JP6456684B2 - プラスチックカード用樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、耐熱性および形状安定性に優れるとともに押出加工された後の接着性、反り性、熱安定性にも優れたプラスチックカード用樹脂組成物、およびそれを成形してなる診察カード、キャッシュカード、クレジットカード等のプラスチックカードに関するものである。
従来、プラスチックカードには塩化ビニル樹脂が多く用いられてきた。また、必要な文字、記号、数字等のデータをプラスチックカードから書類等に転写するためにプラスチックカードに当該データをエンボス加工により刻印することが広く行われている。しかしながら、塩化ビニル樹脂製プラスチックカードの場合には、日常生活において比較的高温に曝される過酷な条件、例えば炎天下、直射日光があたる自動車の車内等に保管または放置すると、プラスチックカードにエンボス加工により刻印された文字、記号、数値等の凸部の高さが低下し書類等へのデータ転写が困難になったり、転写しても判読が困難であるというような問題点があった。
上記の問題点を解決するために、耐熱性が塩化ビニル樹脂よりも高いプラスチック材料を使用することが検討された。塩化ビニル樹脂の熱変形温度は80℃程度と低く、日常生活にて起こりうる高温条件下での保管、放置を想定して熱変形温度が90℃以上のプラスチック材料に代替することが提案され、例えば熱変形温度が130〜140℃であるポリカーボネート樹脂が候補とされ、検討が行われてきた。しかしながら、ポリカーボネート樹脂をプラスチックカードに使用した場合には、エンボス加工により刻印されたデータの凸部の高さが高温条件下で低下するという問題点は解決されるものの、プラスチックカード自身がエンボス加工により反ってしまうという問題が新たに生じた。
出願人は、上記のポリカーボネート樹脂製プラスチックカードの反りという問題を解決するため、ポリカーボネート樹脂にポリブチレンテレフタレートを混合した樹脂組成物を用いることを発明し、特許出願(特許文献1参照)を行った。
しかしながら、プラスチックカードにおいては、少なくとも片方の表面層に印刷したり、印刷されない場合においても当該表面層を保護する目的のためにポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂等の透明性熱可塑性樹脂のフィルム、シート等(以下、オーバーシートという)を熱プレス等の手段で貼合することが行われている。また、カードを構成する基材が2層以上で構成されている場合も有り、かかる場合に熱プレスによる温度条件によってはプラスチックカードの基材同士の接着性に劣るという新たな問題が発生した。
具体的には、熱プレスの温度条件が160℃以上であるとプラスチックカード基材とオーバーシートの接着性は良好なれど、印刷に使用されたインクが変色したり滲んだりするので、プラスチックカードとしての価値が著しく損なわれるという問題があった。これを回避するため、温度を下げるとインクの変色や滲みの問題は解決されるものの、プラスチックカード基材同士の接着性に劣り、使用中に剥がれてしまうという問題があった。
さらに、プラスチックカードにおいては、印字を施すにあたりより透明度の高い黄変度がコントロールされたプラスチックカードが求められているところ、上記従来の樹脂組成物は、加熱成形時等に黄変するおそれがあり、上記課題の解決とともにこの点についても改善の余地が残されている。
特開平11−060921号公報
本発明は、上記のインクの変色や滲みがなく、プラスチックカード基材同士の接着性、そり性、および熱安定性等に優れたプラスチックカード用樹脂組成物、およびそれを成形してなるプラスチックカードを提供する。
本発明者らは、かかる課題を解決するために鋭意研究した結果、ポリカーボネート樹脂にカルボン酸変性ポリブチレンテレフタレート、場合によりポリブチレンテレフタレートを配合した樹脂組成物に、特定の2種類の亜リン酸エステル系化合物を含有させることにより、エンボス加工後の文字高さの減少や反りを抑制しつつ、インクの変色や滲みが起こらず、かつプラスチックカード基材同士の接着性が大幅に改良され、かつ優れたそり性と熱安定性を備えたプラスチックカードが得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、ポリカーボネート樹脂70〜25重量%、カルボン酸変性ポリブチレンテレフタレート10〜75重量%およびポリブチレンテレフタレート0〜65重量%からなる樹脂組成物(A)100重量部に対して、下記一般式(1)で表される亜リン酸エステル系化合物(B)0.01〜2.0重量部、および下記一般式(2)または下記一般式(3)で表される亜リン酸エステル系化合物(C)0.01〜2.0重量部を含むことを特徴とする、プラスチックカード用樹脂組成物、ならびにそれを成形してなるプラスチックカードに関する。
一般式(1)
Figure 0006456684
(式中、R1、R2、R4およびR5はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基またはフェニル基を表し、R3は水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。Xは単結合、硫黄原子もしくは−CHR6基(R6は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数5〜8のシクロアルキル基を示す)を表す。Aは炭素数1〜8のアルキレン基または*−COR7基(R7は単結合または炭素数1〜8のアルキレン基を、*は酸素側の結合手であることを示す。)を表す。Y、Zは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基または炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を表し、もう一方が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
一般式(2)
Figure 0006456684
(一般式2において、R8〜R11は炭素数1〜20のアルキル基、またはアルキル基で置換されてもよいアリール基を示す。)
一般式(3)
Figure 0006456684
(一般式3において、R12、R13は炭素数1〜20のアルキル基、またはアルキル基で置換されてもよいアリール基を、a、bは整数0〜3を示す。)
本発明によれば、インクの変色、滲み、黄変が起こらず、かつカード基材を積層化した際の基材同士の接着性が飛躍的に改良されるだけでなく、日常生活において比較的高温の条件下に放置されたとしてもエンボス加工に伴うプラスチックカード自体の反りも抑制される。
以下に、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
なお、発明者らは当業者が本発明を充分に理解するために以下の説明を提供するのであって、これらによって請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
本発明にて使用されるポリカーボネート樹脂とは、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、またはジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体であり、代表的なものとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
上記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホンのようなジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。
これらは単独または2種類以上混合して使用されるが、これらの他に、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4′−ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
さらに、上記のジヒドロキシアリール化合物と以下に示すような3価以上のフェノール化合物を混合使用してもよい。
3価以上のフェノールとしてはフロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタンおよび2,2−ビス−[4,4−(4,4′−ジヒドロキシジフェニル)−シクロヘキシル]−プロパンなどが挙げられる。
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は通常10000〜100000、好ましくは15000〜35000、更に好ましくは23000〜32000である。かかるポリカーボネート樹脂を製造するに際し、分子量調節剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。
本発明にて使用されるカルボン酸変性ポリブチレンテレフタレートとしては、コモノマーユニットとしてイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、琥珀酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸を含有するポリブチレンテレフタレート共重合体が挙げられる。なかでも、イソフタル酸変性ポリブチレンテレフタレートが好適に使用できる。
イソフタル酸変性ポリブチレンテレフタレートのコモノマーユニットであるイソフタル酸の量は、該イソフタル酸変性ポリブチレンテレフタレートを構成する単量体としてのイソフタル酸およびテレフタル酸の合計量を基準にして10〜50モル%の範囲であるものが好ましい。10モル%未満では接着性改良効果が低下したり、50モル%を超えると耐熱性が低下する場合がある。より好ましくは20〜40モル%である。
カルボン酸変性ポリブチレンテレフタレートは、その融点が150〜205℃のものが好適に使用できる。
カルボン酸変性ポリブチレンテレフタレートの配合量は、10〜75重量%である。10重量%未満では接着性が不充分となり、また75重量%を超えると耐熱性が低くさらには熱による形状変化(収縮)が起こるので好ましくない。より好適な配合量としては、20〜 65重量%である。
本発明にて使用されるポリブチレンテレフタレートは、JIS K−7233に基づいて計測された固有粘度が0.6〜1.4、好ましくは0.7〜1.4の範囲のものが好適に使用できる。
ポリブチレンテレフタレートの配合量は、0〜65重量%である。65重量%を超えるとエンボス加工を行う際にプラスチックカード自身が割れてしまうという問題があり、好ましくない。より好適な配合量としては、0〜45重量%の範囲である。
ポリカーボネート樹脂およびカルボン酸変性ポリブチレンテレフタレート、場合によってはポリブチレンテレフタレートの混合方法には、特に制限はなく公知の混合機、例えばタンブラー、リボン・ブレンダー、高速ミキサー等で混合し、溶融混練する方法が挙げられる。
本発明にて使用される亜リン酸エステル系化合物(B)は、下記一般式(1)で表される。
一般式(1)
Figure 0006456684
(式中、R1、R2、R4およびR5はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基またはフェニル基を表し、R3は水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。Xは単結合、硫黄原子もしくは−CHR6基(R6は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数5〜8のシクロアルキル基を示す)を表す。Aは炭素数1〜8のアルキレン基または*−COR7基(R7は単結合または炭素数1〜8のアルキレン基を、*は酸素側の結合手であることを示す。)を表す。Y、Zは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基または炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を表し、もう一方が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
本発明にて使用される亜リン酸エステル系化合物(B)において、R1、R2、R4及びR5は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を表す。
ここで、炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基、i−オクチル基、t−オクチル基、2−エチルヘキシル基などが挙げられ、炭素数5〜8のシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などが挙げられ、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基としては、例えば、1−メチルシクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−メチル−4−i−プロピルシクロヘキシル基などが挙げられ、炭素数7〜12のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、α−メチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基などが挙げられる。
一般式(1)中、R1、R2、R4は、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基である。特に、R1、R4としては、t−ブチル基、t−ペンチル基、t−オクチル基等のt−アルキル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基が好ましい。
一般式(1)中、R2は、特に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基などの炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、さらに好ましくはメチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基である。
一般式(1)中、R5は、特に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基が好ましく、より好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基などの炭素数1〜5のアルキル基である。
一般式(1)中、R3は、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表すが、炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、上述したのと同様のアルキル基が挙げられる。特に水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、より好ましくは水素原子又はメチル基である。
一般式(1)中、Xは、単結合、硫黄原子又はメチレン基を表す。該メチレン基には、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基が置換されていてもよい。ここで、メチレン基に置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基としては、それぞれ上述と同様のアルキル基、シクロアルキル基が挙げられる。Xとしては、特に、単結合、メチレン基又はメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基又はt−ブチル基などが置換したメチレン基が好ましく、単結合がより好ましい。
一般式(1)中、Aは、炭素数1〜8のアルキレン基、又は*−COR7−基を表す。R7は単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を表し、*は酸素側の結合手であることを示す。ここで、炭素数1〜8のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基などが挙げられ、好ましくはプロピレン基である。また、*−COR7−基における*は、カルボニル基がホスファイト基の酸素原子と結合していることを示す。またR7における、炭素数1〜8のアルキレン基としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基などが挙げられる。R7として、好ましくは単結合、エチレン基である。
一般式(1)中、Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基を表し、他の一方が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。ここで、炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば上述したのと同様のアルキル基が挙げられる。
本発明にて使用される亜リン酸エステル系化合物(B)としては、例えば、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−〔3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−4,8−ジ−t−ブチル−2,10−ジメチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−4,8−ジ−t−ブチル−2,10−ジメチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシンなどが挙げられる。特に、光学特性が求められる分野用途においては、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−〔3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピンが好ましい。これらの市販品としては、住友化学社製スミライザー GP等が挙げられる。
本発明にて使用される亜リン酸エステル系化合物(B)の配合量は、ポリカーボネート樹脂70〜25重量%、カルボン酸変性ポリブチレンテレフタレート10〜75重量%およびポリブチレンテレフタレート0〜65重量%からなる樹脂組成物100重量部に対して0.01〜2.0重量部である。配合量が、0.01重量部未満の場合、黄色度が高いため好ましくない。また、配合量が2.0重量部を超える場合、黄色度が上がるため好ましくない。配合量は0.03〜1.5が好ましく、より好ましくは0.04〜1.0重量部である。
本発明にて使用される亜リン酸エステル系化合物(C)としては下記一般式(2)または(3)に示す化合物が挙げられる。
一般式(2)
Figure 0006456684
(一般式2において、R8〜12は炭素数1〜20のアルキル基、またはアルキル基で
置換されてもよいアリール基を示す。)
一般式(3)
Figure 0006456684
(一般式2において、R12、R13は炭素数1〜20のアルキル基、またはアルキル基で置換されてもよいアリール基を、a、bは整数0〜3を示す。)
一般式(2)の化合物としてはクラリアントジャパン社製サンドスタブP−EPQが、一般式(3)の化合物としてはアデカ社製アデカスタブPEP−36が商業的に入手可能なものとして挙げられる。
本発明にて使用される亜リン酸エステル系化合物(C)の配合量は、ポリカーボネート樹脂70〜25重量%、カルボン酸変性ポリブチレンテレフタレート10〜75重量%およびポリブチレンテレフタレート0〜65重量%からなる樹脂組成物100重量部あたり、0.01〜2重量部である。配合量が0.01重量部未満では、熱安定性が劣るため好ましくない。また、2重量部を超えると黄色度が上がるため好ましくない。配合量は、0.03〜1.5重量部が好適で、さらに好ましくは0.04〜1.0重量部である。この範囲では、黄色度が上がらず、優れた熱安定性を示す。
更に、本発明の効果を損なわない範囲で混合時に各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、離型剤、滑剤、光安定剤、紫外線吸収剤、染顔料等を必要に応じて配合しても良い。
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態を説明した。しかしながら、本発明における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、特にことわりがない限り、「部」及び「%」はそれぞれ重量基準である。
原料として以下のものを使用した。
樹脂組成物(A):
ポリカーボネート樹脂:
住化スタイロンポリカーボネート(株)社製カリバー200−3(以下、「PC」 と略記)
「カリバー」はスタイロンユーロップゲーエムベーハーの登録商標
イソフタル酸変性ポリブチレンテレフタレート:
ポリプラスチックス(株)社製ジュラネックス600LP(以下、「PBTI」と 略記)
固有粘度:1.0 イソフタル酸量:30モル%、融点:170℃
ポリブチレンテレフタレート:
ポリプラスチックス(株)社製ジュラネックス600FP(以下、PBTと略記)
固有粘度:1.0、融点:223℃
亜リン酸エステル系化合物(B):
住友化学社製スミライザー GP(以下「AO1」と略記する。)
亜リン酸エステル系化合物(C):
クラリアントジャパン社製P−EPQ(以下「AO2」と略記する。)
亜リン酸エステル系化合物(C):
アデカ社製アデカスタブPEP−36(以下「AO3」と略記する。)
実施例1〜7および比較例1〜7
前記各原料を表1および表2の割合にて一括してタンブラーで予備混合した。次いで、溶融温度260℃の条件にてスクリュー径40mmの単軸押出機(田辺プラスチックス機械株式会社製 VS40−32)を用いて溶融混合し各種樹脂組成物のペレットを得た。
得られた各種樹脂組成物のペレットをTダイを用いて240℃にて押出し、厚さ0.35mmの樹脂板を得た。この樹脂板を用いて、各種の試験を行った。
(基材同士の接着性試験)(接着性)
樹脂板を14cm x 14cmのサイズに裁断し、その片方の面の半面にアルミ箔を置き、更に樹脂版をその全面にのせ、温度150℃及び160℃の条件でそれぞれ熱プレス加工を行い、樹脂板同士を貼合した。その後、アルミ箔部分を長さ方向に半分含む形で長さ14cm、幅2cmの試験片に裁断し、アルミ箔を取除き、基材同士の接着性を測定するための試験片を得た。
得られた試験片を用いて、温度23℃、相対湿度50%の恒温室にて下記条件にて剥離試験を行った。
引張試験機: オリエンテック社製万能引張試験機UCT−1T
引張り速度: 毎分50mm
剥離開始点の荷重を接着強度として、表1および表2に示した。尚、接着強度は4.0Kgf以上もしくは剥離せずに樹脂板が破壊されたものを合格とした。
(反り性)
樹脂板を2枚重ね、更にその両側にオーバーシート(*)を重ねて160℃でプレスし試験用樹脂板を得た。該樹脂板をJIS X6301に規定されたサイズ(8.5cm x 5.4cm)に裁断し、試験用プラスチックカードを作成した。
(*)ポリカーボネート樹脂製オーバーシート:
住化スタイロンポリカーボネート(株)社製カリバー200−13をTダイを用い て260℃で押出し、厚さ50μmのフィルムを作成した。
これをオーバーシートとして用いた。
得られた試験用プラスチックカードを23℃、50%相対湿度の恒温室内でエンボス加工を行い、刻印を施した。使用されたエンボサーはトライトロニクス社製カードエンボサー(TX−1050)であり、第1領域に19文字、第2領域に38文字、文字種は全て7B数字の8を試験用プラスチックカードに刻印した。尚、エンボス文字の高さは0.40mmに調節した。エンボス加工されたプラスチックカードの試験方法および評価基準は次のとおり:
(反り性試験)
プラスチックカードのエンボス文字凸部を、平坦な面と接しない向きで、平坦な面に置き、平坦な面からエンボス文字面の非エンボス文字部までの最大距離をビデオマイクロスコープで測定し、反りとした。この反りが2.5mm以下であれば合格とした。結果を表1および表2に示す。
(加熱収縮試験)
樹脂板を2枚重ね、更にその両側にオーバーシート(*)を重ねて160℃でプレスし試験用樹脂板を得た。該樹脂板をJIS X6301に規定されたサイズ(8.5cm x 5.4cm)に裁断し、試験用プラスチックカードを作成した。
(*)ポリカーボネート樹脂製オーバーシート:
住化スタイロンポリカーボネート(株)社製カリバー200−13をTダイを用い て260℃で押出し、厚さ50μmのフィルムを作成した。
これをオーバーシートとして用いた。
得られた試験用プラスチックカードを23℃、50%相対湿度の恒温室内に24時間放置し状態調整を行った後長辺方向および短辺方向の長さをデジタルノギスにより測定した。測定後の試験片を90℃の熱風循環式オーブンに一時間放置し取り出した後23℃、50%相対湿度の恒温室内に24時間放置し状態調整を行い再度長辺方向および短辺方向の長さをデジタルノギスにより測定した。
加熱前の測定値をXとし加熱後の測定値をYとした場合の収縮率S(%)を次式S(%)=((X−Y)/X) x 100を用いて計算し収縮率S(%)が0.2%以下を合格とした。
(黄色度測定用試験片の作成方法)
得られたペレット各種ペレットを120℃で4時間乾燥した後に、これを射出成形機(日本製鋼社製J100EII−P)にて、溶融温度250℃の条件下、カラーチップ(サイズ:60 x 60 x 2mm)を作成した。
(黄色度の評価方法)
黄色度は、村上色彩研究所製スペクトロフォトメーターCMS35−SPを用い、D65光源、視野角10°の反射測定で実施し、黄色度8.0未満を合格とした。
Figure 0006456684
Figure 0006456684
実施例1〜7に示すように、本発明の構成要件を満足するものについては、要求性能を満たしていた。
一方、比較例1〜7に示すように、本発明の構成要件を満足しないものについては、それぞれ次のとおり欠点を有していた。
比較例1は、ポリカーボネート樹脂(PC)の配合量が規定量よりも少なく、カルボン酸変性ポリブチレンテレフタレート(PBT1)の配合量が規定量よりも多い場合であり、収縮率が0.2%を超えていた。
比較例2は、ポリカーボネート樹脂(PC)の配合量が規定量よりも多い場合であり、接着性に劣り、反りも2.5mmを超えていた。
比較例3は、亜リン酸エステル系化合物(AO1)の配合量が規定量よりも少ない場合であり、黄色度が規定値を超えていた。
比較例4は、亜リン酸エステル系化合物(AO1)の配合量が規定量よりも多い場合であり、黄色度が規定値を超えていた。
比較例5は、亜リン酸エステル系化合物(AO2)の配合量が規定量よりも少ない場合であり、黄色度が規定値を超えていた。
比較例6は、亜リン酸エステル系化合物(AO2)の配合量が規定量よりも多い場合であり、黄色度が規定値を超えていた。
比較例7は、亜リン酸エステル系化合物(AO3)を単独で使用した場合であり、本発明の構成要件を満足する場合と比較して黄色度が規定値を超えていた。
以上のように、本発明における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、詳細な説明を提供した。
したがって、詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
また、上述の実施の形態は、本発明における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
本発明によれば、インクの変色、滲み、黄変が起こらず、かつカード基材を積層化した際の基材同士の接着性が飛躍的に改良されるだけでなく、日常生活において比較的高温の条件下に放置されたとしてもエンボス加工に伴うプラスチックカード自体の反りも抑制される。本願発明は、以上の通り工業的利用価値が極めて高い。

Claims (7)

  1. ポリカーボネート樹脂70〜25重量%、カルボン酸変性ポリブチレンテレフタレート10〜75重量%およびポリブチレンテレフタレート0〜65重量%からなる樹脂組成物(A)100重量部に対して、下記一般式(1)で表される亜リン酸エステル系化合物(B)0.01〜2.0重量部、および下記一般式(2)で表される亜リン酸エステル系化合物(C)0.01〜2.0重量部を含むことを特徴とする、プラスチックカード用樹脂組成物。
    一般式(1)
    Figure 0006456684
    (式中、R1、R2、R4およびR5はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基またはフェニル基を表し、R3は水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。Xは単結合、硫黄原子もしくは−CHR6基(R6は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数5〜8のシクロアルキル基を示す)を表す。Aは炭素数1〜8のアルキレン基または*−COR7基(R7は単結合または炭素数1〜8のアルキレン基を、*は酸素側の結合手であることを示す。)を表す。Y、Zは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基または炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を表し、もう一方が水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
    一般式(2)
    Figure 0006456684
    (一般式(2)において、R8〜R11は炭素数1〜20のアルキル基、またはアルキル基で置換されてもよいアリール基を示す。
  2. ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール及びトリペンタエリスリトールからなる群から選ばれる少なくとも1種のエリスリトール類を含まない、請求項1記載のプラスチックカード用樹脂組成物。
  3. 前記カルボン酸変性ポリブチレンテレフタレートのコモノマーユニットがイソフタル酸である、請求項1に記載のプラスチックカード用樹脂組成物。
  4. 前記イソフタル酸が、前記カルボン酸変性ポリブチレンテレフタレートを構成する単量体としてのイソフタル酸およびテレフタル酸の合計量を基準にして10〜50モル%である、請求項に記載のプラスチックカード用樹脂組成物。
  5. 前記一般式(1)で表される亜リン酸エステル系化合物(B)の配合量が0.04〜1.0重量部(前記樹脂組成物(A)100重量部あたり)であり、前記一般式(2)で表される亜リン酸エステル系化合物(C)の配合量が0.04〜1.0重量部(前記樹脂組成物(A)100重量部あたり)である、請求項1に記載のプラスチックカード用樹脂組成物。
  6. 前記亜リン酸エステル系化合物(B)が、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−〔3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピンであることを特徴とする、請求項1に記載のプラスチックカード用樹脂組成物。
  7. 請求項1〜6の何れか一項に記載のプラスチックカード用樹脂組成物を成形してなるプラスチックカード。
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