JP6478179B1 - 木質建材の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】木材の質感を維持しつつも、突板の割れ又は反りを抑制することが可能な木質建材の製造方法を提供する。【解決手段】木質建材20の製造方法は、ブロック状の木材1を、木材1の寸法を安定化する作用を有し、かつ、水溶性である寸法安定化樹脂を含む水溶液2に浸漬し、木材1に寸法安定化樹脂を含浸させる含浸工程と、寸法安定化樹脂を含浸することにより湿潤状態となったブロック状の木材1をスライスすることにより、突板10を得る突板生成工程と、突板10を基材11にプレスして接着する接着工程と、を有する。【選択図】図1

Description

本発明は、木質建材の製造方法に関する。
木材は、水分の吸脱着に伴い膨潤及び収縮を繰り返すことから、水分量の変化により割れや反り、変形が発生してしまう。このような木材の割れや反り、変形を抑えて寸法安定性を付与する方法として、化学修飾、WPC(木材−プラスチック複合材)、及び水溶性樹脂によるバルキングなどの方法が知られている。
化学修飾は、木材の成分であるセルロースの親水性水酸基を化学反応により疎水基に置換することにより、木材の吸湿性や寸法変化を減少させる方法である。WPC技術は、木材内にスチレンやメタクリル酸メチル等のモノマーを含浸させた後、加熱または電子線照射等を行うことによって当該モノマーを重合し、木材内に不溶化した樹脂を生成する方法である。水溶性樹脂によるバルキングは、ポリエチレングリコール等の水溶性樹脂を木材の細胞壁内に含浸させた後、それらを乾燥及び硬化させることにより、寸法安定性を高める方法である
ここで、特許文献1では、乾燥単板素材に重合性ビニルエステル類モノマーを注入した後、当該単板素材を切削し、単板素材中の重合性ビニルエステル類モノマーを重合硬化させるプラスチック複合単板の製造方法が開示されている。このような、単板にプラスチックの性質を付与するWPC技術により、木材の欠点である吸脱湿による膨張及び収縮を抑制し、耐水性、汚れ防止及び硬さ等の性質を高めることが検討されている。
特開平2−274502号公報
上述のように、WPC技術は、木材の内部にモノマーを含浸した後に当該モノマーを重合することにより、木材の内部に水に不溶性の樹脂を生成している。そのため、WPC技術により得られる木質建材は、水分量の変化による割れ、反り、変形を抑制することが可能である。しかしながら、WPC技術により得られる木質建材は不溶性樹脂を多量に含んでいることから、質感が不溶性樹脂に近く、木材としての質感が大きく損なわれてしまうという問題があった。
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本発明の目的は、木材の質感を維持しつつも、突板の割れ又は反りを抑制することが可能な木質建材の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明の態様に係る木質建材の製造方法は、ブロック状の木材を、当該木材の寸法を安定化する作用を有し、かつ、水溶性である寸法安定化樹脂を含む水溶液に浸漬し、木材に寸法安定化樹脂を含浸させる含浸工程を有する。木質建材の製造方法は、さらに、寸法安定化樹脂を含浸することにより湿潤状態となったブロック状の木材をスライスすることにより、突板を得る突板生成工程と、当該突板を基材にプレスして接着する接着工程と、を有する。
本開示によれば、木材の質感を維持しつつも、突板の割れ又は反りを抑制することが可能な木質建材の製造方法を提供することができる。
本実施形態に係る木質建材の製造方法の一例を説明するための概略図である。 本実施形態に係る木質建材の製造方法の他の例を説明するための概略図である。 実施例で作製した集成材を説明するための概略平面図である。 実施例及び比較例で得られた木質建材の幅反り変化を説明するための概略断面図である。
以下、本実施形態に係る木質建材の製造方法について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
床材や家具の表面材などに用いられる木質建材として、接着剤を用いて木質系の基材に突板を接着したものが知られている。ここで、乾燥していない湿式の突板を、接着剤を用いて基材に接着した場合、突板が乾燥して収縮することから突板が割れるときがある。このとき、突板が薄い場合には、接着剤の力で突板の割れを抑制することができる。これは、接着剤が突板を構成する木材の導管などに入り込み、突板の割れの発生を抑制するためである。しかしながら、木材に接着剤が入り込める深さには限界があるため、突板が厚くなると接着剤が入り込み難くなり、表面で割れが発生しやすくなる。
ここで、接着剤にジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)などの含浸型の助剤を添加することで、接着時に助剤を突板に浸透させて、突板の割れの発生を抑制することは可能である。ただ、このような助剤を用いたとしても、その効果は0.7mm程度の中厚突板までであり、それ以上の厚みを有する厚突板では、割れの発生を抑制できない。
また、基材に突板を接着する方法として、乾燥していないブロック状の木材をスライスして突板を得た後に、当該突板を乾燥させる方法がある。この場合、厚突板であっても事前に乾燥させることにより、突板を基材に接着した際に突板の割れを抑制することが可能となる。そして、乾燥時に徐々に含水率を低下させたり、当て板をすることで、割れが無く、反りの発生も少ない乾燥突板を得ることは容易である。
ただし、スライス後の乾燥が行えるのは、集成していない突板のみである。つまり、集成した突板を乾燥した場合、乾燥により各ピース間の集成層が破断したり、ピース内で割れが生じる。そのため、集成した突板を乾燥することにより、突板を基材に接着した際に突板の割れを抑制することは困難であった。
本実施形態は、湿式の突板を基材に接着した場合でも、木材の質感を維持しつつ、突板の割れ又は反りを抑制することが可能な木質建材の製造方法に関するものである。
図1は、本実施形態に係る木質建材の製造方法を概略的に示している。木質建材20の製造方法は、図1の(a)及び(b)に示すように、最初に、ブロック状の木材1を、水溶性の寸法安定化樹脂を含む水溶液2に浸漬して、木材1に寸法安定化樹脂を含浸させる。
木材1は特に限定されず、スライスすることにより突板10として使用できるものを用いることができる。このような木材1としては、スギ、カラマツ、ベイマツ、ゴムの木、カバ、ブナ、ナラ、ビーチ、オーク、チーク、ハードメープル、チェリー、ウォールナット、ホワイトアッシュ及びマホガニーからなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができる。これらの木材は高級感があり意匠性が高いことから、これらの木材1を用いた突板10は、木質建材20の表面材として好適に用いることができる。
また、木材1としては、主に日本をはじめ東南アジア等で短期間に大径木となる早生樹を使用することもできる。具体的には、木材1は、センダン、チャンチンモドキ、ハンノキ、ユリノキ、ユーカリ、ポプラ、アカシアマンギウム及びファルカタからなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができる。早生樹は、成長が早く比較的安価であることから、植林にて十分に供給することが可能な樹種である。ここで、早生樹は、広年輪幅の部分が広く年輪の曲率が大きいことから寸法変化に異方性が発生してしまう。そのため、早生樹を乾燥する際、局部的に大きな収縮応力が発生し、乾燥割れが発生しやすい。ただ、早生樹の内部に寸法安定化樹脂を浸透させることにより、膨潤状態に維持して収縮を抑制することができるため、本実施形態では木材1として早生樹も好適に用いることができる。
なお、木材1は、含水率が高い生の状態であってもよく、含水率が低い乾燥状態であってもよい。木材1の含水率が高い状態であっても、道管中の水分と寸法安定化樹脂とを置換することができるため、木材1の内部に寸法安定化樹脂を含浸することが可能である。なお、木材1としては、人工的に乾燥釜などで乾燥させ、含水率を下げた人工乾燥材(KD材)を用いることが好ましい。この際、KD材の含水率は、7〜25%とすることが好ましい。なお、木材の含水率は、日本工業規格JIS Z2101(木材の試験方法)に基づき測定することができる。
ブロック状の木材1の大きさは特に限定されず、後述する突板生成工程において、木材1をスライスすることにより突板10を得ることが可能な大きさであればよい。また、木材1の形状も特に限定されず、例えば平板状、角柱状又は円柱状とすることができる。
ここで、木材の寸法安定化処理には、代表的には次の三種類の方法が挙げられる。
(1)木材細胞壁に寸法安定化樹脂を含浸させる方法
木材の寸法変化は、構成成分であるセルロースの水酸基の間に水分子が入ることで膨張し、乾燥することで水分子が排出されて収縮することで発生する。そのため、寸法安定化樹脂としては、水分子の代わりに木材1の細胞壁中の微小空隙に入り込んで充填され、乾燥時においても蒸発することなく当該微小空隙に留まることができる樹脂を使用する。このような寸法安定化樹脂を使用することにより、寸法安定化樹脂によって細胞壁を膨潤状態に維持できることから、いわゆる「かさ効果」によって、得られる突板10の収縮を抑制することができる。
(2)細胞内腔を充填する方法
細胞内腔を樹脂で充填することで、寸法変化の原因である水分が細胞壁に入ることを妨げ、寸法安定性を発現させる。含浸時はモノマーの状態で細胞内腔に含浸させ、その後、熱などで硬化及び高分子化することで、木材内に樹脂を固定する。この方法では、木材の微細凹凸を樹脂で充填するため、木材の質感が失われやすい特徴がある。
(3)熱処理
木材を熱処理することで、水分の吸着点である水酸基を破壊し、水分の吸着自体を抑制する方法である。加熱水蒸気処理が代表的な方法である。
本実施形態では、(1)に分類される寸法安定化方法を使用している。また、その中でも取り扱い性を考慮し、水溶系の寸法安定化樹脂を用いる。水溶性の寸法安定化樹脂としては、水への溶解性及び細胞壁への吸着性を考慮し、水酸基を有し、極性を持ち、かつ、対象木材の微小空隙よりも小さな分子であることが好ましい。
寸法安定化樹脂は、グリコール系樹脂及びグリオキザール樹脂の少なくとも一方であることが好ましい。グリコール系樹脂及びグリオキザール樹脂は、木材1の細胞壁中の微小空隙に入り込んで充填されやすい。また、これらの樹脂は、乾燥時でも揮発性が低いことから、木材1の微小空隙に留まってかさ効果を発揮しやすい。さらに、これらの樹脂は粘性が高いことから、後述するように寸法安定化樹脂を含浸した木材1をスライスした場合でも、得られる突板10の割れを抑制して、歩留まりを高めることが可能となる。
グリコール系樹脂は、ポリアルキレングリコール及びポリアルキレングリコール誘導体の少なくとも一方であることが好ましい。ポリアルキレングリコールとしては、重量平均分子量が200〜20000のものを使用することができる。ポリアルキレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールを単独又は複数種用いることができる。あるいは、ポリアルキレングリコールとしては、エチレングリコールとプロピレングリコールとを共重合させたものなど、アルキレン基が異なるアルキレングリコール同士を共重合させたものであってもよい。
ポリアルキレングリコール誘導体としては、例えば、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートを使用することができる。ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしては、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(PEGMA)を挙げることができる。
グリオキザール樹脂は、尿素、ホルムアルデヒド及びグリオキザールからなる環状尿素樹脂である。グリオキザール樹脂が木材1の細胞壁中の微小空隙に入り込んで充填された際には、自己重縮合反応によって不溶化すると共に、木材1のセルロースなどの水酸基とエーテル結合することにより、不溶化する。
寸法安定化樹脂は、グリコール系樹脂とグリオキザール樹脂との混合物であることが好ましい。グリコール系樹脂は、木材1の細胞壁中の微小空隙に入り込んで充填され、当該微小空隙に留まることができる。これにより、木材1の細胞壁を膨潤状態に維持できることから、かさ効果によって木材1の収縮を抑制し、割れや反り、変形を防ぐことができる。ただ、含浸させたグリコール系樹脂は、木材1を乾燥させた後も依然として水に易溶性であることから、木材1が吸水又は吸湿することにより、グリコール系樹脂が木材1の表面に溶出する可能性がある。また、グリオキザール樹脂は、グリコール系樹脂と比べて突板から溶出し難い反面、グリコール系樹脂よりもかさ効果が小さい。
しかしながら、寸法安定化樹脂として、グリコール系樹脂とグリオキザール樹脂との混合物を用いることにより、グリコール系樹脂とグリオキザール樹脂とが脱水縮合し、細胞壁の内部で水に不溶化する。さらに、グリコール系樹脂とグリオキザール樹脂との混合物は、木材1のセルロースなどの水酸基とエーテル結合を形成することにより、不溶化する。そのため、グリコール系樹脂とグリオキザール樹脂との混合物は、木材1に対する寸法安定性及び耐溶出性に優れていることから、寸法安定化樹脂として好適に用いることができる。
なお、寸法安定化樹脂は、グリコール系樹脂及びグリオキザール樹脂に限定されず、水溶性であり、かつ、木材1に対してかさ効果を付与できる樹脂を用いることができる。そのため、寸法安定化樹脂は、グリコール系樹脂、グリオキザール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂及びフェノール樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができる。
寸法安定化樹脂を含む水溶液2は、寸法安定化樹脂を水に溶解することにより調製することができる。この際、水溶液2における寸法安定化樹脂の濃度が高いほど、木材1に寸法安定化樹脂が多く含浸することから、木材1の収縮を抑制することが可能となる。水溶液2における寸法安定化樹脂の濃度は、5〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。
木材1に寸法安定化樹脂を含浸する方法は特に限定されない。例えば、木材1を、寸法安定化樹脂を含む水溶液2に浸漬して放置することにより、木材1に寸法安定化樹脂を含浸させることができる。なお、木材1に対して寸法安定化樹脂の含浸を早めるために、水溶液2を満たされた耐圧容器に木材1を投入した状態で加圧することが好ましい。この際、加圧する圧力は特に限定されないが、例えば0.3〜2.0MPaとすることが好ましい。
木材1に対して寸法安定化樹脂の含浸を早めるために、耐圧容器に木材1を投入した状態で減圧して、木材1の内部の空気を除去した後に、木材1を水溶液2に浸漬してもよい。これにより、木材1の道管の内部に水溶液2が浸透しやすくなるため、木材1に寸法安定化樹脂をすばやく含浸させることが可能となる。
寸法安定化樹脂は、木材1の全体、つまり木材1の中心部まで含浸していることが好ましい。ただ、木材1の全体に寸法安定化樹脂を含浸させる必要はなく、スライスして得られる突板10に寸法安定化樹脂が含浸している程度まで、木材1に寸法安定化樹脂を含浸させればよい。
木材1に寸法安定化樹脂を含浸した後、木材1に付着している余分な水溶液2を除くことが好ましい。また、木材1に寸法安定化樹脂を含浸した後、木材1を乾燥させて溶媒としての水を除去してもよい。
次に、図1(c)に示すように、上述の含浸工程により寸法安定化樹脂を含浸して、湿潤状態となったブロック状の木材1をスライスすることにより、突板10を得る。なお、スライスする際、木材1は、少なくとも寸法安定化樹脂を含んでいる必要があるが、水溶液2における溶媒としての水を含んでいてもよい。
木材1のスライスの方法は特に限定されず、例えばスライサー又はロータリーレースを用いて行うことができる。また、スライサーは、縦突スライサー及び横突スライサーのいずれも用いることができる。なお、本明細書において、「スライス」は、鋸を用いて木材を切断する方法を除いている。つまり、鋸を用いて木材1を切断した場合、加工屑が発生し、突板10を得る際の歩留まりが低下してしまう。しかしながら、スライサー又はロータリーレースを用いて木材1を切断した場合には、加工屑が殆ど発生しないため、突板10を得る際の歩留まりを高めることが可能となる。
本実施形態では、寸法安定化樹脂を含浸して湿潤状態となった木材1をスライスすることにより、突板10を得ている。つまり、仮に寸法安定化樹脂を含浸していない乾燥木材をスライスした場合、突板の割れや反りが生じ、歩留まりが低下してしまう。しかしながら、本実施形態では、寸法安定化樹脂を含浸した木材1をスライスすることから、突板10の割れ又は反りが抑制され、効率よく寸法安定性及び硬度に優れた突板10を得ることができる。さらに、寸法安定化樹脂を含浸した木材1をスライスすることにより、厚みが0.35mm以下の薄単板に加えて、厚みが0.35〜0.7mmの中厚単板、及び厚みが0.7mm以上、特に2mm以上の厚単板も効率的に製造することができる。
木材1をスライスして得られる突板10の厚みは特に限定されないが、例えば0.1mm〜3mmとすることが好ましく、0.35mm〜3mmとすることがより好ましい。なお、突板10の厚みが上記範囲外であっても、本実施形態の製造方法によれば、突板10の吸放湿による伸び縮みを抑制し、施工後の木質建材の反り等を防ぐことができる。
次に、図1(d)に示すように、上述の突板生成工程によって得られた突板10を基材11にプレスして接着する。具体的には、突板10を基材11に重ねて、突板10と基材11とを加熱すると共に加圧することにより、突板10と基材11とを接着する。このような接着工程に用いられる装置は特に限定されないが、例えば熱プレス成形機などを用いることができる。
突板10と基材11との間には、これらを接合するために、接着剤を介在させてもよい。このような接着剤としては、突板10と基材11を強固に接合できるものであれば特に限定されない。接着剤としては、水性ビニルウレタン樹脂系接着剤、酢酸ビニル樹脂系接着剤、水性イソシアネート樹脂系接着剤等の水性接着剤を挙げることができる。
基材11は、表面平滑性の良好な木質系材料から形成されたものを用いることができる。このような木質系材料としては、例えば、MDF(中密度繊維板)やHDF(高密度繊維板)等の木質繊維板、及びパーティクルボードやOSB(配向性ストランドボード)等の木質ボード等が挙げられる。また、基材11は、合成樹脂系材料に木粉、無機フィラー、相溶化剤、着色剤などを所定の含有割合で含有させた木粉・プラスチック複合材(WPC)から形成されたものとしてもよい。ただ、基材11としては合板が好ましく、ラワン、ユーカリ、ファルカタ、カメレレ、キリ、ラバーウッド、ポプラ、スギ、カラマツ、ヒノキ等の合板を好適に用いることができる。基材11の厚みは特に限定されず、例えば1.0mm〜5.0mmとすることが好ましく、1.5mm〜3.0mmとすることがより好ましい。
突板10と基材11とを接着する際のプレス温度、プレス圧、及びプレス時間は、使用する接着剤の種類に応じて適宜設定することができる。例えば、基材11と突板10とをプレスする際のプレス圧は0.5MPa〜1MPa、プレス温度は90℃〜150℃、プレス時間は60秒〜180秒とすることができる。
ここで、寸法安定化樹脂としてグリオキザール樹脂を用いる場合、グリオキザール樹脂を縮合反応させるには高温である方が好ましく、グリコール系樹脂とグリオキザール樹脂との混合物においても同様のことが言える。そして、グリオキザール樹脂、及びグリコール系樹脂とグリオキザール樹脂との混合物は、硬化を十分に行うことにより、不溶性が高まる。なお、グリオキザール樹脂の硬化は100℃以上から起こり、150℃で十分な硬化を行うことができる。
突板10と基材11との接着は、例えば150℃で1回のプレスで行うことも可能であるが、複数回に分けて行ってもよい。また、突板10と基材11とのプレスを複数回行う場合には、各プレス工程の間の時間は数分〜数日とすることができる。この際、最初のプレスは105℃程度で行い、最後のプレスは130℃以上の高温で行うことが好ましい。毎回130℃以上の高温でプレスすることも可能であるが、突板と基材と間の接着層の劣化や突板の熱変色の問題が生じる場合がある。つまり、最初のプレスでは105℃程度で突板の水分量を減らすとともに、接着層の硬化を促し、最後のプレスでは130℃以上の高温とすることで、突板に含浸した樹脂の硬化を促すことが好ましい。
このような接着工程により、突板10と基材11とが接着されてなる木質建材20Aを得ることができる。なお、寸法安定化樹脂は揮発性が低いことから、突板10を加熱した場合でも、寸法安定化樹脂は、突板10を構成する木材の細胞壁内に留まることができる。そのため、接着工程において、突板10と基材11とを熱プレスしたとしても、寸法安定化樹脂のかさ効果により、突板10の割れ又は反りを抑制することが可能となる。
このように、本実施形態の木質建材20の製造方法は、ブロック状の木材1を、木材1の寸法を安定化する作用を有し、かつ、水溶性である寸法安定化樹脂を含む水溶液2に浸漬し、木材1に寸法安定化樹脂を含浸させる含浸工程を有する。当該製造方法は、さらに、寸法安定化樹脂を含浸することにより湿潤状態となったブロック状の木材1をスライスすることにより、突板10を得る突板生成工程と、突板10を基材11にプレスして接着する接着工程とを有する。
本実施形態の製造方法は、寸法安定化樹脂を含浸して湿潤状態となった木材1をスライスすることにより、突板10を得ている。そのため、得られる突板10の割れ又は反りを抑制し、効率よく寸法安定性及び硬度に優れた突板10を得ることができる。また、寸法安定化樹脂は突板10を構成する木材の細胞壁内に留まるため、接着工程において突板10と基材11とをプレスしたとしても、突板10の割れ又は反りを抑制することができる。そのため、本実施形態の製造方法によれば、寸法安定性及び硬度に優れた木質建材20を、効率よく高い歩留まりで製造することが可能となる。
上述のように、突板10は、少なくとも寸法安定化樹脂を含んでいるが、水溶液2における溶媒としての水を含んでいてもよい。ただ、接着工程の前に突板10の含水率を低下させることにより、接着工程において、プレス時間の短縮、並びに突板10の反り又は割れ発生の更なる低減を図ることができる。突板10の含水率を低下させる方法としては、自然乾燥及び熱風乾燥が挙げられる。なお、突板10は寸法安定化樹脂を含んでいることから、乾燥した場合でも、突板10の破断又は割れの発生を抑制することができる。
木質建材20において、突板10は寸法安定化樹脂を含んでいる。そのため、木質建材20の使用時に環境変化が生じたとしても、かさ効果により突板10の割れ又は反りを抑制することができる。なお、寸法安定化樹脂は、木材の細胞壁に留まることにより細胞壁を膨潤状態に維持し、突板10の収縮を抑制している。そのため、突板10の質感は、特許文献1のような不溶性樹脂の質感となるわけではなく、木材の質感となる。したがって、木質建材20における突板10は、木材の質感を維持しつつも、割れ又は反りを抑制することができる。
ここで、本実施形態の木質建材20の製造方法は、上述の含浸工程と突板生成工程との間に、ブロック状である複数の木材1を突き合わせて集成接着することにより、集成材3を生成する集成材生成工程をさらに有することが好ましい。
具体的には、ます、図2の(a)及び(b)に示すように、ブロック状の木材1を、水溶性の寸法安定化樹脂を含む水溶液2に浸漬して、木材1に寸法安定化樹脂を含浸させる含浸工程を施す。
次に、図2(c)に示すように、寸法安定化樹脂を含んだ複数の木材1を集成接着して、集成材3を作製する。集成材3の単板幅方向及び単板長手方向の寸法は、集成材3から得られる突板10Aの厚さ方向に見た各寸法に応じた寸法とすることができる。また、集成材3の単板厚さ方向に見た集成態様は、突板10Aの厚さ方向に見た集成態様に応じたものとすることができる。なお、図2(c)に示す集成材3は、単板幅方向に沿って二列に木材1を突き合わせ、さらに、単板厚さ方向に見て乱貼り状となるように各列の木材1を長手方向にずらして集成している。
木材1を集成接着する際の接着剤は特に限定されず、例えば上述した突板10と基材11とを接着するための接着剤を用いることができる。
そして、図2(d)に示すように、寸法安定化樹脂を含浸した木材1からなる集成材3をスライスすることにより、突板10Aを得る。集成材3のスライスの方法は特に限定されず、上述と同様に、例えばスライサーを用いて行うことができる。
ここで、上述のように、寸法安定化樹脂を含浸していない木材から得られた集成突板を乾燥した場合、乾燥による収縮により各ピース間の集成層が破断したり、ピース内で割れが生じる。特に、集成突板の厚みが大きくなるほど、破断や割れを抑制することは困難となる。しかしながら、本実施形態では、寸法安定化樹脂を含浸して湿潤状態となった木材1からなる集成材3をスライスすることにより、突板10Aを得ている。そのため、寸法安定化樹脂のかさ効果に起因して突板10Aの割れ又は反りが抑制されることから、効率よく寸法安定性及び硬度に優れた突板10Aを得ることができる。さらに、寸法安定化樹脂を含浸した集成材3をスライスすることにより、厚みが0.35mm以下の薄単板に加えて、厚みが0.35〜0.7mmの中厚単板、及び厚みが0.7mm以上、特に2mm以上の厚単板も効率的に得ることができる。
集成材3をスライスして得られる突板10Aの厚みは特に限定されないが、例えば0.1mm〜3mmとすることが好ましく、0.35mm〜3mmとすることがより好ましい。
次に、図2(e)に示すように、上述の突板生成工程によって得られた突板10Aを基材11にプレスして接着する。具体的には、突板10Aを基材11に重ねて、突板10と基材11とを加熱すると共に加圧することにより、突板10Aと基材11とを接着する。このような接着工程に用いられる装置は特に限定されないが、例えば熱プレス成形機などを用いることができる。なお、突板10と基材11との間には、これらを接合するために、上述の接着剤を介在させてもよい。
このような接着工程により、突板10Aと基材11とが接着されてなる木質建材20Aを得ることができる。なお、寸法安定化樹脂は揮発性が低いことから、突板10Aを加熱した場合でも、寸法安定化樹脂は、突板10Aを構成する木材の細胞壁内に留まることができる。そのため、接着工程において、突板10Aと基材11とを熱プレスしたとしても、寸法安定化樹脂のかさ効果により、突板10Aの割れ又は反りを抑制することが可能となる。
このように、木質建材20Aの製造方法は、上述の含浸工程と、複数の木材1を突き合わせて集成接着することにより、集成材3を生成する集成材生成工程と、集成材3から突板10Aを得る突板生成工程と、突板10Aを基材11に接着する接着工程とを有する。本実施形態の製造方法は、寸法安定化樹脂を含浸して湿潤状態となった木材1からなる集成材3をスライスすることにより、突板10Aを得ている。そのため、得られる突板10Aの割れ又は反りを抑制し、効率よく突板10Aを得ることができる。また、突板10Aを加熱した場合でも、寸法安定化樹脂は突板10Aに留まるため、突板10Aと基材11とを熱プレスしたとしても、突板10Aの割れ又は反りを抑制することができる。そのため、本実施形態の製造方法によれば、突板10Aと基材11とを接合してなる木質建材20Aを、効率よく高い歩留まりで製造することが可能となる。
以下、実施例及び比較例により本実施形態を更に詳しく説明するが、本実施形態は当該実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例の木質建材を調製するに際して、次の材料を使用した。
・木材
厚みが5/4インチ(3.175mm)、長さが400mm〜800mm、幅が160mmであり、乾燥材(KD材)である板状のハードメープル材を用いた。
・寸法安定化樹脂
水溶性の寸法安定化樹脂として、重量平均分子量が2000であるポリエチレングリコール(PEG2000)を用いた。なお、含浸工程では、PEG2000をイオン交換水に溶解し、固形分濃度が10質量%又は30質量%である寸法安定化樹脂水溶液を用いた。
また、水溶性の寸法安定化樹脂として、重量平均分子量が350であるポリエチレングリコールモノメタクリレート(PEGMA350)も用いた。なお、含浸工程では、PEGMA350をイオン交換水に溶解し、固形分濃度が10質量%又は30質量%である寸法安定化樹脂水溶液を用いた。
[実施例1]
まず、上述のハードメープル材に対して、真空加圧法によりPEG2000を含浸する処理を行った。具体的には、まず、ハードメープル材を耐圧容器内に入れた後、−0.095MPa以上で10分間の真空処理を行った。次に、耐圧容器内に、固形分濃度が10質量%であるPEG2000の寸法安定化樹脂水溶液を入れ、ハードメープル材を当該水溶液に浸漬した。そして、ハードメープル材を水溶液に浸漬した状態で、雰囲気圧力を0.8MPaとして3時間保持する加圧処理を行った。
含浸処理後のハードメープル材を水溶液から取り出した後、ハードメープル材に対してモルダー加工を行い、加工幅150mm、加工厚み30mmのフリッチ材を作製した。さらに、当該フリッチ材を、加工長さがそれぞれ390mm、660mm、790mmとなるように切断した。
得られたフリッチ材を、図3に示す集成パターンとなるように、湿気硬化型ウレタン接着剤を用いて接着した。さらに、添え板として、厚みが1mmのシナ単板を、スライス面以外の四面(集成材の側面)に接着した。このようにして、湿潤状態のハードメープル材を集成接着してなる集成材を得た。
そして、得られた集成材を、スライサーを用いてスライスすることにより、厚みが0.5mmである突板を得た。
得られた突板を、変性酢酸ビニル接着剤を用いて基材に接着した。具体的には、基材の表面に、塗布量が70g/枚となるように変性酢酸ビニル接着剤を塗布して、突板を重ね合わせた後、突板と基材とを105℃で3分間プレスした。この際、基材としては、幅が313mm、長さが1845mm、厚みが10mmのファルカタ合板を用いた。このようにして、PEG2000を含浸し、厚みが0.5mmである突板を基材に接着した本例の木質建材を得た。
[実施例2]
PEG2000を含浸した突板の厚みを2.0mmに変えたこと以外は、実施例1と同様にした。このようにして、PEG2000を含浸し、厚みが2.0mmである突板を基材に接着した本例の木質建材を得た。
[実施例3]
寸法安定化樹脂水溶液として、PEG2000の固形分濃度が30質量%である水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にした。このようにして、PEG2000を含浸し、厚みが0.5mmである突板を基材に接着した本例の木質建材を得た。
[実施例4]
PEG2000を含浸した突板の厚みを2.0mmに変えたこと以外は、実施例3と同様にした。このようにして、PEG2000を含浸し、厚みが2.0mmである突板を基材に接着した本例の木質建材を得た。
[実施例5]
寸法安定化樹脂水溶液として、PEGMA350の固形分濃度が10質量%である水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にした。このようにして、PEGMA350を含浸し、厚みが0.5mmである突板を基材に接着した本例の木質建材を得た。
[実施例6]
PEGMA350を含浸した突板の厚みを2.0mmに変えたこと以外は、実施例5と同様にした。このようにして、PEGMA350を含浸し、厚みが2.0mmである突板を基材に接着した本例の木質建材を得た。
[実施例7]
寸法安定化樹脂水溶液として、PEGMA350の固形分濃度が30質量%である水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にした。このようにして、PEGMA350を含浸し、厚みが0.5mmである突板を基材に接着した本例の木質建材を得た。
[実施例8]
PEGMA350を含浸した突板の厚みを2.0mmに変えたこと以外は、実施例7と同様にした。このようにして、PEGMA350を含浸し、厚みが2.0mmである突板を基材に接着した本例の木質建材を得た。
[比較例1]
寸法安定化樹脂水溶液に変えて水を用いたこと以外は、実施例1と同様にした。このようにして、水を含浸し、厚みが0.5mmである突板を基材に接着した本例の木質建材を得た。
[比較例2]
水を含浸した突板の厚みを2.0mmに変えたこと以外は、比較例1と同様にした。このようにして、水を含浸し、厚みが2.0mmである突板を基材に接着した本例の木質建材を得た。
実施例1乃至8並びに比較例1及び2で使用した寸法安定化樹脂、寸法安定化樹脂水溶液の固形分濃度、及び突板の厚みを表1に纏めて示す。
Figure 0006478179
[評価]
(割れ発生確認)
各例の木質建材を目視で観察し、突板に割れが発生しているか否かを確認した。また、割れが発生している場合には、割れの最大長さと最大幅を測定した。割れの発生を確認した結果を表1に合わせて示す。
(幅反り変化確認)
各例の木質建材を目視で観察し、突板に割れが発生しなかった木質建材に対して、幅反りが発生しているか否かを確認した。さらに、幅反りが発生している場合には、幅反り量を測定した。具体的には、突板に割れが発生しなかった実施例1,3−5及び7−8、並びに比較例1を室温で1日放置した結果、幅反りの発生が確認された。そのため、図4(a)に示すプレス直後の木質建材と、図4(b)に示す放置後の木質建材とを比較して、幅反り量Dを測定した。実施例1,3−5及び7−8及び比較例1の木質建材における幅反り量Dを表1に合わせて示す。
表1より、突板の厚みが0.5mmである実施例1,3,5及び7、並びに比較例1の木質建材は、割れは発生しなかったが、幅反りが発生した。ただ、寸法安定化樹脂を含浸した実施例1,3,5及び7の木質建材は、比較例1と比べて幅反り量が半分以下となることから、突板の反りが大きく低減できることが分かる。また、寸法安定化樹脂の濃度が高い水溶液を用いた実施例3及び7の木質建材は、実施例1及び5と比べて突板の反りがさらに低減できることが分かる。このことから、突板における寸法安定化樹脂の含浸量が増加することにより、突板の反りを抑制できることが分かる。
また、表1より、突板の厚みが2.0mmである実施例2及び6、並びに比較例2の木質建材は、割れの発生が認められた。しかしながら、比較例2の木質建材の突板に発生した割れの最大長さは40mmであり、最大幅は1.0mmであるのに対して、実施例2の木質建材の突板に発生した割れの最大長さは20mmであり、最大幅は0.5mmであった。また、実施例6の木質建材の突板に発生した割れの最大長さは30mmであり、最大幅は0.7mmであった。そのため、寸法安定化樹脂を含浸させることにより、突板の厚みが大きい場合でも割れが低減できることが分かる。
さらに、表1より、寸法安定化樹脂の濃度が高い水溶液を用いた実施例4及び8は、突板の厚みが2.0mmであっても割れが発生しなかった。このことから、突板における寸法安定化樹脂の含浸量が増加することにより、突板の厚みが大きい場合でも割れの発生を抑制できることが分かる。
以上のように、本実施形態の製造方法により、基材への突板接着において、突板の反り又は割れの発生が抑制できることが確認された。また、実施例1乃至8より、PEG2000とPEGMA350とを比べた場合、PEG2000の方が、寸法安定化効果が高かった。これは、樹脂の分子量、及び木材への吸着性が影響していると考えられる。ただ、実際には、使用する木材(樹種、木目、厚み)及び基材(寸法、比重、貼り方向)より、含浸する寸法安定化樹脂の種類及び水溶液の濃度を最適化することが好ましい。
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
1 木材
2 寸法安定化樹脂を含む水溶液
3 集成材
10,10A 突板
11 基材
20,20A 木質建材

Claims (3)

  1. ブロック状の木材を、前記木材の寸法を安定化する作用を有し、かつ、水溶性である寸法安定化樹脂を含む水溶液に浸漬し、前記木材に前記寸法安定化樹脂を含浸させる含浸工程と、
    前記寸法安定化樹脂を含浸することにより湿潤状態となったブロック状の前記木材を、湿潤状態のままスライスすることにより、突板を得る突板生成工程と、
    前記寸法安定化樹脂を含んでいる前記突板を基材にプレスして接着する接着工程と、
    を有する、木質建材の製造方法。
  2. 前記含浸工程と前記突板生成工程との間に、ブロック状である複数の前記木材を突き合わせて集成接着することにより集成材を生成する集成材生成工程をさらに有し、
    前記突板生成工程では、前記集成材となった前記木材をスライスする、請求項1に記載の木質建材の製造方法。
  3. 前記寸法安定化樹脂は、グリコール系樹脂及びグリオキザール樹脂の少なくとも一方である、請求項1又は2に記載の木質建材の製造方法。
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