次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るトラクタ1の全体的な構成を示す右側面図である。図2は、トラクタ1に備えられるミッションケース103内の構成を示す右側面図である。図3は、ミッションケース103内の構成を示す平面図である。図4は、トラクタ1の動力伝達図である。
図1は、本実施形態に係る作業車両としてのトラクタ1を示している。トラクタ1の機体2は、走行車輪(走行部)としての左右1対の前輪101,101及び左右1対の後輪102,102により支持されている。機体2の前部のボンネット106の内部には、駆動源としてのエンジン105が配置される。
ボンネット106の後方の機体2の上面には、キャビン112が配置され、キャビン112の内部には、オペレータが着座するための座席111が配置されている。座席111の周囲には、ステアリングハンドル107と、リバーサレバー(切替操作部)108と、主変速レバー109と、が備えられる。オペレータは、リバーサレバー108を操作することで、前進と後進を切り替えたり、ニュートラル(エンジン105が発生させた動力が走行車輪に伝達されない状態)を指示することができる。主変速レバー109は、車速を切り替えるためのレバーである。また、他の操作具として、例えば、副変速レバー、クラッチペダル、及びPTO変速レバー等が備えられる。座席111及び上記の操作具等は、キャビン112内に構成された運転部に配置されている。
キャビン112の左右外側には、オペレータが乗降するステップ113,113が設けられている。また、エンジン105に燃料を供給する図略の燃料タンクがキャビン112の前方に配置され、この燃料タンクはボンネット106内に収容されている。
機体2の構造体をなすフレームは、前バンパー114及び前車軸ケース115を有する図略のエンジンフレームと、当該エンジンフレームの後部に着脱自在に固定した左右の機体フレーム116,116と、により構成されている。当該機体フレーム116の後部にはミッションケース103が連結されている。ミッションケース103は、エンジン105からの回転動力を適宜変速して前後4輪に伝達するための機構を内部に収容している。ミッションケース103には、後車軸117を介して後輪102が取り付けられている。左右の後輪102の上方は、左右のリアフェンダー118によって覆われている。
エンジン105の後方には図略のクラッチハウジングが配置され、当該クラッチハウジングの後方には上述のミッションケース103が配置される。これにより、エンジン105からの駆動力を後輪102に変速しながら伝達して駆動することができる。また、トラクタ1は後述する2輪駆動・4輪駆動切換機構55を備えており、ミッションケース103の出力を後輪102だけでなく前輪101に同時に伝達することを可能としている。
エンジン105の駆動力は、ミッションケース103の後端から突出したPTO軸119に伝達される。トラクタ1は作業機装着装置を備えており、トラクタ1の後端に、図4に示す作業機100を装着可能に構成されている。PTO軸119は、作業機100を、図示しないユニバーサルジョイント等を介して駆動することができる。
また、エンジン105の駆動力は、図5に示すオルタネータ144にも伝達される。オルタネータ144は、エンジン105の駆動力を用いて発電し、トラクタ1が備える電気機器に電力を供給する。また、トラクタ1は、ボンネット106の内部にバッテリー145を備えている。バッテリー145は、オルタネータ144によって充電される。バッテリー145は、オルタネータ144の停止中(即ちエンジン105の停止中)において、例えばスタータモータ等の電気機器に電力を供給する。
図2から図4に示すように、ミッションケース103内には、エンジン105から伝達される回転動力を適宜に変速するための油圧式無段変速機(HST)120が収容される。エンジン105の動力は、図略の主動軸及び動力伝達軸を経由してミッションケース103の主変速入力軸121に伝達され、油圧式無段変速機120及び走行変速ギア機構によって適宜変速されて、左右の後輪102に伝達されるようになっている。
油圧式無段変速機120は、主変速装置として作用するものであり、油圧回路によって相互に接続された油圧ポンプ124と油圧モータ126とを備えて構成されている。油圧ポンプ124は主変速入力軸121によって駆動される一方、油圧モータ126は伝達軸48を駆動する。
油圧ポンプ124と油圧モータ126の一方は固定容量型とされ、他方は可変容量型とされている。本実施形態においては、油圧モータ126が固定容量型とされ、油圧ポンプ124が可変容量型とされており、当該油圧ポンプ124が吐出する作動油の量(吐出量)を変化させることができる。なお、油圧モータ126を可変容量型とし、油圧ポンプ124を固定容量型としても良い。
油圧ポンプ124には、傾斜角度に応じて吐出量を変化させる可動斜板125が設けられている。この可動斜板125は、電動シリンダ143を駆動することで、可動斜板125の傾斜角度が変化させる。なお、可動斜板125の傾斜角度を変化させる構成の詳細については後述する。
主変速入力軸121は、その軸線が前後方向に延びるように配置される。主変速入力軸121の前端にはエンジン105の出力軸22が連結されている。また、主変速入力軸121の後端には出力伝達軸23が連結され、この出力伝達軸23は、出力軸22及び主変速入力軸121と一体的に回転するように構成されている。主変速出力軸としての伝達軸48も、その軸線が前後方向に延びるように配置される。
ミッションケース103内の、油圧式無段変速機120の後方には、出力伝達軸23、伝達軸48、及び前輪伝達軸14が互いに平行に配置される。伝達軸48は油圧モータ126から後方に突出するように配置され、この伝達軸48に、油圧式無段変速機120で無段階に変速された回転が出力される。
前輪伝達軸14の後端部には前輪駆動出力軸30が連結され、この前輪駆動出力軸30の後部には、後に詳述する2輪駆動・4輪駆動切換機構55が備えられる。また、出力伝達軸23の後方には、PTO軸119の回転を適宜変速するためのPTO変速機構130が備えられる。出力伝達軸23に伝達されたエンジン105の動力は、PTO変速機構130により適宜変速された後にPTOクラッチ軸29に伝達され、PTO軸119に出力される。この構成により、トラクタ1の後端に装着された作業機100に動力を伝達して駆動することができる。
次に、トラクタの動力伝動系の構成について、図4を参照して詳細に説明する。前記クラッチハウジング内には多板式の主クラッチ21が配置され、この主クラッチ21は前記クラッチペダルにより動力の伝達/遮断を切り換えることができる。そして、エンジン105の出力軸22(クランク軸)の回転が主クラッチ21に入力された後、主クラッチ21の出力が主変速入力軸121を介して油圧ポンプ124に入力されるとともに、出力伝達軸23を介してPTO変速機構130に入力される。出力伝達軸23は車両後方に延出されており、その後端には、伝動歯車64とPTO3速爪64aが配置されている。
出力伝達軸23の後方には、PTOクラッチ軸29が回転可能に支持されている。PTOクラッチ軸29は、出力伝達軸23と軸線を一致させて配置されている。PTOクラッチ軸29には、3枚のPTO変速歯車、即ち、PTO1速歯車61、PTO2速歯車62、及びPTO逆転歯車63が回転可能に支持される。
主軸25は、PTOクラッチ軸29と平行となるように配置され、回転可能に支持されている。主軸25には、4つの伝達歯車41,42,43,44が固定されている。出力伝達軸23に配置された伝動歯車64は、伝達歯車44に噛み合っている。従って、主軸25は、出力伝達軸23の回転に応じて回転する。
主軸25の伝達歯車41はPTO1速歯車61と噛み合い、伝達歯車42はPTO2速歯車62と噛み合っている。また、伝達歯車43は、回転可能に支持されたカウンタ歯車37と噛み合い、このカウンタ歯車37はPTO逆転歯車63と噛み合っている。この構成で、PTOクラッチ軸29に配置された後述の2つのPTOクラッチスライダ93,94がスライドすることにより、出力伝達軸23の動力を適宜変速してPTOクラッチ軸29に伝達することができる。
2つのPTOクラッチスライダ93,94は、PTOクラッチ軸29に対し、相対回転不能かつ軸方向スライド可能にスプライン嵌合されている。PTOクラッチスライダ93,94は、前記PTO変速レバーの操作により軸方向に移動させることができる。オペレータがPTO変速レバーを操作することで、PTOクラッチスライダ93がPTO3速爪64aに結合した状態と、PTOクラッチスライダ93がPTO逆転歯車63に結合した状態と、PTOクラッチスライダ94がPTO1速歯車61に結合した状態と、PTOクラッチスライダ94がPTO2速歯車62に結合した状態と、を切り換えて、3段階で変速された回転(又は、逆方向の回転)をPTOクラッチ軸29に得ることができる。PTOクラッチ軸29の回転は減速歯車91を介してPTO軸119に伝達され、作業機100を駆動することができる。
伝達軸48は、出力伝達軸23と平行となるように配置され、回転可能に支持されている。伝達軸48は、2つの歯車45,46を備える。
副変速軸35は、伝達軸48と平行となるように配置され、回転可能に支持されている。副変速軸35には、歯車59が相対回転可能に支持されている。伝達軸48に固定されている前記歯車45は、歯車59に噛み合っている。副変速軸35には、歯車付きの副変速シフタ92が、相対回転不能かつ軸方向スライド可能にスプライン嵌合されている。副変速シフタ92は、前記副変速レバーの操作により軸方向に移動させることができる。オペレータが副変速レバーを操作することで、副変速シフタ92が歯車59に形成された爪に結合した状態と、副変速シフタ92の歯車が伝達軸48の歯車46と噛み合う状態と、を切り換えて、2段階で変速された回転を副変速軸35に得ることができる。以上により、2段変速可能な副変速装置が構成されている。ただし、副変速シフタ92が歯車59の爪に結合せず、かつ、副変速シフタ92の歯車が歯車46に噛み合わない状態とした場合には、副変速軸35に動力は伝達されない。
副変速軸35には、3つの歯車20,49,19が固定されている。これらの歯車20,49,19は、副変速軸35と一体的に回転する。副変速軸35に伝達された動力は、上記の歯車20,49,19によって、後輪駆動系及び前輪駆動系にそれぞれ出力される。
後輪駆動系について説明する。ミッションケース103の後部には、後輪デフ装置66bが配置されている。副変速軸35の回転は、その後端に固定された円錐状の歯車20を介して後輪デフ装置66bに入力され、リアアクスルケース内の車軸、伝達歯車等を経由して後輪102を駆動する。
前輪駆動系について説明する。副変速軸35と平行となるように前輪駆動出力軸30が配置され、回転可能に支持されている。前輪駆動出力軸30には、駆動入力歯車50と、増速駆動入力歯車60と、がそれぞれ相対回転可能に支持されている。副変速軸35の歯車19は駆動入力歯車50と噛み合い、歯車49は増速駆動入力歯車60と噛み合っている。前輪駆動出力軸30には、後に詳述する2輪駆動・4輪駆動切換機構55が配置されている。2輪駆動・4輪駆動切換機構55は、駆動入力歯車50又は増速駆動入力歯車60の回転を前輪駆動出力軸30に伝達できるように構成されている。前輪駆動出力軸30の回転は、その前端に連結された前輪伝達軸14に伝達されるとともに、ユニバーサルジョイント等を介して前輪側のデフ装置66aに入力され、フロントアクスルケース内の車軸、伝達歯車等を介して前輪101を駆動する。
油圧回路について簡単に説明する。エンジン105の駆動により図略の油圧ポンプが駆動され、この油圧ポンプによりパワーステアリング装置に作動油が送られて、ステアリングハンドル107の回動に連動した方向切換バルブの切換により、パワーステアリング装置のパワーステアリングシリンダが伸縮されて前輪を回動する。そして、パワーステアリング装置を経た作動油は、図示しない切換バルブを経て、2輪駆動・4輪駆動切換機構55に送られ、この切換機構を作動させることにより、前輪増速又は2輪駆動・4輪駆動の切換が行われる。
次に、油圧ポンプ124の作動油の吐出量を変化させる構成について説明する。図5に示すように、トラクタ1は、制御部140と、リバーサレバー位置検出部(切替操作検出部)141と、主変速レバー位置検出部142と、電動シリンダ(電動アクチュエータ)143と、ポテンショメータ(傾斜角度検出部)146と、を備える。
制御部140は、マイクロコンピュータ等で構成されており、少なくとも油圧式無段変速機120を含む装置の制御を行う。リバーサレバー位置検出部141は、リバーサレバー108のレバー位置を検出して制御部140へ出力する。主変速レバー位置検出部142は、主変速レバー109のレバー位置を検出して制御部140へ出力する。この構成により、制御部140は、リバーサレバー108及び主変速レバー109に行われたオペレータの操作を把握することができる。
制御部140は、リバーサレバー位置検出部141及び主変速レバー位置検出部142の検出結果に基づいて、電動シリンダ143の伸縮量(駆動量)を制御する。また、ポテンショメータ146は、可動斜板125の傾斜角度に応じて変化する回転角を検出することで、可動斜板125の傾斜角度を検出する。これにより、制御部140は、可動斜板125の傾斜角度を所定の値に合わせることができる。
例えば、オペレータがリバーサレバー108を操作して前進から後進に切り替えた場合、制御部140は、可動斜板125が前進の角度範囲から後進の角度範囲に変化するように、電動シリンダ143の伸縮量を変化させる。オペレータがリバーサレバー108を操作してニュートラルを指示した場合、制御部140は、可動斜板125が中立位置となるように(動力が伝達軸48に伝達されないように)、電動シリンダ143の伸縮量を変化させる。また、オペレータが主変速レバー109を操作して目標速度を変化させた場合、伝達軸48の回転速度が速くなるように、電動シリンダ143の伸縮量を変化させる。
なお、制御部140、電動シリンダ143、ポテンショメータ146は、上述のオルタネータ144から電力が供給されることで駆動されるが、エンジン105の停止中においては、バッテリー145から電力が供給されることで駆動される。
従来のトラクタでは、電動シリンダではなく油圧シリンダを用いていたため、エンジン105の停止中に駆動することができなかった。従って、前進中又は後進中に急にエンジンストップが発生した場合、可動斜板125の傾斜角度を中立位置に戻すことができなかった。そのため、その後にエンジン105を始動した場合、トラクタ1が僅かに走行する等して、オペレータに違和感を与える可能性があった。
この点、本実施形態のトラクタ1は、エンジン105の停止中でも電気機器が使用可能な状態であれば(バッテリー145からの電力が供給されていれば)、リバーサレバー108のレバー位置をニュートラルに切り替えることで、可動斜板125を中立位置に戻すことができる。これにより、エンジン105を再始動した直後に油圧式無段変速機120の出力が発生することを防止できる。
また、油圧シリンダではなく電動シリンダを使うことで、簡単な制御でロッドの位置精度が高くなるため、油圧式無段変速機120を的確に制御することができる。
次に、電動シリンダ143を駆動して可動斜板125の傾斜角度を切り替える構成について図6から図11を参照して説明する。なお、以下の説明では、可動斜板125が前進の角度範囲にあるときの状態を「前進状態」と称し、可動斜板125が後進の角度範囲にあるときの状態を「後進状態」と称し、可動斜板125が中立位置にあるときの状態を「中立状態」と称する。
図6から図8に示すように、電動シリンダ143は、シリンダ駆動モータ(モータ)151と、伸縮部152と、清掃部材154と、保護ブーツ(保護部材)155と、シリンダ固定板156と、を備える。また、電動シリンダ143は、長手方向及び伸縮方向がトラクタ1の前後方向と略一致するように配置されている。電動シリンダ143の少なくとも一部は、後車軸117の中央の高さを示す仮想線L1(図6)より高い位置に配置されている。
シリンダ駆動モータ151は、オルタネータ144又はバッテリー145から電力の供給を受けて駆動する。シリンダ駆動モータ151は、ステッピングモータ等であり、制御部140の指示に応じた回転数だけ回転する。シリンダ駆動モータ151の出力軸は図略のボールネジに伝達される。シリンダ駆動モータ151の出力軸が回転することで、ボールネジに取り付けられたナットがスライド移動する。なお、シリンダ駆動モータ151は、シリンダ固定板156を介してミッションケース103に固定されている。また、シリンダ駆動モータ151の大部分(少なくとも中央部)は仮想線L1より高い位置に配置されている。
図8に示すように、伸縮部152は、ロッド(第1部材)152aとロッドケース(第2部材)152bを備える。ロッド152aは、このナットに取り付けられている。また、ロッドケース152bは、ロッド152aと相対移動可能に、当該ロッド152aの外側に配置されている。シリンダ駆動モータ151を回転させることで、ロッドケース152bに対してロッド152aを移動(スライド)させることができる(伸縮部152を伸縮させることができる)。また、伸縮部152の大部分(少なくとも中央部)は仮想線L1より高い位置に配置されている。
清掃部材154は、ロッドケース152bの内側に、ロッド152aと接触するように固定されている。この構成により、ロッドケース152bに対してロッド152aを移動させることで、ロッド152aの表面を清掃することができる。従って、ロッド152aの表面に泥等が付着していた場合であっても、当該泥がロッド152aとロッドケース152bの間に入り込むことを防止できる。
保護ブーツ155は、伸縮部152を覆うように配置されている。保護ブーツ155は、地面から跳ねた水又は泥等から伸縮部152を保護する。また、保護ブーツ155は、軟質樹脂等で構成され、蛇腹構造を有しているため、伸縮することができる。従って、伸縮部152を伸縮させた場合であっても、伸縮部152を保護することができる。これにより、ロッド152aとロッドケース152bの間から水又は泥等が浸入することを一層確実に防止することができるので、電動シリンダ143(ひいては油圧式無段変速機120)の信頼性を向上させることができる。
更に、電動シリンダ143の大部分は、仮想線L1より高い位置に配置されているため、この点においても水又は泥等が掛かりにくい。従って、油圧式無段変速機120の制御の信頼性を一層向上させることができる。電動シリンダ143は、油圧シリンダと比較して水又は泥等への耐性が低いが、本実施形態のトラクタ1は、構造及び配置において水又は泥等への耐性を高めているため、十分な信頼性を実現している。
トラクタ1は、電動シリンダ143の駆動を油圧式無段変速機120のトラニオンアーム78に伝達する動力伝達機構70を備える。図6から図8に示すように、動力伝達機構70は、シリンダリンク71と、第1回転板72と、第2回転板73と、固定板74と、トラニオンアーム回転リンク76と、を備える。
シリンダリンク71の一端は、ロッド152aに接続されている。従って、シリンダリンク71は、ロッド152aと一体的に移動可能である。シリンダリンク71の他端は、第1回転板72に回転可能に連結されている。
第1回転板72は、図7に示すようにクランク状に折り曲げられた板材である。第1回転板72の上部には、シリンダリンク71が回転可能に連結されている。第1回転板72の下部には、第2回転板73がボルトによって固定されている。従って、第1回転板72及び第2回転板73は一体的に移動可能に構成されている。
第2回転板73は、第1回転板72よりもミッションケース103側に配置されている。第2回転板73の下部には、固定板74が回転可能に連結されている。この構成により、第1回転板72及び第2回転板73は、回転軸部75を回転中心として一体的に回転可能である。
この回転軸部75の外側には、バネ75aが取り付けられている。また、第2回転板73にはミッションケース103の反対側に突出する突出部材73aが取り付けられている。固定板74にも同様に、ミッションケース103の反対側に突出する突出部材74aが取り付けられている。バネ75aはコイルバネであり、回転軸部75に巻き付けられている。バネ75aの一端は突出部材73aの下側に位置され、バネ75aの他端は突出部材74aの上側に位置している。
この構成により、第1回転板72及び第2回転板73が時計回り(図10、前進状態)又は反時計回り(図11、後進状態)に回転した場合、バネ75aは、突出部材73aと突出部材74aとを近づける方向に両者を付勢する。これにより、第1回転板72及び第2回転板73は、図7の中立状態に戻す方向に付勢される。
図7に示すように、第2回転板73の上部であってミッションケース103側には、防振部材77を介してトラニオンアーム回転リンク76が回転可能に連結されている。防振部材77は、油圧式無段変速機120と電動シリンダ143との間で振動が伝達されることを防止する。従って、例えば油圧式無段変速機120で発生した振動が電動シリンダ143に伝達されることを防止できる。
トラニオンアーム回転リンク76の一端は、上述のように第2回転板73に回転可能に接続されており、その他端は、トラニオンアーム78に回転可能に接続されている。トラニオンアーム78を回転させることで、可動斜板125の傾斜角度を変化させることができる。
以上の構成により、中立状態から電動シリンダ143を伸ばすことで、トラニオンアーム78を反時計回りに回転させて、可動斜板125の傾斜角度を前進の角度範囲に変化させることができる(図10を参照)。また、中立状態から電動シリンダ143を縮めることで、トラニオンアーム78を時計回りに回転させて、可動斜板125の傾斜角度を後進の角度範囲に変化させることができる(図11を参照)。
また、トラクタ1は、電動シリンダ143の伸縮量(即ち可動斜板125の傾斜角度)を検出するための構成として、アーム部材81と、L字リンク82と、ポテンショ回動リンク83と、ポテンショメータ146と、を備える。
アーム部材81は、電動シリンダ143と略平行に配置された細長状の部材である。アーム部材81の一端は、第1回転板72(詳細にはシリンダリンク71の下側)に回転可能に連結されている。アーム部材81の他端は、L字リンク82の下端に回転可能に連結されている。
L字リンク82は、L字状の部材であり、L字の一辺と他辺の接続部分を中心として回転可能に構成されている。L字リンク82の一端はアーム部材81に接続されている。L字リンク82の他端には、凹部82aが形成されている。凹部82aには、ポテンショ回動リンク83の一端が位置している。
ポテンショ回動リンク83は、略長方形の板状の部材であり、一端に取り付けられた円柱状の接触部材が凹部82aの内部に位置している。ポテンショ回動リンク83の他端は、ポテンショメータ146に回転可能に連結されている。この構成により、L字リンク82が回転することで、ポテンショ回動リンク83は凹部82aから力を受けて、回転する(図10及び図11)。
ポテンショメータ146は、ポテンショ回動リンク83の回転角度を検出して上述の制御部140に出力する。制御部140は、ポテンショ回動リンク83の回転角度と、可動斜板125の傾斜角度(即ち、電動シリンダ143の伸縮量)と、の関係に基づいて、可動斜板125の傾斜角度を検出する。このように、ポテンショメータ146は、可動斜板125の傾斜角度を間接的に検出しているが、このような構成においても「可動斜板125の傾斜角度を検出」に該当するものとする。
また、ポテンショメータ146は、仮想線L1より高い位置に配置されているため、水又は泥等が掛かりにくい。従って、ポテンショメータ146、ひいては油圧式無段変速機120の制御の信頼性を向上させることができる。
以上に説明したように、本実施形態のトラクタ1は、機体2と、前輪101及び後輪102と、油圧式無段変速機120と、電動シリンダ143と、を備える。機体2は、エンジン105を支持する。前輪101及び後輪102は、機体2を走行させる。油圧式無段変速機120は、エンジン105の出力を変速し、可動斜板125の傾斜角度を変化させることで変速比が変化する。電動シリンダ143は、油圧式無段変速機120の可動斜板125の傾斜角度を変化させる。電動シリンダ143の少なくとも一部は、前輪101及び後輪102の上下方向の中央よりも高い位置にある。
これにより、電動シリンダ143が比較的高い位置に配置されるため、地面から飛散した水又は泥等が付着しにくくなるため、油圧式無段変速機120の制御の信頼性を向上させることができる。
また、本実施形態のトラクタ1は、可動斜板125の傾斜角度を検出するポテンショメータ146を備える。ポテンショメータ146の少なくとも一部は、前輪101及び後輪102の上下方向の中央よりも高い位置にある。
これにより、電動シリンダ143だけでなく、ポテンショメータ146も比較的高い位置に配置されるため、油圧式無段変速機120の制御の信頼性を一層向上させることができる。
また、本実施形態のトラクタ1において、電動シリンダ143は、シリンダ駆動モータ151と、伸縮部152と、を備える。伸縮部152は、シリンダ駆動モータ151の出力によって伸縮する。シリンダ駆動モータ151部の少なくとも一部は、前輪101及び後輪102の上下方向の中央よりも高い位置にある。
これにより、地面から飛散した水によって故障し易いシリンダ駆動モータ151が比較的高い位置に配置されるため、油圧式無段変速機120の制御の信頼性を一層向上させることができる。
また、本実施形態のトラクタ1は、伸縮可能であり、少なくとも伸縮部152の周囲を覆う保護ブーツ155を備える。
これにより、シリンダ駆動モータ151だけでなく伸縮部152についても水又は泥等への耐性を向上させることができるので、油圧式無段変速機120の制御の信頼性を一層向上させることができる。
また、本実施形態のトラクタ1において、伸縮部152は、ロッド152aと、ロッドケース152bと、を備える。ロッドケース152bは、ロッド152aの内側に位置し、ロッド152aに対して相対的に移動する。ロッド152aには、ロッドケース152bの表面を擦って当該表面を清掃する清掃部材154が取り付けられている。
これにより、伸縮部152に泥等が付着した場合であっても、清掃部材154によって泥等を除去することができる。従って、油圧式無段変速機120の制御の信頼性を一層向上させることができる。
また、本実施形態のトラクタ1において、電動シリンダ143と油圧式無段変速機120とが、防振部材77を介して接続されている。
これにより、油圧式無段変速機120と電動シリンダ143との間で振動が伝達することを防止できる。
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変化させることができる。
上記の実施形態では、トラニオンアーム78を駆動する電動アクチュエータとして電動シリンダ143を用いたが、電動で駆動して可動斜板125の傾斜角度を変化可能であれば、他のアクチュエータを用いることもできる。
上記の実施形態では、傾斜角度検出部としてポテンショメータ146を用いたが、傾斜角度検出部としては、回転センサに限られず、可動斜板125に連結される別の部材のスライド量を検出する構成であっても良い。
上記の実施形態では、走行部として前輪101及び後輪102を用いたが、クローラ等であっても良い。この場合であっても上記の実施形態と同様に、側面視において、クローラの上下方向の中央の位置を通る直線が仮想線L1に該当する。
上記の実施形態で示した動力伝達機構70は一例であり、機械要素の種類、数、配置等は適宜変更できる。
本発明は、トラクタ以外の作業車両(例えば、田植機等)に適用することもできる。