JP6477204B2 - 車輪用軸受装置の組立て方法 - Google Patents

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本発明は、自動車等の車両に使用する車輪用軸受装置の組立て方法に関する。
自動車等の車両に使用する車輪用軸受装置は、外輪部材と内輪部材と転動体を備える。前記車輪用軸受装置においては、外輪部材と内輪部材との間の転動体の配置される軸受内部空間にグリース等の潤滑剤が封入されている。前記軸受内部空間に泥水や異物が侵入すると、グリースの劣化や、構成部品の錆が発生し、軸受としての寿命の低下をまねく。このため、前記車輪用軸受装置においては、前記軸受内部空間のグリースの漏洩の防止、また、外部からの泥水や異物の進入防止のため、密封装置が設けられている。
車輪用軸受装置用の密封装置として、前記外輪部材の端部開口部に、サイドリップとラジアルリップの少なくとも2つのシールリップを有するシール部材を装着し、前記内輪部材のスリンガ嵌合面に断面がL字形状で、円筒部と平盤部を有するスリンガが固定された、通称パックシールと称されるハブ用シールが知られている。(特許文献1参照)
前記ハブ用シールにおいて、前記サイドリップは、前記スリンガの平盤部の前記軸受内部空間側の側面に摺接し、前記ラジアルリップは、前記スリンガの前記円筒部の外周面に摺接する。また、前記シール部材と前記スリンガは、同時に、軸受内部空間の開口部に装着される。
車輪用軸受装置として、第3世代ユニットタイプの車輪用軸受装置がある。この車輪用軸受装置は、外輪部材の車両インナー側に、車体への取付けフランジを有し、内輪部材であるハブ軸の車両アウター側に車輪取付け用のハブフランジを有する。
前記ハブ用シールが、前記の前記軸受内部空間の車両アウター側開口部に装着される場合、前記ハブ軸の車両アウター側に前記ハブフランジが形成されているため、前記シール部材と前記スリンガを同時に車両アウター側から押圧して、前記外輪部材と前記内輪部材との間の軸受内部空間の開口部に装着する事はできない。(特許文献2参照)
特開2005−291485号公報 特開2007−127243号公報
前記第3世代ユニットタイプの車輪用軸受装置の組立て工程においては、前記スリンガは、前記シール部材とは別に、予め前記ハブ軸に装着される。この時、前記スリンガは、サイドリップ摺動面を押圧して、前記ハブ軸のスリンガ嵌合面に圧入されることがある。しかし、前記サイドリップ摺動面を押圧した場合、前記サイドリップ摺動面に疵が生じ、前記ハブ用シールは、車輪用軸受装置の密封装置として十分な密封性能を得ることができないことがある。
本発明は、組立て工程における密封装置の疵の発生を防止し、密封性能に優れた車輪用軸受装置の組立て方法を提供することを目的としている。
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の構成上の特徴は、内周に外輪軌道が形成された外輪部材と、外周に内輪軌道が形成され、軸方向一方側の端部に半径方向外方に拡径して延在するハブフランジを有するハブ軸と、前記外輪部材の外輪軌道および前記ハブ軸の内輪軌道の間で転動する複数の転動体と、前記外輪部材と前記ハブ軸との間の軸受内部空間の前記ハブフランジ側の開口部を密封する密封装置と、を有し、前記密封装置は、金属製のスリンガと、金属製の芯金と合成ゴムのシール部を有するシール部材と、を有し、前記スリンガは、前記ハブ軸の前記内輪軌道と前記ハブフランジの間の肩の外周面に圧入される円筒部と、前記円筒部の前記ハブフランジ側の端部から径方向外方に拡径する円盤部とを有し、前記円盤部の前記軸受内部空間側の側面は、外周側のサイドリップ摺動面と、前記サイドリップ摺動面より径方向内方の内周側の被当接面とを備え、前記シール部は、前記ハブフランジに対向し、前記ハブフランジに接近する方向に拡径するサイドリップを有し、前記サイドリップの軸方向一方側の端部は、前記スリンガの前記サイドリップ摺動面に摺接する車輪用軸受装置の組立て方法であって、前記スリンガは、前記被当接面に当接するとともに、前記サイドリップ摺動面に当接しない圧入冶具で、前記被当接面を前記ハブ軸に対して、前記ハブフランジの方向に押圧して装着することである。
本発明の組立て方法によれば、前記シール部の前記サイドリップは前記スリンガの前記円盤部の外周側のサイドリップ摺動面に摺接し、前記スリンガを前記ハブ軸に装着する冶具は、前記サイドリップ摺動面より内周側の被当接面に当接する。この結果、前記スリンガの装着時に前記サイドリップ摺動面に前記圧入冶具との接触による疵が生じることはない。
本発明によれば、組立て工程における密封装置の疵の発生を防止し、密封性能に優れた車輪用軸受装置の組立て方法を提供することができる。
本発明の一実施形態の車輪用軸受装置の組立て方法に係る車輪用軸受装置の断面図である。 本発明の一実施形態の車輪用軸受装置の組立て方法に係る車輪用軸受装置の密封装置の拡大断面図である。 本発明の一実施形態の車輪用軸受装置の組立て方法を説明する説明図である。 本発明の一実施形態の車輪用軸受装置の組立て方法を説明する、主要部の拡大説明図である。
この発明の一実施の形態を、以下図面を参照して説明する。図1、図2において右側が車両アウター側(以下アウター側と称す)、左側が車両インナー側(以下インナー側と称す)を示している。図3、図4においては下側がアウター側、上側がインナー側を示している。
図1は、本発明の一実施形態の車輪用軸受装置の組立て方法に係る車輪用軸受装置1の軸方向の断面図である。図2は図1の本発明の一実施形態の車輪用軸受装置の組立て方法に係る車輪用軸受装置1の密封装置の拡大断面図である。
図1、図2において車輪用軸受装置1は、外輪部材10と、ハブ軸20と、内輪30と、2列の複数の転動体としての玉40と、2個の保持器41、42、とを有する。
外輪部材10は、内周に2列の外輪軌道11、12が形成されている。ハブ軸20は、アウター側の端部に半径方向に拡径して延在するハブフランジ22を有し、外周に第1内輪軌道21が形成されている。内輪30は、外周に第2内輪軌道31が形成されている。
2列の複数の玉40は、外輪部材10の一方の外輪軌道11とハブ軸20の第1内輪軌道21の間、および、外輪部材10の他方の外輪軌道22と内輪30の第2内輪軌道31の間で転動する。2個の保持器41、42は、前記2列の複数の玉40を所定の間隔で保持する。
軸受内部空間2は、ハブ軸20の外周および内輪30の外周と、外輪部材10の内周と、の間で、2列の複数の玉40が配置される空間である。軸受内部空間2には、潤滑剤としてのグリースが充填されている。軸受内部空間2は、外輪部材10のアウター側の端部の開口部に配置された密封装置50と、外輪部材10の車両インナー側の端部に固定されたキャップ70と、で密封されている。
外輪部材10はS55C等の合金鋼からなる環状体である。外輪部材10は、外周のインナー側端部に半径方向外方に拡径して、軸受装置1を車体部材90に取付けるための固定フランジ13を有する。外輪部材10は、固定フランジ13から車両アウター側に向けて、外輪外周面15が形成されている。固定フランジ13は、取付け用ボルト91が貫通するための複数の通し穴14を備えている。外輪部材10の内周には、アウター側外輪軌道11が、インナー側に外輪軌道12が形成されている。外輪部材10は、内周のアウター側の端部にシール嵌合面16を有する。
ハブ軸20はS55C等の合金鋼からなる。ハブ軸20は、外周の軸方向一方側端部すなわちアウター側端部に半径方向に拡径して、ブレーキディスク92とホイール93が取付けられるハブフランジ22を有している。ハブフランジ22に、ブレーキディスク92とホイール93を固定する複数のハブボルト94が埋め込まれている。
ハブ軸20は、内輪嵌合面23を有している。内輪嵌合面23は、ハブ軸20の外周の軸方向他方側端部すなわちインナー側端部にあって半径方向に縮径している。ハブフランジ22と内輪嵌合面23の中間の外周には内輪軌道21が形成されている。内輪軌道21と、ハブフランジ22のインナー側の基部との間の肩の外周面には、スリンガ圧入面24が形成されている。スリンガ圧入面24は、軸線に平行な円筒形状である。
内輪30はSUJ2等の軸受鋼からなる円環状である。内輪30は外周の軸線方向中央に第2内輪軌道31を有する。内輪30は内周に内輪軌道31と同心の内径面32を有する。内輪30は、内径面32をハブ軸20の内輪嵌合面23に外嵌し、一方の端面をハブ軸20のインナー側端部のかしめによって圧着されて、ハブ軸20に固定されている。
密封装置50は、シール部材であるアウタシール51とスリンガ60とで構成されている。アウタシール51は、芯金52とシール部53を有する。芯金52は、鋼板等の金属製の環体である。シール部53は、芯金52と一体に加硫成形されたNBR等の合成ゴムからなる。芯金52は、外輪部材10のシール嵌合面19に内嵌する円筒部54と、円筒部54のインナー側端部から縮径して延在する平板部55を有している。
シール部53は、芯金52の平板部55の径方向内方の、インナー側に補助リップ56、車両アウター側にメインリップ57を有し、平板部55のアウター側に、ハブフランジ22に対向し、ハブフランジ22に接近する方向に拡径するサイドリップ58を有する。
アウタシール51は、芯金52の円筒部54を外輪部材10のシール嵌合面19に内嵌して外輪部材10に固定されている。
スリンガ60はステンレス鋼板等の金属製の環体である。スリンガ60は、断面形状がL字型の環体で、円筒部61と、円筒部61の一方側の端部から拡径して延在する円盤部62を有する。円筒部61の内周はハブ軸20に嵌合する軸嵌合面63となっている。軸嵌合面63の直径は、ハブ軸20のスリンガ圧入面24の直径より小さい。スリンガ60は、軸嵌合面63をハブ軸20の内輪軌道21とハブフランジ22の間の肩の外周面24に外嵌してハブ軸20に装着されている。
円筒部61の外周面はシール部53のメインリップ57が摺接するラジアル摺接面64となっている。円盤部62のインナー側の側面は、外周側がシール部53のサイドリップ58が摺接するサイドリップ摺接面65、内周側は被当接面66となっている。
アウタシール51の補助リップ56およびメインリップ57の内周先端部はスリンガ60のラジアル摺接面64に、サイドリップ58は、ハブフランジ側端部がスリンガ60のサイドリップ摺接面65に摺接している。
図3は本発明の一実施形態の車輪用軸受装置の組立て方法を説明する説明図である。
図4は本発明の一実施形態の車輪用軸受装置の組立て方法を説明する、主要部の拡大説明図である。
以下図3、図4に基づき本発明の一実施形態の車輪用軸受装置の組立て方法の特徴である、スリンガ60のハブ軸30への装着方法について説明する。
図3に示すように、圧入冶具110は鋼材からなる。圧入冶具110は、有底のカップ状の環体で、開放側の先端部111に軸線に直角な平面であるスリンガ押圧面112が形成されている。スリンガ押圧面112の内周の直径JD1は、スリンガ60の被当接面66の内周の直径SD1と略等しい。スリンガ押圧面112の外周の直径JD2は、スリンガ60の被当接面66の外周すなわちサイドリップ摺接面65の内周の直径SD2に略等しい。
先端部111の内周は、スリンガ60の供給時にスリンガ60を保持する保持面113となっている。保持面113の直径は、スリンガ60のラジアル摺接面64の直径より僅かに大きい。保持手段114は、保持面113の軸線方向中央に配置されている。保持手段114は合成ゴム等の弾性体からなる。受圧面115が圧入冶具110の底側の端部に形成されている。受圧面115は、軸線に直角な平面である。
図3、図4に示すように、ハブフランジ22、内輪軌道31、内輪圧入面23、スリンガ圧入面24等、すべての単体としての加工が完了したハブ軸30は、ハブフランジ22のアウター側側面25をベース100の上面101に接して、ベース100に据付けられる。
圧入冶具110は、保持面113にスリンガ60のラジアル摺接面64を嵌入して、スリンガ60を保持した状態で、図示しない移動手段によって、ハブ軸20のインナー側上方から、軸線に添ってハブ軸20のアウター側方向に移動する。ここで、圧入冶具110に保持されたスリンガ60の軸嵌合面63のアウター側の端部が、ハブ軸20のスリンガ圧入面24のインナー側の端部に接した状態で、圧入冶具110の移動は停止する。
圧入冶具110の軸線方向の移動が停止すると、押圧スピンドル120が、圧入冶具110のインナー側に移動し、押圧スピンドル120の先端面121が圧入冶具110の受圧面115に当接する。スリンガ60の軸嵌合面63のが、ハブ軸20のスリンガ圧入面24のインナー側端部に接した状態から、図示しないシリンダによって、押圧ピンドル120がアウター側方向に伸長し、圧入冶具110が軸線方向アウター側方向に移動し、スリンガ押圧面112がスリンガ60の被当接面66を、ハブ軸20に対し、アウター側方向に押圧することにより、スリンガ60の圧入が行われる。
圧入冶具110のスリンガ押圧面112の外周の直径JD2は、スリンガ60のサイドリップ摺接面65の内周の直径SD2に略等しい。このため、圧入冶具110のスリンガ押圧面112は、スリンガ60の圧入時に、スリンガ60のサイドリップ摺接面65に接触しない。すなわち、スリンガ60の圧入時において、サイドリップ摺動面に疵が生じることがない。
圧入冶具110のアウター側方向への移動によって、スリンガ60が所定の位置に達すると、図示しないシリンダが停止し、押圧スピンドル116の伸長および圧入冶具110の移動は停止し、スリンガ60の圧入は完了し、スリンガ60はハブ軸20に装着される。スリンガ60の圧入が完了すると、押圧スピンドル116は軸線方向にインナー側方向に移動し、圧入冶具110は、図示しない移動手段によって、軸線方向インナー側方向に移動した後、ハブ軸20から遠ざかる。
スリンガ60の圧入が完了するまで、スリンガ60は、弾性体からなる保持手段114によって圧入冶具110に保持されている。しかし、スリンガ60の圧入が完了し、圧入冶具110が軸線方向インナー側方向に移動を始めると、スリンガ60はハブ軸20のスリンガ圧入面24にしめしろをもって嵌入、固定されているため、スリンガ60と保持手段114の間にすべりが生じ、圧入冶具110のみが軸線方向インナー側方向に移動する。
上述のごとく、本発明の一実施形態によれば、組立て工程における密封装置の疵の発生を防止し、密封性能に優れた車輪用軸受装置の組立て方法を提供することができる。
上述の実施形態では、転動体は玉であるが、この発明では、転動体は円すいころ等の他の形式の転動体であっても良い。
上述の実施形態では、圧入冶具110はスリンガ60の保持、移動手段を有しているが、
この発明では、スリンガ60の保持、移動は、部品供給ロボット等の他の保持、移動手段を用いても良い。
上述の実施形態では、ハブ軸20と内輪30は、ハブ軸20の端部のかしめで一体化されているが、この発明では、ハブ軸20と内輪30はナット締結等、他の結合手段で一体化される形式であっても良い。
上述の実施形態では、シール50は、1個のサイドリップ58を有しているが、この発明では、サイドリップの個数が異なる形式や、サイドリップ以外のリップが、スリンガ60に摺接する形式等、他の形式のアウタシールであっても良い。
本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは当然である。
1 ‥ 軸受装置(車輪用軸受装置)
10 ‥ 外輪部材
11 ‥ 外輪軌道
2 ‥ 軸受内部空間
20 ‥ ハブ軸
20 ‥ ハブ軸
21 ‥ 第1内輪軌道(内輪軌道)
22 ‥ ハブフランジ
24 ‥ スリンガ嵌合面(肩外周面)
40 ‥ ボール(転動体)
50 ‥ 密封装置
51 ‥ アウタシール(シール部材)
52 ‥ 芯金
53 ‥ シール部
54 ‥ サイドリップ
60 ‥ スリンガ
61 ‥ 円盤部
63 ‥ 円筒部
64 ‥ サイドリップ摺接面
65 ‥ 被当接面
110 ‥ 圧入冶具(冶具)

Claims (1)

  1. 内周に外輪軌道が形成された外輪部材と、
    外周に内輪軌道が形成され、軸方向一方側の端部に半径方向外方に拡径して延在するハブフランジを有するハブ軸と、
    前記外輪部材の外輪軌道および前記ハブ軸の内輪軌道の間で転動する複数の転動体と、
    前記外輪部材と前記ハブ軸との間の軸受内部空間の前記ハブフランジ側の開口部を密封する密封装置と、を有し、
    前記密封装置は、金属製のスリンガと、金属製の芯金と合成ゴムのシール部を有するシール部材と、を有し、
    前記スリンガは、前記ハブ軸の前記内輪軌道と前記ハブフランジの間の肩の外周面に圧入される円筒部と、前記円筒部の前記ハブフランジ側の端部から径方向外方に拡径する円盤部とを有し、前記円盤部の前記軸受内部空間側の側面は、外周側のサイドリップ摺動面と、前記サイドリップ摺動面より径方向内方の内周側の被当接面とを備え、
    前記シール部は、前記ハブフランジに対向し、前記ハブフランジに接近する方向に拡径するサイドリップを有し、
    前記サイドリップの軸方向一方側の端部は、前記スリンガの前記サイドリップ摺動面に摺接する
    車輪用軸受装置の組立て方法であって、
    前記スリンガは、前記被当接面に当接するとともに、前記サイドリップ摺動面に当接しない圧入冶具で、前記被当接面を前記ハブ軸に対して、前記ハブフランジの方向に押圧して装着することを特徴とする車輪用軸受装置の組立て方法。
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