〔第1の実施の形態〕
以下、図面を参照して本発明の第1の実施の形態について説明する。図1乃至図13は、本実施の形態による紙幣処理機の構成を示す図である。このうち、図1は、本実施の形態による紙幣処理機の概略的な構成を示す概略構成図である。また、図2、図3、図4Aおよび図4Bは、図1に示す紙幣処理機の入出金部に設けられた金属異物検知部の構成を示す図である。なお、図5乃至図7は、比較例としての従来技術の金属異物検知部の様々な構成を示す図である。また、図8乃至図11は、図1に示す紙幣処理機における入出金部の構成を示す構成図であって、紙幣の入金処理を行う際の動作を示す図である。また、図12は、図1に示す紙幣処理機における入出金部を上方から見たときの載置部の構成を示す上面図である。また、図13は、図1に示す紙幣処理機の機能ブロック図である。
まず、本実施の形態に係る紙幣処理機10の全体構成について図1を用いて説明する。図1に示すように、本実施の形態による紙幣処理機10は、上部筐体12および下部筐体14を備えている。上部筐体12には、当該上部筐体12の外部から内部に紙幣を投入したり上部筐体12の内部から外部に紙幣を投出したりするための入出金部20が設けられている。入出金部20の構成の詳細については後述する。また、上部筐体12の内部において、紙幣を1枚ずつ搬送する搬送部40が入出金部20に接続されている。搬送部40には識別部42が設けられており、当該搬送部40により搬送される紙幣は識別部42によりその金種、真偽、正損等の識別が行われるようになっている。また、搬送部40には斜行矯正部44が設けられており、入出金部20から搬送部40に繰り出された紙幣が斜行状態で搬送されているときには斜行矯正部44によりその斜行状態が矯正されるようになっている。また、搬送部40にはテープ巻取方式の一時保留部46が接続されている。一時保留部46は、正逆両方向に回転可能なドラムを有しており、このドラムに一対のテープが巻き取られるようになっている。そして、搬送部40から一時保留部46に送られた紙幣は、この一対のテープの間に挟まれた状態で1枚ずつ順次ドラムにより巻き取られて収納されるようになっている。また、ドラムを逆転させると、巻き取られた紙幣が1枚ずつ繰り出されて、搬送部40に送られるようになっている。また、搬送部40には位置合わせ部48が設けられており、この位置合わせ部48により、搬送部40により搬送される紙幣が搬送路の幅方向における所定の位置(例えば、中央位置)となるよう位置合わせが行われるようになっている。また、搬送部40には偽券用収納部49が接続されており、識別部42により偽券であると識別された紙幣や真偽が不確定であると識別された紙幣は搬送部40により偽券用収納部49に送られて当該偽券用収納部49に収納されるようになっている。
また、下部筐体14はいわゆる金庫となっており、管理者等の、特定の権限を有する者のみがこの下部筐体14の扉を開けて内部にアクセスすることができるようになっている。また、下部筐体14の内部には、紙幣を1枚ずつ搬送する搬送部41が設けられており、この搬送部41は上部筐体12内に設けられた搬送部40と接続されている。このことにより、上部筐体12内と下部筐体14内との間で紙幣の受け渡しを行うことができるようになっている。また、下部筐体14内には複数の紙幣収納繰出カセット50が並列に設けられており、各紙幣収納繰出カセット50はそれぞれ搬送部41に接続されている。各紙幣収納繰出カセット50は搬送部41から送られた紙幣を例えば金種別に収納するようになっている。また、各紙幣収納繰出カセット50には、収納された紙幣を1枚ずつ搬送部41に繰り出す紙幣繰出機構(図示せず)が設けられている。また、下部筐体14内には複数の紙幣収納カセット52が並列に設けられており、各紙幣収納カセット52はそれぞれ搬送部41に接続されている。各紙幣収納カセット52は搬送部41から送られた紙幣を収納するようになっている。また、各紙幣収納カセット52には、対応する金種の紙幣収納繰出カセット50が満杯であるため当該紙幣収納繰出カセット50に収納できないようなオーバーフロー紙幣、識別部42により偽券であると識別された紙幣、各紙幣収納繰出カセット50に金種が割り当てられていない紙幣、出金に利用できない損券、出金処理時において入出金部20に送られた後に操作者(顧客)が取り忘れた紙幣(取り忘れ紙幣)等が収納されるようになっている。また、上述した様々な種類の紙幣をどの紙幣収納カセット52に収納するかを任意で設定することができるようになっている。
次に、このような紙幣処理機10において入金処理や出金処理等の様々な処理を行う際の動作について説明する。
紙幣処理機10において紙幣の入金処理を行う際には、操作者はタッチパネル等の操作表示部80(後述)によって入金指令を入力することにより入出金部20のシャッタ28(後述)を開く。その後、入出金部20に紙幣を投入すると、入出金部20のシャッタ28が閉じられた後に、この入出金部20に設けられた第1の紙幣繰出機構24(後述)により紙幣が1枚ずつ搬送部40に繰り出される。搬送部40に繰り出された紙幣は斜行矯正部44によりその斜行状態が矯正された後、識別部42により金種、真偽、正損等の識別が行われる。識別部42により偽券であると識別された紙幣や真偽が不確定であると識別された紙幣は搬送部40により偽券用収納部49に送られてこの偽券用収納部49に収納される。また、識別部42により正常な紙幣であると識別された紙幣は搬送部40により一時保留部46に送られ、この一時保留部46で一時的に保留される。また、識別部42により正常な紙幣ではないと識別されたリジェクト紙幣が搬送部40により入出金部20に戻されるようになっていてもよい。そして、入出金部20に投入された紙幣が全て上部筐体12の内部に繰り出されて一時保留部46や偽券用収納部49等に送られた後、操作者が操作表示部80(後述)によって入金確定の指令を入力すると、一時保留部46に一時的に保留されていた紙幣は搬送部40、41により各紙幣収納繰出カセット50に金種別に収納される。
また、紙幣処理機10において紙幣の出金処理を行う際には、各紙幣収納繰出カセット50に収納されている紙幣が当該紙幣収納繰出カセット50に設けられた紙幣繰出機構により1枚ずつ搬送部41に繰り出され、搬送部41から搬送部40に受け渡された後に識別部42により金種、真偽、正損等の識別が行われる。そして、識別部42により正常な紙幣であると識別された紙幣は、位置合わせ部48により搬送路の幅方向における所定の位置(例えば、中央位置)となるよう位置合わせが行われた後、入出金部20に送られてこの入出金部20に集積される。一方、識別部42により正常な紙幣ではないと識別された紙幣は一時保留部46に送られ、この一時保留部46で一時的に保留される。そして、所定の金額の紙幣が各紙幣収納繰出カセット50から入出金部20に送られると、入出金部20のシャッタ28が開かれることにより、操作者は入出金部20から紙幣を上部筐体12の外部に取り出し可能となる。また、一時保留部46で一時的に保留される紙幣は当該一時保留部46から繰り出され、この繰り出された紙幣は搬送部40および搬送部41により紙幣収納繰出カセット50または紙幣収納カセット52に送られる。なお、入出金部20のシャッタ28が開かれた後、所定の時間が経過しても当該入出金部20から紙幣が取り出されなかったときには、入出金部20から第2の紙幣繰出機構26(後述)により紙幣が1枚ずつ搬送部40に繰り出され、識別部42を通過することにより当該紙幣の金種が確認された後に一時保留部46に一時的に保留され、その後、一時的に保留された紙幣が一時保留部46から繰り出され、この繰り出された紙幣は搬送部40および搬送部41により紙幣収納繰出カセット50または紙幣収納カセット52に送られる。また、入出金部20のシャッタ28が開かれた後、所定の時間が経過しても当該入出金部20から紙幣が取り出されなかったときに、入出金部20から第2の紙幣繰出機構26(後述)により紙幣が1枚ずつ搬送部40に繰り出され、位置合わせ部48を通過した後に識別部42を通過することにより当該紙幣の金種が確認され、その後、この紙幣が搬送部40および搬送部41により紙幣収納繰出カセット50または紙幣収納カセット52に送られるようになっていてもよい。
次に、このような紙幣処理機10に設けられた入出金部20の構成の詳細について図8乃至図12を用いて説明する。なお、図8乃至図11において入出金部20にある紙幣を参照符号Pで示している。
図8乃至図12に示すように、入出金部20には、複数の紙幣が立位状態で載置される載置部22が設けられている。ここで、図12は、入出金部20を上方から見たときの載置部22の構成を示す上面図である。図12に示すように、載置部22は左右一対の側壁21の間に形成されており、この載置部22の底面23には平行に延びる複数の棒状の載置部材(リブ)23aが設けられている。そして、載置部22において紙幣の束は複数の載置部材23aをまたがるようこれらの載置部材23aの上で立位状態で載置されるようになっている。また、各載置部材23aの間には、硬貨やクリップ等の、紙幣以外の異物を落下させるのに十分な大きさを有する空間23bが形成されている。ここで、各載置部材23aの断面形状は山形状となっており、この山形状の断面の頂部のみが紙幣の束の下端縁と接するようになっている。各載置部材23aの断面形状がこのような山形状となっていることにより、紙幣の束の下端縁と各載置部材23aとの間の接触面積が小さくなり、後述する押さえ部材34により紙幣の束が後述する第1の紙幣繰出機構24に向かって押圧される際に各載置部材23aが紙幣の移動の妨げにならないようになっている。また、図8乃至図11に示すように、載置部22の下方には、各空間23bを通って載置部22から落下した異物を受ける異物受け部25が設けられている。
また、図8乃至図11に示すように、載置部22における一方の側部には、当該載置部22に立位状態で載置された紙幣を上部筐体12の内部に繰り出すための第1の紙幣繰出機構24が設けられている。第1の紙幣繰出機構24は、載置部22に載置されている紙幣のうち図8等における最も左下側にある紙幣を下方に蹴り出すキッカローラ24aと、キッカローラ24aにより下方に蹴り出された紙幣を上部筐体12の内部に繰り出して搬送部40に送るフィードローラ24bと、フィードローラ24bと当接するよう設けられ、当該フィードローラ24bとの間でゲート部(ニップ部)を形成する対向ローラ24cとを有している。ここで、キッカローラ24aにより複数枚の紙幣が下方に蹴り出された場合でも、フィードローラ24bと対向ローラ24cとの間に形成されたゲート部により紙幣が1枚ずつに分離されるようになっている。
また、載置部22における他方の側部にも、当該載置部22に立位状態で載置された紙幣を上部筐体12の内部に繰り出すための第2の紙幣繰出機構26が設けられている。ここで、第2の紙幣繰出機構26は、紙幣の出金処理が行われる際に搬送部40から載置部22に送られた紙幣を再び上部筐体12の内部に繰り出すときに用いられるようになっている。第1の紙幣繰出機構24と同様に、第2の紙幣繰出機構26は、載置部22に載置されている紙幣のうち当該第2の紙幣繰出機構26に最も近い紙幣を下方に蹴り出すキッカローラ26aと、キッカローラ26aにより下方に蹴り出された紙幣を上部筐体12の内部に繰り出して搬送部40に送るフィードローラ26bと、フィードローラ26bと当接するよう設けられ、当該フィードローラ26bとの間でゲート部(ニップ部)を形成する対向ローラ26cとを有している。ここで、キッカローラ26aにより複数枚の紙幣が下方に蹴り出された場合でも、フィードローラ26bと対向ローラ26cとの間に形成されたゲート部により紙幣が1枚ずつに分離されるようになっている。また、紙幣の出金処理において搬送部40から載置部22に紙幣を送る際に、搬送部40から送られた紙幣はフィードローラ26bと対向ローラ26cとの間に形成されたゲート部を通って載置部22に立位状態で載置されるようになっている。
また、入出金部20には、載置部22の開閉を行うシャッタ28が設けられている。このシャッタ28は、図8に示すような、載置部22を開いて操作者が当該載置部22内に手を入れることができるような開放位置と、図9乃至図11に示すような、載置部22を閉じて操作者が当該載置部22内に手を入れることができないような閉止位置との間で移動するようになっている。
また、第1の紙幣繰出機構24のキッカローラ24aの近傍には、載置部22における第1の紙幣繰出機構24側の側面を構成するガイド部30が設けられている。ガイド部30は、載置部22の底面23に沿って、第1の紙幣繰出機構24に向かう方向および第1の紙幣繰出機構24から遠ざかる方向に移動自在となっている。
また、入出金部20には、載置部22に載置された紙幣の束を第1の紙幣繰出機構24に向かって押圧する押さえ部材34が設けられている。この押さえ部材34は、載置部22の底面23に沿って、第1の紙幣繰出機構24に向かう方向および第1の紙幣繰出機構24から遠ざかる方向に移動自在となっている。そして、載置部22に紙幣が載置されている状態で、押さえ部材34が第1の紙幣繰出機構24に向かう方向に移動したときに、載置部22に載置されている紙幣の束が押さえ部材34により第1の紙幣繰出機構24に向かって押圧され、載置部22に載置されている紙幣のうち図8等における最も左下側にある紙幣が第1の紙幣繰出機構24により上部筐体12の内部に繰り出されるようになっている。
また、入出金部20には、載置部22を複数の領域に区分けするための第1の仕切り部材36および第2の仕切り部材38が設けられている。これらの第1の仕切り部材36および第2の仕切り部材38は、それぞれ、載置部22の底面23に沿って、第1の紙幣繰出機構24に向かう方向および第1の紙幣繰出機構24から遠ざかる方向に移動自在となっている。そして、ガイド部30と押さえ部材34との間には、紙幣の入金処理が行われる際に操作者により紙幣が投入される入金領域が形成されるようになっており、また、第1の仕切り部材36と第2の仕切り部材38との間には、紙幣の出金処理が行われる際に搬送部40からフィードローラ26bと対向ローラ26cとの間に形成されたゲート部を通って紙幣が送られる出金領域が形成されるようになっている。また、前述した押さえ部材34は、ガイド部30と第1の仕切り部材36との間に位置するようになっている。
また、図13に示すように、本実施の形態の紙幣処理機10には、当該紙幣処理機10の各構成要素の制御を行う本体制御部70が設けられている。本体制御部70には入出金部20、搬送部40、識別部42、斜行矯正部44、一時保留部46、位置合わせ部48、紙幣収納繰出カセット50がそれぞれ接続されている。ここで、識別部42による紙幣の識別結果は本体制御部70に送られるようになっている。また、本体制御部70は、入出金部20、搬送部40、斜行矯正部44、一時保留部46、位置合わせ部48、紙幣収納繰出カセット50の各々に指令信号を送ることによりこれらの構成要素の制御を行うようになっている。また、図13に示すように、本体制御部70には操作表示部80、記憶部82、印字部84、通信部86がそれぞれ接続されている。操作表示部80は紙幣処理機10の上部筐体12の前面または上面に設けられたタッチパネル等からなり、紙幣処理機10における紙幣の処理状況や在高等に係る情報を表示するとともに、操作者が操作表示部80により様々な指令を入力可能なように構成されている。また、記憶部82は、紙幣処理機10における紙幣の処理状況や在高等に係る情報を記憶するようになっている。また、印字部84は、紙幣処理機10における紙幣の処理状況や在高等に係る情報をレシート等に印字するプリンタ等からなる。また、通信部86は、紙幣処理機10の外部に設けられた上位装置等の外部装置と信号の送受信を行うようになっている。
また、図13に示すように、入出金部20には当該入出金部20の各構成要素を制御する入出金部制御部72が設けられている。入出金部制御部72には第1の紙幣繰出機構24、第2の紙幣繰出機構26、シャッタ28、ガイド部30、押さえ部材34、第1の仕切り部材36、第2の仕切り部材38、金属異物検知部60(後述)がそれぞれ接続されている。ここで、金属異物検知部60による金属異物の検知情報は入出金部制御部72を介して本体制御部70に送られるようになっている。また、入出金部制御部72は、第1の紙幣繰出機構24、第2の紙幣繰出機構26、シャッタ28、ガイド部30、押さえ部材34、第1の仕切り部材36、第2の仕切り部材38の各々の指令信号を送ることによりこれらの構成要素の制御を行うようになっている。
なお、本実施の形態の紙幣処理機10では、入出金部20に入出金部制御部72が設置されておらず、上述した入出金部制御部72の機能を本体制御部70が果たすようになっていてもよい。この場合には、金属異物検知部60による金属異物の検知情報は本体制御部70に直接送られるようになる。
次に、本実施の形態の紙幣処理機10における入出金部20の動作(具体的には、紙幣の入金処理を行う際の入出金部20の動作)について図8乃至図11を用いて説明する。
紙幣処理機10において紙幣の入金処理を行うにあたり、操作者が操作表示部80によって入金指令を入力すると図8に示すように入出金部20のシャッタ28が開かれる。そして、操作者が載置部22に紙幣の束を立位状態で投入すると、図9の矢印に示すように紙幣投入出口がシャッタ28により閉じられる。その後、図10の矢印に示すように押さえ部材34が載置部22の底面23に沿って第1の紙幣繰出機構24側に向かって移動することにより、載置部22に投入された紙幣の束は押さえ部材34とガイド部30との間で挟まれるようになる。そして、図11に示すように、紙幣の束を挟んだ状態でガイド部30および押さえ部材34が一体的に第1の紙幣繰出機構24側に向かって移動する。そして、載置部22にある紙幣の束を押さえ部材34が第1の紙幣繰出機構24のキッカローラ24a側に向かって押圧しながら当該キッカローラ24aが図11における時計回りの方向に回転することにより、載置部22に載置されている紙幣のうち図11における最も左下側にある紙幣がキッカローラ24aにより1枚ずつ下方に蹴り出され、蹴り出された紙幣はフィードローラ24bにより上部筐体12の内部に1枚ずつ繰り出されるようになる。
また、紙幣の入金処理において、識別部42により正常な紙幣ではないと識別された紙幣がリジェクト紙幣として入出金部20に戻される場合には、搬送部40から入出金部20に搬送された紙幣は第2の紙幣繰出機構26におけるフィードローラ26bと対向ローラ26cとの間に形成されたゲート部を通って載置部22に送られる。この際に、フィードローラ26bと対向ローラ26cとの間に形成されたゲート部を通過した紙幣は、第1の仕切り部材36と第2の仕切り部材38との間に形成された出金領域に送られ、この出金領域に立位状態で集積されるようになる。その後、ガイド部30と押さえ部材34との間にある紙幣が全て上部筐体12の内部に繰り出された後にシャッタ28が開き、操作者は載置部22における第1の仕切り部材36と第2の仕切り部材38との間に集積されたリジェクト紙幣を上部筐体12の外部に取り出すことができるようになる。
本実施の形態では、入出金部20において、紙幣処理機10の上部筐体12の外部から載置部22に投入される紙幣にクリップ等の金属異物が含まれているときに当該金属異物を検知する金属異物検知部60が設けられている。より詳細には、金属異物検知部60は電磁誘導センサからなり、当該金属異物検知部60は検知コイル62および励磁コイル64を有している。このような金属異物検知部60の構成の詳細について図2、図3、図4Aおよび図4Bを用いて説明する。なお、図2は、図1に示す紙幣処理機10の入出金部20に設けられた金属異物検知部60の構成を模式的に示す斜視図であり、図3は、図2に示す金属異物検知部60を上方から見たときの構成の概略を示す概略構成図である。また、図4Aは、図1に示す紙幣処理機10の入出金部20に実際に配置される金属異物検知部60の複数の検知コイル62の位置を概略的に示す斜視図であり、図4Bは、図4Aに示す入出金部20を上方から見たときの金属異物検知部60の複数の検知コイル62の位置を概略的に示す上面図である。
図2等に示すように、金属異物検知部60は、銅線等の電線が矩形状に何重にも巻かれた検知コイル62と、銅線等の電線が何重にも巻かれた励磁コイル64とを有している。このような金属異物検知部60では、検知コイル62のコイル面が励磁コイル64のコイル面と直交するよう検知コイル62および励磁コイル64がそれぞれ配置されている。具体的には、図2において検知コイル62のコイル面はX方向およびZ方向からなる平面上に位置し、一方、励磁コイル64のコイル面はX方向およびY方向からなる平面上に位置するようになっている。また、入出金部20には、1または複数の紙幣が積層状態で投入される紙幣投入領域20aが設けられており、励磁コイル64は、この紙幣投入領域20aの周囲を巻くように配置されている。具体的には、図2や図4Bに示すように、入出金部20において、紙幣投入領域20aは、左右一対の側壁21の間かつ、上述した第1の紙幣繰出機構24が配置される前壁27aと上述した第2の紙幣繰出機構26が配置される後壁27bとの間に設けられている。また、この励磁コイル64には図示しない電源により電流が流されるようになっており、励磁コイル64に電流が流されると、その巻線方向と直交する方向に一様磁界が発生し、このことにより磁束66が発生するようになる(図2および図3参照)。
図2に示すように、検知コイル62は、入出金部20における第1の紙幣繰出機構24が設置された前壁27aに少なくとも1つ設けられている。ここで、検知コイル62のコイル面は、前壁27aにおける紙幣に対向する面と平行となるように配置されている。また、図3に示すように、検知コイル62は、励磁コイル64に電流が流されることにより発生する一様磁界に置かれているため、磁束66により起電力が誘導されるようになる。より詳細には、検知コイル62の近傍に金属異物が存在しない場合には、検知コイル62において図2の上側の部分に発生する起電力と図2の下側の部分に発生する起電力とは大きさが同じで方向が逆になる。このため、検知コイル62において図2の上側の部分に発生する起電力と図2の下側の部分に発生する起電力とは互いに打ち消し合い、検知コイル62には電流が流れないため検知信号が発生しない。一方、操作者により入出金部20の載置部22に載置された紙幣にクリップ等の金属異物が混じっており、検知コイル62の近傍に金属異物が存在する場合には(このような金属異物を図3において参照符号Qで表示)、当該金属異物には、磁束66によって渦電流が発生する。このため、金属異物の近傍の空間磁界は、渦電流が発生する磁界の影響を受けて、一様磁界に乱れが生じるようになる。この場合には、検知コイル62において図2の上側の部分に発生する起電力の大きさと図2の下側の部分に発生する起電力の大きさとが異なるようになり、検知コイル62に電流が流れるようになるため検知信号が発生する。このようにして、金属異物検知部60は、検知コイル62に電流が流れることにより金属異物を検知するようになっている。
金属異物検知部60により金属異物が検知されると、金属異物の検知情報は入出金部制御部72を介して本体制御部70に送られる。本体制御部70は、金属異物検知部60から金属異物の検知情報が送られると、入出金部20の内部に金属異物が存在する旨の情報を操作表示部80により表示させたり通信部86により外部装置に送信させたりする。このことにより、入出金部20の内部に金属異物が存在することが操作者等に報知される。本実施の形態では、このような操作表示部80や通信部86により、金属異物検知部60により金属異物が検知されたときにこのことを報知するための報知部が構成されている。
上記の構成の金属異物検知部60によれば、検知コイル62の近傍に金属異物が存在しない場合には、検知コイル62において図2の上側の部分に発生する起電力と図2の下側の部分に発生する起電力とは大きさが同じで方向が逆になり、一方、検知コイル62の近傍に金属異物が存在する場合には上記の2つの起電力の均衡が崩れて検知コイル62に電流が流れることにより金属異物が検知されるようになっている。ここで、金属異物が比較的小さいときや検知コイル62と金属異物との間の距離が比較的大きいときでも上記の2つの起電力の均衡が崩れるようになるため、硬貨等の比較的大きな金属異物に加えて、クリップ等の比較的小さな金属異物を検知することができ、また、入出金部20の載置部22に投入される紙幣の枚数が多く、検知コイル62と金属異物との間の距離が比較的大きい場合でも、当該検知コイル62は金属異物を検知することができる。一方、従来技術の金属異物検知部では、クリップ等の比較的小さな金属異物を検知することが難しく、また、金属異物との間の距離が比較的大きい場合にも当該金属異物を検知することが難しかった。このことについて図5乃至図7に示すような比較例としての従来技術の金属異物検知部を用いて説明する。
図5は、比較例としての従来技術の金属異物検知部200の構成を模式的に示す斜視図であり、図6は、図5に示す従来技術の金属異物検知部200を側方から見たときの構成の概略を示す概略構成図である。図5および図6に示す金属異物検知部200は、銅線等の電線が矩形状に何重にも巻かれた1つの検知コイルのみを有しており、この検知コイルに交流電流を流すことにより磁束を発生させるようになっている。そして、金属異物がこの検知コイルに近づくと、当該検知コイルの表面に渦電流が発生することにより反作用磁束が発生し、検知コイルの起電力が変化するようになり、この起電力の変化を検知することにより金属異物を検知するようになっている。しかしながら、このような構成の金属異物検知部200では、本実施の形態による金属異物検知部60と比較して、金属異物が検知コイルに十分に接近しなければ当該金属異物を検知することができないという問題がある。すなわち、従来技術の金属異物検知部200では、金属異物の検知範囲は図6における点線の範囲内の領域となっており、この検知範囲の高さaは比較的小さかった。このため、紙幣処理機10の入出金部20に投入される紙幣の枚数が多く、当該入出金部20に投入された紙幣の束に混入した金属異物と金属異物検知部200の検知コイルとの間の距離が大きくなった場合には当該金属異物を検知することができないおそれがあった。また、このような従来の金属異物検知部200では、クリップ等の小さな金属異物が検知コイルの近傍に位置する場合には検知コイルの表面に発生する渦電流も小さくなり、検知コイルの起電力の変化も小さくなるため金属異物を検知することができないおそれがあった。
また、図7は、比較例としての従来技術の他の構成の金属異物検知部300の構成を模式的に示す斜視図である。図7に示すように、金属異物検知部300は、銅線等の電線が矩形状に何重にも巻かれた励磁コイル302と、同じく銅線等の電線が矩形状に何重にも巻かれた検知コイル304とを有しており、励磁コイル302のコイル面が検知コイル304のコイル面と平行になるよう励磁コイル302および検知コイル304がそれぞれ配置されている。このような金属異物検知部300によれば、図示しない電源により励磁コイル302に電流が流されると(図7の矢印参照)、図7において下方向に磁束が発生し、この磁束により検知コイル304にも電流が流れるようになる。そして、図7の参照符号Qに示すように、励磁コイル302と検知コイル304との間に金属異物が存在する場合には、励磁コイル302に電流が流されることにより発生する磁束が乱れるようになり、検知コイル304に流れる電流の大きさも変化する。このことにより、検知コイル304は金属異物を検出するようになる。しかしながら、このような構成の金属異物検知部300では、検知コイル304に流れる電流の大きさの変化に基づいて金属異物を検知しているため、金属異物が比較的小さい場合には検知コイル304に流れる電流の大きさがほとんど変化せず、この場合には当該検知コイル304に流れる電流の大きさの変化を検知することができない場合があった。また、従来技術の金属異物検知部300では金属異物の検知範囲は概ね励磁コイル302と検知コイル304との間の領域となるため金属異物の検知範囲が比較的小さくなってしまうという問題があった。
これに対し、本実施の形態の金属異物検知部60では、電流が流される励磁コイル64と、そのコイル面が当該励磁コイル64のコイル面と直交するよう配置された検知コイル62とを有しており、入出金部20の載置部22に投入される紙幣に金属異物が含まれているときに金属異物検知部60において検知コイル62に電流が流れることにより当該金属異物を検知するようになっている。このような構成の金属異物検知部60によれば、検知コイル62の近傍に金属異物が存在する場合には、検知コイル62において図2の上側の部分に発生する起電力と図2の下側の部分に発生する起電力との均衡が崩れて検知コイル62に電流が流れることにより金属異物が検知されるようになっているため、入出金部20の載置部22に投入される紙幣の枚数が多い場合や当該紙幣に含まれる金属異物が小さい場合でも金属異物を確実に検知することができる。
また、本実施の形態の金属異物検知部60は、入出金部20の載置部22に紙幣が投入されたときに当該紙幣に含まれている金属異物をすぐに検知するようになっていてもよく、あるいは、入出金部20の載置部22に紙幣が投入されてから所定時間が経過した後に紙幣に含まれている金属異物を検知するようになっていてもよい。すなわち、前者の場合には、検知コイル62に電流が流れると、金属異物検知部60から入出金部制御部72を介して本体制御部70に金属異物の検知情報が即座に送られるようになる。また、前者の場合には検知コイル62に流れる電流の瞬間的な変化が大きくなり、このような検知コイル62に流れる電流の瞬間的な変化を検知することにより金属異物をより一層確実に検知することができるようになる。一方、後者の場合には、検知コイル62に一旦電流が流れても、所定時間が経過した後に当該検知コイル62に電流が流れていなければ、金属異物検知部60から本体制御部70に金属異物の検知情報は送られない。入出金部20の載置部22に紙幣を投入しようとする操作者の指に例えば指輪が装着されていたときには、前者の運用が行われている場合にはこのような指輪を金属異物検知部60により金属異物として誤検知してしまうおそれがあるが、後者の運用が行われている場合には操作者の指に装着されている指輪等が金属異物検知部60により金属異物として誤検知されてしまうことを抑制することができる。
また、金属異物検知部60は、シャッタ28が閉められた状態にあるときに(図9乃至図11参照)、検知コイル62による金属異物の検知情報を本体制御部70に送るようになっていてもよい。すなわち、シャッタ28が開かれた状態にあるときには(図8参照)、検知コイル62に電流が流れても、金属異物検知部60から本体制御部70に金属異物の検知情報は送られないようになる。このような運用が行われる場合にも、操作者の指に装着されている指輪等が金属異物検知部60により金属異物として誤検知されてしまうことを抑制することができる。また、このような運用が行われる場合には、本体制御部70または入出金部制御部72は、金属異物検知部60から金属異物の検知情報が送られると、第1の紙幣繰出機構24による紙幣の繰出動作を行わず、代わりにシャッタ28を開くようにしてもよい。このことにより、操作者は入出金部20の内部へアクセスすることができるようになり、載置部22に載置された紙幣からクリップ等の金属異物を取り出すことができるようになる。
次に、図1に示す紙幣処理機10の入出金部20に実際に配置される金属異物検知部60の複数の検知コイル62の位置について図4Aおよび図4Bを用いて説明する。上述したように、図4Aは、図1に示す紙幣処理機10の入出金部20に実際に配置される金属異物検知部60の複数の検知コイル62の位置を概略的に示す斜視図であり、図4Bは、図4Aに示す入出金部20を上方から見たときの金属異物検知部60の複数の検知コイル62の位置を概略的に示す上面図である。なお、図4Bにおいて、金属異物検知部60の各検知コイル62による金属異物の検知範囲を二点鎖線で示している。
図4Aに示すように、金属異物検知部60の検知コイル62は、載置部22に立位状態で載置される紙幣の高さ方向(すなわち、図4Aにおける上下方向)において少なくとも1つ、好ましくは複数(図4Aに示す例では2つ)配置されている。載置部22に立位状態で載置される紙幣の高さ方向において複数の検知コイル62が設けられている場合には、操作者によって入出金部20の載置部22に紙幣が投入されたときに、この紙幣の高さ方向におけるどの位置にクリップ等の金属異物が混入していても複数の検知コイル62のうち少なくとも1つの検知コイル62により当該金属異物を検知することができるようになる。
また、図4Aおよび図4Bに示すように、金属異物検知部60の検知コイル62は、載置部22に立位状態で載置される紙幣の幅方向(すなわち、図4Aおよび図4Bにおける左右方向)において少なくとも1つ、好ましくは複数(図4Aおよび図4Bに示す例では3つ)配置されている。載置部22に立位状態で載置される紙幣の幅方向において複数の検知コイル62が設けられている場合には、操作者によって入出金部20の載置部22に紙幣が投入されたときに、この紙幣の幅方向におけるどの位置にクリップ等の金属異物が混入していても複数の検知コイル62のうち少なくとも1つの検知コイル62により当該金属異物を検知することができるようになる。
また、図4Bに示すように、金属異物検知部60の検知コイル62は、入出金部20における、載置部22に立位状態で載置される紙幣の側端縁に対向する側(すなわち、左右一対の側壁21)にも設けられている。この場合には、操作者によって入出金部20の載置部22に紙幣が投入される際に、当該紙幣の側端縁がクリップ止めされていた場合でも、紙幣の側端縁に対向する側に設けられた検知コイル62により当該クリップを検知することができるようになる。
また、図4Bに示すように、金属異物検知部60の検知コイル62は、入出金部20における第2の紙幣繰出機構26が設置された後壁27b側にも設けられている。この場合には、紙幣処理機10の機体内から搬送部40により入出金部20に紙幣が繰り出された際に、当該紙幣にクリップ等の金属異物が含まれていた場合には後壁27b側に設けられた検知コイル62により金属異物を検知することができる。
以上のような構成からなる本実施の形態の紙幣処理機10によれば、入出金部20に配設される金属異物検知部60は、電流が流される励磁コイル64と、そのコイル面が励磁コイル64のコイル面と直交するよう配置された検知コイル62とを有しており、入出金部20に投入される紙幣にクリップ等の金属異物が含まれているときに検知コイル62に電流が流れることにより当該金属異物を検知するようになっている。このような紙幣処理機10によれば、検知コイル62の近傍に金属異物が存在しない場合には、検知コイル62において図2の上側の部分に発生する起電力と図2の下側の部分に発生する起電力とは大きさが同じで方向が逆になり、一方、検知コイル62の近傍に金属異物が存在する場合には上記の2つの起電力の均衡が崩れて検知コイル62に電流が流れることにより金属異物が検知されるようになっており、金属異物が比較的小さいときや検知コイル62と金属異物との間の距離が比較的大きいときでも上記の2つの起電力の均衡が崩れるようになる。このため、本実施の形態による金属異物検知部60では、図5乃至図7に示すような従来技術の金属異物検知部200、300と比較して、検知コイル62と金属異物との間の距離が大きい場合や金属異物が小さい場合でも当該金属異物を検知することができるため、入出金部20に投入される紙幣の枚数が多い場合や当該紙幣に含まれる金属異物が小さい場合でも金属異物を確実に検知することができる。
本実施の形態の紙幣処理機10においては、上述したように、入出金部20には、1または複数の紙幣が積層状態で投入される紙幣投入領域20a(具体的には、左右一対の側壁21の間かつ前壁27aと後壁27bとの間の領域)が設けられており、金属異物検知部60の励磁コイル64は、入出金部20の紙幣投入領域20aの周囲を巻くように配置されている。また、金属異物検知部60の検知コイル62は、入出金部20における第1の紙幣繰出機構24が設置された側に少なくとも1つ設けられている。
なお、この場合には、金属異物検知部60の検知コイル62は、載置部22に立位状態で載置される紙幣の高さ方向において少なくとも1つ、好ましくは複数配置されていてもよい。また、金属異物検知部60の検知コイル62は、載置部22に立位状態で載置される紙幣の幅方向において少なくとも1つ、好ましくは複数配置されていてもよい。また、金属異物検知部60の検知コイル62は、入出金部20における、載置部22に立位状態で載置される紙幣の側端縁に対向する側にも設けられていてもよい。
本実施の形態の紙幣処理機10においては、上述したように、金属異物検知部60は、入出金部20への紙幣の投入時に当該紙幣に含まれている金属異物を検知するようになっていてもよい。言い換えると、検知コイル62に電流が流れると、金属異物検知部60から入出金部制御部72を介して本体制御部70に金属異物の検知情報が即座に送られるようになっていてもよい。あるいは、金属異物検知部60は、入出金部20に紙幣が投入されてから所定時間が経過した後に当該紙幣に含まれている金属異物を検知するようになっていてもよい。言い換えると、検知コイル62に一旦電流が流れても、所定時間が経過した後に当該検知コイル62に電流が流れていなければ、金属異物検知部60から本体制御部70に金属異物の検知情報は送られないようになっていてもよい。後者の場合には、操作者の指に装着されている指輪等が金属異物検知部60により金属異物として誤検知されてしまうことを抑制することができる。
また、上述したように、金属異物検知部60は、シャッタ28が閉められた状態にあるときに入出金部20内にある紙幣に含まれている金属異物を検知するようになっていてもよい。この場合でも、操作者の指に装着されている指輪等が金属異物検知部60により金属異物として誤検知されてしまうことを抑制することができる。また、この場合には、金属異物検知部60により金属異物が検知されるとシャッタ28が開いて入出金部20の内部へアクセスすることができるようになっていてもよい。
また、本実施の形態の紙幣処理機10においては、上述したように、金属異物検知部60により金属異物が検知されたときにこのことが操作表示部80により表示されたり通信部86により外部装置に送信されたりすることにより操作者等に対して報知が行われるようになっていてもよい。
〔第2の実施の形態〕
以下、図面を参照して本発明の第2の実施の形態について説明する。図14および図15は、本実施の形態による金属異物検知部の構成を示す図である。このうち、図14は、本実施の形態による金属異物検知部の構成を模式的に示す斜視図であり、図15は、図14に示す金属異物検知部を手前側から見たときの構成の概略を示す概略構成図である。
本実施の形態による金属異物検知部100は、図2や図3等に示すような第1の実施の形態による金属異物検知部60とは異なり、検知コイル102および励磁コイル104が一体的に樹脂等の板状の絶縁体108に設けられており、これらの検知コイル102、励磁コイル104および板状の絶縁体108によって金属異物検知部100が一つの基板内に構成されている。
検知コイル102は、銅線等の電線が矩形状に何重にも巻かれたものからなり、この検知コイル102のコイル面は図14におけるX方向およびY方向からなる平面上に位置している。具体的には、検知コイル102は例えば電線がZ方向において4層巻かれたものから構成されている。また、励磁コイル104は、検知コイル102の周囲で銅線等の電線が何重にも巻かれたものからなり、励磁コイル104のコイル面は図14におけるY方向およびZ方向からなる平面上に位置している。このように、第2の実施の形態による金属異物検知部100では、検知コイル102のコイル面が励磁コイル104のコイル面と直交するよう検知コイル102および励磁コイル104がそれぞれ配置されている。
図14および図15に示すような構成からなる金属異物検知部100は、図1に示すような紙幣処理機10の入出金部20における第1の紙幣繰出機構24が設置された前壁27aに少なくとも1つ設けられている。なお、このような金属異物検知部100は、載置部22に立位状態で載置される紙幣の高さ方向において少なくとも1つ、好ましくは複数配置されていてもよい。また、上記の構成の金属異物検知部100は、載置部22に立位状態で載置される紙幣の幅方向において少なくとも1つ、好ましくは複数配置されていてもよい。また、上記の構成の金属異物検知部100は、入出金部20における、載置部22に立位状態で載置される紙幣の側端縁に対向する側にも設けられていてもよい。
励磁コイル104には図示しない電源により電流が流されるようになっており、励磁コイル104に電流が流されると、その巻線方向と直交する方向に一様磁界が発生し、このことにより絶縁体108の両面で磁束106がそれぞれ発生するようになる。
検知コイル102は、励磁コイル104に電流が流されることにより発生する一様磁界に置かれているため、磁束106により起電力が誘導されるようになる。より詳細には、検知コイル102の近傍に金属異物が存在しない場合には、検知コイル102において図14の奧側の部分に発生する起電力と図14の手前側の部分に発生する起電力とは大きさが同じで方向が逆になる。このため、検知コイル102において図14の奧側の部分に発生する起電力と図14の手前側の部分に発生する起電力とは互いに打ち消し合い、検知コイル102には電流が流れないため検知信号が発生しない。一方、操作者により入出金部20の載置部22に載置された紙幣の束にクリップ等の金属異物が混じっており、金属異物検知部100の近傍に金属異物が存在する場合には、当該金属異物には、磁束106によって渦電流が発生する。このため、金属異物の近傍の空間磁界は、渦電流が発生する磁界の影響を受けて、一様磁界に乱れが生じるようになる。この場合には、検知コイル102において図14の奥側の部分に発生する起電力の大きさと図14の手前側の部分に発生する起電力の大きさとが異なるようになり、検知コイル102に電流が流れるようになるため検知信号が発生する。このようにして、金属異物検知部100は、検知コイル102に電流が流れることにより金属異物を検知するようになっている。なお、金属異物検知部100による金属異物の検知範囲は、図15において二点鎖線で囲った範囲内の領域となる。
以上のような構成からなる金属異物検知部100は、第1の実施の形態による金属異物検知部60と同様に、電流が流される励磁コイル104と、そのコイル面が励磁コイル104のコイル面と直交するよう配置された検知コイル102とを有しており、入出金部20に投入される紙幣にクリップ等の金属異物が含まれているときに検知コイル102に電流が流れることにより当該金属異物を検知するようになっている。このような金属異物検知部100によれば、検知コイル102の近傍に金属異物が存在しない場合には、検知コイル102において図14の奥側の部分に発生する起電力の大きさと図14の手前側の部分に発生する起電力の大きさとは大きさが同じで方向が逆になり、一方、検知コイル102の近傍に金属異物が存在する場合には上記の2つの起電力の均衡が崩れて検知コイル102に電流が流れることにより金属異物が検知されるようになっており、金属異物が比較的小さいときや検知コイル102と金属異物との間の距離が比較的大きいときでも上記の2つの起電力の均衡が崩れるようになる。このため、本実施の形態による金属異物検知部100では、図5乃至図7に示すような従来技術の金属異物検知部200、300と比較して、検知コイル102と金属異物との間の距離が大きい場合や金属異物が小さい場合でも当該金属異物を検知することができるため、入出金部20に投入される紙幣の枚数が多い場合や当該紙幣に含まれる金属異物が小さい場合でも金属異物を確実に検知することができる。また、本実施の形態では、検知コイル102、励磁コイル104および板状の絶縁体108により金属異物検知部100が一つの基板内に構成されているため、入出金部20において紙幣投入領域20aの周囲に励磁コイル64を巻くような第1の実施の形態と比較して入出金部20への金属異物検知部100の設置が簡単となり、紙幣処理機10の製造時やメンテナンス時等における作業負担を軽減することができる。
〔第3の実施の形態〕
以下、図面を参照して本発明の第3の実施の形態について説明する。図16および図17は、本実施の形態による紙幣処理機の構成を示す図である。このうち、図16は、紙幣処理機の概略的な構成を示す概略構成図であり、図17は、図16に示す紙幣処理機における紙幣束搬送機構の構成の概略を示す側面図である。
本実施の形態による紙幣処理機10aは、図1等に示す第1の実施の形態による紙幣処理機10と比較して、入出金部20に紙幣束を投入するための紙幣束搬送機構110が設けられた点が異なるのみであり、他の構成は第1の実施の形態による紙幣処理機10と実質的に同一となっている。本実施の形態による紙幣処理機10aの構成を説明するにあたり、図1等に示す第1の実施の形態による紙幣処理機10と同一の構成部材については同一の参照符号を付してその説明を省略する。
本実施の形態による紙幣処理機10aの近傍には壁111が設けられており、操作者は壁111を挟んだ反対側から(すなわち、図16における壁111の左側の領域から)紙幣処理機10aに対して紙幣の入金処理や出金処理を行うようになっている。具体的には、紙幣処理機10aの入出金部20には、壁111を貫通するよう紙幣束搬送機構110が設置されており、壁111を挟んで紙幣処理機10aの反対側にいる操作者は、紙幣処理機10aに入金されるべき紙幣の束を紙幣束搬送機構110に投入したり、紙幣処理機10aから出金された紙幣の束を紙幣束搬送機構110から受け取ったりするようになっている。また、図16に示すように、壁111にはタッチパネル等の操作表示部112が設けられており、当該操作表示部112は、紙幣処理機10aにおける紙幣の処理状況や在高等に係る情報を表示するとともに、操作者が操作表示部112により様々な指令を紙幣処理機10aの本体制御部70に入力することができるようになっている。このように、本実施の形態では、操作者は壁111を挟んで操作表示部112により紙幣処理機10aを操作するようになり、当該操作者は紙幣処理機10aに直接手を触れることができなくなるため、紙幣処理機10aのセキュリティ性を向上させることができるようになる。
図17に示すように、紙幣束搬送機構110は上下一対の搬送ベルト114、116を有しており、これらの搬送ベルト114、116が図17における矢印で示す方向に循環移動するときには、操作者により紙幣束搬送機構110に投入された紙幣の束が一括して入出金部20に搬送されるようになる。一方、紙幣束搬送機構110において搬送ベルト114、116が図17における矢印で示す方向とは反対方向に循環移動するときには、紙幣処理機10aの機体内から搬送部40により入出金部20に繰り出された紙幣の束が一括して当該紙幣束搬送機構110により操作者の手元に送られるようになる。
また、本実施の形態では、紙幣束搬送機構110において、当該紙幣束搬送機構110により搬送される紙幣束に含まれる金属異物を検知するための金属異物検知部120が設けられている。具体的には、図17に示すように、金属異物検知部120は、各搬送ベルト114、116に対応して上下一対となるよう配置された検知コイル122と、各搬送ベルト114、116による紙幣束の搬送領域を巻くよう設けられた励磁コイル124とを有している。ここで、各検知コイル122は、銅線等の電線が矩形状に何重にも巻かれたものからなり、当該検知コイル122のコイル面は図17において左右方向に延びる平面上に位置している。また、励磁コイル124は、銅線等の電線が各搬送ベルト114、116による紙幣束の搬送領域を巻くよう設けられたものからなり、当該励磁コイル124のコイル面は図17の紙面に直交する方向に延びる平面上に位置している。このように、第3の実施の形態による金属異物検知部120では、検知コイル122のコイル面が励磁コイル124のコイル面と直交するよう検知コイル122および励磁コイル124がそれぞれ配置されている。
励磁コイル124には図示しない電源により電流が流されるようになっており、励磁コイル124に電流が流されると、その巻線方向と直交する方向に一様磁界が発生し、このことにより各搬送ベルト114、116の近傍で磁束126がそれぞれ発生するようになる。
検知コイル122は、励磁コイル124に電流が流されることにより発生する一様磁界に置かれているため、磁束126により起電力が誘導されるようになる。より詳細には、検知コイル122の近傍に金属異物が存在しない場合には、検知コイル122において図17の紙面の奧側の部分に発生する起電力と図17の紙面の手前側の部分に発生する起電力とは大きさが同じで方向が逆になる。このため、検知コイル122において図17の紙面の奧側の部分に発生する起電力と図17の紙面の手前側の部分に発生する起電力とは互いに打ち消し合い、検知コイル122には電流が流れないため検知信号が発生しない。一方、紙幣束搬送機構110により搬送される紙幣束にクリップ等の金属異物が混じっており、この金属異物が混じった紙幣束が金属異物検知部120に接近した場合には、当該金属異物には、磁束126によって渦電流が発生する。このため、金属異物の近傍の空間磁界は、渦電流が発生する磁界の影響を受けて、一様磁界に乱れが生じるようになる。この場合には、検知コイル122において図17の紙面の奥側の部分に発生する起電力の大きさと図17の紙面の手前側の部分に発生する起電力の大きさとが異なるようになり、検知コイル122に電流が流れるようになるため検知信号が発生する。このようにして、金属異物検知部120は、検知コイル122に電流が流れることにより金属異物を検知するようになっている。
以上のような構成からなる金属異物検知部120は、第1の実施の形態による金属異物検知部60や第2の実施の形態による金属異物検知部100と同様に、電流が流される励磁コイル124と、そのコイル面が励磁コイル124のコイル面と直交するよう配置された検知コイル122とを有しており、紙幣束搬送機構110により搬送される紙幣束にクリップ等の金属異物が含まれているときに検知コイル122に電流が流れることにより当該金属異物を検知するようになっている。このような金属異物検知部120によれば、検知コイル122の近傍に金属異物が存在しない場合には、検知コイル122において図17の紙面の奥側の部分に発生する起電力と図17の紙面の手前側の部分に発生する起電力とは大きさが同じで方向が逆になり、一方、検知コイル122の近傍に金属異物が存在する場合には上記の2つの起電力の均衡が崩れて検知コイル122に電流が流れることにより金属異物が検知されるようになっており、金属異物が比較的小さいときや検知コイル122と金属異物との間の距離が比較的大きいときでも上記の2つの起電力の均衡が崩れるようになる。このため、本実施の形態による金属異物検知部120では、図5乃至図7に示すような従来技術の金属異物検知部200、300と比較して、検知コイル122と金属異物との間の距離が大きい場合や金属異物が小さい場合でも当該金属異物を検知することができるため、紙幣束搬送機構110により搬送される紙幣束の枚数が多い場合や当該紙幣束に含まれる金属異物が小さい場合でも金属異物を確実に検知することができる。また、本実施の形態では、紙幣束搬送機構110により搬送される紙幣束に含まれるクリップ等の金属異物を金属異物検知部120により検知するようになっており、当該金属異物検知部120は動いている金属異物を検知するため、載置部22に載置された紙幣に含まれる金属異物(すなわち、静止している金属異物)を検知する場合と比較して、より高精度で正確に金属異物を検知することができるようになる。
なお、本実施の形態では、紙幣束搬送機構110において一対の搬送ベルト114、116により紙幣束を搬送するようになっているが、一対の搬送ベルト114、116により紙幣束を搬送する代わりに、紙幣束をトレイに載せて当該トレイを移動させることにより紙幣束の搬送を行うような構成となっていてもよい。このような場合でも、上記の金属異物検知部120と同様の構成の金属異物検知部を設けることによりトレイに載せられて移動させられる紙幣束に含まれる金属異物を検知することができるようになる。
なお、本発明による紙葉類処理装置は、上記の各実施の形態による紙幣処理機10、10aの構成に限定されることはない。本発明による紙葉類処理装置として、紙幣以外の小切手や商品券等の紙葉類を処理するものが用いられてもよい。この場合、紙葉類を紙葉類処理装置の筐体の外部から内部に投入するための紙葉類投入部に、上記の金属異物検知部60や金属異物検知部100と同様の構成の金属異物検知部が設置されるようになっていてもよい。また、本発明による金属異物検知部が設置される紙葉類投入部は、必ずしもフィードローラ24b等の第1の紙幣繰出機構24が設けられたものに限定されることはない。また、本発明による金属異物検知部を、紙葉類処理装置における紙葉類投入部(具体的には、例えば図1に示す紙幣処理機10における入出金部20)以外の箇所に設置してもよい。また、本発明による金属異物検知部を、硬貨の入出金処理等の様々な処理を行う硬貨処理装置における硬貨の搬送路に設置し、当該搬送路に残留する硬貨を金属異物検知部によって検知するようにしてもよい。