JP6461734B2 - 荷電粒子ビーム照射装置 - Google Patents

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Description

本発明による実施形態は、荷電粒子ビーム照射装置に関する。
荷電粒子ビーム照射装置は、加速器で荷電粒子ビームを高エネルギーとなるまで加速し、加速された荷電粒子ビームを標的に照射する。荷電粒子ビームを効率的に活用するため、荷電粒子ビーム照射装置は、複数の照射ラインを備える場合がある。
複数の照射ラインを備える代表的な荷電粒子ビーム照射装置として、粒子線治療装置が知られている。粒子線治療装置は、高エネルギーの荷電粒子ビームを腫瘍に照射することで、腫瘍を治療する。個々の照射ラインで生じる準備作業等による待機時間が全体的なビーム利用効率に影響を及ぼさないように、粒子線治療装置は、計画的に複数の照射ラインに荷電粒子ビームを振り分ける。
例えば、従来の粒子線治療装置においては、横並びに配置された複数の照射室のそれぞれに向けて、加速器から取り出された荷電粒子ビームを分岐させる場合があった。しかしながら、この場合には、ビーム輸送系を含めた装置全体の敷地面積が非常に大きくなるといった問題があった。
また、従来の粒子線治療装置においては、省スペース化を図るために、分岐箇所ごとのビームラインの分岐数を増やす場合や、ビームラインを階層的に分岐させる場合があった。しかしながら、これらの場合には、ビームラインの分岐数が多いことで、上流側のビーム条件に対して分岐後の全てのビームラインで照射室までビームを導くための解を見つけるのが困難であった。この結果、ビームラインを調整するための電磁石を増やす必要があるといった問題があった。
特開2000−75100号公報
"MEDICAL HEAVY ION ACCELERATOR PROPOSALS" Trans. Nucl. Sci. Vol. NS-32 No.5 October 1985
小型化を図ることができるとともに、経済性を向上させることができる荷電粒子ビーム照射装置を提供する。
本実施形態による荷電粒子ビーム照射装置は、荷電粒子ビームを加速する加速器と、加速器から出射された荷電粒子ビームを照射する複数の照射室と、複数の偏向電磁石を有し、偏向電磁石で加速器から照射室に荷電粒子ビームを輸送するビーム輸送部と、を備え、ビーム輸送部は、平面視において加速器に沿った環状に配置された共通ビーム輸送部と、共通ビーム輸送部から所定間隔置きに分岐して複数の照射室にそれぞれ至る複数の分岐ビーム輸送部と、を備え、複数の照射室は、平面視において加速器に沿った環状に配置されている。
本発明によれば、小型化を図ることができるとともに、経済性を向上させることができる。
第1の実施形態を示す荷電粒子ビーム照射装置の平面図である。 第1の実施形態の変形例を示す荷電粒子ビーム照射装置の平面図である。 第2の実施形態を示す荷電粒子ビーム照射装置の平面図である。 第3の実施形態を示す共通ビーム輸送部の側面図である。 第4の実施形態を示す荷電粒子ビーム照射装置の斜視図である。 第4の実施形態の変形例を示すビーム輸送部の側面図である。
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態を示す荷電粒子ビーム照射装置1の模式的な平面図である。荷電粒子ビーム照射装置1は、例えば、粒子線治療や素粒子実験などに用いることができる。
図1に示すように、荷電粒子ビーム照射装置1は、加速器の一例であるシンクロトロン加速器11と、ビーム輸送部(ビーム輸送系)12と、複数の照射室13とを備える。シンクロトロン加速器11は、荷電粒子ビームを加速する。照射室13は、シンクロトロン加速器11から出射された荷電粒子ビームを照射する。ビーム輸送部12は、シンクロトロン加速器11から照射室13に荷電粒子ビームを輸送する。
ビーム輸送部12は、共通ビーム輸送部121と、複数の分岐ビーム輸送部122とを備える。共通ビーム輸送部121は、各照射室13への荷電粒子ビームの共通の輸送経路を確保する構成部である。共通ビーム輸送部121は、複数の第1偏向電磁石B1を備える。分岐ビーム輸送部122は、各照射室13への荷電粒子ビームの個別の輸送経路を確保する構成部である。分岐ビーム輸送部122は、第2偏向電磁石B2を備える。
また、荷電粒子ビーム照射装置1は、第1偏向電磁石B1の励磁用の電源14と、第2偏向電磁石B2の励磁用の電源15と、電源14、15の励磁量を制御する制御装置10とを備える。なお、シンクロトロン加速器11の詳細な構成については、図示を省略する。
図1に示すように、共通ビーム輸送部121は、シンクロトロン加速器11を包囲する略多角形(図1において略六角形)の環状に配置されている。すなわち、共通ビーム輸送部121は、平面視においてシンクロトロン加速器11に沿った環状に配置されている。ビーム輸送部12が環状に配置されていることで、荷電粒子ビーム照射装置1の敷地面積を抑えることができる。
共通ビーム輸送部121の複数の角部には、それぞれ第1偏向電磁石B1が配置されている。各第1偏向電磁石B1は、電源14に接続されている。電源14は、制御装置10に接続されている。共通ビーム輸送部121は、更に、ビーム輸送調整用の四極電磁石や軌道補正用の電磁石を備えていてもよい。
複数の分岐ビーム輸送部122は、共通ビーム輸送部121から周方向Dcに所定間隔置きに分岐して、複数の照射室13にそれぞれ至る。具体的には、図1に示すように、各分岐ビーム輸送部122は、共通ビーム輸送部121上に周方向Dcに所定間隔置きにとられた複数の分岐点Pのそれぞれから分岐して、照射室13まで直線状に延びている。各分岐点Pは、隣り合う第1偏向電磁石B1同士の間に存在し、各分岐点Pには、それぞれ第2偏向電磁石B2が配置されている。なお、各分岐ビーム輸送部122は、分岐点Pの下流(照射室13側)では分岐していない。
より具体的には、各分岐ビーム輸送部122は、共通ビーム輸送部121に対して径方向Drの外方側に所定の鋭角θで傾いている。共通ビーム輸送部121に対して直角より小さい角度θを有することで、分岐ビーム輸送部122の下流端は、共通ビーム輸送部121に近い位置に配置されている。これにより、荷電粒子ビーム照射装置1の敷地面積を更に抑えることができる。
各分岐点Pには、それぞれ第2偏向電磁石B2が配置されている。各第2偏向電磁石B2は、電源15に接続されている。電源15は、制御装置10に接続されている。分岐ビーム輸送部122は、四極電磁石を備えていてもよい。
複数の照射室13は、各分岐ビーム輸送部122の下流端において、互いに周方向Dcに間隔を有するように配置されている。すなわち、各照射室13は、平面視においてシンクロトロン加速器11に沿った環状(放射状)に配置されている。照射室13が環状に配置されていることで、荷電粒子ビーム照射装置1の敷地面積を更に抑えることができる。各照射室13には、不図示の照射機器が配置されている。
以上の構成を有する第1の実施形態の荷電粒子ビーム照射装置1において、シンクロトロン加速器11には、ビーム源で発生した荷電粒子ビームが、入射用機器を介して入射される。荷電粒子ビームは、例えば、陽子や炭素イオンのビームであってよい。シンクロトロン加速器11は、入射した荷電粒子ビームを、複数の偏向電磁石で偏向させて、周回軌道に沿って周回させる。このとき、シンクロトロン加速器11は、四極電磁石で荷電粒子ビームを水平方向および垂直方向にベータトロン振動させながら安定的に周回させる。また、シンクロトロン加速器11は、周回する荷電粒子ビームを、高周波加速空洞で加速する。そして、シンクロトロン加速器11は、必要なエネルギーまで加速された後、出射用機器を介してビーム輸送部12側に出射する。
次いで、ビーム輸送部12は、シンクロトロン加速器11から出射された荷電粒子ビームを照射室13に輸送する。このとき、共通ビーム輸送部121は、第1偏向電磁石B1によって荷電粒子ビームを環状の輸送経路に沿って下流側に輸送する。分岐ビーム輸送部122は、第2偏向電磁石B2によって荷電粒子ビームを共通ビーム輸送部121から照射室13側に分岐させる。
より具体的には、制御装置10は、各第1偏向電磁石B1に励磁電流を供給するように電源14を制御する。電源14から励磁電流が供給されることで、各第1偏向電磁石B1は励磁されて荷電粒子ビームに電磁力を作用させる。第1偏向電磁石B1から電磁力が作用されることで、荷電粒子ビームは、下流側の次の第1偏向電磁石B1の方向に偏向される。また、制御装置10は、荷電粒子ビームを照射すべき照射室13に対応する第2偏向電磁石B2に励磁電流を供給するように電源15を制御する。電源15から励磁電流が供給されることで、第2偏向電磁石B2は励磁されて荷電粒子ビームに電磁力を作用させる。第2偏向電磁石B2から電磁力が作用されることで、荷電粒子ビームは、照射室13の方向に分岐(偏向)される。
次いで、照射室13において、シンクロトロン加速器11から出射されて分岐ビーム輸送部122で分岐された荷電粒子ビームが、照射機器を介して照射対象に照射される。照射対象は、例えば、腫瘍などの患者の患部である。
第1の実施形態によれば、シンクロトロン加速器11を囲むようにビーム輸送部12および照射室13を環状に配置することで、シンクロトロン加速器11と照射室13との間の余分なスペースを削減できる。余分なスペースを削減できるので、ビーム輸送部12を含めた荷電粒子ビーム照射装置1全体の敷地面積を抑えることができる。また、第1の実施形態によれば、分岐点Pを共通ビーム輸送部121上のみに設けることで、分岐ビーム輸送部122の分岐数を抑えることができる。分岐数を抑えることができるので、ビームラインを調整するための電磁石の数を抑えることができ、コストを削減できる。したがって、第1の実施形態によれば、小型化を図ることができるとともに、経済性を向上させることができる。
(変形例)
次に、第1の実施形態の変形例として、ディスパージョンを抑制する荷電粒子ビーム照射装置1の例について説明する。なお、本変形例において、図1に対応する構成部については、同一の符号を用いて重複した説明を省略する。図2は、第1の実施形態の変形例を示す荷電粒子ビーム照射装置1の模式的な平面図である。
図2に示すように、本変形例の共通ビーム輸送部121は、第1の実施形態の構成に加えて、更に、荷電粒子ビームのディスパージョンを抑制する第1四極電磁石Q1を備える。ディスパージョンとは、運動量に依存した粒子軌道または粒子分布の偏りである。
図2に示すように、第1四極電磁石Q1は、一対の第1偏向電磁石B1の間に挟まれるようにして、共通ビーム輸送部121の角部に配置されている。なお、図2の配置に限定されず、例えば、第1四極電磁石Q1は、共通ビーム輸送部121の角部に配置された1つの第1偏向電磁石B1の下流近傍または上流近傍に配置されていてもよい。
第1四極電磁石Q1は、励磁用の電源16に接続されている。電源16は、制御装置10に接続されている。
以上の構成を有する本変形例の荷電粒子ビーム照射装置1において、制御装置10は、第1四極電磁石Q1に励磁電流を供給するように電源16を制御する。電源16から励磁電流が供給されることで、第1四極電磁石Q1は励磁されて荷電粒子ビームに電磁力を作用させる。第1四極電磁石Q1から電磁力が作用されることで、荷電粒子ビームは収束してディスパージョンが抑えられる。
ここで、第1偏向電磁石B1で偏向される際に、荷電粒子ビームは、荷電粒子ビームの運動量分散(すなわち、個々の荷電粒子が持つ速度のばらつき)により、運動量に応じてわずかに異なる偏向軌道をとる。具体的には、運動量が大きい(すなわち、速度が速い)荷電粒子ビームは、運動量が小さい(すなわち、速度が遅い)荷電粒子ビームよりも径方向Drの外側の偏向軌道を通る。運動量に応じて異なる偏向軌道がとられることで、ディスパージョンが生じる。もし、第1偏向電磁石B1によって同じ方向へのビーム偏向が繰り返されると、ディスパージョンが増大し、結果的にビームサイズが増大する。ビームサイズが増大すると、ビーム輸送効率が悪化してしまう。
これに対して、第1四極電磁石Q1は、運動量に応じて偏向軌道が異なる荷電粒子ビームを径方向Drに収束させることで、ディスパージョンを抑制することができる。
したがって、第1の実施形態の変形例によれば、第1四極電磁石Q1でディスパージョンを抑制できるので、ビームサイズを低減してビーム輸送効率を向上できる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態として、分岐ビーム輸送部122の偏向電磁石を共通ビーム輸送部121の偏向電磁石と共通にする実施形態について説明する。なお、第2の実施形態において、第1の実施形態に対応する構成部については、同一の符号を用いて重複した説明を省略する。図3は、第2の実施形態を示す荷電粒子ビーム照射装置1の平面図である。
図3に示すように、第2の実施形態の共通ビーム輸送部121は、第1偏向電磁石B1および第2偏向電磁石B2の代わりに、第3偏向電磁石B3を備える。第3偏向電磁石B3は、共通ビーム輸送部121専用の第1偏向電磁石B1や、分岐ビーム輸送部122専用の第2偏向電磁石B2とは異なり、共通ビーム輸送部121と分岐ビーム輸送部122とで共通(兼用)の偏向電磁石である。
第3偏向電磁石B3は、励磁用の電源17に接続されている。電源17は、制御装置10に接続されている。
以上の構成を有する第2の実施形態の荷電粒子ビーム照射装置1において、制御装置10は、分岐点Pにおいて荷電粒子ビームを照射室13へ分岐させる場合と共通ビーム輸送部121の下流側に輸送する場合とで第3偏向電磁石B3の励磁量(強度)を異ならせる。第3偏向電磁石B3の励磁量を異ならせることで、荷電粒子ビームを照射室13側と共通ビーム輸送部121側とに振り分けることができる。
第2の実施形態によれば、第3偏向電磁石B3によって共通ビーム輸送部121の輸送経路と分岐ビーム輸送部122の輸送経路との双方を確保できるので、偏向電磁石の個数を削減できる。偏向電磁石の個数を削減できるので、経済性を更に向上させることができる。
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態として、分岐点間のベータトロン振動の位相差をπの整数倍にする実施形態について説明する。なお、第3の実施形態において、第1の実施形態に対応する構成部については、同一の符号を用いて重複した説明を省略する。図4は、第3の実施形態を示す共通ビーム輸送部の模式的な側面図である。
図4に示すように、第3の実施形態の共通ビーム輸送部121は、第1の分岐ビーム輸送部122が分岐される第1の分岐点P1と、第1の分岐ビーム輸送部122に隣り合う第2の分岐ビーム輸送部122が分岐される第2の分岐点P2との間に、荷電粒子ビームの位相を調整する4つの第2四極電磁石Q2_F1、D1、F2、D2を備える。なお、第1の分岐ビーム輸送部122は、複数の分岐ビーム輸送部122のうちの任意の分岐ビーム輸送部122である。第2の分岐ビーム輸送部122は、例えば、第1の分岐ビーム輸送部122に下流側において隣り合う分岐ビーム輸送部122である。
ここで、Q2_F1は、第1の分岐点P1から数えて1番目に配置された収束用の第2四極電磁石である。Q2_D1は、第1の分岐点P1から数えて2番目に配置された発散用の第2四極電磁石である。Q2_F2は、第1の分岐点P1から数えて3番目に配置された収束用の第2四極電磁石である。Q2_D2は、第1の分岐点P1から数えて4番目に配置された発散用の第2四極電磁石である。
第1の分岐点P1とQ2_F1との距離をLa、Q2_F1とQ2_D1との距離をLb、Q2_D2と第2の分岐点P2との距離をLcとすると、Q2_D1とQ2_F2との距離はLc+Laであり、Q2_F2とQ2_D2との距離はLbである。
各第2四極電磁石Q2_F1、D1、F2、D2は、励磁用の電源18に接続されている。電源18は、制御装置10に接続されている。
以上の構成を有する第3の実施形態の荷電粒子ビーム照射装置1において、制御装置10は、Q2_F1およびQ2_F2を同じ方向(荷電粒子ビームを収束させる方向)および同じ強度で励磁するように電源18を制御する。また、制御装置10は、Q2_D1およびQ2_D2をQ2_F1およびQ2_F2と逆方向(荷電粒子ビームを発散させる方向)および同じ強度で励磁するように電源18を制御する。これにより、隣り合う分岐点P1、P2同士の間にπセクションが構成され、隣り合う分岐点P1、P2間のベータトロン振動の位相差をπ(180°)にすることができる。
位相差がπとなることで、分岐点P1、P2におけるビーム輸送条件を定めるTwissパラメータを、各分岐点P1、P2において一致させることができる。Twissパラメータが一致することで、ビームライン下流側でのビーム調整を簡略化することができる。
なお、第2四極電磁石の個数や配置は図4に示したものに限定されず、例えば、第2四極電磁石を5個以上設けてもよい。また、第2四極電磁石は、隣り合う分岐点P1、P2間の位相差をπの2倍以上の整数倍にしてもよい。
また、制御装置10は、第2四極電磁石Q2_F1、D1、F2、D2の下流の分岐点において荷電粒子ビームを照射室13へ分岐させる場合と共通ビーム輸送部121の下流側に分岐させる場合とで、第2四極電磁石Q2_F1、D1、F2、D2を異なる強度で励磁してもよい。荷電粒子ビームを照射室13へ分岐させる場合、制御装置10は、第2四極電磁石Q2_F1、D1、F2、D2の励磁量を、照射室13へのビーム輸送条件を満足するように調整してもよい。ここで、照射室13に所望のビーム輸送条件で荷電粒子ビームを輸送するために、通常は、分岐ビーム輸送部122に位相調整用の複数の四極電磁石を設ける。これに対して、第2四極電磁石Q2_F1、D1、F2、D2の励磁量を照射室13へのビーム輸送条件を満足するように調整すれば、分岐ビーム輸送部122に設けるべき四極電磁石の個数を削減できる。四極電磁石の個数を削減することで、経済性を更に向上させることができる。
以上説明したように、第3の実施形態によれば、第2四極電磁石Q2_F1、D1、F2、D2によってπセクションを構成することで、ビームラインの下流側でのビーム調整を簡略化できる。これにより、ビームラインの下流側でのビーム調整に必要な要素数(四極電磁石などの数)を削減できるので、経済性を更に向上させることができる。
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態として、シンクロトロン加速器11と照射室13とを互いに異なる階層に設ける実施形態について説明する。なお、第4の実施形態において、第2の実施形態に対応する構成部については、同一の符号を用いて重複した説明を省略する。図5は、第4の実施形態を示す荷電粒子ビーム照射装置1の模式的な斜視図である。図5では、照射室13の図示を省略している。
第1〜第3の実施形態においては、シンクロトロン加速器11と照射室13とを、建屋の同じ階層に設置することを想定している。すなわち、第1〜第3の実施形態において、シンクロトロン加速器11と照射室13とはほぼ同じ水平基準にある。
これに対して、第4の実施形態では、シンクロトロン加速器11と照射室13とが建屋の異なる階層に設置されている。図5では、照射室13がシンクロトロン加速器11より上階に設置されている。また、シンクロトロン加速器11と照射室13とを異なる階層に設置するため、図5に示すように、共通ビーム輸送部121は螺旋状に配置されている。
なお、図5の荷電粒子ビーム照射装置1は、第2の実施形態と同様に第3偏向電磁石B3を備えるが、第1の実施形態と同様に第1および第2偏向電磁石B1、B2を備えてもよい。また、シンクロトロン加速器11と異なる階層において、照射室13を共通ビーム輸送部121に対して径方向Drの内方に配置してもよい。
第4の実施形態によれば、照射室13をシンクロトロン加速器11と異なる階層に設置することで、スペースを有効に活用して更にコンパクトな構成を実現することができる。
(変形例)
次に、第4の実施形態の変形例として、荷電粒子ビームを第2偏向電磁石B2と異なる階層の照射室13で照射する例について説明する。なお、本変形例において、図5に対応する構成部については、同一の符号を用いて重複した説明を省略する。図6は、第4の実施形態の変形例を示すビーム輸送部12の模式的な側面図である。
図6に示すように、本変形例において、各照射室13は、水平照射用の第1照射機器131と、垂直照射用の第2照射機器132とを備える。また、図6に示すように、荷電粒子ビーム照射装置1は、垂直照射用の第4偏向電磁石B4を備える。
第1照射機器131は、ダクトDを介して第1照射機器131と同じ階層の第2偏向電磁石B2に接続されている。第1照射機器131は、第1〜第3の実施形態および図5の構成における照射機器と同様でよい。
上階uの第2照射機器132は、第4偏向電磁石B4を経由するダクトD1を介して、下階の第2偏向電磁石B2に接続されている。下階dの第2照射機器132は、第4偏向電磁石B4を経由するダクトD2を介して、上階uの第2偏向電磁石B2に接続されている。第4偏向電磁石B4は、ダクトD1、D2で共通である。
第4偏向電磁石B4は、励磁用の電源19に接続されている。電源19は、制御装置10に接続されている。
以上の構成を有する本変形例の荷電粒子ビーム照射装置1において、制御装置10は、使用すべき照射室13および照射機器131、132に応じた偏向電磁石B2、B4を励磁するように電源15、19を制御する。
例えば、上階uの照射室13において第1照射機器131を使用すべき場合、制御装置10は、上階uの第1照射機器131側に荷電粒子ビームを分岐するように、上階uの第2偏向電磁石B2を励磁させる。これにより、上階uの照射室13において、第1照射機器131から荷電粒子ビームを水平照射できる。なお、第1照射機器131の照射方向は、水平方向に対して傾いていてもよい。
また、下階dの照射室13において第2照射機器132を使用すべき場合、制御装置10は、第4偏向電磁石B4側に荷電粒子ビームを分岐するように、上階uの第2偏向電磁石B2を励磁させる。また、制御装置10は、下階dの第2照射機器132側に荷電粒子ビームを偏向するように、第4偏向電磁石B4を励磁させる。これにより、下階dの照射室13において、第2照射機器132から荷電粒子ビームを垂直照射できる。なお、第2照射機器132の照射方向は、垂直方向に対して傾いていてもよい。
一方、上階uの照射室13において第2照射機器132を使用すべき場合、制御装置10は、第4偏向電磁石B4側に荷電粒子ビームを分岐するように、下階dの第2偏向電磁石B2を励磁させる。また、制御装置10は、上階uの第2照射機器132側に荷電粒子ビームを偏向するように、第4偏向電磁石B4を励磁させる。これにより、上階uの照射室13において、第2照射機器132から荷電粒子ビームを垂直照射できる。
第4の実施形態の変形例によれば、簡易かつ小型の構成によって、荷電粒子ビームの照射方向の選択の自由度を向上させることができる。また、第4偏向電磁石B4を上階での垂直照射と下階での垂直照射との双方に用いることができるので、部品点数を抑えることができる。
なお、第1〜第4の実施形態および変形例は、適宜組み合わせることができる。例えば、第1の実施形態の変形例で説明した第1四極電磁石Q1を、第2〜第4の実施形態に適用してもよい。また、第2の実施形態で説明した第3偏向電磁石B3を、第3の実施形態に適用してもよい。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
1 荷電粒子ビーム照射装置
11 シンクロトロン加速器
12 ビーム輸送部
121 共通ビーム輸送部
122 分岐ビーム輸送部
13 照射室

Claims (8)

  1. 荷電粒子ビームを加速する加速器と、
    前記加速器から出射された前記荷電粒子ビームを照射する複数の照射室と、
    複数の偏向電磁石を有し、前記偏向電磁石で前記加速器から前記照射室に前記荷電粒子ビームを輸送するビーム輸送部と、を備え、
    前記ビーム輸送部は、平面視において前記加速器に沿った環状に配置された共通ビーム輸送部と、前記共通ビーム輸送部から所定間隔置きに分岐して前記複数の照射室にそれぞれ至る複数の分岐ビーム輸送部と、を備え、
    前記複数の照射室は、平面視において前記加速器に沿った環状に配置された荷電粒子ビーム照射装置。
  2. 前記分岐ビーム輸送部の偏向電磁石を、前記共通ビーム輸送部の偏向電磁石と共通にした請求項1に記載の荷電粒子ビーム照射装置。
  3. 前記共通ビーム輸送部は、前記荷電粒子ビームのディスパージョンを抑制する第1四極電磁石を備える請求項1または2に記載の荷電粒子ビーム照射装置。
  4. 前記共通ビーム輸送部は、第1の分岐ビーム輸送部が分岐される第1の分岐点と、前記第1の分岐ビーム輸送部に隣り合う第2の分岐ビーム輸送部が分岐される第2の分岐点との間に、前記荷電粒子ビームの位相を調整する少なくとも4つの第2四極電磁石を備え、
    前記第2四極電磁石は、前記第1の分岐点と前記第2の分岐点との間における前記荷電粒子ビームのベータトロン振動の位相差をπの整数倍に調整する請求項1〜3のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム照射装置。
  5. 前記第2四極電磁石は、前記第2四極電磁石の下流の分岐点において前記荷電粒子ビームを前記照射室へ分岐させる場合と前記共通ビーム輸送部の下流側に輸送する場合とで異なる強度で励磁される請求項4に記載の荷電粒子ビーム照射装置。
  6. 前記加速器と前記照射室とは、互いに異なる階層に設けられた請求項1〜5のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム照射装置。
  7. 前記共通ビーム輸送部は、螺旋状に配置された請求項6に記載の荷電粒子ビーム照射装置。
  8. 前記照射室は、治療室である請求項1〜7のいずれか1項に記載の荷電粒子ビーム照射装置。
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