以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
本実施形態に係る診断装置100は、車両10の運転状態を診断するための装置である。先ず、図1を参照しながら車両10の構成について説明する。車両10は、内燃機関20とモーターMとを備えた所謂ハイブリッド車両として構成されている。
内燃機関20は、ガソリンを燃料として駆動される4サイクルレシプロエンジンである。内燃機関20は、シリンダヘッド21とシリンダブロック22とを有している。これらの内部には不図示の気筒が複数形成されている。各気筒において吸気行程、圧縮行程、燃焼行程、排気行程の各行程が繰り返し行われ、これにより車両10の走行に必要な駆動力が生じる。
モーターMは三相交流モーターである。車両10には、バッテリーと電力変換器が搭載されている(いずれも不図示)。バッテリーから出力された直流電力は、電力変換器によって三相交流電力に変換され、モーターMに供給される。モーターMに三相交流電力が供給されると、車両10の走行に必要な駆動力が生じる。当該駆動力の大きさは、電力変換器のスイッチング動作によって調整される。
車両10は、内燃機関20の駆動力、及びモーターMの駆動力の両方により走行することができる。また、内燃機関20の駆動力のみによって走行したり、モーターMの駆動力のみによって走行したりすることもできる。
車両10は、以上に説明した内燃機関20やモーターMのほか、冷却装置50と、電圧センサ60と、外気温センサ70と、報知装置80と、制御装置40と、を備えている。
冷却装置50は、運転中において多量の熱を発生させる内燃機関20を冷却し、適温に維持するための装置である。冷却装置50は、循環流路510と、ウォーターポンプ520と、ラジエータ530と、第1バイパス流路540と、第2バイパス流路541と、温度調整弁560と、を有している。
循環流路510は、内燃機関20と、後述のラジエータ530との間で冷却水を循環させるための流路である。以下では、循環流路510のうち、冷却水が内燃機関20からラジエータ530に向かって流れる流路を「第1流路511」とも表記する。また、循環流路510のうち、冷却水がラジエータ530から内燃機関20に向かって流れる流路を「第2流路512」とも表記する。
内燃機関20の内部には、内部流路210が形成されている。第2流路512を通って内燃機関20に供給された冷却水は、内部流路210を通りながら内燃機関20から熱を奪う。これにより高温となった冷却水は、内部流路210から第1流路511へと排出される。
第1流路511のうち内燃機関20寄りとなる位置には、内燃機関20から排出された直後における冷却水の温度を測定するための水温センサ570が設けられている。水温センサ570で測定された水温に基づく信号は、診断装置100及び制御装置40に入力されている。
ウォーターポンプ520は、冷却水が循環流路510を循環するように、冷却水を圧送する電動ポンプである。ウォーターポンプ520は、第2流路512のうち内燃機関20寄りとなる位置に配置されている。ウォーターポンプ520の動作は、後述の制御装置40によって制御される。また、診断装置100が、制御装置40を介してウォーターポンプ520の動作を制御することも可能となっている。
ウォーターポンプ520は、その回転数を示す信号を外部に出力する。当該信号は制御装置40に入力される。制御装置40は、ウォーターポンプ520からの信号を参照しながら、ウォーターポンプ520の動作を制御する。
ラジエータ530は、循環流路510を流れる冷却水と、車両10の外部から導入された空気とを熱交換させることにより、冷却水の温度を低下させる熱交換器である。ラジエータ530の近傍にはラジエータファン531が設けられている。ラジエータファン531は、ラジエータ530における熱交換が効率的に行われるよう、ラジエータ530に空気を送り込むためのものである。
第1バイパス流路540は、第1流路511と第2流路512とを繋ぐように形成された流路である。後述の温度調整弁560の動作によって、冷却水がラジエータ530を通ることなく、第1バイパス流路540のみを流れる状態とすることができる。また、ラジエータ530及び第1バイパス流路540の両方を冷却水が流れる状態とすることもできる。
第1バイパス流路540の途中には、ヒータコア551が設けられている。ヒータコア551は、後述のブロア552と共に、車両10に備えられた暖房装置550の一部を構成するものである。ヒータコア551は、内部を流れる高温の冷却水と、ヒータコア551を通過する空気とを熱交換させることにより、当該空気の温度を上昇させる熱交換器である。ヒータコア551の近傍にはブロア552が設けられている。ブロア552は、ヒータコア551における熱交換が効率的に行われるよう、ヒータコア551に空気を送り込むためのものである。ヒータコア551を通過してその温度を上昇させた空気は、不図示のダクトを通って車両10の車室内に供給される。
冷却水は、ヒータコア551を通過する際、空気との熱交換によってその温度を低下させる。ヒータコア551を通過する際において冷却水が失う熱量は、ヒータコア551を含む暖房装置550の動作状態によって変化する。
第2バイパス流路541は、上記の第1バイパス流路540と同様に、第1流路511と第2流路512とを繋ぐように形成された流路である。温度調整弁560の動作によって、冷却水がラジエータ530を通ることなく、第1バイパス流路540及び第2バイパス流路541を流れる状態とすることができる。また、ラジエータ530、第1バイパス流路540、及び第2バイパス流路541の全てを冷却水が流れる状態とすることもできる。
第2バイパス流路541の途中には、オイルクーラ590が設けられている。オイルクーラ590は、内燃機関20に供給されるオイルを冷却するための熱交換器である。冷却水は、オイルクーラ590を通過する際、オイルとの熱交換によってその温度を上昇させる。
温度調整弁560は、第1流路511と第1バイパス流路540とが分岐する部分に設けられている。当該部分は、第1流路511と第2バイパス流路541とが分岐する部分でもある。
温度調整弁560は、電力の供給を受けて内部の弁体561を回転させることにより、流路を切り換えることのできる電動式の弁である。温度調整弁560の動作、具体的には弁体561の回転角度の変化は、制御装置40によって制御される。
弁体561が回転することにより、第1流路511から第1バイパス流路540のみに冷却水が供給される状態(以下、「第1状態」とも称する)とすることができる。また、第1流路511から第1バイパス流路540及び第2バイパス流路に冷却水が供給され、ラジエータ530には冷却水が供給されない状態(以下、「第2状態」とも称する)とすることもできる。更に、第1流路511から第1バイパス流路540、第2バイパス流路、及びラジエータ530のいずれにも冷却水が供給される状態(以下、「第3状態」とも称する)とすることもできる。
図2に示されるのは、温度調整弁560の動作特性を示すグラフである。グラフの横軸は、温度調整弁560の内部における弁体561の回転角度である。グラフの縦軸は開口率、すなわち温度調整弁560の開度である。線G10で示されるのは、温度調整弁560からヒータコア551に向かう流路の開度の変化である。線G20で示されるのは、温度調整弁560からオイルクーラ590に向かう流路の開度の変化である。線G30で示されるのは、温度調整弁560からラジエータ530に向かう流路の開度の変化である。
電動式の弁である温度調整弁560は、制御装置40からの制御信号に基づいてその弁体561を回転させる。弁体561の回転角度がd0からd10までの範囲であるときには、ヒータコア551に向かう流路、オイルクーラ590に向かう流路、及びラジエータ530に向かう流路のいずれもが全閉となっている。
弁体561の回転角度がd10よりも大きくなると、回転角度の変化に伴ってヒータコア551に向かう流路の開度のみが大きくなって行く。弁体561の回転角度がd20になると、ヒータコア551に向かう流路のみが全開となる。オイルクーラ590に向かう流路、及びラジエータ530に向かう流路はいずれも全閉のままである。
その後、弁体561の回転角度がd30よりも大きくなると、回転角度の変化に伴ってオイルクーラ590に向かう流路の開度が大きくなって行く。このとき、ヒータコア551に向かう流路は全開のままである。また、ラジエータ530に向かう流路は全閉のままである。弁体561の回転角度がd40になると、ヒータコア551に向かう流路、及びオイルクーラ590に向かう流路、の両方が全開となる。ラジエータ530に向かう流路は全閉のままである。
その後、弁体561の回転角度がd50よりも大きくなると、回転角度の変化に伴ってラジエータ530に向かう流路の開度が大きくなって行く。このとき、ヒータコア551に向かう流路、及びオイルクーラ590に向かう流路はいずれも全開のままである。弁体561の回転角度がd60になると、ヒータコア551に向かう流路、オイルクーラ590に向かう流路、及びラジエータ530に向かう流路のいずれもが全開となる。
弁体561の回転角度がd10とd30との間となっている状態が、先述の第1状態に該当する。弁体561の回転角度がd30とd50との間となっている状態が、先述の第2状態に該当する。弁体561の回転角度がd50とd60との間となっている状態が、先述の第3状態に該当する。
ところで、このような電動式の弁である温度調整弁560は、本実施形態のように弁体561が回転運動することによって開度が変化するものであってもよいが、弁体561が並進運動することによって開度が変化するものであってもよい。つまり、弁体561が動作してその位置を変化させることにより、温度調整弁560の開度が変化するような構成であればよい。
以下の説明においては、図2の横軸に示される弁体561の回転角度のことを「弁体位置」とも表記することとする。弁体位置は、温度調整弁560の開度を変化させるように弁体561が動作する場合における、その動作量を示すものということができる。弁体位置には、本実施形態のように弁体561が回転運動する場合における回転角度のほか、弁体561が並進運動する場合における弁体561の位置も含まれる。
温度調整弁560は、現時点における弁体561の回転角度、すなわち弁体位置に対応する電圧を外部に出力する機能を有している。図3に示されるのは、温度調整弁560からの出力電圧と弁体位置との関係を示すグラフである。本実施形態では、出力電圧と弁体位置とは概ね比例する。弁体位置がd0のとき(図2を参照)には、出力電圧は値V10となっている。弁体位置がd60のとき(図2を参照)には、出力電圧は値V10よりも大きな値V20となっている。
温度調整弁560からの出力電圧は、制御装置40、及び診断装置100の両方に入力されている。制御装置40は、この出力電圧によって現時点における弁体位置を把握しながら、弁体位置を目標位置に一致させる制御を行う。
図1に戻って説明を続ける。電圧センサ60は、車両10に搭載された蓄電池BTの端子間電圧(以下、「蓄電池電圧」とも表記する)を測定するためのセンサである。蓄電池BTは、車両10に搭載された電力消費機器に電力を供給するものである。電力消費機器には、温度調整弁560も含まれる。測定された蓄電池電圧に基づく信号は、診断装置100に入力されている。
外気温センサ70は、車両10の外部の気温、すなわち外気温を測定するためのセンサである。測定された外気温に基づく信号は、診断装置100に入力されている。
報知装置80は、診断装置100により行われた車両10の診断結果を運転者に報知するための装置である。車両10において何らかの異常が生じていることが診断装置100により診断されると、報知装置80は、フロントパネルに設けられた警告灯を点灯させることによって運転者への報知を行う。
制御装置40は、車両10の全体の動作を制御するECUである。制御装置40は、CPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータシステムとして構成されている。制御装置40は、既に述べたようにウォーターポンプ520の動作や温度調整弁560等の動作を制御する。
車両10の運転が行われている際には、制御装置40は、水温センサ570で測定される冷却水の温度を目標温度に一致させる制御を行う。例えば、冷却水の温度が目標温度よりも高いときには、ラジエータ530に供給される冷却水の流量を増加させるよう、弁体561の目標位置を開弁側(つまり図2における右側)に変化させる。
また、冷却水の温度が目標温度よりも低いときには、ラジエータ530に供給される冷却水の流量を減少させるよう、弁体561の目標位置を閉弁側(つまり図2における左側)に変化させる。
また、内燃機関20が始動された直後には、制御装置40が第1状態又は第2状態への切り替えを行うことにより、温度調整弁560からラジエータ530に向かう流路を閉塞させる。これにより、内燃機関20の暖機が促進される。
以下では、実際の弁体位置と目標位置との差のことを「位置偏差」とも称する。また、冷却水の実際の温度と目標温度との差のことを「水温偏差」とも称する。制御装置40により、位置偏差及び水温偏差の両方を0に近づけるような制御が行われる。
制御装置40は、車両10の運転状況に応じて目標温度を変化させる。例えば、車両10の走行負荷が大きくなったときには、ノッキングの発生を抑制するために、目標温度を低くなるように変更する。
このように、目標温度は常に一定なのではなく、そのときの車両10の運転状況に応じて変更される。換言すれば、冷却水の温度を運転状況に応じて適宜変更することができるように、電動式の弁である温度調整弁560が用いられている。
診断装置100は、先に説明した制御装置40と同様に、CPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータシステムとして構成されている。診断装置100は、車両10の全体の制御を行う制御装置40とは別の装置として構成されていてもよいのであるが、制御装置40と一体の装置として構成されていてもよい。つまり、以下に説明する診断装置100の機能の一部又は全てが、制御装置40に備えられていてもよい。
診断装置100は、機能的な制御ブロックとして、水温取得部110と、異常判定部120と、を備えている。
水温取得部110は、水温センサ570から受信される信号に基づいて、内燃機関20から排出される冷却水の温度を算出し取得する部分である。
異常判定部120は、温度調整弁560に異常が生じたか否かを判定する部分である。例えば、冷却水の温度が低い状態が長時間に亘り継続されている場合には、温度調整弁560が開状態のまま弁体561が動かなくなってしまっている可能性がある。また、弁体561に亀裂が生じる等により、冷却水がラジエータ側に漏れてしまっているという可能性もある。つまり、ラジエータ530に冷却水が向かう流路が完全には閉塞されないため、冷却水がラジエータ530を通って冷却され続けていると推測される。
異常判定部120は、位置偏差と水温偏差との両方に基づいて、温度調整弁560に異常が生じたか否かを判定する。以下では、その具体的な判定方法について説明する。
位置偏差が正常であるか否かを判定するために異常判定部120で実行される処理について、図4を参照しながら説明する。図4に示される一連の処理は、後に説明する図9の処理から呼び出されるサブルーチンとして、所定の周期が経過する毎に繰り返し実行される。
最初のステップS01では、位置閾値が取得される。位置閾値とは、位置偏差が正常か否かを判定するために用いられる閾値である。後に説明するように、位置偏差の積算値の絶対値が位置閾値を超えた場合には、位置偏差が異常であると判定される。
ところで、蓄電池電圧が小さいとき、すなわち、温度調整弁560に供給される電圧が小さいときには、温度調整弁560における弁体561の動作が緩慢になる傾向がある。その結果、温度調整弁560には何ら異常が生じていないにも拘らず、一時的に位置偏差が大きくなってしまい、位置偏差が異常であると判定されてしまう可能性がある。
そこで、本実施形態では、そのときの蓄電池電圧に応じて位置閾値が適宜変更される。図5には、蓄電池電圧と、これに応じて設定される位置閾値との関係が示されている。図5に示されるように、蓄電池電圧が大きくなるほど、位置閾値は小さな値に変更される。換言すれば、蓄電池電圧が小さくなるほど、位置閾値は大きな値に変更される。
このため、蓄電池電圧が低下して弁体561の動作が緩慢になっても、位置偏差が異常であると判定されてしまうようなことが防止される。図5に示される蓄電池電圧と位置閾値との関係は、予めマップとして作成され、診断装置100のROMに記憶されている。異常判定部120は、当該マップを参照することにより、蓄電池電圧に対応する位置閾値を取得する。
図4に戻って説明を続ける。ステップS01に続くステップS02では、現在の位置偏差が算出される。具体的には、温度調整弁560からの出力電圧に基づいて弁体位置が取得され、当該弁体位置から目標位置を差し引くことによって現在の位置偏差が算出される。
ステップS02に続くステップS03では、ステップS02で算出された位置偏差が積算値に加えられる。この積算値は、初期値が0の変数であって、ステップS03の処理が行われる毎に位置偏差が加えられていく変数となっている。
ステップS03に続くステップS04では、カウンタに1が加えられる。このカウンタは、初期値が0の変数であって、ステップS04の処理が行われる毎に1が加えられていく変数となっている。カウンタは、ステップS02及びステップS03の処理が所定回数だけ繰り返し実行されるように、これらの実行回数をカウントするための変数である。
ステップS04に続くステップS05では、カウンタの値が最大値に到達したか否かが判定される。ここでいう最大値とは、上記の「所定回数」のことである。カウンタの値が最大値に到達していれば、ステップS06に移行する。カウンタの値が未だ最大値に到達していなければ、ステップS02以降の処理が再度実行される。
ステップS06では、ステップS03で算出された積算値の絶対値が、ステップS01で取得された位置閾値を超えているか否かが判定される。積算値の絶対値が位置偏差を超えていれば、ステップS07に移行する。ステップS07に移行したということは、弁体位置が目標位置からずれている状態が高頻度で発生しているということである。このため、ステップS07では、位置偏差が異常であると判定される。
ステップS06において、積算値の絶対値が位置偏差を超えていなければ、ステップS08に移行する。ステップS08に移行したということは、弁体位置が目標位置からずれている状態の発生頻度は小さく、弁体561は概ね正常に動作しているということである。このため、ステップS08では、位置偏差が正常であると判定される。
ステップS07及びステップS08に続くステップS09では、積算値とカウンタがそれぞれ0に設定される。その後、図4に示される一連の処理を終了する。
異常判定部120による位置偏差の判定が以上のように行われる際における、弁体位置や位置偏差等の変化の一例を、図6を参照しながら説明する。図6(A)に示されるのは、実際の弁体位置の変化である。また、図6(B)に示されるのは位置偏差の変化である。この例では、弁体位置を一定の目標位置SPに一致させる制御が行われている。ただし時刻t10において温度調整弁560に故障が生じ、以降は弁体位置が目標位置SPから乖離してしまっている。つまり、時刻t10以降においては位置偏差の絶対値が大きくなってしまっている。
図6(C)に示されるのは、図4のステップS06で算出される積算値の変化である。温度調整弁560に故障が生じる時刻t10よりも前においては、積算値の絶対値は位置閾値PTよりも小さくなっている。しかしながら、時刻t10以降においては、積算値の絶対値は次第に大きくなって行き、時刻t150において位置閾値PTを超えてしまっている。
図6(D)に示されるのは、図4のステップS04で算出されるカウンタの変化である。図6(D)の例では、時刻t100、及び時刻t200においてカウンタの値が最大値UCに到達しており、それと同時に0にリセットされている。積算値の絶対値が位置閾値を超えたか否かの判定(つまり、ステップS06の処理)は、カウンタの値が最大値に到達したタイミングで行われる。
時刻t100においては、故障が生じた直後であるため、積算値の絶対値は位置閾値PTを超えていない。このため、位置偏差は正常であると判定される。これに対し、時刻t150よりも後の時刻t200においては、積算値の絶対値は位置閾値PTを超えている。このため、位置偏差は異常であると判定される。
尚、位置偏差が異常であるか否かの判定は、上記のように位置偏差の積算値に基づいて行われるのではなく、位置偏差の瞬時値に基づいて行われてもよい。つまり、図4のステップS06において、位置偏差の絶対値が位置閾値を超えているか否かの判定が行われることとしてもよい。
しかしながら、そのような態様とした場合には、位置偏差が瞬間的にのみ大きくなった際や、弁体位置を示す出力電圧にノイズが生じた際などにおいて、位置偏差が異常であるとの誤判定がなされてしまう可能性がある。このため、位置偏差が異常であるか否かの判定を安定的に行うためには、本実施形態のように、位置偏差の積算値に基づく判定を行う方が望ましい。
次に、水温偏差が正常であるか否かを判定するために異常判定部120で実行される処理について、図7を参照しながら説明する。図7に示される一連の処理は、後に説明する図9の処理から呼び出されるサブルーチンとして、所定の周期が経過する毎に繰り返し実行される。
最初のステップS11では、水温閾値が取得される。水温閾値とは、水温偏差が正常か否かを判定するために用いられる閾値である。後に説明するように、水温偏差の積算値の絶対値が水温閾値を超えた場合には、水温偏差が異常であると判定される。
ところで、外気温が低いときには、ラジエータ530や循環流路510等における冷却水の放熱が生じやすいため、冷却水の温度が比較的不安定となる傾向がある。その結果、温度調整弁560には何ら異常が生じていないにも拘らず、一時的に水温偏差が大きくなってしまい、水温偏差が異常であると判定されてしまう可能性がある。
そこで、本実施形態では、外気温センサ70で測定された外気温に応じて水温閾値が適宜変更される。図8には、外気温と、これに応じて設定される水温閾値との関係が示されている。図8に示されるように、外気温が高くなるほど、水温閾値は小さな値に変更される。換言すれば、外気温が低くなるほど、水温閾値は大きな値に変更される。
このため、外気温が低下して冷却水の温度が不安定になっても、水温偏差が異常であると判定されてしまうようなことが防止される。図8に示される外気温と水温閾値との関係は、予めマップとして作成され、診断装置100のROMに記憶されている。異常判定部120は、当該マップを参照することにより、外気温に対応する水温置閾値を取得する。
図7に戻って説明を続ける。ステップS11に続くステップS12では、現在の水温偏差が算出される。具体的には、水温センサ570からの信号に基づいて冷却水の温度が取得され、当該温度から目標温度を差し引くことによって現在の水温偏差が算出される。
ステップS12に続くステップS13では、ステップS12で算出された水温偏差が積算値に加えられる。この積算値は、初期値が0の変数であって、ステップS13の処理が行われる毎に水温偏差が加えられていく変数となっている。
ステップS13に続くステップS14では、カウンタに1が加えられる。このカウンタは、初期値が0の変数であって、ステップS14の処理が行われる毎に1が加えられていく変数となっている。カウンタは、ステップS12及びステップS13の処理が所定回数だけ繰り返し実行されるように、これらの実行回数をカウントするための変数である。
ステップS14に続くステップS15では、カウンタの値が最大値に到達したか否かが判定される。ここでいう最大値とは、上記の「所定回数」のことである。カウンタの値が最大値に到達していれば、ステップS16に移行する。カウンタの値が未だ最大値に到達していなければ、ステップS12以降の処理が再度実行される。
ステップS16では、ステップS13で算出された積算値の絶対値が、ステップS11で取得された水温閾値を超えているか否かが判定される。積算値の絶対値が水温偏差を超えていれば、ステップS17に移行する。ステップS17に移行したということは、冷却水の温度が目標温度からずれている状態が高頻度で発生しているということである。このため、ステップS17では、水温偏差が異常であると判定される。
ステップS16において、積算値の絶対値が水温偏差を超えていなければ、ステップS18に移行する。ステップS18に移行したということは、冷却水の温度が目標温度からずれている状態の発生頻度は小さく、弁体561は概ね正常に動作しているということである。このため、ステップS18では、水温偏差が正常であると判定される。
ステップS17及びステップS18に続くステップS19では、積算値とカウンタがそれぞれ0に設定される。その後、図7に示される一連の処理を終了する。
尚、水温偏差が異常であるか否かの判定は、上記のように水温偏差の積算値に基づいて行われるのではなく、水温偏差の瞬時値に基づいて行われてもよい。つまり、図7のステップS16において、水温偏差の絶対値が水温閾値を超えているか否かの判定が行われることとしてもよい。
しかしながら、そのような態様とした場合には、水温偏差が瞬間的にのみ大きくなった際や、水温センサ570からの信号にノイズが生じた際などにおいて、水温偏差が異常であるとの誤判定がなされてしまう可能性がある。このため、水温偏差が異常であるか否かの判定を安定的に行うためには、本実施形態のように、水温偏差の積算値に基づく判定を行う方が望ましい。
異常判定部120による位置偏差の判定が以上のように行われる際における、冷却水の温度や水温偏差、及びその積算値等の変化は、図6に示される位置偏差等の変化と同様である。このため、図示及び具体的な説明は省略する。
温度調整弁560に異常が生じたか否かを判定するために、診断装置100の異常判定部120で行われる処理について、図9を参照しながら説明する。図9に示される一連の処理は、所定の周期が経過する毎に繰り返し実行される。
最初のステップS21では、既に説明した図4の処理が実行されることにより、位置偏差が異常であるか否かが判定される。位置偏差が正常である場合にはステップS23に移行する。位置偏差が異常である場合にはステップS22に移行する。ステップS22では、第1異常フラグがONに設定される。第1異常フラグとは、診断装置100のRAMに記憶される変数であって、ONまたはOFFのいずれのかの値が設定されるものである。図9の処理が開始される前における第1異常フラグの初期値はOFFとなっている。ステップS22で第1異常フラグがONに設定されると、ステップS23に移行する。
ステップS23では、既に説明した図7の処理が実行されることにより、水温偏差が異常であるか否かが判定される。水温偏差が正常である場合にはステップS25に移行する。水温偏差が異常である場合にはステップS24に移行する。ステップS24では、第2異常フラグがONに設定される。第2異常フラグとは、診断装置100のRAMに記憶される変数であって、ONまたはOFFのいずれのかの値が設定されるものである。図9の処理が開始される前における第2異常フラグの初期値はOFFとなっている。ステップS24で第2異常フラグがONに設定されると、ステップS25に移行する。
ステップS25では、水温取得部110で取得された冷却水の温度が、所定の判定閾値を下回っている否かが判定される。判定閾値とは、暖機完了後において温度調整弁560が正常に動作しているのであれば、冷却水の温度がこれを下回るはずのない値、として予め設定された閾値である。冷却水の温度が判定閾値以上であれば、ステップS31に移行する。
ステップS25において、冷却水の温度が判定閾値を下回っていればステップS26に移行する。ステップS26に移行したということは、冷却水の温度が何らかの原因で低下し過ぎてしまっているということである。このため、温度調整弁560に異常が生じていることが推測される。ステップS26以降においては、温度調整弁560の状態を詳細に判定するための処理が行われる。
ステップS26では、判定条件が成立しているか否かが判定される。判定条件とは、冷却水の温度に基づいて温度調整弁560の異常の判定を行うことが、適切であるか否かを示す条件である。
例えば、内燃機関20の発熱量が小さいときには、温度調整弁560が正常に動作していても冷却水の温度が判定閾値を下回ってしまう可能性がある。つまり、冷却水の温度が低下したとしても、温度調整弁560に異常が生じたと直ちに判定することは適切ではない。このため、このような場合における判定条件は不成立となる。
これに対し、内燃機関20の発熱量が大きいときには、温度調整弁560の異常以外の原因で、冷却水の温度が判定閾値を下回ってしまう可能性は小さい。このため、このような場合における判定条件は成立となる。
本実施形態における判定条件について、図10を参照しながら説明する。図10に示されるのは、内燃機関20の運転状態と、冷却水の受熱量との関係を示すマップである。冷却水の受熱量とは、循環流路510を循環する冷却水に対して単位時間あたりに加えられる熱量のことである。マップの横軸には内燃機関20の回転数が示されており、縦軸には、内燃機関20に取り込まれる空気量が示されている。図10では、横軸の回転数及び縦軸の空気量で定まる運転状態毎に、当該状態における受熱量が等高線で描かれている。図10のマップは予め作成され、診断装置100が有するROMに記憶されている。
太線WOTで示されるのは、それぞれの回転数において内燃機関20に取り込まれる空気量の上限値、すなわち、スロットルバルブが全開の状態で内燃機関20に取り込まれる空気の流量である。
図10の線Q0に沿うような運転状態のときには、冷却水の受熱量は、単位時間あたりに冷却水から外部に放出される熱量(以下、「放熱量」とも表記する)と概ね一致する。一方、図10の線Q1に沿うような運転状態のときには、冷却水の受熱量は放熱量よりも大きくなる。このため、ラジエータ530を冷却水が通らない場合には、冷却水の温度は上昇傾向となる。
また、図10の線Q2に沿うような運転状態のときには、冷却水の受熱量は更に大きくなる。このため、ラジエータ530を冷却水が通らない場合には、冷却水の温度は更に上昇傾向となる。
図10の線Q3に沿うような運転状態のときには、冷却水の受熱量は放熱量よりも小さくなる。このため、ラジエータ530を冷却水が通らない場合であっても、冷却水の温度は低下傾向となる可能性がある。
このように、図10に示されるマップでは、内燃機関20の運転領域が右上にあるほど、冷却水の受熱量は大きな値となる。逆に、内燃機関20の運転領域が左下にあるほど、冷却水の受熱量は小さな値となる。尚、内燃機関20で生じるトルクをマップの縦軸としてもよい。その場合でも、概ね図10と同様のマップが描かれることとなる。
以下では、線Q0よりも上方側となる運転領域、すなわち、図10において符号Aが付されている運転領域のことを「A領域」と称する。また、線Q0よりも下方側となる運転領域、すなわち、図10において符号Bが付されている運転領域のことを「B領域」と称する。A領域は、冷却水の受熱量が放熱量よりも大きくなるような運転領域である。また、B領域は、冷却水の受熱量が放熱量よりも小さくなるような運転領域である。
既に述べたように、冷却水が低温となっているときには、温度調整弁560に異常が生じている可能性がある。しかしながら、温度調整弁560が正常なときであっても、B領域で運転が行われているのであれば冷却水の温度は上昇しにくい。
つまり、B領域の運転頻度が高いときには、冷却水の温度が判定閾値を下回っていたとしても、その原因が温度調整弁560に異常が生じているとは限らない。そこで、本実施形態では、B領域の運転頻度が高いときには、図9のステップS26において判定条件が不成立とされる。一方、A領域の運転頻度が高いときには、判定条件が成立とされる。
図11を参照しながら、判定条件が不成立とされる場合の例について説明する。図11(A)には、内燃機関20で発生するトルクの変化が示されている。図11(A)の例では、時刻t0から時刻t10までの期間において、閾値NTよりも高い値N10のトルクが発生している。このとき、内燃機関20の運転領域は、受熱量の大きなA領域となっている。
時刻t10以降においては、内燃機関20が停止し、車両10はモーターMの駆動力のみによって走行する。内燃機関20のトルクは0となり、閾値NTよりも小さくなる。これ以降、内燃機関20の運転領域は、受熱量の小さなB領域となる。
図11(B)には、時刻t0以降における運転時間の積算値を示す線G1と、B領域での運転が行われている時間の積算値を示す線G2とが示されている。また、図11(C)には、運転時間の積算値に対する、B領域での運転が行われている時間の積算値、の比率の変化が示されている。つまり、線G1で示される値に対する、線G2で示される値の比率の変化が示されている。時刻t10以降は、B領域で運転されることにより当該比率が次第に大きくなって行く。
B領域で運転される比率が所定の閾値STを超えると、異常判定部120は判定条件を不成立とする。図11(D)は、判定条件が成立とされている状態から、不成立とされている状態に切り替わる様子を示すグラフである。図11の例では、時刻t20においてB領域の比率が閾値STを超えており、同時刻以降においては判定条件が成立とされる。尚、本実施形態では、閾値STとして50%が設定されている。
以上のような、B領域で運転されている時間の積算や、当該積算値の比率の算出は、冷却水の温度の測定値によることなく、診断装置100においては継続的に行われている。
尚、以上の説明においては、A領域とB領域との境界を示す線Q0(図10を参照)が固定されているものとして説明したが、当該境界が、現時点における放熱量の推定値に基づいてリアルタイムに変更されるような態様であってもよい。
例えば、冷却水の温度と外気温度、及び内燃機関20の回転数に基づいて、現時点における放熱量を推定することができる。図10のマップで求められる受熱量と、推定される放熱量とを比較して、受熱量の方が大きいときには、現在はA領域での運転が行われていると判断することができる。逆に、放熱量の方が大きいときには、現在はB領域での運転が行われていると判断することができる。
図9に戻って説明を続ける。ステップS26において判定条件が成立している場合には、ステップS27に移行する。ステップS27では、第1異常フラグ及び第2異常フラグのいずれかがONであるか否かが判定される。第1異常フラグ及び第2異常フラグのいずれかがONであれば、ステップS28に移行する。ステップS28では、第3異常フラグがONに設定される。第3異常フラグとは、診断装置100のRAMに記憶される変数であって、ONまたはOFFのいずれのかの値が設定されるものである。図9の処理が開始される前における第3異常フラグの初期値はOFFとなっている。ステップS28で第3異常フラグがONに設定されると、ステップS31に移行する。
ステップS27で、第1異常フラグ及び第2異常フラグの両方がOFFであった場合は、ステップS29に移行する。また、ステップS26で判定条件が不成立であった場合にも、ステップS29に移行する。
ステップS29では、冷却水が温度調整弁560からラジエータ530に向かう流路が全閉となるように、温度調整弁560の制御が行われる。具体的には、診断装置100から制御装置40に向けて信号が送信される。信号を受信した制御装置40は、温度調整弁560が第1状態又は第2状態に切り換わるように、温度調整弁560に制御信号を送信する。
このとき、温度調整弁560が正常であるならば、ラジエータ530には冷却水が供給されなくなる。ラジエータ530における冷却水の冷却が行われなくなるので、水温取得部110で取得される冷却水の温度は次第に上昇するはずである。
逆に温度調整弁560が故障しており、弁体561が動作し得ない状態となっているならば、ラジエータ530に供給される冷却水の流量は変化しない。従って、水温取得部110で取得される冷却水の温度は一定のままとなる。もしくは、ラジエータ530で冷却され続けることにより、冷却水の温度が低下することもある。
そこで、ステップS29に続くステップS30では、水温取得部110で取得される冷却水の温度が上昇するか否かが判定される。
図12を参照しながら、当該判定の例について説明する。図12には、時刻t300から時刻t400までの期間において図9のステップS29の処理が行われた際における、冷却水の温度の変化の例が示されている。時刻t300以降においては温度調整弁が第2状態となり、ラジエータ530に冷却水が供給されなくなる。従って、冷却水の温度は次第に上昇して行く。
図12の例では、時刻t300における冷却水の温度をT10とし、時刻t400における冷却水の温度をT20としている。本実施形態では、図9のステップS29の処理が行われた期間における温度上昇量が、図12の例のように閾値DTを超えた場合には、冷却水の温度が上昇したと判定される。一方、ステップS29の処理が行われた期間における温度上昇量が、閾値DT以下である場合には、ステップS30において冷却水の温度が上昇しなかったと判定される。
ステップS30における判定の他の例について、図13を参照しながら説明する。図13には、時刻t300から時刻t400までの期間において図9のステップS29の処理が行われた際における、冷却水の温度の変化量が示されている。具体的には、現時点における冷却水の温度と、当該時点から1秒前における冷却水の温度との差、の変化が示されている。このように示されるグラフの縦軸は、冷却水の温度の変化速度を示すものともいえる。
図13の例では、時刻t300から時刻t400までの期間におけるグラフの値が所定の閾値TT2を超えた場合に、冷却水の温度が上昇したと判定される。一方、同期間におけるグラフの値が閾値TT2を超えなかった場合には、ステップS30において冷却水の温度が上昇しなかったと判定される。このように、冷却水の温度の変化速度と、所定の閾値TT2とを比較することによって、冷却水の温度が上昇したか否かの判定が行われてもよい。
図9に戻って説明を続ける。ステップS30において、水温が上昇しなかったと判定された場合には、ステップS28に移行し、第3異常フラグがONに設定される。水温が上昇したと判定された場合には、ステップS31に移行する。このように、ステップS29においてラジエータ530への冷却水の供給を停止する制御が行われた後、冷却水の温度の変化に基づいて温度調整弁560の異常が判定される。
ステップS31では、第1異常フラグ、第2異常フラグ、及び第3異常フラグのそれぞれの設定状態に基づいて、温度調整弁560の故障状況についての最終判定がなされる。具体的には、図14に示される対応表に基づいて、温度調整弁560の故障状況が判定される。
符号L1が付された1行目のように、第1異常フラグ、第2異常フラグ、及び第3異常フラグの全てがOFFであった場合には、温度調整弁560は正常であると判定される。これに対し、第1異常フラグ、第2異常フラグ、及び第3異常フラグのうち少なくとも一つがONであった場合には、温度調整弁560に何らかの異常が生じたと判定される。
符号L2が付された2行目のように、第1異常フラグのみがONであり、第2異常フラグ及び第3異常フラグがいずれもOFFであった場合には、温度調整弁560の弁体561が動作し得ない状態になっていると判定される。このような異常状態のことを、以下では「弁位置異常」とも称する。
符号L3が付された3行目のように、第1異常フラグ及び第2異常フラグがONであり、第3異常フラグがOFFであった場合にも、弁位置異常であると判定される。
符号L4が付された4行目のように、第2異常フラグのみがONであり、第1異常フラグ及び第3異常フラグがいずれもOFFであった場合には、温度調整弁560の内部で亀裂が生じる等により、冷却水が漏れている状態であると判定される。このような異常状態のことを、以下では「弁リーク異常」とも称する。
符号L5が付された5行目のように、第1異常フラグ及び第2異常フラグのいずれもがOFFであり、第3異常フラグがONであった場合には、これまでに述べた弁位置異常や弁リーク異常とは別の異常が、温度調整弁560において生じていると判定される。このような異常状態のことを総じて、以下では「弁機能異常」とも称する。
符号L6が付された6行目のように、第2異常フラグのみがOFFであり、第1異常フラグ及び第3異常フラグがいずれもONであった場合には、弁機能異常と弁位置異常とが組み合わさって生じていると判定される。また、符号L7が付された7行目のように、第1異常フラグ、第2異常フラグ、及び第3異常フラグの全てがONであった場合にも、弁機能異常と弁位置異常とが組み合わさって生じていると判定される。
符号L8が付された8行目のように、第1異常フラグのみがOFFであり、第2異常フラグ及び第3異常フラグがいずれもONであった場合には、弁機能異常と弁リーク異常とが組み合わさって生じていると判定される。
以上のように、本実施形態に係る診断装置100では、冷却水の温度と目標温度との差である水温偏差のみならず、弁体位置と目標位置との差である位置偏差にも基づいて、温度調整弁560の異常が判定される。温度調整弁560の異常による位置偏差への影響は、水温偏差への影響に比べて短時間のうちに現れる。このため、診断装置100によれば、温度調整弁560に異常が生じたことを短時間のうちに検知することが可能となっている。
また、水温偏差が異常であることを示す第1異常フラグ、位置偏差が異常であることを示す第2異常フラグ、及び、温度調整弁560の機能に異常が生じていることを示す第3異常フラグ、の組み合わせに基づいて、温度調整弁560の故障状況(つまり、生じている異常の種類)が判定される。このように、単に温度調整弁560に異常が生じていることのみの判定ではなく、当該異常の種類を判定することも可能となっている。
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、位置閾値を設定する方法についてのみ第1実施形態と異なっている。その他の点においては第1実施形態と同じである。
図15には、蓄電池電圧と、これに応じて設定される位置閾値との関係が示されている。図15に示されるように、本実施形態においても、蓄電池電圧が大きくなるほど位置閾値は小さな値に変更される。ただし、蓄電池電圧が所定の電圧値VTを超えているときには、蓄電池電圧が大きくなるほど位置閾値も大きな値に変更される。
蓄電池電圧が大きいときには、弁体561の動作速度が速くなる。このため、弁体位置が変更された際には、弁体位置のオーバーシュートが生じる可能性がある。このようなオーバーシュートが生じると、温度調整弁560には何ら異常が生じていないにも拘らず、一時的に位置偏差が大きくなってしまい、位置偏差が異常であると判定されてしまう可能性がある。
そこで、オーバーシュートが比較的生じやすい構成の温度調整弁560が用いられる場合には、図15のように位置閾値を設定し、蓄電池電圧が大きいときにおいて異常と判定されにくくした方が望ましい。
本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態でも、位置閾値を設定する方法についてのみ第1実施形態と異なっている。その他の点においては第1実施形態と同じである。
図16には、水温取得部110で取得される冷却水の温度と、これに応じて設定される位置閾値との関係が示されている。図16に示されるように、冷却水の温度が高くなるほど、位置閾値は小さな値に変更される。換言すれば、冷却水の温度が低くなるほど、位置閾値は大きな値に変更される。
冷却水の温度が低いときには、冷却水の動粘度が高くなるので、弁体561の応答速度が低下しやすくなる。その結果、温度調整弁560の動作中における位置偏差が大きくなる傾向がある。このため、温度調整弁560には何ら異常が生じていないにも拘らず、一時的に位置偏差が大きくなってしまい、位置偏差が異常であると判定されてしまう可能性がある。
そこで、図16のように、冷却水の温度が低くなるほど位置閾値を大きな値に変更することとすれば、冷却水の温度が低くなり動粘度が高くなったときに、位置偏差が異常であるとの誤判定が生じることを防止することができる。
本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態では、水温閾値を設定する方法についてのみ第1実施形態と異なっている。その他の点においては第1実施形態と同じである。
本実施形態では、暖房装置550の運転が行われているときには、暖房装置550の運転が行われていないときに比べて、水温閾値が大きくなるように変更される。図17に示される例では、時刻t10において暖房装置550の運転が開始されると、水温閾値は、値OT1から、これよりも大きな値OT2に変更される。
暖房装置550の運転が行われているときには、冷却水がヒータコア551を通過する際において奪われる熱量が大きくなる。これにより、冷却水の温度は比較的不安定となり、水温偏差が大きくなる傾向がある。このため、温度調整弁560には何ら異常が生じていないにも拘らず、一時的に水温偏差が大きくなってしまい、水温偏差が異常であると判定されてしまう可能性がある。
そこで、図17に示されるように、暖房装置550の運転が行われているときには水温閾値を大きな値に変更することとすれば、水温偏差が異常であるとの誤判定が生じることを防止することができる。
本発明の第5実施形態について説明する。本実施形態も、水温閾値を設定する方法についてのみ第1実施形態と異なっている。その他の点においては第1実施形態と同じである。
図18(A)に示されるのは、水温取得部110で取得される冷却水の温度の変化である。また、図18(B)に示されるのは、温度調整弁560からラジエータ530に向かう流路の開度の変化である。図18(B)に示される例では、時刻t10において第3状態から第2状態に切り換えられており、その後の時刻t20において第2状態から再び第3状態に切り換えられている。つまり、時刻t10から時刻t20までの期間においては、ラジエータ530への冷却水の供給が一時的に停止されている。
当該期間においては、水温取得部110で取得される冷却水の温度は次第に高くなって行く。ただし、ラジエータ530の内部では、滞留している冷却水は冷却され続けているので、その温度は低くなっている。
時刻t20となり第3状態に切り換えられると、ラジエータ530の内部に滞留していた低温の冷却水が、内燃機関20に供給される。このため、図18(A)に示されるように、水温取得部110で取得される冷却水の温度が一気に低下して、アンダーシュートが生じることがある。ラジエータ530への冷却水の供給が停止されていた期間、すなわち、時刻t10から時刻t20までの閉弁期間TM1が長くなるほど、上記のようなアンダーシュートは大きくなる傾向がある。
アンダーシュートが大きくなると、当然ながら水温偏差も大きくなる。このため、温度調整弁560には何ら異常が生じていないにも拘らず、一時的に水温偏差が大きくなってしまい、水温偏差が異常であると判定されてしまう可能性がある。
そこで、本実施形態では、閉弁期間の長さに応じて水温閾値が変更される。具体的には、図19に示されるように、閉弁期間が長くなるほど、水温閾値が大きくなるように変更される。このため、図18(A)のような水温のアンダーシュートが生じた際に、水温偏差が異常であるとの誤判定が生じることを防止することができる。
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。