JP6467143B2 - 血糖降下作用を有する生薬の薬効評価方法、該薬効評価方法を用いた品質管理方法、及び製造方法 - Google Patents

血糖降下作用を有する生薬の薬効評価方法、該薬効評価方法を用いた品質管理方法、及び製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、血糖降下作用を有する生薬の薬効評価方法、該薬効評価方法を用いた品質管理方法、及び製造方法に関するものである。
これまでに本発明者らは、無脊椎動物であるカイコの病態モデルを構築し、医薬品の治療効果、及び毒性を評価できることを提唱している(特許文献1、非特許文献1・2)。また、本発明者らは、カイコ感染モデルを用いて、細菌、真菌感染治療薬、及び抗ウイルス薬の評価を行えること、及び抗生物質の体内動態において哺乳動物とカイコで共通した面があることを報告している(特許文献2、非特許文献3)。
無脊椎動物であるカイコは、容易に多数の個体を用いて治療薬の評価を行うことができる。また、カイコは、哺乳動物より安価で、狭いスペースで大量の個体を飼育することが可能である。発明者らは、細菌の病原性研究のためにカイコ感染モデルを開発し、大規模なスクリーニングを行い、黄色ブドウ球菌の病原性遺伝子の同定に成功した。また、黄色ブドウ球菌の病原性遺伝子の機能解析においてもカイコ感染モデルが有用であった(非特許文献4・5)。カイコ感染モデルで多数の個体を用いた大規模なスクリーニングや細菌の病原性遺伝子の機能解析ができたのもカイコの利点を生かしたin vivo評価が行えたことによる。
更に、カイコは、線虫やショウジョウバエのような小型無脊椎動物では困難な、注射器を用いた定量的な薬物の体液内注射が容易に実施できる。また、比較的大量の体液を採取し、生化学的な解析をすることが可能である。これらの利点を生かし、発明者らは、カイコを高血糖にする条件を見出し、インスリン等の血糖降下薬の治療効果が評価できること、血糖降下活性があり、糖尿病患者に処方されている生薬の1つであるジオウの粗抽出画分の投与により、高血糖カイコの血糖値が低下すること、及び、高血糖カイコを用いて、ジオウの血糖降下活性における有効成分がガラクトースを多く含む多糖であるポリガラクトースであることを示した(特許文献3、非特許文献6)。
生薬は、経験的に薬効を有すると判定された天然物から有効成分を精製することなく体質の改善等を目的として用いられ、疾患に対応して選択され、治療や予防のために用いられる。生薬は、アジアだけでなく、ヨーロッパ、アメリカ等でも民間薬(folk medicine)として広く利用されている。生薬の薬効は、産地、収穫時期、収穫後の加工調整法、保存状態等により異なる場合が多い。これは、生薬に含まれる有効成分の種類、含量(比)等がサンプル(ロット)間で異なることが原因である。
生薬の品質管理においては、Liquid chromatography mass spectrometry(LC−MS)、fingerprint、quantitative analysis of multi-components by single-marker(QAMS)、thin layer chromatography bio-autographic assay(TLC−BAA)、DNA molecular marker technique等の方法が用いられている。これらの実験法は、生薬に含まれている二次代謝産物の解析により生薬に含まれる有効成分の種類や含量を明らかにすることを目的としている。
しかし、ほとんどの生薬の有効成分は未同定であり、定量法で生薬の薬効を保証するような品質管理を行うことが困難な場合が多く、そこで薬効を指標とした新たな生薬の品質管理技術の確立が望まれている。
また、マウス、ラット等の哺乳動物を用いて、各種生薬のロットの治療活性を検定することが試みられているが、コスト、時間、動物愛護等の点で問題がある。
更に、生薬の品質管理のための、生薬の有効成分の調製が複雑であり、かつ時間がかかることが問題である。例えば、ジオウの有効成分の調製は、5段階での作業が必要であり、有効成分の評価サンプルを調製するまでに約5日間を要していた。よって、より簡便な生薬の調整方法の確立も望まれている。
特開2009−047552号公報 特開2010−133975号公報 国際公開第2010/004916号
Inagaki Y,Matsumoto Y,Kataoka K,Matsuhashi N,Sekimizu K.Evaluation of drug-induced tissue injury by measuring alanine aminotransferase(ALT)activity in silkworm hemolymph.BMC Pharmacol Toxicol.8;13(1):13(2012) Hamamoto H,Tonoike A,Narushima K,Horie R,Sekimizu K.Sikworm as a model animal to evaluate drug candidate toxity and metabolism.Comp Biochem Physiol C.149(3):334-9.(2009) Matsumoto Y,Miyazaki S,Fukunaga DH,Shimizu K,Kawamoto S,Sekimizu K.Quantitative evaluation of cryptococcal pathogenesis and antifungal drugs using a silkworm infection model with Cryptococcus neoformans.J Appl Microbiol.112(1):138-46(2012) Ikuo M,Kaito C,Sekimizu K.The cvfC operon of Staphylococcus aureus contributes to virulence via expression of the thyA gene.Microb Pathog.49(1-2):1-7(2010) Miyazaki S,Matsumoto Y,Sekimizu K,Kaito C.Evaluation of Staphylococcus aureus virulence factors using a silkworm model.FEMS Microbiol Lett.326(2):116-24(2012) Matsumoto Y,Sumiya E,Sugita T,Sekimizu K.An Invertebrate Hyperglycemic Model for the Identification of Anti-Diabetic Drugs. PLoS ONE,6(3),2011 Gao H.,Wang,Z.,Li,Y.,and Qian,Z.Overview of the quality standard research of traditional Chinese medicine,Front Med,2,195-202.(2011)
本発明は、上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、血糖降下作用を有する生薬のロット間の薬効評価方法を提供することにある。特に、従来の方法よりも安価・簡便、再現性が良い「薬効を評価するための血糖降下作用を有する生薬の抽出画分」の調製方法を用いた薬効評価方法を提供することである。
また、該生薬のロット間の薬効評価方法を用いた、生薬の品質管理方法を提供することである。更には、該生薬の品質管理方法を用いて品質管理を行う工程を含む、生薬の製造方法を提供することである。
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、血糖降下作用を有する生薬であるジオウの抽出画分を高血糖カイコに投与した結果、サンプル(ロット)間で血糖降下活性が異なることから、高血糖カイコを用いて生薬の薬効を評価することができることを見出した。
また、従来の抽出方法よりも作業工程が減り、所要時間が短縮された、薬効評価のための、血糖降下作用を有する生薬の抽出画分の調製方法を見出して本発明に至った。
すなわち、本発明は、血糖降下作用を有する生薬のロット間の薬効評価方法であって、
(a)上記生薬を熱水抽出後、得られた熱水抽出画分をエタノール沈殿させる工程を含む方法によって、上記生薬の薬効評価をするための抽出画分を得る工程、
(b)カイコに糖(A)を摂取させることによって、該カイコの脂肪体中又は体液中の糖(B)の濃度を上昇させる工程、
(c)上記工程(b)で得られた脂肪体中又は体液中の糖(B)の濃度が上昇したカイコに、上記工程(a)で得られた生薬の抽出画分を投与する工程、
(d)上記生薬の抽出画分が投与されたカイコの脂肪体中又は体液中の糖(B)の濃度を測定する工程、
を有することを特徴とする薬効評価方法を提供するものである。
また、本発明は、血糖降下作用を有する生薬の品質管理方法であって、上記薬効評価方法を用いることを特徴とする品質管理方法を提供するものである。
また、本発明は、血糖降下作用を有する生薬の製造方法であって、上記品質管理方法を用いて品質管理を行う工程を含むことを特徴とする製造方法を提供するものである。
本発明は、前記問題点と課題を解決できたものである。
本発明の評価方法により、従来困難であった定量法により生薬のサンプル(ロット)間の薬効を評価することができる。また、本発明の薬効評価方法で用いる「薬効を評価するための抽出画分の抽出方法」は、従来の抽出方法に比べて、作業が簡便であり、抽出時間の短縮が可能となった。よって、本発明は、実験の再現性やプロトコールの標準化、及び技術の汎用性を高める効果を有する。
また、本発明の薬効評価方法を用いた生薬の品質管理方法、及び該品質管理方法を用いて品質管理を行う工程を含む生薬の製造方法は、従来方法と比較して、安価、簡便、再現性が良いという効果を有する。
生薬の品質管理において、マウス、ラット等の哺乳動物を用いた薬効評価も考えられるが、マウス、ラット等の哺乳動物は高価であり、汎用的な評価系にはできない。また、生薬の薬効を評価するにあたり、哺乳動物を用いた評価方法は時間を要する。また、多くのサンプルのロットチェックが必要であることから、大量の個数を用いる必要があり、動物愛護の観点からも問題がある。
一方、カイコは、安価であり、特別な飼育スペースを必要とせず、倫理的な問題も少ない。従って、多くのサンプルのロットチェックが必要な品質管理のためのin vivo評価モデルとして有用である。
高血糖カイコを用いた、血糖降下作用を有する生薬であるジオウの薬効評価のためのプロトコールを示す図である。(左)ジオウの薬効評価をするための画分の抽出方法を示した図である。(右)高血糖カイコによる血糖値の測定方法を示した図である。 各ロットのジオウサンプルを投与した高血糖カイコの血糖値を示すグラフである。左から、高血糖カイコに、「生理食塩水(0.9%NaCl)を投与」、「Rehmanniae radix extract 1(ウチダ和漢薬[Lot.SU312910])を投与」、「Rehmanniae radix extract 2(NIB−0155)を投与」、「Rehmanniae radix extract 3(NIB−0021)を投与」、「Rehmanniae radix extract 4(NIB−0045)を投与」、「Rehmanniae radix extract 5(NIB−0071)を投与」、「Rehmanniae radix extract 6(NIB−0126)を投与」、「ヒトインスリン(3.5mg/mL)を投与」である。Student t testを用いて有意差検定を行い、エラーバーは、標準偏差(SEM)を示す。
以下、本発明について説明するが、本発明は、以下の具体的態様に限定されるものではなく、技術的思想の範囲内で任意に変形することができる。
[高血糖カイコを用いた血糖降下作用を有する生薬のロット間の薬効評価方法]
本発明の薬効評価方法は、血糖降下作用を有する生薬のロット間の薬効評価方法であって、
(a)上記生薬を熱水抽出後、得られた熱水抽出画分をエタノール沈殿させる工程を含む方法によって、上記生薬の薬効評価をするための抽出画分を得る工程、
(b)カイコに糖(A)を摂取させることによって、該カイコの脂肪体中又は体液中の糖(B)の濃度を上昇させる工程、
(c)上記工程(b)で得られた脂肪体中又は体液中の糖(B)の濃度が上昇したカイコに、上記工程(a)で得られた生薬の抽出画分を投与する工程、
(d)上記生薬の抽出画分が投与されたカイコの脂肪体中又は体液中の糖(B)の濃度を測定する工程、
を有することを特徴とする薬効評価方法である。
上記薬効評価方法は、必要に応じて、更にその他の工程を含んでいてもよい。以下、工程(a)、(b)、(c)、(d)について順に説明する。
<工程(a)>
工程(a)においては、まず、血糖降下作用を有する生薬について、熱水抽出後、得られた熱水抽出画分をエタノール沈殿させることによって、上記生薬の薬効評価をするための画分を抽出する。
本発明で用いる血糖降下作用を有する生薬とは、血糖降下作用を有すれば特に限定されない。具体的には、例えば、オウギ、オウセイ、オウレン、カッコン、カロコン、カンゾウ、ケンゴシ、ゴミシ、サンシュユ、ジオウ、シャクヤク、ソウハクヒ、ダイオウ、トチュウ、ニンジン、バクモンドウ、ビャクジュツ、ブクリュウ等が挙げられ、ポリガラクトース又はポリガラクトース誘導体を含有する生薬が好ましく、中でもジオウが特に好ましい。
「ポリガラクトース」とは、ガラクトース又はガラクトース誘導体を構造単位として多く含む多糖又はオリゴ糖のことをいう。
ここで、「ガラクトース又はガラクトース誘導体」とは、D−ガラクトース及びその誘導体のことをいう。また、α型とβ型とを含む。すなわち、D−ガラクトースの場合、[α] 20=+144°のα型と、[α] 20=+52°のβ型とを含む。
また、分枝構造を有していても有していなくてもよい。
「該ポリガラクトースを構造単位として構成する単糖」は、特に限定されないが、通常はグリコシド結合で結合されている。該単糖には、ピラノース型もフラノース型も含まれる。
該単糖の総数(結合数)には限定はないが、下限は、好ましくは2個以上、より好ましくは10個以上、特に好ましくは100個以上、更に好ましくは1000個以上である。また、上限は、好ましくは、10000以下、特に好ましくは、1000以下である。
該ポリガラクトース中に含まれるガラクトース又はガラクトース誘導体の数の「ポリガラクトースを構成する単糖の数全体」に対する割合については、限定はないが、ポリガラクトースを構成する単糖の数を100個としたとき、好ましくは10〜90個、より好ましくは、20〜80個、特に好ましくは30〜70個である。
ガラクトース誘導体とは、例えば、ガラクトースの環に置換基が結合したものが挙げられる。該置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;ビニル基等のアルケニル基;フェニル基等のアリール基;ベンジル基等のアリールアルキル基;アセチル基(エタノイル基)等のアルカノイル基が挙げられる。
また、ガラクトース誘導体として、ガラクトースの抱水体、アルデヒド体、O−メチル化体、O−硫酸化体、それらの薬理学的に許容される塩;カルボン酸、リン酸、スルホン酸等の酸が水酸基にエステル結合したもの、それらの薬理学的に許容される塩;ガラクトースの代謝中間体であるUDP(ウリジン二リン酸)ガラクトース、ガラクツロン酸等が挙げられる。
ポリガラクトースを構成する単糖としては、上記のガラクトース又はガラクトース誘導体の他に、好ましいものとして、例えば、グルコース、マンノース、ソルボース、フルクトース、タガトース、プシコース、タロース、ラムノース等の六炭糖;リボース、アラビノース、キシロース、リキソース等の五炭糖;又はこれらの誘導体等の単糖が挙げられる。
実施例では、血糖降下作用を有するジオウを用いて、本発明により、生薬のロット間の薬効評価を行うことができることを見出したが、熱水抽出法を用いるので、熱に強い血糖降下作用を有する生薬であれば、当然該生薬のロット間の薬効評価をすることができると考えられる。よって、本発明における「血糖降下作用を有する生薬」は、ジオウに限定されない。
同じ生薬間においても、産地、収穫時期、収穫後の加工調整法、保存状態等により、生薬に含まれる有効成分の種類、含量(比)に違いが生じ、薬効が異なる場合が多い。
生薬は、産地、収穫時期、収穫後の加工調整法、梱包形態、保存状態、外観等の相違によりロットで管理されている。例えば、独立行政法人医薬基盤研究所薬用植物資源研究センターが提供する「薬用植物総合情報データベース」(http://mpdb.nibio.go.jp/)で、医薬基盤研究所で保管されている生薬(モデル生薬)のロット番号(管理番号:NIB−○○○○(4桁の数字))を確認することができる。
血糖降下作用を有する生薬(以下、単に「生薬」と略記する場合がある)に含まれる薬効評価のための成分を原料から抽出され易い等の点で、抽出溶媒が水であることが特に好ましい。また、水に水溶性有機溶媒を一定量含有させてもよい。更に、水には、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の水溶性塩類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、塩酸、硫酸、リン酸、有機酸、等のpH調節剤若しくはpH緩衝剤;界面活性剤等を溶解させてもよい。
上記薬効評価のための成分は、熱水により抽出されることが、抽出効率を上げるために好ましい。かかる抽出温度が重要であることは、実施例(ジオウ)により確認されたので、該条件は血糖降下作用を有する生薬の原料全体に適用され得る。本発明における「熱水」とは、60℃以上の水のことである。70〜170℃で抽出することが好ましく、80〜140℃で抽出することがより好ましく、90〜110℃で抽出することが特に好ましい。
熱水による抽出時間は、上記薬効評価のための成分が抽出されれば特に限定はなく、熱水処理装置、熱水の量、原料の形状等によって適宜調節すればよい。熱水抽出後、有効成分以外の成分を、除去することが好ましい。
上記により得られた熱水抽出画分をエタノール沈殿させることが、上記生薬の薬効を安価に評価できる、再現性良く評価することができる等の点で特に好ましい。また、熱水抽出画分に含まれるグルコース等の単糖を容易に分画して除くことができる。エタノールの濃度は、抽出効率を上げるために、沈殿に用いる液全体を100質量部とすると、65〜100質量部が好ましく、70〜99質量部が更に好ましく、75〜98質量部が特に好ましい。
<工程(b)>
工程(b)においては、カイコに糖(A)を摂取させることによって、該カイコの脂肪体中又は体液中の糖(B)濃度を上昇させる。
更に、かかる幼虫としては、以下の点から、カイコが特に好ましい。
(1)入手が容易である。
(2)飼育する方法が既に確立されており、更に飼育に利便性がある。
(3)ヒト等の哺乳類の内臓・器官と類似する性質が、これまでの研究である程度分かっている。
(4)遺伝系統が確立されており、遺伝的均一性の維持ができている。
(5)比較的大型で、動きが緩慢であり、実質上無毛なので、定量的に注射できる等、薬物の投与が容易である。
(6)脂肪体を有しており、脂肪体を取り出して、含有する物質の定量が可能である。
(7)マウス、ラット等に比べると安価で、狭いスペースで多数の個体を飼育でき、倫理的な問題も少ない為、スクリーニング的な評価を行うことが容易である。
(8)被検物質が少量しかない場合でも評価を行うことができる。
(9)齢を揃える等、同じ状態の個体を揃えることが容易である。
(10)体液を採取して、糖、脂質、酵素等の成分を解析することが可能である。
哺乳動物を用いた実験は、国際原則である3R、すなわちReplacement(代替法の開発)、Reduction(動物数の削減)、Refinement(動物の苦痛の削減)に従って実験を行わなければならない(Russell et al.,The principles of humane experimental technique.London:Methuen.238p.1959)。カイコを代替動物として利用することは、3Rの中のRelative Replacementの考えと合致する。カイコを用いた評価系は、医薬品の開発や品質管理において倫理的な観点から問題となる哺乳動物を用いた動物実験の制限下で有用な代替実験系となり得る。
上記カイコは、糖(A)の摂取させやすさ、生薬の抽出画分の投与のしやすさ、体液や脂肪体の採取のしやすさ等の観点から、大型であることが好ましい。ここで「大型のカイコ」とは、体長が1cm以上である幼虫であり、好ましくは、1.5cm以上15cm以下であり、特に好ましくは、2cm以上5cm以下である。また、上記点から、4齢〜5齢の幼虫が好ましく、5齢の幼虫が特に好ましい。
糖(A)の摂取の方法としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。具体的には、例えば、体液中への注射、飼料(餌)への添加等による経口摂取、腸内への注入等が挙げられ、簡便である点、ヒトの臨床との対応という点等で、腸管内部への注射;飼料(餌)への添加等による経口摂取;等が好ましい。
カイコ等の無脊椎動物では、血液とリンパ液と細胞間液ははっきりと区別がなく、双方の役割を有するものとして、体液は血リンパ(hemolymph)とも呼ばれる。また、脊椎動物は閉鎖血管系を有するのに対し、節足動物及び多くの軟体動物は、開放血管系(毛細血管がなく、動脈や静脈がつながっていない血管系)を有する。
上記糖(A)としては、そのカイコの脂肪体中又は体液中の糖(B)の濃度を上昇させるものであれば特に限定はないが、例えば、グルコース、ヘプトース、ヘキソース、ペントース、テトロース、トリオース等の単糖類;トレハロース、マルトース、ラクトース、スクロース、セロビオース、ニゲロース、ソホロース等の2糖類;フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖等のオリゴ糖;デンプン、グリコーゲン、セルロース、ペクチン、グルコマンナン等の多糖類;デオキシ糖;ウロン酸等の糖の酸化生成物;ソルビット、アラビット等の糖アルコール等が、糖(B)の濃度を上昇させる可能性があるものとして挙げられる。
このうち、グルコース、スクロース、オリゴ糖、グリコーゲン又はでんぷんが、カイコの体液中のグルコース濃度及び/又はトレハロース濃度を上昇させる点、ヒト臨床との対応の点等から特に好ましい。これらは1種を用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
カイコに対する糖(A)の摂取量は、カイコの脂肪体中又は体液中の糖(B)を薬効評価に充分なだけ上昇させ得れば特に限定はないが、飼料(餌)と糖(A)の合計量に対して、糖(A)を1質量部〜20質量部が好ましく、5質量部〜18質量部がより好ましく、8質量部〜20質量部が特に好ましい。
また、カイコの脂肪体中又は体液中の糖(B)を薬効評価に充分なだけ上昇させる糖(A)の摂取時間は、特に限定はないが、1分間〜10日間が好ましく、5分間〜1日間がより好ましく、30分間〜2時間が特に好ましい。
糖(A)の摂取速度は、上記摂取量の好ましい範囲を、上記摂取時間の好ましい範囲で割った値範囲が好ましい。
工程(b)においては、該カイコの脂肪体中又は体液中の糖(B)濃度を上昇させることが必須である。カイコの脂肪体中若しくは体液中の何れかの糖(B)の濃度を上昇させる又は上昇したことを確認することが好ましく、カイコの脂肪体中及び体液中の糖(B)の合計濃度を上昇させる又は上昇したことを確認することがより好ましく、体液中の糖(B)の濃度を上昇させる又は上昇したことを確認することが特に好ましい。
カイコに、はさみで傷を付けそこから液を取り出し、該液中の糖(B)の濃度を測定することが好ましい。
糖(B)としては、糖(A)の摂取によって脂肪体中又は体液中の濃度が上昇し、生薬の抽出画分が投与されたときに、その濃度の低下が測定できるものであれば特に限定はないが、例えば、グルコース、トレハロース等が挙げられる。糖(B)は1種でもよいし、2種以上の合計濃度でもよい。糖(B)の定量方法によっては複数種類の糖の合計量が定量される場合があるが、その場合、糖(B)は1種に限定されない。
糖(A)と糖(B)は、同一の場合も異なる場合もある。例えば、カイコの場合、糖(A)としてスクロースを投与すると直ちにカイコの体液中のグルコース濃度とトレハロース濃度が上昇する。この場合の糖(B)はグルコースとトレハロースである。
糖(B)の定量方法に限定はないが、全ての糖類の定量としては、フェノール硫酸法、アンスロン硫酸法、カルバゾール硫酸法等が挙げられ;グルコースの定量にはグルコースオキシダーゼ法等が挙げられる。
工程(b)で得られた「脂肪体中又は体液中の糖(B)の濃度が上昇したカイコ」における「糖(B)の濃度の上昇の程度」は、生薬の薬効の評価ができる程度に大きければ特に限定はないが、糖(A)を摂取させない通常のものに比較して、1.5倍〜100倍が好ましく、1.5倍〜8倍がより好ましく、1.5倍〜3倍が特に好ましい。
「糖(B)の濃度の上昇の程度」が低すぎる場合は、生薬の薬効の評価が確認できない場合がある。一方、上限については、上記範囲より高くできなかったり、また、必要性がなかったりする場合がある。また、必要以上に高くしようとすると、血糖値上昇以外の個体の障害が生じ、著しい場合には個体が死亡してしまう場合がある。
具体的には、体液中の糖(B)の濃度を、7mg/mL(μg/μL)〜200mg/mL(μg/μL)にすることが好ましく、8mg/mL〜150mg/mLにすることがより好ましく、10mg/mL〜100mg/mLにすることが特に好ましい。また、脂肪体中のグルコース濃度を、10ng/μg〜1000000ng/μgにすることが好ましく、100ng/μg〜100000ng/μgにすることがより好ましく、1000ng/μg〜20000ng/μgにすることが特に好ましい。
濃度の測定方法と表現方法は実施例の方法による。
糖(A)を摂取させてから、脂肪体中又は体液中の糖(B)の濃度の上昇を確認するまでの時間は、特に限定はないが、1分間〜1日が好ましく、10分間〜15時間がより好ましく、30分〜10時間が特に好ましい。
カイコは血糖値の恒常性を維持する機構を有しており、筋肉及びヒトの肝臓に相当する脂肪体に糖を貯蔵でき、また、インスリン様ペプチドホルモンであるボンビキシンを有しており、ボンビキシンの下流には、ヒトの場合と同様のMAPKシグナル伝達経路を含むインスリンシグナル伝達経路が存在する。
また、組み換え型ヒトインスリンがPI3キナーゼの活性化を介して、カイコの脂肪体の糖の取り込みを亢進させる作用を有する。すなわち、カイコにはヒトの血糖調節機構と同様な機構があると考えられる。
<工程(c)>
工程(c)においては、上記工程(b)で得られた脂肪体中又は体液中の糖(B)の濃度が上昇したカイコに、上記工程(a)で得られた生薬の抽出画分を投与させる。
生薬の抽出画分を投与する方法としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。具体的には、例えば、体液中への注射;飼料(餌)への添加等による経口摂取、腸管内部への注射;等が挙げられる。簡便である点、ヒトとの対応という点で、腸管内部への注射又は経口摂取が好ましい。生薬の抽出画分の投与量としては特に制限はなく、投与方法等に応じて適宜選択することができる。また、生理食塩水、水等で希釈して投与させることも好ましい。
生薬の抽出画分の投与時期は特に限定はなく、工程(a)において糖(A)を摂取させ終えた直後、該カイコの脂肪体中又は体液中の糖(B)の濃度がほぼ最大値に達した時点、体液中の糖(B)の濃度が正常値にまで回復してゆく時点等が挙げられるが、該カイコの脂肪体中又は体液中の糖(B)の濃度がほぼ最大値に達した時点が、実験結果の再現性を得るという点で好ましい。
具体的には、「糖(A)を摂取させ終えた直後」から「糖(A)を摂取させ終えてから24時間経過後」の間が好ましく、「糖(A)を摂取させ終えた直後」から「糖(A)を摂取させ終えてから6時間経過後」までの間がより好ましく、「糖(A)を摂取させ終えた直後」が特に好ましい。
<工程(d)>
工程(d)においては、上記生薬の抽出画分が投与されたカイコの脂肪体中又は体液中の糖(B)の濃度を測定する。測定試料の採取方法は、脂肪体に関しては、解剖して採取することが好ましく、体液に関しては、切り傷を付けてそこから採取する方法が好ましい。
糖(B)の種類、糖(B)の濃度及びグルコースの濃度の測定方法としては、工程(b)の箇所で記載した方法と同様の方法が挙げられる。すなわち、糖(B)としては、糖(A)の摂取によって脂肪体中又は体液中の濃度が上昇し、被検物質が投与されたときに、その濃度の低下が測定できるものであれば特に限定はないが、例えば、グルコース、トレハロース等が挙げられる。また、糖(B)は1種に限定されず、全ての糖(B)の合計量を測定してもよい。ただし、糖(B)には、ガラクトース(誘導体)もポリガラクトースも含まれない。
例えば、カイコの場合、糖(A)の摂取によって、カイコの体液中のグルコース濃度とトレハロース濃度が上昇する場合が多いので、糖(B)としては、グルコース及び/又はトレハロースであることが好ましい。また、体液中に、工程(b)で投与したガラクトース(誘導体)が検出される場合は、ガラクトース(誘導体)の量を除いた糖(B)のみの定量をすること、又は、糖(B)の中のグルコースのみの定量をすることが好ましい。
前記した通り、糖(B)の定量方法としては、全ての糖類の定量には、フェノール硫酸法、アンスロン硫酸法、カルバゾール硫酸法等が挙げられ;グルコースのみの定量方法としてはグルコースオキシダーゼ法等が挙げられる。
脂肪体中又は体液中の糖(B)の濃度の測定をする時期については特に限定はなく、工程(c)において生薬の抽出画分が投与された直後から、生薬の抽出画分による糖(B)の濃度の減少の効果が見られなくなるまでの期間から選択すればよい。
具体的には、例えば、生薬の抽出画分が投与された時点から、1分〜1日が好ましく、30分〜10時間がより好ましく、60分〜8時間が特に好ましい。
糖(B)の濃度の測定に際しては、生薬の抽出画分を投与していない、「同様に脂肪体中又は体液中の糖(B)の濃度を上昇させたカイコ」を陰性対照として用いることが好ましい。陰性対照には、例えば、生理食塩水を同量だけを投与することが好ましい。陰性対照に比較して、生薬の抽出画分を投与したもので、糖(B)の濃度がどれくらい減少していたかによって、その生薬の抽出画分の薬効を評価することが好ましい。
[高血糖カイコを用いた血糖降下作用を有する生薬の品質管理方法]
本発明の品質管理方法は、上記薬効評価方法を用いることを特徴とする、血糖降下作用を有する生薬の品質管理方法である。
本発明の品質管理方法は、必要に応じて上記薬効評価方法に加えて、別の方法を用いる、及び/又は他の工程を含んでいてもよい。
本発明の品質管理方法は、原料、原料から抽出した抽出物、最終製品等について、品質管理する際に用いることができる。
[高血糖カイコを用いた血糖降下作用を有する生薬の製造方法]
本発明の製造方法は、上記品質管理方法を用いて品質管理する工程を含むことを特徴とする製造方法である。
本発明の、製造方法によって製造される生薬の剤型については特に限定はないが、経口投与のための製剤としては、錠剤、丸剤、顆粒剤、カプセル剤、散剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、舌下剤等が挙げられ、また、非経口投与のための製剤としては、注射剤、経皮吸収剤、吸入剤、坐剤等が挙げられる。
製剤化に際しては、製薬上許容される担体を混合することが可能である。担体の種類及び組成は、投与経路や投与方法によって適宜決定することができる。例えば、液状担体としては、水、アルコール、食用油等を用いることができる。固体担体としては、リジン等のアミノ酸類、シクロデキストリン等の多糖類、ステアリン酸マグネシウム等の有機酸塩類、ヒドロキシルプロピルセルロース等のセルロース誘導体等を用いることができる。
更に、製剤化に際して、等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、溶解補助剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、希釈剤、緩衝剤、着色剤、着香剤等の各種医薬用添加剤を配合することができる。注射剤の場合には適当な担体と共に滅菌処理を行なって薬剤とする。
[作用]
本発明において、簡単なプロトコールで血糖降下作用を有する生薬のロット間の薬効評価ができる作用・原理は明らかではなく、また、本発明は、かかる作用・原理の範囲に限定されるわけではないが、以下のことが考えられる。
従来、ロット(サンプル)間での薬効を評価するためには、複数段階の抽出工程が必要であったが、本発明は、熱水抽出後にエタノール沈殿するという2段階の工程により、「血糖降下作用を有する生薬の薬効評価をするための画分」を容易に得ることができることを見出した。
すなわち、血糖降下作用という薬効を評価するための、(ポリガラクトースを含む)好適抽出画分が、熱水抽出でき、かつ、エタノール沈殿により得られたと考えられる。
また、エタノール沈殿により、グルコース等の単糖を取り除くことができたため、容易に薬効評価をするために好適な画分を抽出できたと考えられる。
以下、実施例及び試験例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例等の具体的範囲に限定されるものではない。
[評価例]
<カイコの種類、飼育条件、注射条件>
カイコの受精卵(交雑種Hu・Yo×Tukuba・Ne)は愛媛養蚕株式会社から購入した。
孵化した幼虫は室温で人工飼料シルクメイト2S(日本農産工業株式会社製)を与えて5齢幼虫まで育てた。飼育容器は、卵から2齢幼虫までを角型2号シャーレ(栄研器材製)を用い、それ以降をディスポーザブルのプラスチック製フードパック(フードパックFD大深、中央化学株式会社製)を用いた。飼育温度は27℃とした。特に記載がない限り、実験には、4齢眠以後絶食させた5齢1日目の幼虫を用いた。
糖添加試料として、人工飼料シルクメイト2S(日本農産工業株式会社製)に、種々の重量比でD−グルコースを混合して調製した。
カイコの注射実験では、5齢幼虫の第5体節の模様がある体節に、0.05mLの試料を注射した。注射筒(1mL)と注射針(27G×3/4)は、テルモ株式会社より購入したものを用いた。
<血糖値の定量法>
体液(20μL)は、第一腹肢(first proleg)にはさみでつけた切り傷から採取し、タンパク質を沈殿させるために9倍量の0.6N過塩素酸と混合した。3,000rpmで10分間遠心分離し、上清を体液抽出液(hemolymph extract)とした。
カイコ体液中の総糖量はフェノール硫酸法(Hodge et al.)により定量した。蒸留水で適当な濃度に希釈した体液抽出液100μLと5%(w/v)フェノール水溶液100μLを混合し、濃硫酸500μLを加えて激しく撹拌し、室温で20分間静置した後、490nmにおける吸光度を測定した。グルコース水溶液を標準糖溶液とした。
<新しいジオウ粗抽出画分の調製法>
地黄(ウチダ和漢薬[Lot.SU312910]、NIB-0021、NIB-0045、NIB-0071、NIB-0126、NIB-0155)それぞれ5gに、MilliQ水を20mLとなるまで加えた。30分間煮沸後、ろ紙(3MM)を用いて濾過し、ろ液のうち2mL分に対して、エタノールを38mL加えて撹拌した。15,000rpm(20,400G)で3分間遠心し、上清を捨て、沈殿画分をデシケーター(アズワン株式会社製)の中で一晩放置し、ジオウ粗抽出画分を得た。
<試薬>
組換え型ヒトインスリンは、Sigmaより購入し、0.1質量%の酢酸を含む生理食塩水(0.9質量%NaCl)に溶解して用いた。
実施例1
[簡便なプロトコールにより抽出した血糖降下作用を有する生薬の薬効評価]
血糖降下作用を有するジオウの熱水抽出画分は、グルコース等の単糖を豊富に含むので、そのままカイコに投与するとカイコの血糖値はむしろ上昇する。これまでに、高血糖カイコを用いて、ジオウの粗抽出画分中の有効成分がポリガラクトースであることを見出している(非特許文献6)。しかし、従来のジオウの有効成分の調製は、5段階での作業が必要であり、サンプルを調製するまでに5日間を要する(非特許文献6、表1右)。そこで、ジオウの有効成分が熱に強いポリガラクトースであるということに注目し、迅速簡便なジオウ中の有効成分の調製法の確立を行った。
Figure 0006467143
表1に、本発明で用いる抽出方法(左)と、従来の抽出方法(右)を示す。従来の抽出方法は、例えば、特許文献3、非特許文献6、木下 正他,薬学雑誌,1992年,Vol.112,No.6,p.393-400等に開示されている。
ポリガラクトースは、その化学的性状から、熱水抽出が可能であり、エタノール沈殿によりグルコース等の単糖を容易に分画可能であると予想される。そこで表1左に示すプロトコールを用いた。
前記6つのロットのジオウそれぞれ5gから熱水抽出画分を得た後、エタノール沈殿を含め計2ステップの作業工程で粗抽出画分0.2gを得た(図1左)。これを最終濃度が1mg/mLとなるように生理食塩水で溶解し、薬効試験用の抽出画分とした。
この6つのロットのジオウの抽出画分について、前記方法で得た高血糖カイコに注射し、6時間後にカイコの体液を回収し、フェノール硫酸法により血糖値を測定した(図1右)。
比較例1
[従来のプロトコールにより抽出した血糖降下作用を有する生薬の薬効評価]
ウチダ和漢薬[Lot.SU312910]のジオウ200gから上記表1右の従来の抽出方法により得られた抽出画分を、最終濃度が1mg/mLとなるように生理食塩水で溶解し、薬効評価試験用の抽出画分とした。得られた抽出画分について、前記方法で得た高血糖カイコに注射し、6時間後にカイコの体液を回収し、フェノール硫酸法に血糖値を測定した(図1右)。
その結果、ウチダ和漢薬[Lot.SU312910]は、上記表1右の従来の抽出方法を用いて、高血糖カイコに対して、血糖降下活性があることが確認された。
実施例1の結果を、図2に示す。
比較例1の結果より、高血糖カイコに対して血糖降下活性のあることが既に分かっていたジオウのロットである、ウチダ和漢薬[Lot.SU312910]から、本発明における抽出方法(表1左欄)を用いて得られた抽出画分を投与した高血糖カイコの血糖値は、生理食塩水投与群と比べて統計学的に有意の差(p<0.05)の低下を示した(図2中、Rehmanniae radix extract 1)。また、別のロット番号(NIB-0155及びNIB-0021)でも、高血糖カイコに投与した結果、有意に血糖値が低下することが確認された(図2中、Rehmanniae radix extract 2〜3)。
一方、NIB-0045、NIB-0071、NIB-0126から得られた抽出画分を投与した高血糖カイコの血糖値は、生理食塩水投与群に比べて統計学的に有意の差の低下を示さなかった(p>0.05)(図2中、Rehmanniae radix extract 4〜6)。
以上の結果より、少ないスタートマテリアルで、短時間で、簡便なジオウの粗抽出画分を得る実験スキームを確立した。また、この抽出方法で得られたジオウのロット間の活性の違いを、高血糖カイコを用いた血糖降下アッセイで評価できることを示した。以上の結果は、高血糖カイコを用いてジオウ等の血糖降下作用を有する生薬の薬効を評価できると考えられる。
生薬の品質管理では、安価でかつ簡便であり、再現性がよいことが重要である。本発明の実施例により、新しい粗抽出画分の調製法により、以前の方法の約40分の1の量である5gのジオウを用いて高血糖カイコの血糖降下活性を有するサンプルが得られた。この方法でジオウの有効成分であるポリガラクトースが濃縮されたと考えられる。また、上記有効成分(薬効評価をするための画分)を得る作業過程も5ステップから2ステップに、所要時間も5日から1日に短縮された(表1)。作業が簡便になることは、実験の再現性やプロトコールの標準化、技術の汎用性を高めると考えられる。
カイコを用いる方法は、生薬の薬効評価だけでなく、混入する毒性物質の有無を判定する上でも有用だと考えられる。発明者らは、これまでに、様々な毒性化合物や細菌毒素の投与によりカイコは死亡することを見出し、個体に対する毒性の指標であるLD50値がカイコと哺乳動物でよく一致していることを報告している(Hossain et al.,2006;特許文献1、非特許文献2)。更に、カイコが死亡しない投与量でも、組織障害性マーカーであるALTのカイコ体液中の活性をモニタリングすることで評価することができる(非特許文献1)。この結果は、カイコが生薬中の毒性物質の評価に利用できることを示唆している。
本発明により、血糖降下作用を有する生薬の薬効評価のための簡便なプロトコールを作成し、高血糖カイコを用いて、ジオウのロット間の薬効の違いを評価することができた。
このことから、カイコが薬効を指標とした生薬の品質管理のバイオモニターとして有用であることが分かった。そして、カイコを用いて生薬の薬効の評価ができることを提案し、カイコを用いたin vivoでの評価技術が、生薬の品質管理に利用できると考えられる。
本発明の生薬の薬効を評価する方法を利用して、前記した生薬の品質管理方法が可能であるため、生薬及び生薬を含有する生薬製剤の製造管理や品質管理等に広く利用されるものである。

Claims (5)

  1. 血糖降下作用を有する生薬のロット間の該血糖降下作用の薬効評価方法であって、
    (a)上記生薬を熱水抽出後、得られた熱水抽出画分をエタノール沈殿させることによって、上記生薬の薬効評価をするための抽出画分を得る工程、
    (b)カイコに糖(A)を摂取させることによって、該カイコの脂肪体中又は体液中の糖(B)の濃度を上昇させる工程、
    (c)上記工程(b)で得られた脂肪体中又は体液中の糖(B)の濃度が上昇したカイコに、上記工程(a)で得られた生薬の抽出画分を投与する工程、
    (d)上記生薬の抽出画分が投与されたカイコの脂肪体中又は体液中の糖(B)の濃度を測定する工程、
    を有し、
    該生薬に含まれる有効成分の同定及び二次代謝産物の解析を要さずに、該生薬の上記工程(a)で得られた抽出画分の血糖降下作用の薬効を直接定量的に評価することを特徴とする薬効評価方法。
  2. 上記血糖降下作用を有する生薬にはポリガラクトースが含まれる請求項1に記載の薬効評価方法。
  3. 上記血糖降下作用を有する生薬はジオウである請求項1又は請求項2に記載の薬効評価方法。
  4. 血糖降下作用を有する生薬の品質管理方法であって、請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載の薬効評価方法を用いることを特徴とする品質管理方法。
  5. 血糖降下作用を有する生薬の製造方法であって、請求項4に記載の品質管理方法を用いて品質管理を行う工程を含むことを特徴とする製造方法。
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