1レンズ枠30は、第1レンズL1を保持するレンズ保持部40に加えて、揺動中心A1を中心として球心揺動可能に支持される支持部41と、防振駆動用のアクチュエータを構成する永久磁石81、82を保持する一対の磁石保持部42、43を有している。防振駆動される第1レンズL1を高精度に位置管理して光学性能を確保するべく、第1レンズ枠30においては所定の強度が要求される。特に、レンズ保持部40から片持ち状に突出する形態の支持部41で十分な強度を得ることが求められる。また、撮像ユニット10の小型化に寄与するべく、レンズ保持部40から突出する支持部41と磁石保持部42、43をスペース効率良く配置することも求められる。これらの要求を満たす第1レンズ枠30の構成について説明する。
図4や図21(A)に示すように、第1プリズムL11は、撮像ユニット10の左方に進むにつれて徐々に入射面L11−aから反射面L11−cまでの距離(前後方向の厚み)を小さくしている。図4に示すように、バネ支持突起27、付勢アーム36の第2板状部36b及び押圧段部36c、コイルバネ37は、第1プリズムL11の厚みが小さくなる箇所(概ね、基準平面P2から第1プリズムL11の左端部までの左右方向の範囲)でプリズム保持枠23aの後面側に位置するように配置されている。特に、付勢アーム36のうち第1レンズ枠30に対して当接する押圧段部36cよりも左方にコイルバネ37を配したことにより、第1プリズムL11の厚みによる制約が少なくなり、コイルバネ37を前後方向に長くして付勢力を確保することが可能になっている。また、付勢アーム支持突起28や付勢アーム36の第1板状部36a及び屈曲支持部36fは、第1プリズムL11の左端部よりも左方に位置し、前後方向では第1プリズムL11の入射面L11−aから第2光軸O2の延長線の範囲に概ね収まっている。つまり、図4のような基準平面P1に沿う側断面において、前後の厚みが小さくなっている第1プリズムL11の左半部分(基準平面P2よりも左側の部分)の後方と左方のスペースを有効利用して、バネ支持突起27、付勢アーム支持突起28、付勢アーム36及びコイルバネ37が配されている。そして、付勢アーム支持突起28と付勢アーム36の第1板状部36aの左方に隙間を隔ててカバー部材32の左方の側壁70が位置し、バネ支持突起27、付勢アーム36の第2板状部36b及び押圧段部36c、コイルバネ37の後方に隙間を隔ててセンサホルダ31のベース板部60が位置しており、これらの左方と後方の隙間からなるL字状の空間が挿入空間23b内に形成されている。図4や図21に示すように、第1レンズ枠30の支持部41は、このL字状の空間に対応する屈曲した断面形状を有しており、支持部41を挿入空間23bに挿入した状態では、後方延出部41aが上記の左方の隙間内に位置し、ピボットアーム41bが上記の後方の隙間内に位置する。また、図4に示すように、バネ支持突起27は付勢アーム支持突起28よりも後方への突出量が大きく、第1レンズ枠30の傾斜接続部41dは、左方から右方に進むにつれて徐々に後方への突出量を大きくするように傾斜することで、バネ支持突起27と付勢アーム支持突起28に対する間隔を小さくしてスペース効率を高めている。以上のように、第1レンズ枠30の支持部41は、第1プリズムL11を支持するプリズム保持枠23aの周囲のスペースに効率的に収まる構成で、第1プリズムL11よりも前方に位置するレンズ保持部40と、第1プリズムL11の反射面L11−cの背後に位置するピボット凸部44を接続している。
前述のように、永久磁石81、82とこれを支持する磁石保持部42、43は、スペース効率や磁気の影響を考慮して基準平面P2よりも左方の領域に配置されている。図16のように第1光軸O1に沿って第1レンズ枠30を平面視すると、永久磁石81、82の互いの磁極境界線Q1、Q2は、基準平面P2から離れるにつれて基準平面P1に接近する関係になっており、永久磁石81と磁石保持部42のセットと、永久磁石82と磁石保持部43のセットが、基準平面P1に関して略対称な関係にある。図12から図15、図18から図21に示すように、磁石保持部42と磁石保持部43はそれぞれ、上下及び左右方向への傾きを伴いつつレンズ保持部40から後方に向けて突出されているが、図16や図17のように第1光軸O1に沿って見た場合(すなわち上下方向と左右方向の傾きに着目した場合)、レンズ保持部40に対して磁石保持部42と磁石保持部43はそれぞれ、各永久磁石81、82の磁極境界線Q1、Q2と略垂直な方向に突出している。つまり、第1光軸O1に沿って見ると、磁石保持部42と磁石保持部43は、基準平面P2から離れるにつれて基準平面P1からの距離を大きくするように突出している。このような突出方向に設定することで、第1光軸O1に沿って見た撮像ユニット10の正面形状において、第1レンズL1の円形をなす外縁部分とハウジング20の左方の両角部分との間に得られる一対の三角状のスペースを、永久磁石81、82やコイル83、84の配置スペースとして活用することができる(図2参照)。
第1光軸O1に沿って見たときの、レンズ保持部40に対する磁石保持部42と磁石保持部43の突出方向を示すものとして、第1光軸O1と略垂直な平面内で磁極境界線Q1に対して略直交する仮想線T1と、同平面内で磁極境界線Q2に対して略直交する仮想線T2を図16と図17に示した。なお、図16と図17では、第1光軸O1と交わる位置で仮想線T1、T2を示しているが、仮想線T1、T2は基準平面P1に沿う任意の位置に設定することができる。第1レンズ枠30では、基準平面P1に対して仮想線T1と仮想線T2が正逆に約60°の傾きとなるように、すなわち仮想線T1と仮想線T2の交差角が約120°となるように、磁石保持部42と磁石保持部43が形成されている。
図12から図21に示すように、第1レンズ枠30では、第1光軸O1を中心とするレンズ保持部40の周方向において、磁石保持部42と磁石保持部43の間に支持部41の後方延出部41aが設けられている。磁石保持部42と磁石保持部43の間に配した後方延出部41aは、永久磁石81、83や、その前後に位置するコイル83、84とホールセンサ85、86に対して干渉せずに前後方向に延設することができる(図8、図9参照)。後方延出部41aは、ピボットアーム41bに比して第1光軸O1を中心とする周方向の幅(特に上下方向の幅)が大きく、磁石保持部42と磁石保持部43の間の周方向領域の大部分を占める形になっている。後方延出部41aは、レンズ保持部40とピボットアーム41bを接続する脚部として機能する部位である。そのため、磁石保持部42と磁石保持部43の間で後方延出部41aを幅広に形成して高い剛性を持たせることで、支持部41を介した第1レンズL1の支持構造の強度を向上させ、防振動作を行う第1レンズL1を高精度に支持及び駆動させることができる。
磁石保持部42と磁石保持部43の間に後方延出部41aを設けた構造の第1レンズ枠30では、後方延出部41aの幅は磁石保持部42と磁石保持部43の周方向間隔による制約を受ける。磁石保持部42と磁石保持部43の周方向間隔は、図16と図17に示す仮想線T1、T2の交差角の増減に応じて変化させることができる。磁石保持部42と磁石保持部43の周方向間隔が広いほど(図16と図17に示す仮想線T1、T2の交差角を180°以内で大きくするほど)、後方延出部41aの幅を大きくさせるスペース的な余裕が生じる。しかし、仮想線T1、T2の交差角を大きくさせすぎると、レンズ保持部40に対する磁石保持部42と磁石保持部43の上下方向への突出量が増大して、撮像ユニット10が上下方向に大型化してしまうおそれがある。一方、磁石保持部42と磁石保持部43の周方向間隔が狭くなると(図16と図17に示す仮想線T1、T2の交差角を小さくするほど)、後方延出部41aを形成可能なスペースが制約される。また、仮想線T1、T2の交差角を過大または過小に設定すると、永久磁石81、82とコイル83、84からなる2つのアクチュエータによる適切な防振駆動を実行できなくなるおそれもある。磁石保持部42と磁石保持部43のスペース効率に優れた配置と、2つのアクチュエータによる高精度な防振駆動とを実現しつつ、後方延出部41aに十分な強度を持たせるための条件として、仮想線T1、T2の交差角を約90°から約120°程度の範囲で設定することが好ましい。
本実施形態のように仮想線T1、T2の交差角を約120°に設定すると、左方への磁石保持部42と磁石保持部43の突出量を小さく抑える効果が高くなる。具体的には、図16や図17に示すように、磁石保持部42、43の左端部が、第1レンズL1の周縁の最も左方の位置よりもわずかに左方に突出するに留まっている。別言すれば、本実施形態の磁石保持部42、43は、左方への突出量という点では限界近くまでコンパクト化が図られている。そして、図16や図17に示すように、第1レンズ枠30の後方延出部41aの左方を向く面を基準平面P2と略平行な平面とすることで、後方延出部41aの左方への突出量も小さく抑えられている。これにより、第1レンズ枠30全体として左方への突出量を小さく抑え、カバー部材32の左方の側壁70を基準平面P2に近づけることが可能になり、撮像ユニット10の左右方向のコンパクト化に寄与している。
図13や図14に示すように、第1レンズ枠30の後方延出部41aの右方を向く面は、第1レンズL1の外周形状に沿う湾曲した凹面として形成されている。この形状により、プリズム保持枠23aから左方に突出する付勢アーム支持突起28や付勢アーム36の一部(第1板状部36a、屈曲支持部36f)に対する後方延出部41aの干渉を防ぐことができる(図4参照)。図4に示すように、第1レンズ枠30を後方に向けて付勢する付勢手段を構成する付勢アーム36とコイルバネ37は、プリズム保持枠23aと後方延出部41aとピボットアーム41bに囲まれる空間内に位置するので、後方延出部41aのうち当該空間に臨む側を凹面として形成することで、付勢手段との干渉を防ぎつつ、支持部41の配置に関してより一層のスペース効率の向上を図ることができる。また、付勢アーム支持突起28や付勢アーム36と対向しない後方延出部41aの上下方向の両側部分に、レンズ保持枠40の内径方向への厚みを大きくした一対の補強リブ41eを形成することで、後方延出部41aの強度を向上させている。
図22から図38は、本発明の第2の実施形態に係る撮像ユニット(撮像装置)210とその構成要素を示している。撮像ユニット210は、先に説明した撮像ユニット10と共通の光学系(図3参照)を有しており、光学系の光軸(第1光軸O1から第3光軸O3)や、光軸によって定義される基準平面P1や基準平面P2については、撮像ユニット10と共通した内容を有するものとする。撮像ユニット210は、図3に示す光学系のうち、第2群G2、第3群G3、第4群G4、第2プリズムL12及び撮像センサ14を支持するメインハウジング(支持部材)220と、第1プリズムL11を支持するサブハウジング(支持部材)223とを、別体として形成した上で組み合わせている(図22)。メインハウジング220の左端部分に、サブハウジング223を所定の位置で支持する1群ユニット支持部221が形成されており、サブハウジング223は固定ネジ222を用いて1群ユニット支持部221に対して固定される。メインハウジング220の右端側に設けた第2支持部224には、撮像センサ14(図3)を支持する撮像センサ基板15、第2プリズムL12(図3)、第2群G2と第3群G3(図3)を駆動するモータMなどが支持される。
第1群G1とその支持機構からなる1群ユニットを分解した状態を図26と図27に示す。1群ユニットは、サブハウジング223、第1レンズ枠(可動部材)230、センサホルダ(支持部材)231、カバー部材232を有しており、これらは、第1の実施形態の撮像ユニット10における第1支持部23、第1レンズ枠30、センサホルダ31、カバー部材32に対応する構成要素である。また、第1の実施形態における付勢アーム36とコイルバネ37を合わせた機能を持つ付勢手段として付勢バネ(付勢手段)236を有している。
サブハウジング223は、第1プリズムL11を支持するプリズム保持枠(反射素子支持部)223aを有し、プリズム保持枠223aの左方や後方に挿入空間223bを有している。図24に示すように、サブハウジング223は、プリズム保持枠223aに隣接する位置に第2レンズL2を保持するレンズ保持枠223cを有している。
図28から図38に示すように、第1レンズ枠230は、第1レンズL1を保持する枠状のレンズ保持部240、レンズ保持部240から後方に突出する支持部241、永久磁石(アクチュエータ)281と永久磁石(アクチュエータ)282を保持する磁石保持部(アクチュエータ支持部)242と磁石保持部(アクチュエータ支持部)243を有している。図27、図29から図32、図34から図38に示すように、支持部241は、上下方向(第1光軸O1を中心とする周方向)に離間して位置して前後方向に延びる一対の後方延出部(第1の延設部)241aと、上下方向に延びて一対の後方延出部241aの後端を接続する橋絡部241bと、上下方向における橋絡部241bの中央付近から基準平面P2(図24、図33、図34、図37及び図38)に接近する方向に向けて延びる片持状のピボットアーム(第2の延設部)241cとを有している。一対の後方延出部241aの延設方向(前後方向)に対して、ピボットアーム241cの延設方向(左右方向)は略垂直な関係にある。ピボットアーム241cの先端には、後方に向けて突出するピボット凸部244と、ピボット凸部244の突出方向と反対の前方を向く湾曲面241dが形成されている。
第1レンズ枠230が防振初期位置(球心揺動による防振動作を行なっていない光学設計上の基準状態)にある状態で、一対の後方延出部241aが基準平面P1(図33から図36)を挟んで略対称な位置関係となる。そして、レンズ保持部240と一対の後方延出部241aと橋絡部241bにより囲まれる枠状の部分に、左右方向へ貫通する支持部開口241e(図24、図25、図27、図29から図32、図35、図36、図38)が形成される。
図27、図29から図32、図33(B)、図34に示すように、橋絡部241bのうち右方(基準平面P2側)を向く面には、ピボットアーム241cを挟んだ上下に一対の逃げ凹部241fが形成されている。逃げ凹部241fは湾曲した凹面として形成されている。
磁石保持部242と磁石保持部243はそれぞれ、レンズ保持部240から斜め後方に向けて突出形成されており、レンズ保持部240から離れて先端側(後方)に向かうにつれて第1光軸O1からの距離を大きくするように傾斜している。第1レンズ枠230が防振初期位置にある状態で、磁石保持部242と磁石保持部243が基準平面P1を挟んで略対称な位置関係となる。磁石保持部242に形成した凹部に永久磁石281が嵌合保持され、磁石保持部243に形成した凹部に永久磁石282が嵌合保持される。永久磁石281、282はそれぞれ、図28、図33及び図35に示す磁極境界線Q11、Q12を挟んだ一方の側にN極を有し他方の側にS極を有している。
センサホルダ231は、ベース板部260から前方に向けて突出する一対のセンサ支持突起261、262にそれぞれホールセンサ285、286(図26、図27)を支持している。サブハウジング223に設けた一対の支持座225に対して取付部263を当接させ、取付部263に形成した一対の貫通孔264にそれぞれ挿入した取付ネジ267を各支持座225のネジ孔225aに螺合させることで、センサホルダ231がサブハウジング223に対して固定的に支持される。
センサホルダ231のベース板部260の前面側には、ピボット凹部(球心揺動支持部)265が形成されている。図24や図25に示すように、ピボット凸部244をピボット凹部265に挿入することで、第1レンズ枠230が第1光軸O1の延長上の揺動中心A2(図24)を中心として球心揺動可能に支持される。第1レンズ枠230に形成した湾曲面241dは前方に向けて凸となる球状の面として形成されており、湾曲面241dを含む球面の中心は揺動中心A2と一致する。
センサホルダ231のベース板部260にはさらに回転規制孔266が形成されている。回転規制孔266は、ピボット凹部265に対して左方に偏心した位置に、該ピボット凹部265の径方向に長手方向を向けて形成された長孔である。第1レンズ枠30の支持部241には、回転規制孔266に挿入される回転規制ピン245が設けられている。図24や図25に示すように、回転規制ピン245は、基部が支持部241の橋絡部241b内に埋設されており、橋絡部241bから後方に向けて突出する球状外面の突出部を回転規制孔266に挿入させている。回転規制孔266を構成する一対の対向面(上下方向に離間する一対の平行な平面)によって回転規制ピン245の突出部が挟まれることで、第1光軸O1を中心とする第1レンズ枠230の回転が規制される。回転規制ピン245と回転規制孔266は、揺動中心A2を中心とする第1レンズ枠230の球心揺動自体を規制するものではない。
第1レンズ枠230は付勢バネ236によって後方に向けて付勢されて、ピボット凸部244をピボット凹部265に当接させた状態を維持する。図26と図27に示すように、付勢バネ236は、平板状の取付板部236aと、取付板部236aから突出する一対の弾性腕部236bと、一対の弾性腕部236bの先端に接続する押圧段部236cとを有している。取付板部236aには一対の小径孔236dと一つの大径孔236eが形成されており、一対の小径孔236dの間に大径孔236eが位置している。
図27に示すように、サブハウジング223のプリズム保持枠223aの左端付近にバネ支持部90が形成されている。バネ支持部90は後方に向く支持面90aを有し、支持面90aから後方に向けて突出する一対の小径突起90bと一つの大径突起90cが設けられる。一対の小径孔236dに一対の小径突起90bを挿入させ、大径孔236eに大径突起90cを挿入させて位置決めを行いつつ、支持面90aに対して取付板部236aを当接させることで、サブハウジング223に対して付勢バネ236が支持される。付勢バネ236は支持面90aと取付板部236aを接着して固定される。なお、付勢バネ236の固定の手法は接着に限られるものではなく、ネジによる固定(例えば、大径突起90cの位置にネジ孔を形成する)や、大径孔236eへの大径突起90cの圧入による固定なども採用可能である。
サブハウジング223のバネ支持部90に対して固定された付勢バネ236は、取付板部236aから一対の弾性腕部236bを後方に向けて突出させている。一対の弾性腕部236bは、図24のように側方(撮像ユニット210の上方や下方)から見たときに、取付板部236aから離れて押圧段部236cに近づく(後方に進む)につれて徐々に基準平面P2(第1光軸O1)に近づく傾斜を有している。一対の弾性腕部236bはさらに、取付板部236aに接続する箇所では上下方向の間隔が大きく、取付板部236aから離れて押圧段部236cに近づく(後方に進む)につれて、上下方向の間隔を小さくしており、押圧段部236cに接続する箇所で一対の弾性腕部236bの上下方向間隔が最小になる。そのため、撮像ユニット210の前方や後方から見た付勢バネ236は、取付板部236を底辺とし、一対の弾性腕部236bを等辺とした二等辺三角形に近い形状になる。図24に示すように、押圧段部236cは第1光軸O1の延長上に位置する。
付勢バネ236は薄板状の金属などの弾性変形可能な材質からなり、取付板部236aをサブハウジング223のバネ支持部90に固定した状態で、一対の弾性腕部236bを弾性変形させて押圧段部236cの前後方向位置を変化させることができる。図24や図25に示す1群ユニットの完成状態では、付勢バネ236の押圧段部236cが第1レンズ枠230のピボットアーム241cの湾曲面241dに当接する。押圧段部236cは第1光軸O1と略垂直な平面を湾曲面241dに当接させている。付勢バネ236の自由状態では、押圧段部236cが図24や図25に示す位置よりもわずかに後方に位置しており、湾曲面241dに当接すると押圧段部236cが前方に向けて押し込まれて一対の弾性腕部236bが弾性変形する。この弾性変形から復元しようとする力によってピボットアーム241cが後方に向けて付勢され、ピボット凸部244がピボット凹部265に対して押し付けられる。その結果、第1レンズ枠230が安定して支持される。押圧段部236cが当接する湾曲面241dは揺動中心A2を中心とする球面の一部であるため、第1レンズ枠230が球心揺動する際に付勢バネ236の荷重の大きさや向きが変化せず、高精度で安定した防振制御を実現できる。
カバー部材232は、側壁270と前壁271を有し、前壁271には第1レンズL1を露出させる撮影開口272が形成されている。側壁270に形成した複数の係合孔273をサブハウジング223に形成した係合突起223dに係合させて、カバー部材232がサブハウジング223に対して固定的に支持される。カバー部材232の内側には一対のコイル(アクチュエータ)283、284(図23)が支持されており、カバー部材232をサブハウジング223に取り付けると、図23のように、第1レンズ枠230に保持された永久磁石281と永久磁石282に対してコイル283とコイル284が対向する。図23に示すように、コイル283、284はそれぞれ一対の長辺部283a、284aと一対の湾曲部283b、284bを有し、一対の長辺部283aは永久磁石281の磁極境界線Q11(図28、図33及び図35)と略平行で、一対の長辺部284aは永久磁石282の磁極境界線Q12(図28、図33及び図35)と略平行である。コイル283への通電によって磁極境界線Q11と長辺部283aに対して垂直な方向への推力が生じ、コイル284への通電によって磁極境界線Q12と長辺部284aに対して垂直な方向への推力が生じる。これらの推力は、揺動中心A2を中心とする仮想球面に沿って第1レンズ枠230を球心揺動させる力として作用する。第1レンズ枠230の球心揺動による磁界の変化をホールセンサ285、286で検出して、第1レンズ枠230の防振駆動が制御される。
撮像ユニット210で第1レンズ枠230に球心揺動を行わせる以上の構造は、回転規制ピン245と回転規制孔266による回転規制手段や、その他の部材の細部形状などにおいて若干の相違があるが、基本的には先の実施形態の撮像ユニット10における第1レンズ枠30の球心揺動の構造と共通している。続いて、第1レンズ枠230の詳細構造(特に支持部241と磁石保持部242、243の配置)について説明する。
第1の実施形態の第1レンズ枠30と同様に、第1レンズ枠230では、永久磁石281、282を支持する磁石保持部242、243が基準平面P2よりも左方の領域に配置され、図33のように第1光軸O1に沿って平面視すると、永久磁石281、282の互いの磁極境界線Q11、Q12は基準平面P2から離れるにつれて基準平面P1に接近する関係になっている。第1光軸O1と略垂直な平面内で磁極境界線Q11に対して略直交する仮想線T11と、同平面内で磁極境界線Q12に対して略直交する仮想線T2を図33と図34に示した。第1光軸O1に沿って見たとき、磁石保持部242はレンズ保持部240から仮想線T11に沿う方向へ突出し、磁石保持部243はレンズ保持部240から仮想線T12に沿う方向へ突出している。つまり、第1光軸O1に沿って見ると、磁石保持部242と磁石保持部243は基準平面P2から離れるにつれて基準平面P1から離れる傾きを有している。そして、永久磁石281と磁石保持部242のセットと、永久磁石282と磁石保持部243のセットは、基準平面P1に関して略対称な関係にある。
第1の実施形態の第1レンズ枠30では、第1光軸O1に沿って見たとき、磁石保持部42、43が交差角約120°の仮想線T1、T2に沿ってレンズ保持部40から突出している(図16、図17)。これに対し、第1レンズ枠230では、レンズ保持部240からの磁石保持部242、243の突出方向である仮想線T11と仮想線T12の交差角は約60°であり、基準平面P1に対して仮想線T11、T12が正逆に約30°の傾きとなっている。そのため、レンズ保持部240の周方向における磁石保持部242と磁石保持部243の間隔が小さくなっている。図33や図34から分かるように、撮像ユニット10の上下方向での磁石保持部242と磁石保持部243の位置は概ねレンズ保持部240の上下方向幅の内側に収まっており、第1レンズ枠230の上下方向に磁石保持部242、243が突出しないので、上下方向での撮像ユニット210のコンパクト化に寄与する。その一方、上下方向での磁石保持部242と磁石保持部243の間のスペースが制約されるため、図37や図38に示すように、磁石保持部242と磁石保持部243よりも基準平面P2に近い位置に支持部241の一対の後方延出部241aを設けている。第1光軸O1を中心とする周方向において、一対の後方延出部241aは磁石保持部242、243よりも広い間隔で配置されており、一対の後方延出部241aの間に磁石保持部242、243が位置している。
図24に示すように、支持部241で一対の後方延出部241aの周方向間隔を大きくさせたことに応じて、各後方延出部241aが設けられる左右方向位置は、第1プリズムL11やバネ支持部90や付勢バネ236と部分的に重なっている。そのため、これらの要素を支持するプリズム保持枠223aと干渉しないように、図33や図34に示すように第1光軸O1に沿って見て、第1プリズムL11の両側を通るように上下方向に離間させて一対の後方延出部241aが形成されている。具体的には、図30、図32、図34(A)、図35(A)、図36(A)に示すように、一対の後方延出部241aの上下方向間隔を、第1プリズムL11(プリズム保持枠223a)の一対の側面L11−dの間隔(第1プリズムL11の上下方向幅)よりも大きく設定している。レンズ保持部240は、大径の第1レンズL1を保持するべく第1プリズムL11の上下方向幅よりも大きい径を有しているので、第1レンズ枠230を上下方向に大型化させることなく、レンズ保持部240の後面から各後方延出部241aを延設させることで第1プリズムL11の両側面L11−dを挟んだ位置に一対の後方延出部241aを配することができる。そして、上下方向に離間する一対の後方延出部241aを橋絡部241bで接続した上で、橋絡部241bからピボットアーム241cを延設させることにより、ピボット凸部244を第1光軸O1の延長上に位置させている。図33(B)や図34から分かるように、第1光軸O1に沿って見ると、橋絡部241bは、レンズ保持部240の周縁形状を外接円とする多角形の一辺に相当する配置になる。図24、図25、図30、図32(A)、図37(A)に示すように、橋絡部241bとピボットアーム241cは、第1プリズムL11の反射面L11−c(プリズム保持枠223a)の後方の空間に挿入される。そして、レンズ保持部240と一対の後方延出部241aと橋絡部241bにより囲まれる支持部開口241e内に、第1プリズムL11の左端付近やプリズム保持枠223aのバネ支持部90が進入する。
以上の構成の第1レンズ枠230は、図26から図32、図34に示すように、支持部241における一対の後方延出部241aがそれぞれ、レンズ保持部240の一部を後方に向けて延長した部分的な円筒形状に近い構成を有しており、レンズ保持部240の後方にスペース効率良く配置されていると共に、後方延出部241a単体での断面強度も確保されている。そして、各後方延出部241aの延設方向(前後方向)とピボットアーム241cの延設方向(左右方向)のいずれに対しても略垂直な方向(上下方向)に延びる梁状の橋絡部241bによって一対の後方延出部241aを接続することで、支持部241全体としての剛性が向上する。このように、第1プリズムL11(プリズム保持枠223a)を挟む位置で上下方向に離間させて設けた一対の後方延出部241aを橋絡部241bで接続した枠状の構造としたことにより、磁石保持部242と磁石保持部243の周方向間隔の狭さに制約されずに支持部241の強度を確保して、防振動作を行う第1レンズL1を高精度に支持することができる。また、第1プリズムL11やプリズム保持枠223aに対する支持部241の干渉を支持部開口241eによって防ぐことで、第1プリズムL11の周囲に支持部241をスペース効率良く配置し、第1レンズ枠230のコンパクト化を図ることができる。
支持部241を構成する橋絡部241bのうち、ピボットアーム241cが接続する長手方向(上下方向)の中央部分は、回転規制ピン245の基部を埋設する長さを確保するために、ピボットアーム241cよりも前方へ突出した形状になっている(図24、図25、図29、図36(B)、図38)。付勢バネ236の一対の弾性腕部236bは、この橋絡部241bの中央における前方突出部分を挟んだ上方と下方のスペースを通って延びている(弾性腕部236bのうち図24に破線で示す部分を参照)。これにより、第1レンズ枠230の支持部241は、第1プリズムL11やバネ支持部90に加えて付勢バネ236に対しても干渉せず、付勢バネ236をスペース効率良く収めることができる。
また、1群ユニットを組んだ状態では、橋絡部241bがサブハウジング223の一対の支持座225に近接して位置される。橋絡部241bに形成した一対の逃げ凹部241fは、第1レンズ枠230が球心揺動を行ったときに一対の支持座225に接触することを防ぐ干渉防止形状として機能する。
前述のように、図示の第1レンズ枠230は、第1光軸O1に沿って見たときに、レンズ保持部240からの磁石保持部242と磁石保持部243の突出方向を示す仮想線T11と仮想線T12の交差角が約60°である。支持部241のような支持構造を備えた場合、仮想線T11と仮想線T12の交差角を約60°から約90°の範囲で設定することが好ましい。仮想線T11と仮想線T12の交差角が60°を下回ると、永久磁石281と永久磁石282を含む2つのアクチュエータが接近しすぎて、適切な防振駆動を実行できなくなるおそれがある。また、仮想線T11と仮想線T12の交差角が90°を上回ると、第1の実施形態のように2つの磁石保持部42、43の間に支持部41の後方延出部41aを配する方が、スペース効率と強度の両立の観点から合理的な構成となる。
以上、図示実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は図示実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で改変することができる。例えば、第1の実施形態の撮像ユニット10では、第1プリズムL11を保持するハウジング20と、第1レンズ枠30を球心揺動可能に支持するピボット凹部65を有するセンサホルダ31を別体として形成した上で組み合わせている。この構成は、第1レンズ枠30、付勢アーム36、コイルバネ37などの組み付け作業性を行い易いという点で優れているが、第1レンズ枠30を球心揺動可能に支持する支持部材の形態はこれに限られるものではなく、ハウジング20とセンサホルダ31を一体的に形成するような形態にも適用が可能である。同様の観点で、第2の実施形態の撮像ユニット210において、サブハウジング223とセンサホルダ231を一体的に形成するような形態も選択可能である。
また、センサホルダ31、231に対して第1レンズ枠30、230を球心揺動可能にする支持構造として、図示実施形態と異なる構成を選択することができる。例えば、図示実施形態とは逆に、ピボット凸部44、244に相当する凸部をセンサホルダ31、231に設け、ピボット凹部65、265に相当する凹部を第1レンズ枠30、230に設けることも可能である。また、ピボット凹部65、265のような凹部ではなく、第1光軸O1と垂直な平面に対して、ピボット凸部44、244に相当する凸部を当接させる構成でも第1レンズ枠30、230を球心揺動させることができる。この場合も、第1レンズ枠30、230とセンサホルダ31、231のいずれに凸部と平面を設けるかを任意に選択することができる。
図示実施形態の撮像光学系は、光路を屈曲させる反射素子としてプリズムを用いているが、プリズムに代えてミラーなどを反射素子として用いてもよい。さらに、撮像光学系に第2プリズムL12を含まず光路をL字状としたタイプの撮像装置にも適用が可能である。あるいは、第1プリズムL11と第2プリズムL12に加えてさらに別の反射素子を有する屈曲光学系の撮像装置も適用対象となる。いずれの場合も反射素子による光軸の屈曲角度(反射角)は90°以外の値であってもよい。
また、反射素子(実施形態の第1プリズムL11に相当する)の物体側に位置して防振動作を行う前方レンズについては、図示実施形態のような単レンズ以外に、複数枚のレンズで構成することも可能である。
図示実施形態の第1レンズL1は周縁の一部を切り欠いたDカット形状をなしており、第2光軸O2に沿う方向における小型化に寄与している。しかし、本発明における前方レンズの正面形状はこれに限定されるものではなく、正面視してDカット以外の形状をなす(例えば円形の)前方レンズを備えた撮像装置にも適用が可能である。
また、本発明は第1レンズ枠30を球心揺動させる駆動手段を限定するものではなく、高速な防振駆動に対応可能という条件を満たすものであれば、ボイスコイルモータ以外のアクチュエータを用いることも可能である。アクチュエータとしてボイスコイルモータを用いる場合、図示実施形態のように可動部材である第1レンズ枠30、230に永久磁石81、82や永久磁石281、282を支持したムービングマグネットタイプのボイスコイルモータに代えて、第1レンズ枠30、230にコイル82、84やコイル283、284を支持したムービングコイルタイプのボイスコイルモータを採用することもできる。ムービングコイルタイプでは、固定の支持部材(ハウジング20、カバー部材32、メインハウジング220、サブハウジング223、カバー部材232)に永久磁石81、82や永久磁石281、282を支持させる。
図示実施形態の第1レンズ枠30、230では、支持部41、241を構成するピボットアーム41b、241cが、前後方向に延びる後方延出部41a、241aに対して略垂直(左右方向)に延設されているが、ピボットアーム41b、241cが前後方向に若干の傾きを伴いつつ左右方向に延設されるような構成にすることも可能である。