以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
[実施の形態1]
[試験装置の構成]
図1は、本発明の実施の形態1に係る試験装置の構成の一例を示す図である。図1に示すように、実施の形態1に係る試験装置1は、設定された試験条件に従って試料2(試験対象物)に継続して負荷を与える促進耐候性試験を実行する試験装置である。試験装置1は、試料室10(試験部)、測定室20(測定部)、制御装置30(制御部)及びホルダ移動部40を有する。なお、試験装置1は、冷却水タンク51の冷却水を循環させることによって試験装置1内部を冷却する冷凍機50も有する。
試料2は、試験対象物である高分子材料を、一定の大きさのベース部材に所定の厚さ塗布することによって得られる。試料2は、試験装置1の試料ホルダ3にセットされる。図1では、2つの試料ホルダ3にそれぞれ3つの試料2をセットした例を示す。
試料室10は、設定された試験条件に従って試料2(試験対象物)に継続して負荷を与える促進耐候性試験を実行する。試料室10は、人工的な屋外条件のもとで促進耐候性試験を行うために、試料2に、紫外線照射、加温、加湿、水噴霧等の負荷を連続して加える。試料室10は、光源11、加温装置12、加湿装置13、水噴霧装置14、ブラックパネル15及び温度計16を有する。
光源11は、例えば、キセノンランプ、紫外線蛍光ランプ、サンシャインカーボンアークランプ、スーパーキセノンランプ等であり、試料2に光を発する。光源11が発する光の波長帯域及び光量は、試験条件制御部32b(後述)によって設定される。なお、光源11は、冷却水タンク51の冷却水によって冷却されている。
加温装置12は、熱電素子等の発熱体によって構成され、試料室10内部の温度を調整する。加温装置12は、温度調整のために送風機能を有していてもよい。
加湿装置13は、試料室10内の湿度を調整する。水噴霧装置14は、試料2に水噴霧を行い、屋外環境下における降雨状態を再現する。加湿装置13及び水噴霧装置14は、純水タンク52に接続されており、純水タンク52内の純水を用いて、湿度調整或いは水噴霧を行う。
ブラックパネル15は、試料2の近傍に設置される黒色のパネルである。ブラックパネル15は、例えば、黒色塗装したパネルである。温度計16は、ブラックパネル15の温度を測定し、測定温度(ブラックパネル温度)を制御装置30に出力する。促進耐候性試験では、試料2の温度が試験条件のパラメータの一つとなる。ただし、光源11による光の照射によって試料2の表面温度が上昇するため、試料室10内の気温及び試料2の温度には差が生じる。そこで、ブラックパネル15を試料2の近傍に設置し、ブラックパネル温度を測定することによって、試料2の表面温度を模擬的に測定している。温度計16は、ブラックパネル15の表面に取り付けられる(ブラックパネル温度計)。或いは、温度計16は、ブラックパネル15と、ブラックパネル15の裏面に張り付けられた断熱材との間に取り付けられる(ブラックスダンダート温度計)。
測定室20は、所定の時間間隔(測定間隔)で試料2の物性測定を実行する試料測定装置21を有する。試料測定装置21は、試料2に対して非破壊測定を行う。具体的には、試料測定装置21は、試料2の光沢保持率、色差、ヘーズ、表面性状(クラックの有無等)、厚み、FTIR(Fourier transform infrared spectrometer)スペクトルあるいはインピーダンスのいずれか少なくとも一つ以上を測定する。
制御装置30は、試料室10及び測定室20と電気的に接続し、試料室10が実行する促進耐候性試験及び測定室20における試料測定装置21が実行する物性測定を制御する。言い換えると、制御装置30は、試料室10における促進耐候性試験の試験条件、及び、試料測定装置21における物性の測定条件を設定する。本実施の形態1では、制御装置30は、測定間隔ごとに、試料測定装置21によって行われた物性測定の測定値と、予め定められた試料2の劣化の進行度に関する基準値とを比較することによって、目標試験時間で劣化の優劣が十分に判別できる速度で試料2の劣化が進行しているか否かを判定する。制御装置30は、試料2の劣化が進行していないと判定した場合には、試料2に対して高負荷となる試験条件に段階的に変更している。具体的には、制御装置30は、測定値が基準値を超えていない場合には、目標試験時間で劣化の優劣が十分に判別できる速度で試料2の劣化が進行していないと判断して、試料2に対して高負荷となるように促進耐候性試験におけるパラメータを変更している。一方、制御装置30は、測定値が基準値を超えた場合には、試料2の劣化が進行していると判断して、試験条件を維持する。
制御装置30は、例えば、試験装置1と同一筐体内に設置されたプロセッサで実現される。或いは、制御装置30は、試験装置1と接続する汎用コンピュータで実現される。制御装置30は、入力部31、制御部32、記憶部33及び出力部34を有する。
入力部31は、試験装置1に設けられた操作パネルのスイッチ、キーボードやマウス等の入力デバイスで構成され、外部からの情報の入力を受け付け、制御部32に入力する。入力部31は、促進耐候性試験の初期条件、測定項目、測定間隔、試験条件の変更基準となる測定値に関する閾値(所定の閾値)、試験条件変更の判定基準となる試料、試験終了の基準となる試料、及び、試験終了の判定基準となる終了基準値等の設定条件の入力を受け付ける。実施の形態1では、試験条件の変更基準となる測定値に関する閾値が基準値として用いられる。入力部31から入力された設定情報は、制御部32によって、記憶部33の試験条件記憶部33b(後述)に記憶される。
これらの設定条件のうち、測定間隔(t時間[h])は、劣化が十分に促進しているかを判定可能な時間間隔に設定される。本実施の形態1では、測定間隔t[h]は、目標試験時間T[h]を、目標測定回数n(n≧2)で除した値としている。ここで、目標試験時間T[h]は、屋外環境劣化との近似性を大きく損ねないために、従来の試験方法で想定される試験期間の数十%程度が望ましい。例えば、従来の試験時間が3000[h]であったのに対し、本実施の形態1では、目標試験時間Tは、2000[h]に設定される。測定間隔t[h]は、短いと劣化が十分に促進しているかの判定が難しく、長いと試料2の劣化があまり進行しない試験条件で長時間試験を続けてしまう可能性があるため、目標試験時間T[h]が2000[h]の場合、材料の特性を考慮すると、nの値は5≦n≦20が好適である。
そして、終了基準値(Y)は、一般的な塗料において外観等の問題から塗り替えが必要であると考えられる劣化状態に相当する。例えば、測定項目が色差である場合には、Yは10に設定される。この値は、一般的な塗料において肉眼で退色が確認できる値である。また、測定項目が、光沢保持率、ヘーズ、表面性状、厚み、FTIRスペクトル、インピーダンスである場合の、終了基準値Yは、一般的に、初期値と測定値との数値変化の絶対値の、初期値に対する比(|ΔY|/Y0; ΔY:数値変化、Y0:初期値)が50%値となる値を劣化の指標としている。
そして、試験条件の変更基準となる閾値(H)は、測定期間t[h]の経過によって、目標試験時間Tで劣化の優劣が十分に判別できる速度で試料2の劣化が進行しているかを判定するための基準値である。測定期間t[h]経過時における測定値が該閾値Hを超えていない場合には、目標試験時間Tで劣化の優劣が十分に判別できる程度には試料2の劣化が十分に進行していないと推定できる。一方、測定期間t[h]経過時における測定値が該閾値Hを超えている場合には、試料2の劣化が十分に進行し、目標試験時間Tで劣化の優劣が判別可能であると推定できる。具体的には、閾値Hは、判定部32c(後述)において、測定値と該測定の一回前に測定された前回測定値との差分値が比較対象である場合には、終了基準値Yを目標測定回数nで除した値になる。例えば、測定項目が色差であり、終了基準値Y=10、目標測定回数n=5である場合には、閾値Hは、Y/n=10/5=2となる。
さらに、試験条件変更の判定基準となる試料及び試験終了の基準となる試料は、任意の一つの試料が設定される。或いは、促進耐候性試験における測定結果の比較によって、複数の試料の中で最も劣化が速い試料或いは最も劣化が遅い試料が、試験条件変更の判定基準となる試料及び試験終了の基準となる試料として設定される。なお、設定情報として目標試験時間T、目標測定回数n及び終了基準値Yが入力された場合には、制御部32が、目標試験時間T、目標測定回数n及び終了基準値Yを用いて、測定間隔t[h]及び閾値Hを演算すれば足りる。
制御部32は、各種の処理手順などを規定したプログラムおよび所要データを格納するための内部メモリを有し、これらによって種々の処理を実行する。例えば、制御部32とは、電子回路である。ここで、電子回路の例として、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路、またはCPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などを適用する。制御部32は、測定制御部32a、試験条件制御部32b及び判定部32cを有する。
測定制御部32aは、試料測定装置21の測定処理を制御する。具体的には、測定制御部32aは、入力部31から入力された測定間隔t[h]及び測定項目に従って、試料測定装置21に対し、測定間隔t[h]で、測定室20内の試料2に対する物性測定を実行させる。また、測定制御部32aは、試料測定装置21に、試験開始前に試料2の物性測定を実行させることによって、該試料2の初期値を取得する。試料測定装置21によって測定された初期値を含む各測定値は、試料2の識別情報、測定項目及び測定日時と対応付けられて、記憶部33の測定結果記憶部33a(後述)に記憶される。
試験条件制御部32bは、試料測定装置21が実行する試料2の初期値測定後、入力部31によって入力された促進耐候性試験の初期条件に従って、試料室10の光源11、加温装置12、加湿装置13及び水噴霧装置14の各装置を制御し、試料室10内の試料2に対する促進耐候性試験を開始させる。光源11、加温装置12、加湿装置13及び水噴霧装置14の制御状態は、試験条件記憶部33b(後述)に記憶される。そして、試験条件制御部32bは、判定部32c(後述)の判定結果に応じて、促進耐候性試験におけるパラメータを一定の値で変更する。
判定部32cは、試料2に対する促進耐候性試験が開始された後、試料測定装置21によって行われた物性測定の測定値と該測定値の一回前に測定された前回測定値との差分値が、所定の閾値Hを超えたか否かを判定する。判定部32cは、試料測定装置21から出力された測定結果とともに測定結果記憶部33aが記憶する測定時間及び測定値を参照することによって、判定を行う。なお、いずれの測定値も試験条件変更の判定基準となる試料2に対するものである。
そして、試験条件制御部32bは、差分値が閾値Hを超えていないと判定部32cが判定した場合には、試料2に対して高負荷となるように促進耐候性試験におけるパラメータを一定の値で変更する。言い換えると、目標試験時間T[h]で劣化の優劣が試料2間で判別できる程度に試料2の劣化が進行していないものと考えられるため、試料条件制御部32bは、次の測定期間t[h]の間に試料2の劣化が進むように、試験条件のうちのいずれかのパラメータを高負荷側に一段階高める。パラメータの変更幅は、パラメータごとに予め設定され、試験条件記憶部33b(後述)に記憶されている。或いは、試験実施者は、入力部31を操作することによって、試験中に、パラメータの変更幅を変更することもできる。
一方、試験条件制御部32bは、差分値が閾値Hを超えたと判定部32cが判定した場合には試験条件を維持する。現在の試験条件のままでも、目標試験時間T[h]で劣化の優劣が試料2間で判別できる程度に試料2の劣化が十分に進むと考えられるためである。
さらに、判定部32cは、試料測定装置21によって行われた物性測定の測定値と初期値との差分値が、予め定められた試験終了の判定基準となる終了基準値Yを超えたか否かを判定する。なお、いずれの測定値も試験終了の基準となる試料2に対するものである。判定部32cは、試料測定装置21から出力された測定結果とともに測定結果記憶部33aが記憶する測定時間及び測定値を参照することによって、測定値と初期値との差分値が終了基準値Yを超えたか否かを判定する。
そして、試験条件制御部32bは、判定部32cによって差分値が終了基準値Yを超えていないと判定された場合には、試験条件を維持して試料2に対する試験の継続を設定する。一方、試験条件制御部32bは、判定部32cによって差分値が終了基準値Yを超えたと判定された場合には試料2に対する促進耐候性試験の終了を設定する。
記憶部33は、制御部32による各種処理に必要なデータおよびプログラムを格納する。例えば、記憶部33は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、又は、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置などである。記憶部33は、測定結果記憶部33a及び試験条件記憶部33bを有する。測定結果記憶部33aは、試料測定装置21によって測定された初期値を含む各測定結果を、試料2の識別情報、測定項目及び測定日時に対応付けて記憶する。試験条件記憶部33bは、入力部31から入力された試験条件に関する情報、試験条件制御部32bによる光源11、加温装置12、加湿装置13及び水噴霧装置14の制御状態(試験条件)、及び、試験条件制御部32bによって変更された試験条件を、時間情報と対応付けて記憶する。
出力部34は、操作パネルのLED(Light Emitting Diode)表示部や、試験装置1と接続する液晶ディスプレイなどの表示装置、プリンター等の印刷装置、情報通信装置等によって実現される。出力部34は、制御部32の制御のもと、試料2に対する試験終了後に、各試料2の測定結果を出力する。この場合、制御部32は、各試料2の測定結果を、測定値の低い順に並び替えてから、出力部34に出力させてもよい。
ホルダ移動部40は、制御装置30の制御に従って、試料ホルダ3を、試料室10と測定室20との間で移動する機能を有する。図1では、試料ホルダ3ごとにホルダ移動部40が設けられた例を図示するが、もちろんこれに限らず、複数の試料ホルダ3を移動するものであってもよい。
以上のように、試験装置1は、促進耐候性試験中に、試料2の劣化状況に応じて、試料2に対する負荷を段階的に高めた条件に変更している。具体的には、試験装置1は、測定値と基準値とを定期的に比較することによって、目標試験時間Tで劣化が判別できる程度に試料2の劣化が進行しているかを判定し、試料2の劣化が進行していない場合には、促進耐候性試験におけるパラメータを高負荷側に変更している。従って、試験装置1によれば、試験条件を過度にかつ急激に高めるのではなく、試験期間中に、適切なタイミングで高負荷側に段階的に試験条件を変更するため、屋外環境劣化との近似性を大きく損ねることがないという効果を奏する。
また、試験装置1は、測定値と基準値とを定期的に比較し、測定値が基準値に達しない場合には、試験条件を高負荷側に段階的に変更することによって、目標となる試験時間で劣化が判別できるように試料2の劣化を進行させている。これによって、試験装置1では、一定の条件のみに従って促進耐候性試験を実施していた従来と比して、試験時間を短縮できる。以上のように、本実施の形態1によれば、試料2に対して信頼性の高い、効率的な評価が可能となる。
[実施例1]
例えばポリウレタン塗料A及び塗料Bを7cm×15cの鋼材に厚さ50μmで塗布したものを、試料A及び試料Bとして、試験装置1の試料ホルダ3に設置する。
測定項目として、光沢保持率、色、ヘーズ、表面性状、厚み、FTIRスペクトルあるいはインピーダンスなどが好適に用いられるが、本例では色を用いた場合について説明する。色の測定は、例えば、JIS K5600 4−5に規定される分光光度計を用いて、試料の色座標L* TaTb* T及び参照標準の色座標L* Ra* Rb* Rを測定し、JIS K5600−4−6に示される計算式ΔE* ab=[(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2]1/2によって色差ΔE* abを求める。なお、ΔL*=L* T−L* R,Δa*=a* T−a* R,Δb*=b* T−b* Rである。
また、促進耐候性試験の初期条件は、例えばJIS K5600−7−7:2008に準拠し、以下のように設定する。具体的には、キセノン光源(光源11)に、300〜400nmの波長帯域の光を60W/m2の光量で照射させる。そして、ブラックパネル温度は、63±2℃に設定する。さらに、相対湿度40〜600%の乾燥時間108分と、濡れ時間18分とのサイクルとする。なお、促進耐候性試験の初期条件は、他の規格の試験条件を用いることもでき、また、任意に設定することもできる。
次に、試料に対する色差の測定間隔t[h]、試験条件を変更する色差の閾値H、試験条件変更の判定基準となる試料、試験終了の基準となる試料、及び、試験を終了する色差の値(終了基準値Y)を設定する。
本例では、目標試験時間Tを2000[h]に設定する。ポリウレタン塗料の評価は試験時間2000[h]程度で実施されることが多いものの、近年の塗料の高耐候性化を考慮すると、試験条件が一定である従来方法で試料A,Bの優劣を2000時間で判定するのは難しいと想定される。そこで、本実施例1では、2000[h]で十分に劣化させることを目標として定めた。また、目標測定回数nを5に設定するとともに、終了基準値Yを10に設定した。これに伴い、試料の色差の測定間隔t[h]を、2000[h]を5で除した400[h]に設定し、試験条件を変更する色差の閾値Hを、10を5で除した2に設定した。
さらに、試験条件変更の判定基準となる試料は、試験する試料の中で最も劣化が遅い試料と設定した。そして、試験終了の基準は、最も劣化が早い試料の色差が10以上になった場合に設定する。もちろん、色差の測定間隔t[h]や閾値Hは、任意に設定してよい。また、試験条件変更及び試験終了の基準となる試料は、任意の一つの試料を指定しても、複数の試料の中で最も劣化が早いまたは遅い試料としてもよい。
以上のように設定した促進耐候性試験の初期条件、測定項目、測定間隔400[h]、閾値2、試験条件変更の判定基準となる試料、試験終了の基準となる試料、及び、終了基準値10が、入力部31から制御部32に入力される。
また、試験条件制御部32bでは、判定部32cによって差分値が閾値2を超えていないと判定された場合には、促進耐候性試験のパラメータのうち、ブラックパネル温度の設定温度を10℃上げた設定に変更する。変更するパラメータがブラックパネル温度である場合、1℃程度の上昇では、劣化が進行しにくい。一般的に、ブラックパネル温度を10℃上げることによって、劣化速度を約2倍にまで進めることが知られている。このため、変更するパラメータがブラックパネル温度である場合、5〜20℃上げることが好適である。なお、繰り返し温度を上昇させていく上での温度の上限は、雨や結露を再現するため、ブラックパネル温度95℃とする。
試験装置1では、試験開始前に試料A,Bの色測定が行われ、これを初期値として測定結果記憶部33aに記憶される。続いて、試験条件制御部32bは、上記のように設定された初期条件に従って促進耐候性試験を開始する。
ここで、図2及び図3を参照して、本実施例1における促進耐候性試験を具体的に説明する。図2は、本試験装置1と従来の試験装置とによる試料A,Bの色差測定結果の一覧を示す図である。図3は、試験装置1と従来の試験装置とによって測定された試料A,Bの色差測定値の時間依存性と、試験装置1の試験と従来の試験装置の試験とにおけるブラックパネル温度の設定温度における時間依存性とを示す図である。図3の(1)に示す各曲線は、図2に示す測定結果一覧T1に基づいてグラフ化したものである。図3の(1)に示す曲線MA1は試験装置1による試料Aの測定結果に対応し、曲線MB1は試験装置1による試料Bの測定結果に対応し、曲線PAは従来の試験装置による試料Aの測定結果に対応し、曲線PBは、従来の試験条件による試料Bの測定結果に対応する。また、図3の(2)における曲線C1は、試験装置1によって設定されたブラックパネル温度の時間依存性に対応し、曲線Cpは、従来の試験装置によって設定されたブラックパネル温度の時間依存性に対応する。
試験開始から400[h]経過後、測定制御部32aは、試料A,Bの色を試料測定装置21に測定させる。この結果、初回測定からの色差が、試料A,Bともに0.2であった(図2及び図3の(1)参照)。
ここで、判定部32cは、いずれの試料においても、初回測定からの色差が、閾値「2」未満であることから、閾値を超えていないと判定した。これに応じて、試験条件制御部32bは、ブラックパネル温度を63℃から10℃上げた73℃の設定に変更し(図3の(2)参照)、促進耐候性試験を再開した。
さらに、400[h]経過後、即ち、試験開始から計800h経過後、測定制御部32aは、試料測定装置21に、試料A,Bの色を測定させた。この測定では、初回測定からの色差として、試料Aにおいて3.5、試料Bにおいて2.5の値が得られた(図2及び図3の(1)参照)。従って、本測定による測定値と前回測定結果との差分値は、試料Aでは3.3、試料Bでは2.3となる。この結果、判定部32cは、相対的に劣化が遅い試料Bについても、前回測定結果との差分値が閾値2を超えたと判定したため、試験条件制御部32bは、試験条件を変更せず(図3の(2)参照)、試験を継続する。
そして、400h経過後、即ち、試験開始から1200h経過後、測定制御部32aは、試料測定装置21に色差を測定させる。この結果、試料Aでは10.5、試料Bでは7.5の値が得られ、相対的に劣化が早い試料Aの色差が終了基準値10以上となった(図2及び図3の(1)参照)。この場合、判定部32cは、終了基準となる試料Aにおける差分値が終了基準値10を超えたと判定し、制御部32は、1200hの試験時間で、試料A,Bに対する試験を終了する。
続いて、制御部32は、試験終了時の試料Aの色差「10.5」及び試料Bの色差「7.5」を出力部34から出力させる。これによって、試料Bの方が、試料Aよりも色差の値が小さいことから、試料Aよりも試料Bの方が高耐候性であると判断できる。
ここで、従来の試験条件は、曲線Cp(図3の(2)参照)のように、ブラックパネル温度の設定温度を63℃とした初期の試験条件のまま試験を継続している。従来の試験条件では、試験を2000[h]実施しても、色差は、試料Aが4.9であり、試料Bが4.2であり、微差しか生じなかった(図2及び図3の(1)の曲線PA,PB参照)。このように、従来の試験条件では、長時間にわたって試験を行った場合でも、試料A及び試料Bの色差に、あまり差が出ず、試料間の優劣の判別が難しかった。
これに対し、本実施例1では、400[h]経過時において、ブラックパネル温度の設定温度を63℃から73℃に変更している(図3の(2)の曲線C1参照)。言い換えると、本実施の形態1では、試料A,Bの劣化速度を進行させるように、試験の途中で試験条件を一段階高負荷側に強めている。この結果、実施例1では、目標試験時間2000[h]よりも短い1200[h]で試験を終了できた。
また、本実施例1では、800h経過時には、試料A及び試料Bのいずれも、色差の差分値が閾値2を超えたことから(図2及び図3(1)の曲線MA1,MB1参照)、試験条件は変更せず、ブラックパネル温度の設定温度を73℃のままで(図3(2)の曲線C1参照)試験を継続している。このように、実施例1では、試験条件を高負荷側に適度に変更しているため、過度に過酷な試験条件を実施して実環境劣化と異なる傾向の劣化を引き起こすおそれが高まらないようにしている。
なお、一度の試験で試料の耐候性の優劣を比較するには、前述したように、試験終了時点等で各測定値を比較すればよい。また、複数回に分けて試験を実施するには、1回目の試験で試験条件の判定基準として用いた試料を複数枚用意し、2回目以降の試験では、その試験片を毎回1枚入れ、それを試験条件の判断基準とするよう設定するとよい。具体的には、本実施例1のように、相対的に最も劣化が遅い試料Bを試験条件の判定基準として1回目の試験を実施した場合、この試料Bについて、新しい試験片を複数枚用意し、2回目以降の試験では毎回試料Bを入れる。このように、2回目以降の試験でも試料Bを追加し、試験条件の判定基準を毎回試料Bとするように設定すれば、1回目と同様の条件で2回目以降も試験が実施できる。もちろん、同一の試験条件で実施した試験の測定結果については、測定値間での比較が可能であるため、一度の試験で行った時と同様に試験終了時点での測定値を用いて、耐候性の優劣を判定すればよい。
[試験方法の処理手順]
次に、試験装置1が実行する促進耐候性試験の処理手順について説明する。図4は、試験装置1が実行する促進耐候性試験の試験条件制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
図4に示すように、まず、入力部31から、制御部32に、設定条件が入力される(ステップS1)。具体的には、入力される設定条件は、促進耐候性試験の初期条件、測定項目、測定間隔、試験条件の変更基準となる測定値に関する閾値、試験条件変更の判定基準となる試料、試験終了の基準となる試料、及び、試験終了の判定基準となる終了基準値である。制御部32は、試験条件を試験条件記憶部33bに記録する。
そして、試料ホルダ3に試料2がセットされる。続いて、実際に試料室10において試験が開始される前に、試料測定装置21は、試料2の物性測定を実施し、測定結果は、初期値として測定結果記憶部33aに記憶される(ステップS2)。
試験条件制御部32bは、ステップS2終了後、入力部31から入力された促進耐候性試験の初期条件に従って、光源11、加温装置12、加湿装置13及び水噴霧装置14等を制御して、促進耐候性試験を開始する(ステップS3)。試験条件制御部32bは、光源11、加温装置12、加湿装置13及び水噴霧装置14等の制御状態を、試験条件として、試験条件記憶部33bに記録する。
測定間隔として入力された任意の時間(t[h])経過後、測定制御部32aは、試料室10による試験を一時中断させ、試料測定装置21に試料2の物性測定を実施させる(ステップS4)。なお、測定制御部32aは、測定結果を、試料2の識別情報、測定項目及び測定日時に対応付けて測定結果記憶部33aに記憶させる。
続いて、判定部32cは、試料測定装置21によって今回行われた物性測定の測定値と、今回の物性測定の一回前に測定された前回測定値との差分値を求め、求めた差分値が、閾値を超えたか否かを判定する(ステップS5)。この閾値は、試験条件の変更基準となる測定値に関する閾値として入力部31から試験開始前に入力されたものである。
試験条件制御部32bは、判定部32cによって差分値が閾値を超えていないと判定された場合には(ステップS5:No)、試料2に対する任意の試験条件(設定温度及び光照射強度等)を高負荷側に一段階強めた試験条件に変更して、試料2に対する試験を再開する(ステップS6)。
制御部32は、試料2に対する試験再開後、ステップS4に戻り、t[h]経過後に試料測定装置21に試料2に対する物性測定を実行させ、再度、判定部32cによるステップS5の判定処理を行う。判定部32cによって、差分値が閾値を超えたと判定されるまで、ステップS4〜ステップS6のサイクルを繰り返し、試験条件のうちのいずれか任意のパラメータを一段階ずつ高めていく。
これに対し、試験条件制御部32bは、判定部32cによって差分値が閾値を超えたと判定された場合には(ステップS5:Yes)、試験条件は変更せず、促進耐候性試験を継続実施する(ステップS7)。そして、制御部32は、t[h]経過後、試料測定装置21に試料2に対する物性測定を実行させる(ステップS8)。
続いて、判定部32cは、試料測定装置21によって今回行われた物性測定の測定値及び初期値の差分値と、終了基準値とを比較し、差分値が試験終了基準値を超えたか否かを判定する(ステップS9)。試験条件制御部32bは、判定部32cによって差分値が終了基準値を超えていないと判定された場合には(ステップS9:No)、ステップS7に進み、試験条件を変更せず、試料室10に試料2に対する促進耐候性試験を継続実施させる。
一方、試験条件制御部32bは、判定部32cによって差分値が終了基準値を超えたと判定された場合には(ステップS9:Yes)、試料2に対する促進耐候性試験を終了させる。
試験装置1は、以上の処理手順を行い、試料2の劣化が進行していない場合には、促進耐候性試験におけるパラメータを一定の値で変更することによって、屋外環境劣化との近似性を大きく損ねることなく、試験時間の短縮化を実現できるため、試料2に対して信頼性の高い、効率的な評価が可能となる。
[実施の形態1に係る試験装置1による効果]
上述してきたように、実施の形態1に係る試験装置1は、試料室10が、設定された試験条件に従って試料2に継続して負荷を与える促進耐候性試験を行い、測定室20が、所定の時間間隔で試料2の物性測定を行い、制御装置30が、測定室20によって行われた物性測定の測定値が、予め定められた試料2の劣化の進行度に関する基準値を超えていない場合には、試料2に対して高負荷となるように促進耐候性試験におけるパラメータを変更した試験条件に設定する。このように、試験装置1は、促進耐候性試験中に、試料2の劣化状況に応じて、試料2に対する負荷を段階的に高めた条件に変更しているため、試験期間の短縮が可能であり、かつ、屋外環境下での劣化状態との近似性を大きく損ねることなく促進耐候性試験を実行可能である。
また、試験装置1は、制御装置30が、測定室20によって行われた物性測定の測定値及び該測定値の一回前に測定された前回測定値の差分値と、所定の閾値Hとを、定期的に比較し、差分値が閾値Hを超えていないと判定した場合には促進耐候性試験におけるパラメータを一定の値で変更した試験条件に変更し、差分値が閾値を超えたと判定した場合には試験条件を維持する。このように、試験装置1によれば、試験期間中に、適切なタイミングで高負荷側に段階的に試験条件を変更するため、屋外環境劣化との近似性を大きく損ねることがないことに加え、一定の条件のみに従って促進耐候性試験を実施していた従来と比して、試験時間を短縮できる。
また、試験装置1では、測定室20によって行われた物性測定の測定値と試料2の試験開始前の測定値である初期値との差分値が、予め定められた試験終了の判定基準となる終了基準値を超えていないと判定した場合には促進耐候性試験の継続を設定し、測定室20によって行われた物性測定の測定値と試料2の試験開始前の測定値である初期値との差分値が終了基準値を超えたと判定した場合には促進耐候性試験の終了を設定するため、適切なタイミングで促進耐候性試験を終了することができる。
[実施の形態2]
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態2では、測定値と初期値との差分値が試験終了の判定基準となる終了基準値を超えるまで、測定期間ごとに、パラメータを高負荷側に段階的に変更している。
[試験装置の構成]
図5は、本発明の実施の形態2に係る試験装置の構成の一例を示す図である。図5に示すように、実施の形態2に係る試験装置201は、図1に示す制御装置30に代えて、制御部232を有する制御装置230を有する。
制御部232は、制御部32と同様に、CPU等を用いて実現され、試験装置201の各構成部位の処理動作を制御する。制御部232は、測定制御部32a、試験条件制御部232b、判定部232c及び演算部232dを有する。なお、実施の形態2では、設定条件として、促進耐候性試験の初期条件、測定項目、測定間隔t[h]、試験条件変更の判定基準となる試料、試験終了の基準となる試料、及び、試験終了の判定基準となる終了基準値Yが、入力部31から制御部232に入力される。さらに、実施の形態2では、演算部232d(後述)の試験期間の演算対象となる測定値(閾値ya(後述))が入力される。
測定制御部32aは、実施の形態1と同様に、試料測定装置21に、試験開始前の試料2の物性測定を実行させることによって該試料2の初期値を取得するとともに、入力部31から入力された測定間隔及び測定項目に従って試料2に対する物性測定を実行させる。
試験条件制御部232bは、試験条件制御部32bと同様に、試料測定装置21による試料2の初期値測定後、入力部31によって入力された促進耐候性試験の初期条件に従って、試料室10内の試料2に対する促進耐候性試験を開始させる。そして、試験条件制御部232bは、判定部232c(後述)の判定結果に応じて、促進耐候性試験におけるパラメータを一定の値で変更する。
判定部232cは、測定期間ごとに、試料測定装置21によって行われた物性測定の測定値と初期値との差分値が終了基準値Yを超えたか否かを判定する。なお、いずれの測定値も試験条件変更の判定基準となる試料2に対するものである。
これに応じて、試験条件制御部232bは、差分値が終了基準値Yを超えたと判定部232cが判定するまで、測定期間ごとに、促進耐候性試験におけるパラメータを一定の値で高負荷側に変更する。一方、試験条件制御部232bは、差分値が終了基準値Yを超えたと判定部232cが判定した場合には促進耐候性試験の終了を設定する。
演算部232dは、測定結果記憶部33aに記憶された測定時間及び測定値を用いて、全ての試料2に対して、測定値と初期値との差分値が所定の閾値yaに達した試験時間を演算する。所定の閾値yaは、終了基準値Yと同値であってもよく、この場合には、演算部232dは、測定値と初期値との差分値が終了基準値Yに達した試験時間を演算する。
具体的には、演算部232dは、測定結果記憶部33aから、所定の閾値yaを超える直前の試験時間t1及び該試験時間t1における測定値y1と、所定の閾値yaを超えた直後の試験時間t2及び該試験時間t2における測定値y2を参照し、(1)式を用いて、所定の閾値yaに達した試験時間taを演算する。なお、(1)式は、測定値と試験時間との一次近似式である。また、演算部232dによって演算された結果は、記憶部33の演算結果記憶部233cに記憶される。
ta=(ya−y1)×(t2−t1)/(y2−y1)+t1 ・・・(1)
出力部34は、制御部232の制御のもと、各試料2に対する試験終了後に、演算部232dによる演算結果として、測定結果が所定の閾値yaに達した試験期間を試料2ごとに出力する。
以上のように、試験装置201は、測定値と初期値との差分値が終了基準値を超えるまで、測定期間ごとにパラメータを一定の値ずつ高負荷側に段階的に変更することによって、屋外環境劣化との近似性を大きく損ねることなく、目標となる試験時間で劣化が判別できるように試料の劣化を進行させて、試験時間の短縮化を図っている。
[実施例2]
本実施例2でも、実施例1と同様に試料A,Bに対して色差を測定する場合について説明する。実施例2においても、実施例1と同様に、測定間隔t[h]を400[h]に設定し、試験を終了する色差の値(終了基準値Y)を10に設定する。また、実施例2においては、促進耐候性試験のパラメータのうち、ブラックパネル温度の設定温度を5℃ずつ上げる設定とする。さらに、色差の値が終了基準値である10を超える試験時間を演算で求める設定とした。
まず、実施例1と同様に、試験装置1では、試験開始前に試料A,Bの色測定が行われ、これを初期値として測定結果記憶部33aに記憶される。続いて、試験条件制御部232bは、促進耐候性試験の初期条件として、JIS K5600−7−7:2008に規定された条件に従って、促進耐候性試験を開始する。
ここで、図6及び図7を参照して、本実施例2における促進耐候性試験を具体的に説明する。図6は、本試験装置201と従来の試験装置とによる試料A,Bの色差測定結果の一覧を示す図である。図7は、試験装置201と従来の試験装置とによって測定された試料A,Bの色差測定値の時間依存性と、試験装置201の試験と従来の試験装置の試験とにおけるブラックパネル温度の設定温度における時間依存性とを示す図である。図7の(1)に示す各曲線は、図6に示す測定結果一覧T2に基づいてグラフ化したものである。図7の(1)に示す曲線MA2は試験装置201による試料Aの測定結果に対応し、曲線MB2は試験装置201による試料Bの測定結果に対応する。曲線PA及び曲線PBは、図3の(1)と同様である。また、図7の(2)における曲線C2は、試験装置201によって設定されたブラックパネル温度の時間依存性に対応する。なお、曲線Cpは、図3の(2)と同様である。
試験開始から400[h]経過後、試料測定装置21は、試料A,Bの色を測定する。この結果、試料A,Bともに初期値からの色差はともに0.2であった(図6及び図7の(1)参照)。この場合、いずれの試料A,Bにおいても、初回測定からの色差が、終了基準値10未満であることが判定部232cで判定されるため、試験条件制御部232bは、ブラックパネル温度を5℃高めて68℃に変更し(図7の(2)の曲線C2参照)、促進耐候性試験を再開した。
そして、400[h]経過後、即ち、試験開始から計800h経過後、試料測定装置21は、再び試料A,Bの色差を測定した。この測定では、試料Aについては1.8の値が得られ、試料Bについては1.5の値が得られた(図6及び図7の(1)参照)。この場合も、初回測定からの色差が終了基準値10未満であることが判定部232cで判定されるため、試験条件制御部232bは、ブラックパネル温度を5℃高めて73℃に変更し(図7の(2)の曲線C2参照)、促進耐候性試験を再開した。
さらに、400h経過後、即ち、試験開始から1200h経過後、試料測定装置21が改めて色差を測定すると、試料Aについては8.0の値が得られ、試料Bについては7.0の値が得られた(図6及び図7の(1)参照)。この場合も、これまでと同様に、初回測定からの色差が終了基準値10未満であることが判定部232cで判定されるため、試験条件制御部232bは、ブラックパネル温度を5℃高めて78℃に変更し(図7の(2)の曲線C2参照)、促進耐候性試験を再開した。
続いて、400h経過後、即ち、試験開始から1600h経過後、試料測定装置21が改めて色差を測定すると、試料Aについては18.0の値が得られ、試料Bについては、15.0の値が得られた(図6及び図7の(1)参照)。この結果、全ての試料A,Bについて、初回測定からの色差が終了基準値10を超えたことが判定部232cで判定され、試験条件制御部232bは、試験を終了した。
続いて、演算部232dは、試料Aについては、1200[h](t1)経過時における色差の値8.0(y1)と、1600[h](t2)経過時における色差の値18.0(y2)とを、上記(1)式に代入し、試料Aの色差の測定値と初期値との差分値が閾値10に達した試験時間(EA)が1280[h]であることを算出した(図7の(1)の矢印Ya参照)。同様に、試料Bについても、1200[h](t1)経過時における色差の値7.0(y1)と、1600[h](t2)経過時における色差の値15.0(y2)とを、上記(1)式に代入し、色差の測定値と初期値との差分値が閾値10に達した試験時間(EB)が1350[h]であることを算出した(図7の(1)の矢印Yb参照)。この結果、閾値10を超えるのにより長時間を要した試料Bの方が耐候性の高い材料であることが判断できる。なお、試料A,Bについての演算結果(EA,EB)は、出力部34から出力される。
なお、図6及び図7に示すように、初期の試験条件を変更せずに試験を実施した従来の試験装置では、実施例1と同様に、試験を2000[h]実施しても、色差は、試料Aが4.9であり、試料Bが4.2であり、微差しか生じなかった(図6及び図7の(1)の曲線PA,PB参照)。
これに対し、本実施例2では、測定値が終了基準値10を超えるまで、試験のパラメータを高負荷側に段階的に変更することによって、目標試験時間2000[h]よりも短い1600[h]で試験を終了できた。従って、本実施例2においても、試料の劣化状態に合わせて適切に劣化を促進させながら、試験期間の短縮化を実現できた。
[試験方法の処理手順]
次に、試験装置201が実行する促進耐候性試験の処理手順について説明する。図8は、試験装置201が実行する促進耐候性試験の試験条件制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
図8に示すステップS11〜ステップS14は、図4に示すステップS1〜ステップS4である。そして、ステップS14における測定処理後、判定部232cは、試料測定装置21によって今回行われた物性測定の測定値と初期値との差分値を求め、求めた差分値が、終了基準値を超えたか否かを判定する(ステップS15)。
試験条件制御部232bは、判定部232cによって差分値が終了基準値を超えていないと判定された場合には(ステップS15:No)、試料2に対する任意の試験条件(設定温度及び光照射強度等)を高負荷側に一段階強めた試験条件に変更して、試料2に対する試験を再開する(ステップS16)。制御部232は、試料2に対する試験再開後、ステップS14に戻り、t[h]経過後に試料測定装置21に試料2に対する物性測定を実行させ、再度、判定部232cによるステップS15の判定処理を行う。判定部232cによって、測定値と初期値との差分値が終了基準値を超えたと判定されるまで、ステップS14〜ステップS16のサイクルを繰り返し、測定間隔t[h]ごとに促進耐候性試験におけるパラメータを一段階ずつ高めていく。
一方、試験条件制御部232bは、判定部232cによって差分値が終了基準値を超えたと判定された場合には(ステップS15:Yes)、試料2に対する促進耐候性試験を終了させる。
試験装置201は、以上の処理手順を行うことによって、測定値と初期値との差分値が終了基準値を超えるまで、促進耐候性試験におけるパラメータを一定の値ずつ段階的に高負荷側に変更することによって、試験装置1に比して試料2の劣化をより促進し、試験期間の短縮化を図ることができる。
[実施の形態2に係る試験装置201による効果]
上述してきたように、実施の形態2に係る試験装置201は、制御装置230が、測定室によって行われた物性測定の測定値と試料2の試験開始前の測定値である初期値との差分値が、予め定められた試験終了の判定基準となる終了基準値を超えたと判定するまで、所定の時間間隔ごとに促進耐候性試験におけるパラメータを一定の値で変更し、差分値が終了基準値を超えたと判定した場合には促進耐候性試験の終了を設定する。このように、試験装置201は、促進耐候性試験中に、試料2の劣化状況に応じて、試料2に対する負荷を段階的に高めた条件に変更しているため、試験期間の短縮が可能であり、かつ、屋外環境下での劣化状態との近似性を大きく損ねることなく促進耐候性試験を実行可能である。
また、試験装置201は、測定値と初期値との差分値が終了基準値を超えるまで、促進耐候性試験におけるパラメータを一定の値ずつ段階的に高負荷側に変更することによって、試験装置1に比して試料2の劣化をより促進し、試験期間の短縮化を図ることができる。
また、試験装置201は、測定室20によって行われた物性測定の各測定の測定時間及び測定値を用いて、測定値と初期値との差分値が所定の閾値に達した試験時間を演算するため、試験実施者は、試料2ごとに、所定の閾値に達した正確な試験時間を認識することができ、試料2間の優劣を適切に判別することが可能になる。
なお、演算部232dは、測定結果記憶部33aに記憶された測定時間及び測定値を用いて、任意の試験期間における測定値と初期値との差分値を試料2ごとに演算し、演算結果を、演算値の低い順に並び替えてから出力部34に出力させてもよい。
また、実施の形態1,2では、試験条件制御部32b,232bは、試料2の劣化を促進させるために、判定部32c,232cの判定結果に応じて、ブラックパネル温度の設定温度を一定の値で変更した例を説明したが、もちろん、他のパラメータを変更させて試料2の劣化を促進させてもよい。例えば、加水分解を生じる高分子材料を試験対象とする場合には、試験条件制御部32b,232bは、湿度を一定の値ずつ高めてもよく、或いは、水を噴霧する時間を一定時間ずつ延長させてもよい。また、試験条件制御部32b,232bは、照射光の光量を一定の値ずつ高めてもよく、照射光の波長帯域を変更してもよい。
また、実施の形態1,2で説明した試験方法のうち、実環境との近似性を重視する場合には、定期的に高負荷側に条件を強める実施の形態2の試験方法ではなく、測定値と前回測定値との差分値が閾値を超えていない場合にのみパラメータを一段階高める実施の形態1の試験方法を適用することが望ましい。また、複数回の試験結果を比較した場合には、毎回同じ条件で実施される実施の形態2の試験方法を適用することが望ましい。実施の形態1による試験方法では、複数回の試験結果を比較するには、基準となる試料を複数用意する必要があるが、実施の形態2の試験方法では、この基準となる試料を用意することが必要ないためである。
[他の実施形態]
[プログラム]
上記実施形態に係る試験装置1,201が実行する処理をコンピュータが実行可能な言語で記述したプログラムを作成することもできる。この場合、コンピュータがプログラムを実行することにより、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、係るプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータに読み込ませて実行することにより上記実施形態と同様の処理を実現してもよい。以下に、最適化装置1と同様の機能を実現する最適化プログラムを実行するコンピュータの一例を説明する。
図9に示すように、最適化プログラムを実行するコンピュータ1000は、例えば、メモリ1010と、CPU1020と、ハードディスクドライブインタフェース1030と、ディスクドライブインタフェース1040と、シリアルポートインタフェース1050と、ビデオアダプタ1060と、ネットワークインタフェース1070とを有する。これらの各部は、バス1080によって接続される。
メモリ1010は、ROM(Read Only Memory)1011及びRAM1012を含む。ROM1011は、例えば、BIOS(Basic Input Output System)等のブートプログラムを記憶する。ハードディスクドライブインタフェース1030は、ハードディスクドライブ1031に接続される。ディスクドライブインタフェース1040は、ディスクドライブ1041に接続される。ディスクドライブ1041には、例えば、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能な記憶媒体が挿入される。シリアルポートインタフェース1050には、例えば、マウス1051及びキーボード1052が接続される。ビデオアダプタ1060には、例えば、ディスプレイ1061が接続される。
ここで、図9に示すように、ハードディスクドライブ1031は、例えば、OS1091、アプリケーションプログラム1092、プログラムモジュール1093及びプログラムデータ1094を記憶する。上記実施形態で説明した各テーブルは、例えばハードディスクドライブ1031やメモリ1010に記憶される。
また、最適化プログラムは、例えば、コンピュータ1000によって実行される指令が記述されたプログラムモジュール1093として、ハードディスクドライブ1031に記憶される。具体的には、上記実施形態で説明した最適化装置1が実行する各処理が記述されたプログラムモジュールが、ハードディスクドライブ1031に記憶される。
また、最適化プログラムによる情報処理に用いられるデータは、プログラムデータ1094として、例えば、ハードディスクドライブ1031に記憶される。そして、CPU1020が、ハードディスクドライブ1031に記憶されたプログラムモジュール1093やプログラムデータ1094を必要に応じてRAM1012に読み出して、上述した各手順を実行する。
なお、最適化プログラムに係るプログラムモジュール1093やプログラムデータ1094は、ハードディスクドライブ1031に記憶される場合に限られず、例えば、着脱可能な記憶媒体に記憶されて、ディスクドライブ1041等を介してCPU1020によって読み出されてもよい。あるいは、最適化プログラムに係るプログラムモジュール1093やプログラムデータ1094は、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)等のネットワークを介して接続された他のコンピュータに記憶され、ネットワークインタフェース1070を介してCPU1020によって読み出されてもよい。
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、本実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。