JP6457181B2 - 電子機器の処理方法 - Google Patents
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Description
経済的な面から検討すると、まず、電子機器に搭載されている基板は小型のものが多い。それに加え、近年、電子機器の小型化に対する要請が強い。そのため、電子機器から基板を回収する作業は手作業で行わざるを得ず、手作業で行うにしても、作業には熟練を要する。その結果、電子機器から基板を回収するのに要する費用は自ずと多くなってしまう。電子機器から基板を回収する作業を手作業で行っている技術としては、例えば特許文献1に示す技術が知られている(特に[0027])。
特許文献2には、使用済み家電製品を破砕した上で、磁力、風力、重量の違いなどを利用して、最終的に、使用済み家電製品を素材ごとに分別する技術が記載されている(例えば特許文献2の要約)。
特許文献3には、以下の技術が記載されている。すなわち、金属類廃棄物の金属塊をまずは分別する(特許文献3の[0020])。その上で、この金属塊に対して回転体を接触させ、まずは、回転体と床である衝突ライナーとの間(特許文献3の図4で言うところの回転体の右部および下部)に金属塊を巻き込ませ、打撃力、摩擦力および捻り力を加える(特許文献3の図4、[0048]および[0049])。次に、特許文献3の図4で言うところの回転体の左部において、回転体の下部から抜け出た金属塊を、回転体の回転により上に弾き飛ばし、破砕室内の壁であるライナーに金属塊を衝突させ、破砕や整粒が行われる(特許文献3の図4および[0066])。
また、特許文献5に記載の技術は小型家電製品からプリント配線板などの実装基板を回収する技術であるが、特許文献5には、特許文献2〜3と同様、家電製品を破砕したあとに篩などで最終的に、破砕後の実装基板を回収する技術が記載されている。
その一方、特許文献2においては、電子機器を構成する電子部品(例えば基板)は、その他の電子部品とともに破砕され、粉々の破砕物として混合された状態となっている。
特許文献3においても、金属類廃棄物の金属塊を投入後、まず、回転体の下部に金属塊を巻き込む作業を行う。その結果、金属塊を構成するものは皆、細かく砕かれた破砕物として混合された状態となってしまう。このことは特許文献4〜5についても同様である。
その結果、特許文献2〜5に記載の技術が存在するにしても、結局のところ、特許文献1に記載のように電子部品の分離は手作業により行わざるを得なかった。
まず、経済的な課題を解決するためには、手作業のみに依存することなく、廃棄物となった電子機器から電子部品を回収する必要がある。ただ、従来だと、電子機器を細かく砕き、砕かれた破砕物から電子部品を構成していた素材を分離する手法が常識となっている。
そしてこの手法を実現すべく、投入された電子機器を回転体にて弾き飛ばし、当該電子機器を処理装置内の衝突部に衝突させる一方、回転体のせいで電子機器が細かく破砕されることなく、回転体による電子機器の破砕が抑制される構成を設けるという知見を、本発明者は得た。
本発明の第1の態様は、
廃棄物となった電子機器を処理室内にて処理する電子機器の処理方法であって、
前記処理室内に前記電子機器を投入する投入工程と、
投入された前記電子機器を、前記処理室内に配する回転体の回転によって弾き飛ばして衝突部に衝突させる際の衝撃により、前記電子機器から電子部品を分離させる分離工程と、
を有し、
前記投入工程では、前記回転体の回転方向の上流側の部分に前記電子機器を投入し、
前記衝突部に衝突させて前記電子機器から分離させた前記電子部品が前記回転体と前記処理室の内壁との間に巻き込まれずに落下可能な程度の広さの隙間を設けておく、電子機器の処理方法である。
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の発明において、
前記電子機器から分離される前記電子部品は配線基板である。
本発明の第3の態様は、第2の態様に記載の発明において、
前記回転体の回転速度を15m/s以上30m/s以下とする。
本発明の第4の態様は、
廃棄物となった電子機器を処理室内にて処理する電子機器の処理装置であって、
前記処理室と、
前記電子機器を前記処理室内に投入する投入部と、
前記処理室内に配する回転体であって、前記投入部から投入される前記電子機器を当該回転体と接触させる際に、当該回転体の回転により前記電子機器を弾き飛ばすことが可能な構成であってロータの周面から突出した突出部を有する回転体と、
前記回転体により弾き飛ばされた前記電子機器の衝突先となる部分であって、衝突の際の衝撃により前記電子機器から電子部品を分離させることが可能な構成を有する衝突部と、
を備え、
前記投入部を、前記回転体の回転方向の上流側の部分に前記電子機器を投入可能な位置に配し、
前記衝突部に衝突させて前記電子機器から分離させた前記電子部品が前記回転体と前記処理室の内壁との間に巻き込まれずに落下可能な程度の広さの隙間を設けた、電子機器の処理装置である。
本発明の第5の態様は、第4の態様に記載の発明において、
前記衝突部は、衝突面を有する衝突用部材と、当該衝突用部材と前記処理室とを連結する連結部材とを備え、
前記衝突用部材における衝突面は、前記処理室の内壁から離間して設けられている。
本発明の第6の態様は、第5の態様に記載の発明において、
前記衝突面は前記回転体に向かって凹んだ湾曲形状を有しており、この湾曲形状の前記投入部から離れる側への延長線上には前記回転体が存在する。
本発明の第7の態様は、第5または第6の態様に記載の発明において、
前記衝突部は、前記衝突用部材の前記回転体に対する角度を調節可能な構成を有する。
本発明の第8の態様は、第4ないし第7のいずれかの態様に記載の発明において、
前記衝突部は、前記回転体の回転方向に並んで複数設けられている。
本発明の第9の態様は、第8の態様に記載の発明において、
前記回転体の回転中心から見て、複数設けられた前記衝突部のうち各衝突部の端部同士が重なるように前記衝突部は配されている。
本発明の第10の態様は、第8または第9の態様に記載の発明において、
複数設けられた前記衝突部のうち各衝突部と前記回転体との間の隙間が、回転方向に進むに従って狭くなるような位置に前記衝突部は配されている。
本発明の第11の態様は、第4ないし第10のいずれかの態様に記載の発明において、
前記突出部は、さらに、前記回転体の回転方向に向かって突出した構成を有している。
本発明の第12の態様は、第4ないし第11のいずれかの態様に記載の発明において、
前記衝突部に衝突させて前記電子機器から分離させた前記電子部品が、前記回転体と前記処理室との間に巻き込まれずに落下可能な程度の広さの隙間が、前記回転体における上半分の部分の中でも前記回転体の回転方向の終点側の部分と前記処理室との間に設けられている。
本発明の第13の態様は、第4ないし第12のいずれかの態様に記載の発明において、
前記回転体の下方には処理された電子機器および分離された電子部品を溜める貯留部または開口状態の排出口が設けられている。
1.電子機器の処理装置
1−A)処理室
1−B)投入部
1−C)回転体
1−C−a)ロータ
1−C−b)突出部
1−D)衝突部
1−D−a)連結部材
1−D−b)衝突用部材
1−E)貯留部または排出部
2.電子機器の処理方法
2−A)投入工程
2−B)分離工程
3.実施の形態による効果
なお、以下に記載が無い構成については、公知の構成を一部採用しても構わない。また、本実施形態においては、天地方向の天の方向を上方、地の方向を下方として説明する。
まず、本実施形態における電子機器の処理装置は、電子機器から電子部品を分離させるためのものである。当該処理装置の基本的構成について、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態における電子機器の処理装置1の概要を示す図である。
本実施形態における電子機器の処理装置1は、以下の構成を備えている。
・廃棄物となった電子機器を処理する処理室2
・処理室2内に電子機器を投入する投入部3
・処理室2内に配され、投入部3から投入される電子機器を弾き飛ばす回転体4
・回転体4により弾き飛ばされた電子機器の衝突先となる衝突部5
以下、各構成について詳述する。なお、本実施形態においては、電子部品が配線基板の場合を例に挙げる。
本実施形態における処理室2は、廃棄物となった電子機器を処理する部分のことを指す。この処理室2内に、回転体4および衝突部5が設けられる。具体的な構造としては、公知となっている装置において、廃棄物となった電子機器の処理に用いられている処理室2の構成を採用しても構わない。
本実施形態における投入部3は、廃棄物となった電子機器を処理室2内に供給するための部分であり、供給部と呼んでも差し支えない。具体的な構造としては、公知となっている装置において、廃棄物となった電子機器を処理室2内に供給するために設けられた構成を採用しても構わない。本実施形態においては、図1に示すように、電子機器が処理室2内に滑り落ちるような傾斜を設けた投入口を投入部3とした例を挙げる。もちろん、コンベア等により電子機器を処理室2に投入したり、落下させることにより電子機器を処理室2に投入したりする構成を設けても構わない。
なお、本明細書における「回転体4の回転方向の「始点側(すなわち上流側)」」とは、回転体4において最も左方にある部分から最も上方にある部分に至るまでの部分のことを指すが、好ましくは、回転体4において最も左方にある部分の近傍のことを指す。
本実施形態における回転体4は、処理室2内に配され、投入部3から投入される電子機器を弾き飛ばすためのものである。当該回転体4は、主に以下の2つの構成を備えている。
・回転体4の基となるロータ41
・ロータ41の周面から突出した突出部42
本実施形態におけるロータ41は、回転体4の基となるローラ状のものである。具体的な構造としては、公知となっている装置において、廃棄物となった電子機器の処理に用いられているロータ41の構成を採用しても構わない。本実施形態においては、回転軸を同軸とした複数の円盤を重ね合わせたものをロータ41とする。このロータ41の中心軸となるシャフトが処理室2に固定して設置されている。
本実施形態における突出部42は、投入部3から投入される電子機器が当該回転体4と接触する際に、当該回転体4の回転により電子機器を弾き飛ばすことが可能な構成であってロータ41の周面から突出した部分のことを指す。具体的な構造としては、公知となっている装置において、廃棄物となった電子機器を処理するロータ41に取り付けられたもの(例えば特許文献3のスイングハンマー)を採用しても構わない。
なお、隙間の場所は、上記の場所以外であっても構わず、例えば、回転体4の中心軸方向に見たときの、回転体4と処理室2との間に隙間を設けても構わない。
本実施形態における衝突部5は、回転体4により弾き飛ばされた電子機器の衝突先となる部分であって、衝突の際の衝撃により電子機器から配線基板を分離することが可能な構成を有するものを指す。
この手法は、従来のように、配線基板も他の電子部品も全て破砕した上で、その後で、混合された破砕物から、かつて配線基板を構成していた素材を分離する手法とは全く異なる。
なお、この「比較的マイルドな衝撃」は、先ほど述べたように配線基板を破砕しないようにするためのものであるのに加え、配線基板からCPUなどの素子を脱落させないようにするためのものでもある。配線基板の中でも、CPUなどの素子には貴金属が多量に含まれている。そのため、仮に配線基板を破砕せずに回収できたとしても、衝撃が強すぎると、配線基板上から素子が脱落してしまう。そうなると、回収対象である配線基板の価値が大きく下がってしまう。そのような事態を抑制するためにも、電子機器に対して比較的マイルドな衝撃を与える必要がある。それを実現したのが、本実施形態で述べる構成であり、本実施形態で述べる電子機器の処理装置およびその方法である。
以下、
・処理室2の内壁に対して設けられる連結部材51
・連結部材51に取り付けられる衝突用部材52
について説明する。
本実施形態における連結部材51は、処理室2と衝突用部材52とを連結する機能を有する。この機能を有するものならば、公知の部材を用いても構わない。
また、処理室2に対して衝突用部材52を着脱可能な構成を採用することが可能となる。つまり、本実施形態の処理装置1を長期間使用したとしても、衝突用部材52さえ交換すれば、損傷や摩耗が少ない状態を維持できる。
本実施形態における衝突用部材52は、回転体4により弾き飛ばされた電子機器の衝突先となる衝突面を有する部分である。そして、当該衝突用部材52は、衝突の際の衝撃により電子機器から配線基板を分離する機能を有する。この機能を有するものならば、公知の部材を用いても構わない。
回転体4の下方には処理された電子機器および分離された電子部品を溜める貯留部または開口状態の排出部が設けられているのが好ましい(共に不図示)。こうすることにより、回転体4と処理室2との間に電子機器を巻き込むことを抑制できる。
むにしても、ほぼそのままの形で配線基板を回収することを特徴としている。しかもこの回収は、手作業のみに依存することなく行うことが、本実施形態ならば可能となる。貯留部または排出部が設けられるということは、回転体4の下部に所定のスペースが設けられていることを意味する。それはひいては、回転体4と処理室2との間に電子機器を巻き込むような構成とは本実施形態が異なることを意味する。
次に、本実施形態における電子機器の処理方法について説明する。なお、以下の工程の内容は、<1.電子機器の処理装置1>の項にて説明した内容と重複する部分もある。そのため、以下に記載が無い内容については、<1.電子機器の処理装置1>の項にて説明した通りである。
投入工程においては、処理室2内に電子機器を投入する。なお、本実施形態における電子機器の処理方法は、バッチ式とは異なり、連続して行うことが可能である。そのため、電子機器を連続的に投入しても構わない。
分離工程においては、投入された電子機器を、処理室2内に配する回転体4の回転によって弾き飛ばして衝突部5に衝突させる際の衝撃により、電子機器から配線基板を分離する。
従来だと、配線基板は、他の電子部品とともに破砕される。しかもこの破砕は、回転体4と処理室2との間に電子機器を巻き込むことに行われるのが常である。そして、混合物となった破砕物から、配線基板を構成していたものを分離している。
しかしながら、本実施形態においては、配線基板が多少歪むにしても、ほぼそのままの形で配線基板を回収することが可能である。従来だと、配線基板をそのままの形で回収するためには、手作業で回収するよりほかなかった。その従来の常識を覆したのが、本実施形態である。そしてそれを如実に表した構成が、回転体4と処理室2との間には十分な広さの隙間を設けるという構成である。
本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
20台のデジタルカメラを手作業で解体したところ、手作業で行ったため、配線基板の回収率は90%という高い値であった。また、配線基板上から脱落した素子の比率についても、ほぼ0%だった。しかしながら、処理時間は1500秒も要した。
この結果と、以下の実施例および比較例の結果と対比した。
一方、比較例としては、従来から「破砕機」として存在する装置を用いて試験を行った。比較例1においては1軸ハンマー方式、比較例2においては1軸チェーン方式、比較例3においては1軸せん断方式の装置を用いた。
なお、実施例1も比較例1〜3も共に回転体を回転させることにより対象に衝撃を与える方式を採用している。
まず、本発明者の経験上、電子機器が処理後に電子部品へと解体されたとしても、電子機器における配線基板が、目開き20mmの篩でいうと+20mmの大きさであれば、当該配線基板を回収可能である。つまり、処理後において+20mmの部品の比率が多ければ多いほど、配線基板の回収率を向上させることができる。
このことを踏まえ、実施例および比較例にてデジタルカメラを処理した後、処理後のデジタルカメラを、目開き20mmの篩にかけた。そして、各々の欠片に含まれる基板の重量を測定した。そして、この重量に対する、篩上に残った(すなわち+20mmの)部品(すなわち手作業で選別可能な配線基板)の重量比率を求めた。
更に、手作業で選別した配線基板上から脱落している素子の個数を調査することで、配線基板上から脱落した素子の比率を求めた。
比較例2においては、「配線基板の回収率」は80%であった。しかしながら、「配線基板上から脱落した素子の比率」は80%であり極めて高い値となっていた。更に、デジタルカメラ20個の処理に要した時間は、比較例の中では最も長い20秒だった。
比較例3においては、「配線基板の回収率」は0%であり、「配線基板上から脱落した素子の比率」は100%であり、有用な配線基板を回収することができなかった。
2………処理室
3………投入部
31……チェーンカーテン
4………回転体
41……ロータ
42……突出部
5………衝突部
51……連結部材
511…第1連結部材
512…第2連結部材
52……衝突用部材
521…第1衝突用部材
522…第2衝突用部材
Claims (2)
- 廃棄物となった電子機器を処理室内にて処理する電子機器の処理方法であって、
前記処理室内に前記電子機器を投入する投入工程と、
投入された前記電子機器を、前記処理室内に配する回転体の回転によって該回転体の円周の接線方向へ弾き飛ばして衝突部に衝突させる際の衝撃により、前記電子機器における電子部品の連結箇所を破壊し前記電子機器から該電子部品を分離させる分離工程と、
を有し、
前記投入工程では、前記回転体の上半分における回転方向の上流側の部分に前記電子機器を投入し、
前記衝突部に衝突させて前記電子機器から分離させた前記電子部品が前記回転体と前記処理室の内壁との間に巻き込まれずに前記回転体の下方に落下する広さの隙間を設けておき、
前記分離工程後に得られる前記電子部品である配線基板であって素子が搭載されたままの配線基板を回転型衝撃破砕機に投入する工程は含まない、電子機器の処理方法。 - 前記回転体の回転速度を15m/s以上30m/s以下とする、請求項1に記載の電子機器の処理方法。
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