JP6462937B1 - 交流モータ駆動装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】直流電源電圧の利用率の向上を図り、3相モータの小型化、インバータのスイッチング素子の低耐圧、スイッチング周波数の低減によるスイッチング素子の損失低減を図る。【解決手段】2組のインバータを制御して交流モータを駆動する交流モータ駆動装置であって、直流電源に接続される2組のn(ただし、nは1を除く奇数)相インバータと各相の正相と逆相に分離された2n端子を有するn相モータとを備え、一方のn相インバータの出力をそれぞれ対応するn相モータの正相のn端子に接続し、他方のn相インバータの出力をそれぞれ対応するn相モータの逆相のn端子に接続して、2組のn相インバータ間の位相を制御することにより、n相モータの印加電圧を制御する。【選択図】図1

Description

本発明は、電池利用等の電気駆動車、ハイブリット車、デイーゼル発電機搭載電気駆動車両、舶用電機駆動装置等に搭載される高速モータ駆動装置その他各種の交流モータ駆動装置に関する。
直流を電源として3相インバータを制御し直流を3相交流に変換して3相モータを駆動する3相モータ駆動装置が種々提案されている(例えば、特許文献1〜2参照)。従来のインバータ駆動の3相モータでは、PWM(Pulse Width Modulation)制御の正弦波変調が主体であり、電圧利用率が悪くモータ電流も大きくなるため、モータ、インバータの損失が大きくなるという問題があった。
誘導モータを使用するものでは、電圧利用率の良い1パルス制御の同期制御が使用されるが、1パルス制御領域ではモータ制御電圧が一定のスリップ制御となり、電圧利用率向上分が充分生かされず、モータ効率面でも良くなかった。また、磁石モータを使用したものでは、誘起電圧が回転数に比例して上昇するので、高速機では弱み界磁電流を流す必要があり効率が悪かった。
また、高速モータ駆動装置では、インバータのスイッチング回数が制限されるため、昇降圧回路付きの1パルス制御方式が採用されているが、効率が悪かった。モータ小型化には、モータの体格が印加電圧に比例するので、供給電圧の高圧化が必要であった。
一方、欧州では大容量化と電源電圧の有効利用のため、絶縁2電源によるPWM制御方式により供給直流電源電圧の2倍が利用できるDTLI(デユアル2レベルインバータ)によるモータ駆動装置が提案されていた。
特許第3051754号 特許第5332740号
従来使用されていたPWM正弦波変調制御の3相インバータ駆動では、モータ使用電圧が最大で電源電圧Eの2/3までしか利用できず、電圧利用率が悪いだけでなく、スイッチング周波数が高くスイッチング損失も大きかった。また、モータ使用電圧が電源電圧で制限されるため、モータの特性領域が限定され、高速小型化ができなかった。さらに、使用パワー半導体の耐圧も電源電圧に対応したものが必要となり、モータ使用電圧の高圧化では、その分電源電圧も高圧化してスイッチング損失がさらに増える欠点があり、これを解決する課題があった。
本発明は、上記課題を解決するものであり、直流電源の電圧利用率を高め、3相モータの小型化を可能とし、スイッチング素子として使用されるパワー半導体の低耐圧化、スイッチング周波数の低減によるスイッチング損失の低減を図るものである。
そのために本発明は、2組のインバータを制御して交流モータを駆動する交流モータ駆動装置であって、直流電源に接続される2組のn(ただし、nは1を除く奇数)相インバータと各相が分離された正相と逆相の2n端子を有するn相モータとn相インバータのスイッチング指令信号を入力して位相ずれ制御された位相ずれスイッチング指令信号を生成する位相ずれ信号生成手段とを備え、前記2組のn相インバータの一方のn相インバータの出力をそれぞれ対応するn相モータの正相のn端子に接続し、他方のn相インバータの出力をそれぞれ対応するn相モータの逆相のn端子に接続して、前記n相インバータのスイッチング指令信号と前記位相ずれ信号生成手段により位相ずれ制御され生成された位相ずれスイッチング指令信号とを前記2組のn相インバータに入力してスイッチング制御することにより、前記2組のn相インバータ間の位相ずれを制御し、前記n相モータの印加電圧を制御するように構成したことを特徴とする。
また、2組のインバータを制御して交流モータを駆動する交流モータ駆動装置であって、独立した2組の直流電源と前記直流電源に接続される2組の3相を含むn(ただし、nは1を除く奇数)相インバータと各相が分離された正相と逆相の2n端子を有するn相モータとn相インバータのスイッチング指令信号を入力して位相ずれ制御された位相ずれスイッチング指令信号を生成する位相ずれ信号生成手段とを備え、前記2組のn相インバータの一方のn相インバータの出力をそれぞれ対応するn相モータの正相のn端子に接続し、他方のn相インバータの出力をそれぞれ対応するn相モータの逆相のn端子に接続して、前記n相インバータのスイッチング指令信号と前記位相ずれ信号生成手段により位相ずれ制御され生成された位相ずれスイッチング指令信号とを前記2組のn相インバータに入力してスイッチング制御することにより、前記2組のn相インバータ間の位相ずれを制御し、前記n相モータの印加電圧を制御するように構成したことを特徴とする。
本発明によれば、2組のインバータを制御して交流モータを駆動する交流モータ駆動装置であって、直流電源に接続される2組のn(ただし、nは1を除く奇数)相インバータと各相が分離された正相と逆相の2n端子を有するn相モータとを備え、一方のn相インバータの出力をそれぞれ対応するn相モータの正相のn端子に接続し、他方のn相インバータの出力をそれぞれ対応するn相モータの逆相のn端子に接続して、2組のn相インバータ間の位相を制御することにより、n相モータの印加電圧を制御するように構成したので、インバータ間の位相を制御する簡単な操作で、スッチング周波数を低くすることができ、モータ電圧を可変でき、電圧利用率を高めることができる。本発明によれば、従来のPWM正弦波変調制御のインバータによるモータ駆動装置に比べ、電圧リップルも少ない1パルス可変電圧制御により、電圧利用率も高めることができ、スイッチング回数が少なくなるので、スイッチング損失が低くすることができる。しかも、固定電圧の直流電源利用の1パルス制御により、広域に電圧を可変できるため、モータの小型化、高速化、高効率の交流モータ駆動装置が可能になった。
本発明に係る交流モータ駆動装置の実施形態を説明する図である。 2組の3相インバータが位相ずれ0°で動作するときのスイッチングパターンを示す図である。 第2の3相インバータが第1の3相インバータに対し位相ずれ60°で動作するときのスイッチングパターンを示す図である。 第2の3相インバータが第1の3相インバータに対し位相ずれ60°で動作するときの各相巻線の電流、印加電圧を説明する図である。 第2の3相インバータが第1の3相インバータに対し位相ずれ60°で動作するときの回路と3相モータの各相巻線の印加電圧の波形を示す図である。 第2の3相インバータが第1の3相インバータに対し位相ずれ120°で動作するときのスイッチングパターンを示す図である。 第2の3相インバータが第1の3相インバータに対し位相ずれ120°で動作するときの回路と3相モータの各相巻線の印加電圧の波形を示す図である。 第2の3相インバータが第1の3相インバータに対し位相ずれ180°で動作するときのスイッチングパターンを示す図である。 第2の3相インバータが第1の3相インバータに対し位相ずれ180°で動作するときの回路と3相モータの各相巻線の印加電圧の波形を示す図である。 中性点補正法による位相ずれ180°、150°の相電圧波形を示す図である。 本発明に係る交流モータ駆動装置の比較例として2相モータの例を説明する図である。 2相モータ駆動装置における第1のインバータのスイッチングパターンと位相ずれ60°、120°の場合の第2のインバータのスイッチングパターンを示す図である。 2相モータ駆動装置における位相ずれ60°で動作するときの回路を示す図である。 2相モータ駆動装置における位相ずれ60°、120°、180°のモードでの2相モータの各相巻線の印加電圧の波形を示す図である。 本発明に係る交流モータ駆動装置の他の実施形態として5相モータの例を説明する図である。 5相モータ駆動装置における第1のインバータのスイッチングパターンと位相ずれ72°、108°の場合の第2のインバータのスイッチングパターンを示す図である。 5相モータ駆動装置における位相ずれ72°で動作するときの回路を示す図である。 5相モータ駆動装置における位相ずれ108°で動作するときの回路を示す図である。 5相モータ駆動装置における位相ずれ72°、108°のモードでの5相モータの各相巻線の印加電圧の波形を示す図である。 5相モータ駆動装置における第1のインバータのスイッチングパターンと位相ずれ180°の場合の第2のインバータのスイッチングパターンを示す図である。 5相モータ駆動装置における位相ずれ180°で動作するときの回路を示す図である。 5相モータ駆動装置における位相ずれ180°のモードでの5相モータの各相巻線の印加電圧の波形を示す図である。
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明に係る交流モータ駆動装置の実施形態を説明する図である。図中、1、2は3相インバータINV、3は3相モータ、4、5は直流電源、6は位相ずれ信号生成部、s1〜s12はスイッチング素子、UはU相の巻線、VはV相の巻線、WはW相の巻線をそれぞれ示している。
図1において、3相モータ3は、U相の巻線U、V相の巻線V、W相の巻線Wがそれぞれ独立巻線であり、それぞれの正相の端子として3端子a1〜a3、逆相の端子として3端子b1〜b3を有する。第1の3相インバータINV1は、直流電源4に接続され、U相のスイッチング素子s1、s2、V相のスイッチング素子s5、s6、W相のスイッチング素子s9、s10がスイッチング指令信号に基づき3相モータ3の駆動周波数に合わせた基準位相の0°、60°、120°の相順に一定幅180°でスイッチングされる。第2の3相インバータINV2は、直流電源5に接続され、U相のスイッチング素子s3、s4、V相のスイッチング素子s7、s8、W相のスイッチング素子s11、s12が位相ずれ信号生成部6により生成された位相ずれスイッチング指令信号に基づき3相モータ3の駆動周波数に合わせた基準位相の0°、60°、120°の相順に一定幅180°でスイッチングされる。そして、第1の3相インバータINV1の出力は3相モータ3の正相の3端子a1〜a3に接続され、第2の3相インバータINV2の出力は3相モータ3の逆相の3端子b1〜b3に接続される。
位相ずれ信号生成部6は、位相ずれ指令信号に基づきスイッチング指令信号から0°〜180°の位相ずれ制御された位相ずれスイッチング指令信号を生成するものである。第1の3相インバータINV1は、スイッチング指令信号を入力してスイッチング制御されるのに対し、第2の3相インバータINV2は、第1の3相インバータINV1に入力されるスイッチング指令信号から位相ずれ制御され生成された位相ずれスイッチング指令信号によりスイッチング制御される。位相ずれ指令信号が0°であれば、位相ずれスイッチング指令信号は、位相ずれ信号生成部6からスイッチング指令信号がスルーで出力され、図2に示すように2組の3相インバータINV1、2のスイッチングパターンが同じタイミングになり、同じ位相でスイッチングされる。
図2において、1コマは30°の位相幅を示し、コマ内の「1」はスイッチングオン、「0」はスイッチングオフの状態を示している。後述の図3、図6、図8、図12においても同様である。第2の3相インバータINV2に入力される位相ずれスイッチング指令信号が位相ずれ0°のとき、電圧Eの直流電源4、5に対し、U相の巻線U、V相の巻線V、W相の巻線Wの正相側の端子a1〜a3と逆相側の端子b1〜b3が常に同電位になり、3相モータ3の各相の巻線U、V、Wの印加電圧は0となる。
この状態から、第1の3相インバータINV1に対して位相ずれ60°の進みモードで動作するように第2の3相インバータINV2がスイッチングされるスイッチングパターンを示したのが図3である。また、このモードでの0°〜60°間の動作回路により各相巻線の電流、印加電圧を説明する図を示したのが図4であり、0°〜60°間と60°〜120°間の動作回路と1サイクル0°〜360°間の3相モータの各相巻線の印加電圧の波形を示したのが図5である。
第1の3相インバータINV1に対して第2の3相インバータINV2が位相ずれ60°のモードにおいて、0°〜60°間は、U相の巻線Uに対しスイッチング素子s1とs3、V相の巻線Vに対しスイッチング素子s6とs8、W相の巻線Wに対しスイッチング素子s9とs12がオンになり、図4(A)に示す回路が形成される。図4(A)に示す回路において、各相巻線の電流、印加電圧は、図4(B)に示す直流電源4の回路と図4(C)に示す直流電源5の回路の重ね合わせにより次のように求めることができる。
直流電源4の電圧をE4 、直流電源5の電圧をE5 とし、各相巻線のインピーダンスはいずれも等しいZとすると、まず、図4(B)に示す回路では、合計インピーダンスが3Z/2になり、電圧E4 に対する電流i4 は2E4 /3Zになるので、図示のようにU相の巻線UとW相の巻線Wの電流は、それぞれi4 /2、V相の巻線Vの電流は−i4 になる。同様に、図4(C)に示す回路でも、合計インピーダンスが3Z/2になり、電圧E5 に対する電流i5 は2E5 /3Zになるので、図示のようにV相の巻線VとW相の巻線Wの電流は、それぞれi5 /2、U相の巻線Uの電流は、−i5 になる。したがって、図4(A)に示す回路の各相巻線の電流iu 、iv 、iw 及び印加電圧eu 、ev 、ew は、図4(B)、(C)に示す2つの回路の電流を重ね合わせ次のようになる。
〔数1〕
4 1 iu =───−i5 u =Ziu =───(E4 −2E5
2 3 i5 1 iv =−i4 +─── ev =Ziv =−───(2E4 −E5
2 3 i4 5 1 iw =───+─── ew =Ziw =───(E4 +E5
2 2 3
ここで、直流電源4、5が同じ電圧Eである場合、各相巻線の印加電圧eu 、ev 、ew は、それぞれ図5(A)に示すようにeu =−E/3、ev =−E/3、ew =2E/3になる。以下の説明において、印加電圧波形を単純化して示すため、2組のインパータに接続される直流電源は、同じ電圧Eの絶縁された独立電源であるとして説明する。
次の60°〜120°間は、V相の巻線Vに対しスイッチング素子s8のオンがs7のオンに、W相の巻線Wに対しスイッチング素子s9のオンがs10のオンに切り換わり、図5(B)に示す回路が形成されるので、図4により説明したと同様に直流電源4、5が同じ電圧Eの場合、U相とW相の印加電圧はE/3、V相の印加電圧は−2E/3になる。同様にして120°〜360°間の各相巻線の印加電圧を求めると、直流電源4、5が同じ電圧Eの場合、各相巻線の印加電圧は、図5(C)に示すように60°の幅で電圧Eの1/3〜2/3〜1/3となり、半サイクル毎に反転する波形になる。
位相ずれを大きくし、第1の3相インバータINV1に対して第2の3相インバータINV2が位相ずれ120°の進みモードで動作するスイッチングパターンを示したのが図6であり、このモードでの0°〜60°間と60°〜120°間の動作回路と1サイクル0°〜360°間の3相モータの各相巻線の印加電圧の波形を示したのが図7である。
第1の3相インバータINV1に対して第2の3相インバータINV2が位相ずれ120°のモードにおいて、0°〜60°間は、U相の巻線Uに対しスイッチング素子s1とs3、V相の巻線Vに対しスイッチング素子s6とs7、W相の巻線Wに対しスイッチング素子s9とs12がオンになり、図7(A)に示す回路が形成されるので、直流電源4、5を同じ電圧Eとした場合、U相の印加電圧は0、V相の印加電圧は−E、W相の印加電圧はEになる。
次の60°〜120°間は、U相の巻線Uに対しスイッチング素子s3からs4に、W相の巻線Wに対しスイッチング素子s9のオンがs10のオンに切り換わり、図7(B)に示す回路が形成されるので、U相の印加電圧は直流電源4、5の電圧E、V相の印加電圧は−Eで変わらず、W相の印加電圧は0になる。このように各相の巻線の印加電圧は、図7(C)に示すように120°の幅でEとなり、半サイクル毎に反転する波形になる。
さらに、第1の3相インバータINV1に対して第2の3相インバータINV2が位相ずれ180°のモードで動作するスイッチングパターンを示したのが図8であり、第2の3相インバータINV2は、図2に示した位相ずれ0°のモードを反転したスイッチングパターンとなる。このモードでの0°〜60°間と60°〜120°間の動作回路と1サイクル0°〜360°間の3相モータの各相巻線の印加電圧の波形を示したのが図9である。
第1の3相インバータINV1に対して第2の3相インバータINV2が位相ずれ180°のモードにおいて、0°〜60°間は、U相の巻線Uに対しスイッチング素子s1とs4、V相の巻線Vに対しスイッチング素子s6とs7、W相の巻線Wに対しスイッチング素子s9とs12がオンになり、図9(A)に示す回路が形成されるので、U相の印加電圧は直流電源4、5の電圧Eの2/3、V相の印加電圧は−4/3、W相の印加電圧は2/3になる。
次の60°〜120°間は、W相の巻線Wに対しスイッチング素子s9のオンがs10のオンに、さらにs12のオンがs11のオンに切り換わり、図9(B)に示す回路が形成されるので、U相の印加電圧は直流電源4、5の電圧Eの4/3、V相の印加電圧は−2/3、W相の印加電圧も−2/3になる。このように各相の巻線の印加電圧は、図9(C)に示す60°の幅で2/3〜4/3〜2/3となり、半サイクル毎に反転する波形になる。
図5、図7、図9それぞれの印加電圧波形から明らかなように位相ずれが大きくなるにしたがって、各相の巻線の印加電圧が大きくなり、位相ずれ180°のモードにおける各相巻線の印加電圧は、図9(C)に示すように直流電源4、5の電圧Eの4/3まで大きな半サイクル毎に反転する階段状の波形が得られる。先に説明した重ね合わせの法による波形算出法に加え、図10に中性点補正法でも同様な波形が得られ、位相ずれ180°、150°の時の電圧波形を示す。
以上のように実施形態の説明として、印加電圧波形を表現しやすくするため、独立した2組の直流電源4、5の電圧E4 、E5 を同じ電圧Eである場合を例として示したが、電圧E4 とE5 が異なる構成の場合、第1の3相インバータINV1に対して第2の3相インバータINV2の位相ずれを制御することにより、3相モータの印加電圧が可変となることは明らかである。つまり、直流電源4、5の電圧E4 、E5 が同じ電圧であっても、異なる電圧であっても、位相ずれの制御により、3相モータの印加電圧が可変となる。
図1の実施形態に示す本発明に係る交流モータ駆動装置は、直流電源4に接続される第1の3相インバータINV1、直流電源5に接続される第2の3相インバータINV2からなる2組の3相インバータINV1、2と、U、V、Wの各相が分離された正相と逆相の6端子a1〜a3、b1〜b3を有する3相モータ3とを備えるものである。そして、第1の3相インバータINV1の出力をそれぞれ対応する3相モータ3の正相の3端子a1〜a3に接続し、第2の3相インバータINV2の出力をそれぞれ対応する3相モータ3の逆相の3端子b1〜b3に接続して、2組の3相インバータINV1、2の間の位相ずれを制御することにより、3相モータの印加電圧を制御するものである。
以上のように本発明によれば、2組のインバータ間の位相をずらす簡易な制御により、直流電源電圧を越えるモータ印加電圧を実現でき、電圧利用率の高い電圧リップルも少ない1パルス電圧可変制御が実現できる。このようなモータ電圧の高圧化、モータ電圧の可変により、モータの小型化、高速化、高効率化が可能なモータ駆動装置が実現できる。また、3相モータの駆動周波数で2組のインバータのスイッチング素子を作動させるので、従来のPWM正弦波変調制御のインバータによるモータ駆動装置に比べ、スイッチング周波数を小さくしスイッチング回数を少なくすることができる。その結果、スイッチング損失を低減し、使用パワー半導体の低耐圧化、変換器損失の低減が実現でき、モータ、インバータが効率的に使用できる。
図11は本発明に係る交流モータ駆動装置の比較例として2相モータの例を説明する図であり、図中、11、12は2相インバータINV、13は2相モータ、14、15は直流電源、16は位相ずれ信号生成部、s1〜s8はスイッチング素子、UはU相の巻線、VはV相の巻線をそれぞれ示している。
図11において、2相モータ13は、U相の巻線U、V相の巻線Vがそれぞれ独立巻線であり、それぞれの正相の端子として2端子a1、a2、逆相の端子として2端子b1、b2を有する。第1の2相インバータINV11は、直流電源14に接続され、U相のスイッチング素子s1、s2、V相のスイッチング素子s5、s6がスイッチング指令信号に基づき2相モータ13の駆動周波数に合わせた基準位相の0°、180°の相順に一定幅180°でスイッチングされる。第2の2相インバータINV12は、直流電源15に接続され、U相のスイッチング素子s3、s4、V相のスイッチング素子s7、s8が位相ずれ信号生成部16により生成された位相ずれスイッチング指令信号に基づき2相モータ13の駆動周波数に合わせた基準位相の0°、180°の相順に一定幅180°でスイッチングされる。そして、第1の2相インバータINV11の出力は2相モータ13の正相の2端子a1、a2に接続され、第2の2相インバータINV12の出力は2相モータ13の逆相の2端子b1、b2に接続される。
位相ずれ信号生成部16は、位相ずれ指令信号に基づきスイッチング指令信号から0°〜180°の位相ずれ制御された位相ずれスイッチング指令信号を生成するものである。第1の2相インバータINV11は、スイッチング指令信号を入力してスイッチング制御されるのに対し、第2の2相インバータINV12は、第1の2相インバータINV11に入力されるスイッチング指令信号から位相ずれ制御され生成された位相ずれスイッチング指令信号によりスイッチング制御される。位相ずれ指令信号が0°であれば、第1の2相インバータINV11と第2の2相インバータINV12は、同じ位相でスイッチングされ、U相の巻線U、V相の巻線Vの正相側の端子a1、a2と逆相側の端子b1、b2が常に同電位になり、2相モータ13の各相の巻線U、Vの電圧は0となる。
第1の2相インバータINV11に対して第2の2相インバータINV12が位相ずれ60°、120°の遅れモードで動作するスイッチングパターンを示したのが図12であり、、位相ずれ60°のモードでの0°〜60°間と60°〜180°間、180°〜240°間、240°〜360°間の動作回路を示したのが図13、位相ずれ60°、120°、180°のモードでの1サイクル0°〜360°間の2相モータ13の各相巻線の印加電圧の波形を示したのが図14である。
第1の2相インバータINV11に対して第2の2相インバータINV12が位相ずれ60°の遅れモードにおいて、0°〜60°間は、U相の巻線Uに対しスイッチング素子s1とs4、V相の巻線Vに対しスイッチング素子s6とs7がオンになり、図13(A)に示す回路が形成されるので、U相の印加電圧は直流電源の電圧E、V相の印加電圧は−Eになる。
次の60°〜180°間は、U相の巻線Uに対しスイッチング素子s4のオンがs3のオンに、V相の巻線Vに対しスイッチング素子s7のオンがs8のオンに切り換わり、図13(B)に示す回路が形成されるので、各相の巻線の印加電圧は0になる。180°〜240°間、240°〜360°間半サイクル前の反転回路となる。図12、図13から明らかなように位相ずれの幅に対応して各相の巻線の印加電圧のE、−Eの幅が広くなるので、各相巻線の印加電圧は図14に示すような波形になる。
上記のように本比較例によれば、2組の2相インバータと2相モータとの構成においても、2組のインバータ間の位相をずらす簡易な制御により、1パルス電圧可変制御が実現できるが、各相の巻線の印加電圧は、高さが一定Eで位相ずれに応じ幅が可変の矩形波形になる。これに対し、2組の3相インバータと3相モータによる上記本発明の実施形態によれば、各相の巻線の印加電圧は、位相ずれに応じて直流電源の電圧Eを越える高電圧までの階段状の波形で、直流電源電圧を越えるモータ印加電圧を実現でき、電圧利用率の高い電圧リップルも少ない1パルス電圧可変制御が実現できる。
図15は本発明に係る交流モータ駆動装置の他の実施形態として5相モータの例を説明する図であり、図中、21は第1の5相インバータINV、22は第2の5相インバータINV、23は5相モータ、24、25は直流電源、26は位相ずれ信号生成部、s1、s2、s3、s4はI相のスイッチング素子、s5、s6、s7、s8はII相のスイッチング素子、s9、s10、s11、s12はIII 相のスイッチング素子、s13、s14、s15、s16はIV相のスイッチング素子、s17、s18、s19、s20はV 相のスイッチング素子、IはI相の巻線、IIはII相の巻線、III はIII 相の巻線、IVはIV相の巻線、V はV 相の巻線をそれぞれ示している。
図15において、5相モータ23は、I相の巻線I、II相の巻線II、III 相の巻線III 、IV相の巻線IV、V 相の巻線V がそれぞれ独立巻線であり、それぞれの正相の端子として5端子a1、a2、a3、a4、a5、逆相の端子として5端子b1、b2、b3、b4、b5を有する。第1の5相インバータINV21は、直流電源24に接続され、I相のスイッチング素子s1、s2、II相のスイッチング素子s5、s6、III 相のスイッチング素子s9、s10、IV相のスイッチング素子s13、s14、V 相のスイッチング素子s17、s18がスイッチング指令信号に基づき5相モータ23の駆動周波数に合わせた基準位相の0°、72°、144°、216°、288°の相順に一定幅180°でスイッチングされる。第2の5相インバータINV22は、直流電源25に接続され、I相のスイッチング素子s3、s4、II相のスイッチング素子s7、s8、III 相のスイッチング素子s11、s12、IV相のスイッチング素子s15、s16、V 相のスイッチング素子s19、s20が位相ずれ信号生成部26により生成された位相ずれスイッチング指令信号に基づき5相モータ23の駆動周波数に合わせた基準位相の0°、72°、144°、216°、288°の相順に一定幅180°でスイッチングされる。そして、第1の5相インバータINV21の出力は5相モータ23の正相の2端子a1、a2、a3、a4、a5に接続され、第2の5相インバータINV22の出力は5相モータ23の逆相の5端子b1、b2、b3、b4、b5に接続される。
位相ずれ信号生成部26は、位相ずれ指令信号に基づきスイッチング指令信号から0°〜180°の位相ずれ制御された位相ずれスイッチング指令信号を生成するものである。第1の5相インバータINV21は、スイッチング指令信号を入力してスイッチング制御されるのに対し、第2の5相インバータINV22は、第1の5相インバータINV21に入力されるスイッチング指令信号から位相ずれ制御され生成された位相ずれスイッチング指令信号によりスイッチング制御される。位相ずれ指令信号が0°であれば、第1の5相インバータINV21と第2の5相インバータINV22は、同じ位相でスイッチングされ、I相の巻線I、II相の巻線II、III 相の巻線III 、IV相の巻線IV、V 相の巻線V の正相側の端子a1、a2、a3、a4、a5と逆相側の端子b1、b2、b3、b4、b5が常に同電位になり、5相モータ23の各相の巻線I、II、III 、IV、V の印加電圧は0となる。
第1の5相インバータINV21に対して第2の5相インバータINV22が位相ずれ72°、108°の進みモードで動作するスイッチングパターンを示したのが図16であり、、位相ずれ72°のモードでの0°〜36°間と36°〜72°間の動作回路を示したのが図17、位相ずれ108°のモードでの0°〜36°間と36°〜72°間の動作回路を示したのが図18、位相ずれ72°、108°のモードでの1サイクル0°〜360°間の5相モータ23の各相巻線の印加電圧の波形を示したのが図19である。図16において、1コマは36°の位相幅を示し、コマ内の「1」はスイッチングオン、「0」はスイッチングオフの状態を示している。後述の図20においても同様である。
第1の5相インバータINV21に対して第2の5相インバータINV22が位相ずれ72°の進みモードになると、0°〜36°間は、I相の巻線Iに対しスイッチング素子s1とs3、II相の巻線IIに対しスイッチング素子s6とs7、III 相の巻線III に対しスイッチング素子s10とs12、IV相の巻線IVに対しスイッチング素子s13とs16、V 相の巻線V に対しスイッチング素子s17とs19がオンになるので、図17(A)に示す回路が形成される。この回路では、直流電源24、25の電圧をEとすると、IV相の印加電圧がE、II相の印加電圧が−Eになる。
次の36°〜72°間になると、IV相においてスイッチング素子s13のオンがスイッチング素子s14のオンに切り換わると同時に、V 相においてスイッチング素子s19のオンがスイッチング素子s20のオンに切り換わり、図17(B)に示す回路が形成される。この回路では、IV相の印加電圧がE、II相の印加電圧が−Eになる。さらに、72°〜108°間になると、II相においてスイッチング素子s6のオンがスイッチング素子s5のオンに切り換わると同時に、III 相においてスイッチング素子s12のオンがスイッチング素子s11のオンに切り換わる。108°〜144°間になると、V 相においてスイッチング素子s17のオンがスイッチング素子s18のオンに切り換わると同時に、I相においてスイッチング素子s3のオンがスイッチング素子s4のオンに切り換わる。そして、144°〜180°間になると、III 相においてスイッチング素子s10のオンがスイッチング素子s9のオンに切り換わると同時に、IV相においてスイッチング素子s16のオンがスイッチング素子s15のオンに切り換わるので、位相ずれ72°のモードでの1サイクル0°〜360°間の5相モータ23の各相巻線の印加電圧は、図19(A)に示すように電圧Eが72°幅で、半サイクル毎に反転する波形になる。
第1の5相インバータINV21に対して第2の5相インバータINV22が位相ずれ108°の進みモードになると、図16に示すスイッチングパターンによる0°〜36°間、36°〜72°間で、図18に示す回路が形成される。これらの回路によれば、2つの相の電圧が直流電源24、25の電圧Eに対し4/5になるとき、他の1つの相の電圧が−6/5、残りの2つの相が−1/5になり、2つの相の電圧が−4/5になるとき、他の1つの相の電圧が6/5残りの2つの相が1/5になる。つまり、位相ずれ108°のモードでの1サイクル0°〜360°間の5相モータ23の各相巻線の印加電圧は、図19(B)に示すように36°幅で電圧Eの1/5〜4/5〜6/5〜4/5〜1/5となり、半サイクル毎に反転する波形になる。
第1の5相インバータINV21に対して第2の5相インバータINV22が位相ずれ180°のモードは、図20に示すスイッチングパターンであり、このパターンによれば、図21に示すように2つの相の並列回路と残り3つの相の並列回路と直流電源24、25とを直列接続する回路が形成される。したがって、2つの並列回路を形成する相は、直流電源24、25の電圧Eの6/5、3つの並列回路を形成する相は、直流電源24、25の電圧Eの4/5が印加電圧となるので、位相ずれ180°のモードでの1サイクル0°〜360°間の5相モータ23の各相巻線の印加電圧は、図22に示すように36°幅で直流電源24、25の電圧Eの4/5〜6/5〜4/5〜6/5〜4/5となり、半サイクル毎に反転する波形になる。
本実施形態によれば、2組の5相インバータと5相モータとの構成においても、2組のインバータ間の位相をずらす簡易な制御により、直流電源電圧を越えるモータ印加電圧を実現でき、奇数相では、さらに偶数相よりも電圧利用率の高い電圧リップルの少ない1パルス電圧可変制御が実現できる。このようなモータ電圧の高圧化、モータ電圧の可変により、モータの小型化、高速化、高効率化が可能なモータ駆動装置が実現できる。また、5相モータの駆動周波数で2組のインバータのスイッチング素子を作動させるので、従来のPWM正弦波変調制御のインバータによるモータ駆動装置に比べ、スイッチング周波数を小さくしスイッチング回数を少なくすることができる。その結果、スイッチング損失を低減し、使用パワー半導体の低耐圧化、変換器損失の低減が実現でき、モータ、インバータが効率的に使用できる。
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、従来の3相インバータのPWM正弦波変調制御より高い3相モータに加わる電圧が得られるので、モータ電流の減少とモータ印加電圧の高圧化により、モータ定出力領域が延び、その分モータが高速化でき、モータの大幅な小型化と高効率化が可能になった。
従来の3相インバータ制御の1パルス制御では電圧制御が出来なかったが、本発明によれば、1パルス制御領域のモータ印加電圧を変えることができ、負荷変動領域の誘導モータの効率的制御が出来る他、磁石モータでは高速域での誘起電圧を効率的に制御が出来るようになった。
同出力の一般的な3相インバータに比べ、低圧のパワー素子が使用出来、1パルス可変倍電圧制御により損失が非常に少ない、低コストの変換器により、パワー素子をパラ接続した一般的3相インバータに対し、容量、コスト、効率面上のメリットが大きい。低電圧パワー素子利用が出来ることで、低電圧容量インバータ2台使用により経済性に優れた高圧大容量ドライブ装置が可能になった。
本発明によれば、直流をn(nは1を除く奇数)相交流に変換する2組のn相インバータの制御を変換する交流の周波数により半サイクル毎にオン/オフして、第1のn相インバータを基準にして第2のn相インバータのオン/オフ位相を制御するので、直流電源電圧の利用率を向上することができ、n相モータの小型化を図ることができる。また、直流からn相交流に変換する周波数に応じ半サイクル毎に1回オン/オフするだけであり、PWM制御のインバータに比べてスイッチング周波数が小さくなり、インバータのスイッチング制御を単純化し、スイッチング素子の損失を低減することができ、インバータのスイッチング素子の低耐圧化を図ることができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば上記実施形態では、一方のインバータに対して他方のインバータの位相を進めるように位相ずれを制御することにより、出力を制御するものとして説明したが、他方のインバータの位相を遅れるように制御しても、逆に他方のインバータに対して一方のインバータの遅れ又は進み位相ずれを制御してもよいことはいうまでもない。また、すでに説明したように2組のインバータの位相ずれを制御することにより、モータの独立巻線の印加電圧を制御し、モータ出力を制御するものとして、2組のインバータの直流電源は、同一の電圧であっても、異なる電圧であってもよい。また、耐圧の問題に対して他方のインバータの電源(例えば図1では電源5、図15では電源25)を接地することは有効であり、状況に応じて適宜採用されるものであることはいうまでもない。
1、2…3相インバータINV、11、12…2相インバータ、21、22…5相インバータ、3…3相モータ、13…2相モータ、23…5相モータ、4、5、14、15、24、25…直流電源、6、16、26…位相ずれ信号生成部、s1〜s20…スイッチング素子、U、V、W、I〜V …相巻線

Claims (2)

  1. 2組のインバータを制御して交流モータを駆動する交流モータ駆動装置であって、
    直流電源に接続される2組のn(ただし、nは1を除く奇数)相インバータと各相が分離された正相と逆相の2n端子を有するn相モータとn相インバータのスイッチング指令信号を入力して位相ずれ制御された位相ずれスイッチング指令信号を生成する位相ずれ信号生成手段とを備え、
    前記2組のn相インバータの一方のn相インバータの出力をそれぞれ対応するn相モータの正相のn端子に接続し、他方のn相インバータの出力をそれぞれ対応するn相モータの逆相のn端子に接続して、前記n相インバータのスイッチング指令信号と前記位相ずれ信号生成手段により位相ずれ制御され生成された位相ずれスイッチング指令信号とを前記2組のn相インバータに入力してスイッチング制御することにより、前記2組のn相インバータ間の位相ずれを制御し、前記n相モータの印加電圧を制御するように構成したことを特徴とする交流モータ駆動装置。
  2. 2組のインバータを制御して交流モータを駆動する交流モータ駆動装置であって、
    独立した2組の直流電源と前記直流電源に接続される2組の3相を含むn(ただし、nは1を除く奇数)相インバータと各相が分離された正相と逆相の2n端子を有するn相モータとn相インバータのスイッチング指令信号を入力して位相ずれ制御された位相ずれスイッチング指令信号を生成する位相ずれ信号生成手段とを備え、
    前記2組のn相インバータの一方のn相インバータの出力をそれぞれ対応するn相モータの正相のn端子に接続し、他方のn相インバータの出力をそれぞれ対応するn相モータの逆相のn端子に接続して、前記n相インバータのスイッチング指令信号と前記位相ずれ信号生成手段により位相ずれ制御され生成された位相ずれスイッチング指令信号とを前記2組のn相インバータに入力してスイッチング制御することにより、前記2組のn相インバータ間の位相ずれを制御し、前記n相モータの印加電圧を制御するように構成したことを特徴とする交流モータ駆動装置。
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