JP6470616B2 - リチウム空気電池 - Google Patents

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Description

本発明は、非水電解液を備えるリチウム空気電池に関する。
非水電解液を備える非水二次電池は、軽量、高エネルギー、及び長寿命であることが大きな特徴である。このような非水二次電池は、ノートブックコンピューター、携帯電話、デジタルカメラ、ビデオカメラ等の携帯用電子機器の電源として、広範囲に用いられている。また、低環境負荷社会への移行に伴い、ハイブリッド型電気自動車(Hybrid Electric Vehicle、「HEV」)、プラグインHEV(Plug−in Hybrid Electric Vehicle、「PHEV」)、完全電気自動車(Electric Vehicle、「EV」)等の電源;
住宅用蓄電システム等の電力貯蔵分野
においても注目されている。これらの電池の多くには、リチウムイオン電池が使用されているが、更に高容量化が求められている。
空気中の酸素を活物質として用いるリチウム空気電池は、リチウムイオン電池と比較すると、非常に高容量となることが知られている。リチウム空気電池に非水電解液を使用した場合の理論反応は、以下のとおりであることが知られている:
[放電時]
負極:Li→Li+e
正極:2Li+O+2e→Li、又は4Li+O+4e→2Li
[充電時]
負極:Li+e→Li
正極:Li→2Li+O+2e、又は2LiO→4Li+O+4e
すなわち、正極では、放電時に酸素還元が、充電時に酸素発生が、それぞれ起こり;
負極では、放電時にリチウムの溶解が、充電時には析出が、それぞれ起こることにより、充電及び放電が可能となる。
非特許文献1及び非特許文献2によると、放電時に発生する酸素ラジカルが、電解液の一部を分解する。例えば、市販のリチウムイオン電池において、電解液中の溶媒として使用されているカーボネート化合物は、放電時に発生する酸素ラジカルと反応して分解される。その結果、高容量が保てなくなるという問題がある。この分解を抑制するために、上記ラジカルに対して安定な溶媒を用いることが提案されている。例えば非特許文献2では、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒を使用することにより、上記分解反応が緩和されることが報告されている。しかしながら、この非特許文献2の技術によっても、上記の分解を完全に防止することはできず、電解液の一部は分解することとなる。
一方、特許文献1では、電解液の溶媒としてカーボネート化合物の代わりにアセトニトリルを使用することにより、上記の酸素ラジカルによる分解反応の問題を解消しようとしている。更に、リチウム酸素電池においては、リチウム金属極がアセトニトリルを還元分解するという問題がある。そのため、特許文献2及び特許文献3では、リチウム塩を含有するアセトニトリル系の電解液を用いることにより、金属リチウム極によるアセトニトリルの還元分解の抑制も行っている。
しかしながら、高容量化が望まれるHEV、プラグインHEV等の分野においては、更なる効率向上が要求されている。
国際公開第2011/101992号 国際公開第2013/146714号 国際公開第2012/057311号
P.G.Bruceら、J.Am.Chem.Soc.、2011、133、8040−8047. B.D.McCloskeyら、J.Am.Chem.Soc.、2011、133、18038−18041.
上述のとおり、高容量化の可能性の高いリチウム空気電池の利用に際しては、これまでに、
(1)放電時に発生する酸素ラジカルが電解液溶媒中のカーボネート化合物を分解することを抑制するために、電解液溶媒としてアセトニトリルを用いること、及び、
(2)リチウム金属極によってアセトニトリルが還元分解されることを抑制するために、電解液中にリチウム塩を添加すること、
が検討されている。しかしながら、これらに加えて、電解液溶媒の分解の抑制効果をより効果的に発現し得る手段、特に高温下においても分解抑制効果を発現し得る手段が求められている。
本発明は、上記の手段を見出し、特に高温における安定的な稼働が可能なリチウム空気電池を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、非水系溶媒としてアセトニトリルと、特定の環状カーボネート化合物及び環状エステル化合物から成る群より選択される1種以上とを、一定の量比で含有する非水電解液をリチウム空気電池に使用することにより、電解液中で発生する分解反応を抑制して安定したイオン伝導性を実現し、特に高温において、リチウム金属極がアセトニトリルを還元分解することによって生じる負極成分の溶出が抑制されたリチウム空気電池が提供されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記のとおりである。
[1] 空気極、
金属リチウム又はリチウム合金を含有する負極、並びに
アセトニトリル30〜85体積%と、環状カーボネート及び環状エステルからなる群から選択される1種以上と、を含む非水溶媒を含有する非水電解液
を備えることを特徴とする、リチウム空気電池。
[2] 前記非水電解液が、
LiPF、LiBF、LiAsF、LiSiF、LiSbF、Li1212−b〔bは0〜3の整数〕、及びLiN(SOF)から成る群より選択される1種類以上の無機リチウム塩と、
LiBF(C)、LiB(C、LiPF(C)、LiPF(C、LiN(SOCF、及びLiN(SOから成る群より選択される1種類以上の有機リチウム塩と、
を含有する、[1]記載のリチウム空気電池。
[3] 前記非水電解液が、前記空気極と前記負極との間に配置されている、[1]又は[2]に記載のリチウム空気電池。
[4] 前記空気極と前記負極との間にリチウムイオン伝導性を有する隔膜が配置され、
前記非水電解液が、前記負極と前記リチウムイオン伝導性を有する隔膜との間に配置されている、[1]又は[2]に記載のリチウム空気電池。
[5] 前記空気極と前記リチウムイオン伝導性を有する隔膜との間に、アセトニトリル85〜100体積%を含む非水溶媒を含有する非水電解液が配置されている、[4]に記載のリチウム空気電池。
本発明によれば、高温においても安定な稼働が可能なリチウム空気電池を提供することができる。
本実施形態のリチウム空気電池の構造の一例を示す断面概略図である。 本実施形態のリチウム空気電池の構造の別の一例を示す断面概略図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて記載される数値範囲は、その前後に記載される数値を含むものである。
本実施形態のリチウム空気電池は、少なくとも正極及び負極と共に非水電解液を備える。前記正極は空気極である。前記負極は、金属リチウム又はリチウム金属合金からなる群より選択される1種以上の材料からなる。
<1.正極(空気極)>
リチウム空気電池における正極は、活物質として酸素が用いられるため、空気極と呼ばれることが多い。この空気極は、典型的には、正極集電体上に正極活物質層が形成された構成を有することが好ましい。該活物質層は、放電の際に、活性化された酸素とリチウムイオンとが反応したリチウムパーオキサイドを生成し得る導電性材料を含有することが好ましい。空気極における正極活物質層は、前記炭素材料とともに、触媒、結着剤、導電助剤等を含有していてもよい。
上記導電性材料としては、例えば、多孔質構造を有する炭素材料が挙げられる。その具体例としては、例えば、メソポーラスカーボン、グラファイト、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンファイバ等を挙げることができる。
本実施形態のリチウム空気電池の空気極の活物質層における導電性材料の含有量は、活物質層の全質量に対して、10質量%以上とすることが好ましく、10〜99質量%の範囲内であることがより好ましく、60〜95質量%の範囲内であることが更に好ましい。
上記触媒としては、リチウム空気電池の空気極において使用可能な公知材料を、制限なく用いることができる。具体的には、例えば、コバルトフタロシアニン、マンガンフタロシアニン、ニッケルフタロシアニン、スズフタロシアニンオキサイド、チタニルフタロシアニン、ジリチウムフタロシアニン等のフタロシアニン系化合物;コバルトナフトシアニン等のナフトシアニン系化合物;鉄ポルフィリン等のポリフィリン系化合物;MnO、Co、NiO、V、Fe、ZnO、CuO、LiMnO、LiMnO、LiMn、LiTi12、LiTiO、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNiO、LiVO、LiFeO、LiFeO、LiCrO、LiCoO、LiCuO、LiZnO、LiMoO、LiNbO、LiTaO、LiWO、LiZrO、NaMnO、CaMnO、CaFeO、MgTiO、KMnO等の金属酸化物等が挙げられる。
空気極の活物質層における触媒の含有量は、活物質層全質量に対して、90質量%以下であることが好ましく、0.01〜10質量%であることがより好ましく、0.1〜5質量%であることが更に好ましい。
本実施形態のリチウム空気電池において、正極である空気極の活物質層が結着材を含有することにより、上記炭素材料及び触媒が固定化されて安定し、サイクル特性に優れた電池を得ることができる。このような結着材としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム等を挙げることができる。空気極の活物質層における結着材の含有量は、空気極の全質量に対して、好ましくは40室量%以下であり、特に1〜10質量%の範囲内であることが好ましい。
上記正極集電体は、正極(空気極)の集電を行う機能を有するものである。
正極集電体の材料としては、例えば、ステンレス、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタン、カーボン等を挙げることができる。正極集電体の形状としては、例えば箔状、板状、メッシュ(グリッド)状等を挙げることができる。この正極集電体は、正極活物質層に空気中の酸素を供給する目的で、孔を有する形状又はメッシュ状であることが好ましい。正極集電体の厚さは、好ましくは10〜150μmでる。正極集電体が孔を有する場合の開口率としては、10%以上90%以下の面積割合が好ましく、20%以上80%以下の面積割合がより好ましい。
本実施形態における空気極は、例えば、次のような方法によって作製することができる。
例えば、導電性材料、結着材、及び触媒を混合した正極合剤を調製し、該正極合剤を用いて、正極集電体の表面に正極合剤層(正極活物質層)をプレス成形する方法、
上記正極合剤を溶媒に分散させたペーストを調製し、該ペーストを正極集電体の表面に塗布、乾燥して正極合剤層(正極活物質層)を形成する方法等が挙げられる。ここで、塗布する際にスプレー塗布法を使用することも効果的である。
正極活物質層の厚さは、本実施形態のリチウム空気電池の用途等により異なるものであるが、例えば2〜500μmの範囲内とすることができ、特に5〜300μmの範囲内であることが好ましい。
<2.負極>
本実施形態のリチウム空気電池における負極は、リチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料を含有する。好ましくは、上記の材料を含有する負極活物質層が、負極集電体上に形成されて成る負極である。
リチウムイオンを吸蔵及び放出することが可能な材料としては、例えば金属リチウム及びリチウム合金が挙げられる。これらの1種又は2種以上の相を、少なくとも一部に有する材料であってもよい。
本明細書において、「合金」の概念には、2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを有するものも含める。また、合金が、その全体として金属の性質を有するものであれば非金属元素を含有していてもよい。これらの合金の組織としては、固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物等が包含され、又はこれらのうちの2種以上が共存する形態であってもよい。
上記リチウム合金における合金元素としては、金属元素及び半金属元素が挙げられる。その具体例としては、例えば、チタン(Ti)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、亜鉛(Zn)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、銀(Ag)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)等が挙げられる。
これらの中でも、長周期型周期表における4族又は14族の金属元素及び半金属元素が好ましく、特に好ましいのはリチウムを吸蔵及び放出する能力が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるチタン、ケイ素、及びスズから成る群より選択される1種以上である。
リチウム合金におけるリチウム元素の含有割合は、合金の全質量に対して、30質量%以上とすることが好ましく、50質量%以上とすることがより好ましい。リチウム合金におけるリチウム元素の含有割合を、好ましくは70質量%以下、より好ましくは90質量%以下に留めることにより、リチウムを合金とすることの利点が効果的に発揮される。ここで、リチウムを合金とすることの利点とは、例えば、デンドライト生成の抑制、及びその他の安全性確保のために、過剰なリチウムの使用を防ぐことにある。
上記負極集電体の材料としては、例えば、ステンレス、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタン、カーボン等を挙げることができる。負極集電体の形状としては、例えば、板状、メッシュ(グリッド)状等を挙げることができる。
本実施形態における負極の作製は、上記空気極の作製方法と同様にして、或いはこれに当業者に自明の適宜の変更を加えた方法によって作製することができる。
負極活物質層の厚さは、本実施形態のリチウム空気電池の用途等により異なるものであるが、例えば10〜500μmの範囲内とすることができる。
<3.非水電解液>
本実施形態に係るリチウム空気電池における非水電解液は、少なくとも、アセトニトリルと、環状カーボネート及び環状エステルからなる群から選択される1種以上と、を含む非水溶媒を含有する。該電解液は、上記の非水溶媒以外に、リチウム塩を含有していてもよい。
本実施形態における非水電解液は、水分を含まないことが好ましいが、本発明の課題解決を阻害しない範囲であれば、ごく微量の水分を含有してもよい。そのような水分の含有量は、非水電解液の全量に対して、0〜100ppmであってもよい。
<3−1.非水溶媒>
本実施形態における非水電解液の非水溶媒は、アセトニトリルと、環状カーボネート及び環状エステルからなる群より選択される1種以上と、を含有する。
非水溶媒におけるアセトニトリルの含有量は、非水溶媒の全量に対して、30〜85体積%であるが、50〜85体積%であることがより好ましく、60〜85体積%であることが更に好ましい。
アセトニトリルの含有量が上記の範囲内にあることによって、リチウム空気電池としての基本的な機能を損なうことなく、アセトニトリルの優れた性能をより十分に発揮することができる。特に、出力特性、保存時の耐久性、及びその他の電池特性を一層良好なものとすることができる。ここで、アセトニトリルの含有量が、非水溶媒の全量に対して30体積%を下回ると、得られる電解液のイオン伝導性が損なわれる場合がある。
非水溶媒に用いられる環状カーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、トランス−2,3−ブチレンカーボネート、シス−2,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネート、トランス−2,3−ペンチレンカーボネート、シス−2,3−ペンチレンカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、1,2−ジフルオロエチレンカーボネート等を挙げることができる。これらのうち、ビニレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、及び1,2−ジフルオロエチレンカーボネートから成る群より選択される1種以上を使用することが、高温での安定性の観点から好ましい。
非水溶媒に用いられる環状エステルとしては、例えば、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等を挙げることができ、これらのうちの1種以上を使用することが好ましい。
本実施形態のリチウム空気電池に用いられる非水溶媒において、上記のような環状カーボネート及び環状エステルからなる群より選択される1種以上を、非水溶媒の全量に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上使用することにより、環状カーボネート及び環状エステルからなる群より選択される1種以上を使用することの有利な効果が効果的に発現される。ここで、環状カーボネート及び環状エステルからなる群より選択される1種以上を使用することの有利な効果とは、例えば、リチウム空気電池の充放電に寄与するリチウム塩の電離度を高めること等である。
本実施形態のリチウム空気電池に用いられる非水溶媒は、環状カーボネートを、非水溶媒の全量に対して、10質量%以上含むことが好ましく、これを15質量%以上含むことがより好ましい。
本実施形態における非水溶媒としては、アセトニトリルと、環状カーボネート及び環状エステルからなる群より選択される1種以上と、のみを使用してもよく、或いはこれら以外の他の非水溶媒を併用してもよい。
本実施形態において使用することのできる他の非水溶媒としては、特に制限はない。例えば、非プロトン性溶媒が挙げられ、非プロトン性極性溶媒が好ましい。ただしこの非プロトン性極性溶媒からは、アセトニトリル、環状カーボネート、及び環状エステルは除かれる。そのような非水溶媒の具体例としては、例えば、スルホラン、ジメチルスルホキシド等の硫黄化合物;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン等の環状エーテル;メチルエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルトリフルオロエチルカーボネート等の鎖状カーボネート;プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、ベンゾニトリル、アクリロニトリル等のモノニトリル(ただし、アセトニトリルを除く。);メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル等のアルコキシ基置換ニトリル;メチルプロピオネート等の鎖状カルボン酸エステル;ジメトキシエタン等の鎖状エーテルが挙げられる他、これらのフッ素化物に代表されるハロゲン化物も挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
本実施形態のリチウム空気電池に用いられる非水溶媒における他の非水溶媒の使用量は、非水溶媒の全量に対して、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下である。
<3−2.リチウム塩>
本実施形態における非水電解液は、上記の非水溶媒に加えてリチウム塩を含有していてもよい。該リチウム塩としては、非水二次電池の電解液に用いられているリチウム塩であれば、無機リチウム塩であっても有機リチウム塩であっても、特に制限はなく使用することができる。ここで、「無機リチウム塩」とは、炭素原子をアニオンに含まず、アセトニトリルに可溶なリチウム塩をいい;
「有機リチウム塩」とは、炭素原子をアニオンに含み、アセトニトリルに可溶なリチウム塩をいう。
上記無機リチウム塩としては、例えば、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiSiF、LiSbF、LiAlO、LiAlCl4、LiN(SOF)2、Li1212−b〔bは0〜3の整数〕等が挙げられる。
これらの無機リチウム塩のうち、フッ素原子を有する無機リチウム塩を用いると、正極集電体の表面に不働態皮膜が形成される。そのため、内部抵抗の増加を抑制することができ、好ましい。また、無機リチウム塩として、リン原子を有する無機リチウム塩を用いると、遊離のフッ素原子を放出し易くなることからより好ましい。
上記有機リチウム塩の具体例としては、例えば、LiN(SOCF、LiN(SO等の、LiN(SO2m+1〔mは1〜8の整数〕で表される有機リチウム塩;LiPF(CF)等の、LiPF(C2p+16−n〔nは1〜5の整数、pは1〜8の整数〕で表される有機リチウム塩;LiBF(CF)等の、LiBF(C2s+14−q〔qは1〜3の整数、sは1〜8の整数〕で表される有機リチウム塩;LiB(Cで表されるリチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB);ハロゲン化された有機酸を配位子とするボレートのリチウム塩;LiBF(C)で表されるリチウムオキサラトジフルオロボレート(LiODFB);LiB(Cで表されるリチウムビス(マロネート)ボレート(LiBMB);LiPF(C)で表されるリチウムテトラフルオロオキサラトフォスフェート;下記一般式(1a)、(1b)、及び(1c):
LiC(SO)(SO)(SO) (1a)
LiN(SOOR)(SOOR) (1b)
LiN(SO)(SOOR) (1c)
{式中、R、R、R、R、R、R、及びRは、互いに同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基を示す。}のそれぞれで表される化合物が挙げられる。
これらの有機リチウム塩の中でも、構造上安定であることからホウ素原子を有する有機リチウム塩が好ましい。ホウ素原子を有する有機リチウム塩は、ホウ素原子を有する配位子が電気化学的な反応に関与して、Solid Electrolyte Interface(SEI)と呼ばれる保護皮膜を電極表面に形成することができる。そのため、内部抵抗の増加を抑制する観点から好ましい。
上記リチウム塩は、本実施形態における非水電解液中に、0.1〜3mol/Lの濃度で含有されることが好ましく、0.5〜2mol/Lの濃度で含有されることがより好ましく、0.8〜1.6mol/Lの濃度で含有されることが更に好ましい。リチウム塩の濃度がこの範囲内にあることによって、電解液のイオン伝導率が極めて高い状態に保たれると同時に、リチウム空気電池の充放電効率もより高い状態に保たれる。 上記非水電解液におけるリチウム塩としては、無機リチウム塩と有機リチウム塩とを併用することが好ましい。特に好ましくは、
LiPF、LiBF、LiAsF、LiSiF、LiSbF、Li1212−b〔bは0〜3の整数〕、及びLiN(SOF)から成る群より選択される1種類以上の無機リチウム塩と、
LiBF(C)、LiB(C、LiPF(C)、LiPF(C、LiN(SOCF、及びLiN(SOから成る群より選択される1種類以上の有機リチウム塩と、
の双方を含有することである。この場合、無機リチウム塩及び有機リチウム塩の使用割合は、無機リチウム塩及び有機リチウム塩の合計に対する無機リチウム塩のモル百分率として、1〜30モル%であることが好ましく、5〜15モル%であることがより好ましい。
<3−3.その他の任意的添加剤>
本実施形態における非水電解液には、電極を保護する添加剤が含有されていてもよい。本実施形態における任意的添加剤としては、本発明による課題解決を阻害しないものであれば特に制限はない。また、該添加剤は、リチウム塩を溶解する溶媒としての役割を担う物質(非水溶媒)と実質的に重複してもよい。
任意的添加剤は、本実施形態における非水電解液及びリチウム空気電池の性能向上に寄与する物質であることが好ましい。しかしながら該添加剤は、電気化学的な反応には直接関与しない物質をも包含する。
任意的添加剤の具体例としては、例えば、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、シス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、トランス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4,5−トリフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4,5,5−テトラフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4,5−トリフルオロ−5−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン等のフルオロエチレンカーボネート;ビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート等の不飽和結合含有環状カーボネート;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン;1,2−ジオキサン等の環状エーテル;
メチルホルメート、メチルアセテート、メチルプロピオネート、メチルブチレート、エチルホルメート、エチルアセテート、エチルプロピオネート、エチルブチレート、n−プロピルホルメート、n−プロピルアセテート、n−プロピルプロピオネート、n−プロピルブチレート、イソプロピルホルメート、イソプロピルアセテート、イソプロピルプロピオネート、イソプロピルブチレート、n−ブチルホルメート、n−ブチルアセテート、n−ブチルプロピオネート、n−ブチルブチレート、イソブチルホルメート、イソブチルアセテート、イソブチルプロピオネート、イソブチルブチレート、sec−ブチルホルメート、sec−ブチルアセテート、sec−ブチルプロピオネート、sec−ブチルブチレート、tert−ブチルホルメート、tert−ブチルアセテート、tert−ブチルプロピオネート、tert−ブチルブチレート、メチルピバレート、n−ブチルピバレート、n−ヘキシルピバレート、n−オクチルピバレート、ジメチルオキサレート、エチルメチルオキサレート、ジエチルオキサレート、ジフェニルオキサレート、マロン酸エステル、フマル酸エステル、マレイン酸エステル等のカルボン酸エステル;
N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド;エチレンサルファイト、プロピレンサルファイト、ブチレンサルファイト、ペンテンサルファイト、スルホラン、3−メチルスルホラン、3−スルホレン、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、1,3−プロパンジオール硫酸エステル、テトラメチレンスルホキシド、チオフェン1−オキシド等の環状硫黄化合物;モノフルオロベンゼン、ビフェニル、フッ素化ビフェニル等の芳香族化合物;ニトロメタン等のニトロ化合物;シッフ塩基;シッフ塩基錯体;オキサラト錯体等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
本実施形態における非水電解液中の任意的添加剤の含有量については、特に制限はない。非水電解液の全量に対して、0.1〜30質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%であることがより好ましい。
本実施形態において、上記のような任意的添加剤の使用量が多いほど本実施形態に係る電解液の劣化が抑えられるが、該添加剤の量が少ないほど低温環境下における高出力特性が向上することになる。従って、任意的添加剤の含有量が上記の範囲内にあることによって、リチウム空気電池としての基本的な機能を損なうことなく、非水電解液の高イオン伝導度に基づく優れた性能をより十分に発揮することができる。
このような組成で電解液を調製することにより、安定したイオン伝導性が実現されるとともに、高温においても負極成分の溶出が可及的に抑制されたリチウム空気電池を提供することができる。
<4.リチウム空気電池セル>
本実施形態のリチウム空気電池は、上記のような空気極、負極、及び非水電解液を備える。
該リチウム空気電池は、例えば
非水電解液が、前記空気極と前記負極との間に配置された態様(第1の実施形態)であることができ、或いは、
前記空気極と前記負極との間にリチウムイオン伝導性を有する隔膜が配置され、
前記非水電解液が、前記負極と前記リチウムイオン伝導性を有する隔膜との間に配置された態様(第2の実施形態)であることができる。
第1の実施形態におけるリチウム空気電池の構造の一例を図1に、
第2の実施形態におけるリチウム空気電池の構造の一例を図2に、
それぞれ示した。
図1のリチウム空気電池100は、空気極1、負極2、及び非水電解液31を備える。
空気極1は、正極集電体11の片面上に正極活物質層12が形成されて成る。正極集電体11には、該正極集電体11に開口され、正極活物質層12に空気(酸素)を供給するための空気孔13が形成されている。負極2は、負極集電体21の片面上に負極活物質層22が形成されて成る。これら空気極1及び負極2には、電気を外部に取り出して利用するための正極端子14及び負極端子24が、それぞれ、各集電体に電気的に接続されている。
リチウム空気電池100において、空気極1と負極2との間に配置されている非水電解液31は、本実施形態における非水電解液である。
図2のリチウム空気電池200は、空気極1、負極2、及び非水電解液のほかに、隔壁4を備える。この隔壁4は、リチウムイオン伝導性を有するが、液体を透過しない材料から成ることが好ましい。このような材料としては、例えば、リチウム原子を含む無機固体電解質が好ましい。更に好ましくは、リチウム原子を含む無機酸化物又は無機硫化物である。
上記無機酸化物としては、例えば、酸化物ガラス、結晶等が挙げられる。
本実施形態において好ましく用いられる酸化物ガラスとしては、例えば、
リチウム原子と、
B、Si、及びPからなる群より選択される1種以上の元素と
を含む酸化物等を挙げることができる。具体的には、例えば、LiSiO−LiBO系酸化物等を挙げることができる。
酸化物結晶としては、例えば、
リチウム原子と、
Al、Ti、P、La、N、Si、In、及びNbからなる群より選択される1種以上の元素と
を含む酸化物結晶等を挙げることができる。具体的には、例えば、NaZrSiPO12、LiTi(PO、LiAlTi(PO、LiLaZr12、La0.5Li0.5TiO等を挙げることができる。
硫化物としては、例えば、硫化物ガラス、硫化物結晶等を挙げることができる。これらはいずれも構成元素にリチウム原子を含むものであり、支持電解質を必要としない(硫化物は、この点で有機高分子を含む固体電解質層と異なる。)。具体的には、例えば、LiPS系、LiSiS系、LiGeS−LiPS系、LiS−SiS系、SiS−P系、LiS−B系、LiS−SiS−LiSiO系等の各硫化物を挙げることができる。中でも、LiS−P系、Li3.25Ge0.250.75系等が、イオン伝導率が高く、好ましい。
無機固体電解質層に含まれる酸化物及び/又は硫化物が耐還元性に劣る場合には、該無機固体電解質層と負極との間に、多孔質膜、不織布、又は金属酸化物層を配置することが好ましい。
リチウム空気電池200における空気極1及び負極2は、それぞれ、リチウム空気電池100における空気極1及び負極2と同様のものから成ることができる。
リチウム空気電池200における非水電解液は、
負極2と隔壁4との間に配置されている非水電解液31と、
空気極1と隔壁4との間に配置されている非水電解液32と、
から構成される。隔壁4を介して相対している非水電解液31と非水電解液32との間では、該隔壁4を通してリチウムイオンは流通することができるが、非水電解液31及び非水電解液32が相互に混合することはない。
リチウム空気電池200における非水電解液31は、本実施形態における非水電解液である。一方、非水電解液32は、本実施形態における非水電解液であってもよいし、これと異なってもよい。非水電解液32としては、例えば、アセトニトリル85〜100体積%を含む非水溶媒を含有する非水電解液を挙げることができる。この非水電解液中の非水溶媒は、アセトニトリルの他に、本実施形態における非水溶媒として上記に例示したもののうちの、アセトニトリル以外の非水溶媒を含有していてもよい。非水電解液32は、非水溶媒の他にリチウム塩が含有されていてもよい。このリチウム塩としては、本実施形態におけるリチウム塩として上記に例示したもののうちの1種以上を適宜に選択して使用することができる。非水電解液32中のリチウム塩濃度は、好ましくは0.1〜10モル/Lであり、より好ましくは0.5〜4.0モル/Lである。
リチウム空気電池100及びリチウム空気電池200は、それぞれ、適当な容器に収納して使用することが好ましい。この容器としては、例えば、内面が熱可塑性樹脂層から形成されたラミネートフィルム製の容器を例示することができる。
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
リチウム空気電池の各種特性は、下記のようにして測定、評価された。
<リチウム空気電池の50℃貯蔵試験>
ケッチェンブラック90重量%及びポリテトラフルオロエチレン10重量%を乾式混合し、圧延して、縦横20mm、厚さ200μmのフィルム状の正極層を得た。この正極層を、正極集電体であるステンレス製メッシュに圧着することにより、正極を作製した。
一方、金属リチウム箔をニッケル製メッシュに圧着することにより、負極を作製した。
上記の正極及び負極を、各実施例又は比較例で調製した電解液とともにリチウム空気電池用の外装体の中に封入し、50℃において1日(24時間)保存した。
上記条件下の保存において、1日(24時間)後に、それぞれ、負極の状態を観察し、以下の基準で評価した。
金属リチウム箔の変質が認められた場合:×(不良)
非水系電解液が無色透明のままであり、かつ、金属リチウム箔の変質も認められなかった場合:○(良好)
<実施例1〜22及び比較例1〜13>
表1に記載の配合比になるように非水溶媒を調製し、該非水溶媒に、表1に記載した種類及び量(濃度)のリチウム塩を添加して溶解することにより、非水電解液を調製した。この非水電解液を用いて、上述の方法により、リチウム空気電池の50℃貯蔵試験を行った。
評価結果は表1に示した。
Figure 0006470616
Figure 0006470616
上記表1における成分の略称は、それぞれ、以下のとおりである。
(非水溶媒)
AN:アセトニトリル
(環状カーボネート)
VC:ビニレンカーボネート
PC:プロピレンカーボネート
EC:エチレンカーボネート
(環状エステル)
GBL:γ−ブチロラクトン
(リチウム塩)
(無機リチウム塩) LiPF及びLiBFとも、表に記載のとおりである。
(有機リチウム塩)
LiBOB:LiB(C
LiTFSI:LiN(SOCF
表1における「−」は、当該欄に相当する成分を使用しなかったことを示す。
1: 正極(空気極)
11: 正極集電体
12: 正極活物質層
13: 空気孔
14: 正極端子
2: 負極
21: 負極集電体
22: 負極活物質層
24: 負極端子
31: 本実施形態における非水電解液
32: 非水電解液
4: 隔壁
100: リチウム空気電池の第1の実施形態
200: リチウム空気電池の第2の実施形態

Claims (5)

  1. 空気極、
    リチウムイオン伝導性を有する隔膜、
    金属リチウム又はリチウム合金を含有する負極
    セトニトリル30〜85体積%と、環状カーボネート及び環状エステルからなる群から選択される1種以上と、を含む非水溶媒を含有する第一の非水電解液、並びに
    アセトニトリル85〜100体積%を含む非水溶媒を含有する第二の非水電解液
    を備え
    前記リチウムイオン伝導性を有する隔膜は、前記空気極と前記負極との間に配置され、
    前記第一の非水電解液は、前記負極と前記リチウムイオン伝導性を有する隔膜との間に配置されており、かつ、
    前記第二の非水電解液は、前記空気極と前記リチウムイオン伝導性を有する隔膜との間に配置されていることを特徴とする、リチウム空気電池。
  2. 前記第一の非水電解液が、リチウム塩を含有し、
    前記リチウム塩は、
    LiPF、LiBF、LiAsF、LiSiF、LiSbF、Li1212−b〔bは0〜3の整数〕、及びLiN(SOF)から成る群より選択される1種類以上の無機リチウム塩と、
    LiBF(C)、LiB(C、LiPF(C)、LiPF(C、LiN(SOCF、及びLiN(SOから成る群より選択される1種類以上の有機リチウム塩と、
    を含有する、請求項1に記載のリチウム空気電池。
  3. 前記第一の非水電解液における前記リチウム塩の濃度が0.1〜3mol/Lである、請求項2に記載のリチウム空気電池。
  4. 前記第一の非水電解液において、前記無機リチウム塩及び前記有機リチウム塩の合計に対する無機リチウム塩のモル百分率が、1〜30モル%である、請求項2又は3に記載のリチウム空気電池。
  5. 前記第二の非水電解液が、0.1〜10mol/Lの濃度のリチウム塩を含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のリチウム空気電池。
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