以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、本実施形態に係る接点を形成すべく、接点材料を基板10上に積層させた場合の構成例を示す。ここで、接点は、外部に別個に形成された接点、配線、および導電体等と物理的に接触または離間して、電気的に接続または切断される電気的接点である。本実施形態に係る接点は、接触抵抗を増加させることなく、外部の接点等と接触してから離間させた場合に、接触状態が保たれてしまうこと(擬着)を防止する。本実施形態において、当該接点が基板10の表面に形成される例を説明する。
基板10は、接点が設けられる平坦な第1面を有する。即ち、基板10は、接点側を向く第1面を有する。また、基板10は、ガラス基板等の絶縁体であってよく、これに代えてシリコン等の半導体基板等であってよい。接点は、複数の接点材料が積層されて形成される。接点材料は、金属層110と、第1導電層120と、第2導電層130と、バリア層140とを備える。
金属層110は、基板10の第1面に形成される。即ち、金属層110は、基板10よりも接点側に設けられる。金属層110は、例えば、メッキ法等によって形成される。金属層110は、一例として、金(Au)を有する。なお、金属層110は、基板10の第1面に下地層が形成された後、当該下地層の上に形成されてもよい。また、金属層110は、複数の層を有してよい。
第1導電層120は、金属層110の上に形成される。即ち、第1導電層120は、金属層110よりも接点側に設けられる。第1導電層120は、例えば、スパッタ法等によって形成される。第1導電層120は、加熱されることにより、一部が接点の表面へと移動して析出する材料を有する。第1導電層120は、例えば、ニッケル(Ni)を含む。第1導電層120は、Niを含む単体金属でよく、これに代えて、ニッケルを含む合金であってもよい。第1導電層120が合金の場合、ニッケルクロム(Ni−Cr)合金を含んでよい。また、第1導電層120は、複数の層を有してよい。
第2導電層130は、第1導電層120よりも接点側に設けられる。第2導電層130は、例えば、スパッタ法等によって形成される。第2導電層130は、例えば、Auを含む。第2導電層130は、Auを含む単体金属でよく、これに代えて、Au含む合金であってもよい。第2導電層130が合金の場合、金パラジウム(Au−Pd)合金を含んでよい。第2導電層130は、加熱されることによって、第1導電層120を形成する材料の一部が当該第2導電層130の表面へと移動する経路が形成されてよい。即ち、第2導電層130は、加熱されることによって、第1導電層120を形成する材料の一部を、接点が外部と接触する接触面へと析出させる。また、第2導電層130は、複数の層を有してよい。
バリア層140は、第1導電層120および第2導電層130の間に設けられ、第1導電層120から電気的接点側の表面への析出量を抑制する。バリア層140は、導電性の材料で形成されてよい。バリア層140は、例えば、スパッタ法等によって形成される。バリア層140は、第2導電層130と比較して、第1導電層120の材料の一部を第2導電層130へと移動する経路を、加熱されても形成しにくい材料を含む。
バリア層140は、例えば、第2導電層130と比較して融点が高い材料を含む。バリア層140は、一例として、白金(Pt)を含む。バリア層140は、第1導電層120および第2導電層130よりも薄く形成されてよい。即ち、バリア層140は、加熱された場合に、当該バリア層140に含まれる材料および当該バリア層140の厚さに応じて、第1導電層120から第2導電層130へと移動する第1導電層120の材料の量を調節する。また、バリア層140は、複数の層を有してよい。
以上の図1に示したように、基板10の第1面上に、複数の接点材料を積層することにより、本実施形態に係る接点が形成される。なお、図1に示す積層構造は、接点の製造過程の途中であり、当該積層構造を加熱することにより、本実施形態に係る接点が形成される。加熱により形成された接点について、図2を用いて説明する。
図2は、本実施形態に係る接点100が基板10上に形成された接点装置300の構成例を示す。図2の接点装置300において、図1に示された本実施形態に係る基板10および複数の接点材料の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。接点100は、金属層110と、第1導電層120と、第2導電層130と、バリア層140と、表面層150とを備える。即ち、接点100が基板10上に形成された場合、接点100の基板10とは反対側の外部との接触面に、表面層150が形成される。
表面層150は、第1導電層120から第2導電層130における電気的接点側の表面に析出された、当該第1導電層120の材料の一部を含む。第1導電層120に含まれる金属または合金の材料の一部は、熱処理により、拡散金属としてバリア層140を介して第2導電層130内に拡散され、やがて第2導電層130の表面に到達して析出する。ここで、当該熱処理は、酸素含有雰囲気下で実施されてよく、第2導電層130の基板10とは反対側の表面に析出した拡散金属は、酸素含有雰囲気に触れて酸化される。こうして、第2導電層130の表面および表面近傍においては、拡散または析出した金属または合金の酸化物が形成される。
このように、熱処理された接点材料においては、第2導電層130の表面および表面近傍に、拡散金属の酸化物を含む表面層150が形成される。即ち、表面層150は、第1導電層120に含まれる金属の酸化物を含む。表面層150は、第1導電層120がNiを含む単体金属で形成された場合、Niの酸化物を含んでよい。また、表面層150は、第1導電層120がニッケルを含む合金で形成された場合、当該合金(一例として、Ni−Cr)の酸化物を含んでよい。
なお、このような熱処理において、拡散金属が第2導電層130の表面まで到達するように、第2導電層130の厚さは、拡散金属に対する拡散係数を考慮して決定することが好ましい。また、形成される表面層150の厚さは、第2導電層130の融点、緻密さ、拡散エネルギ、および/またはクラスタの形成しやすさ等に依存すると考え得る。ここで、接点100における接触抵抗を、例えば0.5Ω以下とするには、表面層150の厚さを30nm以下とすることが好ましい。
また、第1導電層120に含まれる金属または合金は、金属層110にも拡散する。そこで、第1導電層120における拡散係数を、金属層110における拡散係数よりも低くすることにより、第2導電層130に金属または合金を効率良く拡散させることができる。
更に、第1導電層120に含まれる金属または合金が、有効な酸化物を形成し得る状態で第2導電層130の表面まで拡散するように、熱処理する場合の加熱温度は、第1導電層120の材料が第2導電層130と合金化する温度よりも低くすることが好ましい。また、第1導電層120に含まれる金属または合金が効率良く第2導電層130に拡散されるように、熱処理する場合の加熱温度が、第1導電層120の材料が金属層110と合金化する温度よりも低くすることが好ましい。
このような条件を総合的に勘案した接点100の材料の組み合わせとしては、金属層110として金(Au)を、第1導電層120としてニッケル−クロム合金(Ni−Cr)を、第2導電層130として金−パラジウム合金(Au−Pd)を、バリア層140としてプラチナ(Pt)を、用いた組み合わせを例示できるが、これに限定されるわけではない。ここで、接点100の材料の組み合わせは、大気または酸素ガス中で250〜350℃程度に加熱する熱処理を想定した組み合わせである。即ち、加熱処理の条件等に応じて、接点100の材料の組み合わせは、当該組み合わせ以外に選択してもよい。
以上の様に、表面層150は、第2導電層130の表面に第1導電層120を形成する材料を析出させて形成される。しかしながら、このような加熱処理によって接点材料を析出させる場合、接点材料の接点表面への析出量は、加熱温度および加熱時間等に敏感となり、一定量の析出量に制御することが困難となる場合があった。即ち、一定の厚さの表面層150を形成することが困難となることがあった。
例えば、接点材料の接点表面への析出量が過剰になった場合、表面層150の厚さが厚くなり、接点100の外部との接触抵抗が増加してしまうことになる。一方、接点材料の接点表面への析出量が過小になった場合、表面層150の厚さが薄くなり、第2導電層130の表面の酸化物の密度が低下してしまうことになる。第2導電層130の表面の酸化物が過小となると、接点100が外部の接点等と接触して離間する場合に、直ちに離間することができずに、接点100および外部の接点等が接触した状態を保ってしまう現象が生じる(擬着、またはsoft−stick)。また、第2導電層130の表面の酸化物が更に過小となると、接点100および外部の接点等が接触した状態を保持し続けてしまう現象も生じうる。
そこで、本実施形態に係る接点装置300は、接点100にバリア層140を設け、第1導電層120から第2導電層130の表面への析出量を抑制させる。これによって、接点装置300は、接点材料の接点表面への析出量と、加熱温度および加熱時間等との敏感な対応関係を緩和させ、一定の厚さの表面層150を容易に形成させる。接点装置300における、接点材料の接点表面への析出量および加熱処理について、図3および図4を用いて説明する。
図3は、本実施形態に係る接点100を形成させる場合の加熱条件の一例を示す。図3の横軸は時間を示し、縦軸は加熱温度を示す。図3は、真空チャンバ等の容器内に材料を載置し、当該容器内の温度および雰囲気を一定に制御する加熱装置の加熱プロファイルの一例を示す。即ち、接点装置300は、加熱装置の内部に載置され、このような加熱プロファイルに応じて熱処理される。
図3に示すように、接点装置300は、まず、略150度の温度状態に保たれる。そして、接点装置300は、略30分で略310度に昇温され、略2時間30分程度の間、略310度に保持される。そして、接点装置300は、略3時間で略150度に降温され、1回の熱処理が終了する。なお、当該熱処理の過程において、接点装置300は、略一定の圧力および略一定のガス雰囲気に曝されることが望ましい。図3は、接点装置300が、略60Pa、ならびに窒素略77%および酸素略23%の雰囲気に曝されて加熱処理される例を示す。このような加熱処理を実行した結果を図4に示す。
図4は、本実施形態に係る接点100の表面に析出した金属の析出量の一例を示す。図4の横軸は加熱処理の回数を示し、縦軸は接点100の表面に析出した金属の析出量を示す。即ち、図4は、図3に示す加熱プロファイルによる加熱処理を1回または2回以上実行した場合に、接点100の表面に析出した金属の析出量の変化を示す。
図4は、サンプル1からサンプル3までの3つのサンプルを用いて、接点の表面における析出金属の析出量の変化をそれぞれ測定した結果を示す。サンプル1は、比較用の試料として、バリア層140を備えない接点とした。また、サンプル2は、本実施形態に係る接点100の例であり、バリア層140としてPtを5nm形成した接点である。なお、サンプル1およびサンプル2の差異は、バリア層140の有無であり、他の層の厚さおよび材質等は、略同一に形成した接点とした。また、サンプル3は、サンプル2と略同一の接点であり、1回熱処理を実行した後に、表面層150をArイオンビームで削る(ミリング)加工処理を施した接点である。
図4において、サンプル1として示したグラフは、金属層110としてAuを、第1導電層120としてNi−Crを、第2導電層130としてAu−Pd合金を、それぞれ用いた組み合わせの接点装置に加熱処理を1回実行し、接点表面に析出したNiの析出量の測定結果を示す。ここで、接点表面のNiの析出量は、オージェ電子分析法(AES:Auger Electron Spectroscopy)により測定した結果に基づき、算出した量である。
より具体的には、AESによる接点表面のNiの原子数濃度(at%:アトミックパーセント)の測定と、当該接点の深さ方向(基板10に向かう方向)のエッチングと、を繰り返す。これにより、接点100の深さ方向に対するNiの原子数濃度の変化を測定することができる。そして、接点の表面から深さ方向に60nm程度までにおけるNiの原子数濃度(at%:アトミックパーセント)の総量を算出して、析出量として換算した結果が、図4の縦軸である。
なお、接点の深さ方向のエッチングは、略5nm程度ずつ実行してよく、この場合、13回のAES測定結果を累積することで、略60nmの深さにおけるNiの原子数濃度の総量を換算する。このように、析出量としてAES測定結果を累積することは、接点の深さ方向を横軸とし、Niの原子数濃度を縦軸とした場合に、接点の表面から深さ60nmまでに描画されるグラフの面積を算出することに相当するので、当該析出量の単位を、「at%・nm」とする。
図4のサンプル1のグラフは、1回の熱処理によって、2720(at%・nm)程度のNiが析出されたことを示す。これに対して、図4のサンプル2のグラフは、1回の熱処理によって、210(at%・nm)程度のNiが析出されたことを示す。即ち、バリア層140を備える接点装置300は、1回の熱処理に対するNiの析出量を、1/10程度以下に抑制できることがわかる。
また、図4のサンプル2のグラフは、熱処理を1回ずつ繰り返すことにより、Niの析出量を110(at%・nm)程度ずつ増加させることがわかる。したがって、本実施形態に係る接点装置300は、1回の熱処理に対するNiの析出量を低減させ、複数回の熱処理を実行することにより、意図した析出量に調節することができる。例えば、Niの析出量の目標値(または設計値)が400から600(at%・nm)の場合、略5nmのPtをバリア層140として備える接点装置300は、図3に示す加熱処理を4回実行することにより、析出量を略550(at%・nm)にすることができる。
図4のサンプル3のグラフは、1回の熱処理によって、130(at%・nm)程度のNiが析出されたことを示す。即ち、ミリング処理によって、接点100の表面を削ったとしても、第2導電層130の内部は加熱処理を1回した状態(例えば、クラスタ等を形成した状態)であることから、熱処理を2回加えた結果と同程度の析出量が測定結果として取得されたと考えられる。即ち、このような加工処理を実行しても、本実施形態に係る接点装置300は、再現性よく、加熱処理に応じた析出量を析出できることがわかる。
即ち、本実施形態に係る接点装置300は、予め定められた(設定した、または設計した)加熱処理に応じて略一定の析出量を析出させ、略一定の厚さの表面層150を容易に形成できる。したがって、接点装置300は、接触抵抗を増加させることなく、他の接点等との擬着を防止する接点100を形成することができる。
図5は、本実施形態に係る接点装置300の第1の変形例の構成例を示す。図5の接点装置300において、図2に示された本実施形態に係る接点装置300の動作と略同一のものには同一の符号を付け、説明を省略する。第1の変形例の接点装置300は、ガラス基板20と、第4導電層220と、第5導電層230と、析出防止層240と、を備える。即ち、第1の変形例の接点装置300は、ガラス基板20の第1面に接点100を形成する例を示す。
ガラス基板20は、接点100等の形成に用いる基板材料として既知の材料である。また、このようなガラス基板20を用いる場合、下地層を介して接点100を形成することがある。第4導電層220は、このような下地層として、ガラス基板20よりも電気的接点側に設けられる。第4導電層220は、Ni−Cr合金を用いてよい。Ni−Cr合金は、ガラス基板20および金属等を含む導電層等の間に形成されることで、ガラス基板20および導電層の密着性を向上させ、信頼性の高い接点装置300を形成させることができる。
第5導電層230は、第4導電層220よりも電気的接点側に設けられる。第5導電層230は、例えば、メッキ法等によって形成される。第5導電層230は、一例として、Auを有する。即ち、第5導電層230は、図2に示す金属層110と略同一の機能を有してよい。
この場合、第4導電層220は、加熱されることで、第4導電層220の接点側に形成される第5導電層230に、第4導電層220を形成する材料(NiおよびCr)の一部を移動させてしまう場合がある。そして、このような材料が第5導電層230に移動することにより、第5導電層230の接点側の表面における平坦性の悪化が生じてしまうことがある。また、このような材料が第5導電層230に更に移動することにより、第5導電層230の剥離が生じてしまうことがある。
そこで、第1の変形例の接点装置300は、析出防止層240を第4導電層220および第5導電層230の間に設ける。析出防止層240は、第4導電層220の金属が第5導電層230における電気的接点側の表面へと析出するのを防ぐ。析出防止層240は、導電性の材料で形成されてよい。析出防止層240は、例えば、スパッタ法等によって形成される。析出防止層240は、第5導電層230と比較して、第4導電層220の材料の一部を第5導電層230へと移動させる経路を、加熱されても形成しにくい材料を含む。
析出防止層240は、例えば、第5導電層230と比較して融点が高い材料を含む。析出防止層240は、一例として、白金(Pt)を含む。析出防止層240は、第4導電層220および第5導電層230よりも薄く形成されてよい。即ち、析出防止層240は、加熱された場合に、当該析出防止層240に含まれる材料および当該析出防止層240の厚さに応じて、第4導電層220から第5導電層230へと移動する第4導電層220の材料の量を調節する。
このように、第1の変形例の接点装置300は、第4導電層220から第5導電層230へと移動する第4導電層220の材料の量を調節しつつ、ガラス基板20の第1面に第4導電層220および第5導電層230を安定に形成させることができる。そして、第1導電層120、第2導電層130、およびバリア層140は、第5導電層230における電気的接点側の面の一部に対応する範囲に形成される。第1の変形例の接点装置300において、第1導電層120、第2導電層130、およびバリア層140は、第5導電層230のガラス基板20とは反対側の面において、予め定められた領域、設計された領域、または設定された領域に形成される。
そして、このように積層させた接点材料を加熱処理することで、図5に示すように、第2導電層130のガラス基板20とは反対側の面に表面層150を形成できる。なお、第1導電層120、第2導電層130、バリア層140、および表面層150を備える接点100については、図1および図2で説明したのでここでは省略する。
図6は、本実施形態に係る接点装置300の第2の変形例を示す。第2の変形例の接点装置300は、図2および図5で説明した本実施形態に係る接点100を用い、接点間の電気的な接続および切断(導通および非導通)を切り換えるスイッチ装置を構成する。即ち、第2の変形例の接点装置300は、第1電気的接点および第2電気的接点を備え、第1電気的接点と、第2電気的接点との間を接触または離間させることにより第1電気的接点および第2電気的接点の間を電気的に接続または切断する。
なお、第2の変形例の接点装置300は、第1電気的接点が固定接点であり、第2電気的接点が可動接点である例を説明する。また、第2の変形例の接点装置300は、第1電気的接点が、図2および図5で説明した接点100を用いた例であり、当該第1電気的接点の表面に表面層150が設けられる。そして、第2電気的接点は、他の層から析出された表面層を有しない接点を用いた例を説明する。接点装置300は、パッケージ等に密封されて収容された装置であってよい。接点装置300は、基体下部310と、アクチュエータ330と、台座部420と、を備える。
基体下部310は、固定接点が設けられる平坦な第1面を有する。また、基体下部310は、第1面とは異なる第2面に、外部と電気信号および電源等を授受する配線部等を有してよい。基体下部310は、ガラス基板等の絶縁体であってよく、これに代えてシリコン等の半導体基板等であってよい。基体下部310は、ビア312と、配線部314と、グランド線316と、グランド線318と、第1信号線320と、第1接点322と、第2信号線324と、第1接点326と、を有する。
ビア312は、基体下部310を貫通して金属で被覆されることで、第1面に形成される電気配線と第2面に形成される電気配線とを電気的に接続する。一例として、ビア312は、第1接点322と第2面に形成された配線部314とを電気的に接続する。また、ビア312は、導電性材料が充填されて、貫通孔が形成される基体下部310の上面と下面の密閉性を保つように形成されてよい。ビア312は、基体下部310に設けられる接点、外部と授受する電気信号、および電源の数等に応じて、基体下部310に複数設けられてよい。
配線部314は、接点装置300を通過させる信号、アクチュエータ330に供給する電気信号、または電源電圧等を伝送する。配線部314は、少なくとも1つのビア312に対して信号を送信または受信させるべく、基体下部310の第1面または第2面に設けられる導電性の配線パターンであってよい。また、配線部314は、接点装置300を囲う壁面等に設けられてもよい。配線部314は、ランド、コネクタ、および/またはアンテナ等を含み、外部から接点装置300に通過させる信号を送受信してよい。
グランド線316およびグランド線318は、基体下部310の第1面に設けられ、ビア312および配線部314を介して外部の基準電圧等に接続される。ここで、基準電圧は、例えば、接地電位(=0V)である。グランド線316およびグランド線318は、導電性の配線パターンでよい。
第1信号線320および第2信号線324は、基体下部310の第1面の、グランド線316およびグランド線318の間に設けられる。第1信号線320および第2信号線324は、導電性の配線パターンでよい。
ここで、グランド線316、グランド線318、第1信号線320、および第2信号線324は、コプレーナ伝送線路を形成してよい。即ち、第1信号線320および第2信号線324の線幅、第1信号線320および第2信号線324とグランド線316との間隔、ならびに第1信号線320および第2信号線324とグランド線318との間隔は、第1信号線320および第2信号線324の特性インピーダンスに応じて予め定められた値で形成される。これによって、第1信号線320および第2信号線324は、数十GHzに至る高周波信号を伝送することができる。
なお、接点装置300を通過させる電気信号が、コプレーナ伝送線路を形成しなくても伝送できる程度の低周波信号の場合、グランド線316およびグランド線318は無くてもよい。
第1信号線320には、第1接点322が、第2信号線324には、第1接点326が、それぞれ設けられる。ここで、第1接点322および第1接点326が、本実施形態に係る第1電気的接点である。即ち、第1接点322および第1接点326は、表面に表面層150が設けられる。なお、基体下部310をガラス基板で形成する場合、基体下部310、第1信号線320、第2信号線324、第1接点322、および第1接点326は、図5で説明した第1の変形例の接点装置300のように形成されてよい。なお、この場合、第1信号線320および第2信号線324が、第5導電層230に対応してよい。
アクチュエータ330は、第2接点334を有し、第2接点334を移動させて第1接点322および第1接点326と接触または離間させる。アクチュエータ330は、第2接点部332と、第1圧電膜336と、第2圧電膜338と、支持層350と、突出部356と、第1圧電膜336の電極層362および電極層364と、第2圧電膜338の電極層366および電極層368と、を有する。
第2接点部332には、第2接点334が設けられる。第2接点334は、第1接点322および第1接点326と同様の金属を含んでよい。ここで、第2接点334が、本実施形態に係る第2電気的接点である。即ち、第2接点334は、表面に表面層150が形成されない。第2接点334は、凸部または突起を有する形状であってよい。これに代えて、第2接点334は、凸部等のない平面であってもよい。
第2接点334は、第1接点322および第1接点326の破壊または劣化を防ぐように、半球状の形状であってよく、これに代えて先端を丸めた針状の形状であってもよい。一例として、第2接点334は、第1接点322および第1接点326と接触して伝送線路を形成する場合に、伝送する信号の周波数に応じた伝送線路幅等を形成するように、予め定められた形状で設けられてよい。
本実施例において、接点装置300は、第1接点322および第1接点326が基体下部310に設けられ、1つの第2接点334と接触または離間する。これにより、接点装置300は、第2接点334を介して第1接点322および第1接点326の間の電気的導通または非導通を切り換えることができる。一例として、2つの別個の配線部314が、第1接点322および第1接点326にそれぞれ接続され、一方の配線部314は、外部からの電気信号を第1接点322へと伝送し、他方の配線部314は、接点装置300がONの場合に、第2接点334を介して第1接点326へと伝わる当該電気信号を外部へと伝送する。
これに代えて、接点装置300は、基体下部310に1つの第1接点322を有し、アクチュエータ330に外部からの電気信号を第2接点334へと伝送する配線を有してもよい。また、当該配線は、第1接点322に伝送される外部からの電気信号を、第2接点334を介して受け取り、外部へと伝送してもよい。このように、接点装置300は、第1接点322から第2接点334への信号伝送をON/OFFし、ONの場合に、外部から入力された信号を第1接点322から第2接点334を介して外部へと伝送してよい。
第1圧電膜336は、支持層350の上面に形成される。第1圧電膜336は、第1駆動電圧に応じて伸縮してよい。この場合、第1圧電膜336は、第1駆動電圧を印加された場合に、アクチュエータ330の長さ方向に伸縮して、第1接点322および第1接点326と第2接点334との距離が変化する方向にアクチュエータ330を湾曲させるように配される。
第1圧電膜336は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)のウルツ鉱型の結晶、またはチタン酸バリウム(BTO)等のペロブスカイト系強誘電体等により形成されてよい。
第2圧電膜338は、支持層350を介して第1圧電膜336に対向して、支持層350の第1圧電膜336が形成される面とは反対側の面に設けられ、第2駆動電圧に応じて伸縮してアクチュエータ330のそり量を変化させる。第2圧電膜338は、第2駆動電圧を印加された場合に、アクチュエータ330の長さ方向に伸縮して、第1接点322および第1接点326と第2接点334との距離が変化する方向にアクチュエータ330を湾曲させるように配される。
第2圧電膜338は、第1圧電膜336と同様に、ペロブスカイト系強誘電体等を用いてよい。第2圧電膜338は、第1圧電膜336と略同一の材料で、かつ、第1圧電膜336と略同一の形状で形成されることが望ましい。また、第1圧電膜336および第2圧電膜338の膜厚は、0.1μm〜5μmの範囲で形成されてよい。
支持層350は、第1圧電膜336および第2圧電膜338の間に設けられる。支持層350は、力の印加によって変形する弾性を有し、第1圧電膜336および/または第2圧電膜338が伸縮して力を印加することによって、湾曲される。また、支持層350は、アクチュエータ330が撓みすぎるのを抑制する剛性を有し、第1圧電膜336および第2圧電膜338への電界の印加が停止すると、アクチュエータ330は初期位置に戻る。
支持層350は、絶縁材料で形成されてよい。支持層350は、絶縁材料で形成されることで、例えば700℃程度の圧電膜の焼成温度に耐え、金属膜よりも安価なCVD等の製造方法により短時間で形成することができる。支持層350は、例えば、酸化シリコン(SiO2)または窒化シリコン(SiN)を含む。これに代えて、支持層350は、アルミニウム、金、白金等の導電体、ガラス等の絶縁体、またはシリコン等の半導体を用いてよい。また、支持層350の膜厚は、0.1μm〜50μmの範囲で形成されてよい。
突出部356は、アクチュエータ330の可動端である先端部において、第1圧電膜336および第2圧電膜338が設けられていない支持層350の部分である。第2接点部332は、突出部356上に設けられてよい。これによって、第2接点334は、電極層362、電極層364、電極層366、および電極層368と離間された位置に形成することができ、それぞれの電極層に供給される電気信号の影響を低減させることができる。
また、突出部356は、第1接点322および第1接点326と第2接点334とが接触してON状態になった場合に、第1信号線320および第2信号線324の伝送線路から、電極層362、電極層364、電極層366、および電極層368の4つの電極までの距離を、予め定められた距離以上に離間させることができる。これによって、突出部356は、それぞれの電極層に供給される電気信号に起因して発生する雑音等が、コプレーナ伝送線路を伝送する信号に加わる影響を低減させることができる。
電極層362および電極層364は、第1圧電膜336の上面および下面に設けられ、第1圧電膜336に第1駆動電圧を印加する。ここで、第1駆動電圧は、正または負の予め定められた電圧でよい。
電極層362および電極層364は、アクチュエータ330の長さ方向Lに延伸する平板形状を有してよい。電極層362および電極層364は、アルミニウム、金、白金、銅、インジウム、タングステン、モリブデン、ルテニウム、イリジウム等の低抵抗で加工が容易な金属であってよく、ルテニウムオキサイド(RuO2)、イリジウムオキサイド(IrO2)等酸化物電極、セラミック電極、または、シリコン等の半導体を用いてもよい。
電極層366および電極層368は、第2圧電膜338の上面および下面に設けられ、第2圧電膜338に第2駆動電圧を印加する。ここで、第2駆動電圧は、正または負の予め定められた電圧でよい。電極層366および電極層368は、アクチュエータ330の長さ方向Lに延伸する平板形状を有してよい。電極層366および電極層368は、電極層362および電極層364と略同一の形状、および略同一の材質でよい。
また、電極層366は、電極層364と略同一の形状および略同一の材質でよく、電極層368は、電極層362と略同一の形状および略同一の材質でよい。これらの電極層362、電極層364、電極層366および電極層368の膜厚は、0.05μm〜1μmの範囲で形成されてよい。
台座部420は、一部がアクチュエータ330の一端を固定してアクチュエータ330の固定端となる。台座部420については、図7で説明する。
図7は、本実施形態に係る接点装置300の第2の変形例の側面図を示す。接点装置300は、基体下部310と、キャビティ部410と、台座部420と、基体上部430と、を備え、これらが接合されることで、第1接点322、第1接点326、第2接点334、およびアクチュエータ330が封止される。
キャビティ部410は、基体下部310上に設けられ、接点装置300の側壁の一部としてアクチュエータ330を収容するように四方を覆う。キャビティ部410は、基体下部310と略同一の材質で形成されてよい。
台座部420は、キャビティ部410上に設けられ、一部がアクチュエータ330の一端を固定してアクチュエータ330の固定端となる。基体下部310、台座部420、およびキャビティ部410が接合されることにより、第1接点322および第1接点326と第2接点334との間の相対的な配置が定まることになる。なお、第1接点322および第1接点326と第2接点334との間の距離は、アクチュエータ330の最大変位量と同等もしくはそれ以下となる。即ち、基体下部310および台座部420の間の距離は、第1接点322および第1接点326と第2接点334の間の距離を定める。
ここで、アクチュエータ330の最大変位量とは、第1圧電膜336および/または第2圧電膜338に印加できる最大の駆動電圧を印加した場合における、アクチュエータ330の変位量を意味してよい。台座部420は、半導体材料をエッチングすることで形成されてよい。台座部420は、一例として、シリコン基板から形成される。この場合、台座部420は、キャビティ部410と陽極接合によって接合されてよい。
基体上部430は、台座部420上に設けられ、基体下部310、キャビティ部410、および台座部420で形成されるスイッチ装置のパッケージの蓋部となる。基体上部430は、ガラス等で形成される基板でよい。この場合、基体上部430は、台座部420と陽極接合によって接合されてよい。
以上の本実施形態に係る接点装置300は、第1電源部380と、第2電源部382と、制御部390とに接続されてスイッチ動作する。
第1電源部380は、第1圧電膜336に第1駆動電圧を印加する。第1電源部380は、制御部390の制御信号を受信して、制御信号に応じた駆動電圧を第1駆動電圧として第1圧電膜336に印加する。第2電源部382は、第2圧電膜338に第2駆動電圧を印加する。第2電源部382は、制御部390の制御信号を受信して、制御信号に応じた駆動電圧を第2駆動電圧として第2圧電膜338に印加する。
基準電圧384は、予め定められた電圧を供給する。本実施例において、基準電圧384は、GND(0V)電圧である。
制御部390は、第1電源部380および/または第2電源部382に制御信号を送信して、第1圧電膜336および/または第2圧電膜338を伸縮させる駆動電圧の印加または遮断を指示する。例えば、制御部390は、第1接点322および第1接点326と第2接点334とを接触させて接点装置300をON状態にする場合に、第2圧電膜338に第2駆動電圧を印加して第2圧電膜338を縮める制御信号を第2電源部382に送信する。また、制御部390は、第1接点322および第1接点326と第2接点334とを離間させて接点装置300をOFF状態にする場合に、第2圧電膜338への第2駆動電圧の供給を停止する制御信号を第2電源部382に送信する。
以上の第2の変形例の接点装置300は、第1電気的接点および第2電気的接点を接触および離間させるスイッチ動作を実行することができる。そして、接点装置300は、第1電気的接点に表面層150を設けることにより、第1電気的接点および第2電気的接点の擬着を防止できる。したがって、接点装置300は、第1電気的接点および第2電気的接点を接触した後に、離間させても、直ちに接点間を離間させることができ、スイッチのOFF動作を高速に実行できる。
また、接点装置300は、第1電気的接点の表面層150の厚さを適切な厚さに形成することができるので、接触抵抗を0.5Ω程度以下とすることができる。したがって、接点装置300は、第1電気的接点および第2電気的接点を接触した場合に、ON抵抗を0.5Ω程度以下とするON動作を実行できる。
なお、第2の変形例の接点装置300において、第1電気的接点および第2電気的接点を接触および離間させるアクチュエータ330は、一例であって、これに限定されない。例えば、アクチュエータ330は、第1接点322および第1接点326とは反対側の基体上部430側に固定される例を説明したが、これに代えて、基体下部310またはキャビティ部410に固定されてもよい。
また、アクチュエータ330は、2つの圧電膜を備えるバイモルフ型を説明したが、これに代えて、1つの圧電膜を有するユニモルフ型であってもよい。また、アクチュエータ330は、突出部356を有する例を説明したが、当該突出部356は無くてもよい。また、アクチュエータ330は、圧電膜を有する圧電型のアクチュエータの例を説明したが、これに代えて、熱駆動型のアクチュエータであってもよい。また、可動接点である第2接点334は、表面に表面層150が形成されない例を説明したが、これに代えて、第2接点334も、表面に表面層150が形成されてよい。
以上の本実施形態に係る接点装置300は、加熱処理により、接点100が形成されることを説明した。ここで、当該加熱処理は、接点100を形成する目的だけで実行される処理でよく、これに代えて、接点装置300を構成する接点100以外の部分を形成する目的で実行する加熱処理でもよい。例えば、第2の変形例の接点装置300は、基体上部430および台座部420との接合において、加熱処理されてよい。接点装置300は、このような加熱処理によって、接点100が形成されてよい。
図8は、本実施形態に係る第2の変形例の接点装置300を形成するフローの一例を示す。まず、基体下部310を形成する(S600)。例えば、ガラス基板に、ビア312、配線部314等を形成する。次に、基体下部310およびキャビティ部410を融着する。キャビティ部410は、ガラス基板でよく、当該ガラス基板にアクチュエータ330を収容する貫通孔が形成されてから、基体下部310に接合される。
次に、基体下部310の第1面に、第4導電層220および析出防止層240を形成する。そして、析出防止層240の上面に、金属層である第5導電層230を形成する(S610)。なお、第5導電層230を形成する段階までに、配線部314、グランド線316、グランド線318、第1信号線320、および第2信号線324が基体下部310の第1面に形成されてよい。即ち、例えば、基体下部310の第1面に、第5導電層230、配線部314、グランド線316、グランド線318、第1信号線320、および第2信号線324が、Auメッキによって形成されてよい。
次に、第1導電層120を形成する(S620)。第1導電層120は、膜厚が100nm以上のNi−Cr合金でよい。
次に、第1導電層120よりも電気的接点側に、第1導電層120から電気的接点の表面への析出量を抑制する導電性のバリア層140を形成する(S630)。バリア層140は、例えば、厚さが50nm未満に形成される。バリア層140は、10nm程度以下に形成されてよい。また、バリア層140は、厚さが3〜10nmに形成されることが好ましい。バリア層140は、一例として、厚さが5nmに形成される。バリア層140は、Pt層でよい。
次に、バリア層140よりも電気的接点側に、第2導電層130を形成する(S640)。第2導電層は、パラジウムの含有率が20原子%以下のAu−Pd合金でよい。第2導電層は、膜厚が1μm以下に形成されてよい。これにより、第1導電層120、バリア層140、および第2導電層130が、ガラス基板上に形成され、固定接点である第1電気的接点の接点材料が積層されることになる。
次に、加熱処理によって、第1導電層120の金属を、バリア層140を介して第2導電層130における電気的接点側の表面に析出させて表面層150を形成する(S650)。表面層150を形成する工程は、酸素雰囲気中で加熱処理を行って、第1導電層120の金属の酸化物を含む表面層150を形成させてよい。また、当該加熱処理は、図3に示すような加熱条件で実行されてよい。即ち、表面層150を形成する工程において、加熱処理は複数回実行されてよい。
なお、接点装置300を形成する過程において、接点100以外の部分を形成する目的で加熱処理の工程を有する場合、表面層150を形成する工程は、表面層150を完全に形成しなくてよい。例えば、図3に示すような加熱条件の加熱処理を4回繰り返すことで表面層150が形成される場合、4回未満の加熱処理を実行して、表面層150を形成する工程を終了してよい。これに代えて、接点装置300を形成する過程において、接点100以外の部分を形成する目的で加熱処理の工程を有さない場合、表面層150を形成する工程は、表面層150を完全に形成してよい。
次に、可動接点である第2接点334を有するアクチュエータ330を形成する(S660)。アクチュエータ330は、ゾルゲル法およびCVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)法等を用いる半導体製造装置等によって成膜されてよい。アクチュエータ330は、半導体基板に形成してよい。アクチュエータ330は、半導体基板上に、第1電極層362、第1圧電膜336、第2電極層364、支持層350、第3電極層366、第2圧電膜338、および第4電極層368をそれぞれ積層して形成してよい。
次に、突出部356上に、第2接点部332を形成する。次に、半導体基板を加工して、台座部420を形成する。ここで、台座部420は、アクチュエータ330が形成される面と反対の他方の面から、半導体基板の一部がエッチングによって除去されて形成される。台座部420が形成されることにより、アクチュエータ330の一端は半導体基板と分離されて可動端となり、台座部420に固定された他端を固定端として自立する。このようにして、半導体基板上に、アクチュエータ330が形成されてよい。即ち、可動接点である第2電気的接点が形成されることになる。なお、アクチュエータ330は、基体下部310とは別個の半導体基板に形成されるので、基体下部310の形成から表面層150を形成するまでの工程とは、別個独立に形成してよい。
次に、アクチュエータ330が形成された台座部420をキャビティ部410の上面に接合する(S670)。ここで、キャビティ部410および台座部420を接合した後に、アクチュエータ330の各電極と、基体下部310上の対応する配線部314とを電気的に配線してよい。そして、台座部420と基体上部430とを接合する。これによって、アクチュエータ330は、キャビティ部410の貫通孔内部に密封されてよい。
なお、キャビティ部410および台座部420、ならびに台座部420および基体上部430の2回の接合は、陽極接合を用いてよい。即ち、表面層150を形成する工程の後に、ガラス基板を他の基板に陽極接合する工程が実行される。陽極接合は加熱処理を含むので、陽極接合により、基体下部310も加熱されることになる。そこで、当該加熱処理を含めて、接点100が形成されるように、表面層150を形成する工程における加熱条件と、陽極接合する工程における加熱条件とを設定してよい。
例えば、図3に示すような加熱条件の加熱処理を4回実行する場合、第1電気的接点の接点材料を積層してから、表面層150を形成する工程において当該加熱処理を2回実行する。そして、図3に示すような加熱条件で、2回の陽極接合をそれぞれ実行することで、合計4回の加熱処理が実行されることになり、本実施形態に係る接点100を形成することができる。これにより、接点装置300が形成されることになる。
なお、各基板に形成される接点装置300の部分をそれぞれ複数形成することにより、接点装置300を同時に複数形成してもよい。この場合、陽極接合の後に、ダイシングによって、個々の装置を切り離してよい。接点装置300は、第1電源部380、第2電源部382、および基準電圧384と接続されることで、第2の変形例の接点装置300を駆動することができる。
以上のように、本実施形態に係る接点装置300は、複数の加熱処理によって、接点100を形成することができる。そして、接点装置300の接点100以外の部分を形成する工程において、加熱処理する工程が設けられる場合、当該加熱処理の加熱条件と、接点100を形成する加熱条件とを適切に設定することで、接点100に過剰な熱が加わることを防止し、効率的に接点装置300全体を形成することができる。
以上の本実施形態に係る接点装置300は、表面層150を形成する工程において加熱処理を2回実行し、その後、陽極接合を2回実行する例を説明した。即ち、接点装置300は、表面層150を形成した後に実行する加熱処理の回数に応じて、表面層150を形成する工程における加熱処理の回数を決定してよい。
なお、図3に示す加熱装置の加熱プロファイルは、陽極接合に用いる加熱プロファイルでよい。即ち、接点装置300は、バリア層140を備えることで、陽極接合に用いる加熱条件において、複数回の加熱処理で接点100を形成するように、第1導電層120から電気的接点側の表面への析出量を抑制してよい。
また、本実施形態に係る接点装置300は、略同一の加熱プロファイルの加熱処理を複数回繰り返すことで、接点100が形成される例を説明した。これに代えて、接点装置300は、異なる加熱プロファイルの加熱処理を複数回繰り返して、接点100が形成されてもよい。これにより、より精密な表面層150を形成することができ、また、製造プロセスの設計自由度を増加させることができる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。
請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。