JP6455602B2 - 鋼材を焼入れする際の冷却時間の導出方法、鋼材の焼入れ方法および鋼材の焼入れ焼戻し方法 - Google Patents

鋼材を焼入れする際の冷却時間の導出方法、鋼材の焼入れ方法および鋼材の焼入れ焼戻し方法 Download PDF

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Description

本発明は、鋼材を焼入れする際の冷却時間の導出方法、鋼材の焼入れ方法および鋼材の焼入れ焼戻し方法に関する。
鋼材は、硬度および靱性に優れた材料である。鋼材の硬度は、例えば、焼入れによって付与される。焼入れとは、オーステナイト域の焼入れ温度に加熱した鋼材を急冷することで、鋼材の組織をマルテンサイト変態させる処理である。そして、この焼入れ後の鋼材に焼戻しを行うことで、鋼材に靱性を付与できる。焼戻しとは、焼入れ後の鋼材を、オーステナイト域以下の適当な温度に再加熱する処理である。
焼入れ焼戻しが実施される鋼材には、例えば、スラブ、ブルーム、ビレットといった素材の形状を有しているものの他に、各種の治工具、金型、構造用部品といった製品の形状を有しているものがある。そして、焼入れの実施において、鋼材が、大きかったり、複雑な形状であったりすると、冷却時の冷却速度が、目標とする冷却速度に対して、鋼材の表面では大きくても、鋼材の中心部分では小さくなって、鋼材の中心部分でマルテンサイト変態が不十分となり得る。よって、実際の鋼材の焼入れでは、その鋼材の大きさや形状に応じて、鋼材の全体で上記の「目標とする冷却速度」以上の冷却速度を達成できる「冷却条件」を、予め設定しておくことが重要である。
冷却条件を決定する因子として、例えば、冷却媒体の種類を挙げることができる。そして、この冷却媒体の種類に応じた冷却手法として、例えば、送風した空気等を用いる空気焼入れ(衝風冷却)や、水を用いる水焼入れ、油、塩浴、溶融金属等を用いる熱浴焼入れ、窒素やアルゴン等の不活性ガスを用いるガス焼入れ等が選択されている(特許文献1〜3)。また、冷却条件を決定する因子には、冷却媒体の温度を挙げることができる。そして、衝風冷却であれば送風する空気の風量や風速、ガス焼入れであれば不活性ガスの流量(圧力)を挙げることができる。
そして、実際の焼入れでは、その冷却過程において、鋼材の温度がある指示温度に達したときに、上記の冷却条件による冷却を停止する場合がある。例えば、冷却の前半は、目標とする冷却速度以上の冷却速度で急冷するが、冷却の後半は、鋼材の割れを抑制すること等を理由にして、上記の冷却速度よりも小さな冷却速度で緩冷するために、冷却手段を一旦停止する場合がある。したがって、鋼材の焼入れでは、上述した冷却条件を予め設定しておくことに加えて、冷却中の鋼材の温度を管理することも重要である。
しかし、工場における操業で、冷却中の鋼材の「中心部分の温度」を直接測定することは現実的でない。よって、実際の焼入れでは、予め設定した冷却条件が達成する冷却速度を知っておくことで、この冷却速度で冷却中の鋼材の、中心部分の温度と冷却時間との関係から、鋼材の中心部分の温度を推定している。そして、鋼材の中心部分の温度が指示温度に達したときを、そのときの冷却時間で判断している。
特開2008−031530号公報 特開2006−342368号公報 特開平10−080746号公報
上述の通り、鋼材に焼入れを実施するにおいては、予め設定した冷却条件で指示温度まで冷却したいときに、どのくらいの時間冷却すればよいかを算出することが重要となる。
しかし、実際に焼入れが実施される鋼材は、大きさや形状が様々である。そして、焼入れする鋼材の大きさや形状が異なるときに、その鋼材の中心部分の冷却速度も異なる。よって、大きさや形状が異なる、一つひとつの鋼材において、それら鋼材の中心部分の冷却速度が異なる点で、冷却中の鋼材の中心部分の温度と冷却時間との関係がわからないことから、指示温度まで冷却したいときに、どのくらいの時間冷却すればよいかを算出することは容易でない。
本発明の目的は、焼入れを行う鋼材の大きさや形状が異なっても、その指示温度までの冷却を、冷却時間で効率よく管理できるための、鋼材を焼入れする際の冷却時間の導出方法を提供することである。そして、上記の方法によって導出した冷却時間を用いて行う、鋼材の焼入れ方法を提供することである。
また、本発明の目的は、上記の焼入れ方法によって焼入れされた鋼材に、さらに、焼戻しを行う鋼材の焼入れ焼戻し方法を提供することである。
本発明は、鋼材を焼入れする際、冷却開始温度Tsに加熱された鋼材に、冷却条件Cでの冷却を開始してから、この冷却条件Cでの冷却を終了するまでの冷却時間を予め導出する、鋼材を焼入れする際の冷却時間の導出方法であって、
焼入れを行う鋼材と同じ鋼種Aからなり、体積Vおよび表面積Sがそれぞれ異なるn個(nは2以上の自然数)の試験片を作製し、これら試験片のそれぞれの中心部分に温度センサーを挿入するための穴を設ける第1のステップと、
試験片の上記の穴に温度センサーを挿入し、冷却開始温度Tsに加熱保持し、ついで各試験片に対し同じ冷却条件Cで冷却を開始し、冷却を開始してから上記の温度センサーで測定された試験片の中心部分の温度が低下して冷却停止温度Teに到達するまでの冷却時間tを測定する試験を、上記したn個の試験片について実施する第2のステップと、
関係式(1)で定義される関数fであって、第2のステップで得られた1組が体積V、表面積Sおよび冷却時間tからなるn組のデータが関係式(1)を満足する関数fを決定する第3のステップと、
焼入れを行う鋼材の形状F1が有する体積V1および表面積S1を関係式(1)に代入して冷却時間t1を算出する第4のステップと、
を備える鋼材を焼入れする際の冷却時間の導出方法である。
関係式(1): t=f(V/S)
そして、上記の冷却時間の導出方法で導出した冷却時間t1を用いて行う、鋼材の焼入れ方法であって、上記の鋼材を焼入れする際、冷却開始温度Tsに加熱された鋼材を冷却条件Cで冷却時間t1だけ冷却した後、この冷却条件Cでの冷却を停止する鋼材の焼入れ方法である。好ましくは、上記の鋼材の焼入れ方法において、鋼材の焼入れ時の冷却が、異なる冷却条件によって多段階に分かれており、それぞれの冷却段階で、冷却時間を導出するための、異なる関数fを決定する鋼材の焼入れ方法である。
また、本発明は、上記の鋼材の焼入れ方法で焼入れした鋼材に、さらに、焼戻しを行う鋼材の焼入れ焼戻し方法である。
本発明によれば、鋼材の大きさや形状が変化しても、焼入れ時の適切な冷却時間を簡便に算出することができる。このため、例えば、少量多品種の鋼材、または、様々な形状の鋼材に焼入れを行う必要があるときに、それぞれの焼入れを適切に行うことができる。
SKD61でなる試験片を、1020℃の焼入れ温度から、大気中での大型ファン(ファン能力:420m/min×3台)の衝風冷却による冷却条件で、試験片の中心部分の温度が650℃に到達するまで冷却したときの、「V/S値」と「冷却時間t」との関係を示す図である。 図1で示した「V/S値」と「冷却時間t」との関係を、実際の鋼材に行う焼入れでの関係に補正した図である。 図1で冷却した後の試験片において、その中心部分の温度が600℃に低下したときから、100℃の油中に試験片の全体を浸漬する油焼入れによる冷却条件で、試験片の中心部分の温度が250℃に到達するまで冷却したときの、「V/S値」と「冷却時間t」との関係を示す図である。 図3で示した「V/S値」と「冷却時間t」との関係を、実際の鋼材に行う焼入れでの関係に補正した図である。 ダイカスト金型の固定入子の形状を模式的に示したものであり、実際の鋼材が有する形状の一例を示す模式図である。 図5の鋼材と略同一の体積を有する直方体を示す図である。 実際の鋼材に行われる焼入れパターンの一例(一段冷却)を示す図である。 実際の鋼材に行われる焼入れパターンの別の一例(二段冷却)を示す図である。
本発明の特徴は、まず、焼入れされる鋼材の有する様々な大きさや形状を、その鋼材の体積Vと表面積Sとの比で定義される「V/S値」で整理したところにある。そして、本発明の特徴は、このV/S値と鋼材の中心部分の冷却速度との相関を利用して、冷却中の鋼材が指示温度に到達するまでの冷却時間の算出を行うところにある。そして、本発明の特徴は、この冷却時間の算出を、実際に焼入れを行う鋼材と同じ鋼種でなる試験片を用いて、予め行っておくことで、様々な大きさや形状を有する鋼材の焼入れにおいて、普遍性のある冷却時間の算出が容易に行えるところにある。すなわち、本発明の第一の実施形態は、焼入れを行う鋼材を“実際に”焼入れする際、冷却開始温度Tsに加熱された鋼材に、冷却条件Cでの冷却を開始してから、該冷却条件Cでの冷却を終了するまでの冷却時間を“予め”導出する「鋼材を焼入れする際の冷却時間の導出方法(以下、単に「冷却時間の導出方法」と言う。)」である。以下に、本発明の冷却時間の導出方法の各要件について説明する。
(A)本発明の冷却時間の導出方法は、まず、実際に焼入れを行う鋼材と同じ鋼種Aからなり、体積Vおよび表面積Sがそれぞれ異なるn個(nは2以上の自然数)の試験片を作製し、これら試験片のそれぞれの中心部分に温度センサーを挿入するための穴を設ける第1のステップを、備えるものである。
本発明では、実際の鋼材に焼入れを行う前に、この鋼材と同じ鋼種Aでなる試験片を準備する。そして、この試験片に、後述する、実際の鋼材に行う焼入れと同じ冷却条件Cによる焼入れを行うことで、実際の鋼材に焼入れを行ったときに、鋼材の中心部分が指示温度に到達するのに要する「冷却時間」を、予め算出しておく。
このとき、鋼材の体積Vと表面積Sとの比で定義される「V/S値」と、冷却中の鋼材の中心部分で実現されている「冷却速度」とには相関がある。鋼材の中心部分は、この鋼材の体積が大きくなる程、冷え難くなる。その一方で、鋼材の表面積が大きくなる程、逆に冷え易くなる。つまり、鋼材の体積と表面積の二つの因子は、鋼材の中心部分の冷え方に“直接的に”かつ“反比例的に”作用する。よって、これら二つの因子を反比例の関係で含んだ「V/S値」の相関を利用すれは、上記の冷却時間の算出を精度よく行うことができ、かつ、その算出も容易である。そして、実際の鋼材に焼入れを行うときには、上記の相関を利用することで、焼入れを行いたい鋼材の有する「V/S値」から、事前に、焼入れ冷却に要する冷却時間(つまり、一つの冷却条件での冷却をストップさせるまでの所要時間)を算出することができる。なお、鋼材の「中心部分」とは、例えば、鋼材の重心であり、あるいは、鋼材全体のなかで冷却速度の最も遅い部分である。
よって、準備する試験片は、それが有する「V/S値」で整理されたものとする。そして、上記の相関を得るために、異なったV/S値を有するように、さまざまな形状に加工されたn個(nは2以上の自然数)の試験片を準備する。このとき、n個の試験片のV/S値は、これら試験片のV/S値の最少値と最大値との間に、実際に焼入れする鋼材のV/S値が入るように、準備することが好ましい。また、このとき、試験片の大きさ(体積)や形状は、同じでなくてもよい。複数の試験片は、それらが異なった大きさや形状を有していても、同じV/S値を有していることで、同じ冷却条件による焼入れにおいて、その中心部分の冷却速度はあまり変わらない。但し、試験片の形状については、一方が平坦状であり、一方が凹凸状であるなど、その差が大きいと、算出した体積Vおよび表面積Sの値に生じる誤差等に起因して、実際の鋼材の焼入れで発現される相関の精度に合わせ込む作業が複雑となる。この点において、試験片の形状は、お互いが略相似形であることが好ましい。そして、体積Vや表面積Sの算出が容易な、立方体、直方体、角柱、円柱といった形状のものが好ましい。略相似形の試験片を準備し易い点で、「立方体」とすることがより好ましい。そして、これら試験片で得られた相関を基礎にして、必要に応じて、これを実際の鋼材の焼入れに見合った相関の精度に補正していくことが、効率的である。この補正の詳細については、後述する。
これら試験片の中心部分には、焼入れ中において、この部分の温度を測定する温度センサーを挿入するための穴を設けておく。このとき、試験片の中心部分以外にも、温度センサーを挿入するための穴を設けておくことができる。例えば、試験片の表面と中心部分との間において、その中間部分の位置や、その中間部分から半分の距離だけ試験片の表面に移動した部分の位置等である。これによって、試験片の各部分で測定した温度を、お互いに比較できるので、測定した温度の信憑性が増す。
なお、温度センサーを挿入するための穴を設けたことによって、試験片の体積Vや表面積Sは、厳密には、変化する。しかし、この穴を設けたことによる体積Vや表面積Sの変化が、上記の相関に与える影響は僅かであり、無視することができる。
そして、これら試験片に焼入れを行って得られる、試験片のV/S値と、試験片の中心部分の冷却速度との相関を、実際の鋼材に行う焼入れの管理に利用するために、試験片の鋼種は、鋼材の鋼種と成分組成が同じ「鋼種A」とする。このとき、本発明が用いる鋼材は、焼入れが行われる鋼材であればよい。よって、本発明の効果の達成のために、鋼材の成分組成を特定する必要はない。但し、本発明の鋼材の焼入れ方法が、各種の治工具、金型、構造用部品等の作製に使用されることを考えれば、上記の鋼種Aは、例えば、JIS−G−4404の「合金工具鋼鋼材」に規格される鋼種とすることができる。例えば、SKD11等の冷間工具鋼や、SKD61等の熱間工具鋼が代表的である。また、これら工具鋼の成分組成を改良して、この成分組成の値を変更したものや、この成分組成に別の元素種を含有させた工具鋼とすることもできる。
焼入れが行われる鋼材の成分組成として、例えば、質量%で、C:0.30〜2.40%、Cr:3.00〜15.00%を含む鋼の成分組成がある。このとき、熱間工具鋼であれば、C:0.30〜0.60%、Cr:3.00〜6.00%とすることができ、冷間工具鋼であれば、C:0.60〜2.40%、Cr:5.00〜15.00%とすることができる。また、両鋼種について、さらに、Si:2.00%以下、Mn:1.50%以下、P:0.050%以下、S:0.050%以下、(Mo+1/2W)の関係式によるMoおよびWのうちの1種または2種:0.50〜4.00%、V:0.10〜1.50%、Ni:0〜1.00%、Co:0〜1.00%およびNb:0〜1.50%のうちから選択される1種または2種以上の元素種を含むことができる。そして、上記の元素種を含み、残部をFeおよび不純物とした成分組成とすることができる。
Cu、Al、Ti、Ca、Mg、O(酸素)、N(窒素)は、添加されたり、不純物として鋼材中に残留したりする可能性のある元素である。これら元素の含有量の上限は、好ましくは、Cu:0.25%、Al:0.25%、Ti:0.03%、Ca:0.01%、Mg:0.01%、O:0.01%、N:0.08%とすることができる。
(B)本発明の冷却時間の導出方法は、第1のステップで作製した試験片の上記の穴に温度センサーを挿入し、冷却開始温度Tsに加熱保持し、ついで各試験片に対し同じ冷却条件Cで冷却を開始し、冷却を開始してから上記の温度センサーで測定された試験片の中心部分の温度が低下して冷却停止温度Teに到達するまでの冷却時間tを測定する試験を、上記したn個の試験片について実施する第2のステップを、備えるものである。
第2のステップは、第1のステップで準備したn個の試験片に、焼入れを行うステップである。そして、後述する第3のステップで、実際の鋼材に行う焼入れの管理に使用できる「鋼材の有するV/S値」と「鋼材の中心部分の冷却速度(つまり、焼入れ冷却に要する冷却時間)」との相関を求めるのに必要な基礎データを、採取するステップである。
第2のステップで、試験片に行う焼入れの冷却条件は、実際の鋼材に行う焼入れの冷却条件と同じ「冷却条件C」とする。本発明の効果を達成するにおいて、管理すべき冷却条件の因子は、冷却媒体の種類や温度、圧力(強度)である。
まず、試験片の中心部分に設けた穴に温度センサーを挿入する。次に、この温度センサーを挿入した試験片を、冷却開始温度Tsに加熱保持する。このとき、冷却開始温度Tsは、例えば、実際の鋼材に行う焼入れ時の「焼入れ温度」である(図7)。具体的に示すと、例えば、1000〜1100℃の範囲である。
ついで、冷却開始温度Tsに加熱保持した上記の試験片について、冷却条件Cで冷却を開始する。そして、その冷却の間、試験片の中心部分の温度を温度センサーで測定し、試験片の中心部分の温度が冷却停止温度Teに到達するまで冷却する。このとき、冷却停止温度Teは、例えば、実際の鋼材に行う焼入れ時の「焼入れ終了温度」である(図7)。具体的に示すと、例えば、室温〜350℃の範囲である。
そして、上記の冷却を開始してから、試験片の中心部分の温度が冷却停止温度Teに到達するまでの冷却時間tを測定する。そして、この冷却時間tの測定を、様々なV/S値を有するn個の試験片で行うことで、これら試験片の中心部分の温度が「冷却開始温度Ts」から「冷却停止温度Te」に到達するまでの、上記のV/S値によって異なるn個の「冷却時間t」を採取する。
なお、「冷却開始温度Ts」および「冷却停止温度Te」については、上記の「焼入れ温度」および「焼入れ終了温度」を設定する場合の他に、様々な温度を設定することができる。例えば、焼入れ温度と焼入れ終了温度との間に含まれる、一部の冷却温度域に設定することができる。この場合、この一部の冷却温度域で、本発明の冷却時間の導出方法を実施することとなる。そして、焼入れ温度と焼入れ終了温度との間に含まれる、上記した一部の冷却温度域以外の、別の冷却温度域でも、別の「冷却開始温度Ts」および「冷却停止温度Te」を設定して、本発明の冷却時間の導出方法を実施してよい。
このように、焼入れ温度と焼入れ終了温度との間で、複数個の冷却温度域(冷却開始温度Tsおよび冷却停止温度Te)を設定して、複数通りの本発明の冷却時間の導出方法を実施する場合として、「多段階焼入れ」がある。多段階焼入れとは、その焼入れ時の冷却が、異なる冷却条件によって多段階に分かれている焼入れのことを言う。この多段階焼入れでは、例えば、ある一つの冷却条件で冷却を開始した後に、この冷却を停止して、次いで、これとは異なる、別の一つの冷却条件で冷却することとなる。そして、これらそれぞれの冷却段階(冷却条件)で、冷却時間を導出するための、異なる関数fを決定して、それぞれの冷却段階に適した冷却時間を導出することが好ましい。
上記の多段階焼入れとして、例えば、鋼材が金型等の工具製品である場合、焼入れ冷却時のひずみの発生を抑制する等を目的として、その一連の冷却過程(冷却条件)を2段階に分ける「2段冷却」が行われる場合がある(図8)。具体例として、高温域である1段目の冷却を衝風冷却やガス冷却とし、低温域である2段目の冷却を1段目よりもガス圧を上げたガス冷却や、油冷とするものである。
そして、図8において、本発明に係る第2のステップでは、一段目の、試験片の中心部分の温度が「冷却開始温度Ts」から「冷却停止温度Te」に到達するまでの「冷却時間t」を測定する作業と、2段目の、試験片の中心部分の温度が「冷却開始温度Ts」から「冷却停止温度Te」に到達するまでの「冷却時間t」を測定する作業とを、必要に応じて実施することとなる。
また、図8において、1段目の「冷却停止温度Te」は、例えば、450〜700℃である。そして、冷却設備が、例えば、1段目の冷却と2段目の冷却とを連続して行えるものであるなら、2段目の「冷却開始温度Ts」は、上記の「冷却停止温度Te」と同じ温度である。また、冷却設備が、例えば、鋼材の移動を要する等、1段目の冷却と2段目の冷却とを連続して行えないものであるなら、その移動中に鋼材の温度が少なからず下がって、「冷却開始温度Ts」は「冷却停止温度Te」よりも少なからず低い温度である。例えば、その差が約50℃程度になるまで低くなることもある。この通り、第2のステップで、冷却開始温度Tsおよび冷却停止温度Teを設定する際は、実際の鋼材に焼入れを行ったときに、その鋼材の中心部分の「実際の温度挙動」に配慮することが好ましい。
(C)本発明の冷却時間の導出方法は、「t=f(V/S)」の関係式(1)で定義される関数fであって、上記の第2のステップで得られた1組が体積V、表面積Sおよび冷却時間tからなるn組のデータが関係式(1)を満足する関数fを決定する第3のステップを、備えるものである。
第3のステップは、第2のステップで得た、V/S値によって異なるn個の「冷却時間t」を用いて、実際の鋼材の焼入れに使用する「鋼材の有するV/S値」と「焼入れ冷却に要する冷却時間」との相関を求めるステップである。そして、この相関は、t=f(V/S)の関係式(1)で定義される関数f(V/S)をもって決定される。
上記の関数f(V/S)を決定する手順について、その一例を説明する。まず、第2のステップで得たn個の「V/S値」と「冷却時間t」との関係を、グラフ上にプロットする。図1は、鋼種AがSKD61でなる試験片を、1020℃の焼入れ温度から、大気中での大型ファン(ファン能力:420m/min×3台)の衝風冷却による冷却条件Cで、鋼材の中心部分の温度が650℃に到達するまで冷却したときの、「V/S値」と「冷却時間t」との関係を示す図である。そして、図1中の「●」印が、第2のステップで得たn個の実測値データである。試験片の形状は立方体である。また、試験片の個数nは3個であり、それぞれのV/S値は、25.00(立方体の一片の長さが150mm)、33.33(同200mm)、50.00(同300mm)である。そして、この「●」印で示される「V/S値」と「冷却時間t」との関係を満足する「t=f(V/S)」の関係式を決定する。
図1中の「●」印の関係を満足する「t=f(V/S)」の関係式を決定する手法として、例えば、市販の表計算ソフト等が有する関数のフィッティング機能を用いることができる。フィッティングとは、例えば、回帰分析等が知られているように、実験的に得られたデータ(制約条件)に最もよく当てはまるような関数(直線、曲線)を求めることである。このフィッテングで求められた関数は、近似直線や近似曲線であり、上記のデータ点を必ず通るわけではない。そして、本発明に係る「V/S値」と「冷却時間t」との関係を示す上記の関数fは、例えば、(V/S)の「一次関数」や「二次関数」等でフィッティングできることを、上記の焼入れ試験の結果や、後述するCAEによる温度解析等によって、確認済みである。図1の場合、「V/S値」と「冷却時間t」との関係を示す関数fは、(V/S)の一次関数でフィッティングされている。
関数のフィッティング機能を用いることで、V/S値と冷却時間tとの関係をグラフ上に「線」で表すことができ、つまり「視覚化」することができる。これは、例えば、試験片の仕様や冷却条件等が同じ焼入れ試験であっても、その焼入れ試験を別々の焼入れ設備で行ったときに、実測値に多少の誤差が生じ得る場合、その誤差(つまり、それぞれの焼入れ設備に固有の冷却能力の差)を容易に認識できる点で、有利である。
なお、上記したフィッティングの精度を向上させるには、第2のステップで得るn個の「冷却時間t」の実測値を、より多くの異なった「V/S値」の試験片で得ることが有効である。あるいは、第2のステップで得たn個の実測値を利用して、これを、例えば、CAE(Computer Aided Engineering)により、多くの異なった「V/S値」の場合の「冷却時間t」にまで拡張して、n個のデータを増やすことも有効である。上記したn組のデータを、より大きな「V/S値」の試験片の場合にまで拡張することで、あるいは、実際に焼入れする鋼材のV/S値が、試験片のV/S値の最少値と最大値との間に入るように、試験片の「V/S値」を拡張することで、第3のステップで決定した「t=f(V/S)」の関数fを実際の鋼材の焼入れ管理に適用するときに、より大きな鋼材にまで適用することができる。
CAEを用いてデータを増やす場合、第2のステップで得た実測値から、冷却中の試験片と冷却媒体との間の「熱伝達係数」を求める工程が重要である。そして、この「熱伝達係数」を、実測しなかった「V/S値」の試験片でも共有化することで、様々な「V/S値」での冷却時間を算出できる。図1中の「□」印が、第2のステップで得た3組の「●」印の実測値データを使用してCAEで算出した、「V/S値」が58.33(立方体の一片の長さが350mm)、66.67(同400mm)のときの追加データである。このとき、実測によって得た「●」印のデータについても、その測定が正しく行われたかを確認するために、上記の「熱伝達係数」を使った検算を行ってもよい。図1に示した、V/S値が25.00、33.33、50.00の3つの位置において、その実測値を示す「●」印のプロット位置と、上記の検算で得た「□」印のプロット位置とが、ほぼ同位置にあり、実測が正しく行われたことがわかる。そして、このCAEによるデータを追加し、上述した関数のフィッティングを実施すればよい。図1中の「実線」は、上記のCAEを用いて追加した複数のプロット点をフィッティングした関数fである。そして、図1において、この追加したデータが、「V/S値」と「冷却時間t」との関係を示す一次関数の直線にフィットしていることがわかる。
ここで、現実的に、各種の治工具、金型、構造用部品等の形状に加工された、実際の鋼材の形状は、凹凸状である。よって、上述の、例えば「立方体」の試験片によって決定された関数fは、実際の形状に加工された鋼材の焼入れに見合った精度に補正することが効果的である。
つまり、実際の形状に加工された鋼材は、例えば金型といった工具製品のように、表面に凹凸がある。このことによって、実際の鋼材の表面積は大きくなることから、同じV/S値を有した立方体と比べて、実は、焼入れ冷却中の降温速度が大きい。そして、それぞれの中心部分の温度についても、実際の形状に加工された鋼材の方が、立方体形状の試験片よりも、冷却開始温度Tsから冷却停止温度Teに「速く」到達する。従って、立方体の試験片で決定した図1の関数fで管理される冷却時間を、そのまま、実際の鋼材の焼入れで実施すると、冷却時間tが経過したときの実際の鋼材の中心部分の温度は、想定していた冷却停止温度Teよりも「低く」なっている場合がある。実際の鋼材の焼入れにおいて、鋼材の中心部分の温度が下がり過ぎていると、鋼材の割れや歪みの要因となる。また、上述した2段冷却であれば、その2段目の冷却に移行するタイミングが遅れて、やはり、鋼材の割れや歪み、または機械的特性の低下の要因となる。
そこで、第1〜3のステップで使用する試験片の形状は、立方体でなくてもよい。この場合、決定する関数fの精度を向上させるために、試験片の形状を、実際に焼入れを行いたい鋼材の形状に、疑似的に合わせてもよい。そして、このような形状の試験片を、上述した立方体の形状の試験片に追加して、使用してもよい。
そして、実際の形状に加工された鋼材の焼入れの挙動に整合するよう、図1の関数fの精度を高めるためには、試験片の形状を疑似的に変更した上記の焼入れ試験の結果等に基いて、図1の関数fを「短時間側」に移行させる補正が効果的である。つまり、第3のステップで関数fを決定するときに、試験片の表面積Sを、この表面積Sの値よりも大きな値である表面積S’に補正することである。これを説明すると、図1の関数fの直線を満たしている、それぞれの位置の「V/S値」と「冷却時間t」との関係において、その「V/S値」の表面積Sの値だけを、その表面積Sよりも大きな表面積S’に置き換えて計算し直すことで、関数fを、新たな「V/S’」の位置に、適正量だけ「右側」に移行させる補正である(図2)。そして、この移行させる量は、S<S’≦(1.3×S)の範囲内とすることで、実際の鋼材における焼入れ挙動が、概ねこの範囲内に納まることを、上記の焼入れ試験の結果や、CAEによる温度解析等によって、確認済みである。
そして、このとき、使用する関数fは、上記の補正量を(1.3×S)とすることが好ましい。実際の焼入れ作業では、狙いとする冷却停止温度に対して、その温度よりも過冷されることを防止する配慮が好ましい。このような場合において、上記の補正量を(1.3×S)とした関数fを用いれば、狙いとする冷却停止温度に達するときとされる冷却時間が、実際のそれよりも短時間側にシフトしているので、仮に、冷却時間が長くなってしまったときでも、冷却の進み過ぎを予防することができる。
(D)本発明の冷却時間の導出方法は、焼入れを行う鋼材の形状F1が有する体積V1および表面積S1を「t=f(V/S)」の関係式(1)に代入して冷却時間t1を算出する第4のステップを、備えるものである。
第4のステップは、上述の第1〜3のステップで決定された関数fを、実際の鋼材の焼入れ管理に用いることで、その体積V1および表面積S1を有する鋼材の中心部分の温度が、「冷却開始温度Ts」から、目標とする「冷却停止温度Te」に冷却されるまでの「冷却時間t1」を算出するステップである。これにより、実際の鋼材の焼入れで、その指示温度までの冷却を、冷却時間で管理することができる。
なお、この実際の焼入れで管理する冷却時間は、上記の関係式(1)で算出された冷却時間に対して、少々の操作域(誤差域)が許容される。例えば、上記の算出された冷却時間に対して、その値のプラスマイナス20%までの範囲で操作することができる。好ましくは、プラスマイナス10%までの範囲である。また、上述した過冷の防止に配慮すれば、冷却時間の操作域の上限は、10%までとすることが好ましく、5%までとすることがより好ましい。
実際の焼入れで管理する冷却時間は、その管理のしやすさに配慮して、上記の関係式(1)で算出された冷却時間を、例えば、その小数点第一位で切り上げ、切り捨て、四捨五入等して、整数の数値に丸めたものとすることができる。
ここで、実際の鋼材の体積V1および表面積S1を、簡易的に求めることができる手法を例示しておく。図5は、ダイカスト金型の固定入子の形状を模式的に示したものであり、実際の鋼材が有する形状F1の一例である。まず、この時点において、実際の鋼材の体積V1は、その質量と比重(鋼の場合、比重は概ね7.8程度である)から求めることが容易である。なお、便宜上、形状を模式的に示した図5の固定入子の場合、その体積V1は113,043,680mmである。
次に、上記の実際の鋼材の体積V1と同じ体積を有する「近似形状」の立体を想定する。このとき、近似形状の立体は、その表面積を求めやすい形状とし、例えば、立方体や直方体とすることが好ましい。そして、図5の固定入子の場合、例えば、その幅および長さ(つまり、底面の縦および横の寸法)を固定して、高さのみを変化させることで、図5の固定入子の体積V1と略同一の体積となる「近似高さ」を設定し、この近似高さを有した図6の直方体を想定する。そして、この図6の直方体から算出した表面積を、図5の固定入子の表面積S1とすることができる。なお、便宜上、形状を模式的に示した図5の固定入子の場合、その表面積S1は、2,205,144mmである。
なお、実際の鋼材は、その種類等によって、内部に水冷孔やネジ穴等の微小空間を有している場合がある。そして、このことによって、実際の鋼材の体積V1や表面積S1は、厳密には、変化する。しかし、この空間による体積V1や表面積S1の変化が、本発明の効果に与える影響は僅かであり、無視できることを、確認済みである。
また、前述した第3のステップでは、関数fに係る表面積Sを補正したところ、この補正に替えて、上記した実際の鋼材の有する「V1/S1値」の表面積S1の方を、「S1<S1’≦(1.3×S1)」の範囲内で補正してもよい。
また、好ましくは、本発明の冷却時間の導出方法は、焼入れ組織をマルテンサイト変態させるために目標とする冷却速度Rと、上記の第4のステップで算出された冷却時間t1とが、以下の関係式(2)を満足するものである。そして、以下の関係式(2)を満足しないとき、上記の冷却条件Cを、この冷却条件Cと異なる冷却条件C’に変更して、上記の第2のステップ以降を再度実行するか、または、上記の鋼種Aを、この鋼種Aと異なる鋼種A’に変更して、上記の第1のステップ以降を再度実行するものである。
関係式(2): (Ts−Te)/t1≧R
第4のステップでは、第1〜3のステップで決定された関数fを、実際の鋼材の焼入れ管理に用いることができるか自体を、事前に確認することを行うこともできる。つまり、体積と表面積との関係が「V1/S1」である形状F1を有する実際の鋼材の焼入れにおいて、その中心部分を、「冷却開始温度Ts」から、目標とする「冷却停止温度Te」にまで冷却するときに、上記の関数fから求めた「冷却時間t1」によって、鋼材の中心部分が、後述する「目標とする冷却速度R」以上の冷却速度で冷却できるかを、確認することができる。鋼材の中心部分で実現される冷却速度が、この「目標とする冷却速度R」を下回ると、鋼材の中心部分でマルテンサイト変態が不十分となり得る場合がある。
上述の「目標とする冷却速度R」について説明する。
まず、本発明の鋼材の焼入れ方法においては、鋼種Aからなる鋼材を、決められた冷却条件Cで焼入れたときに、その冷却中の鋼材の中心部分で実現されている「実際の冷却速度」が、マルテンサイト変態が十分に進むような大きな冷却速度であることが好ましい。そして、この「実際の冷却速度」が、十分に大きな冷却速度であると判断できるためには、その鋼種Aからなる鋼材において、判断基準となる、組織をマルテンサイト変態させるための「目標とする冷却速度R」を定めておくことが好ましい。そして、上述した「実際の冷却速度」が、この「目標とする冷却速度R」以上の速い冷却速度であることが好ましい。
上記の「目標とする冷却速度R」は、例えば、臨界冷却速度を基準にして決定することができる。臨界冷却速度とは、マルテンサイト変態を生じるのに必要な最小の冷却速度である。そして、目標とする冷却速度Rは、焼入れ組織がマルテンサイトだけとなる最小の冷却速度である「上部臨界冷却速度」とすることができる。さらに、上部臨界冷却速度よりも大きい(速い)冷却速度、例えば、上部臨界冷却速度よりも30%までの範囲で大きい冷却速度(例えば、上部臨界冷却速度よりも10%大きい冷却速度や、30%大きい冷却速度)に設定することもできる。
また、鋼材が大きいこと等によって、焼入れ時の冷却が遅くなり得るときには、目標とする冷却速度Rを、上部臨界冷却速度からある程度小さく(遅く)設定することもできる。例えば、目標とする冷却速度Rを、上部臨界冷却速度よりも30%までの範囲で小さい冷却速度(例えば、上部臨界冷却速度よりも10%小さい冷却速度や、30%小さい冷却速度)に設定することができる。
そして、目標とする冷却速度Rを数値で示すと、例えば、焼入れ温度から、450〜700℃までの高温域の冷却過程で、概ね9.0〜15.0℃/分(例えば、10.0℃/分や13.0℃/分)といった冷却速度である。そして、これ以降の、例えば、上記の450〜700℃の温度から、室温〜350℃までの低温域の冷却過程で、概ね7.0〜12.0℃/分といった冷却速度である。
そして、上記で求めた、実際の鋼材が有する体積V1および表面積S1の値を関係式(1)に代入して、冷却開始温度Tsから冷却停止温度Teまでの「冷却時間t1」を求める。そして、この求めた「冷却時間t1」を、「(Ts−Te)/t」の関係式に代入して求めた値が、冷却開始温度Tsから冷却停止温度Teまでの冷却速度である。そして、この値が、上述した、組織をマルテンサイト変態させるための「目標とする冷却速度R」以上の値であれば(つまり、上記した関係式(2)を満足すれば)、実際の焼入れを行ったときに、その組織を十分にマルテンサイト変態させるのに効果的である。
但し、上記の関係式で求めた冷却速度が、上述の「目標とする冷却速度R」未満の値であれば(つまり、上記した関係式(2)を満足しなければ)、実際の焼入れを行ったときに、組織をマルテンサイト変態させるのに不十分になり得るかもしれない。このような場合、実際の焼入れを行う前に、最初に定めた冷却条件Cを見直して、上記の冷却速度「(Ts−Te)/t1」が上述の「目標とする冷却速度R」以上の値を実現できるような冷却条件C’に変更することが好ましい。または、鋼材の鋼種自体を見直して、その鋼種Aを、例えば、焼入れ性の優れた成分組成の鋼種A’に変更することが好ましい。そして、このような冷却速度C’や鋼種A’が定まった後には、第1のステップ以降、または、第2のステップ以降を再度実行すればよい。
従来、鋼材を焼入れする際に、組織をマルテンサイト変態させるために目標とする冷却速度は、経験的に既知である場合が多い。そして、上記の第4のステップで「冷却時間t1」を求めたときには、この冷却時間t1が組織をマルテンサイト変態させるのに十分な時間であることも、経験的に判断できる場合が多い。しかし、実際の鋼材に焼入れを実施するときには、その大きさや形状が異なる、一つひとつの鋼材において、予め設定した冷却条件が上記の目標とする冷却速度以上の冷却速度を達成するかどうかを確認しておくことは有効である。つまり、上記の冷却条件Cが、鋼材の中心部分で「目標とする冷却速度R」以上の冷却速度を実現できるかを推定しておくことである。
本発明であれば、鋼材の大きさや形状が異なっても、それら鋼材の中心部分の冷却速度を簡便に推定することができる。そして、好ましくは、その間、鋼材の中心部分の冷却速度が、上述した「目標とする冷却速度R」以上の冷却速度を実現できるかも推定することができる。
なお、本発明では、上述した組織をマルテンサイト変態させるための「目標とする冷却速度R」を設定することに加えて、焼入れ時の鋼材の割れを抑制するための「目標とする冷却速度R’」を設定することが、より好ましい。そして、実際の鋼材に焼入れを行っているときに、その冷却中の鋼材の中心部分で実現されている「実際の冷却速度」を、上記の「目標とする冷却速度R’」以下の遅い冷却速度とすることで(つまり、(Ts−Te)/t1≦R’を満たすことで)、鋼材に発生する割れの抑制に効果的である。この「目標とする冷却速度R’」を設定する温度域は、鋼材の中心部分の温度が、例えば、600℃以下の範囲にあるときで考えるとよい。
そして、目標とする冷却速度R’を数値で示すと、例えば、600℃から、室温〜350℃までの低温域の冷却過程で、概ね7.5〜17.0℃/分(例えば、13.0℃/分や15.0℃/分)といった冷却速度である。目標とする冷却速度R’は、特に、上述した2段冷却(図8)を実施する場合に設定することが、さらに好ましい。そして、その2段目の冷却で設定することが、特に好ましい。
(E)本発明の第二の実施形態の鋼材の焼入れ方法は、焼入れを行う鋼材を焼入れする際、冷却開始温度Tsに加熱されたこの鋼材を冷却条件Cで上記した冷却時間t1だけ冷却した後、この冷却条件Cでの冷却を停止するものである。
そして、上記の第4のステップで、焼入れを行う鋼材の中心部分の温度が「冷却開始温度Ts」から「冷却停止温度Te」に冷却されるまでの「冷却時間t1」を算出した後には、そして、好ましくは、上記の第4のステップで、決定された関数fが実際の鋼材の焼入れ管理に用いることができることを確認した後には、その実際の鋼材に、上記の「冷却時間t1」による焼入れを行えばよい。一具体的には、所定の形状F1に加工した、鋼種Aからなる鋼材を、焼入温度Tsに加熱し、冷却条件Cで冷却時間t1だけ冷却した後、この冷却条件Cでの冷却を停止する作業である。そして、行いたい焼入れが、2段冷却等であるなら、1段目の冷却に相当する上記の冷却条件Cでの冷却を停止してから、ついで、この冷却条件Cと異なる、別の冷却条件Cで、2段目の冷却をすることもできる。
また、本発明の第三の実施形態は、上述した本発明の鋼材の焼入れ方法で焼入れした鋼材に、さらに、焼戻しを行うものである。これにより、硬度および靱性等の機械的特性が付与された鋼材を得ることができる。
本実施例では、焼入れを行いたい鋼材に、図5の形状F1を有する固定入子を選定した。そして、この固定入子に、図8の2段冷却による多段階焼入れを行った。
2段冷却は、1020℃の焼入れ温度(Ts)から、固定入子の中心部分が650℃(Te)に到達するまでを、1段目の冷却とした。そして、この1段目の冷却を終えた鋼材を別の冷却設備に移動させたことで、固定入子の中心部分の温度が600℃(Ts)に低下したときから、250℃の焼入れ終了温度(Te)に到達するまでを、2段目の冷却とする、焼入れパターンとした。
固定入子は、鋼種AにSKD61を用いて作製した。そして、焼入れ後の固定入子の金属組織で十分なマルテンサイト変態が進む好ましい条件として、目標とする冷却速度Rを、1段目の冷却で13.5℃/分とし、2段目の冷却で7.5℃/分とした。なお、本実施例では、焼入れ時の割れを抑制する好ましい条件として、「目標とする冷却速度R’」にも配慮した。そして、この目標とする冷却速度R’は、2段目の冷却で13.0℃/分とした。つまり、2段目の冷却速度を7.5〜13.0℃/分の範囲内とすることで、焼入れ後の固定入子の金属組織で十分なマルテンサイト変態が進むことに加えて、固定入子の割れ発生の抑制にも効果的である。
冷却条件Cは、1段目の冷却で、大型ファン(ファン能力:420m/min×3台)による大気中での衝風冷却を設定した。そして、2段目の冷却で、100℃の油中に固定入子の全体を浸漬する油焼入れを設定した。
<第1のステップ>
まず、鋼種AにSKD61を用いて、3個の試験片を作製した。3個の試験片の形状は立方体であり、それぞれの一辺は、150mm(体積V/表面積S=25.00)、200mm(同33.33)、300mm(同50.00)とした。そして、これらの試験片の中心部分に、温度センサーを挿入するための穴を設けた。
<第2のステップ>
次に、第1のステップで作製した3個の試験片に、実際の固定入子に行う焼入れに倣った、上記で説明した焼入れパターンおよび冷却条件Cによる、2段冷却の多段階焼入れ試験を実施した。このとき、試験片の穴には温度センサーを挿入して、試験片の中心部分の温度が、TsからTeに到達するまでの冷却時間t、および、TsからTeに到達するまでの冷却時間tを測定した。
<第3のステップ>
第2のステップで得た、3組の「V/S値」と「冷却時間t」との実測値の関係を、グラフ上にプロットした(添え字の「H」は、1段目の冷却であることを示す)。図1は、高温域である1段目の冷却について、上記の実測値の関係をプロットしたものである(「●」印)。そして、CAEによって、この実測値の関係から試験片と冷却媒体との間の熱伝達係数を求め、かつ、この求めた熱伝達係数を用いて、様々なV/S値のときの冷却時間tを計算して、V/S値の範囲を更に拡張した追加データを得た。そして、この追加データとして、V/S値が「58.33」(立方体で一辺が350mm)および「66.67」(立方体で一辺が400mm)のときの、「V/S値」と「冷却時間t」との実測値の関係を、図1のグラフ上にプロットした(「□」印)。また、このとき、同様のCAEを行って、3組の実測値の関係についても検算し、図1のグラフ上にプロットし直した(「□」印)。そして、これらCAEを用いて追加した複数の「□」印のプロット点をフィッティングして、図1中の「実線」で示される関数fを得た。このとき、フィッティングには、マイクロソフト社製の表計算ソフト「エクセル(2007)」のフィッテング機能を用いた。
そして、実際に焼入れを行いたい鋼材が、図5に示す凸形状を有した固定入子であることを想定して、立方体の試験片で得た上記の関数fの精度が上がるように、関数fを補正した。つまり、関数fにおける「表面積S」の値を、「S<S’≦(1.3×S)」を満たす「S’」の値に置き換えて、関数fを右側に移行させた。図2中に示す破線は、図1の関数fを、S’=(1.1×S)、S’=(1.2×S)、S’=(1.3×S)の関係で、それぞれ右側に移行させた、補正後の関数fである。また、図2中に示される「●」印および「◆」印のプロット点は、試験片の形状を図5の固定入子のような凸形状に変更して焼入れ試験を行ったときの、「V/S値」と「冷却時間t」との関係の実測値である。そして、図2中に示される「○」印および「◇」印のプロット点は、上記の「●」印および「◆」印による実測値を、CAEで計算し、検算したものである。これらの結果が、「S<S’≦(1.3×S)」の範囲内で補正した関数fの関係と精度よく合致していることが、認められる。
そして、本実施例では、過冷の防止にも配慮して、上記の補正量が「S’=(1.3×S)」の関数fを採用した。そして、この補正された関数fが、「t=0.6572(V/S)−9.9774」の一次関数であることを確認した(tの単位は「分」、Vの単位は「mm」、Sの単位は「mm」である)。
また、この第3のステップにおいて、上記と同様の作業を、低温域である2段目の冷却でも行った。図3中の「●」印は、2段目の冷却について、実測値の関係をプロットしたものである(添え字の「L」は、2段目の冷却であることを示す)。「□」印は、上記の実測値をCAEで処理して得た、追加のデータである。また、図3中の「実線」で示されるのが、これら複数の「□」印のプロット点をフィッティングした関数fである。このとき、フィッティングには、マイクロソフト社製の表計算ソフト「エクセル(2007)」のフィッテング機能を用いた。
そして、1段目の冷却と同様、2段目の冷却でも、上記の関数fの精度が上がるように、関数fを補正した。図4中に示す破線は、図3の関数fを、S’=(1.1×S)、S’=(1.2×S)、S’=(1.3×S)の関係で、それぞれ右側に移行させた、補正後の関数fである。図4中に示される「●」印および「◆」印のプロット点は、試験片の形状を図5の固定入子のような凸形状に変更して焼入れ試験を行ったときの、「V/S値」と「冷却時間t」との関係の実測値である。また、「○」印および「◇」印のプロット点は、上記の「●」印および「◆」印による実測値を、CAEで計算し、検算したものである。そして、2段目の冷却でも、上記の関数fを「S’=(1.3×S)」の補正量で補正して、この補正された関数fを採用した。そして、この補正された関数fが、「t=0.6762(V/S)−6.2818」の一次関数であることを確認した(tの単位は「分」、Vの単位は「mm」、Sの単位は「mm」である)。
<第4のステップ>
焼入れを行いたい鋼材である、図5の固定入子について、その体積V1および表面積S1を求めた。そして、これらの値は、先述の通り、体積V1が113,043,680mmであり、表面積Sが2,205,144mmであった。なお、これらの作業において、固定入子の内部に設けられた冷却孔等の微小空間は、無いものとした。そして、図5の固定入子の「V/S値」は、(113,043,680mm/2,205,144mm)によって計算される「51.26」に決定した(厳密には、単位は「mm」である)。
そして、図5の固定入子に、実際に、試験片に行った焼入れ試験と同じ冷却条件の2段冷却の多段階焼入れを行うにおいて、まず、固定入子の有する上記の「51.26」のV/S値を、1段目の冷却に係る「t=0.6572(V/S)−9.9774」の補正された関数fに、および、2段目の冷却に係る「t=0.6762(V/S)−6.2818」の補正された関数fに、それぞれ代入した。
その結果、1段目の冷却において、固定入子の中心部分の温度が、1020℃の焼入れ温度(Ts)から、650℃(Te)に到達するまでの冷却時間t1は「23.71分」と算出された。このとき、実際の焼入れでは、管理のしやすさに配慮して、この「23.71分」の冷却時間t1の値を小数点第一位で四捨五入し、実際に管理する冷却時間t1を「24分」とした。そして、この実際に管理する冷却時間t1が経過する間の冷却速度は、[(1020−650)/24]=15.4℃/分であり、上述した「13.5℃/分」の冷却速度Rを超えていた。
また、2段目の冷却において、固定入子の中心部分の温度が、600℃(Ts)から、250℃の焼入れ終了温度(Te)に到達するまでの冷却時間t1は「28.38分」と算出された。このとき、実際の焼入れでは、管理のしやすさに配慮して、この「28.38分」の冷却時間t1の値を小数点第一位で四捨五入し、実際に管理する冷却時間t1を「28分」とした。そして、この実際に管理する冷却時間t1が経過する間の冷却速度は、[(600−250)/28]=12.5℃/分であり、上述した冷却速度RおよびR’の間で決定される「7.5〜13.0℃/分」の範囲を満たしていた。
以上の結果より、最初に設定した鋼種Aおよび冷却条件Cで、上記の冷却時間t1およびt1による2段冷却の焼入れを行ったときに、焼入れ後の固定入子の金属組織で十分なマルテンサイト変態が進み、かつ、割れの発生も抑制できると思われる。よって、鋼種Aや冷却条件Cの見直しは不要であると判断できた。
そして、SKD61の鋼種Aでなる図5の固定入子に、最初に設定した通りの焼入れパターンおよび冷却条件Cによる2段冷却の多段階焼入れを、実際に行った。このとき、1段目の冷却における冷却時間t1は、上述した通りの「24分」とした。そして、2段目の冷却における冷却時間t1は、上述した通りの「28分」とした。
そして、焼入れが終了した後の固定入子を観察した結果、その金属組織は十分なマルテンサイト変態が進んでおり、かつ、割れも発生していなかった。また、関数fの補正量を大き目に設定したことで、過冷を防止することもできた。
以上の結果より、本発明であれば、様々な大きさや形状を有した鋼材に焼入れを行うときに、その指示温度までの冷却を、冷却時間で効率よく管理できることがわかった。そして、様々な大きさや形状を有した鋼材に焼入れを行うときに、それら鋼材の中心部分の冷却速度を簡便に推定できることがわかった。これら本発明の鋼材の焼入れ方法で焼入れした鋼材に、さらに、焼戻しを行うことで、硬度および靱性等の機械的特性が付与された鋼材を得ることができる。

Claims (4)

  1. 鋼材を焼入れする際、冷却開始温度Tsに加熱された鋼材に、冷却条件Cでの冷却を開始してから、該冷却条件Cでの冷却を終了するまでの冷却時間を予め導出する、鋼材を焼入れする際の冷却時間の導出方法であって、
    焼入れを行う鋼材と同じ鋼種Aからなり、体積Vおよび表面積Sがそれぞれ異なるn個(nは2以上の自然数)の試験片を作製し、前記試験片のそれぞれの中心部分に温度センサーを挿入するための穴を設ける第1のステップと、
    前記試験片の前記穴に前記温度センサーを挿入し、冷却開始温度Tsに加熱保持し、ついで各試験片に対し同じ冷却条件Cで冷却を開始し、冷却を開始してから前記温度センサーで測定された前記中心部分の温度が低下して冷却停止温度Teに到達するまでの冷却時間tを測定する試験を、n個の前記試験片について実施する第2のステップと、
    関係式(1)で定義される関数fであって、第2のステップで得られた1組が体積V、表面積Sおよび冷却時間tからなるn組のデータが関係式(1)を満足する関数fを決定する第3のステップと、
    前記焼入れを行う鋼材の形状F1が有する体積V1および表面積S1を関係式(1)に代入して冷却時間t1を算出する第4のステップと、
    を備えることを特徴とする鋼材を焼入れする際の冷却時間の導出方法。
    関係式(1): t=f(V/S)
  2. 請求項1に記載の冷却時間の導出方法によって導出した冷却時間t1を用いて行う、鋼材の焼入れ方法であって、
    前記鋼材を焼入れする際、前記冷却開始温度Tsに加熱された前記鋼材を前記冷却条件Cで前記冷却時間t1だけ冷却した後、前記冷却条件Cでの冷却を停止することを特徴とする鋼材の焼入れ方法。
  3. 前記鋼材の焼入れ時の冷却が、異なる冷却条件によって多段階に分かれており、それぞれの冷却段階で、冷却時間を導出するための、異なる関数fを決定することを特徴とする請求項2に記載の鋼材の焼入れ方法。
  4. 請求項2または3に記載の鋼材の焼入れ方法で焼入れした鋼材に、さらに、焼戻しを行うことを特徴とする鋼材の焼入れ焼戻し方法。

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