JP6223268B2 - 塗膜劣化予測方法 - Google Patents
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Description
一般によく利用される塗膜の耐候性評価試験として、屋外暴露試験と、促進耐候性試験がある。
一方、促進耐候性試験はキセノンアーク灯やカーボンアーク灯などの人工光源を用い、照度や温湿度を所定条件に管理して、自然環境よりも強い劣化外力を塗膜に付与するものである。屋外設置を前提に成分設計された有機系塗膜の場合、通常、半年以内(例えば300〜4000時間程度)の試験期間で種々の塗膜の耐候性を比較することができる。しかし、実際に屋外の自然環境に設置したときにどの程度の速度で劣化が進行するかについては、その設置場所の地理的環境によって結果が大きく異なるため、塗膜を促進耐候性試験に供するだけでは任意の地点における塗膜劣化の程度を評価することは困難である。
上記特許文献には、そのような関係を合理的に把握する手法は開示されていない。
請求項1の発明は、ポリオレフィン系標準試料を促進耐候性試験に供し、この促進耐候性試験条件の単位時間当たりの劣化外力の強さを求めるプロセス(プロセスa)、
有機系塗膜Pを前記促進耐候性試験に供し、種々の試験経過時間のサンプルについて塗膜の劣化度合いを反映した指標を測定し、各試験経過時間での前記指標を表す「塗膜劣化の進行度Y」と、プロセスaで得られたこの促進耐候性試験条件の単位時間当たりの劣化外力の強さに試験経過時間を乗じることによって求まる各試験経過時間での「劣化外力積算量X」とから得られる、各試験経過時間での(X,Y)のプロットに基づき、「塗膜劣化の進行度Y」と「劣化外力積算量X」の関係を表す下記(1)式の検量線を作成するプロセス(プロセスb)、
Y=f(X) …(1)
プロセスaと同種のポリオレフィン系標準試料を実環境空間での暴露試験に供し、その実環境空間の単位期間当たりの劣化外力の強さを求めるプロセス(プロセスc)、
プロセスcで求めた単位期間当たりの劣化外力の強さにこの実環境空間での暴露経過期間t A を乗じることによって、この実環境空間での暴露経過期間tAを劣化外力積算量XtAに換算するプロセス(プロセスd)、
XtAを(1)式の検量線に代入し、この実環境での暴露経過時間tAにおける塗膜Pの劣化進行度予測値Yを求めるプロセス(プロセスe)、
を有する塗膜劣化予測方法である。
促進耐候性試験と実環境空間での暴露試験における、平均温度(℃)および分光分布の少なくとも一方の因子の差に基づく補正係数kを設定し、劣化外力積算量Xを劣化外力積算量補正値XRに変換する下記(2)式の補正式を作成するプロセス(プロセスc2)、
XR=k×X …(2)
プロセスcで求めた単位期間当たりの劣化外力の強さにこの実環境空間での暴露経過期間t A を乗じることによって、この実環境空間での暴露経過期間tAを劣化外力積算量XtAに換算し、これを(2)式のXに代入して劣化外力積算量補正値XRtAに変換するプロセス(プロセスd2)、
XRtAを(1)式の検量線に代入し、この実環境での暴露経過時間tAにおける塗膜Pの劣化進行度予測値Yを求めるプロセス(プロセスe2)、
を有する塗膜劣化予測方法である。
すなわち、プロセスbの種々の試験経過時間のサンプルについてFT−IRによる赤外吸収スペクトルを測定し、それら各サンプルの赤外吸収スペクトルにおける特定のn箇所(nは2以上の整数)のピーク位置の吸光度A1〜Anを説明変数、前記塗膜劣化の進行度Yを目的変数とする下記(3)式の回帰式を作成するプロセス(プロセスb2)、
Y=f2(A1〜An) …(3)
塗膜Pをプロセスcの実環境空間で劣化外力積算量X1に相当する期間の暴露試験に供し、その試験後のサンプルについてFT−IRによる赤外吸収スペクトルを測定し、赤外吸収スペクトルにおける前記n箇所の吸光度の値を(3)式に代入して塗膜劣化の進行度計算値Y(3)(X1)を算出するプロセス(プロセスc3)、
(1)式の検量線を用いて、塗膜劣化の進行度計算値Yが前記Y(3)(X1)となるときの劣化外力積算量Xを逆算し、そのXとX1とのずれ量が小さくなるように、(1)式に入力するための劣化外力積算量Xを劣化外力積算量補正値XRに変換する下記(4)式の関数gを作成するプロセス(プロセスc4)、
XR=g(X) …(4)
プロセスcで求めた単位期間当たりの劣化外力の強さにこの実環境空間での暴露経過期間t A を乗じることによって、この実環境空間での暴露経過期間tAを劣化外力積算量XtAに換算し、これを(4)式に代入して劣化外力積算量補正値XRtAに変換するプロセス(プロセスd3)、
XRtAを(1)式の検量線に代入し、この実環境での暴露経過時間tAにおける塗膜Pの劣化進行度予測値Yを求めるプロセス(プロセスe2)、
を有する塗膜劣化予測方法である。
(1)式の検量線を用いて、塗膜劣化の進行度計算値Yが前記Y(3)(X1)となるときの劣化外力積算量Xを逆算し、そのXとX1とのずれ量が小さくなるように(1)式の検量線を校正して、下記(5)式の校正検量線を作成するプロセス(プロセスc5)、
Y=fR(X) …(5)
プロセスcで求めた単位期間当たりの劣化外力の強さにこの実環境空間での暴露経過期間t A を乗じることによって、この実環境空間での暴露経過期間tAを劣化外力積算量XtAに換算するプロセス(プロセスd)、
XtAを(5)式の校正検量線に代入して、この実環境での暴露経過時間tAにおける塗膜Pの劣化進行度予測値Yを求めるプロセス(プロセスe3)、
を有する塗膜劣化予測方法である。
有機系塗膜Qを前記促進耐候性試験に供し、種々の試験経過時間のサンプルについて塗膜の劣化度合いを反映した指標を測定し、各試験経過時間での前記指標を表す「塗膜劣化の進行度Y」と、プロセスaで得られたこの促進耐候性試験条件の単位時間当たりの劣化外力の強さに試験経過時間を乗じることによって求まる各試験経過時間での「劣化外力積算量X」とから得られる、各試験経過時間での(X,Y)のプロットに基づき、「塗膜劣化の進行度Y」と「劣化外力積算量X」の関係を表す下記(6)式の検量線を作成するプロセス(プロセスf)、
YQ=fQ(X) …(6)
プロセスd3で求めたXRtAを(6)式の検量線に代入して、この実環境での暴露経過時間tAにおける塗膜Qの劣化進行度予測値Yを求めるプロセス(プロセスg)、
を有する塗膜劣化予測方法である。
GR(%)=G1/G0×100 …(7)
請求項1の発明に対応する基本的なプロセスを説明する。
〔プロセスa〕
本発明では、所定条件での促進耐候性試験を利用して、実環境における塗膜の耐候性を評価する。そのために、まず標準試料により、この促進耐候性試験条件の単位時間当たりの劣化外力の強さを求めておく。この操作は、上記所定の条件に設定した促進耐候性試験機を用いて一度行えばよい。
促進耐候性試験により塗膜劣化の進行度を予測するために検量線を作成するプロセスである。有機系塗膜Pを前記促進耐候性試験に供し、種々の試験経過時間のサンプルについて塗膜劣化特性を測定する。塗膜劣化特性としては、塗膜の劣化度合いを反映した指標を採用する。例えば、光沢度、色差、強度、伸び、硬さ、付着力などが考えられる。ここでは非破壊で比較的測定の容易な指標として、光沢度の測定により求まる光沢保持率を例に挙げて説明する。促進耐候性試験では汚れ付着などによる外乱の影響はほとんど無視することができる。光沢保持率は、例えば60°鏡面光沢度(グロス値)のデータを基に、上述の(7)式によって求めることができる。
Y=f(X) …(1)
塗膜が設置される地理的環境で、プロセスaと同種のポリオレフィン系標準試料を実環境空間での暴露試験に供する。特殊な場合を除き外装塗膜は屋外に設置されるので、通常、屋外暴露試験を実施することになる。暴露試験期間は気候変動を考慮して12ヶ月またはその倍数の期間とすることが望ましい。試験後の標準試料について、プロセスaと同様の方法で劣化の進行程度を測定し、この実環境空間における単位期間(例えば1ヶ月)当たりの劣化外力の強さを定める。
プロセスcで求めた実環境空間の単位期間当たりの劣化外力の強さ(例えば単位期間当たりのカルボニルインデックス値の平均増加量)に、この実環境空間での暴露経過期間tAを乗じることにより、期間tAを、劣化外力積算量XtAに換算する。
XtAを(1)式の検量線に代入することによって、この実環境での暴露経過時間tAにおける塗膜Pの劣化進行度予測値(例えば期間tAにおける光沢保持率)Yを求める。
請求項2の発明に対応するプロセスを説明する。
〔プロセスa〕、〔プロセスb〕、〔プロセスc〕
上記と同様の方法でこれらのプロセスを実施する。
有機系塗膜の劣化には温度や分光分布も影響する。促進耐候性試験は劣化を促進させるために実環境より高い温度条件で行うのが通常である。実環境の地位的条件が比較的寒冷であるような場合には、(1)式の検量線による予測値が実際より悪い評価(劣化の進行が大きいという予測値)に振れる場合がある。また、促進耐候性試験の人工光源の分光放射照度が、実環境と大きく異なる場合にも評価精度が低下する場合がある。そのような場合には、促進耐候性試験と実環境空間での暴露試験における、平均温度(℃)および分光分布の少なくとも一方の因子の差に基づく補正係数kを設定し、任意の劣化外力積算量(例えばカルボニルインデックス値)Xを劣化外力積算量補正値XRに変換する下記(2)式の補正式を作成することが有効である。
XR=k×X …(2)
プロセスcで求めた実環境空間の単位期間当たりの劣化外力の強さ(例えば単位期間当たりのカルボニルインデックス値の平均増加量)に、この実環境空間での暴露経過期間tAを乗じることにより、期間tAにおける劣化外力積算量XtAを計算する。これを前記(2)式に代入して劣化外力積算量補正値XRtAに変換する。
XRtAを(1)式の検量線に代入して、この実環境での暴露経過時間tAにおける塗膜Pの劣化進行度予測値(例えば期間tAにおける光沢保持率)Yを求める。
請求項3の発明に対応するプロセスを説明する。
〔プロセスa〕、〔プロセスb〕
上記と同様の方法でこれらのプロセスを実施する。
検量線の測定精度を高めるために、ここでは前記プロセスbの種々の試験経過時間の塗膜Pサンプル(光沢保持率の測定を行ったもの)についてFT−IRによる赤外吸収スペクトルを測定する。それら各サンプルの赤外吸収スペクトルにおける特定のn箇所(nは2以上の整数)のピーク位置の吸光度A1〜Anを測定する。例えば、波数950〜2500cm-1の範囲に現れる、有機系塗膜の化学組成変化が反映される吸収ピークをいくつか測定対象として選定することができる。これらの吸光度A1〜Anを説明変数、前記塗膜劣化の進行度(例えば光沢保持率)Yを目的変数とする下記(3)式の回帰式を作成する。
Y=f2(A1〜An) …(3)
f2(A1〜An)は、A1〜Anを変数とする多変量の関数を意味する。
上記と同様の方法で実施する。
塗膜Pをプロセスcの実環境空間で劣化外力積算量X1に相当する期間の暴露試験に供する。その試験後のサンプルについてFT−IRによる赤外吸収スペクトルを測定し、赤外吸収スペクトルにおける前記n箇所の吸光度の値を(3)式に代入して塗膜劣化の進行度(例えば光沢保持率)の計算値Y(3)(X1)を算出する。
(1)式の検量線を用いて、塗膜劣化の進行度計算値Yが前記Y(3)(X1)となるときの劣化外力積算量Xを逆算し、そのXとX1とのずれ量が小さくなるように、(1)式に入力するための劣化外力積算量Xを劣化外力積算量補正値XRに変換する下記(4)式の関数gを作成する。
XR=g(X) …(4)
プロセスcで求めた単位期間当たりの劣化外力の強さから、この実環境空間での暴露経過期間tAを劣化外力積算量XtAに換算し、これを(4)式に代入して劣化外力積算量補正値XRtAに変換する。
XRtAを(1)式の検量線に代入し、この実環境での暴露経過時間tAにおける塗膜Pの劣化進行度予測値Yを求める。
請求項4の発明に対応するプロセスを説明する。
〔プロセスa〕、〔プロセスb〕、〔プロセスb2〕、〔プロセスc〕、〔プロセスc3〕、〔プロセスc4〕
上記と同様の方法でこれらのプロセスを実施する。
(1)式の検量線を用いて、塗膜劣化の進行度計算値Yが前記Y(3)(X1)となるときの劣化外力積算量Xを逆算し、そのXとX1とのずれ量が小さくなるように(1)式の検量線を校正して、下記(5)式の校正検量線を作成する。
Y=fR(X) …(5)
プロセスcで求めた単位期間当たりの劣化外力の強さから、この実環境空間での暴露経過期間tAを劣化外力積算量XtAに換算する。
XtAを(5)式の校正検量線に代入して、この実環境での暴露経過時間tAにおける塗膜Pの劣化進行度予測値(例えば期間tAにおける光沢保持率)Yを求める。
請求項5の発明に対応するプロセスを説明する。この態様において、塗膜Pは単に前記(4)式の補正式を求めるために利用する塗膜である。劣化予測の対象となる塗膜は、塗膜Pとは別の任意の有機系塗膜である。その対象塗膜を塗膜Qと表記している。
〔プロセスa〕、〔プロセスb〕、〔プロセスb2〕、〔プロセスc〕、〔プロセスc3〕、〔プロセスc4〕、〔プロセスd3〕
上記と同様の方法でこれらのプロセスを実施する。
対象塗膜である有機系塗膜Qについて促進耐候性試験に供し、プロセスbと同様の手法で「塗膜劣化の進行度(例えば光沢保持率)Y」と「劣化外力積算量(例えばカルボニルインデックス値)X」の関係を表す下記(6)式の検量線を作成する。
YQ=fQ(X) …(6)
プロセスd3で求めた前記XRtAを(6)式の検量線に代入して、この実環境での暴露経過時間tAにおける塗膜Qの劣化進行度予測値(例えば期間tAにおける光沢保持率)Yを求める。
有機系塗膜として、ポリエステル樹脂系粉体塗料(関西ペイント株式会社製、エバクラッドハーベスト)を塗装して160℃で20min加熱処理した塗膜を用いた。塗装基材には厚さ2mmのアルミニウム合金(A6063S−T5)の表面をクロム酸塩系処理剤(日本パーカライジング株式会社製、アルクロム713)で化成処理したものを用いた。有機系塗膜を形成した試験片サイズは70×150×t2(mm)である。以下、この塗膜を「塗膜P」と呼ぶ。
ポリエチレンリファレンス試験片を100hの促進耐候性試験に供した後、FT−IRによりカルボニルインデックス値を測定した。その結果、この促進耐候性試験条件でのカルボニルインデックス値による劣化外力の強さは、単位時間(100h)当たり1.38であった。この値に促進耐候性試験時間を乗じることにより、その時点の劣化外力積算量が求まる。
実施例1の促進耐候性試験に供した試験時間500h毎の塗膜Pサンプルについて、FT−IRの1回反射ATR法(ATR結晶:ダイヤモンド)により波数4000〜700cm-1の範囲の赤外吸収スペクトルを測定した。そのスペクトルから劣化による化学組成変化を比較的よく反映すると考えられる5つのピーク(波数1718、1373、1300、1223、および984cm-1付近のもの)を選び、吸光度の値を調べた。そして、これらの吸光度A1〜A5を説明変数、実施例1で測定した光沢保持率を目的変数とする回帰式(前述(3)式に相当するもの)を作成した。図4に、促進耐候性試験の各試験時間のサンプルについて測定した赤外吸収スペクトルを並べて例示する。
このようにして塗膜Pの実環境暴露試験によって求めた劣化外力積算量の補正係数は、他の有機系塗膜Qについての検量線を適用する場合の予測精度向上方法においても、そのまま適用することができる。
Claims (8)
- ポリオレフィン系標準試料を促進耐候性試験に供し、この促進耐候性試験条件の単位時間当たりの劣化外力の強さを求めるプロセス(プロセスa)、
有機系塗膜Pを前記促進耐候性試験に供し、種々の試験経過時間のサンプルについて塗膜の劣化度合いを反映した指標を測定し、各試験経過時間での前記指標を表す「塗膜劣化の進行度Y」と、プロセスaで得られたこの促進耐候性試験条件の単位時間当たりの劣化外力の強さに試験経過時間を乗じることによって求まる各試験経過時間での「劣化外力積算量X」とから得られる、各試験経過時間での(X,Y)のプロットに基づき、「塗膜劣化の進行度Y」と「劣化外力積算量X」の関係を表す下記(1)式の検量線を作成するプロセス(プロセスb)、
Y=f(X) …(1)
プロセスaと同種のポリオレフィン系標準試料を実環境空間での暴露試験に供し、その実環境空間の単位期間当たりの劣化外力の強さを求めるプロセス(プロセスc)、
プロセスcで求めた単位期間当たりの劣化外力の強さにこの実環境空間での暴露経過期間t A を乗じることによって、この実環境空間での暴露経過期間tAを劣化外力積算量XtAに換算するプロセス(プロセスd)、
XtAを(1)式の検量線に代入し、この実環境での暴露経過時間tAにおける塗膜Pの劣化進行度予測値Yを求めるプロセス(プロセスe)、
を有する塗膜劣化予測方法。 - 請求項1におけるプロセスd、eに代えて、
促進耐候性試験と実環境空間での暴露試験における、平均温度(℃)および分光分布の少なくとも一方の因子の差に基づく補正係数kを設定し、劣化外力積算量Xを劣化外力積算量補正値XRに変換する下記(2)式の補正式を作成するプロセス(プロセスc2)、
XR=k×X …(2)
プロセスcで求めた単位期間当たりの劣化外力の強さにこの実環境空間での暴露経過期間t A を乗じることによって、この実環境空間での暴露経過期間tAを劣化外力積算量XtAに換算し、これを(2)式のXに代入して劣化外力積算量補正値XRtAに変換するプロセス(プロセスd2)、
XRtAを(1)式の検量線に代入し、この実環境での暴露経過時間tAにおける塗膜Pの劣化進行度予測値Yを求めるプロセス(プロセスe2)、
を有する請求項1に記載の塗膜劣化予測方法。 - ポリオレフィン系標準試料を促進耐候性試験に供し、この促進耐候性試験条件の単位時間当たりの劣化外力の強さを求めるプロセス(プロセスa)、
有機系塗膜Pを前記促進耐候性試験に供し、種々の試験経過時間のサンプルについて塗膜の劣化度合いを反映した指標を測定し、各試験経過時間での前記指標を表す「塗膜劣化の進行度Y」と、プロセスaで得られたこの促進耐候性試験条件の単位時間当たりの劣化外力の強さに試験経過時間を乗じることによって求まる各試験経過時間での「劣化外力積算量X」とから得られる、各試験経過時間での(X,Y)のプロットに基づき、「塗膜劣化の進行度Y」と「劣化外力積算量X」の関係を表す下記(1)式の検量線を作成するプロセス(プロセスb)、
Y=f(X) …(1)
プロセスbの種々の試験経過時間のサンプルについてFT−IRによる赤外吸収スペクトルを測定し、それら各サンプルの赤外吸収スペクトルにおける特定のn箇所(nは2以上の整数)のピーク位置の吸光度A1〜Anを説明変数、前記塗膜劣化の進行度Yを目的変数とする下記(3)式の回帰式を作成するプロセス(プロセスb2)、
Y=f2(A1〜An) …(3)
プロセスaと同種のポリオレフィン系標準試料を実環境空間での暴露試験に供し、その実環境空間の単位期間当たりの劣化外力の強さを求めるプロセス(プロセスc)、
塗膜Pをプロセスcの実環境空間で劣化外力積算量X1に相当する期間の暴露試験に供し、その試験後のサンプルについてFT−IRによる赤外吸収スペクトルを測定し、赤外吸収スペクトルにおける前記n箇所の吸光度の値を(3)式に代入して塗膜劣化の進行度計算値Y(3)(X1)を算出するプロセス(プロセスc3)、
(1)式の検量線を用いて、塗膜劣化の進行度計算値Yが前記Y(3)(X1)となるときの劣化外力積算量Xを逆算し、そのXとX1とのずれ量が小さくなるように、(1)式に入力するための劣化外力積算量Xを劣化外力積算量補正値XRに変換する下記(4)式の関数gを作成するプロセス(プロセスc4)、
XR=g(X) …(4)
プロセスcで求めた単位期間当たりの劣化外力の強さにこの実環境空間での暴露経過期間t A を乗じることによって、この実環境空間での暴露経過期間tAを劣化外力積算量XtAに換算し、これを(4)式に代入して劣化外力積算量補正値XRtAに変換するプロセス(プロセスd3)、
XRtAを(1)式の検量線に代入し、この実環境での暴露経過時間tAにおける塗膜Pの劣化進行度予測値Yを求めるプロセス(プロセスe2)、
を有する塗膜劣化予測方法。 - 請求項3におけるプロセスc4、d3、e2に代えて、
(1)式の検量線を用いて、塗膜劣化の進行度計算値Yが前記Y(3)(X1)となるときの劣化外力積算量Xを逆算し、そのXとX1とのずれ量が小さくなるように(1)式の検量線を校正して、下記(5)式の校正検量線を作成するプロセス(プロセスc5)、
Y=fR(X) …(5)
プロセスcで求めた単位期間当たりの劣化外力の強さにこの実環境空間での暴露経過期間t A を乗じることによって、この実環境空間での暴露経過期間tAを劣化外力積算量XtAに換算するプロセス(プロセスd)、
XtAを(5)式の校正検量線に代入して、この実環境での暴露経過時間tAにおける塗膜Pの劣化進行度予測値Yを求めるプロセス(プロセスe3)、
を有する請求項3に記載の塗膜劣化予測方法。 - 請求項3におけるプロセスe2に代えて、
有機系塗膜Qを前記促進耐候性試験に供し、種々の試験経過時間のサンプルについて塗膜の劣化度合いを反映した指標を測定し、各試験経過時間での前記指標を表す「塗膜劣化の進行度Y」と、プロセスaで得られたこの促進耐候性試験条件の単位時間当たりの劣化外力の強さに試験経過時間を乗じることによって求まる各試験経過時間での「劣化外力積算量X」とから得られる、各試験経過時間での(X,Y)のプロットに基づき、「塗膜劣化の進行度Y」と「劣化外力積算量X」の関係を表す下記(6)式の検量線を作成するプロセス(プロセスf)、
YQ=fQ(X) …(6)
プロセスd3で求めたXRtAを(6)式の検量線に代入して、この実環境での暴露経過時間tAにおける塗膜Qの劣化進行度予測値Yを求めるプロセス(プロセスg)、
を有する請求項3に記載の塗膜劣化予測方法。 - 前記ポリオレフィン系標準試料として、ポリエチレンリファレンス試験片を使用する請求項1〜5のいずれか1項に記載の塗膜劣化予測方法。
- 劣化外力の強さの指標を、FT−IRにより測定されるカルボニルインデックス値とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の塗膜劣化予測方法。
- 塗膜劣化特性として、60°鏡面光沢度による光沢保持率(%)を用いる請求項1〜7のいずれか1項に記載の塗膜劣化予測方法。
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