JP6459475B2 - プリプレグ、及び成形品の製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、繊維補強材にエポキシ樹脂組成物を含浸したプリプレグを用いたプレス成形は成形時間が長いため、自動車部材のような量産性を求められる部材の製造に使用するには不向きであった。
ハイサイクルプレス成形では、通常、100〜150℃、1〜15MPaの高温高圧条件下で1〜10分間、加熱加圧することにより成形品を製造する。このような高温高圧条件下で成形を行うことで、硬化速度が速まり硬化時間を短縮でき、しかも金型内においてエポキシ樹脂組成物が適度に流動することにより金型内からガスを排出できる。よって、ハイサイクルプレス成形はFRP(成形品)の生産性が高く、自動車用途に多用される成形方法として好適である。
しかし、プリプレグには、より短時間で硬化が可能であること(速硬化性)が求められている。より短時間で硬化が可能であれば、FRPの量産性をより高めることができる。
[1] 下記成分(A)、成分(B)、及び成分(C)を含有するエポキシ樹脂組成物を繊維補強材に含浸してなる、プリプレグ。
成分(A):N,N,N’,N’−テトラグリシジル−3,3’−ジアミノジフェニルスルホン
成分(B):尿素化合物
成分(C):ジシアンジアミド
[2] ハイサイクルプレス成形用である、[1]に記載のプリプレグ。
[3] 前記エポキシ樹脂組成物が前記成分(A)以外のエポキシ樹脂を含有し、当該エポキシ樹脂組成物に含まれる全てのエポキシ樹脂の含有量の合計100質量%中、前記成分(A)の含有量が81〜95質量%である、[1]または[2]に記載のプリプレグ。
[4] 前記エポキシ樹脂組成物に含まれる全てのエポキシ樹脂の含有量の合計100質量%中、前記成分(A)の含有量が91〜95質量%である、[3]に記載のプリプレグ。
[5] 前記エポキシ樹脂組成物に含まれる全てのエポキシ樹脂の含有量の合計100質量部に対して、前記成分(B)の含有量が2〜10質量部である、[1]〜[4]のいずれか1つに記載のプリプレグ。
[6] 前記エポキシ樹脂組成物に含まれる全てのエポキシ樹脂の含有量の合計100質量部に対して、前記成分(C)の含有量が4〜8質量部である、[1]〜[5]のいずれか1つに記載のプリプレグ。
[7] 前記成分(B)が2,4−ビス(3,3−ジメチルウレイド)トルエンである、[1]〜[6]のいずれか1つに記載のプリプレグ。
[8] 前記成分(B)がフェニルジメチルウレアである、[1]〜[6]のいずれか1つに記載のプリプレグ。
成分(D):ビスフェノールA型エポキシ樹脂
[10] 前記成分(D)のエポキシ当量が180〜270g/eqである、[9]に記載のプリプレグ。
[11] 前記成分(D)のエポキシ当量が180〜194g/eqである、[10]に記載のプリプレグ。
[12] 前記エポキシ樹脂組成物が下記成分(E)をさらに含有する、[1]〜[11]のいずれか1つに記載のプリプレグ。
成分(E):熱可塑性樹脂
[13] 前記成分(E)が質量平均分子量10,000〜60,000のポリエーテルスルホン樹脂であり、前記エポキシ樹脂組成物に含まれる全てのエポキシ樹脂の含有量の合計100質量部に対して、当該成分(E)の含有量が4〜10質量部である、[12]に記載のプリプレグ。
[14] 前記成分(E)が質量平均分子量50,000〜80,000のフェノキシ樹脂であり、前記エポキシ樹脂組成物に含まれる全てのエポキシ樹脂の含有量の合計100質量部に対して、当該成分(E)の含有量が5〜25質量部である、[12]に記載のプリプレグ。
[15] [1]〜[14]のいずれか1つに記載のプリプレグを用いたプリフォームを金型内に配置し、該プリフォームを130〜150℃、1〜15MPaの条件下で1〜10分間加熱加圧する、成形品の製造方法。
本発明の成形品の製造方法によれば、硬化時間を短縮できるので、成形品を量産できる。
なお、本発明において、「エポキシ樹脂」という用語は熱硬化性樹脂の一つのカテゴリーの名称、及び分子内に複数の1,2−エポキシ基を有する化合物という化学物質のカテゴリーの名称として用いられるが、本発明においては後者の意味で用いられる(ただし、エポキシ樹脂の質量平均分子量は50,000未満であるものとする)。また、「エポキシ樹脂組成物」という用語は、エポキシ樹脂と硬化剤(硬化促進剤を含む)と、場合により他の添加剤とを含む組成物を意味する。
ここで、質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。例えば、テトラヒドロフランや水等の溶媒を溶離液とし、ポリスチレン換算分子量として求めることができる。
本発明のプリプレグに用いられるエポキシ樹脂組成物は、成分(A):N,N,N’,N’−テトラグリシジル−3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、成分(B):尿素化合物、及び成分(C):ジシアンジアミドを含有する。また、エポキシ樹脂組成物は、成分(A)以外のエポキシ樹脂、熱可塑性樹脂、任意成分などを含有してもよい。
以下、各成分について説明する。
成分(A)は、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−3,3’−ジアミノジフェニルスルホンである。成分(A)を用いることで、エポキシ樹脂組成物の硬化時間を飛躍的に短縮することができる。よって、成分(A)を含有するエポキシ樹脂組成物を繊維補強材に含浸させることで、速硬化性を有するプリプレグが得られる。
成分(A)としては、市販品を用いることができる。成分(A)の市販品としては、例えばTG3DAS(小西化学工業株式会社製)などが挙げられる。
エポキシ樹脂組成物が、成分(A)以外のエポキシ樹脂を含有する場合、成分(A)の含有量は、エポキシ樹脂組成物に含まれる全てのエポキシ樹脂の含有量の合計(以下、「エポキシ樹脂総量」という。)100質量%中、81〜95質量%であることが好ましく、より好ましくは85〜95質量%であり、さらに好ましくは91〜95質量%である。成分(A)の含有量が上記範囲内であれば、エポキシ樹脂組成物の硬化時間をより短縮でき、より速硬化性に優れたプリプレグが得られる。
成分(B)は、尿素化合物である。成分(B)は、エポキシ樹脂の硬化剤または硬化促進剤としての役割を果たす。
成分(B)としては、例えば3−フェニル−1,1−ジメチル尿素、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素(DCMU)、3−(3−クロロ−4−メチルフェニル)−1,1−ジメチル尿素、2,4−ビス(3,3−ジメチルウレイド)トルエン(TBDMU)、メチレンジフェニルビス(ジメチルウレイド)、フェニルジメチルウレア(PDMU)、4,4’−メチレンビス(ジフェニルジメチルウレア)(MBDMU)などが挙げられる。これらの中でもエポキシ樹脂組成物の硬化時間をより短縮できる点で、2,4−ビス(3,3−ジメチルウレイド)トルエン、フェニルジメチルウレア、4,4’−メチレンビス(ジフェニルジメチルウレア)が好ましく、2,4−ビス(3,3−ジメチルウレイド)トルエンが特に好ましい。
成分(C)は、ジシアンジアミドである。成分(C)は、エポキシ樹脂の硬化剤または硬化促進剤としての役割を果たす。
成分(C)としては、市販品を用いることができる。成分(C)の市販品としては、例えばDICY7、DICY15(以上、三菱化学株式会社製)、DICY−F、DICY−M(以上、ピイ・ティ・アイ・ジャパン株式会社製)などが挙げられる。
エポキシ樹脂組成物は、成分(A)以外のエポキシ樹脂(以下、「他のエポキシ樹脂」という。)を含有してもよい。成分(A)と他のエポキシ樹脂とを併用することで、エポキシ樹脂組成物の粘度を適宜に調整できるので、プリプレグのタック、ドレープ性を取扱い性に適したレベルに容易に合わすことができる。また、FRPの耐熱性や靭性等の機械特性を改良することもできる。詳しくは後述するが、他のエポキシ樹脂の中でも特にビスフェノールA型エポキシ樹脂がエポキシ樹脂組成物に含まれていると、速硬化性を維持しつつ、エポキシ樹脂組成物の粘度、タック、ドレープ性を適宣に調整することが容易であるので好ましい。
他のエポキシ樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ポリエチレングリコール型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、及びこれらの位置異性体やアルキル基やハロゲンでの置換体などが挙げられる。
レゾルシノール型エポキシ樹脂の市販品としては、例えばデナコールEX−201(ナガセケムテックス株式会社製)などが挙げられる。
フェノールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、例えばjER152、jER154(以上、三菱化学株式会社製)、エピクロン740(DIC株式会社製)、EPN179、EPN180(以上、ハンツマン・アドバンスト・マテリアル社製)などが挙げられる。
トリスフェノールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、例えばTactix742(ハンツマン・アドバンスト・マテリアル社製)、EPPN501H、EPPN501HY、EPPN502H、EPPN503H(以上、日本化薬株式会社製)、jER1032(三菱化学株式会社製)などが挙げられる。
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の市販品としては、例えばXD−100(日本化薬株式会社製)、HP7200(DIC株式会社製)などが挙げられる。
アントラセン型エポキシ樹脂の市販品としては、例えばYL7172YX−8800(三菱化学株式会社製)などが挙げられる。
グリシジルアミン型エポキシ樹脂の具体例としては、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン類、アミノフェノールのグリシジル化合物、アミノクレゾールのグリシジル化合物、グリシジルアニリン類、キシレンジアミンのグリシジル化合物などが挙げられる。
グリシジルアニリン類の市販品としては、例えばGAN、GOT(日本化薬株式会社製)、Bakelite EPR493(Bakelite AG社製)などが挙げられる。
キシレンジアミンのグリシジル化合物としては、例えばTETRAD−X(三菱瓦斯化学株式会社製)などが挙げられる。
グリシジルエステル型エポキシ樹脂の具体例としては、フタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステルや、これらの種異性体などが挙げられる。
ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステルの市販品としては、例えばエポミックR540(三井化学株式会社製)、AK−601(日本化薬株式会社製)などが挙げられる。
ダイマー酸ジグリシジルエステルの市販品としては、例えばjER871(三菱化学株式会社製)、エポトートYD−171(新日鐵住金化学株式会社製)などが挙げられる。
脂環式エポキシ樹脂の具体例としては、1,2−エポキシシクロヘキサン環を部分構造として有する化合物などが挙げられる。
1,2−エポキシシクロヘキサン環を部分構造として有する化合物の市販品としては、例えばセロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド3000(以上、株式会社ダイセル製)、CY179(ハンツマン・アドバンスド・マテリアル社製)などが挙げられる。
複素環構造を有するエポキシ樹脂の具体例としては、オキサゾリドン環を部分構造として有する化合物、キサンテン骨格を部分構造として有する化合物などが挙げられる。
オキサゾリドン環を部分構造として有する化合物の市販品としては、例えばAER4152、AER4151、LSA4311、LSA4313、LSA7001(以上、旭化成イーマテリアルズ株式会社製)などが挙げられる。
キサンテン骨格を部分構造として有する化合物の市販品としては、例えばEXA−7335(DIC株式会社製)などが挙げられる。
なお、エポキシ樹脂の25℃における粘度は、例えば、レオメトリック社製の「AR−G2」又は同等の性能を有する装置を用いて、周波数1Hz、パラレルプレート(25mmφ、ギャップ0.5mm)で測定することができる。
成分(D)のエポキシ当量は、プリプレグの速硬化性を更に維持できる点で、180〜270g/eqであることが好ましく、より好ましくは180〜194g/eqである。
成分(D)のエポキシ当量は、JIS K−7236に準拠した測定により求められる。
エポキシ樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(以下、「成分(E)」という。)を含有してもよい。エポキシ樹脂組成物が成分(E)を含有することで、プリプレグを用いたプリフォームをプレス成形する際に、エポキシ樹脂組成物が金型内で過剰に流動し、プリプレグが蛇行(以下、「繊維蛇行」ともいう。)するのを抑制できる。上述したように、エポキシ樹脂組成物が金型内で適度に流動することは金型内からガスを排出できる点では好ましいが、金型内でのエポキシ樹脂組成物の過剰な流動によりプリプレグが蛇行すると、得られる成形品の機械特性が低下したり、外観不良を招いたりするおそれがある。
ポリエーテルスルホン樹脂の質量平均分子量は10,000〜60,000であることが好ましく、より好ましくは20,000〜50,000である。ポリエーテルスルホン樹脂の質量平均分子量が10,000以上であれば、エポキシ樹脂組成物の粘度が低くなりすぎることを防ぐことができ、適正な配合量でエポキシ樹脂組成物の粘度を適正な粘度域に容易に調整できる。一方、ポリエーテルスルホン樹脂の質量平均分子量が60,000以下であれば、エポキシ樹脂への溶解が可能であり、極少量の配合量でもエポキシ樹脂組成物の粘度が高くなり過ぎることを防ぐことができ、エポキシ樹脂組成物の粘度を適正な粘度域に容易に調整できる。
フェノキシ樹脂の質量平均分子量は50,000〜80,000であることが好ましい。フェノキシ樹脂の質量平均分子量が50,000以上であれば、エポキシ樹脂組成物の粘度が低くなりすぎることを防ぐことができ、適正な配合量でエポキシ樹脂組成物の粘度を適正な粘度域に容易に調整できる。一方、フェノキシ樹脂の質量平均分子量が80,000以下であれば、エポキシ樹脂への溶解が可能であり、極少量の配合量でもエポキシ樹脂組成物の粘度が高くなり過ぎることを防ぐことができ、エポキシ樹脂組成物の粘度を適正な粘度域に容易に調整できる。
エポキシ樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、任意成分を含んでいてもよい。
任意成分としては、ゴム粒子、シリカ粉末、二酸化ケイ素、マイクロバルーン、三酸化アンチモン、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等の無機粒子、リン化合物、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の難燃剤、カーボンブラック、活性炭等の炭素粒子、消泡剤、湿潤剤、内部離型剤などの添加剤が挙げられる。これら添加剤は、目的に応じてエポキシ樹脂組成物に配合される。
エポキシ樹脂組成物は、公知の方法に従って製造できる。例えば、上述した成分(A)、成分(B)、及び成分(C)と、必要に応じて他のエポキシ樹脂、熱可塑性樹脂、任意成分とを適量ずつ添加して混合することにより、エポキシ樹脂組成物を製造する。
各成分を混合する際の混合温度は、50〜65℃であることが好ましく、より好ましくは55〜60℃である。混合温度が50℃以上であれば、各成分を容易に混合できる。一方、混合温度が65℃以下であれば、エポキシ樹脂組成物が混合中に硬化することを抑制できる。
また、熱可塑性樹脂は、液状の成分(A)や他のエポキシ樹脂に予め溶解させた後に、残りの成分と混合してもよい。
(粘度)
エポキシ樹脂組成物の100〜150℃における最低粘度は、2.00〜20.00Pa・sであることが好ましく、より好ましくは2.00〜10.00Pa・sであり、さらに好ましくは3.00〜8.00Pa・sである。
ここで、100〜150℃における最低粘度とは、エポキシ樹脂組成物を加熱した場合に100℃から150℃までの温度範囲内における粘度(昇温粘度)の最低値を意味する。
昇温粘度は、例えば、レオメトリック社製の「AR−G2」又は同等の性能を有する装置を用いて、周波数1Hz、パラレルプレート(25mmφ、ギャップ0.5mm)で測定することができる。
エポキシ樹脂組成物の硬化物(成形品)のTgは、硬化温度の−30℃以上であることが好ましい。エポキシ樹脂組成物の硬化物のTgが硬化温度の−30℃以上であれば、成形型(金型)からの脱型が容易でかつ脱型後の変形が起こり難い。
本発明のプリプレグは、上述したエポキシ樹脂組成物を繊維補強材に含浸してなるものである。
繊維補強材としては、FRPの補強材として通常用いられる繊維を用いることができ、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、鉱物繊維(例えばバサルト繊維等)などが挙げられる。これらの中でも、軽量かつ高強度で高弾性率を有し、耐熱性、耐薬品性にも優れる点から、炭素繊維が好ましい。
炭素繊維としては、ピッチ系、ポリアクリロニトリル(PAN系)、レーヨン系等の種類が挙げられ、いずれの炭素繊維を用いてもよいが、炭素繊維の生産性の面からPAN系炭素繊維の使用がより好ましい。繊維補強材の形態としては、ミルドファイバー状、チョップドファイバー状、連続繊維、各種織物等の形態が挙げられる。
本発明のプリプレグは、繊維補強材にエポキシ樹脂組成物を含浸させることで得られる。プリプレグの製造方法としては、例えば、離型紙上に薄く塗布したエポキシ樹脂組成物と各種形態の繊維強化材とを接触させて含浸させるプリプレグ法が挙げられる。
以上説明した本発明のプリプレグは、上述した特定のエポキシ樹脂組成物が繊維補強材に含浸してなる。該エポキシ樹脂組成物は短時間で硬化が可能であるため、本発明のプリプレグは速硬化性を有する。よって、本発明のプリプレグは、自動車部材のような量産性が求められる部材の材料に適しており、特に、ハイサイクルプレス成形に用いれば、高品質なFRPからなる成形品を高い生産性で製造できる。このように、本発明のプリプレグは、ハイサイクルプレス成形用として好適である。
本発明の成形品の製造方法は、本発明のプリプレグを用いたプリフォーム(成形材料)を金型に配置し、高温高圧の条件下で加熱加圧し、プリフォームを硬化させて成形することにより成形品を得る方法である。
本発明の成形品の製造方法に用いる金型としては、プリフォームを高温高圧下で硬化させることのできる金型であればよく、金型を閉じた時に該金型の内部を気密に保つことのできる構造を有する金型を用いることが好ましい。
ここで、「気密」とは、金型を満たすのに十分な量のプリフォームを金型内に入れ、加圧した際にもプリフォームを構成するエポキシ樹脂組成物が金型から実質的に漏れ出さないことをいう。
この例の金型1は、上型(雌型)2と下型(雄型)3とを有する。上型2には雌型シアエッジ部4が設けられており、下型3には雄型シアエッジ部5が設けられている。そして、シアエッジ構造(雌型シアエッジ部4及び雄型シアエッジ部5)により、上型2と下型3を閉じた際に金型1の内部が気密に保たれる。
なお、脱型する機構は、エジェクターピン、エアー弁以外の従来公知のいかなる機構であっても構わない。
以下、本発明の成形品の製造方法の実施形態の一例として、図1に例示した金型1を用いた方法について説明する。
まず、金型1をエポキシ樹脂組成物の硬化温度以上まで調温した後、下型3上にプリフォーム(成形材料)6を配置する(図1(A))。プリフォーム6は、本発明のプリプレグを積層したものである。プリプレグは、予め必要に応じて切断しておいてもよい。
ついで、上型2及び下型3を閉じ、加圧して成形する(図1(B))。
エポキシ樹脂組成物は金型1の外へはほとんど流出することはなく、プリフォーム6は加圧されて金型1の内部の全てを満たすこととなる。
金型1の内部に入れるプリフォーム6の体積が得られる成形品の体積の100%未満であると、プリフォーム6に十分な圧力がかかり難くなる。一方、金型1の内部に入れるプリフォーム6の体積が得られる成形品の体積の120%を超えると、金型1を閉める際に金型1の気密性が得られる以前にプリフォーム6が流出しやすくなる。
また、プリフォーム6の厚みが得られる成形品の厚みの100%未満の場合、及び150%を超える場合には、プリフォーム6の全面を均等に加圧することが難しくなる。ここで、プリフォーム6の厚み及び得られる成形品の厚みとは、それぞれプリフォーム6及び得られる成形品の厚みを平均した厚みである。
また、硬化時間は1〜10分間である。これにより高い生産性で優れた品質の成形品を製造することができる。
以上説明した本発明の成形体の製造方法によれば、硬化時間の短縮により成形品を量産できる。しかも、本発明によれば、成形時に金型に不良が生じることを抑制することができ、また外観不良、性能不良等を抑えた高品質な成形品を高い生産性で得ることができる。
本発明の成形体の製造方法は、特に、自動車部材等の用途で使用される成形時間が1〜10分程度と極めて成形サイクルの短い、成形品(FRP)のハイサイクルプレス成形に好適に用いることができる。
各例で用いたエポキシ樹脂組成物の原料、及び各種測定方法を以下に示す。
なお、実施例5、6は参考例である。
<成分(A)>
TG3DAS:N,N,N’,N’−テトラグリシジル−3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(小西化学工業株式会社製、「TG3DAS」、エポキシ当量:136g/eq)
PDMU:フェニルジメチルウレア(ピイ・ティ・アイ・ジャパン株式会社製、「オミキュア94」)
MBDMU:4,4'−メチレンビス(ジフェニルジメチルウレア)(ピイ・ティ・アイ・ジャパン株式会社製、「オミキュア52」)
TBDMU:2,4−ビス(3,3−ジメチルウレイド)トルエン(ピイ・ティ・アイ・ジャパン株式会社製、「オミキュア24」)
DICY:ジシアンジアミド(三菱化学株式会社製、「jERキュアDICY15」)
jER834:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、「jER834」、エポキシ当量:250g/eq)
jER828:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、「jER828」、エポキシ当量:189g/eq)
E2020P:ポリエーテルスルホン樹脂(BASF社製、「ウルトラゾーンE2020P」、質量平均分子量:32,000)
YP50S:フェノキシ樹脂(東都化成株式会社製、「フェノトートYP50S」、質量平均分子量:50,000〜70,000)
jER807:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、「jER807」、エポキシ当量:168g/eq)
jER604:4−4’テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(三菱化学株式会社製、「jER604」、エポキシ当量:120g/eq)
予備反応エポキシ樹脂A:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、「jER828」、エポキシ当量:189g/eq)100質量部に、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(和歌山精化工業株式会社製、「セイカキュアーS」、活性水素当量:62g/eq)9質量部を配合し、160℃で6時間、予備反応させて得られたエポキシ樹脂。
EXA1514:ビスフェノールS型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、「EPICLON EXA1514」、エポキシ当量:300g/eq)
(100〜150℃における最低粘度、及び30℃における粘度の測定)
エポキシ樹脂組成物の100〜150℃における最低粘度、及び30℃における粘度は、以下の条件にて測定した。なお、最低粘度については、100℃付近で最低の粘度が確認され、それ以降粘度が上昇したため、120℃までの測定とした。
装置:ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製、「AR−G2」
測定モード:パラレルプレート(25mmφ、ギャップ0.5mm)
周波数:1Hz
温度設定:30℃から2℃/分で120℃にまで昇温しながら粘度を測定した。
成形品Tgは、以下のようにして測定した。
湿式カッターを用いて成形品を幅12.6mm、長さ55mmの寸法にてカットし、これを動的粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製、「ARES−RDA」にセットし、昇温速度5℃/ステップ、周波数10ラジアン/秒の測定条件で測定を行い、図3に示すように、温度に対して貯蔵弾性率(G’)の対数値をプロットし、得られたG’曲線のガラス弾性領域の接線(I1)と転移領域の接線(I2)の交点での温度を成形品Tgとした。
エポキシ樹脂組成物の100%キュアー時間(最大トルク値に到達する時間)は、以下のようにして求めた。
まず、日合商事株式会社製の「キュラストメーター IIF−HT」を使用し、ダイ温度140℃でのトルク値(N・m)の変化を測定し、図2に示すような時間−トルク曲線を得た。ついで、該曲線からトルク値が変化しなくなる最大トルク値(Tmax)を求め、測定開始からTmaxに到達するまでに要した時間を求め、これを100%キュアー時間(t100)とした。測定条件を以下に示す。
装置:キュラストメーター(日合商事株式会社製、「キュラストメーター IIF−HT」)
測定モード:P.P.(ピーク測定モード)
振動数:6 CPM
振幅角度:±3°
測定温度:140℃
エポキシ樹脂組成物の100%キュアー時間の測定方法と同様にして、ダイ温度140℃でのトルク値(N・m)の変化を測定した。測定開始からトルク値が0.04N・mに到達するまでに要した時間を求め、これをゲルタイムとした。
エポキシ樹脂組成物の樹脂フロー(金型シアエッジからの樹脂流出量)は、下記式(1)より求めた。なお、式(1)中の「W1」は成形前のプリフォームの質量(g)であり、「W2」は成形後の成形品(バリ除去後)の質量(g)である。
樹脂フロー(質量%)=(W2−W1)/W1×100 ・・・(1)
<エポキシ樹脂組成物の調製>
表1に記載の配合組成に従って各原料を容器に秤量した後、攪拌機(株式会社キーエンス製、「ハイブリッドミキサーHM−500」)を使用して内容物が均一となるまで65℃で混合し、エポキシ樹脂組成物を調製した。
なお、表1中の各成分の数値は、エポキシ樹脂組成物に配合する各成分の質量部数を表す。
得られたエポキシ樹脂組成物について、100〜150℃における最低粘度、30℃における粘度、100%キュアー時間、及びゲルタイムを測定した。結果を表1に示す。
先に調製したエポキシ樹脂組成物を簡易型ロールコーターで離型紙上に樹脂目付133g/m2で均一に塗布して樹脂層を形成した。ついで、前記樹脂層に繊維補強材として3K平織り炭素繊維クロス(三菱レイヨン株式会社製、「TR3110M」)を貼り付けた後、ローラーで100℃、線圧0.1MPaで加熱及び加圧してエポキシ樹脂組成物を炭素繊維に含浸させ、繊維目付が200g/m2、樹脂含有率が40質量%のプリプレグを作製した。
先に作製したプリプレグを縦298mm×298mmに切断し、繊維の配向方向が0°と90°が交互になるように10枚(厚さ22mm、層体積195.4cm3、片面表面積S1(下面の表面積)888.0cm2)積層したプリフォームを用意した。
金型は図1に例示した金型1を用いた。金型1の下型3のプリフォーム6と接触する面(プリフォームの厚み部分と接触する面を除く)の表面積S2は900.0cm2であった。S1/S2は、888.0/900.0=0.987であった。
金型1の上型2及び下型3を予め140℃に加熱し、下型3上に前記プリフォーム6を配置し、すぐに上型2を降ろして金型1を閉め、10MPaの圧力をかけて5分間加熱加圧して硬化させ、硬化後に金型1から取り出して成形品を得た。
得られた成形品のTg(成形品Tg)を測定し、また、樹脂フローを測定した。結果を表1に示す。
配合組成を表1〜表4に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂組成物を調製し、各測定を行った。結果を表1〜表4に示す。
得られたエポキシ樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様にしてプリプレグを作製した。該プリプレグを用いて成形品を製造し、各測定を行った。結果を表1〜表4に示す。
また、各実施例の場合、金型のシアエッジからの樹脂フローが抑えられており、樹脂枯れが生じておらず、外観に優れた成形品を得ることができた。特に、エポキシ樹脂組成物が成分(E)を含有する実施例16〜21は、樹脂フローがより抑えられていた。
2 上型
3 下型
4 雌型シアエッジ部
5 雄型シアエッジ部
6 プリフォーム
Claims (14)
- 下記成分(A)、成分(B)、及び成分(C)を含有するエポキシ樹脂組成物を繊維補強材に含浸してなり、
前記エポキシ樹脂組成物が下記成分(A)以外のエポキシ樹脂を含有し、当該エポキシ樹脂組成物に含まれる全てのエポキシ樹脂の含有量の合計100質量%中、下記成分(A)の含有量が81〜95質量%である、プリプレグ。
成分(A):N,N,N’,N’−テトラグリシジル−3,3’−ジアミノジフェニルスルホン
成分(B):尿素化合物
成分(C):ジシアンジアミド - ハイサイクルプレス成形用である、請求項1に記載のプリプレグ。
- 前記エポキシ樹脂組成物に含まれる全てのエポキシ樹脂の含有量の合計100質量%中、前記成分(A)の含有量が91〜95質量%である、請求項1または2に記載のプリプレグ。
- 前記エポキシ樹脂組成物に含まれる全てのエポキシ樹脂の含有量の合計100質量部に対して、前記成分(B)の含有量が2〜10質量部である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプリプレグ。
- 前記エポキシ樹脂組成物に含まれる全てのエポキシ樹脂の含有量の合計100質量部に対して、前記成分(C)の含有量が4〜8質量部である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプリプレグ。
- 前記成分(B)が2,4−ビス(3,3−ジメチルウレイド)トルエンである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のプリプレグ。
- 前記成分(B)がフェニルジメチルウレアである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のプリプレグ。
- 前記エポキシ樹脂組成物が下記成分(D)をさらに含有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載のプリプレグ。
成分(D):ビスフェノールA型エポキシ樹脂 - 前記成分(D)のエポキシ当量が180〜270g/eqである、請求項8に記載のプリプレグ。
- 前記成分(D)のエポキシ当量が180〜194g/eqである、請求項9に記載のプリプレグ。
- 前記エポキシ樹脂組成物が下記成分(E)をさらに含有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載のプリプレグ。
成分(E):熱可塑性樹脂 - 前記成分(E)が質量平均分子量10,000〜60,000のポリエーテルスルホン樹脂であり、前記エポキシ樹脂組成物に含まれる全てのエポキシ樹脂の含有量の合計100質量部に対して、当該成分(E)の含有量が4〜10質量部である、請求項11に記載のプリプレグ。
- 前記成分(E)が質量平均分子量50,000〜80,000のフェノキシ樹脂であり、前記エポキシ樹脂組成物に含まれる全てのエポキシ樹脂の含有量の合計100質量部に対して、当該成分(E)の含有量が5〜25質量部である、請求項11に記載のプリプレグ。
- 請求項1〜13のいずれか一項に記載のプリプレグを用いたプリフォームを金型内に配置し、該プリフォームを130〜150℃、1〜15MPaの条件下で1〜10分間加熱加圧する、成形品の製造方法。
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