JP2015102437A - 促進耐候性試験装置および方法 - Google Patents

促進耐候性試験装置および方法 Download PDF

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Abstract

【課題】効率よく促進耐候性試験が実施できるようにする。
【解決手段】複数の試料台104a,104b,104cが、恒温槽101の内部に配置され、各々に設けられた試料温度制御部106a,106b,106cが、試料温度測定部105の測定結果をもとに、複数の試料台104a,104b,104cに載置される各試料121a,121b,121cの温度を個別に制御する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、高分子材料の耐候性を評価する促進耐候性試験装置および方法に関する。
屋外で使用される高分子材料の耐候性の評価には、「JIS K5600-7-7」、「JIS K 7350-2」などで規定されているキセノンアークランプ式促進耐候性試験機(以下XWOM)が最も一般的に用いられている。しかし、この装置による試験は、真夏の太陽光に近似した分光放射強度の光を照射し続けるものであり、劣化促進率はあまり高くない。このため、上記装置を用いた長期信頼性評価には、数千時間を要することがあり、評価時間の短縮が求められている。評価時間短縮のために、より強い光強度の紫外線を照射する装置も存在している(例えば非特許文献1、2)。
ここで、促進劣化試験を実施するに際して最も重要なことは、次のことにある。まず、ある種の促進劣化試験装置が、屋外暴露やその他の促進劣化試験装置と比較して劣化促進率はどれくらいなのかということを、予備実験により明らかにしておく。また、この予備実験の結果から、必要とされる耐候性を担保するためには、試験時間を何時間にするのが適切なのかを検討する。
飯田眞司、高柳弘道、矢部政実、「促進耐候性試験法」、塗料の研究、No.145、22〜37頁、2006年。 飯田眞司、高柳弘道、「促進耐候性試験(その2)」、塗料の研究、No.146、26〜39、2006年。
しかしながら、上述した予備実験を毎回行うのは、大がかりとなり、効率が悪いものとなる。例えば、同じ装置で紫外線強度を3倍にして実験した場合、劣化促進率は約2倍になるという関係、また、温度を10℃上げたら劣化促進率は約2倍になるという関係は、促進劣化試験の実施においては重要となる。これらの関係を、試験を行う都度予備実験を実施して明らかにしているのでは、非常に効率の悪いものとなる。これらの関係が推定できれば、試験毎に予備実験を実施する必要がなくなり、効率の向上が図れる。しかしながら、現在用いられている装置では、推定式を作成するためのデータを得るために、多くの実験条件を設定して多数の実験を行う必要がある。このように、上述したような関係を推定する場合においても、多くの実験が必要となり、効率が悪いという問題がある。
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、効率よく促進耐候性試験が実施できるようにすることを目的とする。
本発明に係る促進耐候性試験装置は、恒温槽と、恒温槽の内部に配置されて標準試料となる黒板と、黒板の温度を測定する黒板温度測定手段と、恒温槽の内部に配置された試験対象となる試料が載置される複数の試料台と、複数の試料台に載置された各試料の表面温度を個別に測定する試料温度測定手段と、試料温度測定手段の測定結果をもとに複数の試料台に載置される各試料の温度を個別に制御する試料温度制御手段と、恒温槽の内部に配置されて黒板および複数の試料台に載置される各試料に耐候性試験用の光を照射する光源と、恒温槽内の温度を測定する槽内温度測定手段と、黒板温度測定手段の測定結果および槽内温度測定手段の測定結果をもとに恒温槽内の温度を制御する温度制御手段とを備える。
上記促進耐候性試験装置において、複数の試料台は、光源より等しい距離に配置されているようにすればよい。また、複数の試料台は、光源より各々異なる距離に配置されているようにしてもよい。複数の試料台は、光源からの距離が各々個別に可変可能とされていればよい。なお、試料温度制御手段は、ペルチェ素子から構成することができる。
また、本発明に係る促進耐候性試験方法は、耐候性試験を行う恒温槽の内部に複数の試料を載置する試料載置工程と、複数の試料の表面温度を各々測定した測定結果をもとに複数の試料の温度を各々個別に制御する試料温度制御工程と、複数の試料温度を各々個別に制御している状態で、複数の試料に耐候性試験用の光を光源から照射して耐候性試験を実施する試験工程とを備える。
上記促進耐候性試験方法において、試料温度制御工程では、複数の試料の温度を同一の状態とし、試験工程では、複数の試料と光源との距離を各々異なる状態として耐候性試験を実施すればよい。また、試料温度制御工程では、複数の試料の温度を各々異なる状態とし、試験工程では、複数の試料と光源との距離を同一の状態として耐候性試験を実施してもよい。
以上説明したことにより、本発明によれば、効率よく促進耐候性試験が実施できるようになるという優れた効果が得られる。
図1は、本発明の実施の形態における促進耐候性試験装置の構成を示す構成図である。 図2は、本発明の実施の形態における促進耐候性試験装置の他の構成を示す構成図である。
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態における促進耐候性試験装置の構成を示す構成図である。この装置は、恒温槽101、黒板102、黒板温度測定部103、複数の試料台104a,104b,104c、試料温度測定部105、複数の試料温度制御部106a,106b,106c、光源107、槽内温度測定部108、および温度制御部109を備える。
黒板102は、恒温槽101の内部に配置されて標準試料となる。また、黒板温度測定部103は、黒板102の温度を測定する。促進耐候性試験では、試験条件を規定する上で試料の温度が重要となる。ところが、試料には様々な種類があるため、基準を規定することになる。この基準として、よく知られているように、黒板が用いられている。近年では、これらについて2種類の規定があり使用されている。1つは、ブラックパネル温度計である。これは、黒く塗装したステンレス板を黒板とし、この表面に温度センサー(黒板温度測定部)を取り付けたものである。また他の1つは、ブラックスタンダード温度計と呼ばれ、上記同様に黒く塗装したステンレス板を黒板とし、この裏面にプラスチック(PVDF)の断熱材を張り付け、黒板と断熱材の間に温度センサー(黒板温度測定部)を配置したものである。これらは、基本的に同じ機能を有するものである。
試料台104a,104b,104cは、恒温槽101の内部に配置され、試験対象となる試料121a,121b,121cが載置される。ここでは、3つの試料台104a,104b,104cを備える場合を例に説明するが、これに限るものではなく、4つ以上の試料台があってもよい。
試料温度測定部105は、複数の試料台104a,104b,104cに載置された各試料121a,121b,121cの表面温度を個別に測定する。試料温度測定部105は、例えば、放射温度計から構成されていればよい。
試料温度制御部106a,106b,106cは、試料温度測定部105の測定結果をもとに複数の試料台104a,104b,104cに載置される各試料121a,121b,121cの温度を個別に制御する。試料温度制御部106a,106b,106cは、例えば、ペルチェ素子を備えて構成されていればよい。また、水冷や空冷、あるいはヒートパイプなどを用いた冷却機構を備えるようにしてもよい。ここでは、3つの試料温度制御部106a,106b,106cを備える場合を例に説明するが、これに限るものではない。試料温度制御部は、試料台毎に設けられていればよい。
光源107は、恒温槽101の内部に配置されて黒板102および複数の試料台104a,104b,104cに載置される各試料121a,121b,121cに、耐候性試験用の光を照射する。光源107は、キセノンアークランプから構成されていればよい。また、光源107は、紫外線蛍光ランプから構成されていてもよい。
槽内温度測定部108は、恒温槽101内の温度を測定する。また、温度制御部109は、黒板温度測定部103の測定結果および槽内温度測定部108の測定結果をもとに恒温槽101内の温度を制御する。
また、実施の形態における促進耐候性試験装置は、送風制御部110,紫外線放射計111,光源制御部112を備える。
送風制御部110は、黒板温度測定部103の測定結果,試料温度測定部105の測定結果などをもとに、恒温槽101の内部に風(空気の対流)を発生させ、試料表面の温度を調整する。また、紫外線放射計111は、光源107より照射される紫外線を測定し、この測定結果により、光源制御部112が光源107の動作(出力)を制御する。なお、恒温槽101の構造、また、黒板102,黒板温度測定部103,槽内温度測定部108,温度制御部109,送風制御部110,紫外線放射計111,光源制御部112などの構成は、一般に用いられているキセノンアークランプ式促進耐候性試験機などと同様である。
ここで、例えば、各試料台104a,104b,104cは、光源107より等しい距離に配置されている。また、この状態で、試料温度制御部106a,106b,106cは、各々異なる温度に制御している。なお、試料121a,121b,121cは、同じ材料から構成されている。
上記構成および制御状態とした促進耐候性試験装置を用い、まず、恒温槽101の内部に複数の試料121a,121b,121cを、各々試料台104a,104b,104cに載置する(試料載置工程)。次いで、複数の試料121a,121b,121cが、各々設定した表面温度となるように、試料温度測定部105で温度を監視(制御)し(試料温度制御工程)、この状態で、試料温度制御部106a,106b,106cで、試料121a,121b,121c温度を調整して試験を行う(試験工程)。この装置によれば、複数の試料で受ける紫外線強度を同じとしながら、試料温度を異なる条件にした試験を、同時に実施することが可能となる。
このようにいくつかの温度条件・同じ紫外線強度で劣化させた試料の物理・化学的性質を測定することで、以下に例示するように、試験を実施した時に、実施した試験以外の温度における劣化促進率の推定が可能になる。
例えば、よく知られているように、アレニウスプロットにより、測定結果とそのときの温度の逆数を片対数グラフにプロットすれば、回帰分析の手法を用いて係数を求めて活性化エネルギーなどを実験的に求めることができる。まず、アレニウス式の対数をとった場合の式「logk=−(E/RT)+logA」において、「y=logk,m=−E/R,x=1/T,b=logA」ように変数をとれば、「y=mx+b」とみなすことができる。なお、kは反応速度、Aは頻度因子、Eは活性化エネルギー(1モルあたり)、Rは気体定数、Tは絶対温度である。
実測された反応速度kと、測定時の温度の逆数を片対数グラフにプロット(アレニウスプロット)すれば、係数mやbを実験的に求めることができる。実際の利用例として、例えば、紫外線を照射したプラスチックの試料の引っ張り強度が、紫外線照射時間と比例して低下していく際の傾きの値を上式の反応速度kのかわりに用いてプロットし、回帰分析的に係数mやbを求める。このようにして係数m,bを求めた式を用いることで、試験を実施した以外の温度における劣化促進率の推定が可能になる。
ところで、上述では、各試料台104a,104b,104cを、光源107より等しい距離に配置したが、これに限るものではない。図2に示すように、複数の試料台104a,104b,104cが、光源107より各々異なる距離に配置されている状態としてもよい。
このように構成し、全ての試料121a,121b,121cが同じ表面温度となるように、試料温度測定部105で温度を監視しながら、試料温度制御部106a,106b,106cで、試料121a,121b,121c温度を調整して試験を行う。この装置によれば、複数の試料温度を同一としながら、受ける紫外線強度を異なる条件にした試験を、同時に実施することが可能となる。
この装置において、光源107からの距離が紫外線放射計111と同じ距離に設置してある試料121aが受ける紫外線強度を1とする。この条件では、光源107からの距離が紫外線放射計111までの1.2倍の位置に設置された試料121bは、受ける紫外線強度は距離の2乗に反比例し、試料121aの1/1.22となる。また、光源107からの距離が紫外線放射計111までの1.4倍の距離に設置された試料121cは、受ける紫外線強度は距離の2乗に反比例し、試料121aの1/1.42となる。
このように、光源107からの距離が、紫外線放射計111までの何倍であるかがわかれば、試料の受ける紫外線の強度は計算により算出できる。また、試料温度測定部105により試料温度を監視しながら、全ての試料が設定した同じ温度になるように、試料温度制御部106a,106b,106cで、対応する試料121a,121b,121cの温度を調整する。このように試験を行うことで、1回の試験で全ての試料の温度を同じに保ちながらも、紫外線強度は試料ごとに異なる条件にして試験を実施することが可能となる。なお、複数の試料台104a,104b,104cが、光源107からの距離が各々個別に可変可能とされていれば、上述した設定の変更が容易に行える。
このように、いくつかの異なる温度条件・同じ紫外線強度で劣化させた試料の物理・化学的性質を測定することで、ある耐候性試験装置において紫外線強度がx倍になった際に、劣化速度はy倍になるといった関係を推定できる。経験的には、ある材料が紫外線劣化を生じる閾値以上の強度の紫外線を受けている場合、紫外線紫外線強度がx倍になった際に劣化速度はxのz乗になることが多い。多くの場合、zの値は0.5〜1の間である。
上述した実施の形態によれば、1回の試験のみで、同じ温度で紫外線強度だけ変えて劣化させた試料が得られるので、上述したzの値が算出できる。具体的には、例えば、紫外線を照射されたプラスチック試料の引っ張り強度が、紫外線照射時間と比例して低下していく際の傾きの値が紫外線強度を2倍にした際に傾きは1.5倍に、紫外線強度を9倍にした際に3.5〜4倍になったとする。この場合、zの値は0.6程度であり、例えば紫外線強度を20倍に設定すれば、200.6≒6であるので、低下する傾きが約6倍になる、といった推定が可能になる。
以上に説明したように、本発明では、複数の試料台を設け、これら各々に試料温度制御手段を設けるようにしたので、効率よく促進耐候性試験が実施できるようになる。
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
101…恒温槽、102…黒板、103…黒板温度測定部、104a,104b,104c…試料台、105…試料温度測定部、106a,106b,106c…試料温度制御部、107…光源、108…槽内温度測定部、109…温度制御部、110…送風制御部、111…紫外線放射計、112…光源制御部、121a,121b,121c…試料。

Claims (8)

  1. 恒温槽と、
    前記恒温槽の内部に配置されて標準試料となる黒板と、
    前記黒板の温度を測定する黒板温度測定手段と、
    前記恒温槽の内部に配置された試験対象となる試料が載置される複数の試料台と、
    複数の前記試料台に載置された各試料の表面温度を個別に測定する試料温度測定手段と、
    前記試料温度測定手段の測定結果をもとに複数の前記試料台に載置される各試料の温度を個別に制御する試料温度制御手段と、
    前記恒温槽の内部に配置されて前記黒板および複数の前記試料台に載置される各試料に耐候性試験用の光を照射する光源と、
    前記恒温槽内の温度を測定する槽内温度測定手段と、
    前記黒板温度測定手段の測定結果および槽内温度測定手段の測定結果をもとに前記恒温槽内の温度を制御する温度制御手段と
    を備えることを特徴とする促進耐候性試験装置。
  2. 請求項1記載の促進耐候性試験装置において、
    複数の前記試料台は、前記光源より等しい距離に配置されていることを特徴とする促進耐候性試験装置。
  3. 請求項1記載の促進耐候性試験装置において、
    複数の前記試料台は、前記光源より各々異なる距離に配置されていることを特徴とする促進耐候性試験装置。
  4. 請求項1記載の促進耐候性試験装置において、
    複数の前記試料台は、前記光源からの距離が各々個別に可変可能とされていることを特徴とする促進耐候性試験装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の促進耐候性試験装置において、
    前記試料温度制御手段は、ペルチェ素子から構成されていることを特徴とする促進耐候性試験装置。
  6. 耐候性試験を行う恒温槽の内部に複数の試料を載置する試料載置工程と、
    複数の前記試料の表面温度を各々測定した測定結果をもとに複数の前記試料の温度を各々個別に制御する試料温度制御工程と、
    複数の前記試料温度を各々個別に制御している状態で、複数の前記試料に耐候性試験用の光を光源から照射して耐候性試験を実施する試験工程と
    を備えることを特徴とする促進耐候性試験方法。
  7. 請求項6記載の促進耐候性試験方法において、
    前記試料温度制御工程では、複数の前記試料の温度を同一の状態とし、
    前記試験工程では、複数の前記試料と前記光源との距離を各々異なる状態として耐候性試験を実施する
    ことを特徴とする促進耐候性試験方法。
  8. 請求項6記載の促進耐候性試験方法において、
    前記試料温度制御工程では、複数の前記試料の温度を各々異なる状態とし、
    前記試験工程では、複数の前記試料と前記光源との距離を同一の状態として耐候性試験を実施する
    ことを特徴とする促進耐候性試験方法。
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