JP6474549B2 - 幹細胞の培養産物の評価指標及びその利用 - Google Patents

幹細胞の培養産物の評価指標及びその利用 Download PDF

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本明細書は、幹細胞の培養産物の評価指標及びその利用に関する。
幹細胞は種々のサイトカインを産生していることが知られている。例えば、歯髄幹細胞の培養上清は損傷部の治療有用であることが知られている(特許文献1)。
国際公開第WO2011/118795号
幹細胞の培養上清には、幹細胞の培養産物が多く分泌されているが、その幹細胞に特有の組成を備えていると考えられる。さらに、幹細胞の培養上清の組成は、幹細胞の種類ほか、幹細胞の取得源や培養条件等によって変動する可能性を否定できない。したがって、治療等に有用な幹細胞の培養上清を用いる場合には、培養上清の有用性等を評価することが要請される。すなわち、幹細胞培養上清の有用性を評価するための指標が必要である。こうした評価指標は、また、有用な幹細胞培養上清を取得したり、品質を管理したりするのにも有用である。
本明細書は、幹細胞の培養上清の評価に有用な指標及びその利用を提供する。
本発明者らは、歯髄幹細胞などの幹細胞の培養上清に含まれる種々の成分について検討していたところ、培養上清中の特定の成分の組合せを、炎症反応が生じている組織に適用したところ、炎症反応が改善するという知見を得た。また、特定の成分の組合せが、炎症組織において組織修復型のミクログリア/マクロファージを誘導し、あるいは抗炎症性サイトカインを亢進するという知見も得た。本明細書はこうした知見に基づき以下の手段を提供する。
(1)幹細胞の培養上清の評価方法であって、
幹細胞の培養上清中の以下の成分;
単球走化性促進因子−1(MCP−1)活性を有するタンパク質である第1の成分、
シアル酸結合イムノグロブリン様レクチン−9(Siglec−9)の細胞外ドメイン活性を有するタンパク質である第2の成分、及び
コンドロイチン硫酸及びコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの少なくとも一種である第3の成分
からなる群から選択される1種又は2種以上の成分を測定する測定工程、
を備える、評価方法。
(2)前記測定工程は、少なくとも前記第1の成分と前記第2の成分とを測定する工程である、(1)に記載の評価方法。
(3)前記第1の成分は、配列番号2で表されるアミノ酸配列と60%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有する、(1)又は(2)に記載の評価方法。
(4)前記第2の成分は、配列番号4で表されるアミノ酸配列と60%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有する、(1)〜(3)のいずれかに記載の評価方法。
(5)前記測定工程は、前記第3の成分を測定する工程である、(1)〜(4)のいずれかに記載の評価方法。
(6)前記測定工程は、測定しようとする成分に特異的な抗体を用いて前記成分を測定する工程である、(1)〜(5)のいずれかに記載の評価方法。
(7)前記幹細胞は歯髄幹細胞である、(1)〜(6)のいずれかに記載の評価方法。
(8)幹細胞の培養上清のスクリーニング方法であって、
スクリーニング対象である幹細胞の培養上清中の以下の成分;
単球走化性促進因子−1(MCP−1)活性を有するタンパク質である第1の成分、
シアル酸結合イムノグロブリン様レクチン−9(Siglec−9)の細胞外ドメイン活性を有するタンパク質である第2の成分、及び
コンドロイチン硫酸及びコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの少なくとも一種である第3の成分
からなる群から選択される1種又は2種以上の成分を測定する測定工程、
を備える、スクリーニング方法。
(9)医薬組成物のスクリーニング方法であって、
スクリーニング対象が幹細胞の培養上清であり、前記培養上清中の以下の成分;
単球走化性促進因子−1(MCP−1)活性を有するタンパク質である第1の成分、
シアル酸結合イムノグロブリン様レクチン−9(Siglec−9)の細胞外ドメイン活性を有するタンパク質である第2の成分、及び
コンドロイチン硫酸及びコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの少なくとも一種である第3の成分
からなる群から選択される1種又は2種以上の成分を測定する測定工程、
を備える、スクリーニング方法。
(10)前記医薬組成物は、炎症性疾患の予防又は治療用である、(9)に記載のスクリーニング方法。
(11)前記医薬組成物は、糖尿病の予防又は治療用である、(9)に記載のスクリーニング方法。
(12)前記医薬組成物は、損傷組織の予防又は治療用である、(9)に記載のスクリーニング方法。
(13) 以下の成分;
単球走化性促進因子−1(MCP−1)活性を有するタンパク質である第1の成分、
シアル酸結合イムノグロブリン様レクチン−9(Siglec−9)の細胞外ドメイン活性を有するタンパク質である第2の成分、及び
コンドロイチン硫酸及びコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの少なくとも一種である第3の成分
からなる群から選択される1種又は2種以上の成分を1種又は2種以上の疾患の評価系に適用してその作用を評価する工程、
を備える、疾患の予防又は治療用途のスクリーニング方法。
(14)医薬組成物の品質評価方法であって、
評価対象が幹細胞の培養上清であり、前記培養上清中の以下の成分;
単球走化性促進因子−1(MCP−1)活性を有するタンパク質である第1の成分、
シアル酸結合イムノグロブリン様レクチン−9(Siglec−9)の細胞外ドメイン活性を有するタンパク質である第2の成分、及び
コンドロイチン硫酸及びコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの少なくとも一種である第3の成分
からなる群から選択される1種又は2種以上の成分を測定する測定工程、
を備える、品質評価方法。
(15)前記医薬組成物は、炎症性疾患の予防又は治療用である、(14)に記載の品質評価方法。
(16)前記医薬組成物は、糖尿病の予防又は治療用である、(14)に記載の品質評価方法。
(17)前記医薬組成物は、損傷組織の予防又は治療用である、(14)に記載の品質評価方法。
(18)医薬組成物の生産方法であって、
幹細胞の培養上清につき、以下の成分;
単球走化性促進因子−1(MCP−1)活性を有するタンパク質である第1の成分、
シアル酸結合イムノグロブリン様レクチン−9(Siglec−9)の細胞外ドメイン活性を有するタンパク質である第2の成分、及び
コンドロイチン硫酸及びコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの少なくとも一種である第3の成分
からなる群から選択される1種又は2種以上の成分の測定する測定工程と、
前記成分の測定結果に基づいて前記培養上清を有効成分とする前記医薬組成物の品質について評価する工程と、
を備える、生産方法。
(19)医薬組成物の生産方法であって、
幹細胞の培養上清から以下の成分;
単球走化性促進因子−1(MCP−1)活性を有するタンパク質である第1の成分、
シアル酸結合イムノグロブリン様レクチン−9(Siglec−9)の細胞外ドメイン活性を有するタンパク質である第2の成分、及び
コンドロイチン硫酸及びコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの少なくとも一種である第3の成分
からなる群から選択される1種又は2種以上の成分を取得する工程、
を備える、生産方法。
(20)医薬組成物の生産方法であって、
以下の成分;
単球走化性促進因子−1(MCP−1)活性を有するタンパク質である第1の成分、及び
シアル酸結合イムノグロブリン様レクチン−9(Siglec−9)の細胞外ドメイン活性を有するタンパク質である第2の成分
の一方又は双方の発現を増強するように遺伝子改変された幹細胞の形質転換体を培養する工程、
を備える、医薬組成物の生産方法。
(21)幹細胞の形質転換体であって、
以下の成分;
単球走化性促進因子−1(MCP−1)活性を有するタンパク質である第1の成分、及び
シアル酸結合イムノグロブリン様レクチン−9(Siglec−9)の細胞外ドメイン活性を有するタンパク質である第2の成分
の一方又は双方の発現を増強するように遺伝子改変された幹細胞の形質転換体。
劇症肝炎モデルラットにおける生存率を示す図である。 劇症肝炎モデルラットにおける血液検査による肝障害の評価結果を示す図である。 劇症肝炎モデルラットにおける肝細胞死(HE染色及びTUNEL染色)評価結果を示す図A及びBである。 劇症肝炎モデルラットにおける炎症性サイトカイン(TNF−α、IL−1β、IL−6)死細胞のセンサーであるマンノースレセプターCD206、抗炎症性サイトカイン(IL−10、TGF−b)の遺伝子発現の解析結果を示す図である。 劇症肝炎モデルラットにおけるマクロファージ染色結果を示す図である。 MCP−1、ED−Siglec−9及びCSPGの組織修復型ミクログリアの誘導に対する相乗効果を示す図a〜fである。 MCP−1、ED−Siglec−9及びCSPGの組織修復型ミクログリアの誘導に対する相乗効果を示す図a〜cである、aの上段写真は、GFAP及びH−E染色の結果を示し、下段は、SCI後8週での組織腔面積の定量結果を示し、bは、5−HT陽性神経線維の免疫組織学的画像を示し、cは、組織腔の中央から5mm頭部側及び5mm尾側における5−HT陽性神経線維の定量結果を示す。 脊髄損傷部位におけるサイトカインと細胞表面マーカーの遺伝子発現を、定量的RT−PCR分析により評価した結果を示す図である。 脊髄損傷から72時間後の部位を取り囲むミクログリア/マクロファージの典型的画像と定量結果を示す図である。 脊髄挫傷後の後肢の機能回復の時間経過を示す図である。 (A)は、THP−1溶解物をED−Siglec−9、CCR2で免疫沈降し、抗CCR2抗体又はMAH−レクチンでイムノブロットした結果を示す。(B)は、CSPG処理が、ミクログリアのCCR2発言を増大させることを示す。(C)は、ED−Siglec−9がミクログリアにおいてCCR2と物理的に相互作用することを示す。 MCP−1とED−Siglec−9の投与群と非投与(PBS投与)群に関し、生存率及び体重の変化を示す図である。 肺組織における構造変化と膠原線維の増殖をHE染色およびマッソントリクローム(MT)染色にて評価した結果を示す図である。 肝硬変モデルマウスにおける肝組織のHE染色結果を示す図である。 肝硬変モデルマウスにおける肺組織のシリウスレッド染色(赤染色:線維素の染色)結果を示す図である。 ED−Siglec−9/MCP−1投与後3日の肝臓組織における炎症性サイトカインなどの遺伝子発現を定量的PCR法による解析結果を示す図である。 ED−Siglec−9/MCP−1投与後3日の肝臓組織における炎症性サイトカインなどの遺伝子発現を定量的PCR法による解析結果を示す図である。 ED−Siglec−9及びMCP-1投与群と非投与(PBS投与)群から採取した肝臓組織におけるα-SMAの染色結果を示す図である。 関節炎の重症度に関する関節炎スコアの評価基準を示す図である。 CIAマウスにおける、ED−Siglec−9投与による関節炎抑制効果の解析結果を示す図である。 ED−Siglec−9投与による長期間の関節炎抑制効果を示す図である。 (A)は、ED−Siglec−9投与がLPS刺激によるTNF−αの発現亢進を抑制することを示し、(B)は、ED−Siglec−9投与がヒト関節リウマチ由来滑膜線維芽細胞において、TNF−α刺激によるMMP−3発現亢進に対して、明らかな抑制効果を示さないことを示す図である。 ED−Siglec−9/MCP−1をラット頭蓋骨欠損モデルに投与後、6週間での骨再生効果を示す図であり、H−E染色結果、マイクロCT結果及び新生骨%を示す。 MIN細胞を用いてインスリン分泌能の比較検討を行った結果を示す図である。
劇症肝炎モデルラットにおける生存率を示す図である。 劇症肝炎モデルラットにおける血液検査による肝障害の評価結果を示す図である。 劇症肝炎モデルラットにおける病理学的解析結果を示す図(HE染色)である。 劇症肝炎モデルラットにおける炎症性サイトカイン(TNF−α、IL−1β、IL−6)、死細胞のセンサーであるマンノースレセプターCD206、抗炎症性サイトカイン(IL−10、TGF−b)の遺伝子発現の解析結果を示す図である。 劇症肝炎モデルラットにおけるCD206染色結果を示す図である。 肺線維症モデルマウスの体重測定結果を示す図である。 肺線維症モデルマウスの生存率を示す図である。 肺線維症モデルマウスにおける病理学的解析結果を示す図(HE染色、MT染色)である。 肺線維症モデルマウスにおける免疫組織学的解析を示す図である。 肝硬変モデルマウスへのSHED−CM投与後の肝蔵の組織解析結果(HE染色)を示す図である。 肝硬変モデルマウスへのSHED−CM投与後の肝蔵の組織解析結果(シリウスレッド染色)を示す図である。 肝硬変モデルマウスへのSHED−CM投与後の肝蔵組織における遺伝子解析結果を示す図である。 肝硬変モデルマウスへのSHED−CM投与後の肝蔵組織における遺伝子解析結果を示す図である。 肝硬変モデルマウスへのSHED−CM投与後の肝臓組織のおける活性化肝星状細胞のマーカーであるα−SMAの染色結果を示す図である。 心筋虚血再灌流モデルマウスへのSHED−CM投与後の梗塞域の評価結果を示す図である。 心筋虚血再灌流モデルマウスへのSHED−CM投与後の血漿中の心筋トロポニン量の評価結果を示す図である。 心筋虚血再灌流モデルマウスへのSHED−CM投与後の虚血部における遺伝子発現解析結果を示す図である。 多発性硬化症モデルマウスへのSHED−CM投与後のEAE臨床スコアの経過を示す図である。 多発性硬化症モデルマウスへのSHED−CM投与後の組織解析結果(HE染色、KB染色、Sudan Black染色)を示す図である。 多発性硬化症モデルマウスへのSHED−CM投与後の組織解析結果(CD3染色)を示す図である。 ヒトSLEモデルマウスへのSHED−CM投与後の脾臓を示す図である。 ヒトSLEモデルマウスへのSHED−CM投与後の脾臓重量の比較結果を示す図である。 ヒトSLEモデルマウスへのSHED−CM投与後の脾臓組織切片のHE染色結果を示す図である。 ヒトSLEモデルマウスへのSHED−CM投与後の血中抗ds−DNAIgG抗体量を示す図である。 関節炎モデルマウスへのSHED−CM投与後の関節炎スコアの経過を示す図である。 関節炎モデルマウスへのSHED−CM投与後の後肢の厚さの経過を示す図である。 関節炎モデルマウスへのSHED−CM投与後の足首の組織切片の染色結果(HE染色)を示す図である。 関節炎モデルマウスへのSHED−CM投与後の足首の組織切片の染色結果(トルイジンブルー染色)を示す図である。 関節炎モデルマウスへのSHED−CM投与後の足首の組織解析結果を示す図である。 関節炎モデルマウスへのSHED−CM投与後の四肢における遺伝子発現解析結果を示す図である。
STZ投与量の違いによる血糖値の変化を示す図である。 STZ低投与量マウスに対するヒト脱落乳歯歯髄幹細胞培養上清、SHED−CM投与時の血糖値の変化を示す図である。 STZ低投与量マウスに対するSHED−CM投与時の体重の変化を示す図である。 STZ低投与量マウスに対するSHED−CM投与時におけるIPGTT(day27)結果(血糖値)を示す図である。 STZ低投与量マウスに対するSHED−CM投与時におけるIPGTT(day27)結果(インスリン)を示す図である。 STZ低投与量マウスに対するSHED−CM投与時(day34)の膵臓中のインスリン含有量の測定結果を示す図である。 STZ低投与量マウスに対するSHED−CM投与時(day34)の膵臓組織のHE染色結果(倍率×4)を示す図である。 STZ低投与量マウスに対するSHED−CM投与時(day34)の膵臓組織のHE染色結果(倍率×40)を示す図である。 STZ低投与量マウスに対するSHED−CM投与時(day34)の膵臓組織の免疫染色結果(倍率×40)を示す図である。 STZ大量投与マウスに対するSHED−CM投与時の血糖値の変化を示す図である。 STZ大量投与マウスに対するSHED−CM投与時の体重の変化を示す図である。 STZ大量投与マウスに対するSHED−CM投与時のIPGGT(day31)の結果(血糖値)を示す図である。 高脂肪食マウスに対するSHED−CM投与時の血糖値の変化を示す図である。 高脂肪食マウスに対するSHED−CM投与時の体重の変化を示す図である。 高脂肪食マウスに対するSHED−CM投与時のIPGGT(day69)の結果(血糖値)を示す図である。 脂肪食マウスに対するSHED−CM投与時のIPGGT(day69)の結果(インスリン)を示す図である。 脂肪食マウスに対するSHED−CM投与時のITT(day58)の結果(血糖値及び低下率)を示す図である。 マウス膵β細胞株:MIN6を用いたSHED−CM投与時のDAP染色結果に基づくネクロシス(%)を示す図である。 マウス膵β細胞株:MIN6を用いたインスリン分泌実験結果(content,release/content)を示す図である。 マウス膵β細胞株:MIN6を用いたSHED−CMのApoptosis対する効果を示す図である。 dbdbマウスに対するSHED−CM投与時の血糖値の変化を示す図である。 dbdbマウスに対するSHED−CM投与時の体重の変化を示す図である。 dbdbマウスに対するSHED−CM投与時のIPGGT(day36)結果(血糖値)を示す図である。 dbdbマウスに対するSHED−CM投与時のIPGGT(day36)の結果(インスリン)を示す図である。 dbdbマウスに対するSHED−CM投与時のITT(day51)の結果(血糖値及び低下率)を示す図である。 dbdbマウスに対するSHED−CM投与時の膵インシュリン含有量(day61)を示す図である。
SHED−CM及びdSHED−CMにおけるMCP−1及びSiglec−9濃度の測定結果を示す図である。 劇症肝炎モデルマウスに対するSHED−CM及びdSHED−CMの投与効果を示す図である。 肺線維症モデルマウスに対するSHED−CM及びdSHED−CMの投与効果を示す図である。 脊髄損傷モデルラットに対するSHED−CM及びdSHED−CMの投与効果を示す図である。
本明細書は、単球走化性促進因子−1(MCP−1)活性を有するタンパク質である第1の成分、シアル酸結合イムノグロブリン様レクチン−9(Siglec−9)の細胞外ドメイン活性を有するタンパク質である第2の成分及びコンドロイチン硫酸及びコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの少なくとも一種である第3の成分からなる群から選択される1又は2以上の成分を幹細胞培養上清の有用性に関する評価指標(以下、単に本指標という。)として用いることを提供する。
本指標の各成分はいずれも歯髄幹細胞の培養上清に含まれているものである。本発明者らは、これらの成分の組合せが多様な疾患に対して改善効果を奏することを見出した。これらの結果に基づいて、これら成分を指標として用いることで、幹細胞培養上清の評価やスクリーニング、有用な医薬組成物の生産に用いることができることを見出した。
本指標を用いることで、幹細胞培養上清の有用性を評価できる。また、本指標を用いることで、有用性の高い幹細胞培養上清をスクリーニングできる。さらに、本指標を用いることで、培養上清を有効成分とする医薬組成物の品質の評価も可能となる。さらにまた、本指標を測定することで有用な医薬組成物を生産することも可能となる。さらに、本指標を用いることで、幹細胞培養上清の医薬組成物として用いる場合において、その規格を設定できるようになる。
また、本指標を幹細胞培養上清から取得することで医薬組成物を生産できる。さらに、本指標の産生が増強された幹細胞形質転換体を培養することで、有用性の高い培養上清を医薬組成物あるいはその原料等として取得できる。
本指標は、各種の損傷組織の組織修復に関連している。したがって、本指標を損傷組織の組織修復用の予防又は治療用途の指標に用いることができる。
本指標は、損傷組織における炎症性疾患を含む炎症性疾患の予防又は治療に関連している。したがって、本指標を炎症性疾患の予防又は治療用途の指標に用いることができる。第1の成分、第2の成分及び第3の成分は、炎症反応部位に存在しうる。第1の成分は、炎症反応部位に存在することが知られている。また、第3の成分も炎症部位に普遍的に存在する成分である。なかでも、第1の成分は炎症反応部位、特に慢性の炎症反応部位に存在していることが知られている。また、第3の成分は、細胞膜ないし細胞間物質の構成成分である。
本指標のうち少なくとも1種類の成分を指標に用いることができる。本指標のうち少なくとも1種類を炎症反応部位に供給することで、当該部位における残余の成分との相乗効果により、免疫担当細胞であるミクログリア/マクロファージを組織修復型へ分化ないし変換することを誘導することができるからである。また、炎症反応部位にいずれかの成分を送達することにより、組織修復型ミクログリア/マクロファージを積極的に作用させて、炎症反応部位の組織の修復を活性化できるからである。
本指標は、また、糖尿病の予防又は治療にも関連している。糖尿病も炎症との関連があることが考えられている。したがって、本指標を、糖尿病の予防又は治療用途の指標に用いることができる。
本指標としては、好ましくはこれらの成分のうち、2種以上を用いる。2種以上の成分を用いることで、より効果的にミクログリア/マクロファージの変換を促進できる。さらに、3種の成分を用いることがより好ましい。
本指標は、前記3種の成分中、前記第1の成分と前記第2の成分とを用いることが好ましい。コンドロイチン硫酸やコンドロイチン硫酸プロテオグリカンである第3の成分は炎症部位に常在する成分であり、第1の成分と第2の成分と協動して組織修復型ミクログリア/マクロファージファージを誘導する。したがって、本指標は、前記第1の成分と前記第2の成分とのみを用いてもよい。
以下、本開示の各種実施形態について順次、詳細に説明する。
(幹細胞培養上清のための指標)
(幹細胞)
本明細書において幹細胞としては、体性幹細胞、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞及び刺激惹起性多能性獲得幹細胞等が挙げられる。これらの幹細胞は、ヒトを含む哺乳類細胞であることが好ましい。
また幹細胞の由来は特に限定しないが、哺乳類の間葉系細胞、初期発生胚及び間葉系細胞以外の体細胞が挙げられる。哺乳類としては、ヒト、ブタ,ウマ及びサルからなる群から選択されるが、好ましくはヒトである。
間葉系細胞とは、骨芽細胞、脂肪細胞、筋細胞、軟骨細胞等、間葉系に属する細胞への分化能を有するとされる細胞である。より具体的には、歯髄細胞、骨髄細胞、臍帯細胞お脂肪細胞等が挙げられる。初期胚生胚は、ES細胞を樹立するために必要な受精卵より発生が進んだ胚盤胞までの初期段階の胚である。体細胞とは、生物体を構成している細胞のうち、生殖細胞以外の細胞の総称である。また、幹細胞は、特定の遺伝子の発現が増強されあるいは抑制された形質転換体であってもよい。
(歯髄幹細胞)
幹細胞としては歯髄幹細胞を好ましく用いることができる。歯髄幹細胞は、歯髄から得られる歯髄に由来した幹細胞であれば特に限定されない。永久歯歯髄幹細胞であってもよいし、乳歯歯髄幹細胞であってもよいが、好ましくは、細胞増殖能の観点から、脱落した乳歯に由来する歯髄幹細胞を用いる。本組成物を適用する個体との関係においては、拒絶反応を抑制又は回避するため、同一生物種(ヒトであればヒト由来)の歯髄幹細胞であることが好ましく、より好ましくは自家歯髄幹細胞を用いる。
歯髄幹細胞は、歯髄細胞の中の接着性細胞として選別可能である。脱落した乳歯や永久歯から採取した歯髄細胞の中の接着性細胞又はその継代細胞を培養して得られる培養上清を、「歯髄幹細胞の培養上清」として用いることができる。例えば、以下に示す、特開2011−219432号公報に記載の方法等により適宜取得できる。
(不死化細胞)
幹細胞には各種幹細胞の不死化細胞も含まれる。不死化細胞は、初代細胞の有する活発な増殖能を永久的に保持し、しかもその細胞固有の形態・機能を継代培養によって失うことのない細胞である。概して、不死化細胞の樹立には、外来遺伝子が導入が必要となる。通常、体性幹細胞等の不死化にあたり、1又は2以上、好ましくは3以上、より好ましくは4以上の遺伝子が導入されている。なお、こうした遺伝子としては、hTERT、bmi-1、E6、E7、Ost3/4、Sox2、Klf4、c-Myc、p16NK4a等が挙げられる。不死化細胞としては、歯髄幹細胞の不死化細胞であってもよい。
(培養上清)
培養上清は、幹細胞を培養して得られる培養液であって実質的に細胞成分を含まない部分である本組成物は、典型的には、幹細胞及び幹細胞の取得源細胞を含まず、培養上清のみで構成された組成物である。培養液からの細胞成分の分離は、当業者に周知の固液分離方法で可能である。さらに、培養液に対して各種処理(例えば、遠心処理、濃縮、溶媒の置換、透析、凍結、乾燥、凍結乾燥、希釈、脱塩、保存等)を適宜施した培養上清を用いることにしてもよい。幹細胞の培養は、既に周知であり、当業者であれば適切に幹細胞を培養できる。以下、歯髄幹細胞の培養及び培養上清の取得方法の概要について例示するが、以下に説明する各種手法や態様は他の幹細胞にも適用することができる。
(歯髄幹細胞の培養)
(1)歯髄の採取
自然に脱落した乳歯(又は抜歯した乳歯、或いは永久歯)をクロロヘキシジンまたはイソジン溶液で消毒した後、歯冠部を分割し歯科用リーマーにて歯髄組織を回収する。
(2)酵素処理
採取した歯髄組織を基本培地(10%ウシ血清・抗生物質含有ダルベッコ変法イーグル培地)に懸濁し、2mg/mlのコラゲナーゼ及びディスパーゼで37℃、1時間処理する。5分間の遠心操作(5000回転/分)により酵素処理後の歯髄細胞を回収する。セルストレーナーによる細胞選別はSHEDやDPSCの神経幹細胞分画の回収効率を低下させるので原則、使用しない。
(3)細胞培養(接着性細胞の選択)
細胞を4cc基本培地で再懸濁し、直径6cmの付着性細胞培養用ディッシュに播種する。5%CO2、37℃に調整したインキュベータにて3日間培養した後、コロニーを形成した接着性細胞を0.05%トリプシン・EDTAにて5分間、37℃で処理する。ディッシュから剥離した歯髄細胞を直径10cmの付着性細胞培養用ディッシュに播種し拡大培養を行う。例えば、肉眼で観察してサブコンフルエント(培養容器の表面の約70%を細胞が占める状態)又はコンフルエントに達したときに細胞を培養容器から剥離して回収し、再度、培養液を満たした培養容器に播種する。継代培養を繰り返し行ってもよい。例えば継代培養を1〜8回行い、必要な細胞数(例えば約1×107個/ml)まで増殖させる。尚、培養容器からの細胞の剥離は、トリプシン処理など常法で実施することができる。以上の培養の後、細胞を回収して保存することにしてもよい(保存条件は例えば−198℃)。
(別法)
細胞を4cc基本培地で再懸濁し、直径6cmの付着性細胞培養用ディッシュに播種する。培養液(例えば、10%FCS含有DMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium))を添加した後、5%CO、37℃に調整したインキュベータにて2週間程度培養する。培養液を除去した後、PBS等で細胞を1回又は数回洗浄する。この操作(培養液の除去及び細胞の洗浄)に代えて、コロニーを形成した接着性細胞(歯髄幹細胞)を回収することにしてもよい。この場合には例えば、0.05%トリプシン・EDTAにて5分間、37℃で処理し、ディッシュから剥離した細胞を回収する。
(4)細胞の回収
次に、細胞を回収する。トリプシン処理等で培養容器から細胞を剥離した後、遠心処理を施すことによって細胞を回収することができる。このようにして回収した歯髄幹細胞を用いて本発明の組成物を調製する。
(歯髄幹細胞の培養上清の取得)
歯髄幹細胞の培養には、基本培地、或いは基本培地に血清等を添加したもの等を使用可能である。基本培地としてはDMEMの他、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)(GIBCO社等)、ハムF12培地(HamF12)(SIGMA社、GIBCO社等)、RPMI1640培地等を用いることができる。二種以上の基本培地を併用することにしてもよい。混合培地の一例として、IMDMとHamF12を等量混合した培地(例えば商品名:IMDM/HamF12(GIBCO社)として市販される)を挙げることができる。また、培地に添加可能な成分の例として、血清(ウシ胎仔血清、ヒト血清、羊血清等)、血清代替物(Knockout serum replacement(KSR)など)、ウシ血清アルブミン(BSA)、抗生物質、各種ビタミン、各種ミネラルを挙げることができる。
本組成物は、血清を含まないことが好ましい。血清を含まないことでその安全性が高められる。例えば、血清を含まない培地(無血清培地)で歯髄幹細胞を培養することによって、血清を含まない培養上清を調製することができる。1回又は複数回の継代培養を行うことにし、最後又は最後から数回の継代培養を無血清培地で培養することによっても、血清を含まない培養上清を得ることができる。一方、回収した培養上清から、透析やカラムによる溶媒置換などを利用して血清を除去することによっても、血清を含まない培養上清を得ることができる。
(培養上清の取得)
歯髄幹細胞の培養には、通常幹細胞に用いられる条件をそのまま適用あるいは適宜変更して適用できる。歯髄幹細胞培養上清の製造は、当業者であれば適宜行うことができる。例えば、以下のような操作で培養上清を取得してもよい。
まず、既に説明したように、歯髄から選抜した接着性細胞(歯髄幹細胞)を、上記した培地で培養する。例えば、細胞を付着性細胞培養用ディッシュに播種し、5%CO、37℃に調整したインキュベータにて培養する。必要に応じて継代培養を行う。例えば、肉眼で観察してサブコンフルエント(培養容器の表面の約70%を細胞が占める状態)又はコンフルエントに達したときに細胞を培養容器から剥離して回収し、再度、培養液を満たした培養容器に播種する。継代培養を繰り返し行ってもよい。例えば継代培養を1〜8回行い、必要な細胞数(例えば約1×10個/ml)まで増殖させる。尚、培養容器からの細胞の剥離は、トリプシン処理など常法で実施することができる。以上の培養の後、細胞を回収して保存することにしてもよい(保存条件は例えば−198℃)。
次いで、選抜・培養した歯髄幹細胞の培養上清を回収する。例えば、スポイトやピペットなどで培養液を吸引して回収することができる。回収した培養上清はそのまま或いは一以上の処理を経た後に本発明の組成物の有効成分として使用される。ここでの処理として、遠心処理、濃縮、溶媒の置換、透析、凍結、乾燥、凍結乾燥、希釈、脱塩、保存(例えば、4℃、−80℃)を例示することができる。
なお、培養上清に対して適宜濃縮処理を施すこともできる。すなわち、本培養上清は濃縮物として含まれていてもよい。一方、培養上清に対して緩衝液など適当な媒体による希釈処理を施すこともできる。こうした濃縮処理や希釈処理は、本指標成分を適切な濃度や総タンパク質量を調節するのに有効である。濃縮方法としては公知の手法から当業者であれば適宜選択して用いることができる。例えば、スピンカラム濃縮法、エタノール沈殿濃縮法により、培養上清の濃縮物を得ることができる。本培養上清は、凍結乾燥処理が施されていてもよい。すなわち、本培養上清は、凍結乾燥物であってもよい。
(幹細胞培養上清のための評価指標)
こうした幹細胞培養上清に関する指標は、以下に説明する第1の成分、第2の成分及び第3の成分から選択される1種又は2種以上である。
(第1の成分)
第1の成分は、単球走化性促進因子−1(MCP−1)活性を有するタンパク質である。この種のタンパク質は、ヒトをはじめとして各種動物においてホモログが知られている。本剤においては、こうしたヒトなどの動物に由来する天然のMCP−1を天然の原料から回収したものであってもよいし、遺伝子工学的又は化学的に取得したものであってもよい。例えば、ヒトのMCP−1は配列番号2で表されるアミノ酸配列(NCBIアクセッション番号:NP02973.1)を有している。また、ヒトのMCP−1は、配列番号1で表される塩基配列からなるDNAによってコードされている。
第1の成分は、MCP−1活性を有していれば足りる。すなわち、公知の天然のMCP−1他、新たに、本剤におけるMCP−1活性を有することが確認されたタンパク質であってもよい。また、天然のMCP−1に改変が加えられたものであって本剤におけるMCP−1活性を有しているものであってもよい。本剤におけるMCP−1活性としては、第2の成分及びコンドロイチン硫酸又はコンドロイチン硫酸プロテオグリカンと協動してミクログリア/マクロファージを組織修復型に誘導できる活性、あるいは抗炎症性サイトカインの産生促進活性が挙げられる。こうした活性は、後述する実施例を参照すれば当業者であれば容易に評価することができる。
例えば、ミクログリア/マクロファージを組織修復型に誘導できる活性は、マウス等からミクログリア/マクロファージを単離し培養し、この培養細胞に対して、確立した第2の成分及び必要に応じて後述するCS等の存在下、可能性ある第1の成分を供給して、組織修復型ミクログリア/マクロファージの指標となるCD206、Arginase1のタンパク質あるいはmRNAの産生を確認することなどで評価することができる。
また、例えば、抗炎症性サイトカインの産生促進活性は、ミクログリア/マクロファージを組織修復型に誘導できる活性は、マウス等からミクログリア/マクロファージを単離し培養し、この培養細胞に対して、確立された第2の成分及び必要に応じてCS等の存在下に、可能性ある第1の成分を供給して、例えば、IL−10およびTGF−β1などの抗炎症性サイトカインの産生を確認することなどで評価することができる。
なお、改変MCP−1など第1の成分のMCP−1活性は、上記の活性を有していれば足り、その程度は問わない。好ましくは配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質のMCP−1活性の50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、より一層好ましくは80%以上、さらに一層好ましくは90%以上であり、最も好ましくは100%以上である。
公知のMCP−1以外の第1の成分としては、データベース等において開示されるMCP−1の配列情報と一定の関係を有するタンパク質であってもよい。こうした一態様としては、開示されたアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、MCP−1活性を有するタンパク質が挙げられる。開示されるアミノ酸配列に対するアミノ酸の変異は、すなわち、欠失、置換若しくは付加は、いずれか1種類であってもよいし、2種類以上が組み合わされていてもよい。また、これらの変異の総数は、特に限定されないが、好ましくは、1個以上10個以下程度である。より好ましくは、1個以上5個以下である。アミノ酸置換の例としては、保存的置換が好ましく、具体的には以下のグループ内での置換が挙げられる。(グリシン、アラニン)(バリン、イソロイシン、ロイシン)(アスパラギン酸、グルタミン酸)(アスパラギン、グルタミン)(セリン、トレオニン)(リジン、アルギニン)(フェニルアラニン、チロシン)。
また、他の一態様としては、開示されるMCP−1のアミノ酸配列に対して60%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつMCP−1活性を有するタンパク質が挙げられる。同一性は、より好ましくは65%以上であり、さらに好ましくは70%以上であり、さらにまた好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上であり、より一層好ましくは95%以上であり、さらに一層好ましくは98%以上であり、最も好ましくは99%以上である。
本明細書において同一性又は類似性とは、当該技術分野で知られているとおり、配列を比較することにより決定される、2以上のタンパク質あるいは2以上のポリヌクレオチドの間の関係である。当該技術で"同一性 "とは、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間のアラインメントによって、あるいは場合によっては、一続きのそのような配列間のアラインメントによって決定されるような、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間の配列不変性の程度を意味する。また、類似性とは、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間のアラインメントによって、あるいは場合によっては、一続きの部分的な配列間のアラインメントによって決定されるような、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間の相関性の程度を意味する。より具体的には、配列の同一性と保存性(配列中の特定アミノ酸又は配列における物理化学特性を維持する置換)によって決定される。なお、類似性は、後述するBLASTの配列相同性検索結果においてSimilarity と称される。同一性及び類似性を決定する方法は、対比する配列間で最も長くアラインメントするように設計される方法であることが好ましい。同一性及び類似性を決定するための方法は、公衆に利用可能なプログラムとして提供されている。例えば、AltschulらによるBLAST (Basic Local Alignment Search Tool) プログラム(たとえば、Altschul SF, Gish W, Miller W, Myers EW, Lipman DJ., J. Mol. Biol., 215: p403-410 (1990), Altschyl SF, Madden TL, Schaffer AA, Zhang J, Miller W, Lipman DJ., Nucleic Acids Res. 25: p3389-3402 (1997))を利用し決定することができる。BLASTのようなソフトウェアを用いる場合の条件は、特に限定するものではないが、デフォルト値を用いるのが好ましい。
第1の成分として使用できる各種のタンパク質は、MCP−1の公知のアミノ酸配列や塩基配列のほか、MCP−1の公知のアミノ酸や塩基配列と一定の関係を有するタンパク質であって本明細書におけるMCP−1活性を有するタンパク質が挙げられる。例えば、ケモカインリガンド(CCL)ファミリーが挙げられる。典型的には、CCL13,同7、同8、同11等が挙げられる。
例えば、配列番号2で表されるアミノ酸配列との関係において、同一性が60%以上のタンパク質としては、以下の4種が挙げられる。
(1)ヒトC−Cモチーフケモカイン13プレカーサー(NCBIアクセッション番号:NP_005399.1、配列番号2で表されるアミノ酸配列との同一性は65%、類似性は82%)
(2)ヒトC−Cモチーフケモカイン7プレカーサー(NCBIアクセッション番号:NP_6264.2、同同一性73%、同類似性78%)
(3)ヒトC−Cモチーフケモカイン8プレカーサー(NCBIアクセッション番号:NP_005614.2、同同一性69%、同類似性84%)
(4)ヒトエオタキシンプレカーサー(NCBIアクセッション番号:NP_002977.1、同同一性70%、同類似性84%)
さらに他の一態様として、開示されるMCP−1をコードする塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAによってコードされ、MCP−1活性を有するタンパク質が挙げられる。ストリンジェントな条件とは、たとえば、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。例えば、塩基配列の同一性が高い核酸、すなわち開示される塩基配列と70%以上、より好ましくは80%以上、さらにまた好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上であり、より一層好ましくは95%以上であり、さらに一層好ましくは98%以上であり、最も好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNAの相補鎖がハイブリダイズし、それより相同性が低い核酸の相補鎖がハイブリダイズしない条件が挙げられる。より具体的には、ナトリウム塩濃度が15〜750mM、好ましくは50〜750mM、より好ましくは300〜750mM、温度が25〜70℃、好ましくは50〜70℃、より好ましくは55〜65℃、ホルムアミド濃度が0〜50%、好ましくは20〜50%、より好ましくは35〜45%での条件をいう。さらに、ストリンジェントな条件では、ハイブリダイゼーション後のフィルターの洗浄条件が、通常はナトリウム塩濃度が15〜600mM、好ましくは50〜600mM、より好ましくは300〜600mM、温度が50〜70℃、好ましくは55〜70℃、より好ましくは60〜65℃である。なお、以上のことから、さらなる他の一態様として、開示される塩基配列と80%以上、より好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上であり、より一層好ましくは95%以上であり、さらに好ましくは97%以上であり、さらに一層好ましくは98%以上であり、最も好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列を有するDNAによってコードされ、MCP−1活性を有するタンパク質が挙げられる。
(第2の成分)
第2の成分は、シアル酸結合イムノグロブリン様レクチン−9(Siglec−9)の細胞外ドメイン活性を有するタンパク質である。この種のタンパク質及びその全長タンパク質は、ヒトをはじめとして各種動物においてホモログが知られている。Siglec−9は、単球、顆粒球及びマクロファージファージにおいて発現する膜貫通タンパク質であって、細胞外ドメインと膜貫通ドメインと細胞質ドメインとを備えている。本明細書においては、Siglec−9の細胞外ドメインを好ましく用いることができる。細胞外ドメインは、免疫グロブリン様ドメインを含んでいることも知られている。
本開示においては、こうしたヒトなどの動物に由来する天然のSiglec−9を天然の原料から回収したものであってもよいし、遺伝子工学的又は化学的に取得したものであってもよい。例えば、ヒトのSiglec−9は配列番号4で表されるアミノ酸配列を有している。また、配列番号3で表される塩基配列からなるDNAによってコードされている。
第2の成分は、Siglec−9の細胞外ドメイン活性を有していれば足りる。すなわち、公知の天然のSiglec−9の他、新たに本剤におけるSiglec−9の細胞外ドメインとして機能することが確認されたタンパク質であってもよい。また、天然のSiglec−9に上述した改変が加えられたものであってもよい。本剤におけるSiglec−9の細胞外ドメイン活性としては、例えば、第1の成分及びコンドロイチン硫酸又はコンドロイチン硫酸プロテオグリカンと協動してミクログリアを組織修復型に誘導できる活性、あるいは抗炎症性サイトカインの亢進活性を有しているタンパク質が挙げられる。
ヒトのSiglec−9は、配列番号37で表される463アミノ酸のアミノ酸配列からなる。このうち、第1位から第17位までのアミノ酸配列は、シグナルペプチドである。本開示の第2の成分としては、例えば、このアミノ酸配列の第18位から第348位のアミノ酸配列(配列番号4)であってもよいし、このアミノ酸配列の全長アミノ酸を有していてもよいし、同第18位〜第463位までのアミノ酸配列を有していてもよい。
こうした活性は、既述したように、後述する実施例を参照すれば当業者であれば容易に評価することができる。なお、改変Siglec−9の細胞外ドメインにおけるSiglec−9細胞外ドメイン活性は、上記の誘導活性や産生促進活性を有していれば足り、その程度は問わない。
例えば、ミクログリア/マクロファージを組織修復型に誘導できる活性は、マウス等からミクログリア/マクロファージを単離し培養し、この培養細胞に対して、確立した第1の成分と必要に応じてCS等の存在下に、可能性ある第2の成分を供給して、組織修復型ミクログリア/マクロファージの指標となるCD206、Arginase1のタンパク質あるいはmRNAの産生を確認することなどで評価することができる。
また、例えば、抗炎症性サイトカインの産生促進活性は、ミクログリア/マクロファージを組織修復型に誘導できる活性は、マウス等からミクログリア/マクロファージを単離し培養し、この培養細胞に対して、確立された第1の成分及び必要に応じてCS等の存在下に、可能性ある第2の成分を供給して、例えば、IL−10およびTGF−β1などの抗炎症性サイトカインの産生を確認することなどで評価することができる。
抗炎症性サイトカインの産生促進活性は、好ましくは配列番号4で表されるアミノ酸からなるタンパク質のSiglec−9細胞外ドメイン活性の50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、より一層好ましくは80%以上、さらに一層好ましくは90%以上、最も好ましくは100%以上である。
第2の成分として使用できる各種のタンパク質は、Siglec−9の細胞外ドメインの公知のアミノ酸配列や塩基配列のほか、Siglec−9の細胞外ドメインとして知られている公知のアミノ酸や塩基配列と一定の関係を有するタンパク質であって本明細書におけるSiglec−9の細胞外ドメイン活性を有するタンパク質が挙げられる。例えば、Siglecファミリータンパク質が挙げられる。典型的には、Siglec−9、Siglec−7,Siglec−12,Siglec−8,CD33等が挙げられる。
例えば、配列番号4で表されるアミノ酸配列との関係において、同一性が60%以上のタンパク質としては、以下の10種が挙げられる。
(1)ヒトシアル酸結合イムノグロブリン様レクチン9同位体2プレカーサー(NCBIアクセッション番号:NP_055256.1、配列番号4で表されるアミノ酸配列との同一性は100%、類似性は100%、塩基配列は配列番号5で表され、アミノ酸配列は配列番号6で表される。)
(2)ヒトシアル酸結合イムノグロブリン様レクチン9同位体1プレカーサー(NCBIアクセッション番号:NP_001185487.1、配列番号4で表されるアミノ酸配列との同一性は100%、類似性は100%)
(3)ヒトシアル酸結合イムノグロブリン様レクチン7同位体1プレカーサー(NCBIアクセッション番号:NP_00055220.1、配列番号4で表されるアミノ酸配列との同一性は81%、類似性は85%)
(4)ヒトシアル酸結合イムノグロブリン様レクチン12同位体bプレカーサー(NCBIアクセッション番号:NP_2015856.1、配列番号4で表されるアミノ酸配列との同一性は68%、類似性は79%)
(5)ヒトシアル酸結合イムノグロブリン様レクチン12同位体aプレカーサー(NCBIアクセッション番号:NP_443729.1、配列番号4で表されるアミノ酸配列との同一性は68%、類似性は79%)
(6)ヒトシアル酸結合イムノグロブリン様レクチン8プレカーサー(NCBIアクセッション番号:NP_055257.2、配列番号4で表されるアミノ酸配列との同一性は70%、類似性は78%)
(7)ヒトミエロイド細胞表層抗原CD33同位体3プレカーサー(NCBIアクセッション番号:NP_001171079.1、配列番号4で表されるアミノ酸配列との同一性は63%、類似性は74%)
(8)ヒトミエロイド細胞表層抗原CD33同位体1プレカーサー(NCBIアクセッション番号:NP055257.2、配列番号4で表されるアミノ酸配列との同一性は63%、類似性は74%)
(9)ヒトシアル酸結合イムノグロブリン様レクチン7同位体2プレカーサー(NCBIアクセッション番号:NP_057627.2、配列番号4で表されるアミノ酸配列との同一性は78%、類似性は82%)
(10)ヒトミエロイド細胞表層抗原CD33同位体2プレカーサー(NCBIアクセッション番号:NP_001076087.1、配列番号4で表されるアミノ酸配列との同一性は65%、類似性は77%)
(第3の成分)
第3の成分は、コンドロイチン硫酸(CS)又はコンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG)である。本発明者らによれば、炎症反応部位など組織損傷部位における組織修復活性は、第1の成分、第2の成分及び第3の成分の共存下において発揮される。しかしながら、CS等は、炎症組織においては常在する多糖類であるため、特に、有効成分として含めなくとも、本剤が組織において作用することができる。もっとも、本剤が第3の成分を含むことでより確実にあるいはより広い範囲に適用できる組成物となる。一方、生体外において本剤を炎症部位やミクログリア/マクロファージに適用するときには、第3の成分であるCS等を添加することが好ましい。コンドロイチン硫酸における糖の結合形態も特に限定しない。また、コンドロイチン硫酸は、複数種類の混合物であってもよい。
(幹細胞の培養上清の評価方法)
本開示の幹細胞の培養上清の評価方法は、幹細胞の培養上清中の本指標の1種又は2種以上の成分を測定する測定工程を備えることができる。本評価方法によれば、本指標成分を測定することで、各種の予防又は治療用途に有用な培養上清であるか否かを評価できる。各種幹細胞についての各種条件での培養上清について本指標を用いて評価することで、培養上清自体の評価のほか、幹細胞や培養条件の評価も可能となる。
培養上清中の本指標成分の測定方法は、成分により異なる。例えば、第1及び第2の成分は、当該タンパク質の少なくとも一部に特異的な抗体を用いて例えばELISA等により測定することができる。こうした特定タンパク質に対する抗体は、商業的に入手できるほか、必要に応じて適宜調製できる。また、第3の成分もまた、特異的に結合する抗体によって例えばELISA等により測定できる。また、第3の成分は、硫酸バリウム法(食品 添加物 コンドロイチン硫酸ナトリウムの定量法(2)硫黄参照)、カルバゾール硫酸法(日本薬局方外医薬品規格のコンドロイチン硫酸参照)、HPLCを用いたAOAC法等が挙げられる。
本指標のうち評価する成分が存在しているか否かのほか、好ましくは、各成分につき1又は2以上の基準値を設定して評価する。例えば、第1の所定値を充足しない場合には、不適あるいは濃縮等が必要であるなどし、第1の所定値を充足しかつ第2の所定値を充足しない場合には「適」とし、第2の所定値を充足するときには「良好」等などとすることができる。なお、こうした所定値の充足性の判定は、当該所定値に対して、当該所定値未満、当該所定値以下、当該所定以上、当該所定超など、必要に応じて適宜設定することができる。
特に限定するものではないが、各種治療用途に有効である歯髄幹細胞の培養上清における本指標の濃度によれば、例えば、幹細胞培養上清において、第1の成分は、150pg/ml以上(さらには、160pg/ml以上、170pg/ml以上、180pg/ml以上、190pg/ml以上)であることが好ましく、より好ましくは200pg/ml以上(さらには、210pg/ml以上、220pg/ml以上、230pg/ml以上、240pg/ml以上)であり、さらに好ましくは250pg/ml以上(さらには、260pg/ml以上、270pg/ml以上、280pg/ml以上、290pg/ml以上)であり、一層好ましくは300pg/ml以上(さらには、310pg/ml以上、320pg/ml以上、330pg/ml以上、340pg/ml以上、350pg/ml以上)である。
また、好ましくは350pg/ml以上(さらには、360pg/ml以上、370pg/ml以上、380pg/ml以上、390pg/ml以上)であることが好ましく、さらに好ましくは400pg/ml以上である。
また、第2の成分は、450pg/ml以上であることが好ましくは、より好ましくは500pg/ml以上であり、さらに好ましくは600pg/ml以上であり、一層好ましくは700pg/ml以上であり、より一層好ましくは800pg/ml以上であり、さらに一層好ましくは900pg/ml以上であり、また好ましくは1000pg/ml以上(さらには、1100pg/ml以上、1200pg/ml以上、1300pg/ml以上、1400pg/ml以上)であることが好ましく、より好ましくは1500pg/ml以上(さらには、1600pg/ml以上、1700pg/ml以上、1800pg/ml以上、1900pg/ml以上、2000pg/ml以上)である。
本指標は、第1の成分、第2の成分及び第3の成分から選択される少なくとも1種を指標として用いることができる。本指標のうち、例えば、第1の成分と第2の成分とを測定することができる。これらは、第3の成分は、生体組織に概して普遍的に存在する傾向がある一方、第1及び第2の成分は治療用途に大きく寄与するからである。例えば、急性的に組織損傷が生じている疾患では、生体側からのMCP−1の供給が必ずしも十分でないため、第1の成分と第2の成分とを少なくとも投与することが好適であるからである。また、本指標のうち第3の成分を測定することも好ましい。第3の成分も治療用途に大きく寄与するからである。また、本指標のうち第2の成分を測定することも好ましい。例えば、慢性的に組織損傷が生じている疾患として、2型糖尿病、慢性肝炎及び肝硬変のほか、既述したような慢性及び自己免疫疾患において第2の成分が大きく寄与するからである。
(幹細胞の培養上清を有効成分とする医薬組成物の規格化方法)
以上のことから、本開示によれば、幹細胞の培養上清を有効成分とする医薬組成物の規格化方法に提供される。本規格化方法は、幹細胞の培養上清中の本指標の1種又は2種以上の成分を測定する測定工程と、前記測定結果に基づいて、前記医薬組成物あるいは前記医薬組成物に用いる原料としての前記培養上清における前記1種又は2種以上の成分の規格値を設定する工程と、を備えることができる。
本指標のうちの1種又は2種以上の成分は、各種疾患等に対する改善作用に大きく寄与している。このため、幹細胞の培養上清という多種類成分の組成物であっても、本指標のうちの1種又は2種以上の成分の含有量を規定することで、その培養上清の品質や有効量を規格化できる。本指標成分を用いて規格値は、規格化しようとする幹細胞培養上清についての本指標成分の濃度測定結果のほか、本指標成分の各種疾患の治療等や症状の改善等に対する有効量等に基づいて行うことができる。
本規格化方法においては、既に説明した評価方法の各種態様を適宜適用できる。
(幹細胞培養上清のスクリーニング方法)
本開示の幹細胞の培養上清のスクリーニング方法は、スクリーニング対象である幹細胞の培養上清中の本指標のうちの1種又は2種以上の成分を測定する測定工程を備えることができる。本スクリーニング方法によれば、治療用途等に有用な幹細胞培養上清を効率的にスクリーニングすることができる。幹細胞の種類や培養条件によっても培養上清の組成は相違する。このため、本指標を用いて幹細胞培養上清をスクリーニングすることで効率的に有用な幹細胞培養上清を取得できる。本スクリーニング方法においても、既に説明した幹細胞培養上清の評価方法における測定工程の実施態様を適用することができる。
(医薬組成物のスクリーニング方法)
本開示の医薬組成物のスクリーニング方法は、スクリーニング対象が幹細胞の培養上清であり、前記培養上清中の本指標のうちの1種又は2種以上の成分を測定する工程を備えることができる。本スクリーニング方法によれば、各種の幹細胞についての様々な培養条件による培養上清に関し、その治療用途についての有用性に基づきスクリーニングできる。
既に説明したように、本指標は、損傷組織の予防又は治療、炎症性疾患の予防又は治療、及び糖尿病の予防又は治療に寄与できる。このため、本指標を用いてスクリーニングすることで、こうした治療用途に有用な培養上清や、そのための幹細胞や培養条件も効率的に決定できる。本スクリーニング方法においても、既に説明した幹細胞培養上清の評価方法における測定工程の実施態様を適用することができる。
ここでいう医薬組成物は、疾患の予防や治療、症状の改善を意図した組成物をいう。医薬組成物は、少なくとも1種の有効成分を含んでいる。本スクリーニング方法における医薬組成物は、幹細胞培養上清を有効成分とすることができる。なお、医薬組成物の形態は特に限定されないで、液体、粉末、ペレット、クリーム状、顆粒状等の医薬品原料のほか、各種の公知の製剤形態を採ることができる。
医薬組成物の投与経路は特に限定されない。適用部位や対象とする疾患に応じて公知の各種投与形態を採用できる。たとえば、非経口投与は、全身投与であってもよいし局所投与であってもよい。より具体的には、炎症部位への注入、塗布又は噴霧が挙げられる。また、静脈内投与、動脈内投与、門脈内投与、皮内投与、皮下投与、筋肉内投与、腹腔内投与、鼻腔内投与、口腔内投与等が挙げられる。標的部位が脳である場合には、鼻腔内投与が好ましい。
医薬組成物の用法用量は特に限定されない。被験対象の年齢、体重、病態等を勘案して設定することができる。投与スケジュールとしては例えば一日一回〜数回、二日に一回、或いは三日に一回などを採用できる。投与スケジュールの作成においては、対象(レシピエント)の性別、年齢、体重、病態などを考慮することができる。
医薬組成物が適用される対象個体としては、ヒトを含む哺乳動物(ペット、家畜、実験動物等)が挙げられる。例えば、ヒトのほか、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、サル、モルモット、ラット及びマウス等が挙げられる。
本スクリーニング方法は、損傷組織の予防又は治療用の医薬組成物をスクリーニングできる。すなわち、損傷組織の予防又は治療用に適した幹細胞培養上清をスクリーニングできる。ここで、損傷組織とは、潰瘍、褥瘡等が形成された組織、血管の閉塞や細胞の変性によって損傷した脳組織、外科的な操作によって欠損した脳組織、外傷性脳疾患によって損傷した脳組織、炎症性脳疾患によって損傷した脳組織、損傷した骨組織、損傷した歯周組織、中枢神経系疾患によって損傷した組織、難治性皮膚炎によって損傷した組織等が挙げられる。また、
また、具体的な疾患としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、認知症、統合失調症、鬱病、低酸素脳症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脳高速、小脳変性症が挙げられる。また、脳炎脳症、ヤコブ病、ポリオ等が挙げられる。また、脊髄損傷、脊髄症等が挙げられる。また、アトピー性皮膚炎が挙げられる。
本スクリーニング方法は、組織修復用の医薬組成物をスクリーニングできる。すなわち、組織修復に適した幹細胞培養上清をスクリーニングできる。本明細書において「修復」とは、標的組織における損傷によって失われた機能の一部又は全部が、損傷時における損傷部の機能と比較して維持又は拡幅していることを意味している。機能が回復することのみならず、機能的な組織として再生することを包含している。機能が維持又は回復しているか否かの評価手法は損傷部位における損傷内容に応じて異なる。損傷部位の外観、対象となる機能の程度を評価するために通常用いられるアッセイが用いられる。
組織修復用医薬組成物は、各種の炎症に対する予防、治療、緩和する抗炎症剤組成物として利用できる。組織損傷を生じているあるいは生じる可能性のある疾患を、中枢神経系疾患と非中枢神経系疾患とに分類すると、中枢神経系疾患としては、特に限定されないで、中枢神経系における神経細胞の変性・脱落を生じる全ての病態を含むことができる。例えば、脊髄損傷、脳梗塞、新生児低酸素脳症、神経変性疾患(筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、進行性各上性麻痺、ハンチントン病、多系統萎縮症、脊髄小脳変性症等)、ウイルス性又は自己免疫性脳炎、脳虚血や脳内出血等に伴う脳梗塞による神経変性の変性・脱落、神経細胞の障害を伴う網膜疾患が挙げられる。網膜疾患としては、外傷性網膜剥離、網膜裂孔、網膜震盪症、視神経管骨折、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性、網膜色素変性症、緑内障、コレイデレミア、レーベル先天盲、錐体ジストロフィ、家族性ドルーセン、中心性輪紋状絡膜ジストロフィ、常染色体優性視神経萎縮等が挙げられる。なかでも、本剤は、急性及び亜急性の疾患や病態に好ましく適用される。例えば、脊髄損傷や脳梗塞等が挙げられる。さらに、末梢神経損傷による運動機能障害や知覚感覚異常が挙げられる。
また、非中枢神経系疾患としては、特に限定されないで、中枢神経系以外の組織における細胞の変性・脱落を生じる全ての病態を含むことができる。例えば、I型およびII型糖尿病、シェーグレン病、ドライアイ、皮膚創傷治癒、心筋梗塞、骨髄移植に伴う免疫拒絶、関節炎、関節リウマチ、変形性関節症及び骨吸収増加に関連した骨疾患などの慢性炎症性関節疾患、回腸炎、潰瘍性大腸炎、バレット症候群及びクローン病などの炎症性腸疾患、喘息、急性および慢性間質性肺炎、成人呼吸窮迫症候群及び慢性閉塞性気道疾患などの炎症性肺疾患、トラコーマ、オンコセルカ症、ブドウ膜炎、交感性眼炎及び眼内炎などの炎症性眼疾患、歯肉炎及び歯周炎などの慢性炎症性歯周疾患、結核、ハンセン病、尿毒症合併症、糸球体腎炎及びネフローゼなどの炎症性腎疾患、硬化性皮膚炎、乾癬及び湿疹などの炎症性皮膚疾患、自己免疫疾患、免疫複合体血管炎、全身性狼瘡及び紅斑症、全身性エリトマトーデス(SLE)、心筋症、虚血性心疾患、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症などの炎症性心疾患、並びに子癇前症、慢性肝不全、急性肝炎、劇症肝炎、脳、癌などの重大な炎症要素を有する他の様々な疾患が挙げられる。 あるいはグラム陽性又はグラム陰性細菌ショック、出血性若しくはアナフィラキシーショック、又は前炎症性サイトカインに応答する癌化学療法によって誘発されたショック(例えば前炎症性サイトカイン関連ショック)などの全身性の炎症も挙げられる。かかるショックは、例えば癌化学療法に用いられる化学療法剤によって誘発されうる。さらに、皮膚移植拒絶反応などの移植片拒絶反応も挙げられる。なかでも、本剤は、急性及び亜急性の疾患や病態に好ましく適用される。例えば、急性肝炎や劇症肝炎が挙げられる。同時に、各種の肝障害の終末形態である肝硬変においても好ましく適用される。さらに、急性及び慢性の骨髄炎症疾患が挙げられる。かかる疾患としては、ビスホスホネート系薬剤関連顎骨壊死、外傷や感染に起因する急性及び慢性骨髄炎が挙げられる。また、歯周病や外傷などによる骨変形・骨損傷が挙げられる。こうした損傷等に本剤を投与すると新生骨の形成を促進することができる。
なかでも、関節リウマチ(RA)などの慢性炎症性関節疾患が挙げられる。関節リウマチは、慢性多発性滑膜炎を本体とする原因不明の炎症性自己免疫性疾患であり、遷延する滑膜炎は、骨・軟骨破壊と永続的な機能障害へとつながる。
慢性的に組織損傷を生じている疾患(炎症性疾患)では、継続的に生体側からMCP−1の供給が可能であるため、第2の成分の単独投与が有効な場合がある。したがって、第2の成分のみを指標として用いることもできる。
また、特発性肺線維症(IPF)を含む間質性肺炎が挙げられる。間質性肺炎は肺胞と肺胞の間の隔壁を主座とする炎症性疾患である。IPFの病態の特徴は、肺胞壁における線維化と肺胞構造の変化(蜂巣肺形成)であり、肺活量・肺コンプライアンス・肺拡散能が低下し、それに伴い患者のQOLは低下する。慢性かつ進行性の経過をたどり、急性転化した場合の致命率は80%ともいわれる。
本スクリーニング方法は、炎症性疾患の予防又は治療用の医薬組成物をスクリーニングできる。すなわち、炎症性疾患の予防又は治療用に適した幹細胞培養上清をスクリーニングできる。
本明細書において、「炎症」とは、異物の存在又は何らかの原因による組織損傷によって誘発される、身体を保護しようと働く哺乳動物における機構をいう。「炎症反応」とは、炎症において生じる一連のプロセスをいう。「炎症反応」には、炎症により誘発される組織破壊を含むことができる。「炎症性疾患」とは、身体組織の炎症により、又は炎症要素を有することにより特徴付けられる疾病、疾患又は症状を意味する。これらには局所的な炎症反応及び全身性の炎症反応が含まれる。
炎症性疾患としては、特に限定されないで、広く適用される。炎症性疾患としては、例えば、シェーグレン病、ドライアイ、皮膚創傷治癒、心筋梗塞、骨髄移植に伴う免疫拒絶、関節炎、関節リウマチ、変形性関節症及び骨吸収増加に関連した骨疾患などの慢性炎症性関節疾患、回腸炎、潰瘍性大腸炎、バレット症候群及びクローン病などの炎症性腸疾患、喘息、急性および慢性間質性肺炎、肺線維症、成人呼吸窮迫症候群及び慢性閉塞性気道疾患などの炎症性肺疾患、トラコーマ、オンコセルカ症、ブドウ膜炎、交感性眼炎及び眼内炎などの炎症性眼疾患、歯肉炎及び歯周炎などの慢性炎症性歯周疾患、結核、ハンセン病、尿毒症合併症、糸球体腎炎及びネフローゼなどの炎症性腎疾患、硬化性皮膚炎、乾癬及び湿疹などの炎症性皮膚疾患、免疫複合体血管炎、全身性狼瘡及び紅斑症、多発性硬化症、全身性エリトマトーデス(SLE)などの炎症性自己免疫疾患、心筋症、心筋梗塞などの虚血性心疾患、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症などの炎症性心疾患、並びに子癇前症、慢性肝不全、慢性肝炎、肝硬変、急性肝炎、劇症肝炎、脳、癌などの重大な炎症要素を有する他の様々な疾患が挙げられる。あるいはグラム陽性又はグラム陰性細菌ショック、出血性若しくはアナフィラキシーショック、又は前炎症性サイトカインに応答する癌化学療法によって誘発されたショック(例えば前炎症性サイトカイン関連ショック)などの全身性の炎症も挙げられる。かかるショックは、例えば癌化学療法に用いられる化学療法剤によって誘発されうる。さらに、皮膚移植拒絶反応などの移植片拒絶反応も挙げられる。なかでも、本組成物は、急性及び亜急性の疾患や病態に好ましく適用される。例えば、急性肝炎や劇症肝炎が挙げられる。また、慢性間質性肺炎、急性間質性肺炎及び肺線維症に好ましく適用される。さらに、慢性肝炎、肝硬変などの慢性肝疾患にも好ましく適用される。さらに、心筋梗塞などの虚血性心疾患にも好ましく適用される。また、関節リウマチ、多発性硬化症、全身性エリテマトーデスなどの炎症性自己免疫疾患にも好ましく適用される。
本スクリーニング方法は、糖尿病の予防又は治療用の医薬組成物をスクリーニングできる。すなわち、糖尿病の予防又は治療用に適した幹細胞培養上清をスクリーニングできる。
本明細書において、「糖尿病」とは、分類を問わず、血糖値が病的に高い状態を疾患を意味している。より具体的には血糖値及びヘモグロビンA1cが一定以上の数値を超えている場合をいう。さらに、本明細書において、「糖尿病」には、糖尿病に合併する糖尿病性の急性又は慢性障害(合併症)を含むものとする。急性障害としては、糖尿病性昏睡(ケトン性昏睡、非ケトン性高浸透圧性昏睡、乳酸アシドーシス、低血糖性昏睡)、急性感染症が挙げられる。慢性障害としては、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症等の微小血管障害、脳血管障害、糖尿病性壊疽などの大血管障害、高脂血症・慢性感染症、胆石症、白内障などが挙げられる。
本明細書において、「糖尿病」とは、分類を問わず、血糖値が病的に高い状態を疾患を意味している。より具体的には血糖値及びヘモグロビンA1cが一定以上の数値を超えている場合をいう。さらに、本明細書において、「糖尿病」には、糖尿病に合併する糖尿病性の急性又は慢性障害(合併症)を含むものとする。急性障害としては、糖尿病性昏睡(ケトン性昏睡、非ケトン性高浸透圧性昏睡、乳酸アシドーシス、低血糖性昏睡)、急性感染症が挙げられる。慢性障害としては、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症等の微小血管障害、脳血管障害、糖尿病性壊疽などの大血管障害、高脂血症・慢性感染症、胆石症、白内障などが挙げられる。
(医薬組成物の品質評価方法)
本開示の医薬組成物の品質評価方法は、評価対象が幹細胞の培養上清であり、幹細胞培養上清中の本指標のうちの1種又は2種以上の成分を測定する測定工程を備えることができる。本品質評価方法によれば、医薬組成物の品質評価をその有効成分量ないし有効性に基づき適切に行うことができる。したがって、本品質評価方法は、医薬組成物の品質管理方法としても利用できる。また、本品質評価方法は、医薬組成物の製造工程における有効成分の定量方法としても利用できる。
本品質評価方法においては、既に説明した評価方法やスクリーニング方法における測定工程の実施態様を適用することができる。したがって、本品質評価方法は、炎症性疾患の予防又は治療用の医薬組成物、糖尿病の予防又は治療用の医薬組成物及び損傷組織の予防又は治療用の医薬組成物に適用できる。
(疾患の予防又は治療用途のスクリーニング方法)
本開示の疾患の予防又は治療用途のスクリーニング方法は、本指標のうち1種又は2種以上の成分を、1種又は2種以上の疾患の評価系に適用してその作用を評価する工程、を備えることができる。本スクリーニング方法によれば、本指標成分のさらに有用な用途を探索し取得できる。例えば、炎症性疾患の評価系としては、既に各種炎症性疾患について公知である。例えば、劇症肝炎、肺線維症、肝硬変、虚血性心疾患、多発性硬化症、SLE及び関節炎等の各種炎症性疾患のモデルマウスを利用できるほか、関連する細胞を用いた評価系適宜選択して利用できる。
また、糖尿病に関する評価系は、糖尿病について公知である。例えば、ストレプトゾトシン誘発糖尿病モデルマウス・ラット、NODマウス(NOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Sug/Jic)、dbdbマウス(C57BLKS/JIar- +Lepr db /+Lepr db)、obobマウス(C57BL/6JHamSlc ob/ ob)、Goto-Kakizakiラット(GKラット)、Zucker fattyラット(ZDF-Leprfa/ CrlCrlj)=ZDFラット(Zucker Diabetic fatty)、Wistar fatty ラット(Wistar- Leprfa/ Leprfa)、高脂肪食負荷モデル動物等の糖尿病モデル動物を利用できるほか、MIN6細胞、INS-1細胞、βTC細胞、HIT細胞等の膵β細胞株を用いた評価系を適宜選択して利用できる。
こうした各種の評価系については、当業者であれば適宜選択できるほか、本明細書の実施例等を参照することによっても適宜選択することができる。
(医薬組成物の生産方法)
本開示の医薬組成物の生産方法は、幹細胞の培養上清につき、本指標のうちの1種又は2種以上の成分を測定する測定工程と、前記成分の測定結果に基づいて前記培養上清を有効成分とする前記医薬組成物の品質について評価する工程と、を備えることができる。この生産方法によれば、医薬組成物の有効成分量や有効性に基づき品質を評価し管理できるため、品質の確保された医薬組成物を提供できる。なお、本生産方法においても、既に説明した評価方法やスクリーニング方法における測定工程の実施態様を適用することができる。
(医薬組成物の生産方法)
本開示の医薬組成物の生産方法は、幹細胞の培養上清から本指標のうちの1種又は2種以上の成分を取得する工程、を備えることができる。既に説明したように、本指標の成分は、各種治療用途についての有用性の指標であると同時にそうした治療用の有効成分でもある。したがって、幹細胞培養上清を原料として、当該原料から本指標の少なくとも一成分を取得して、本医薬組成物の有効成分して用いることができる。本指標の成分の組合せについては既に説明したように、本指標中の1種成分のみを有効成分としてもよいし、2種を有効成分としてもよいし、3種を有効成分としてもよい。また、こうして取得した成分を有効成分の少なくとも一部として用いれば足りる。したがって、当該取得された本指標成分と同一成分を別途追加して医薬組成物としてもよいし、取得された本指標成分とは別個の本指標成分を別途追加してもよいし、本指標成分でない他の成分を追加してもよい。
(医薬組成物の生産方法)
本開示の医薬組成物の生産方法は、本指標のうちの第1の成分及び第2の成分の一方又は双方の発現を増強するように遺伝子改変された幹細胞の形質転換体を培養する工程を備えることができる。こうすることで、第1の成分及び第2の成分をより多く含有する培養上清を得ることができる。本生産方法によれば、本指標の第1の成分及び第2の成分の含有量が増大された幹細胞培養上清を得ることができる。この培養上清は、それ自体医薬組成物として有用であるほか、第1の成分及び第2の成分の取得源としても有用である。第1の成分及び第2の成分については既に説明したように、そのアミノ酸配列ほか、塩基配列も既に公知である。したがって、当業者であれば、第1の成分及び/又は第2の成分を増強するように幹細胞を形質転換するためのベクターを容易に構築することができ、また、公知の導入方法に基づき、ベクターを幹細胞に導入し、幹細胞の形質転換体を得ることができる。
(幹細胞の形質転換体)
本開示の形質転換体は、本指標のうちの第1の成分及び第2の成分の一方又は双方の発現を増強するように遺伝子改変された幹細胞の形質転換体である。本形質転換体によれば、こうすることで、第1の成分及び第2の成分をより多く含有する培養上清を得ることができる。本生産方法によれば、本指標の第1の成分及び第2の成分の含有量が増大された幹細胞培養上清を得ることができる。この培養上清は、それ自体医薬組成物として有用であるほか、第1の成分及び第2の成分の取得源としても有用である。こうした幹細胞の形質転換体は当業者であれば適宜作製できる。例えば、公知のアデノウイルスベクターを用いて、所望の成分を発現させるように組換えアデノウイルスDNAを取得し、これをHEK293細胞等にトランスフェクトし、組換えアデノウイルスを増殖させる。この組換えアデノウイルスを幹細胞に感染させることで、幹細胞の形質転換体を得ることができる。
以下、本発明を、実施例を挙げて具体的に説明するが、以下の実施例は本発明を限定するものではない。なお、以下の実施例において、%は、いずれも質量%を意味する。
なお、以下の実施例において言及する図面において、ED−Siglec−9を、ED−Siglec−9と表記するほか、単にSiglec−9又はSiglecと表記することがある。
(劇症肝炎モデルを用いた歯髄幹細胞の治療有用性の解析)
(1)劇症肝炎モデルラットの作製
著しい肝障害を誘発する、D−ガラクトサミン(D-galactosamine)溶液をPBS/NaOH溶液に溶解し作製した。この溶液をSprague-Dawleyラット(200〜250g)に、D−ガラクトサミン1.2g/kg(ラット体重)となるように腹腔内投与した。投与から24時間後に採血を行ってAST及びALTを測定し、著しい肝障害が誘発(劇症肝炎)されていることを確認した。
(2)薬剤の調製
ED−Siglec−9(組換えヒトSiglec−9Fcキメラ、R&Dシステムズ、ヒトSiglec−9のGln18〜Gly348を含むキメラタンパク質である。)単独1μg/mlPBS溶液、MCP−1リコンビナントタンパク質(組換えヒトMCP−1/CCL2(Peprotech社))単独1μg/mlPBS溶液、ED−Siglec−9及びMCP−1リコンビナントタンパク質各1μg/ml含有PBS溶液をそれぞれ調製した。
(3)投与
(2)で調製した3種の薬剤液各1mlを、劇症肝炎の発症後24時間(D−ガラクトサミン投与から48時間)のラットに頸静脈から静注した。また、対照としてPBS1mlを劇症肝炎の発症後24時間のラットに頸静脈から静注した。
(4)1週間生存率の判定、血液検査による肝障害の評価
1週間生存率の判定、血液検査による肝障害の評価をそれぞれ図1及び図2に示す。Sprague-Dawley rat(200〜250g)腹腔内に、著しい肝障害を誘発するD−galactosamine溶液を1.2g/kgの割合で投与した。図1に示すように、PBS投与群では一週間生存率が30%以下に低下した。これに対して、ED−Siglec−9/MCP−1混合液の静注群においては劇的に病態が改善され、1週間生存率は100%であった。一方、ED−Siglec−9やMCP−1の各単独投与群では病態改善効果が得られなかった。ED−Siglec−9単独投与群の生存率は40%、MCP−1単独投与群の生存率は0%であった。
また、図2に示すように、対照群では、血中AST及びALTがそれぞれ8000U/L及び8300U/Lであったのに対し、混合投与群では、いずれも2000U/L以下、ED−Siglec−9単独投与群では6000/4000U/L、MCP−1単独投与群では7000/5500U/Lであった。これらの結果は、図1に示す生存率の結果を支持するものであった。なお、細胞傷害の示標値はAST=6000U/L、ALT=4000U/Lとした。
(5)劇症肝炎モデルにおける病理学的解析
劇症肝炎患者の肝臓では、一般に、広範な肝細胞死と肝細胞再生不全が認められる。本モデルラットにおいても、これらの発現を解析することにより、病態を評価した。肝細胞死は、HE染色及びTUNEL染色により評価を行った。結果を図3に示す。
図3のA及びBに示すように、対照群では激しい空砲変性や、多くのTunel陽性細胞(全肝臓細胞中20%)を検出した。これに対して、ED−Siglec−9/MCP−1混合投与後12時間の組織像は正常肝組織様であった。
(6)劇症肝炎モデルにおける遺伝子解析
劇症性炎症反応では、炎症性組織破壊型M1マクロファージと抗炎症・組織再生型M2マクロファージが肝組織損傷に重要な役割を果たす。M1は、前炎症性サイトカイン(TNF−α、IL−1β、IL−6)の遺伝子発現を亢進する。M2は、死細胞のセンサー:マンノースレセプターCD206、抗炎症性サイトカイン(IL−10、TGF−b)を大量に発現する。本モデルラットにおいても、これらの因子の産生量を定量的RT−PCRで解析することにより、病態を評価した。結果を図4に示す。定量的RT−PCRに用いたプライマーは、表1に示す。
図4に示すように、対照群では、各種の炎症性サイトカインの発現が上昇することがわかった。これに対して、ED−Siglec−9/MCP−1混合投与群では炎症性サイトカインの発現が抑制され、抗炎症性サイトカインの発現が亢進することがわかった。
(7)劇症肝炎モデルにおけるCD206免疫染色結果
図5には、ED−Siglec−9/MCP−1混合投与群及び対照群の劇症肝炎モデルの組織におけるCD206染色結果を示す。図5に示すように、ED−Siglec−9/MCP−1混合投与群では、CD206の発現が顕著であり、組織修復型マクロファージへ変換が明らかに認められた。
本実施例では、マウスミクログリア及び脊髄損傷ラットを用いて、MCP−1、ED−Siglec−9及びCSPGの効果を確認した。以下、実験方法を示し、次いで結果を示す。
(1)マウスミクログリアの単離と細胞培養
初代神経細胞は、新生児のC57BL/6マウスから単離した。14日培養後、ミクログリアは、”振り切り”法(”shaking off”method)によって細胞混合物から単離した。Fc受容体の免疫染色によって決定された培養細胞の純度は97〜100%であった。培養物は、10%ウシ胎児血清、5μg/mlのウシインスリンおよび0.2%グルコースを添加したDMEM中で維持した。
(2)ミクログリアCSPG活性化アッセイ
48個のウェルの組織培養プレートは1μg/mlのポリ−L−リジン(PLL;Sigma)又は100ng/mlの細胞外コンドロイチン硫酸プロテオグリカン混合物(CSPG;ミリポア)とともにコーティングした。ミクログリアは、PLLまたはPLL/CSPG上の無血清DMEM中に2.0×10個の細胞/ウェルで播種した。無血清DMEM中には、組換えヒトMCP−1/CCL2(Peprotech社)と組換えヒトED−Siglec−9(R&DSystems)を含んでいた。24時間培養後、CD206タンパク質とmRNAの発現を、免疫組織化学的分析及びリアルタイム定量的PCRでそれぞれ分析した。48時間培養後には、培養上清のIL−10濃度をELISAキット(Quantikine ELISA MouseIL−10,R&DSystems)で測定した。
(3)リアルタイムQ−PCR
全RNAは、分光光度計によって定量し、RNAの状態を1%アガロースゲルで確認した。RT反応は、スーパースクリプトIII逆転写酵素(Invitrogen)を用いて行った。25μlの合計反応体積中全RNA0.5μgで使用した。リアルタイムQ−PCRは、THUNDERBIRD SYBR定量PCRミックス(東洋紡)を用い、StepOnePlus装置リアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems)を稼働させて行った。ラット及びマウス用のプライマーは、以下のとおりとした。
(4)ラット挫傷モデルと外科的処置
200〜230グラムの重量の成体雌Sprague−Dawleyラットを用いた。ラットは、ケタミン(60〜90mg/kg)およびキシラジン(100〜150mg/kg)の腹腔内注射により麻酔した。Th9腰椎椎弓切除後、硬膜を露出させ、市販されている脊髄損傷装置(Infinite Horizon Impactor,Precision Systems & Instrumentation)によって200kdynの外傷力を付与した。脊髄挫傷後すぐに、Th12部分椎弓切除術を行い、髄腔内にSMP−200モデル(プライムテック株式会社):iPRECIOと接続した薄いシリコンチューブを手術用顕微鏡下で挿入した。管はそれを固定する棘突起に縫合して配置し、ポンプは動物の腋窩の皮膚の下に置かれた。術後、膀胱は1日2回手動腹圧によって圧縮して排尿させた。術後翌日に完全な麻痺(BBBスコア=0)を示す動物を評価に用いた。後肢を動かすことができた動物、即死した動物は評価から除外した。
(5)BBBのオープンフィールド運動スコア
後肢神経行動試験はBBBの運動評価尺度を用いて行った。22点(0〜21)BBBスケールは、関節の動き、ステッピング能力、調整、体幹の安定性を含む後肢運動のリカバリを評価するために使用した。21のスコアは、無傷のラットにおける損なわれていない運動を意味している。動物の治療内容に関して盲検化された二人の審査官が評価を行った。各セッションの継続時間は、ラットあたり4分であった。スコアは各時点において、Tukeyの多重比較検定による反復測定分散分析により解析した。
(6)免疫組織化学的分析
処理された脊髄の組織学的検査のために、動物を麻酔し、挫傷後72時間後及び8週間後に、経心臓的に4%PFAの0.1MPBS溶液で灌流した。脊髄をOCTコンパウンド(サクラファイン)に埋め込んで、区画されたクライオスタット(ライカ)に20μmで矢状又は横平面で切片とした。組織切片とミクログリアは、0.1%(v/v)TritonX−100のPBS溶液で5分間浸透処理した。ヤギ血清10%(v/v)で30分間ブロッキング後、一次抗体:5−HT(ウサギIgG、1:500、Sigma−Aldrich)、GFAP(マウスIgG、1:500、ミリポア)、Iba1(ヤギIgG、1:500、アブカム)、CD206(ウサギIgG、1:1000、アブカム)、IL−10(マウスIgG、1:250、アブカム)とインキュベートした。二次抗体は、抗マウスIgG−のAlexa Fluor 488、抗ヤギIgG−Alexa Fluor 546及び抗ウサギIgG−のAlexa Fluor 647とした。DAPI(Sigma−Aldrich)で対比染色後、組織像は、ユニバーサル蛍光顕微鏡(BZ9000、キーエンス)で観察した。
(7)免疫沈降、レクチンブロット及びウェスタンブロット
THP−1細胞の溶解物を、ED−Siglec−9またはCCR2に対する抗体を用いて免疫沈降させ、沈殿物を抗CCR2抗体またはMAH−レクチンでイムノブロットした。レクチンブロットは、THP−1(理研セルバンク、日本)溶解物(溶解緩衝液:1%トリトンX、150mMのNaCl、20mMのトリス−HCl、2mMの塩化カルシウム)から抗CCR2抗体(ウサギIgGと、1:50、Abcam)で免疫沈降させたCCR2タンパク質をSDS−PAGEで分離し、イモビロン−PのPVDF膜上にエレクトロブロットした。ブロッティング後、その膜を、MAL緩衝液(10mMのHEPES、pH7.5、150mMのNaCl、0.2%BSA、0.2%Tween−20)で、12時間、4℃でブロックした。その後、MAL緩衝液中、12時間、4℃で、5mg/mlのビオチン化MAL(Vector Laboratories社)でプローブした。MALは、アビジン−HRP(Vector Laboratories社)およびECL(GE Healthcare)を用いて検出し、LAS−4000ミニルミノイメージアナライザー(GE Healthcare社)により分析した。
ED−Siglec−9とCCR2との間の物理的相互作用を分析するために、THP−1またはネイティブマウスミクログリア溶解物を0.15nMのED−Siglec−9−FcまたはFcを用いて4℃で一晩インキュベートした後、プロテインAセファロース(GEヘルスケア)で免疫沈降した。全細胞溶解物および再懸濁沈殿物は、マウスCCR2に対する抗体(ウサギIgG、1:500、Abcam)を用いてイムノブロットした。
(8)統計
Turkeyの事後検定(SPSS19.0)による反復測定分散分析を用いた。P値が0.05未満を有意とした。
(結果)
(MCP−1、ED−Siglec−9及びCSPGの組織修復型ミクログリアの誘導に対する相乗効果)
マウスミクログリアについての結果を図6に示す。図6のa〜dに示すように、CSPG上においてMCP−1(50ng/ml)及びED−Siglec−9(50ng/ml)で処理したミクログリアは、有意にCD−206のタンパク質レベルでの発現及び遺伝子レベルでの発現を増大させるとともに、IL−10の産生を増大させた。また、免疫染色により、CSPG上においてMCP−1(50ng/ml)及びED−Siglec−9(50ng/ml)で処理したミクログリアに関し、組織修復型ミクログリアの発現をCD206で確認することができた。また、図6のe及びfに示すように、MCP−1/ED−Siglec−9/CSPGの濃度に依存して組織修復型ミクログリアのマーカーであるCD206及び抗炎症性サイトカインIL−10の産生が増大した。
また、処置切片では、図7aに示すように、GAFP及びH−E染色により、SCI後8週で、GFAP陽性アストロサイトの活性の減少を示すとともに、組織損失面積が減ったことがわかった。また、図7bに示すように、5−HTにより、SCI後8週で、陽性神経線維の修復が進行していることがわかった。さらに、図7cに示すように、5−HT染色により、損傷中心から頭側及び尾側においても神経線維の修復が進行していることがわかった。
(MCP−1及びED−Siglec−9の髄腔内投与による炎症性の脊髄損傷の抗炎症状態/組織再生状態への変換)
MCP−1及びED−Siglec−9を各濃度1μg/mlでSCI部位にiPRECIO注入ポンプによって液3μl/hを送達した。シリコンチューブはくも膜下腔に挿入した。脊髄損傷部位におけるサイトカインと細胞表面マーカーの遺伝子発現を、定量的RT−PCR分析により評価した。総RNAは、SCIから72時間後に病変部位から採取した。結果を図8に示す。Y軸は、SHAMモデル(偽手術モデル)での数値に対する比率を表す。
図8に示すように、炎症性サイトカイン(IL−1β、TNF−α)および誘導型一酸化窒素合成(iNOS)は、コントロールで亢進されたが、MCP−1及びED−Siglec−9の併用投与で顕著に抑制された。これに対して、MCP−1/ED−Siglec−9の投与は抗炎症性サイトカインの発現(IL−10およびTGF−β1)およびM2ミクログリア/マクロファージのマーカー(CD206、Arginase1)を増大させた。なお、実験は3回繰り返しで行い、いずれも同様の結果が得られた。図8中のデータは平均±SEMを表す(*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001)。
(MCP−1/ED−Siglec−9による脊髄損傷後のミクログリア/マクロファージの組織修復型への分化促進)
脊髄損傷から72時間後の損傷部位を取り囲むミクログリア/マクロファージの典型的画像と定量結果を図9に示す。図9の上段に示すように、コントロール群では、Iba1+ミクログリアが観察されたが、CD206+細胞が全く観察されなかった。これに対して、図9の中段に示すように、MCP−1/ED−Siglec−9処理ラットにおいては、脊髄損傷から72時間後、損傷部位に多数のIba+細胞が移動し、これらIba1+細胞のほとんどは、CD206を共発現していた。また、図9の下段に示すように、コントロールラットでは、損傷部位におけるCD206+細胞は、IL−10も同時に発現することは観察されなかったのに対し、MCP−1/ED−Siglec−9処理された損傷部位におけるCD206+細胞は、IL−10も同時に発現していた。図中のデータは、平均±SDを表す(*P<0.05、**P<0.01、PBS処理に対するMCP−1/ED−Siglec−9処理した脊髄損傷モデル)。
(脊髄損傷におけるMCP−1/ED−Siglec−9の治療上の利点)
脊髄挫傷後の後肢の機能回復の時間経過を図10に示す。MCP−1/ED−Siglec−9投与ラットは、コントロールと異なり早期から明らかな機能回復傾向を呈した。図中のデータは、平均±SDを表す。
(ED−Siglec−9とMCP−1レセプターであるCCR2との相互作用)
免疫沈降、レクチンブロット及びウェスタンブロットの結果を図11に示す。ED−Siglec−9は、物理的に、THP−1細胞溶解液中のシアル化CCR2と相互作用し、CSPG処理は、ミクログリアのCCR2発現を増加させ、ED−Siglec−9は物理的にミクログリアのCCR2と相互作用した。
豊富に内因性CCR2を発現するヒト単球細胞株THP−1を用いて、MCP−1受容体、CCR2およびED-Siglec-9の物理的相互作用を分析した。図11(A)に示すように、SDS−PAGE分析により、THP−1は、異なる分子量(図11(A)Total lysate)で複数のCCR2タンパク質を発現した。また、抗CCR2抗体を用いたTHP−1溶解物の免疫沈降によって、55および42kDaでのCCR2タンパク質の2つの主要な種が検出された(図11(A)anti-CCR2)。MAHブロットでは、特にSiglec-9の主要な標的であるα2−3結合シアル酸を含む糖鎖を認識した。さらに、分子量が大きいCCR2タンパク質のみがMAHによって検出され、シアリダーゼ処理によりMAHは強く減少した(図11(A)MAH-blot)。分子量の大きいシアル化CCR2は、ED-Siglec-9-FcとのTHP−1溶解沈殿物にのみ検出された(図11(A)CCR2-blot)。また、シアリダーゼを用いたTHP−1溶解液の前処理は、CCR2およびED-Siglec-9間の物理的相互作用を阻害した(図11(A)CCR2-blot(シアリダーゼ+))。ED-Siglec-9及びCCR2の物理的な相互作用は、α2−3結合シアル酸を含むシアル化されたCCR2に依存していた。
CSPG処理したネイティブミクログリアでは、異なる分子量のCCR2の発現を増加させた(図11(B))。CSPGがCCR2の発現の増大によって少なくとも部分的にM2の誘導に寄与していた。さらに、ネイティブミクログリアにおいても、分子量がより大きいシアル化CCR2がED-Siglec-9とミクログリア溶解沈殿物中において見出された。ED-Siglec-9が物理的にマウスミクログリアシアル化CCR2と相互作用すること示した(図11(C))。
(急性肺傷害(間質性肺炎)への適用)
本実施例では、MCP−1とED−Siglec−9の投与によって急性肺傷害で生じる炎症および線維化が抑制されることを見出した。
(急性肺傷害モデルマウス)
肺胞上皮細胞に障害をもたらすBleomycin(BLM)を3mg/mlの割合でPBSに溶解しBLMのPBS溶液を調製した。この溶液をC57Bl/6Jマウス(7〜9週齢)に6U/kgの量気管内投与を行い、24時間後にベロクロラ音を聴取して肺傷害が起こっていることを確認した。
MCP−1とED−Siglec−9のリコンビナントタンパク質の各1μg/ml濃度のPBS溶液を肺傷害発生後24時間のモデルマウスに対して頸静脈から静脈内投与し、その後の病態を観察した。MCP−1とED−Siglec−9の投与群と非投与(PBS投与)群に関し、生存率及び体重の変化を図12に示す。
(9日間の体重率および14日間の生存率評価)
図12に示すように、PBS投与群では、BLM溶液(6U/kg)が気管内投与されて肺傷害が引き起こされたC57Bl/6Jマウスは、9日間の体重率は70%(n=10)に低下し、14日間の生存率は約40%(n=10)に低下することを確認した。
一方、MCP−1とED−Siglec−9の投与群では、9日間の体重率は約80%(n=15)に留まり、14日間の生存率は約80%(n=15)であり、肺傷害が軽減されていることを確認した。
(肺傷害モデルにおける病理学的解析)
肺傷害患者の肺では線維化の進行と、肺胞構造の破壊を認める。BLMにより傷害されたモデルマウスの肺も同様の構造変化を示すため、その構造変化と膠原線維の増殖をHE染色およびマッソントリクローム(MT)染色にて評価した。結果を図13に示す。
図13に示すように、BLM投与後7日目の非投与群では著しい線維化と肺胞構造の破壊を認めたが、それと比較して、MCP−1とED−Siglec−9の投与群では線維化が抑制され、より正常像に近い肺胞構造を示していた(n=5)。
以上の結果から、MCP−1とED−Siglec−9との投与は、肺における炎症性疾患に起因する組織障害に対しても修復活性を有し、その結果、肺線維症などの肺炎症性疾患や急性の肺疾患の治療や予防に有効であることがわかった。
(肝硬変(慢性肝炎)への適用)
本実施例では、MCP−1とED−Siglec−9の投与によって肝硬変、慢性肝炎が寛解することを見いだした。
(肝硬変モデルマウスの作製)
四塩化炭素(CCl4)を1.0ml/kgの割合でオリーブオイルに溶解し肝障害を誘発する薬剤を作製した。この溶液をC57BL6 mice(20〜25g)に、1週間に2回、4週連続腹腔内投与し、肝硬変モデルマウスを作製した。このモデルマウスに対して、リコンビナントタンパクED−Siglec−9及びMCP−1をPBSに1μg/mlの濃度で溶解し、混合溶液を調製した。この混合溶液を最終のCCl4溶液を投与(CCl4投与開始から1ヶ月)してから24時間後に、500μlを1回静脈内投与し、病態改善を検証した。
(肝硬変モデルにおける病理学的解析)
肝硬変、慢性肝炎患者の肝臓では、肝細胞死、炎症性細胞浸潤及び広範に不可逆性の線維性組織の増殖が認められる。ED−Siglec−9及びMCP−1投与群と非投与(PBS投与)群について組織解析(ED−Siglec−9及びMCP−1投与から3日後)を行った。HE染色結果及びシリウスレッド染色(赤染色:コラーゲンIの染色)結果をそれぞれ図14及び図15に示す。
図14に示すように、Shamは正常肝臓組織を呈しているが、Pre−treatment(ED−Siglec−9/MCP−1投与直前)の組織においては、多くの肝臓細胞死及びディッセ腔における線維化の亢進が観察された。一方、PBS投与群においては、激しい細胞浸潤と著しい線維化が観察されたが、ED−Siglec−9/MCP−1投与群は正常肝像に近い組織像を呈していた。
また、図15に示すように、シリウスレッド染色の結果からは、Pre−treatmentとPBS投与群で激しい線維化を確認した。一方、ED−Siglec−9/MCP−1投与群ではほとんど線維化が確認できなかった。
(肝硬変及び慢性肝炎モデルにおける遺伝子解析)
ED−Siglec−9/MCP−1投与後3日の肝臓組織からRNAを採取し、炎症性サイトカインなどの遺伝子発現を定量的PCR法にて解析した。結果を図16及び図17に示す。
図16に示すように、PBS投与群では炎症促進型M1マクロファージが産生するTNF-αの発現が上昇していたのに対して、ED−Siglec−9/MCP−1投与群でTNF−αの発現は抑制されている。一方、抗炎症性M2マクロファージマーカーYm−1,CD206,Arginase−1の発現が上昇していた。
また、図17に示すように、PBS投与群では活性化した肝星状細胞hepatic stellate cellsが産生するα-Smooth muscle actin(α−SMA), Collagen α1の発現が上昇していた。これに対して、ED−Siglec−9/MCP−1投与群では、α−SMAの発現が抑制された。一方、線維化溶解に関わるマトリックスメタロプロテアーゼ−9(MMP−9)やIGF−1,HGFなどの肝再生に関わる因子の発現レベルの上昇が観察できた。
(活性化hepatic stellate cellsのマーカーであるα-SMAの染色)
ED−Siglec−9及びMCP−1投与群と非投与(PBS投与)群から採取した肝臓組織に関しα−SMAの染色を行った。結果を図18に示す。
図18に示すように、ED−Siglec−9/MCP−1投与群では、α−SMA陽性細胞数が激減していた。
以上のことから、ED−Siglec−9及びMCP−1を肝硬変に至る肝臓に投与することで、肝硬変に特徴的な肝細胞死、炎症性細胞浸潤及び不可逆性の線維性組織の増殖を抑制できることがわかった。
本実施例では、ED−Siglec−9の静注により自己免疫性関節炎が劇的に改善されることを見いだし、その作用点は自己免疫系そのものにあることが考えられた。
(コラーゲン誘発関節炎モデルマウスを用いた治療有用性の解析)
(コラーゲン誘発関節炎モデルマウスの作製)
コラーゲン誘発関節炎マウスは、関節リウマチの主要な動物モデルとして用いられている。DBA/1Jマウスの尾底部に、異種動物である牛由来の2型コラーゲンを皮下注射、更に21日後に再注射することにより、コラーゲン誘発性関節炎を発症させた。関節炎の重症度は関節炎スコアを用いて評価した。図19に示すスコアリングシステムを用いて、各群の平均関節炎スコアを算出した。また各マウスで関節炎スコア1以上を、関節炎発症と定義した。
(1)コラーゲン誘発性関節炎(CIA)マウスにおける、ED−Siglec−9投与による関節炎抑制効果の解析
まず、最適なED−Siglec−9投与量を決定するために、コントロール群(生食)とED−Siglec−9群(0.1μg、1μg、10μg/マウス)の4群(各n=7)で検討を行った。2回目コラーゲン投与の2日後、頚静脈より生食または各濃度のED−Siglec−9を投与し、その7日後の関節炎スコアを評価した。結果を図20に示す。
図20に示すように、ED−Siglec−9の0.1および10μg群では、コントロール群と有意な違いを認めなかったのに対して、1μg投与群では、コントロール群と比較して有意に関節炎スコアが抑制された。同時に、関節リウマチにおける主要な炎症性サイトカインであるTNF−αの血清中濃度を測定したところ、1μg群ではコントロール群と比較して有意に抑制されていた。
次いでED−Siglec−9の繰り返し投与による、長期間の関節炎抑制効果について検討した。ED−Siglec−9の投与量は、1μgとした。2回目コラーゲン投与の2日後から、7日に1回の頻度で、頚静脈より生食またはED−Siglec−9を投与した。関節炎スコアの評価結果を図21に示す。
図21に示すように、最終評価時において、コントロール群では関節炎発症率が100%に達していたのに対して、ED−Siglec−9投与群では発症率40%と有意に抑制されていた。また関節炎スコアについても、コントロール群では平均4.33であったのに対して、ED−Siglec−9群では1.4と有意に抑制されていた。同時に、ED−Siglec−9投与群及びコントロール群について、血清TNF−α濃度と関節炎スコアの相関を検討したところ、相関係数(R)が0.837と非常に強い有意な正の相関関係を示した。
(マウス・マクロファージ、ヒト関節リウマチ由来滑膜線維芽細胞におけるED−Siglec−9による遺伝子発現変化)
ED−Siglec−9のin vivo(CIAマウス)における関節炎抑制効果の作用機序を、in vitroで検討した。関節リウマチでは、活性化された免疫細胞(マクロファージなど)により分泌される炎症性サイトカイン(TNF−α等)が滑膜細胞を刺激し、活性化された滑膜細胞が蛋白分解酵素(MMP−3等)を分泌して最終的に骨軟骨破壊を引き起こす。ED−Siglec−9の作用点が免疫系にあるのか、それとも炎症の主座である滑膜にあるのかを探るため、マクロファージ(自己免疫疾患における中心的免疫細胞の一つ)と、関節炎の主座である滑膜細胞を用いて実験を行った。
DBA/1Jマウスの腹腔内よりマクロファージを単離(n=4)した。ED−Siglec−9(5−20ng/ml)で1時間前処置、LPS(0.2μg/ml)で12時間刺激後、mRNAを抽出しreal−timePCR法にて遺伝子発現を測定した。結果を図22(A)に示す。
図22(A)に示すように、ED−Siglec−9は、LPS刺激によるTNF−α(関節リウマチにおける代表的な炎症性サイトカイン)の発現亢進を、用量依存的に抑制する傾向を示した。
次いで、関節リウマチ患者の、人工膝関節置換術施行時に採取した滑膜組織から酵素的に単離した、滑膜線維芽細胞(FLS)を用いて実験を行った(n=3)。滑膜線維芽細胞を48時間前培養、ED−Siglec−9(50ng/ml)の存在/非存在下において、TNF−α(10mg/ml)で12時間刺激後、mRNAを抽出しreal−timePCR法にて遺伝子発現を測定した。結果を図22(B)に示す。
図22(B)に示すように、ED−Siglec−9はヒト関節リウマチ由来滑膜線維芽細胞において、TNF−α刺激によるMMP−3(滑膜炎で産生される代表的蛋白分解酵素)発現亢進に対して、明らかな抑制効果を示さなかった。
以上の結果からED−Siglec−9のCIAマウスに対する作用点は、滑膜炎局所に対する抗炎症作用ではなく、自己免疫性関節炎の発症と進展の本体である、自己免疫系そのものであることが示唆された。
炎症性/組織破壊型M1−マクロファージおよび抗炎症性/組織再生型M2−マクロファージのバランスが組織再生環境の構築に重要な役割を果たしていることが明らかになってきた。急性および慢性炎症では無秩序なM1−マクロファージの活性化が組織損傷の拡大や線維化を促進し組織修復を妨げる。一方、抗炎症性M2−マクロファージは血管再生を促進、死細胞の貪食、生体内幹細胞の増殖や集積を促すことで組織修復を促す。しかしながら、生体のM2誘導能は限られており、ほとんどの組織破壊環境がM1優位である。ED−Siglec−9及びMCP−1がM1優位な組織破壊的炎症環境を抗炎症・組織再生環境に変換することを見出した。
(ラット頭蓋骨欠損モデル:形態学的解析)
全身および局所麻酔下にて7週齢SDラットの頭頂部皮膚を骨膜とともに剥離し、直径5mmの骨採取用トレフィンバーにて注水下で頭蓋骨を削除し、骨欠損を形成した。このとき骨膜は温存した。ED−Siglec−9及びMCP−1各100ng)をPBSに溶解し、アテロコラーゲンをスキャフォールドとして骨欠損部に留置し、皮膚を復位して縫合、閉創した。術後6週で、μCT、組織学的評価(H−E染色)を行った。結果を図23に示す。
図23に示すように、ED−Siglec−9/MCP−1をラット頭蓋骨欠損モデルに投与し、術後6週間で著明な骨再生効果を、組織学的にもCT上でも確認できた。以上の結果から、ED−Siglec−9/MCP−1は骨再生促進因子製剤として臨床応用が可能であることが明らかとなった。
本実施例では、グルコース応答性インスリン分泌実験を行った。MIN6(1×106/well)を90%コンフルエントになるまで培養し、DMEM(無血清の培養液)で3回洗浄した。培養液をそれぞれSHED−CM,SHED−CM+各種抗体の添加(抗ヒトIgG:1/500,抗ヒトED−Siglec−9抗体:1/500,抗MCP−1抗体1/500,抗ヒトED−Siglec−9抗体:1/500+抗MCP−1抗体:1/500)に交換し、6時間培養を行った。その後、低グルコースKRB緩衝液(2.5mM)で30分間スタベーションを行った後、低グルコースKRB緩衝液2.5mM)および高グルコースKRB緩衝液(16.7mM)で30分間刺激を行った。刺激後の上清を回収し、上清を回収した後、acid ethanol法にてインスリン含有量を回収した。HTRF(商標)法を用いて、上清中のインスリン量(release)および上清回収後のインスリン含有量(content)を測定し、release/content(%)にてインスリン分泌能の比較検討を行った。結果を図24に示す。
図24に示すように、中和抗体にて因子をブロックしたところ、抗ED−Siglec−9、抗MCP−1及び抗MIX(ED−Siglec−9+MCP−1)では、SHED-CMに比べ、有意にインスリン分泌能が低下していた。コントロールであるIgGでは、インスリン分泌能が低下していないことから、ED−Siglec−9及びMCP−1は膵β細胞に対してインスリン分泌に関与していることがわかった。
(ヒト脱落乳歯歯髄幹細胞培養上清(SHED−CM)の調製)
10cmdishを用いてDMEM(SIGMA ALORICH Co.USA)+10%FBS(SIGMA ALORICH Co USA)+1%Penicillin Streptomycin(Life Technologies Japan Ltd)でヒト脱落乳歯歯髄幹細胞を培養し、80〜90%confulになるまで培養を行う。PBSで2回洗浄した後に、無血清培養液(DMEM)に変更し、48時間培養を行った。上清を回収し、1500rpmで4〜5分、3000rpmで5分遠心分離し、その上清を、歯髄幹細胞培養上清として以下の実施例に使用した。
(劇症肝炎モデルを用いた歯髄幹細胞の治療有用性の解析)
(1)劇症肝炎モデルラットの作製
著しい肝障害を誘発する、D−ガラクトサミン(D-galactosamine)溶液をPBS/NaOH溶液に溶解し作製した。この溶液をSprague−Dawleyラット(200〜250g)に、D−ガラクトサミン1.2g/kg(ラット体重)となるように腹腔内投与した。投与から24時間後に採血を行ってAST及びALTを測定し、著しい肝障害が誘発(劇症肝炎)されていることを確認した。その後、実施例8で調製した歯髄幹細胞培養上清(無血清)(SHED-CM)1mlを頸静脈から投与し、病態改善を検証した。また、脂肪幹細胞及び骨髄幹細胞の無血清培養上清1mlも比較例として頸静脈から静注した。さらに、対照としてDMEM1mlを劇症肝炎の発症後24時間のラット(ガラクトサミンの投与から24時間後)に頸静脈から静注した。
(2)1週間生存率の判定、血液検査による肝障害の評価
1週間生存率の判定、血液検査による肝障害の評価をそれぞれ図25及び図26に示す。Sprague−Dawley rat(200〜250g)腹腔内に、著しい肝障害を誘発するD−galactosamine溶液を1.2g/kgの割合で投与した。図25に示すように、DMEM投与群では一週間生存率が30%以下に低下した(n=10)。これに対して、歯髄幹細胞無血清培養上清の投与群は劇的に病態が改善され、1週間生存率は90%であった。脂肪幹細胞無血清培養上清の投与群及び/又は骨髄幹細胞無血清培養上清投与群ではそれほど病態改善効果が得られなかった(それぞれ50%及び44%)。
また、図26に示すように、DMEM投与群では、血中AST及びALTがそれぞれ約8000U/L及び約8000U/Lであったのに対し、歯髄幹細胞無血清培養上清投与群では、いずれも約1000U/Lとなった。また、脂肪幹細胞無血清培養上清投与群及び脂肪幹細胞無血清培養上清投与群では、いずれも約4000U/L及び/又は約5000U/Lであった。これらの結果は、図25に示す生存率の結果を支持するものであった。なお、細胞傷害の示標値はAST=6000U/L、ALT=4000U/Lであった。
(3)劇症肝炎モデルにおける病理学的解析
劇症肝炎患者の肝臓では、広範な肝細胞死と肝細胞再生不全が認められる。本モデルラットにおいても、これらの発現を解析することにより、病態を評価した。すなわち、肝細胞死を、HE 染色、及び TUNEL 染色、肝細胞再生は、Ki-67 染色を用いて評価した。TUNEL 染色結果を図27に示す。
図27に示すように、DMEM投与群では激しい空砲変性や、多くのTunel陽性細胞(全肝臓細胞中20%)を検出した。歯髄幹細胞の無血清培養上清(CM)投与後12時間の組織像は正常肝組織様であった。Tunel陽性細胞数も著しく低下していた。これらの結果は、図25及び図26に示す結果を支持していた。
(4)劇症症肝炎モデルにおける遺伝子解析
劇症性炎症反応では、炎症性組織破壊型 M1マクロファージと抗炎症組織再生型M2マクロファージが肝組織損傷に重要な役割を果たす。M1マクロファージは、炎症性サイトカイン(TNF−α、IL−1β、IL−6)の遺伝子発現や、活性化酸素の産生(iNOS)を亢進する。M2マクロファージは、死細胞のセンサー:マンノースレセプターCD206、フリーラジカル合成阻害因子Arginase、抗炎症性サイトカイン(IL−10、TGF−b)を大量に発現する。本モデルラットにおいても、これらの因子の産生量を定量的RT−PCRで解析することにより、病態を評価した。これらの結果を図28に示す。定量的RT−PCRに用いたプライマーは、表2に示す。
図28に示すように、DMEM投与群では、M1マクロファージ由来の各種の炎症性サイトカインの発現が上昇することがわかった。これに対して、歯髄幹細胞無血清培養上清投与群では、M1マクロファージ由来の炎症性サイトカインの発現が抑制され、M2マクロファージ由来の各種の抗炎症性サイトカイン(TGF−β、CD206、ArginaseI及びIL−10)の発現が上昇することがわかった。
(5)劇症肝炎モデルにおけるCD206免疫染色結果
図29には、歯髄幹細胞無血清培養上清投与群の及び対照群の劇症肝炎モデルの組織におけるCD206染色結果を示す。図29に示すように、歯髄幹細胞無血清培養上清投与群では、CD206の発現が顕著であり、M2マクロファージの発現が明らかであった。
本実施例では、肺線維症モデル動物を用いた歯髄幹細胞の治療有用性について解析した。
(1)肺線維症モデルマウスの作製
著しい肺障害を誘発する塩酸ブレオマシン溶液を6U/kgの割合で生理食塩水に溶解し作製した。その溶液をメスのC57BL/6J mouse(6〜8週齡、17〜20g)に、気管内投与した。それから24時間後に、ベロクロラ音の聴取から肺障害が誘発されていることを確認した後、実施例8で調製したヒト歯髄幹細胞由来無血清培養上清、骨髄幹細胞無血清培養上清及びDMEM500μlの各薬剤を頚静脈から静脈内投与し、病態改善を検証した。体重測定結果を図30に示し、生存率を図31に示す。
(2)肺線維症モデルマウスの生存率、体重による肺障害の評価
図30及び図31に示すように、塩酸ブレオマシン溶液をメスのC57BL/6J mouse(17〜20g)に、気管内投与すると著しい肺障害が引き起こされ、14日間の生存率が33%に低下し、9日間の体重率が66%まで低下することを確認した。
(3)生存率、体重による歯髄幹細胞無血清培養上清の治療効果の解析
図30及び図31に示すように、歯髄幹細胞由来無血清培養上清の静注群においてのみ劇的に病態が改善された。14日間生存率は79.4%となり、体重率の減少は78.5%に抑えられた。一方で、骨髄幹細胞由来無血清培養上清や無血清培地(DMEM)投与群では病態改善効果が得られなかった。骨髄幹細胞由来無血清培養上清投与群の生存率は50%、体重率の減少は71.7%。DMEM投与群の生存率は33.3%、体重率の減少は66%であった。
(4)肺線維症モデルマウスにおける病理学的解析
急性肺疾患患者の肺では、肺の支持組織(間質)の、炎症による広範な肥厚が認められる。本モデルマウスにおいても、これらを観察することにより、病態を評価した。肺組織の線維化は、HE染色および結合組織の特異的染色法であるマッソントリクローム(MT)染色により評価を行った。結果を図32に示す。
図32に示すように、DMEM投与群ではHE染色およびMT染色で間質の広範な肥厚を認め、MT染色では線維化面積の著しい増加を認めた。歯髄幹細胞由来無血清培養上清投与後24時間の組織像は正常肺組織様であった。
(5)肺線維症モデルマウスにおける免疫組織学的解析
劇症性炎症反応では、抗炎症・組織再生型M2マクロファージが肺組織の修復に重要な役割を果たす。そこで、急性肺障害の誘発後48時間において、歯髄幹細胞由来無血清培養上清投与群とDMEM群とについて、免疫染色によりM2マクロファージのマーカーであるマンノースレセプターCD206を測定した。結果を図33に示す。
図33に示すように、歯髄幹細胞無血清培養上清投与群では、DMEM投与群に比較し、CD206陽性細胞が顕著に増加していることを確認した。
本実施例では、肝硬変に対する歯髄幹細胞培養上清投与の治療有用性について解析した。
(1)肝硬変モデルマウスの作製
四塩化炭素(CCl)を1.0ml/kgの割合でオリーブオイルに溶解し肝障害を誘発する薬剤を作製したその溶液をC57BL6マウス(20〜25g)に、1週間に2回、4週連続腹腔内投与し、肝硬変モデルマウスを作製した。その後、実施例8で調製した歯髄幹細胞培養上清(無血清)(SHED−CM)を最終の四塩化炭素溶液を投与(四塩化炭素投与開始から1ヶ月)してから24時間後に、1回、500μl静脈内投与し、病態改善を検証した。対照としてDMEMを同様に投与した。
(2)肝硬変モデルにおける病理学的解析
肝硬変、慢性肝炎患者の肝臓では、肝細胞死、炎症性細胞浸潤、及び広範に不可逆性の線維性組織の増殖が認められる。そこで、SHED−CM投与後3日後の組織解析を行った。結果を図34及び図35に示す。
図34に示すように、HE染色によれば、Shamでは正常肝臓組織が観察されたが、Pre−treatment(SHED−CM投与直前)では、多くの肝臓細胞死が観察されるとともに、ディッセ腔における線維化の亢進が観察された。また、DMEM投与群では、激しい細胞浸潤と著しい線維化が観察された。これに対し、SHED−CM投与群は正常肝像に近いことがわかった。
また、図35に示すように、シリウスレッド染色(赤染色:繊維素の染色)によれば、Pre−treatmentとDMEM投与群で激しい線維化を確認した。一方、SHED−CM投与群ではほとんど線維化が確認できなかった。
(3)肝硬変、慢性肝炎モデルにおける遺伝子解析
DMEM,SHED−CM投与後3日の肝臓組織からRNAを採取し、炎症性サイトカインなどの遺伝子発現を定量的PCR法にて解析した。結果を図36及び図37に示す。
図36に示すように、DMEM投与群では炎症促進型M1マクロファージが産生するTNF-αの発現が上昇していたのに対して、SHED−CM投与群では抗炎症性M2マクロファージマーカー、CD206、Arginase−1の発現が上昇していた。
また、図37に示すように、DMEM投与群では活性化した肝星状細胞が産生するα−Smooth muscle actin(α−SMA)、Collagen α1の発現が上昇していた、一方、SHED−CM投与群では線維化溶解に関わるマトリックスメタロプロテアーゼ−9(MMP−9)やIGF−1、HGFなどの肝再生に関わる因子の発現レベルの上昇が観察できた。
また、図38に示すように、活性化肝星状細胞のマーカーであるα−SMAの染色結果によれば、SHED−CM投与群ではα−SMA陽性細胞数が激減していた。活性化肝星状細胞の数が、SHED−CM投与群で著しく低下することが明らかとなった。
本実施例は、虚血性心疾患に対する歯髄幹細胞培養上清投与の有用性について解析した。
(1)心筋虚血再灌流モデルマウスの作製
8〜12週齢の雄性のC57BL6/Jマウスをペントバルビタール(50mg/kg体重)の腹腔内投与で全身麻酔し、仰臥位で四肢を固定の上、22Gテフロンチューブを気管内挿管し、小動物用人工呼吸器に接続した(呼吸回数150回/分、換気量0.2mL/回)。左第3肋間で開胸を行い、実体顕微鏡下に左冠動脈前下行枝(LAD)をナイロン糸で結紮した。30分後にナイロン糸を解き血流を再灌流させた。
(2)SHED−CM投与
再灌流時に頸静脈より、実施例8で調製したSHED−CM500μLを単回投与した。対照群にはDMEM500μLを投与した。
(3)梗塞域の評価
再灌流24時間後、再度LADを結紮し、エバンスブルー液1mLを灌流した。心臓を摘出し、横断切片を作製し2,3,5-triphanyl tetrazolium chloride(TTC)液と20分間反応させた。これにより左室(LV)、危険域(AAR)、梗塞域(IA)を区別し、画像解析ソフトを用いて各面積を定量した。結果を図39に示す。
図39に示すように、SHED−CM投与群および対照群で、左室に占める危険域の割合(AAR/LV)は同等であることを確認した。SHED−CM群では対照群と比較し、危険域に占める梗塞域(IA/AAR)、一方、左室に占める梗塞域(IA/LV)の割合はいずれも有意に低下していることが明らかになった。
(4)血中心筋トロポニン値の評価
再灌流24時間後マウスより全血を採取し、心組織破壊のマーカーとして用いられる血漿中の心筋トロポニンI値をELISA法で測定した。結果を図40に示す。図40に示すように、モデルマウス血漿中の心筋トロポニンの値はSHED−CM群で対照群と比較し低下する傾向が明らかとなった。
(5)組織中炎症性サイトカインの評価
再灌流24時間後に摘出した心臓の虚血部よりRNAを抽出した。組織中の炎症性サイトカイン(TNF−α、IL−1β、IL−6)の遺伝子発現をリアルタイム定量PCR法で評価した。結果を図41に示す。図41に示すように、心組織中の炎症性サイトカインの遺伝子発現は、TNF−α、IL−1β、IL−6のいずれにおいてもSHED−CM投与群で抑制される傾向が明らかとなった。
以上の結果から、SHED−CMは急性心筋梗塞発症後投与されると、速やかに発症した炎症を抑制することにより梗塞域を縮小させる効果を持つことがわかった。
本実施例では、多発性硬化症に対する歯髄幹細胞培養上清投与の有用性について解析した。
(1)多発性硬化症の動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)マウスの作製
C57BL/6Jマウス8週齢メスに対して、200μgのMOG35-55 蛋白を完全フロイントアジュバントとともにマウス腰背部に皮下注射し免疫した。400ngの百日咳毒素を0、2日目に腹腔内注射して、EAEマウスを作製した。
(2)SHED−CM投与
マウスの麻痺の状態はEAE臨床スコアを用いて毎日観察した。症状がピークである免疫後14日目に、マウス尾静脈より実施例8で調製したSHED−CMを500μl、コントロール群にはDMEMを500μl投与し、以後28日目までEAE臨床スコアを用いて麻痺の状態を確認した。また、28日目にマウスを屠殺し、組織解析を行った。
(3)EAE臨床スコアによる麻痺の状態評価
EAE臨床スコアは、0:正常、1:尾の下垂、2:後肢の衰弱、3:後肢の不完全麻痺、4:前肢の衰弱、後肢の完全麻痺、5:四肢麻痺として評価した。結果を図42に示す。図42に示すように、SHED−CM投与群では免疫後19日目以降に、有意な麻痺の改善を認めた。
(4)組織評価
組織評価は、HE染色、KB染色、Sudan Black染色、また免疫染色(CD3:T細胞)を行なった。結果を図43及び図44に示す。図43に示すように、KB染色、Sudan black染色ではSHED−CM投与群にコントロール群と比較して脱髄範囲の減少、また浸潤細胞の減少が認められた。HE染色でもまた浸潤細胞の減少が認められた。さらに、図44に示すように、免疫染色では、SHED−CM投与群で浸潤するT細胞の数に減少を認めた。
以上の結果から、SHED−CMは、炎症性自己免疫疾患においてその状況を改善できることがわかった。
本実施例では、ヒト全身性エリテマトーデス(SLE)に対する歯髄幹細胞培養上清投与の有用性について解析した。
(1)ヒトSLE多発性硬化症の動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(SLE)マウスの作製
ヒトSLEモデルマウスであるMRL−lpr/lprマウスを用い、15週齢の時点において、ヒトSLEの臨床マーカーである末梢血血清での抗ds−DNA IgG抗体量をELISAにて測定し、SLE症状が十分に発症していることを確認した。
(2)SHED−CM投与
16週齢において、外頸静脈より実施例8で調製したSHED−CMを1匹あたり500μl注入した。そして、20週齢に到達した時点でトサツし、腎臓、脾臓、腋下リンパ節、尿、末梢血血清を採取した。
(3)免疫抑制作用の評価
歯髄幹細胞培養上清による免役抑制作用の評価を、末梢血血清における抗ds-DNA IgG抗体量、腎臓をホモジナイズして得られたライセートにおける免疫複合体量をELISAにて定量して行った。また、脾臓は重量を計測し、(Ito T, Seo N, Yagi H, et al: Unique therapeutic effects of the Japanese-Chinese herbal medicine, Sairei-to, on Th1/Th2 cytokines balance of the autoimmunity of MRL/lpr mice. J Dermatol Sci. 28: 198-210. 2002)と同様にSIを作成し脾腫の程度を観察した。また、腎臓HE染色を行うとともに、採取した尿中に含まれるタンパク量を計測し腎機能の変化を観察した。
脾臓における脾腫及び脾臓重量について図45及び図46に示す。これらの図に示すように、脾臓では症状の悪化に伴い脾腫を認めるが、DMEM群と比較してSHED−CM投与群では脾臓重量、脾臓の大きさともに正常脾臓に近く、脾腫の抑制傾向を認めた。
得られた組織切片にHE染色結果を図47に示す。図47に示すように、腎炎にともなって細胞の増殖を認めるが、DMEM投与群と比較して、SHED−CM投与群では糸球体の形状が正常糸球体に類似しており、腎炎の改善傾向を認めた。
さらに、末梢血血清を用いて血中抗ds−DNAIgG抗体をELISAで計測した結果を図48に示す。図48に示すように、DMEM投与群と比較してSHED−CM投与群では血中抗ds−DNAIgG抗体の減少傾向を認めた。
以上のことから、SLEに対してSHED−CM投与が有用であることがわかった。
本実施例では、関節リウマチに対する歯髄幹細胞培養上清投与の有用性について解析した。
(1)コラーゲン抗体誘導性関節炎モデルマウスの作製
8週齢の雄性DBA/1Jマウスに関節炎惹起用抗体を腹腔内投与することで関節炎を惹起した。3日後にLPSを腹腔内投与することで、関節炎が増悪された。抗体投与後、7〜10日で炎症はピークに達した。
(2)SHED−CMの投与
抗体投与後、5日目に尾静脈より実施例8で調製したSHED−CM500μlを単回投与した。対照群にはDMEM500μlを単回投与した。
(3)関節炎スコア評価
抗体投与日より14日目まで、四肢の関節炎スコアを測定した。指、甲、足首の3つの部位を観察し、それぞれで腫脹が認められた関節数をスコアとした(スコア1〜3)。さらに、3つの部位全てで非常に重篤な腫脹を認めた場合をスコア4とした。四肢についてこれらを観察し、マウス1個体あたりスコア16を最高点とした。結果を図49に示す。
図49に示すように、SHED−CM投与群では、対照群に比較して、有意に関節炎スコアが低下していることが明らかとなった。
(4)後肢の厚さ(hind paw thickness)の評価
抗体投与日より14日目まで、hind paw thicknessを測定した。マウスの両後肢の甲部分の厚さをデジタルノギスにより測定し、それらの平均値をマウス1個体のhind paw thicknessとした。抗体投与日のhind paw thicknessとの差をとり、その増加量を評価した。結果を図50に示す。図50に示すように、SHED−CM投与群では、対照群に比較して、有意にhind paw thicknessの増加が抑えられており、関節炎による後肢の腫脹を抑制していることが明らかとなった。
(5)組織学的評価
抗体投与日より14日目に屠殺したマウスの足首より組織切片を作製し、HE染色、トルイジンブルー染色を行い、組織学的な変化を評価した。関節部への炎症細胞浸潤、滑膜組織の過形成、関節面の骨破壊の程度を評価し、スコアリングを行った。最高スコア6点とした。結果を図51〜図53に示す。図51〜図53に示すように、SHED−CM投与群では、対照群に比較して、有意に組織学的スコアが低下しており、関節部の炎症細胞浸潤および組織破壊を抑制していることが明らかとなった。
(6)組織中の炎症性サイトカイン、組織破壊因子の遺伝子発現評価
抗体投与日より7日目に屠殺したマウスの四肢よりRNAを抽出し、リアルタイム定量PCR法で、炎症性サイトカイン(TNF−α、IL−1β、IL−6)、組織破壊因子(MMP3)の遺伝子発現を評価した。結果を図54に示す。
図54に示すように、組織中の炎症性サイトカイン、組織破壊因子の遺伝子発現は、IL−1β、IL−6、MMP3において、SHED−CM投与群で、対照群に比較して、有意に抑制されていた。TNF−αに関しては、抑制される傾向が明らかになった。
以上の結果より、SHED−CMは関節炎に対して治療効果を有することが示唆された。
以上の結果から、本組成物は、炎症性疾患の治療に共通して有用であることがわかった。
以下の実施例で用いた実験方法等について以下に記載する。
(ヒト脱落乳歯歯髄幹細胞培養上清(SHED−CM)の調製)
10cmdishを用いてDMEM(SIGMA ALORICH Co USA)+10%FBS(SIGMA ALORICH Co USA)+1%Penicillin Streptomycin(Life Technologies Japan Ltd)でヒト脱落乳歯歯髄幹細胞を培養し、80〜90%コンフルエントになるまで培養を行う。PBSで2回洗浄した後に、無血清培養液(DMEM)に変更し、48時間培養を行った。上清を回収し、1500rpmで4〜5分、3000rpmで5分遠心分離し、その上清を、SHED−CMとして以下の実施例に使用した。
(腹腔内ブドウ糖負荷試験(IPGTT)とインスリン負荷試験(ITT))
16時間絶食マウスにIPGTTは2g/kgのグルコース、ITTはヒューマリンRを2U/kgで腹腔内投与した。投与前,投与後15分,30分,60分,120分に眼窩採血を行い、血糖値測定および血中インスリン量を測定した。
血糖値測定は、全血をアントセンス(HORIBA)を用いて測定を行った。また、血中インスリン量測定は、EDTAで分離した血清をELISA法(モリナガインスリン測定キット:商品名(森永製菓))で測定した。
(単離膵臓インスリン含有量)
単離した膵臓を、KRB10ml中でホモゲナイザーを用いて撹拌させ、25%asid ethanolを投与し、一晩反応させた。遠心分離した上清をHTRF法(Homogeneous Time Resolved Fluorescense. Cibio Bioassays)を用いてインスリン含有量を測定した。
(病理組織学的検討)
単離膵島を4%PFAに4時間浸水させ、組織を固定した。病理組織学的検討は、免疫染色とHE染色で比較検討を行った。
(免疫染色)
PFA固定後、10%スクロースに8時間、20%スクロースに一晩浸水させ、OCTコンパウンドに包埋した。10μmの厚さに切片を作成し、インスリン及びグルカゴンの発現を蛍光免疫染色法を用いて比較検討を行った。
切片をPBSで3回洗浄した後に、0.3%Triton−X in PBSで2分間処理し、1%BSA+0.1%Triton−X in PBSで30分ブロッキングを行った。その後、ブロッキング溶液で1/500に希釈した1次抗体を4℃で一晩反応させた(インスリン:abcam;ab7842,glucagon:abcam;ab8055)。1次抗体反応後、PBSで3回洗浄し、蛍光標識した2次抗体Alexa Fluor(invitrogen)をブロッキング溶液で1/1000希釈し、室温で2時間反応させた。2次抗体反応後、PBSで3回洗浄し、マウントした後に、蛍光顕微鏡で観察を行った。
5枚の非連続切片を無作為に選出し、1切片あたり5視野以上観察した(1匹あたり、25視野以上)。imageJを使用し、蛍光発現した面積評価の解析を行った。
(HE染色)
PFAで固定した組織をPBS置換し(2時間、8時間及び2時間の順でPBSを交換)、パラフィン包埋器(サクラファインテックスジャパン)を用いてパラフィン包埋し、4μmの厚さに切片を作成した。切片を脱パラフィン処置(キシレン3分×3回、100%エタノール3分×3回、95%エタノール1分、90%エタノール1分、70%エタノール1分、95%エタノール1分、ミリQ水(MQ)の順で洗浄)し、×5 ヘマトキシリン液(マイヤー:MQで希釈)で5分間反応させ、MQで10分間洗浄した。その後、×5 1%エオシンY液(WAKO:70%エタノールで希釈)で2分間反応させ、MQで1回洗浄し、脱水処置(70%エタノール1分、80%エタノール1分、90%エタノール1分、100%エタノール3分×3回、キシレン3分×3回の順で)し、マウントした後に蛍光顕微鏡で観察を行った。
(核染色)
STZ負荷後、スライドガラスをPBSで3回洗浄し、スライドガラス上の細胞を4%PFAで30分固定し、PBSで3回洗浄した。洗浄後、PBSで1/2000に希釈したDAPI(Dojindo;Japan)を5分間反応させ、PBSで3回洗浄し、マウントした後に、蛍光顕微鏡で観察を行った。image Jを使用し、1視野中のnecrosis細胞数/全体の細胞数をカウントし、比較検討をおこなった。(1スライドガラスより6視野n:3)
(ウェスタンブロッティング)
STZ負荷後、PBSで3回洗浄し、50×プロテアーゼインヒビター+Cdc42ライシスバッファー400μl/wellを投与し、15分間反応させた。wellの内容物を全て回収し、4℃で15000rpmで20分間遠心分離した。遠心分離した上清30μl+1×SDS 30μlを混和させ、100℃3分間反応させたものを、サンプルとして使用した。(全てのサンプルのタンパク量:約2000μl/mlであることをBCA assay;SIGMA ALORICHを用いて確認している。)
サンプル10μlをSDSポリアミドゲルで電気泳動した後(20mA/1.5時間)、メンブレンに転写(250mA/1時間)した。Blocking one(ナカライテスク)で30分間メンブレンのブロッキングを行い、ブロッキング後、can get signal(東洋紡)で1/3000に希釈した1次抗体(caspase3:cell signaling,cleaved caspase:cell signaling)を4℃で一晩反応させ、TBS−Tで3回洗浄した。その後can get signal(東洋紡)で1/10000に希釈した2次抗体(rabit:SIGMA ADLICH)を室温で2時間反応させ、TBS−Tで3回洗浄した後、ECL−primeを用いて、蛍光発色させ、現像をおこなった。
(STZ投与による膵臓β細胞の破壊による糖尿病モデルマウスの作製及びSHED−CMの投与)
Streptozotocin(以下STZ、SIGMA ALORICH Co. USA)を生理食塩液に溶解して5mg/mlの溶液を調整し、この溶液を9〜10週齢C57Bl6/Jマウスに対し、1日1回50mg/kgを5日間腹腔内投与を行い、糖尿病モデルマウスを作成した。
STZ投与開始日をday1とし、day1より14日間SHED−CMを2ml/day尾静脈内投与を行った。Control群として、DMEM(無血清の培養液)を2ml/dayで尾静脈内投与し、またExendin−4(以下、Ex−4)群として、Ex−4を14日間48nmol/dayで腹腔内投与を行った。24時間毎に体重・随時血糖測定を行い、day15,27に腹腔内グルコース負荷試験(以下IPGTT)で血糖値および血中インスリン濃度を測定した。day34に膵臓を単離し、病理組織学的検討および膵臓のインスリン含有量を測定した。結果を図55〜図63に示す。
図55に示すように、本実施例で作製したマウスは、徐々に血糖値が高くなり、2週間後程度に最高血糖値(400mg/ml)となった。図56に示すように、SHED−CM上清を添加した群において顕著に血糖値低下効果が観察された。これに対して骨髄幹細胞培養上清投与群及びEx−4投与群は、いずれもControl群と同等の血糖値を示したにすぎなかった。なお、図57に示すように、各群の体重は、観察期間を通じてほぼ同等であった。
図58及び図59に示すように、IPGTTの結果は、SHED−CM投与群において血糖値が最も低下し、血中のインスリン濃度も高くインスリン分泌が促進されていた。また、図60に示すように、day34の膵臓中のインスリン含有量は、SHED−CM投与群において最も高かった。
図61及び図62に示すように、day34に採取した膵臓のHE染色の結果からは、SHED−CM投与群において最も良好なβ細胞の存在が多数確認された。図63に示すように、34日後の免疫染色結果からは、SHED−CM投与群においては、インスリンを生成分泌するβ細胞が充実しその周囲をα細胞が取り囲んだ組織を観察できた。これに対して骨髄幹細胞培養上清投与群やEx−4投与群では、SHED−CM投与群のような良好な組織形態を観察できなかった。
(STZ投与による膵臓β細胞の破壊による糖尿病モデルマウスの作製及びSHED−CMの投与)
STZの生理食塩溶液15mg/mlを9〜10週齢C57Bl6/Jマウスに対し、150mg/kgを1回腹腔内投与し、糖尿病モデルマウスを作製した。STZ投与開始日をday1とし、day3に血糖値400mg/dL以上であることを確認した後に、day3〜day16までSHED−CM,DMEMを各群2ml/dayで尾静脈内投与し、Ex−4を48nmol/dayで腹腔内投与を行った。24時間毎に体重・随時血糖値の測定を行い、day17,31にIPGTTで血糖値および血中インスリン濃度を測定した。day37に膵臓を単離し、膵臓のインスリン含有量を測定した。結果を図55及び図64〜66に示す。
図55に示すように、本実施例で作製したマウスは、急激に血糖値が高くなり、最高血糖値(約500〜600mg/ml)となった。図64に示すように、SHED−CM投与群では、早期に血糖値が低下傾向となり、その効果が維持された。図65に示すように、体重については、SHED−CM投与群とEx−4投与群は同様の体重減少傾向を呈した。図66に示すように、day17のIPGTTの結果からは、SHEDーCM投与群で最も血糖値抑制効果が高いことがわかった。
(高脂肪食による糖尿病モデルマウスの作製及びSHED−CMの投与)
4週齢C57Bl6/Jに36日間、高脂肪食(High Fat Diet 32:HFD)を摂食させ、体重39.5g血糖値200mg/dLまで上昇させた。その後、HFDの摂食を継続したまま、SHED−CM,DMEMを2ml/day腹腔内投与した。体重・随時血糖測定は、高脂肪食開始後から7日毎に行った。SHED−CM投与開始日をday1とし、day58にインスリン負荷試験(ITT)でインスリン抵抗性の評価を行い、day69にIPGTTで血糖値および血中インスリン濃度を測定した。結果を、図67〜71に示す。
図67に示すように、SHED−CM投与群は、Controlに対して有意に低い血糖値を維持した。図68に示すように、SHED−CM投与群とControl群との体重増加は同程度であった。図69及び図70に示すように、SHED−CM投与群のIPGTTの結果は、Control群より良好であった。図71に示すように、ITTの結果によれば、インスリン抵抗性は、SHED−CM群とControl群とはほぼ同程度であった。
(マウス膵β細胞を用いたSHED−CMの評価)
マウス膵β細胞株:MIN6(1×10/well)を90%コンフルエントになるまで培養し、DMEM(無血清の培養液)で3回洗浄した後、培養液をそれぞれSHED−CM,DMEM,DMEM+Ex−4(10nM)に交換した。なお、MIN6の培地には、DMEM(SIGMA ADLICH Co USA)+10%FBS(SIGMA ALORICH Co USA)+1%Penicillin Streptomycin(invitrogen USA)を用いた。培養液の交換と同時にSTZ(0mM,1mM,5mM)の各濃度となるように添加し、6時間培養を行った。PFAで細胞を固定した後、スライドガラス上のMIN6をDAPI染色し、蛍光顕微鏡で観察を行った。imageJを用いて、necrosis細胞数/全体の細胞数(100〜200)をカウントし、各群でのnecrosis(細胞死)の割合の評価を行った。結果を図72に示す。
図18に示すように、SHED−CM投与群では、最もnecrosisが有意に抑制されていることがわかった。
(マウス膵β細胞を用いたSHED−CMのインスリン分泌促進に対する評価)
MIN6(1×10/well)を90%コンフルエントになるまで培養し、DMEM(無血清の培養液)で3回洗浄した後、培養液をそれぞれSHED−CM,DMEM,DMEM+Ex−4(10nM)に交換した。培養液の交換と同時にSTZ(0mM,1mM,5mM)の各濃度となるように添加し、6時間培養を行った。その後、2.5mMグルコースのKRB buffer で30分間スタベーションを行った後、低グルコースKRB buffer(2.5mM)および高グルコースKRB buffer(16.7mM)で30分間刺激を行った。低グルコースと高グルコースそれぞれ刺激後の上清を回収し、上清を回収した後、asid ethanol法にて最終的にインスリン含有量を回収した。HTRF法を用いて、上清中のインスリン量(release)および上清回収後のインスリン含有量(content)を測定し、release/content(%)にてインスリン分泌能の比較検討を行った。結果を図73に示す。
図73に示すように、SHED−CM投与群では、インスリンの分泌が促進されていることがわかった。
(マウス膵β細胞を用いたSHED−CMのApoptosis促進に対する評価)
MIN6(1×10/well)を90%コンフルエントになるまで培養し、DMEM(無血清の培養液)で3回洗浄した後、培養液をそれぞれSHED−CM,DMEM,DMEM+Ex−4(10nM)に交換した。培養液の交換と同時にSTZ(0mM,1mM,5mM)を添加し、6時間培養を行った。その後MIN6のタンパク質を回収し、ウェスタンブロット法にて、カスパーゼ3、クリーブドカスパーゼ3の発現量の比較検討を行った。結果を図74に示す。
図74に示すように、SHED−CM投与群は、Control群及び骨髄幹細胞培養上清投与群よりも低いクリーブドカスパーゼ3の発現量を呈した。
以上の結果から、SHED−CMは、β細胞のnecrosis及びApoptosisを抑制し、β細胞のインスリン分泌能を促進しているものと考えられた。
(2型糖尿病モデルマウスの作製及びSHED−CMの投与)
レプチン受容体欠損マウス(自然発症型)(dbdbマウス)の13週齢(雌)に61日間、12時間毎に実施例1で調製したSHED−CM1mlを静注及び腹腔内投与した。また、コントロールとして、DMEMを同様にして静注投与した。体重・随時血糖測定は、投与開始後から5日毎に行った。SHED−CM投与開始日をday1とし、day36にグルコース負荷試験(IPGTT)で血糖値および血中インスリン濃度を測定した。また、day51にインスリン負荷試験(ITT)でインスリン抵抗性の評価を行った。結果を、図75〜80に示す。
図21に示すように、SHED−CM投与群は、Controlに対して概して低い血糖値を維持した。図22に示すように、SHED−CM投与群とControl群との体重増加は同程度であった。図23及び図24に示すように、SHED−CM投与群のIPGTTの結果は、Control群より良好であった。図25に示すように、ITTの結果によれば、インスリン抵抗性は、SHED−CM群とControl群とはほぼ同程度であった。また、図26に示すように、day61の膵臓インシュリン含有量はSHED−CM投与群において高く、SHED−CMのインスリン分泌促進効果を支持するものであった。
以上の結果から、本組成物は、糖尿病の治療に有用であることがわかった。
本実施例では、実施例8に準じて調製した歯髄幹細胞の培養上清からMCP−1及びED−Siglec−9を抗体を用いて除去して得られたdSHED−CMを用いて劇症肝炎、肺線維症及び脊髄損傷に関し、実施例9、実施例10及び実施例2と同様にして評価を行った。なお、抗体としては、ヒトMCP−1及びヒドED−Siglec−9についての市販の抗体を用いた。
(1)SHED−CM及びdSHED−CMにおけるMCP−1及びED−Siglec−9の含有量の測定
抗体処理前のSHED−CM中及び抗体処理後のMCP−1及びED−Siglec−9の含有量の測定結果を図81に示す。図81に示すように、抗体処理後のd−SHED−CMにおけるMCP−1及びED−Siglec−9は、抗体処理前にはそれぞれ所定量含まれていたにも関わらずほとんど観察されなかった。なお、対照等として、骨髄幹細胞の培養上清(BMSC−CM)、線維芽細胞の培養上清(Fibro−CM)についても測定したが、いずれも、SHED−CMに比較して少量のMCP−1及びSiglec−9を分泌生産するのみであった。またMCP−1及びED−Siglec−9を抗体処理は特異性が高いことがわかった。さらに、IL-6などCMが含有する他の因子組成には影響しないことがわかった。
(2)劇症肝炎モデルマウスへの適用
実施例9と同様に、劇症肝炎モデルマウスに対してSHED−CMに加えてdSHED−CMをそれぞれ投与してその効果を評価した。結果を図82に示す。図82に示すように、SHED−CM投与群では生存率の改善が明らかであったのに対し、dSHED−CM投与群ではほとんど生存率の改善効果を認めることができなかった。
(3)肺線維症モデルマウスへの適用
実施例10と同様に、肺線維症モデルマウスに対してSHED−CMに加えてdSHED−CMをそれぞれ投与してその効果を評価した。結果を図83に示す。図83に示すように、dSHED−CM投与群ではSHED−CM投与群に対して有意に生存率の低下を呈した。なお、図示はしないが、アッシュクロフト値についてもdSHED−CM投与群は、SHED−CM投与群より高値となり、コントロールであるDMEM投与群に近い値を呈した。
(4)脊髄損傷ラットへの適用
実施例2と同様に、脊髄損傷ラットに対してSHED−CMに加えてdSHED−CMをそれぞれ投与してその効果を評価した。結果を図84に示す。図84に示すように、dSHED−CM投与群ではSHED−CMに対して有意に損傷修復が抑制されていることがわかった。
配列番号7〜36:プライマー

Claims (21)

  1. 幹細胞の培養上清の評価方法であって、
    幹細胞の培養上清中の以下の成分;
    単球走化性促進因子−1(MCP−1)である第1の成分、及び、
    シアル酸結合イムノグロブリン様レクチン−9(Siglec−9)の細胞外ドメインである第2の成分
    を測定する測定工程、
    を備える、評価方法。
  2. 前記第1の成分は、配列番号2で表されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の評価方法。
  3. 前記第2の成分は、配列番号4で表されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項1または2に記載の評価方法。
  4. コンドロイチン硫酸及びコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの少なくとも一種である第3の成分を測定する工程をさらに含む、請求項1〜3のいずれかに記載の評価方法。
  5. 前記測定工程は、測定しようとする成分に特異的な抗体を用いて前記成分を測定する工程である、請求項1〜4のいずれかに記載の評価方法。
  6. 前記幹細胞は歯髄幹細胞である、請求項1〜5のいずれかに記載の評価方法。
  7. 幹細胞の培養上清のスクリーニング方法であって、
    スクリーニング対象である幹細胞の培養上清中の以下の成分;
    単球走化性促進因子−1(MCP−1)である第1の成分、及び、
    シアル酸結合イムノグロブリン様レクチン−9(Siglec−9)の細胞外ドメインである第2の成分
    を測定する測定工程、
    を備える、スクリーニング方法。
  8. コンドロイチン硫酸及びコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの少なくとも一種である第3の成分を測定する工程をさらに含む、請求項7に記載のスクリーニング方法。
  9. 医薬組成物のスクリーニング方法であって、
    スクリーニング対象が幹細胞の培養上清であり、前記培養上清中の以下の成分;
    単球走化性促進因子−1(MCP−1)である第1の成分、及び、
    シアル酸結合イムノグロブリン様レクチン−9(Siglec−9)の細胞外ドメインである第2の成分
    を測定する測定工程、
    を備える、スクリーニング方法。
  10. コンドロイチン硫酸及びコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの少なくとも一種である第3の成分を測定する工程をさらに含む、請求項9に記載のスクリーニング方法。
  11. 前記医薬組成物は、炎症性疾患の予防又は治療用である、請求項9または10に記載のスクリーニング方法。
  12. 前記医薬組成物は、糖尿病の予防又は治療用である、請求項9または10に記載のスクリーニング方法。
  13. 前記医薬組成物は、損傷組織の予防又は治療用である、請求項9または10に記載のスクリーニング方法。
  14. 幹細胞の培養上清を有効成分とする医薬組成物の品質評価方法であって、
    評価対象が幹細胞の培養上清であり、前記培養上清中の以下の成分;
    単球走化性促進因子−1(MCP−1)である第1の成分、及び、
    シアル酸結合イムノグロブリン様レクチン−9(Siglec−9)の細胞外ドメインである第2の成分
    を測定する測定工程、
    を備える、品質評価方法。
  15. コンドロイチン硫酸及びコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの少なくとも一種である第3の成分を測定する工程をさらに含む、請求項14に記載の品質評価方法。
  16. 前記医薬組成物は、炎症性疾患の予防又は治療用である、請求項14または15に記載の品質評価方法。
  17. 前記医薬組成物は、糖尿病の予防又は治療用である、請求項14または15に記載の品質評価方法。
  18. 前記医薬組成物は、損傷組織の予防又は治療用である、請求項14または15に記載の品質評価方法。
  19. 医薬組成物の生産方法であって、
    幹細胞の培養上清につき、以下の成分;
    単球走化性促進因子−1(MCP−1)である第1の成分、及び、
    シアル酸結合イムノグロブリン様レクチン−9(Siglec−9)の細胞外ドメインである第2の成分
    を測定する測定工程と、
    前記成分の測定結果に基づいて前記培養上清の品質について評価する工程と、
    前記培養上清を有効成分として医薬組成物を生産する工程、
    を備える、生産方法。
  20. 前記測定工程において、コンドロイチン硫酸及びコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの少なくとも一種である第3の成分を測定する工程をさらに含む、請求項19に記載の生産方法。
  21. 前記幹細胞が、以下の成分;
    単球走化性促進因子−1(MCP−1)である第1の成分、及び
    シアル酸結合イムノグロブリン様レクチン−9(Siglec−9)の細胞外ドメインである第2の成分
    の発現を増強するように遺伝子改変された形質転換体である、請求項19または20に記載の生産方法。
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