JP6482793B2 - 徐放剤用吸水性剤及びその製造方法 - Google Patents

徐放剤用吸水性剤及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、徐放剤用吸水剤及びその製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤であって、徐放剤に用いられる特定の吸水性能を有する粒子状吸水剤及びその製造方法に関する。
ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂は、オムツに代表される水分を吸収する材(衛生材)として用いられるほかに、芳香剤や消臭剤等のように予め所定の薬剤を吸収させておき、徐々に放散させる徐放剤にも用いられている。
前記衛生材用途の場合には、吸収した水分を保持しておく機能が求められるのに対して、前記徐放剤用途では、予め吸収させた薬剤を長期間にわたり一定濃度で放出する機能が求められている。
特許文献1では、pH調整剤を含む亜塩素酸塩水溶液を架橋ポリアクリル酸塩系の高吸水性樹脂に添加し、淡黄色のゲル状組成物を得ることが開示されている。また、特許文献2では、大量の薬剤を吸収させ、かつその揮散量を安定化させるために、酸基の一部がオニウムカチオンで置換された架橋体を用いることが開示されている。
しかし、従来の吸水性樹脂では、前記徐放剤用途において、薬剤を吸水性樹脂に均一に吸収させることと、長期間にわたり安定的に薬剤を放散させることとを、両立させるためには不十分であった。
特開平11−278808号公報 特開2004−000581号公報
本発明の課題は、前記徐放剤用途において、薬剤を素早く均一に吸収し、更に長期間安定的に薬剤を放散させることの出来る、吸水剤及びその製造方法を提供することである。
従来、吸水性樹脂はその高い吸水性能に着目されて使用されてきたが、本発明者らは、使用直前に薬剤又は薬剤溶液と吸水性樹脂とを混合する徐放剤用途において、完全に吸水するよりも、適度に吸水しない状態を保つほうが好ましいことを見出し、更に該状態を示す、粒子間空隙液保持能力を測る方法をも見出し、本発明を完成させた。
つまり、前記用途においては、薬剤を素早く吸収し、かつ吸収したゲル粒子間に適度に薬剤を保持する吸水剤が求められていることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、吸収速度0.18[g/g/s]以上で、ゲル粒子間空隙液保持能力80%以上であり、薬剤液吸収量が41以上であるポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を用いた徐放剤である。
本発明の吸水剤は、薬剤を素早く吸収し、かつ吸収後のゲル粒子間の隙間に薬剤が保持されるため、特に、使用直前に薬剤と吸水剤とを混合する徐放剤用途において好適に用いることが出来る。
〔1〕用語の定義
(1−1)「吸水剤」
本発明における「吸水剤」とは、下記吸水性樹脂を80質量%、好ましくは90質量%以上含有する水性液のゲル化剤である。吸水性樹脂以外に、水、無機粒子等を0〜20質量%含んでいる。
(1−2)「吸水性樹脂」
本発明における「吸水性樹脂」とは、水膨潤性水不溶性の高分子ゲル化剤を意味し、以下の物性を有するものをいう。即ち、「水膨潤性」の指標として、ERT441.2−02(2002)で規定されるCRC(無加圧下吸水倍率)が5(g/g)以上、及び、「水不溶性」の指標として、ERT470.2−02(2002)で規定されるExt(水可溶分)が50重量%以下の物性を有する高分子ゲル化剤を意味する。
上記吸水性樹脂は、その用途に応じて適宜、設計が可能であり、特に限定されないが、カルボキシル基を有する不飽和単量体を架橋重合させた親水性架橋重合体であることが好ましい。また、全量(100重量%)が重合体である形態に限定されず、上記物性(CRC、Ext)を満足する範囲内で、添加剤等を含んだ吸水性樹脂組成物であってもよい。
更に、本発明における吸水性樹脂は、最終製品に限らず、吸水性樹脂の製造工程における中間体(例えば、重合後の含水ゲルや乾燥後の乾燥重合体、表面架橋前の吸水性樹脂粉末等)を指す場合もあり、これら全てを包括して「吸水性樹脂」と総称する。
なお、吸水性樹脂の形状としては、シート状、繊維状、フィルム状、粒子状、ゲル状等が挙げられるが、本発明では粒子状の吸水性樹脂が好ましい。
(1−3)「ポリアクリル酸(塩)」
本発明における「ポリアクリル酸(塩)」とは、グラフト成分を任意に含み、繰り返し単位として、アクリル酸及び/又はその塩(以下、「アクリル酸(塩)」と称する)を主成分とする重合体を意味する。
なお、「主成分」とは、アクリル酸(塩)の含有量(使用量)が、重合に用いられる単量体(内部架橋剤を除く)全体に対して、通常50〜100モル%、好ましくは70〜100モル%、より好ましくは90〜100モル%、更に好ましくは実質100モル%であることをいう。また、重合体としてのポリアクリル酸塩は、水溶性塩を必須に含み、好ましくは一価の塩、より好ましくはアルカリ金属塩又はアンモニウム塩を含む。
(1−4)「EDANA」及び「ERT」
「EDANA」とは、欧州不織布工業会(European Disposables and Nonwovens Associations)の略称であり、「ERT」とは、欧州標準の吸水性樹脂の測定法(EDANA Recommended Test Methods)の略称である。本発明では、特に断りのない限り、ERT原本(2002年改定)に準拠して、吸水性樹脂の物性を測定する。
(a)「CRC」(ERT441.2−02)
「CRC」は、Centrifuge Retention Capacity(遠心分離機保持容量)の略称であり、無加圧下吸水倍率(「吸水倍率」と称することもある)を意味する。具体的には、不織布中の吸水性樹脂0.2gについて、大過剰の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液に対して、30分間自由膨潤させた後、遠心分離機(250G)で水切りした後の吸水倍率(単位;g/g)である。
(b)「Ext」(ERT470.2−02)
「Ext」は、Extractablesの略称であり、水可溶分を意味する。具体的には、吸水性樹脂1.0gについて、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液200mlに対して、500rpmで16時間攪拌した後の溶解したポリマー量をpH滴定で測定した値(単位;重量%)である。
(c)「AAP」(ERT442.2−02)
「AAP」は、Absorption Against Pressureの略称であり、加圧下吸水倍率を意味する。具体的には、吸水性樹脂0.9gについて、大過剰の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液に対して、1時間、2.06kPa(0.3psi)荷重下で膨潤させた後の吸水倍率(単位;g/g)である。なお、本明細書では、荷重条件を4.83kPa(0.7psi)に変更して測定した。
(d)「Residual Monomers」(ERT410.2−02)
「Residual Monomers」は、吸水性樹脂中に残存する単量体(モノマー)量(以下、「残存モノマー」と称する)を意味する。具体的には、吸水性樹脂1.0gについて、0.9重量%塩化ナトリウム水溶液200mlに対して、500rpmで1時間攪拌した後の溶解した残存モノマー量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定した値(単位;ppm)である。
(e)「Moisture Content」(ERT430.2−02)
「Moisture Content」は、吸水性樹脂の含水率を意味する。具体的には、吸水性樹脂4.0gについて、105℃で3時間乾燥した際の乾燥減量から算出した値(単位;重量%)である。なお、本明細書では、吸水性樹脂を1.0g、乾燥温度を180℃に変更して測定した。
(f)「PSD」(ERT420.2−02)
「PSD」とは、Particle Size Disributionの略称であり、ふるい分級により測定される粒度分布を意味する。なお、質量平均粒子径(D50)及び粒子径分布幅は欧州公告特許第0349240号明細書7頁25〜43行に記載された「(1) Average Particle Diameter and Distribution of Particle Diameter」と同様の方法で測定する。
(1−5)「通液性」
吸水性樹脂の「通液性」とは、荷重下又は無荷重下での膨潤ゲルの粒子間を通過する液の流れ性のことをいい、代表的な測定方法として、SFC(Saline Flow Conductivity/生理食塩水流れ誘導性)や、GBP(Gel Bed Permeability/ゲル床透過性)がある。
「SFC(生理食塩水流れ誘導性)」は、2.07kPa荷重下での吸水性樹脂に対する0.69重量%塩化ナトリウム水溶液の通液性をいい、米国特許第5669894号に開示されるSFC試験方法に準拠して測定される。
「GBP(ゲル床透過性)」とは、荷重下又は自由膨潤での吸水性樹脂に対する0.9重量%塩化ナトリウム水溶液の通液性をいい、国際公開第2005/016393号に開示されるGBP試験方法に準拠して測定される。
(1−6)その他
本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上、Y以下」を意味する。また、特に注釈のない限り、重量の単位である「t(トン)」は「Metric ton(メトリック トン)」を意味し、「ppm」は「重量ppm」又は「質量ppm」を意味する。更に、「重量」と「質量」、「重量部」と「質量部」、「重量%」と「質量%」は同義語として扱う。また、「〜酸(塩)」は「〜酸及び/又はその塩」、「(メタ)アクリル」は「アクリル及び/又はメタクリル」をそれぞれ意味する。
また、便宜上、「リットル」を「l」又は「L」、「重量%」を「wt%」と記すことがある。更に、微量成分の測定を行う場合において、検出限界以下をN.D(Non Detected)と表記する。
〔2〕吸水剤の製造方法
以下に、本発明にかかわる吸水剤の製造工程(2−1)〜(2−9)について示す。
(2−1)単量体水溶液の調製工程
本工程は、アクリル酸(塩)を主成分として含む水溶液(単量体水溶液)を調製する工程である。なお、単量体水溶液の代わりに、吸水物性を下げない程度に単量体のスラリーを用いてもよいが、便宜上単量体水溶液として説明する。
(アクリル酸)
本発明では公知のアクリル酸が使用でき、このようなアクリル酸には通常重合禁止剤や不純物等の微量成分が含まれている。重合禁止剤としてはフェノール類が好ましく、メトキシフェノール類がより好ましい。また、その濃度は重合性や吸水性樹脂の色調から1〜200ppmが好ましく、10〜160ppmがより好ましい。不純物としては例えば米国特許公開公報第2008/0161512号明細書が参照される。
(併用される単量体)
本発明において、アクリル酸(塩)と共に他の単量体を併用することもできる。当該他の単量体としては、水溶性または疎水性の不飽和単量体が挙げられ、より具体的には、米国特許出願公開第2005/215734号段落[0035]に記載の単量体(ただしアクリル酸を除く)が挙げられる。なお、本発明に係る吸水性樹脂には、上記水溶性又は疎水性の不飽和単量体を共重合成分とするものも含まれる。
本発明で用いられる重合して吸水性樹脂となる単量体成分の例としては、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、ビニルスルホン酸、アリルトルエンスルホン酸、ビニルトルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルフォスフェート等の、アニオン性不飽和単量体及びその塩;メルカプタン基含有不飽和単量体;フェノール性水酸基含有不飽和単量体;(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有不飽和単量体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有不飽和単量体が挙げられる。これら単量体は単独で用いてもよく、適宜2種類以上を混合して用いてもよいが、得られる吸水性樹脂の性能やコストの点から、アクリル酸及び/又はその塩(例えば、ナトリウム、リチウム、カリウム、アンモニウム、アミン類等の塩、中でもコスト面からナトリウム塩が好ましい)を主成分として用いることが必要である。好ましくは、アクリル酸及び/又はその塩が架橋剤を除く全単量体成分に対して70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上であり、上限は100モル%である。
(塩基性組成物)
本発明で得られる吸水性樹脂は、アクリル酸(塩)を架橋重合したポリアクリル酸(塩)であるが、当該ポリアクリル酸(塩)を得るために、アクリル酸を塩基性組成物で中和する工程(中和工程)を有することが好ましい。なお、本発明において「塩基性組成物」とは、塩基性化合物を含有する組成物を意味する。
上記塩基性化合物としては、例えば、アルカリ金属の炭酸(水素)塩、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、有機アミン等が挙げられるが、より高物性の吸水性樹脂を得るためには、強アルカリ性物質、即ち、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウムが特に好ましい。
(中和工程)
本発明の中和工程として、単量体としてのアクリル酸に対する中和、又は、アクリル酸を架橋重合して得られる含水ゲル状架橋重合体に対する中和(後中和工程)が含まれる。いずれの場合であっても、中和工程は連続式でもバッチ式でも適用することができるが、好ましくは連続式である。好ましい装置、塩基性組成物、温度条件、滞留時間等の中和条件については、国際公開第2009/123197号や米国特許出願公開第2008/0194863号に開示された内容が好ましく適用される。
なお、本発明における中和率としては、単量体水溶液中の酸基に対して、10〜90モル%が好ましく、40〜85モル%がより好ましく、50〜80モル%が更に好ましく、60〜75モル%が特に好ましい。上記中和率が10モル%未満の場合、無加圧下吸水倍率(CRC)が著しく低下することがあり、一方、中和率が90モル%を超える場合、加圧下吸水倍率(AAP)の高い吸水性樹脂が得られないことがあり好ましくない。重合後に中和を行う場合、更には最終製品の吸水性樹脂の中和率についても同様である。また、本発明において、アクリル酸塩は実質一価塩であるが、極少量(例えば、0〜5モル%程度)、多価金属塩として中和してもよい。
(内部架橋剤)
本発明で使用される内部架橋剤としては、アクリル酸と反応しうる置換基を2個以上もつ化合物であり、例えば米国特許第6241928号の第14カラムに記載の架橋剤が挙げられる。これらのうち、1種又は2種以上が用いられる。なお、得られる吸水性樹脂の吸水特性等を考慮して、2個以上の重合性不飽和基を有する化合物、さらには後述の乾燥温度程度で熱分解性をもつ化合物、特に(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを重合時に用いることが好ましい。
架橋剤としては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、N,N´−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、イソシアヌル酸トリアリル、トリメチロールプロパンジ(メタ)アリルエーテル、トリアリルアミン、テトラアリロキシエタン、グリセロールプロポキシトリアクリレート等の1分子中にエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルアルコール、ジエタノールアミン、トリジエタノールアミン、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ペンタエリスリトール、ソルビット、ソルビタン、グルコース、マンニット、マンニタン、ショ糖、ブドウ糖などの多価アルコール;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル;エピクロロヒドリン、α−メチルクロルヒドリン等のハロエポキシ化合物;グルタールアルデヒド、グリオキザール等のポリアルデヒド;エチレンジアミン等のポリアミン類;水酸化カルシウム、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、塩化硼砂マグネシウム、酸化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化亜鉛および塩化ニッケル等の周期律表2A族、3B族、8族の金属の水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、酸化物、硼砂等の硼酸塩、アルミニウムイソプロピラート等の多価金属化合物等が挙げられ、これらの1種または2種以上を、反応性を考慮した上で用いることができるが、1分子中にエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物を、架橋剤として用いるのが最も好ましい。
上記内部架橋剤の使用量は、単量体に対して、0.005〜2モル%が好ましく、0.01〜1モル%がより好ましく、0.05〜0.5モル%が更に好ましい。内部架橋剤の使用量を上記範囲とすることで、所望する吸水特性が得られる。
なお、本発明では重合前に内部架橋剤を添加して架橋する方法以外に、重合中や重合後に内部架橋剤を添加して後架橋する方法や、ラジカル重合開始剤でラジカル架橋する方法、電子線等による放射線架橋する方法等を採用することもできるが、予め所定量の内部架橋剤を単量体に添加して重合を行い、重合と同時に架橋反応させる方法がより好ましい。
(その他単量体に添加する物質)
本発明においては、単量体水溶液を調製する際に、上述した物質以外に下記の物質を添加することもできる。具体的には、吸水性樹脂の諸物性を改善することを目的として、水溶性樹脂又は吸水性樹脂を好ましくは0〜50重量%、より好ましくは0〜20重量%を添加したり、各種の発泡剤(例えば、炭酸塩、アゾ化合物、気泡等)、界面活性剤、キレート剤、連鎖移動剤等を好ましくは0〜5重量%、より好ましくは0〜1重量%を添加したりすることもできる。これらの物質は単量体水溶液に添加する形態のみならず、重合途中に添加してもよい
なお、上記水溶性樹脂又は吸水性樹脂の使用は、グラフト重合体又は吸水性樹脂組成物(例えば、澱粉−アクリル酸重合体、PVA−アクリル酸重合体等)を与えるが、これらの重合体、吸水性樹脂組成物も本発明では吸水性樹脂と総称する。
(単量体成分の濃度)
本工程において、上述した各物質を混合することで単量体水溶液を調製する。その際、単量体水溶液中の単量体成分の濃度としては特に限定されないが、吸水性樹脂の物性の観点から10〜80質量%とすることが好ましく、20〜75質量%がより好ましく、30〜70質量%が更に好ましい。
また、重合形態として水溶液重合又は逆相懸濁重合を採用する場合には、水以外の溶媒を必要に応じて併用することもでき、その場合、使用される溶媒の種類は特に限定されるものではない。
なお、上記「単量体成分の濃度」とは、下記式で求められる値であり、単量体水溶液にはグラフト成分や吸水性樹脂、逆相懸濁重合における疎水性溶媒は含めない。
(単量体成分の濃度(質量%))=(単量体成分の質量)/(単量体水溶液の質量)×100
(2−2)重合工程
本工程は、上記単量体調製工程で得られたアクリル酸(塩)系単量体水溶液を重合させて含水ゲル状架橋重合体(以下、「含水ゲル」と称する)を得る工程である。
(重合開始剤)
本発明で使用される重合開始剤は、重合形態等によって適宜選択されるため、特に限定されないが、例えば、熱分解型重合開始剤、光分解型重合開始剤又はこれらの重合開始剤の分解を促進する還元剤を併用したレドックス系重合開始剤等が挙げられる。具体的には、米国特許7265190号の第5カラムに例示された重合開始剤のうち1種又は2種以上が用いられる。なお、取扱いのしやすさや、吸水性樹脂の物性面から、過酸化物又はアゾ化合物、さらには過酸化物、特に過硫酸塩を用いることが好ましい。
通常、重合は、装置及び操作の容易さ等のため常圧下で行われるが、重合系の沸騰温度を下げるために減圧にして行うのも好ましい態様である。
本発明で用いられる重合開始剤としては、特に制限はなく、重合させるモノマーの種類や重合条件などに合わせて、通常の吸水性樹脂製造において利用されているものの中から1種又は2 種以上選択して使用できる。例えば、熱分解型開始剤、(例えば、過硫酸塩:過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム;過酸化物:過酸化水素、t−ブチルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド;アゾ化合物:アゾニトリル化合物、アゾアミジン化合物、環状アゾアミジン化合物、アゾアミド化合物、アルキルアゾ化合物、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド)や、光分解型開始剤(例えば、ベンゾイン誘導体、ベンジル誘導体、アセトフェノン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、アゾ化合物) 等を挙げることができる。コスト、残存モノマー低減能から過硫酸塩が好ましい。また、これら重合開始剤の分解を促進する還元剤を併用し、両者を組み合わせることによりレドックス系開始剤とすることもできる。
上記の還元剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の(重)亜硫酸(塩)、L−アスコルビン酸(塩)、第一鉄塩等の還元性金属(塩)、アミン類等が挙げられるが、特に限定されるものではない。レドックス系開始剤のように酸化性重合開始剤と還元剤を用いる場合、それぞれを本発明の方法でモノマー液に合流させてもよいし、還元剤を予めモノマー液に混合しておいてもよい。より好ましくは、光分解型開始剤と熱分解型開始剤を併用することである。
上記重合開始剤の使用量は、単量体に対して、0.001〜1モル%が好ましく、0.001〜0.5モル%がより好ましい。また、上記還元剤の使用量は、単量体に対して、0.0001〜0.02モル%が好ましい。
また、上記重合開始剤の代わりに放射線、電子線、紫外線等の活性エネルギー線を照射して重合反応を実施してもよく、これらの活性エネルギー線と重合開始剤を併用してもよい。
(重合方法)
本発明で適用される重合方法は、特に限定されないが吸水特性や重合制御の容易性等の観点から、噴霧液滴重合、水溶液重合、逆相懸濁重合が好ましく、水溶液重合、逆相懸濁重合がより好ましく、水溶液重合が更に好ましい。中でも、連続水溶液重合が特に好ましく、連続ベルト重合でも連続ニーダー重合のいずれでもよい。
具体的な重合形態として、連続ベルト重合は米国特許第4893999号、同第6241928号、米国特許出願公開第2005/215734号等に、連続ニーダー重合は米国特許第6987151号、同第6710141号等に、それぞれ開示されている。これらの連続水溶液重合を採用することで、吸水性樹脂の生産効率が向上する。
また、上記連続水溶液重合の好ましい一例として、高温開始重合や高濃度重合が挙げられる。「高温開始重合」とは、単量体水溶液の温度を好ましくは30℃以上、より好ましくは35℃以上、更に好ましくは40℃以上、特に好ましくは50℃以上(上限は沸点)の温度で重合を開始する重合方法をいい、「高濃度重合」とは、単量体濃度を好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、特に好ましくは45質量%以上(上限は飽和濃度)で重合を行う重合方法をいう。これらの重合方法を併用することもできる。
なお、上記の重合方法により、重合中に固形分濃度を上昇させてもよい。このような固形分濃度の上昇の指標として固形分上昇度は下記式により定義される。
(固形分上昇度(質量%))=(重合後の含水ゲルの固形分濃度(質量%))−(単量体水溶液の固形分濃度(質量%))
ただし、単量体水溶液の固形分濃度とは下記式で求められる値であり、重合系内の成分とは、単量体水溶液とグラフト成分、吸水性樹脂、その他固形物(例えば水不溶性微粒子等)であり、逆相懸濁重合における疎水性溶媒は含めない。
(単量体水溶液の固形分(質量%))=((単量体成分+グラフト成分+吸水性樹脂+その他固形物)の質量)/(重合系内の成分の質量)×100
好ましい固形分上昇度は1質量%以上、より好ましくは2質量%以上である。
更に、これらの重合方法は空気雰囲気下でも実施できるが、色調の観点から、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で実施することが好ましい。この場合、例えば、酸素濃度を1容積%以下に制御することが好ましい。また、単量体水溶液に気泡(特に上記不活性ガス等)を分散させて重合する発泡重合とすることもできる。なお、単量体あるいは単量体水溶液中の溶存酸素についても、不活性ガスで十分に置換(例えば、溶存酸素1(mg/l)未満)しておくことが好ましい。
(2−3)ゲル粉砕工程(ゲル解砕工程)
本工程は、上記重合工程で得られた含水ゲルを例えば、ニーダー、ミートチョッパー、カッターミル等のゲル粉砕機でゲル粉砕し、粒子状の含水ゲル(以下、「粒子状含水ゲル」と称する)を得る工程である。なお、上記重合工程がニーダー重合の場合、重合工程とゲル粉砕工程が同時に実施されている。
本発明のゲル粉砕工程では、特に限定されないが、国際公開第2011/126079号パンフレットに開示されたゲル粉砕方法が好ましく適用される。
(2−4)乾燥工程
本工程は、上記重合工程及び/又はゲル粉砕工程で得られた粒子状含水ゲルを所望する樹脂固形分まで乾燥させて乾燥重合体を得る工程である。なお、当該樹脂固形分は、乾燥減量(吸水性樹脂1.0gを180℃で3時間加熱した際の質量変化)から求められ、80質量%以上が好ましく、85〜99質量%がより好ましく、90〜98質量%が更に好ましく、92〜97質量%が特に好ましい。
本発明の乾燥工程では、特に限定されないが、例えば、加熱乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥、流動層乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、ドラムドライヤー乾燥、疎水性有機溶媒との共沸脱水による乾燥、高温の水蒸気を用いた高湿乾燥等、種々の乾燥方法が適用される。
上記の乾燥方法の中でも、効率の高さから、熱風乾燥が好ましく、特にベルト上で熱風乾燥を行うバンド乾燥が好ましい。熱風温度は色調や効率から100〜250℃が好ましく、120〜220℃がより好ましい。なお、バンド乾燥を行う際に、その他の条件として例えば国際公開第2006/100300号パンフレット、国際公開第2011/025012号パンフレット、国際公開第2011/025013号パンフレット、国際公開第2011/111657号パンフレット等に記載の条件が参照される。
上述した乾燥温度や乾燥時間を上記範囲とすることで、得られる吸水性樹脂の吸水倍率(CRC)や水可溶分(Ext)、色調を所望する範囲(下記〔3〕を参照)とすることができる。
(2−5)粉砕工程、分級工程
本工程は、上記乾燥工程で得られた乾燥重合体を粉砕(粉砕工程)し、所定範囲の粒度に調整(分級工程)して、吸水性樹脂粉末(表面架橋を施す前の、粉末状の吸水性樹脂を便宜上「吸水性樹脂粉末」と称する)を得る工程である。
本発明の粉砕工程で使用される機器としては、ロールミルを必須とするが、その他併用されうる機器としては、例えばハンマーミル、スクリューミル、ピンミル等の高速回転式粉砕機、振動ミル、ナックルタイプ粉砕機、円筒型ミキサー等が挙げられる。
また、本発明の分級工程での粒度調整方法としては、特に限定されないが、例えば、JIS標準篩(JIS Z8801−1(2000))を用いた篩分級や気流分級等が挙げられる。なお、吸水性樹脂の粒度調整は、上記粉砕工程、分級工程に限定されず、重合工程(特に逆相懸濁重合や噴霧液滴重合)その他の工程(例えば、造粒工程、微粉回収工程)で、適宜実施できる。
本発明における吸水性樹脂粉末の粒度は、質量平均粒子径(D50)は200〜700μmが好ましく、250〜600μmがより好ましく、250〜500μmが更に好ましく、300〜450μmが特に好ましい。また、粒子径300μm未満の粒子の割合は20質量%より多いことが好ましく、30質量%より多いことがより好ましく、40質量%より多いことが更に好ましく、粒子径850μm以上の粒子の割合は0〜20質量%が好ましく、0〜15質量%がより好ましく、0〜10質量%が更に好ましい。
更に、粒子径分布の対数標準偏差(σζ)は0.20〜0.50が好ましく、0.25〜0.40がより好ましく、0.27〜0.35が更に好ましい。なお、これらの粒度は、国際公開第2004/69915号やEDANA ERT420.2−02に開示されている測定方法に準じて、標準篩を用いて測定される。
上述した粒度は、表面架橋後の吸水性樹脂(以下、便宜上「吸水性樹脂粒子」と称する場合がある)のみならず、最終製品としての吸水剤についても適用される。そのため、吸水性樹脂粒子において、上記範囲の粒度を維持するように、表面架橋処理されることが好ましい。
(2−6)表面架橋工程
本工程は、上述した工程を経て得られる吸水性樹脂粉末の表面層(吸水性樹脂粉末の表面から数10μmの部分)に、更に架橋密度の高い部分を設ける工程であり、吸水性樹脂粉末と表面架橋剤溶液とを混合して混合物を得る混合工程、当該混合物を加熱処理する加熱処理工程、必要により冷却する冷却工程から構成される。
当該表面架橋工程において、吸水性樹脂粉末表面でのラジカル架橋や表面重合、表面架橋剤との架橋反応等により表面架橋された吸水性樹脂(吸水剤)が得られる。
(表面架橋剤)
本発明で使用され得る表面架橋剤としては、特に限定されないが、例えば、種々の有機又は無機の表面架橋剤が挙げられ、これらの中でも吸水性樹脂の物性や表面架橋剤の取扱い性の観点から、カルボキシル基と反応して共有結合を形成する有機表面架橋剤が好ましく挙げられる。より具体的には、米国特許7183456号の第9、10カラムに記載の1つないし2つ以上の表面架橋剤、及び必要により親水性有機溶媒を本発明に適用できる。トータルの表面架橋剤の使用量は、吸水性樹脂粉末100質量部に対し0.01〜10質量部が好ましく、0.01〜5質量部がより好ましい。また、表面架橋剤を添加する際水を使用することが好ましく、表面架橋剤は水溶液として添加されることが好ましい。水の使用量は、吸水性樹脂粉末100質量部に対し0.1〜20質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましい。必要により親水性有機溶媒を用いる場合の使用量は吸水性樹脂粉末100質量部に対し10質量部以内が好ましく、5質量部以内がより好ましい。以上の表面架橋剤(水溶液)に加え、後述の「再加湿工程」で用いる添加剤をそれぞれ5質量部以内の範囲で表面架橋剤(水溶液)と混合して、又は別途本工程中に添加してもよい。
液状物(B)を構成する表面架橋剤は、吸水性樹脂(A)が有する2つ以上のカルボキシル基と反応可能な官能基を1分子中に複数有し、架橋反応によって共有結合が形成される化合物であれば、特に限定されるものではない。上記の表面架橋剤としては、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン等の多価アルコール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の多価アミン化合物、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等の多価グリシジル化合物、2,4−トリレンジイソシアネート、エチレンカーボネート(1,3−ジオキソラン−2−オン)、プロピレンカーボネート(4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン)、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、(ポリ、ジ、ないしモノ)2−オキサゾリジノン、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、ジグリコールシリケート、2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]等の多価アジリジン化合物等が挙げられるが、これら化合物に限定されるものではない。
またこれらの表面架橋剤は、一種類のみを用いても良く、二種類以上を併用してもよい。中でも、少なくとも一種類は多価アルコール、多価グリシジル化合物、1,3−ジオキソラン−2−オン、ポリ2−オキサゾリジノン、ビス2−オキサゾリジノン、モノ2−オキサゾリジノンの中から選ばれる表面架橋剤であることが好ましく、少なくとも一種類は多価アルコールを含む表面架橋剤であることがより好ましい。
吸水性樹脂(A)と表面架橋剤とを混合する際には、溶媒として水を用いることが好ましく、液状物(B)は表面架橋剤水溶液であることが好ましい。水の使用量は、吸水性樹脂(A)の種類や粒径等にもよるが、吸水性樹脂(A)の固形分100質量部に対して、0を超え、20質量部以下が好ましく、0.5〜10質量部の範囲内がより好ましい。また、吸水性樹脂(A)と表面架橋剤とを混合する際には、必要に応じて、溶媒として親水性有機溶媒を用いてもよい。上記の親水性有機溶媒としては、具体的には、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール等の低級アルコール類;アセトン等のケトン類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、アルコキシポリエチレングリコール等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等が挙げられる。親水性有機溶媒の使用量は、吸水性樹脂(A)の種類や粒径等にもよるが、吸水性樹脂(A)の固形分100質量部に対して20質量部以下が好ましく、より好ましくは0〜10質量部、さらに好ましくは0〜5質量部、特に好ましくは0〜1質量部である。しかし、本発明では、混合性に優れるため、特に親水性溶媒を用いなくても均一な混合が達成可能である。
(混合工程)
本発明の表面架橋工程での表面架橋剤溶液の添加・混合方法は、特に限定されないが、表面架橋剤及び溶媒としての水、親水性有機溶媒又はこれらの混合物を予め用意した後、吸水性樹脂粉末に対して、噴霧又は滴下して添加し混合することが好ましく、噴霧して添加し混合することがより好ましい。
また、表面架橋剤溶液と吸水性樹脂粉末との混合に用いられる混合装置としては、特に限定されないが、好ましくは高速撹拌型混合機、より好ましくは高速撹拌型連続混合機が挙げられる。
(加熱処理工程)
上述した表面架橋剤溶液を添加・混合された吸水性樹脂粉末は加熱処理され、その後、必要に応じて冷却処理される。加熱には公知の乾燥機が適用できるが、好ましくはパドルドライヤーである。加熱温度は80〜250℃が好ましく、100〜220℃がより好ましい。
(2−7)再加湿工程
本工程は、上記表面架橋工程で得られた吸水性樹脂粒子に、下記の多価金属塩化合物、ポリカチオン性ポリマー、キレート剤、無機還元剤、ヒドロキシカルボン酸化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の添加剤を添加する工程である。
上記の添加剤は、水溶液又はスラリー液で添加することが好ましく、したがって吸水性樹脂を再度水膨潤させることになるため、本工程を「再加湿工程」と称する。なお、当該添加剤は上述した表面架橋剤溶液と同時に添加・混合してもよい。好ましくは、後述の含水率、特に含水率2〜9質量%に制御される。
(多価金属塩及び/又はカチオン性ポリマー)
本発明において、得られる吸水性樹脂の吸水速度(Vortex)向上、通液性(SFC)向上や吸湿時の流動性等の観点から、多価金属塩及び/又はカチオン性ポリマーを添加することが好ましい。
具体的には、国際特許公開第2011/040530号パンフレットの「〔6〕多価金属塩及び/又はカチオン性ポリマー」に記載の多価金属塩及び/又はカチオン性ポリマー、及びその使用量が本発明に適用される。
(キレート剤)
本発明において、得られる吸水性樹脂の着色防止や劣化防止の観点から、キレート剤を更に添加することができる。
上記キレート剤としては、例えば国際特許公開第2011/040530号パンフレットの「〔2〕キレート剤」に記載されたキレート剤、及びその使用量が本発明に適用できる。
(無機還元剤)
本発明において、得られる吸水性樹脂の着色防止や劣化防止、残存モノマー低減の観点から、無機還元剤を更に添加することができる。
上記無機還元剤としては、例えば国際特許公開第2011/040530号パンフレットの「〔3〕無機還元剤」に記載された無機還元剤、及びその使用量が本発明に適用できる。
(α−ヒドロキシカルボン酸化合物)
本発明において、得られる吸水性樹脂の着色防止の観点から、α−ヒドロキシカルボン酸化合物を更に添加することができる。なお、「α−ヒドロキシカルボン酸化合物」とは、分子内にヒドロキシル基を有するカルボン酸又はその塩のことで、α位にヒドロキシル基を有するヒドロキシカルボン酸である。
上記α−ヒドロキシカルボン酸化合物としては、例えば国際特許公開第2011/040530号パンフレットの「〔6〕α−ヒドロキシカルボン酸化合物」に記載されたα−ヒドロキシカルボン酸化合物、及びその使用量が本発明に適用できる。
(2−8)その他の添加剤の添加工程
上述した添加剤以外の添加剤を、吸水剤に種々の機能を付与させるため、添加することができる。例えば、界面活性剤、リン原子を有する化合物、酸化剤、有機還元剤、国際特許公開第2011/040530号パンフレットの「〔5〕水不溶性無機微粒子」に記載された水不溶性無機微粒子、金属石鹸等の有機粉末、消臭剤、抗菌剤、パルプや熱可塑性繊維等が挙げられる。なお、上記界面活性剤は、国際公開第2005/075070号に開示された界面活性剤が好ましく適用される。
また、これらの添加剤の使用量としては、その用途に応じて適宜決定され、特に限定されないが、吸水剤を基準として、好ましくは0〜3質量%、より好ましくは0〜1質量%である。
(2−9)その他の工程
上述した工程以外に、造粒工程、整粒工程、微粉除去工程、微粉の再利用工程等を必要に応じて設けることができる。また、輸送工程、貯蔵工程、梱包工程、保管工程等の1種又は2種以上の工程を更に含んでもよい。ここで整粒工程とは、表面架橋工程以降の微粉除去工程や吸水性樹脂が凝集し、所望の大きさを超えた場合に分級、粉砕を行う工程を含む。また、微粉の再利用工程は微粉をそのまま、又は微粉造粒工程で大きな含水ゲルにして、吸水性樹脂の製造工程のいずれかの工程で添加する工程を含む。
〔3〕吸水剤の物性
本発明の吸水剤は、芳香剤、消臭剤、除菌剤等において、薬剤を徐々に空気中へ放散することで機能を果たす用途が好ましく、二酸化塩素を揮散させる除菌剤用途がより好ましく、使用直前に薬剤液と吸水剤とを混合する用途において特に好ましい。
以下、吸水性樹脂の物性を説明する。なお、下記の物性は、特に断りのない限り、実施例に記載の方法に準拠して規定する。
(3−1)薬剤液吸収量
好適な薬剤液吸収量は、徐放剤として用いられる薬剤液量と吸水性樹脂量とのバランスにより定めることが出来る。ただし、薬剤液吸収量が低い場合には、(a)一定の薬剤液量に対して吸水性樹脂を大量使用する、あるいは(b)吸水性樹脂の使用量を少なくするために高濃度の薬剤液を使用する、必要がある。(a)の場合には、薬剤液を吸収した吸水性樹脂が膨潤しながらゲル状となり、未吸収の薬剤液の移動を阻害する、いわゆるゲルブロッキング現象を起こして、薬剤液吸収に長時間かかる事がある。また、(b)の場合には、薬剤濃度が高くなった結果、薬剤の揮散量が増加し、必要以上に大気中の薬剤濃度が高くなる事がある。
通常、薬剤液吸収量は、25(g/g)以上であればよく、30(g/g)以上が好ましく、35(g/g)以上がより好ましく、41(g/g)以上が特に好ましい。上限値は特に限定されないが、90(g/g)以下が好ましく、75(g/g)以下がより好ましく、65(g/g)以下が更に好ましい。上記薬剤液吸水量が90(g/g)を超える吸水性樹脂は、薬剤液を吸収したゲルが柔らかくなる傾向があり、上記のゲルブロッキング現象を起こすため、好ましくない。
(3−2)薬剤液吸収速度
本発明の吸水性樹脂の薬剤液吸収速度は、0.18(g/g/s)以上が好ましく、0.20(g/g/s)以上がより好ましく、0.22(g/g/s)以上が更に好ましく、0.25(g/g/s)以上が特に好ましい。上限値は特に限定されないが、5.0(g/g/s)以下が好ましく、3.0(g/g/s)以下がより好ましい。
上記薬剤液吸収速度が0.18(g/g/s)未満の場合、使用開始直後の放散量が必要以上に多なる場合があり、また、容器の転倒による薬剤液漏洩の恐れが高く、好ましくない。
(3−3)粒度
本発明に係る製造方法で得られる吸水性樹脂は、粒子状が好ましく、不定形であると上記薬液吸収速度が高くなるため、より好ましい。本発明の吸水性樹脂の粒度は、質量平均粒子径(D50)は200〜700μmが好ましく、250〜600μmがより好ましく、250〜500μmが更に好ましく、300〜450μmが特に好ましい。また、粒子径300μm未満の粒子の割合は20質量%より多いことが好ましく、30質量%より多いことがより好ましく、40質量%より多いことが更に好ましく、粒子径850μm以上の粒子の割合は0〜20質量%が好ましく、0〜15質量%がより好ましく、0〜10質量%が更に好ましい。
(3−4)ゲル粒子間空隙液保持能力
本発明の吸水性樹脂のゲル粒子間空隙液保持能力は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましく、100%であることが特に好ましい。ゲル粒子間空隙液保持能力が90%より小さい場合、薬剤液吸収後の放散量が少なくなる場合があり、目的の機能を果たす用途使用には適さない。
(3−5)白化指数
本発明の吸水性樹脂の白化指数は、3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。白化指数が4の場合、薬剤液吸収後の放散量が少なくなる場合があり、目的の機能を果たす用途使用には適さない。
〔4〕徐放剤
本発明の徐放剤は、使用直前に薬剤液と吸水性樹脂とを混合して用いるタイプが好ましく、二酸化塩素を主たる薬剤として揮散する薬剤液を用いる除菌剤用が好ましい。
前記薬液剤としては、二酸化塩素及び/又は亜塩素酸塩を含む水溶液が好ましく、二酸化塩素及び亜塩素酸塩を含む水溶液が好ましい。更に、クエン酸等を含んでいると亜塩素酸塩との緩衝作用が起こり、特に好ましく、具体的には、特開平11−278808号公報に開示されている純粋二酸化塩素剤液が挙げられる。また、pH調整剤としてリン酸二水素ナトリウム及び/又はリン酸水素二ナトリウムを含んでいてもよく、具体的には特開2013−075820号公報記載の純水二酸化塩素液剤が挙げられる。
以下、実施例及び比較例に従って本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定され解釈されるものではない。なお、本発明で得られる吸水性樹脂粉末、吸水性樹脂粒子、吸水剤組成物及び吸収性物品は、特に指定がない限り、気温25℃±2℃、相対湿度50%RHの条件下で測定した。
(吸水剤の評価方法)
[テスト液(薬剤液)の調整]
テスト液は、イオン交換水97.255質量部に亜塩素酸ナトリウム(関東化学株式会社製)2.42質量部と無水リン酸二水素ナトリウム(和光純薬工業株式会社)0.325質量部を溶解させることで作成した。
[粒度]
本発明に係る吸水性樹脂の粒度は、欧州特許0349240号に開示された測定方法に準じて行った。
即ち、目開き850μm、500μm、300μm、212μm、150μmを有するJIS標準篩(JIS Z8801−1(2000))又は相当する篩を用いて、粒子状吸水剤10gを分級し、各篩上に残った吸水性樹脂及び全篩を通過した吸水性樹脂の質量をそれぞれ測定した。
[薬剤液吸収量]
吸水性樹脂0.20gを不織布製の袋(120×180mm)に均一に入れヒートシールした後、25±3℃に調温しテスト液2L中に浸漬した。30分経過後、袋を引上げ、10分間吊り下げて水切りを行った。その後、袋の質量W9[g]を測定した。同様の操作を、吸収体を入れずに行い、そのときの袋の質量W10[g]を測定した。下記式1にしたがって吸収体の絶対吸収量(g)を算出した。
(式1) 吸収量=((W9−W10)/0.20)−1
[薬剤液吸収速度]
吸水性樹脂1.00gを25mlガラス製ビーカー(直径32〜34mm、高さ50mm)に入れた。この際、ビーカーに入れた吸水性樹脂の上面が水平となるようにした(必要により、慎重にビーカーをたたく等の処置を行うことで吸水性樹脂表面を水平にしてもよい。)。
次に、23℃±0.2℃に調温したテスト液24gを50mlのガラス製ビーカーに量り取り、上記テスト液とガラス製ビーカーとの合計重さ(質量W4[g])を測定した。量り取ったテスト液を、吸水性樹脂の入った25mlビーカーに丁寧に素早く注いだ。注ぎ込んだテスト液が吸水性樹脂と接触したと同時に時間測定を開始した。そして、テスト液を注ぎ込んだビーカー中のテスト液上面を約20゜の角度で目視した際、始めテスト液表面であった上面が、吸水性樹脂がテスト液を吸収することにより、テスト液を吸収した吸水性樹脂表面に置き換わる時点で、時間測定を終了した(時間ts[秒])。
次に、テスト液を注ぎ込んだ後の50mlガラス製ビーカーの重さ(質量W5[g])を測定した。注ぎ込んだテスト液の重さ(質量W6[g])を下記式2から求め、下記式3により吸収速度を求めた。
(式2) W6[g] = W4−W5
(式3) 吸水速度[g/g/s] = W6/(ts×吸水性樹脂の質量[g])
[白化指数]
前記吸水速度測定開始後、10分経過した後、吸水性樹脂がテスト液を吸収後の25mlビーカーの真上より目視し、液吸収後の吸水性樹脂全体の面積(直径32〜34mmの面積)に対して液吸収後の吸水性樹脂が白く見える部分の面積割合を以下のように4段階で求めた。
白化指数1:白く見える部分の面積割合が無い
白化指数2:白く見える部分の面積割合が全体の面積に対して、0%より多く、33%(全体の3分の1)より少ない
白化指数3:白く見える部分の面積割合が全体の面積に対して、33%(全体の3分の1)以上で、66%(全体の3分の2)より少ない
白化指数4:白く見える部分の面積割合が全体の面積に対して、66%(全体の3分の1)より多い
[ゲル粒子間空隙液保持能力]
吸水性樹脂0.500gを試験管(内径14mm、高さ125mm、厚さ1mm)に入れた。次にテスト液(25℃±2℃)を8.50g試験管内に素早く注ぎ込んだ。テスト液を注ぎ込んだ時点から10分後、試験管の底面から吸収した吸水性樹脂表面に置き換わった上面までの高さ(高さH1(単位:mm))と、液吸収後の吸水性樹脂が白く見える部分の高さ(高さH2(単位:mm))を測定した。下記式4によりゲル粒子間空隙液保持能力を求めた。
(式4) ゲル粒子間空隙液保持能力[%]=H1/(H1+H2)×100
[製造例1]
75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5500g(単量体濃度38質量%)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9)7.5gを溶解し反応液〔a001〕とした。次に、この反応液〔a001〕を窒素ガス雰囲気下で30分間脱気したのち、内容積10Lのシグマ型羽根を2本有する双腕型のジャケット付きステンレス製ニーダーに蓋を付けて形成した反応器に、上記反応液を供給し、反応液温を30℃に保ちながら反応器内に窒素ガスを吹き込み、系内の溶存酸素が1ppm以下となるように窒素置換した。
続いて、反応液を撹拌しながら、過硫酸ナトリウムの10質量%水溶液29.8g及びL−アスコルビン酸の0.2質量%水溶液21.8gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。重合開始後17分で重合ピーク温度86℃を示し、重合を開始して60分後に含水ゲル状重合体〔b001〕を取り出した。
得られた含水ゲル状重合体〔b001〕は約1〜5mmの粒子に細分化されていた。この細分化された含水ゲル状重合体〔b001〕を50メッシュ(目の大きさ300μm)の金網上に広げ、180℃で45分間熱風乾燥し、乾燥物〔b011〕とした。
次いで、乾燥物〔b011〕をロールミルで粉砕し、さらに目開き450μmと106μmの金網で連続的に分級した。450μm以上の粒子は、再度ロールミルで粉砕した。106μmの金網を通過した粒子は、粉砕を行った全量に対して13質量%を占めていた。106μmの金網を通過した吸水性樹脂微粒子は、90℃に加熱された水を同量混合し、再度同条件で乾燥し、粉砕し、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子〔A010〕を得た。尚、吸水性樹脂粉末〔A010〕のCRC(無加圧下吸水倍率)は47.6[g/g]であった。
次いで、得られた吸水性樹脂粒子〔A010〕100質量部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部、1,4−ブタンジオール0.3質量部、プロピレングリコール0.5質量部と、水2.5質量部とからなる表面架橋剤水溶液〔c001〕3.33質量部を混合した。上記の混合物を175℃に加熱されたモルタルミキサー内で40分間加熱処理することにより吸水性樹脂〔A110〕を得た。
吸水性樹脂粉末〔A110〕100重量部に日本アエロジル社製のヒュームドシリカAEROSIL200を0.3重量部加え均一に混合することで粒子状吸水剤〔A111〕を得た。
[製造例2]
製造例1記載のポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9)量7.5gを2.8gに変更して反応液〔a002〕とし、製造例1記載の方法と同様にして、乾燥物〔b012〕を得た。
次いで、乾燥物〔b012〕をロールミルで粉砕し、さらに目開き600μmと106μmの金網で連続的に分級した。600μm以上の粒子は、再度ロールミルで粉砕することで、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子〔A020〕を得た。尚、吸水性樹脂粉末〔A020〕のCRC(無加圧下吸水倍率)は51.6[g/g]であった。
次いで、得られた吸水性樹脂粒子〔A020〕100質量部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部、1,4−ブタンジオール0.3質量部、プロピレングリコール0.5質量部と、水2.5質量部とからなる表面架橋剤水溶液〔c002〕3.33質量部を混合した。上記の混合物を165℃に加熱されたモルタルミキサー内で60分間加熱処理することにより吸水性樹脂〔A220〕を得た。
吸水性樹脂粉末〔A220〕100重量部に日本アエロジル社製のヒュームドシリカAEROSIL200を0.3重量部加え均一に混合することで粒子状吸水剤〔A221〕を得た。
[製造例3]
製造例1記載のポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9)7.5gをトリメチロールプロパントリアクリレート(分子量296)3.5gに変更して反応液〔a003〕とし、製造例1記載の方法と同様にして、乾燥物〔b013〕を得た。
次いで、乾燥物〔b013〕をロールミルで粉砕し、さらに目開き1400μmと75μmの金網で連続的に分級した。1400μm以上の粒子は、再度ロールミルで粉砕することで不定形破砕状の吸水性樹脂粒子〔A030〕を得た。尚、吸水性樹脂粉末〔A030〕のCRC(無加圧下吸水倍率)は47.0[g/g]であった。
次いで、得られた吸水性樹脂粒子〔A030〕100質量部に、グリセリン0.5質量部、イソプロピルアルコール0.5質量部、水2.5質量部とからなる表面架橋剤水溶液〔c003〕3.5質量部を混合した。上記の混合物を170℃に加熱されたモルタルミキサー内で40分間加熱処理することにより吸水性樹脂〔A330〕を得た。
吸水性樹脂粉末〔A330〕100重量部に日本アエロジル社製のヒュームドシリカAEROSIL200を0.2重量部加え均一に混合することで粒子状吸水剤〔A331〕を得た。
[製造例4]
製造例3記載のトリメチロールプロパントリアクリレート(分子量296)量3.5gを3.2gに変更して反応液〔a004〕とし、製造例3記載の方法と同様にして、乾燥物〔b014〕を得た。
次いで、乾燥物〔b014〕をロールミルで粉砕し、さらに目開き710μmと106μmの金網で連続的に分級した。710μm以上の粒子は、再度ロールミルで粉砕することで不定形破砕状の吸水性樹脂粒子〔A040〕を得た。尚、吸水性樹脂粉末〔A040〕のCRC(無加圧下吸水倍率)は48.3[g/g]であった。
次いで、得られた吸水性樹脂粒子〔A040〕100質量部に、グリセリン0.5質量部、イソプロピルアルコール0.5質量部、水2.5質量部とからなる表面架橋剤水溶液〔c004〕3.5質量部を混合した。上記の混合物を170℃に加熱されたモルタルミキサー内で40分間加熱処理することにより吸水性樹脂〔A440〕を得た。
吸水性樹脂粉末〔A440〕100重量部に日本アエロジル社製のヒュームドシリカAEROSIL200を0.3重量部加え均一に混合することで粒子状吸水剤〔A441〕を得た。
[製造例5]
製造例1記載のポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9)量7.5gを4.4gに変更して反応液〔a005〕とし、製造例1記載の方法と同様にして、乾燥物〔b015〕を得た。
次いで、乾燥物〔b015〕をロールミルで粉砕し、さらに目開き710μmと106μmの金網で連続的に分級した。710μm以上の粒子は、再度ロールミルで粉砕することで、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子〔A050〕を得た。尚、吸水性樹脂粉末〔A050〕のCRC(無加圧下吸水倍率)は41.7[g/g]であった。
次いで、得られた吸水性樹脂粒子〔A050〕100質量部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部、1,4−ブタンジオール0.4質量部、プロピレングリコール0.4質量部と、水2.0質量部とからなる表面架橋剤水溶液〔c005〕2.83質量部を混合した。上記の混合物を200℃に加熱されたモルタルミキサー内で40分間加熱処理することにより吸水性樹脂〔A550〕を得た。
吸水性樹脂粉末〔A550〕100重量部に日本アエロジル社製のヒュームドシリカAEROSIL200を0.3重量部加え均一に混合することで粒子状吸水剤〔A551〕を得た。
[製造例6]
製造例2記載の混合物加熱処理温度を180℃から195℃に変更した以外は製造例2と同様にして吸水性樹脂〔A660〕を得た。
吸水性樹脂粉末〔A660〕100重量部に日本アエロジル社製のヒュームドシリカAEROSIL200を0.3重量部加え均一に混合することで粒子状吸水剤〔A661〕を得た。
[製造例7]
製造例1記載のポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9)量7.5gを2.2gに変更して反応液〔a007〕とし、製造例1記載の方法と同様にして、乾燥物〔b017〕を得た。
次いで、乾燥物〔b017〕をロールミルで粉砕し、さらに目開き850μmと106μmの金網で連続的に分級した。850μm以上の粒子は、再度ロールミルで粉砕することで、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子〔A070〕を得た。尚、吸水性樹脂粉末〔A070〕のCRC(無加圧下吸水倍率)は54.5[g/g]であった。
次いで、得られた吸水性樹脂粒子〔A070〕100質量部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部、1,4−ブタンジオール0.3質量部、プロピレングリコール0.5質量部と、水2.8質量部とからなる表面架橋剤水溶液〔c002〕3.63質量部を混合した。上記の混合物を195℃に加熱されたモルタルミキサー内で40分間加熱処理することにより吸水性樹脂〔A770〕を得た。
吸水性樹脂粉末〔A770〕100重量部に日本アエロジル社製のヒュームドシリカAEROSIL200を0.3重量部加え均一に混合することで粒子状吸水剤〔A771〕を得た。
[実施例1]
製造例1で得られた粒子状吸水剤〔A111〕を吸水剤1として、諸物性を表1に記載した。
[実施例2]
製造例2で得られた粒子状吸水剤〔A221〕を吸水剤2として、諸物性を表1に記載した。
[比較例1]
製造例5で得られた粒子状吸水剤〔A551〕を比較吸水剤1として、諸物性を表1に記載した。
[実施例3]
製造例6で得られた粒子状吸水剤〔A661〕を吸水剤3として、諸物性を表1に記載した。
[比較例2]
製造例7で得られた粒子状吸水剤〔A771〕を比較吸水剤2として、諸物性を表1に記載した。
[比較例3]
製造例3で得られた粒子状吸水剤〔A331〕を比較吸水剤3として、諸物性を表1に記載した。
[比較例4]
製造例4で得られた粒子状吸水剤〔A441〕を比較吸水剤4として、諸物性を表1に記載した。
Figure 0006482793
表1より、実施例2及び3と、比較例3及び4とを比較すると、ゲル粒子間空隙液保持能力の低い前者の薬剤吸収量が大きく、一方、比較例1と比較例2とではその関係が逆転している。つまり、薬剤液吸収量とゲル粒子間空隙保持能力との間には、相関性がないことがわかる。

Claims (4)

  1. 徐放剤に用いられる吸水剤であって、
    表面架橋されたポリアクリル酸(塩)である吸水性樹脂を含み、
    質量平均粒子径(D50)が250〜500μmであり、粒子径300μm未満の粒子の割合が20質量%より多く、かつ粒子径850μm以上の粒子の割合が0〜20質量%であり、
    下記評価方法により、気温25℃±2℃、相対湿度50%RHの条件下でそれぞれ求められる薬剤液吸収速度が0.18[g/g/s]以上であり、ゲル粒子間空隙液保持能力が90%以上であり、薬剤液吸収量が41(g/g)以上であり、
    徐放成分として二酸化塩素及び/又は亜塩素酸塩を含む水溶液を用いた徐放剤用途に用いられる吸水剤。
    (ここで、薬剤液吸収速度は、25mlガラス製ビーカーに入れた吸水性樹脂1.00gの上面を水平にした後、亜塩素酸ナトリウム(2.42質量%)及び無水リン酸二水素ナトリウム(0.325質量%)を含む水溶液であるテスト液(23±0.2℃)W6[g]を注ぎ込んだ後、このビーカー中のテスト液上面を約20°の角度で目視し、注ぎ込んだテスト液が吸水性樹脂と接触後、テスト液表面が、このテスト液を吸収した吸水性樹脂表面に置き換わるまでの時間ts[秒]とを用いて、下記式3により求められる。
    (式3) 吸水速度[g/g/s]=W6/(ts×吸水性樹脂の質量[g])
    ゲル粒子間空隙液保持能力は、試験管(内径14mm、高さ125mm、厚さ1mm)に入れた吸水性樹脂0.500gに、亜塩素酸ナトリウム(2.42質量%)及び無水リン酸二水素ナトリウム(0.325質量%)を含む水溶液であるテスト液(25±2℃)8.50gを注いだ後、10分後に、この試験管の底面から吸収した吸水性樹脂表面に置き換わった上面までの高さ(高さH1(単位:mm))と、液吸収後の吸水性樹脂が白く見える部分の高さ(高さH2(単位:mm))とを測定し、下記式4により求められる。
    (式4)ゲル粒子間空隙液保持能力[%]=H1/(H1+H2)×100
    薬剤液吸収量は、吸水性樹脂0.20gを含む不織布製の袋(120×180mm)を、亜塩素酸ナトリウム(2.42質量%)及び無水リン酸二水素ナトリウム(0.325質量%)を含む水溶液であるテスト液(25±3℃)2Lに30分間浸漬後、10分間水切りしたときの質量W9[g]と、吸水性樹脂を含まない不織布製の袋を用いて同様の操作をおこなったときの質量W10[g]とを測定し、下記式1により求められる。
    (式1) 吸収量=((W9−W10/0.20)−1))
  2. 気温25℃±2℃、相対湿度50%RHの条件下で、下記評価方法により求められる白化指数が3以下である、請求項1に記載の吸水剤。
    (ここで、白化指数とは、上記薬剤液吸収速度の測定開始から10分経過後に、上記ビーカーの真上より目視したときの、液吸収後の吸水性樹脂全体の面積(直径32〜34mmの面積)に対する、液吸収後の吸水性樹脂が白く見える部分の面積割合であり、白く見える部分の面積割合が無い場合を白化指数1とし、白く見える部分の面積割合が全体の面積に対して、0%より多く33%(全体の3分の1)より少ない場合を白化指数2とし、白く見える部分の面積割合が全体の面積に対して、33%(全体の3分の1)以上で、66%(3分の2)より少ない場合を白化指数3とする。)
  3. 表面架橋されたポリアクリル酸(塩)である吸水性樹脂を含み、その質量平均粒子径が250〜500μmであり、粒子径300μm未満の粒子の割合が20質量%より多く、かつ粒子径850μm以上の粒子の割合が0〜20質量%であり、下記評価方法により、気温25℃±2℃、相対湿度50%RHの条件下でそれぞれ求められる薬剤液吸収速度が0.18[g/g/s]以上で、ゲル粒子間空隙液保持能力が90%以上であり、薬剤液吸収量が41以上である吸水剤の使用であって、
    除放性分として二酸化塩素及び/又は亜塩素酸塩を含む水溶液を用いた徐放剤としての使用。
    (ここで、薬剤液吸収速度は、25mlガラス製ビーカーに入れた吸水性樹脂1.00gの上面を水平にした後、亜塩素酸ナトリウム(2.42質量%)及び無水リン酸二水素ナトリウム(0.325質量%)を含む水溶液であるテスト液(23±0.2℃)W6[g]を注ぎ込んだ後、このビーカー中のテスト液上面を約20°の角度で目視し、注ぎ込んだテスト液が吸水性樹脂と接触後、テスト液表面が、このテスト液を吸収した吸水性樹脂表面に置き換わるまでの時間ts[秒]とを用いて、下記式3により求められる。
    (式3) 吸水速度[g/g/s]=W6/(ts×吸水性樹脂の質量[g])
    ゲル粒子間空隙液保持能力は、試験管(内径14mm、高さ125mm、厚さ1mm)に入れた吸水性樹脂0.500gに、亜塩素酸ナトリウム(2.42質量%)及び無水リン酸二水素ナトリウム(0.325質量%)を含む水溶液であるテスト液(25±2℃)8.50gを注いだ後、10分後に、この試験管の底面から吸収した吸水性樹脂表面に置き換わった上面までの高さ(高さH1(単位:mm))と、液吸収後の吸水性樹脂が白く見える部分の高さ(高さH2(単位:mm))とを測定し、下記式4により求められる。
    (式4)ゲル粒子間空隙液保持能力[%]=H1/(H1+H2)×100
    薬剤液吸収量は、吸水性樹脂0.20gを含む不織布製の袋(120×180mm)を、亜塩素酸ナトリウム(2.42質量%)及び無水リン酸二水素ナトリウム(0.325質量%)を含む水溶液であるテスト液(25±3℃)2Lに30分間浸漬後、10分間水切りしたときの質量W9[g]と、吸水性樹脂を含まない不織布製の袋を用いて同様の操作をおこなったときの質量W10[g]とを測定し、下記式1により求められる。
    (式1) 吸収量=((W9−W10/0.20)−1))
  4. 気温25℃±2℃、相対湿度50%RHの条件下で、下記評価方法により求められる白化指数が3以下である、請求項3に記載の吸水剤の使用。
    (ここで、白化指数とは、上記薬剤液吸収速度の測定開始から10分経過後に、上記ビーカーの真上より目視したときの、液吸収後の吸水性樹脂全体の面積(直径32〜34mmの面積)に対する、液吸収後の吸水性樹脂が白く見える部分の面積割合であり、白く見える部分の面積割合が無い場合を白化指数1とし、白く見える部分の面積割合が全体の面積に対して、0%より多く33%(全体の3分の1)より少ない場合を白化指数2とし、白く見える部分の面積割合が全体の面積に対して、33%(全体の3分の1)以上で、66%(3分の2)より少ない場合を白化指数3とする。)
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