(第1の実施の形態)
まず、本発明の第1の実施の形態について説明する。本発明の実施の形態に係るプリンタ1(画像形成装置)は、4色のトナー像を形成する電子写真方式のレーザビームプリンタである。プリンタ1は、図1に示すように、シートを給送するカセット給送部10及び手差し給送部50と、シートに転写する画像を形成する画像形成部30と、を有している。
プリンタ1に画像形成の指令が出力されると、プリンタ1に接続された外部のコンピュータ等から入力された画像情報に基づいて、画像形成部30による画像形成プロセスが開始される。画像形成部30は、スキャナユニット31と、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(Bk)の4色の画像を形成する4つのプロセスカートリッジ32Y,32M,32C,32Bkと、を備えている。なお、4つのプロセスカートリッジ32Y,32M,32C,32Bkは、形成する画像の色が異なること以外は同じ構成であり、プロセスカートリッジ32Yの画像形成プロセスのみを説明し、プロセスカートリッジ32M,32C,32Bkの説明は省略する。
スキャナユニット31は、入力された画像情報に基づいて、プロセスカートリッジ32Yの感光ドラム33に向けてレーザ光を照射する。このとき感光ドラム33は、不図示の帯電ローラにより予め帯電されており、レーザ光が照射されることで感光ドラム33上に静電潜像が形成される。その後、現像ローラ35によりこの静電潜像が現像され、感光ドラム33上にイエロー(Y)のトナー像が形成される。
同様にして、プロセスカートリッジ32M,32C,32Bkの感光ドラム上にも、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(Bk)のトナー像が形成される。各感光ドラム上に形成された各色のトナー像は、一次転写ローラ36Y,36M,36C,36Bkにより中間転写ベルト37に転写され、M方向に回転する中間転写ベルト37により二次転写ローラ38まで搬送される。なお、各色の画像形成プロセスは、中間転写ベルト37上に一次転写された上流のトナー像に重ね合わせるタイミングで行われる。
上述の画像形成動作に並行して、カセット給送部10に収納されたシート又は手差し給送部50に積載されたシートが、1枚ずつレジストレーションローラ15に向けて給送される。そして、レジストレーションローラ15により所定の搬送タイミングで搬送されたシートには、二次転写ローラ38によって、中間転写ベルト37上のトナー像が転写される。トナー像が転写されたシートは、定着部39でトナー像が定着され、排出ローラ対40により排出トレイ41上に排出される。
シートの両面に画像を形成する場合には、二次転写ローラ38によって第1面に画像が形成されたシートは、切換え部材42によって反転ローラ対43に向けて案内されて、反転ローラ対43によって反転された後に両面搬送路44に案内される。そして、このシートは、レジストレーションローラ15へと再度搬送されて、二次転写ローラ38によって第2面に画像が形成され、排出トレイ41上に排出される。
次に、シート搬送装置としての手差し給送部50について、図2、図3及び図4に沿って説明する。手差し給送部50は、シートS若しくはシート束Saを積載可能なシートトレイ51と、固定部材である給紙フレーム52(フレーム部材)に回転可能に支持されたフィードローラ53(回転体)及び搬送ローラ対55と、を有している。また、手差し給送部50は、不図示のトルクリミッタを内蔵した分離ローラ54(分離部材)を有している。シートトレイ51には、給送方向下流側が昇降可能となるように、中板56(積載部)が回動可能に支持されている。中板56は、フィードローラ53に当接してシート束Saの最上位のシートSが給送可能となるように、中板ばね57によってフィードローラ53に向けて付勢されている。
また、中板56は、積載されたシートが1枚給送される毎に追加してシートを積載できるように、シートの給送が終わる度にフィードローラ53に対して、シート積載上限高さ以上離れて配置される必要がある。そのため、図4に示すように、フィードローラ53を回転可能に支持するフィードローラ軸53cには、昇降カム58,58が固定されており、中板56には、昇降カム58,58に摺動可能なカムフォロワ56a,56aが形成されている。フィードローラ軸53cの軸端部には、フィードローラギヤ59が取付けられており、フィードローラギヤ59の駆動伝達経路上流には、不図示のクラッチが取付けられている。そして、このクラッチによって、不図示の駆動源からフィードローラ53へ伝達される動力が断接される。
すなわち、フィードローラ53が待機状態においては、昇降カム58,58によって中板56のカムフォロワ56a,56aが押し下げられており、シートを中板56上に積載可能な状態になっている。クラッチがONされてフィードローラ軸53cが回転すると、カムフォロワ56a,56aが昇降カム58,58に摺動しつつ、中板ばね57によって、中板56が上昇する。そして、中板56に積載されたシート束Saの最上位のシートSがフィードローラ53に当接し、シートSがフィードローラ53によって給送される。フィードローラ53が1回転すると、シートSは給送方向下流の搬送ローラ対55,55によって搬送され、中板56は昇降カム58,58によって再度押し下げられた状態となる。
ここで、フィードローラ53が1回転し、シートSが搬送ローラ対55,55によって搬送される際には、停止しているフィードローラ53とシートSとが摺動して、フィードローラ53の外周面を覆うフィードローラゴム53aが偏摩耗してしまう。そのため、フィードローラ53は、Dカット形状に形成されたフィードローラゴム53aと、フィードローラゴム53aの軸方向両端部に配置され、回転自在に支持されたフィードローラコロ53b、53bと、を有している。フィードローラコロ53b、53bは、フィードローラゴム53aよりも外径が小さく形成されており、フィードローラゴム53aがDカットされた部分のみ、フィードローラゴム53aよりも外径方向に突出している。
また、フィードローラ53は、待機状態においては、フィードローラコロ53b、53bがシートSと当接する位置で待機しており、搬送ローラ対55,55によってシートSが搬送される際には、シートSとフィードローラゴム53aは摺動しない。したがって、フィードローラゴム53aが偏摩耗することを防止して、フィードローラ53を長寿命化することができる。
図2に示すように、給紙フレーム52には、回動支点60aを中心に分離ローラホルダ60(保持部材)が回動可能に支持されており、分離ローラホルダ60は、分離ローラ54を回転可能に保持している。分離ローラホルダ60は、分離バネ61(分離付勢部材)によって上方に付勢されており、これにより分離ローラ54が所定の接触圧でフィードローラ53に接触し、分離ニップN(接触部)を形成している。分離バネ61は、分離ローラホルダ60と給紙フレーム52の底板52bとの間に縮設されている。フィードローラ53によって給送されたシートSは、分離ニップNによって1枚ずつに分離されて搬送ローラ対55へと搬送される。
分離ローラホルダ60には、回動支点63a(第1の回動支点)を中心に支持部材70(回動部材)が回動可能に支持されている。更に、支持部材70には、回動支点71(第2の回動支点、図5参照)を中心にニップガイド63(ガイド部材)が回動可能に支持されている。ニップガイド63は、中板56に積載されたシート束Saと分離ニップNとの間に配置され、搬送されたシートを分離ニップNに案内する。ニップガイド63の上面には、シートSを分離ニップNに滑らかに案内可能な先端ガイド63bが形成されており、ニップガイド63の右側面には、シートSの先端が接触するガイド面63cが形成されている。
なお、ニップガイド63は、後述するように支持部材に装着された装着位置と、装着位置からフィードローラ53に対して離間した開放位置と、の間を移動可能に構成されているが、以下の説明では、ニップガイド63は装着位置に位置している。すなわち、ニップガイド63が装着位置にある状態では、ニップガイド63は、回動支点63aを中心に、支持部材70と一体に回動する。
ニップガイド63は、ニップガイドバネ64(付勢部材)によって上方に付勢されており、分離ローラホルダ60に設けられたストッパ65(規制部)に当接した当接位置で位置決めされている。ニップガイドバネ64は、ニップガイド63と分離ローラホルダ60との間に縮設されている。そして、ニップガイド63が当接位置にある状態では、先端ガイド63bとフィードローラ53の外周面は、所定距離hだけ離間している。ニップガイド63の右側面には、上記ガイド面63cと、ガイド面63cの下方に形成されるシート非接触面63dと、が形成されている(図5参照)。給紙フレーム52は、シート非接触面63dにシートが当接しないように、突き当て面52aを有している。
すなわち、シート非接触面63dは、中板56に積載されたシートがシート非接触面63dに接触することで、図2におけるニップガイド63が時計回りに回動するように形成されている。ニップガイド63が時計回りに回動すると、所定距離hよりも厚いシート束が分離ニップNに突入し易くなってしまう。そのため、本実施の形態では、給紙フレーム52に突き当て面52aを形成することで、シート非接触面63dにシートが当接することを規制して、所定距離hよりも厚いシート束が分離ニップNに突入し難いように構成されている。これにより、シートの端部が損傷することを防止すると共に、シートの分離性能を向上することができる。また、突き当て面52aは、中板56に積載されたシート束Saと略直角に当接するように形成されており、中板56が昇降する際にシート束Saにダメージを与えないようになっている。なお、ニップガイド63のガイド面63cにシートが当接した際には、図2におけるニップガイド63が反時計回りに回動するように、ニップガイド63に対して力が作用する。
次に、手差し給送部50の一連の動作について、図5乃至図13を用いて説明する。シートトレイ51にシート束Saが積載され、プリンタ1から給送信号が送られると、不図示の駆動源が駆動し、不図示のクラッチが所定の給送タイミングに従ってONされる。これにより、中板56が上昇してシート束Saがフィードローラ53に当接し、フィードローラ53が図5において時計回りに回転することで、シート束Saの最上位のシートSが分離ニップNに向かって搬送され始める。
ここで、フィードローラ53によりシート束SaのシートSが1枚給送される場合と、複数枚給送される場合とのそれぞれについて、図5乃至図7を用いて説明する。まず、シートSが1枚ずつ給送される場合には、図5に示すように、シートSは、フィードローラ53と先端ガイド63bとの間を通過して分離ニップNに向けて搬送される。最上位のシートS以外のシート束Saは、最上位のシートSがフィードローラ53により分離ニップNへの搬送力を受けると、シート同士の摩擦によってガイド面63cに接触して押圧力が生じる。
そのため、ニップガイド63は、ガイド面63cにおいて矢印Q方向に押圧力を受け、回動支点63aを支点として反時計回り方向に回動しようとするが、ストッパ65によって反時計回り方向(フィードローラ53に近づく方向)の回動が規制される。これにより、ニップガイド63は、ストッパ65に当接する当接位置が維持される。
よって、薄紙や厚紙といった剛性の異なる多種多様なシートが給送されても、ニップガイド63の姿勢は変化せず、ニップガイド63の先端ガイド63bがフィードローラ53から離間して、シートSの先端と分離ローラ54との当接角が大きくなることもない。これにより、シートSの先端と分離ローラ54との当接角が大きな状態でシートSの先端が分離ローラ54に衝突することが無く、シートSの先端へのダメージを軽減することができる。また、分離ローラ54にシートSが突き刺さってジャムが発生することを防止することができる。
そして、1枚のシートSが分離ニップNに給送された場合には、フィードローラ53と分離ローラ54の間の摩擦力により、分離ローラ54に内蔵された不図示のトルクリミッタが空転する。これにより、分離ローラ54は、シート給送方向に搬送されるシートSに従動回転して、シートSは下流側へ搬送される。
次いで、複数枚のシートSがフィードローラ53によって束となって給送される場合について説明するが、以下の2つの場合がある。
1つ目は、図6に示すように、シート束Saの上部の数枚が、ガイド面63cを乗り越えて分離ニップNに搬送される場合である。つまり、先端ガイド63bとフィードローラ53の外周面との所定距離hよりも、ガイド面63cを乗り越えた数枚のシートSの厚みが小さい場合(t<h)である。
この場合、1枚のシートSが分離ニップNに給送された場合と同様に、ニップガイド63は、ガイド面63cにおいて矢印Q(シート搬送方向)の方向に押圧力を受け、反時計回り方向に回動しようとするが、ストッパ65によってその回動が規制される。そして、ガイド面63cを乗り越えた数枚のシートSは、フィードローラ53と先端ガイド63bとの間を通過して分離ニップNに搬送される。この時、不図示のトルクリミッタの負荷に対してシートS間の摩擦力が小さいことから、分離ローラ54は回転せず、分離ニップNにおいて数枚のシートSを1枚ずつ分離することができる。これにより、中板56から給送された数枚のシートのうち、最上位のシートSのみが搬送方向下流側に搬送され、それ以外のシートは、停止している分離ローラ54によって止められて分離ニップNにとどまる。
2つ目は、図7に示すように、ガイド面63cを乗り越えた複数枚のシートSの厚みtが所定距離h以上の場合(t≧h)である。この場合、シートSの束は、先端ガイド63bとフィードローラ53との間に挟み込まれる。すると、ニップガイド63には、先端ガイド63bにおいて、シートSの束を挟み込む挟持力の反力が矢印R方向に作用する。そして、ニップガイド63は、矢印R方向の反力によって、ニップガイドバネ64の付勢力に抗して、回動支点63aを中心に時計回り(フィードローラ53から離れる方向)に回動する。
このようにニップガイド63が時計回りに回動すると、ニップガイド63とフィードローラ53によるシートSの束への挟持力は、ニップガイドバネ64の付勢力によって生じる力のみとなる。その結果、シートSの束への挟持力は低減する。この状態でシートSの束が分離ニップNに到達した場合、不図示のトルクリミッタの負荷に対してシートS間の摩擦力が小さいために、分離ローラ54は回転せず、シートSの束を捌くことができる。そして、シートSの束のうち、最上位の1枚のシートのみがシート搬送方向下流側に搬送される。
このように、シートSの束がニップガイド63の先端ガイド63bとフィードローラ53との間に挟み込まれた時に、ニップガイド63が時計回りに回動するためには、回動支点63aは、図8に示すような位置に位置決めされている。すなわち、回動支点63aは、ガイド面63cのフィードローラ53から最も近い側の端部63fを通り、ガイド面63cに垂直な第1直線Aに対してフィードローラ53から遠い側に配置される。また、回動支点63aは、先端ガイド63bのシート搬送方向における下流端63eを通り、分離ニップNの法線に平行な第2直線Bに対して分離ニップNに近い側に配置されている。このように、第1直線Aに対してフィードローラ53から遠い側であって、かつ第2直線Bに対して分離ニップNに近い側である領域(図の斜線部分)を領域Cとする。
ここで、比較例として、ニップガイド63の回動支点63aが領域Cに配置されない構成について、図9を用いて説明する。なお、この比較例では、本実施の形態と同じ構成については、図面に同一の符号を付して、説明を省略する。まず、図9(a)に示すように、第1直線Aに対してフィードローラ53側にニップガイド163の回動支点163aを配置した場合について説明する。
このような場合では、ガイド面163bに接触したシート束Saの矢印U方向の押圧力により、ニップガイド163が時計回りに回動する。すると、先端ガイド163cとフィードローラ53との所定距離hが広がって、ガイド面163bを乗り越えて分離ローラ54に当接したシートSの先端と分離ローラ54の周面との当接角が急激に大きくなる。分離ローラ54の周面は、摩擦係数が大きく設定されているため、当接角が大きな状態でシートSの先端と分離ローラ54とが衝突すると、シートの先端に大きなダメージが発生したり、ジャムが発生したりしてしまう。
次いで、図9(b)に示すように、第2直線Bに対して分離ニップN側にニップガイド263の回動支点263aを配置した場合について説明する。このような場合では、ニップガイド263の先端ガイド263bとフィードローラ53との間に所定距離h以上の厚みのシートSの束が挟み込まれると、ニップガイド263が反時計回りに回動しようとする。すると、シートSの束の挟持圧が大きくなって、先端ガイド263bとフィードローラ53との間で搬送力が発生する。この搬送力が過大になると、複数枚のシートSが分離ニップNを超えて搬送されてしまい、シートが重送されることとなり、ジャムが発生する。
したがって、本実施の形態では、領域Cにニップガイド63の回動支点63aを配置することで、ニップガイド63のガイド面63cに対してシート束Saからの押圧力が作用して、ニップガイド63は反時計回りに回動しようとする。しかし、ストッパ65によってニップガイド63は当接位置で位置決めされるため、搬送されるシートSの先端と分離ローラ54の周面との当接角が大きな状態でシートの先端が分離部材に衝突することが無い。これにより、シートの先端へのダメージを軽減することができ、分離部材にシートが突き刺さってジャムが発生することを防止することができる。
また、ニップガイド63の先端ガイド63bとフィードローラ53との間に所定距離h以上の厚みのシートSの束が挟み込まれると、ニップガイド63は、ニップガイドバネ64の付勢力に抗して、時計回りに回動する。この際、分離ローラホルダ60と給紙フレーム52の底板52b(図2参照)との間に縮設された分離バネ61の付勢力は、分離ローラホルダ60とニップガイド63との間に縮設されたニップガイドバネ64の付勢力よりも十分大きく設定されている。そのため、ニップガイド63が時計回りに回動しても、分離ローラホルダ60は、ニップガイド63と共に回動することはない。これにより、分離ローラ54がフィードローラ53を押圧した状態が維持されるので、シートを確実に1枚ずつ分離することができる。また、ニップガイド63の先端ガイド63bとフィードローラ53との間にシートSの束が詰まって、ジャムが発生することを防止することができる。
また、本実施の形態では、ニップガイド63の回動支点63aと、ストッパ65と、を分離ローラホルダ60に設けている。これは、フィードローラ53が、互いに外径の異なるフィードローラゴム53a及びフィードローラコロ53bから構成され、フィードローラ53が1回転する際に分離ローラ54と接触している部分の直径が変化するためである。
ここで、比較例として、ニップガイドの回動支点と、ストッパと、を給紙フレーム52に設け、これらを回動支点463a、ストッパ465とした場合について、図10を用いて説明する。なお、この比較例では、本実施の形態と同じ構成については、図面に同一の符号を付して、説明を省略する。
フィードローラコロ53bと先端ガイド63bが対向する際には、図10(a)に示すように、フィードローラ53と先端ガイド63bは所定距離h1離れている。フィードローラゴム53aと先端ガイド63bが対向する際には、図10(b)に示すように、フィードローラ53と先端ガイド63bは所定距離h2離れている。したがって、中板56に積載されたシートSを給送するためにフィードローラ53が1回転すると、フィードローラ53と先端ガイド63bとの距離は、待機時には所定距離h1であるが、給送時には所定距離h2に変化する。
また、フィードローラが1回転すると、分離ニップNにおいてフィードローラ53の直径が変化するために、分離ローラ54及び分離ローラホルダ60は、フィードローラ53の直径に応じて回動する。この分離ローラ54及び分離ローラホルダ60の回動は、シートSが分離ニップNに到達する前に行われる。しかし、この比較例では、回動支点463a及びストッパ465を給紙フレーム52に設けたために、分離ローラホルダ60が回動しても、ニップガイド63が分離ローラホルダ60に追従しない。
図10(c)及び図10(d)に示すように、ガイド面63cを乗り越えたシートSの厚みtが所定距離h1と同じ場合(t=h1)、フィードローラ53が1回転すると、所定距離h1から所定距離h2に変化した分だけ、ニップガイド63が回動する。すると、シートSの先端と分離ローラ54の周面との当接角αが急激に大きくなる。分離ローラ54の周面は、摩擦係数が大きく設定されているため、当接角αが大きな状態でシートSの先端と分離ローラ54とが衝突すると、シートの先端に大きなダメージが発生したり、ジャムが発生したりしてしまう。
そのため、本実施の形態では、図11に示すように、ニップガイド63の回動支点63aと、ストッパ65と、を分離ローラホルダ60に設け、分離ローラホルダ60が回動すると、ニップガイド63が分離ローラホルダ60に追従するように構成している。すなわち、分離ニップNにおいてフィードローラ53の直径が変化し、分離ローラ54及び分離ローラホルダ60が回動しても、フィードローラ53と先端ガイド63bとの距離は、常に所定距離h1となる。これは、フィードローラゴム53aと先端ガイド63bとの間に挟まれたシートSの束によってニップガイド63が回動する前に、分離ローラ54及び分離ローラホルダ60がフィードローラゴム53aによって押し下げられるためである。これにより、シートSの先端と分離ローラ54の周面との当接角βが大きくなることはなく、シートの先端のダメージを低減し、ジャムの発生を防止することができる。
なお、本実施形態においては、フィードローラゴム53aによって分離ローラ54が押し下げられる構成としているが、フィードローラゴム53aの回転方向上流に、摩擦係数の低いテーパ面を形成し、該テーパ面によって分離ローラ54を押し下げてもよい。これにより、シートSが分離ニップNに到達する前に、確実に分離ローラ54及び分離ローラホルダ60を押し下げることができ、シートSの先端にダメージが発生することを防止することができる。
また、ガイド面63cは、ニップガイド63がストッパ65に当接した状態で、中板56に積載されたシート束Saと略直角に当接するように形成されている。言い換えれば、ガイド面63cは、シート搬送方向と略直交する方向に沿って形成されている。これにより、分離ローラホルダ60が回動してニップガイド63が追従する際に、ガイド面63cがシート束Saと摺動することに起因してシート束Saの先端にダメージを与えることを防止することができる。なお、略直角又は略直交とは、必ずしも90°でなくてもよく、例えば80°〜100°でもよい。
また、先端ガイド63bは、ニップガイド63がストッパ65に当接した状態で、中板56に積載されたシート束Saと略平行となるように形成されている。言い換えれば、先端ガイド63bは、シート搬送方向と略平行に形成されている。そのため、先端ガイド63bとフィードローラ53との間に挟み込まれたシートSの束から先端ガイド63bに作用する挟持力の反力は、先端ガイド63bの全面に亘ってバランスよく作用する。これにより、ニップガイド63を滑らかに回動することができると共に、シートSの表面の一部に力が集中してシートSの表面にダメージを与えることを防止することができる。
なお、略平行とは、必ずしも先端ガイド63bとシート束Saとのなす角が0°にならなくてもよく、例えばシート搬送方向下流に向かって分離ニップNに近づくように若干の傾斜をつけることで、シートSを滑らかに分離ニップNに案内するようにしてもよい。
次に、分離ローラホルダ60の回動支点60aの位置について、図12を用いて説明する。回動支点60aは、図12(a)に示すように、ガイド面63cのフィードローラ53から最も遠い側の端部Pを通り、中板56に積載可能な上限高さのシート束Sa1の表面に平行な第3直線Dに対して、フィードローラ53に近い側に配置されている。また、回動支点60aは、第4直線Eに対して、フィードローラ53から遠い側に配置されている。第4直線Eとは、ガイド面63cのフィードローラ53から最も近い側の端部63fを通り、中板56に積載されてフィードローラ53に当接した状態の所定厚さ以下のシート束Sa2の表面に平行な直線である。所定厚さ以下のシート束Sa2は、例えば2,3枚のシート束でもよい。
更に、回動支点60aは、分離ニップNの法線G、すなわち分離ニップNにおけるフィードローラ53及び分離ローラ54の接線に垂直な線よりも、シート搬送方向における下流側に配置されている。このように、第3直線Dに対してフィードローラ53に近い側、第4直線Eに対してフィードローラ53から遠い側、かつ法線Gよりシート搬送方向における下流側である領域(図の斜線部分)を領域Fとする。
本実施の形態では、領域F内に分離ローラホルダ60の回動支点60aを配置したので、シート給送時にシート束Sa1又はシート束Sa2からガイド面63cに作用する矢印Q方向の押圧力は、おおよそ回動支点60aに向けて作用する。そのため、ストッパ65によって移動規制されたニップガイド63を介して、分離ローラホルダ60に作用するこの押圧力は、分離ローラホルダ60の回転モーメントとしては作用しない。これにより、中板56に積載されたシート束Saの厚さが変動したとしても、シート給送時の分離ニップNの接触圧(分離圧)は変化せず、安定してシートSを1枚ずつに分離することができる。
次に、ニップガイド63が支持部材70に対して回動する構成について説明する。ニップガイド63は、図13及び図14に示すように、回動支点71を中心に、支持部材70に対して回動可能に構成されている。すなわち、ニップガイド63は、支持部材70に装着された装着位置(図13参照)と、この装着位置から支持部材に対して離間した開放位置(図14参照)と、の間を移動可能となっている。
ニップガイド63には、係合爪72a(係合部)が設けられ、支持部材70には、係合溝72b(被係合部)が設けられており、これら係合爪72a及び係合溝72bによってスナップフィット72が構成されている。そして、係合爪72a及び係合溝72bが係合することによって、ニップガイド63が装着位置に位置決めされる。なお、本実施の形態では、ニップガイド63に係合爪を設け、支持部材70に係合溝を設けたが、ニップガイド63及び支持部材70のいずれか一方に係合爪を、いずれか他方に係合溝を設ければよい。また、スナップフィット72の構造や形状は限定されない。
ニップガイド63は、スナップフィット72のロックを解除することで、図14(a)に示すように開放位置に移動することができ、開放位置においては、ニップガイド63とフィードローラ53との隙間を大きくすることができる。そして、ニップガイド63が開放位置に位置している状態では、ニップガイド63とフィードローラ53との間から分離ローラ54の取り外しが許容される。これにより、作業者が簡単に分離ローラ54を交換することができ、メンテナンス性を向上することができる。
ニップガイド63は、装着位置にあって、支持部材70の対面に設けられたバネ座面73と分離ローラホルダ60との間に縮設されたニップガイドバネ64によって、ストッパ65に押圧されている。ニップガイド63は、円筒形状のストッパ65に当接することで、回動支点63aを中心にしてフィードローラ53に近づく方向に移動することが規制される第1当接面74と、シート搬送方向の移動が規制される第2当接面75と、を有している。
第1当接面74は、図15に示すように、回動支点63aを中心とするニップガイド63の揺動軌跡76の法線方向Lと略平行に形成されている。第2当接面75は、第1当接面74とで形成される角度が、角度Jとなるように構成されている。角度Jは、接線角度K<J<180度となるように設定されている。接線角度Kは、揺動軌跡76とストッパ65の外周との接線と、第1当接面74と、によって形成される角度である。例えば、角度J=接線角度Kとすると、ニップガイド63や支持部材70の寸法精度のばらつきにより、ニップガイド63が回動支点71を中心に回動する際に、第2当接面75とストッパ65が干渉してスムーズに回動することができなくなる場合がある。そのため、本実施の形態では、第2当接面75を鉛直方向に沿って形成し、角度Jを、接線角度K<J<180°となるように設定して、ニップガイド63がスムーズに回動できるように構成している。
次に、比較例として、ニップガイド63に、第1当接面74及び第2当接面75のいずれか一方しか設けていない場合を、図16に沿って説明する。
図16(a)は、ニップガイド63に第1当接面74しか設けてない場合である。ニップガイド63のガイド面63cが、シート束Saによって矢印Q方向の押圧力を受けると、先端ガイド63bを含むニップガイド63の上端部が矢印Q方向に移動する。これは、ニップガイド63の変形や、ニップガイド63と支持部材70の取付けガタによるものである。ニップガイド63の上端部の移動量が大きくなると、ニップガイド63と分離ローラ54とが接触して、分離ローラ54が回転できなくなる。分離ローラ54が停止した状態でシートの先端が分離ローラ54と接触すると、分離ローラ54の周面の摩擦係数が大きいため、シートの先端が分離ニップNに進入できず、ジャムやシート先端へのダメージが発生する。
図16(b)は、ニップガイド63に第2当接面75しか設けてない場合である。ニップガイド63のガイド面63cが、シート束Saによって矢印Q方向の押圧力を受けると、ニップガイド63及び支持部材70には、回動支点63aを中心に矢印V方向の回転力が発生する。この回転力により、先端ガイド63bは、フィードローラ53に近づく方向に移動する。この移動量が大きくなって先端ガイド63bがフィードローラ53に接触すると、ニップガイド63が分離ニップNを塞いでしまい、シートSを分離ニップNに給送出来なくなる。若しくは、上述したように先端ガイド63bとフィードローラ53との間で搬送力が発生し、複数枚のシートSが分離ニップNを超えて、重送やジャムが発生してしまう。
このような比較例の問題点から、本実施の形態では、ニップガイド63を、ストッパ65に対して第1当接面74と第2当接面75の2面で当接するように構成している。これにより、ニップガイド63及び支持部材70の寸法精度や取付けガタ、シート搬送時にシート束Saからニップガイド63が受ける押圧力の影響を受けにくく、安定した給送性能を維持することができる。
以上より、プリンタ等の画像形成装置の高速化、小型化、使用されるメディアの多様化に対して、シートSにダメージを与えず、シートSを1枚ずつ確実に分離して、分離ローラの交換性に優れたシート搬送装置を提供することができる。
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明するが、上述した第1の実施の形態と同じ構成については、図面に同一の符号を付して、説明を省略する。シート給送装置650のニップガイド63は、図17に示すように、ニップガイドバネ664によってフィードローラ53に向けて付勢されている。ニップガイドバネ664は、ニップガイド63と給紙フレーム52の底板52bとの間に縮設されている。
これにより、ニップガイド63が、ニップガイドバネ664の付勢力に抗して時計回りに回転する際に、分離ローラホルダ60には力がほとんど作用しない。そのため、ニップガイドバネ664及び分離バネ61の設計自由度を向上することができる。
なお、上述の2つの実施形態においては、ストッパ65は、分離ローラホルダ60と一体に構成されてもよく、別部材を分離ローラホルダ60に固定してもよい。また、ストッパ65を分離ローラホルダ60以外の部材に固定してもよい。
また、上述の2つの実施形態においては、フィードローラ53及び分離ローラ54を備えた手差し給送部50を例に挙げて説明したが、以下のような給送方式によっても、同様の効果が得られる。例えば、ピックアップローラによってシートの給送を行い、フィードローラ及び分離ローラによってシートを1枚ずつに分離するものでもよい。例えば、分離ローラの代わりに、給送方向と逆の回転方向に回転するリタードローラ(分離部材)を用いたものや、分離パッド(分離部材)等の非回転体を用いてシートを1枚ずつに分離するものでもよい。
また、本発明は、手差し給送部だけでなく、カセット式のカセット給送部に適用してもよい。また、昇降可能な中板を備えずに、シートトレイに直接シートを積載するシート給送装置に適用してもよい。