JP6454350B2 - 含窒素カーボンアロイの製造方法、含窒素カーボンアロイ及び燃料電池触媒 - Google Patents

含窒素カーボンアロイの製造方法、含窒素カーボンアロイ及び燃料電池触媒 Download PDF

Info

Publication number
JP6454350B2
JP6454350B2 JP2016546611A JP2016546611A JP6454350B2 JP 6454350 B2 JP6454350 B2 JP 6454350B2 JP 2016546611 A JP2016546611 A JP 2016546611A JP 2016546611 A JP2016546611 A JP 2016546611A JP 6454350 B2 JP6454350 B2 JP 6454350B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
nitrogen
carbon alloy
group
containing carbon
carbon
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2016546611A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2016035705A1 (ja
Inventor
順 田邉
順 田邉
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Fujifilm Corp
Original Assignee
Fujifilm Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Fujifilm Corp filed Critical Fujifilm Corp
Publication of JPWO2016035705A1 publication Critical patent/JPWO2016035705A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6454350B2 publication Critical patent/JP6454350B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01JCHEMICAL OR PHYSICAL PROCESSES, e.g. CATALYSIS OR COLLOID CHEMISTRY; THEIR RELEVANT APPARATUS
    • B01J27/00Catalysts comprising the elements or compounds of halogens, sulfur, selenium, tellurium, phosphorus or nitrogen; Catalysts comprising carbon compounds
    • B01J27/24Nitrogen compounds
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B01PHYSICAL OR CHEMICAL PROCESSES OR APPARATUS IN GENERAL
    • B01JCHEMICAL OR PHYSICAL PROCESSES, e.g. CATALYSIS OR COLLOID CHEMISTRY; THEIR RELEVANT APPARATUS
    • B01J37/00Processes, in general, for preparing catalysts; Processes, in general, for activation of catalysts
    • B01J37/08Heat treatment
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C01INORGANIC CHEMISTRY
    • C01BNON-METALLIC ELEMENTS; COMPOUNDS THEREOF; METALLOIDS OR COMPOUNDS THEREOF NOT COVERED BY SUBCLASS C01C
    • C01B21/00Nitrogen; Compounds thereof
    • C01B21/082Compounds containing nitrogen and non-metals and optionally metals
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01MPROCESSES OR MEANS, e.g. BATTERIES, FOR THE DIRECT CONVERSION OF CHEMICAL ENERGY INTO ELECTRICAL ENERGY
    • H01M4/00Electrodes
    • H01M4/86Inert electrodes with catalytic activity, e.g. for fuel cells
    • H01M4/88Processes of manufacture
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01MPROCESSES OR MEANS, e.g. BATTERIES, FOR THE DIRECT CONVERSION OF CHEMICAL ENERGY INTO ELECTRICAL ENERGY
    • H01M4/00Electrodes
    • H01M4/86Inert electrodes with catalytic activity, e.g. for fuel cells
    • H01M4/90Selection of catalytic material
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01MPROCESSES OR MEANS, e.g. BATTERIES, FOR THE DIRECT CONVERSION OF CHEMICAL ENERGY INTO ELECTRICAL ENERGY
    • H01M8/00Fuel cells; Manufacture thereof
    • H01M8/10Fuel cells with solid electrolytes
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/30Hydrogen technology
    • Y02E60/50Fuel cells
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P70/00Climate change mitigation technologies in the production process for final industrial or consumer products
    • Y02P70/50Manufacturing or production processes characterised by the final manufactured product

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Materials Engineering (AREA)
  • Electrochemistry (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Thermal Sciences (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Manufacturing & Machinery (AREA)
  • Inorganic Chemistry (AREA)
  • Catalysts (AREA)
  • Inert Electrodes (AREA)
  • Fuel Cell (AREA)

Description

本発明は、含窒素カーボンアロイの製造方法、含窒素カーボンアロイ及び燃料電池触媒に関する。具体的には、本発明は、含窒素有機化合物と、多孔性骨格材料と、無機金属塩又は有機金属錯体とを含む前駆体を焼成する工程を含む含窒素カーボンアロイの製造方法に関する。さらに、本発明は、含窒素カーボンアロイ及び含窒素カーボンアロイを用いた燃料電池触媒に関する。
従来、白金(Pt)やパラジウム(Pd)等を用いる貴金属系触媒は、高い酸素還元活性を有する触媒として、例えば自動車や家庭用電熱併給システム等に使用される固体高分子電解質型燃料電池に用いられてきた。しかし、このような貴金属系触媒は高コストであるため、さらなる普及が難しくなっているのが現状である。このため、白金を大幅に低減した触媒や、白金を使用することなく形成された触媒の技術開発が進められている。
白金を使用することなく形成され得る触媒としては、炭素触媒が知られており、含窒素有機化合物を熱処理することによって得られる含窒素カーボンアロイは炭素触媒として用いられている。例えば、特許文献1には、s-トリアジン環誘導体と金属との複合体からなる固体高分子型燃料電池用触媒が開示されている。また、特許文献2には、分子量が60〜2000の含窒素複素環化合物と無機金属又は無機金属塩を焼成して製造される含窒素カーボンアロイ触媒が開示されている。
また、特許文献3及び4には、含窒素複素環化合物、金属錯体及びMOF(Metal−Organic framworks)等の多孔性材料の混合物を焼成して製造される含窒素カーボンアロイ触媒が開示されている。特許文献3では、含窒素複素環化合物としてTPTZ(2,4,6−トリ(2−ピリジル)−1,3,5−トリアジン)が用いられている。なお、特許文献3では、含窒素有機化合物として、フタロニトリル系化合物やピリジン系化合物が列挙されているが、これらの化合物は非限定的な例として列挙されているのみである。また、特許文献4では、含窒素複素環化合物として6−(2−ピリジル)−1,3,5−トリアジン−2,4−ジアミンが列挙されている。
特開2007−175578号公報 特開2011−225431号公報 米国特許公開US2014/0099571号公報 米国特許公開US2011/0294658号公報
上述したように、含窒素有機化合物を含む含窒素カーボンアロイ触媒は、白金を用いなくとも触媒活性を発揮することができる。しかしながら、近年の燃料電池等の用途では、さらに高い酸素還元活性を有することが求められており、従来の炭素触媒が有する酸素還元活性では不十分な場合があった。このため、より高い酸素還元活性を発揮できる含窒素カーボンアロイを製造することが求められていた。
また、従来の含窒素化合物を用いた含窒素カーボンアロイの製造方法においては、その収率が悪く、生産性に関してさらなる改善が求められていた。
そこで本発明者は、このような従来技術の課題を解決するために、より高い酸素還元活性を有する含窒素カーボンアロイであって、生産効率の高い含窒素カーボンアロイを製造することを目的として検討を進めた。
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者は、特定の構造を有する含窒素有機化合物と、共有結合性有機骨格材料及び金属有機骨格材料から選択される少なくとも一種と、無機金属塩又は有機金属錯体から選択される少なくとも一種とを含む前駆体を焼成して、含窒素カーボンアロイを製造することにより、酸素還元活性が十分に高められた含窒素カーボンアロイが得られることを見出した。さらに、本発明者は、このように製造された含窒素カーボンアロイは生産効率が高く、十分な収量が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
[1]下記一般式(1)で表される含窒素有機化合物、含窒素有機化合物の互変異性体、含窒素有機化合物の塩及び含窒素有機化合物の水和物から選択される少なくとも一種と、共有結合性有機骨格材料及び金属有機骨格材料から選択される少なくとも一種と、無機金属塩及び有機金属錯体から選択される少なくとも一種とを含む前駆体を焼成する工程を含む含窒素カーボンアロイの製造方法;
Figure 0006454350
一般式(1)中、Qは、少なくとも1つの5〜7員環の芳香族環又は5〜7員環の複素芳香族環から構成される原子団を表し、Rは、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、又は下記一般式(2)〜(5)で表される置換基を表し、Qが含窒素複素芳香族環を含まない場合は、少なくとも1つのRは下記一般式(2)〜(5)で表される置換基を表す。nは1〜4の整数を表す。
Figure 0006454350
一般式(2)中、*はQへの結合部を表す。
Figure 0006454350
一般式(3)〜(5)中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換のヘテロ環基を表し、RとR、RとR、RとRは互いに結合して環を構成してもよい。*はQへの結合部を表す。
[2]一般式(1)において、Qは、5〜7員環の芳香族環又は5〜7員環の複素芳香族環である[1]に記載の含窒素カーボンアロイの製造方法。
[3]一般式(1)において、Qは、ベンゼン環、ピリジン環又はイミダゾール環である[1]又は[2]に記載の含窒素カーボンアロイの製造方法。
[4]一般式(1)において、Qは、5〜7員環の含窒素複素芳香族環である[1]又は[2]に記載の含窒素カーボンアロイの製造方法。
[5]一般式(1)において、Qは、5〜7員環の含窒素複素芳香族環であり、Rは置換もしくは無置換のアルキル基、又は一般式(2)で表される置換基を表す[4]に記載の含窒素カーボンアロイの製造方法。
[6]金属有機骨格材料は、ゼオライト型イミダゾール骨格材料である[1]〜[5]のいずれかに記載の含窒素カーボンアロイの製造方法。
[7]無機金属塩は、無機金属塩化物である[1]〜[6]のいずれかに記載の含窒素カーボンアロイの製造方法。
[8]無機金属塩の金属種が、Feである[1]〜[7]のいずれかに記載の含窒素カーボンアロイの製造方法。
[9]無機金属塩は、含水塩である[1]〜[8]のいずれかに記載の含窒素カーボンアロイの製造方法。
[10]有機金属錯体は、金属アセタート錯体、β−ジケトン金属錯体、及びサレン錯体から選択される少なくとも一種である[1]〜[9]のいずれかに記載の含窒素カーボンアロイの製造方法。
[11]有機金属錯体は、アセチルアセトン鉄(II)錯体である[1]〜[10]のいずれかに記載の含窒素カーボンアロイの製造方法。
[12]有機金属錯体は、鉄サレン錯体である[1]〜[10]のいずれかに記載の含窒素カーボンアロイの製造方法。
[13]焼成する工程は、前駆体を400℃以上で焼成する工程である[1]〜[12]のいずれかに記載の含窒素カーボンアロイの製造方法。
[14]焼成する工程は、前駆体を700〜1050℃で焼成する工程である[1]〜[13]のいずれかに記載の含窒素カーボンアロイの製造方法。
[15]焼成する工程は、前駆体を700〜1050℃で1秒〜100時間保持する工程を含む[14]に記載の含窒素カーボンアロイの製造方法。
[16]焼成する工程の前に、前駆体を粉砕する工程をさらに含む[1]〜[15]のいずれかに記載の含窒素カーボンアロイの製造方法。
[17]焼成する工程の後に、焼成された含窒素カーボンアロイを粉砕する工程と、再焼成する工程とをさらに含む[1]〜[16]のいずれかに記載の含窒素カーボンアロイの製造方法。
[18]再焼成する工程は、1000〜1500℃で焼成する工程である[17]に記載の含窒素カーボンアロイの製造方法。
[19]再焼成する工程の前に、脱気及び窒素置換する工程をさらに含む[17]又は[18]に記載の含窒素カーボンアロイの製造方法。
[20][1]〜[19]のいずれかに記載の方法で製造された含窒素カーボンアロイ。
[21][20]に記載の含窒素カーボンアロイを用いた燃料電池触媒。
本発明の製造方法によれば、十分に高い酸素還元活性を有する含窒素カーボンアロイを得ることができる。このため、本発明の製造方法により得られた含窒素カーボンアロイは、炭素触媒として使用することができ、このような炭素触媒は、燃料電池や環境触媒に好ましく用いられる。
また、本発明の製造方法によれば、含窒素カーボンアロイの収量を高めることができ、生産性を高めることができる。
本発明の含窒素カーボンアロイを用いた燃料電池の概略構成図である。 本発明の含窒素カーボンアロイを用いた電気二重層キャパシタの概略構成図である。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本発明における置換基とは、置換可能な基であればよく、例えばハロゲン原子(フッ素原子、クロル原子、臭素原子又は沃素原子)、ヒドロキシル基、シアノ基、脂肪族基(アラルキル基、シクロアルキル基、活性メチン基等を含む)、アリール基(置換する位置は問わない)、ヘテロ環基(置換する位置は問わない)、アシル基、脂肪族オキシ基(アルコキシ基又は、アルキレンオキシ基、エチレンオキシ基若しくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、脂肪族カルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロ環カルボニル基、脂肪族オキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルホニルカルバモイル基、アシルカルバモイル基、スルファモイルカルバモイル基、チオカルバモイル基、脂肪族カルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、ヘテロ環カルボニルオキシ基、アミノ基、脂肪族アミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、アシルアミノ基、脂肪族オキシアミノ基、アリールオキシアミノ基、スルファモイルアミノ基、アシルスルファモイルアミノ基、オキサモイルアミノ基、脂肪族オキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、ヘテロ環オキシカルボニルアミノ基、カルバモイルアミノ基、メルカプト基、脂肪族チオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、脂肪族スルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロ環スルホニル基、スルファモイル基、脂肪族スルホニルウレイド基、アリールスルホニルウレイド基、ヘテロ環スルホニルウレイド基、脂肪族スルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、ヘテロ環スルホニルオキシ基、スルファモイル基、脂肪族スルファモイル基、アリールスルファモイル基、ヘテロ環スルファモイル基、アシルスルファモイル基、スルフォニルスルファモイル基又はその塩、カルバモイルスルファモイル基、スルホンアミド基、脂肪族ウレイド基、アリールウレイド基、ヘテロ環ウレイド基、脂肪族スルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、ヘテロ環スルホンアミド基、脂肪族スルフィニル基、アリールスルフィニル基、ニトロ基、ニトロソ基、ジアゾ基、アゾ基、ヒドラジノ基、ジ脂肪族オキシホスフィニル基、ジアリールオキシホスフィニル基、シリル基(例えばトリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)、シリルオキシ基(例えばトリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、ボロノ基、イオン性親水性基(例えば、カルボキシル基、スルホ基、ホスホノ基及び4級アンモニウム基)等を挙げることができる。これらの置換基群は更に置換されてもよく、更なる置換基としては、以上に説明した置換基から選択される基を挙げることができる。
本発明は、特定の構造を有する含窒素有機化合物、含窒素有機化合物の互変異性体、含窒素有機化合物の塩及び含窒素有機化合物の水和物から選択される少なくとも一種と、共有結合性有機骨格材料及び金属有機骨格材料から選択される少なくとも一種と、無機金属塩及び有機金属錯体から選択される少なくとも一種とを含む前駆体を焼成する工程を含む含窒素カーボンアロイの製造方法に関する。
本発明では、焼成により含窒素カーボンアロイを得る際、後述する構造を有する含窒素有機化合物と無機金属塩又は有機金属錯体が、多孔性材料(MOF(Metal−organic framework)やCOF(Covalent organic framework)等)の反応空間場で、細孔の形態を鋳型に、無機金属塩又は有機金属錯体に含窒素有機化合物が配位して、多孔性を有する含窒素カーボンアロイを形成する。これらの化合物をさらに昇温加熱することで含窒素有機化合物の中心の原子団が熱分解して、酸素還元反応(ORR)活性部位を形成し、高活性な含窒素カーボンアロイを得ることができる。本発明では、一般式(1)におけるQを5〜7員環の芳香族環又は5〜7員環の複素芳香族環から構成される原子団から構成することにより、原子団の熱分解を容易に進行させることができる。これにより、酸素還元反応(ORR)活性部位の形成を促進することができ、より高活性な含窒素カーボンアロイを得ることができる。
以下では、含窒素有機化合物、共有結合性有機骨格材料及び金属有機骨格材料、無機金属塩及び有機金属錯体について詳細に説明する。
(含窒素有機化合物)
本発明の含窒素カーボンアロイの製造方法で用いる含窒素有機化合物は、一般式(1)で表わされる。なお、本発明の含窒素カーボンアロイの製造方法には、一般式(1)で表わされる含窒素有機化合物の互変異性体、含窒素有機化合物の塩又は含窒素有機化合物の水和物が用いられてもよい。なお、一般式(1)で表わされる含窒素有機化合物、含窒素有機化合物の互変異性体、含窒素有機化合物の塩及び含窒素有機化合物の水和物はいずれか一種のみが用いられてもよく、二種以上が用いられてもよい。
Figure 0006454350
一般式(1)中、Qは、少なくとも1つの5〜7員環の芳香族環又は5〜7員環の複素芳香族環から構成される原子団を表し、Rは、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、又は下記一般式(2)〜(5)で表される置換基を表し、Qが含窒素複素芳香族環を含まない場合は、少なくとも1つのRは下記一般式(2)〜(5)で表される置換基を表す。nは1〜4の整数を表す。
Figure 0006454350
一般式(2)中、*はQへの結合部を表す。
Figure 0006454350
一般式(3)〜(5)中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換のヘテロ環基を表し、RとR、RとR、RとRは互いに結合して環を構成してもよい。*はQへの結合部を表す。
含窒素有機化合物は、一般式(1)で表される有機化合物であって、分子内に炭素原子と窒素原子を少なくとも有する有機化合物である。このような含窒素有機化合物と他の材料を焼成することによって得られる含窒素カーボンアロイには、炭素原子、窒素原子及び金属からなる高酸素還元活性を有する活性点が生成すると考えられる。
一般式(1)において、Qは少なくとも1つの5〜7員環の芳香族環又は5〜7員環の複素芳香族環から構成される原子団を表す。Qは、5〜7員環の芳香族環又は5〜7員環の複素芳香族環のみから構成される原子団であることが好ましく、5〜7員環の芳香族環又は5〜7員環の複素芳香族環であることがより好ましい。なお、Qは、5〜7員環の芳香族環又は5〜7員環の複素芳香族環から構成される縮合環であってもよく、5〜7員環の芳香族環又は5〜7員環の複素芳香族環が直接連結した原子団であってもよい。すなわち、原子団は少なくとも1つの5〜7員環の芳香族環又は5〜7員環の複素芳香族環から構成されていればよく、原子団には、5〜7員環の芳香族環又は5〜7員環の複素芳香族環、5〜7員環の芳香族環又は5〜7員環の複素芳香族環から構成される縮合環、及び、5〜7員環の芳香族環又は5〜7員環の複素芳香族環が直接連結した連結環が含まれる。
一般式(1)において、Qは5〜7員環の芳香族環又は5〜7員環の複素芳香族環であることが好ましく、5あるいは6員環の芳香族環又は5あるいは6員環の複素芳香族環であることがより好ましい。また、Qは、ベンゼン環、ピリジン環又はイミダゾール環であることがより好ましい。なお、Qは不飽和結合を有することで、後述する各種の相互作用によりカーボンアロイ骨格を形成しやすくなる。
一般式(1)中、Qが表す5あるいは6員環の芳香族環又は5あるいは6員環の複素芳香族環は、下記一般式(A−1)〜(A−20)で表される構造であることが好ましい。
Figure 0006454350
Figure 0006454350
Figure 0006454350
一般式(A−1)〜(A−20)中、R51〜R56のうち少なくとも一つは一般式(1)におけるRとの連結部を表し、R51〜R56のうちRとの連結部以外の基はそれぞれ独立に水素原子、又は置換基を表し、隣接する置換基は互いに結合して5又は6員環を形成してもよい。
51〜R56で表される置換基は、置換可能な基であれば制限されないが、好ましくは脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシル基、アシル基、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、置換基を有していてもよいウレイド基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、脂肪族オキシ基、脂肪族チオ基、シアノ基又はスルホニル基等であり、より好ましくはハロゲン原子(フッ素原子、クロル原子、臭素原子又は沃素原子)、脂肪族基、アリール基、ヘテロ環基、ヒドロキシル基、脂肪族オキシカルボニル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、置換基を有していてもよいウレイド基、脂肪族オキシ基等である。中でも、R51〜R56で表される置換基は、アルキル基(メチル基、エチル基、t−ブチル基など)、アリール基(フェニル基、ナフチル基など)、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子、フッ素原子など)およびヘテロアリール基(ピリジル基など)であることが好ましい。
51〜R56のうちRとの連結部以外の基は水素原子であることがより好ましい。R51〜R56が表す水素原子の数は、1〜4個であることが好ましく、2〜4個であることがより好ましい。
一般式(1)において、Qは5〜7員環の含窒素複素芳香族環であることが好ましく、5又は6員環の含窒素複素芳香族環であることがより好ましい。なお、含窒素複素芳香族環には、窒素原子の他にヘテロ原子が含まれていてもよいが、ヘテロ原子として窒素原子のみが含まれていることが好ましい。これにより、含窒素有機化合物の結晶構造に由来したエッジ部に規則正しく窒素が配列するため、遊離した金属イオンが配位することができる。
一般式(1)におけるRは、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、又は下記一般式(2)〜(5)で表される置換基を表し、Qが含窒素複素芳香族環を含まない場合は、少なくとも1つのRは下記一般式(2)〜(5)で表される置換基を表す。
ここで、Qが含窒素複素芳香族環を含まない場合とは、Qが5〜7員環の芳香族環から構成される原子団の場合、又はQが5〜7員環の複素芳香族環から構成される原子団であって、窒素原子を環構成原子としない複素芳香族環から構成される原子団の場合のことをいう。
Figure 0006454350
一般式(2)中、*はQへの結合部を表す。
Figure 0006454350
一般式(3)〜(5)中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換のヘテロ環基を表し、RとR、RとR、RとRは互いに結合して環を構成してもよい。*はQへの結合部を表す。
Qが含窒素複素芳香族環を含まない場合は、少なくとも1つのRは下記一般式(2)〜(5)で表される置換基を表す。この場合、含窒素有機化合物に一般式(2)〜(5)で表される構造が含まれることにより、分解生成物中にCN結合が生成し、このCNと金属とが相互作用することによって、炭素化まで窒素が保持される。このため、カーボンアロイのグラフェン内に窒素が導入されやすくなり、酸素還元反応活性を高めることができるため好ましい。
また、Qが5〜7員環の複素芳香族環から構成される原子団であって、窒素原子を環構成原子とする複素芳香族環から構成される原子団の場合は、Rは、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、又は下記一般式(2)〜(5)で表される置換基を表す。この場合、複素芳香族環に窒素が導入されており、カーボンアロイを構成する含窒素グラフェン骨格中に、窒素原子が均一に導入され、酸素還元反応活性を高めることができるためより好ましい。
一般式(3)〜(5)中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換のヘテロ環基を表し、RとR、RとR、RとRは互いに結合して環を構成してもよい。R〜Rが置換基を有する基である場合、置換基としては上述した具体例を挙げることができる。
一般式(3)〜(5)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
及びRはそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
及びRはそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基であることが好ましい。
また、RとR、RとR、RとRは互いに結合して環を形成してもよい。RとR、RとR、RとRが互いに結合して形成する環としては、例えばベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピリダジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、フラン環、チオフェン環、セレノフェン環、シロール環、ゲルモール環、ホスホール環、ピロリドン環等が挙げられる。中でも、RとRが互いに結合して形成する環としては、ピロリドン環、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピリダジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環が好ましく、ピロール環またはピロリドン環がより好ましい。また、RとR、RとR、RとRが互いに結合して形成された環は、さらに置換基を有していてもよい。
一般式(1)において、Qが含窒素複素芳香族環を含まない場合は、Rの少なくとも1つは一般式(2)で表される置換基であることが好ましい。
一般式(1)において、Qは、5〜7員環の含窒素複素芳香族環であることが好ましく、この場合、Rの少なくとも1つは置換もしくは無置換のアルキル基、又は一般式(2)で表される置換基であることが好ましい。
なお、Rの少なくとも1つが一般式(4)で表される置換基である場合、含窒素有機化合物としては、特開2011−225431号公報中において一般式(1)で表されている化合物を挙げることができる。
一般式(1)において、nは1〜4の整数を表し、1〜3の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。
一般式(1)において、Qは少なくとも1つの5〜7員環の芳香族環又は5〜7員環の複素芳香族環から構成される原子団を表し、この原子団には、5〜7員環の芳香族環又は5〜7員環の複素芳香族環が直接連結した連結環が含まれる。すなわち、一般式(1)で表される含窒素有機化合物は、一般式(7)又は(8)が単結合で連結した2量体以上の多量体であってもよい。
Figure 0006454350
一般式(7)及び(8)中、n1は1〜5の整数を表し、n2は1〜6の整数を表す。n1は1〜4であることが好ましく、2〜4であることが好ましく、2であることがより好ましい。n2は1〜4であることが好ましく、2〜4であることが好ましく、2であることがより好ましい。
なお、一般式(7)または(8)で表される化合物は、シアノ基以外の置換基を有していてもよいが、シアノ基のみを有することが好ましい。
一般式(1)で表される含窒素有機化合物を以下の具体的に例示するが、本発明はこれらに限定されない。
Figure 0006454350
本発明で用いられる含窒素有機化合物が、一般式(1)で表される含窒素有機化合物の塩である場合、一般式(1)で表される含窒素有機化合物の塩は、一般式(9)で表される。
[Q] n+[Y] m− 一般式(9)
一般式(9)中、Qn+は、例えば、下記一般式(A−21)〜(A−24)で表される有機カチオンを表し、Ym−はm価のアニオンを表し、n及びmはそれぞれ独立に自然数を表し、1〜5の整数であることが好ましく、1〜3の整数であることがより好ましく、1または2であることが特に好ましく、1であることがより特に好ましい。
Figure 0006454350
一般式(A−21)〜(A−24)中、R61〜R63はそれぞれ独立に水素原子又はアルキル基を表す。なお、R61〜R63のアルキル基は置換基を有していてもよく、置換基としては、上述した置換基を列挙することができ、シアノ基やビニル基を好ましい例として挙げることができる。
61〜R63のアルキル基としては、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、アリル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が特に好ましい。R61〜R63は同一であっても異なっていてもよいが、分子中にR61〜R63で表される置換基を2以上有する場合は、少なくとも2種以上のアルキル基を含むことが好ましく、その場合はR61〜R63のいずれか一方がメチル基を表し、もう一方がエチル基、プロピル基およびブチル基のいずれかを表すことが好ましい。
一般式(9)における[Y] m−としては、ハロゲンアニオン(Cl,Br、F、I)、BF 、PF 、イミドアニオン[N(SOCF 、N(COCF)(SOCF、N(CN) など]、カルバニオン[C(CN) など]、R21OSO 、R21SO 、FeCl 、CoCl 2−などが挙げられる。
21はそれぞれ独立にアルキル基を表し、炭素数1〜8のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜2のアルキル基であることがより好ましい。さらにR21はアルキル基の置換基として、フッ素が好ましく、トリフルオロアルキル基であることがより好ましく、トリフルオロメチル基が特に好ましい。
一般式(1)で表される含窒素有機化合物の塩を以下の具体的に例示するが、本発明はこれらに限定されない。
Figure 0006454350
含窒素有機化合物は、分子が規則的に配列しやすいという結晶性を有する観点から、含窒素結晶性有機化合物であることが好ましい。但し、含窒素結晶性有機化合物は含窒素金属錯体以外であることが好ましい。含窒素金属錯体は、精製が困難であり、含窒素配位子と金属錯体の組成比が一定であるため、焼成時に分解した際、含窒素配位子の分解速度と配位金属錯体の気化速度の制御ができず、目的とする含窒素カーボンアロイを得ることが難しい。含窒素金属錯体と低分子有機化合物とを混ぜ合わせたとしても、含窒素金属錯体結晶が分解し、金属が直接還元を被るため、生成した近接金属同士が凝集結晶化しやすくなる。酸洗浄により金属が除去されてしまうため、得られる含窒素カーボンアロイが不均一になるため求める機能が低減する恐れがある。
含窒素結晶性有機化合物は、π−π相互作用、配位結合、電荷移動相互作用、及び水素結合より選択される2つ以上の結合又は相互作用により結晶構造を形成していることが好ましい。結晶構造を形成した低分子化合物を用いることにより分子間相互作用を向上させて、含窒素カーボンアロイを得る際の焼成時の気化を抑制することができる。
ここで言う結晶構造とは結晶中の分子の配列様式・配置様式のことをいう。言い換えると、結晶構造は単位格子の繰り返し構造からなり、分子はこの単位胞内の任意の部位に配置して、配向をしている。また、結晶中、分子は均一な様体をなしている。すなわち、結晶中の官能基の配置が均一であるため、分子の各相互作用は、単位胞内もしくは単位胞外で同一である。例えば、積層構造を有する含窒素有機化合物の場合、芳香族環、複素環、縮合多環、縮合複素多環、不飽和基(C≡N基、ビニル基、アリル基、アセチレン基)等は相互作用(例えば芳香族環はface−to−faceでπ−π相互作用(π−πスタック))が生じる。これらの環や基における不飽和結合由来の炭素のSP軌道もしくはSP軌道が分子間で規則正しく等間隔で重なることで積層し、積層カラム構造を形成する。
さらにこの積層カラム構造において、隣接する積層カラム間は水素結合またはファンデルワールス相互作用により、分子間距離が規定された均一な構造を有する。このため、結晶内の熱伝達が容易に達成される効果を有する。
また、含窒素有機化合物は低分子化合物でありながら結晶性を有し、熱に対してフォノン(量子化された格子振動)により振動緩和され耐熱性を有することが好ましい。そのため分解温度が炭素化温度まで保持され、分解物の気化が低減されて炭素化され、カーボンアロイ骨格が形成される。
また、結晶性の化合物は焼成時に配向が制御できることから、均一な炭素材料となるため好ましい。
さらに、含窒素有機化合物は、融点が25℃以上であることが好ましい。融点が25℃以上であると、焼成時に耐熱性に寄与する空気層が存在し、沸騰もしくは突沸を抑制することができ、良好な炭素材料を得ることができる。
含窒素有機化合物は、分子量が60〜2000であることが好ましく、100〜1500であることがより好ましく、130〜1000であることがさらに好ましい。分子量を上記範囲とすることで、焼成前の精製が容易となる。
含窒素有機化合物中の金属含率は10ppm以下であることが好ましい。含窒素有機化合物中の金属含率は後述する無機金属塩以外の含有量をいう。
含窒素有機化合物の窒素含率は、0.1〜55質量%であることが好ましく、1〜30質量%であることがより好ましく、4〜20質量%であることがさらに好ましい。上記範囲内で窒素原子を含有する含窒素有機化合物を使用することにより、別途窒素源となる化合物を導入する必要がなく、結晶エッジに規則正しく窒素原子と金属が均一に位置して、窒素と金属が相互作用しやすくなる。これにより窒素原子と金属の組成比がより高酸素還元活性を有する組成比となり得る。
また、含窒素有機化合物は、窒素雰囲気下で400℃におけるΔTGが−95%〜−0.1%である難揮発性化合物であることが好ましく、−95%〜−1%である難揮発性化合物であることがより好ましく、−90%〜−5%であることがさらに好ましい。含窒素有機化合物は、焼成時に気化しないで、炭素化する難揮発性化合物であることが好ましい。ここで、ΔTGは含窒素有機化合物および無機金属塩との混合物のTG−DTA測定(示差熱−熱重量同時測定)において、窒素を毎分100mL流通下、30℃から1000℃まで毎分10℃で昇温した際、室温(30℃)における質量を基準にした400℃での質量減少率を指す。
本発明では、一般式(1)で表される含窒素有機化合物、含窒素有機化合物の互変異性体、含窒素有機化合物の塩及び含窒素有機化合物の水和物から選択される少なくとも一種は、前駆体の全質量に対して0.5質量%を超えて含まれることが好ましく、1〜95質量%含まれることがより好ましく、5〜70質量%含まれることがさらに好ましい。含窒素有機化合物を上記範囲内含有させることにより、より高い酸素還元活性を有するカーボンアロイを生成し得る。
含窒素有機化合物は、一般式(1)で表される構造の顔料であることも好ましい。顔料は分子間でπ−π相互作用により、積層カラム構造を有する。積層カラム間には水素結合又はファンデルワールス相互作用が生じるため、積層カラム構造は、分子間距離が規定された均一な構造を有する。このため、結晶内の熱伝達が容易に達成される効果を有する。また、顔料は、低分子化合物でありながら結晶性を有し、熱に対してフォノン(量子化された格子振動)により振動緩和されるため、耐熱性を有する。このため分解温度が炭素化温度まで保持され、分解物の気化が低減されて炭素化が達成されるという効果を有する。
顔料としては、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、キナクリドン系顔料、オキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、キノフタロン系顔料、および上記顔料をラテント化したラテント顔料、また染料を金属イオンで顔料化したレーキ顔料等が好ましく、ジケトピロロピロール系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、および上記顔料をラテント化したラテント顔料がより好ましい。これらの顔料を焼成すると分解生成するベンゾニトリル(Ph−CN)骨格が反応活性種となり、より高い酸素還元反応活性を有するカーボンアロイ触媒が生成する。また金属種(M)が共存することによりPh−CN…Mの錯体を形成し、更に高酸素還元反応活性なカーボンアロイが生成する。
(共有結合性有機骨格材料及び金属有機骨格材料)
本発明の含窒素カーボンアロイの製造方法にける前駆体の調製には、共有結合性有機骨格材料(COF:Covalent organic framework)及び金属有機骨格材料(MOF:Metal−organic framework)から選択される少なくとも一種が用いられる。共有結合性有機骨格材料(COF)及び金属有機骨格材料(MOF)は多孔性材料であり、構造内部には数nmの細孔が無数に存在している。多孔性材料は、内部に細孔を有する構造体であればよく、有機骨格材料又は金属有機骨格材料などを好ましく用いることができる。
本発明で用いる多孔性材料の細孔径は0.1〜100nmであることが好ましく、0.2〜10nmであることがより好ましい。多孔性材料は、細孔径が2nm以下のマイクロポア、2nm〜50nmのメソポア、50nm以上マクロポアのいずれか1つ以上を有しているものが好ましく、メソポアを有しているものがより好ましい。細孔径をこの範囲とした場合、作用点の数が多くなり、生成した水が排出しやすくなるため好ましい。また、多孔性材料の内部空孔に細孔容積を有し、酸素と相互作用しやすくなるため好ましい。
本発明では、共有結合性有機骨格材料(COF)及び金属有機骨格材料(MOF)を添加することにより、添加した材料の細孔の内部で、無機金属塩又は有機金属錯体と含窒素有機化合物とが配位し、細孔の形態を鋳型とした形で多孔性含窒素カーボンアロイを形成し得る。
本発明では、共有結合性有機骨格材料及び金属有機骨格材料から選択される少なくとも一種は、前駆体の全質量に対して5質量%を超えて含まれることが好ましく、10〜95質量%含まれることがより好ましく、20〜70質量%含まれることがさらに好ましい。共有結合性有機骨格材料及び金属有機骨格材料から選択される少なくとも一種を上記範囲内含有させることにより、より高い酸素還元活性を有するカーボンアロイを生成し得る。
共有結合性有機骨格材料(COF)は、有機骨格のみを利用した結晶性の多孔性構造を有する材料である。多孔性構造は、共有結合により結合した有機化合物の二次元又は三次元ネットワークから形成されている。共有結合性有機骨格材料(COF)は、少なくとも1つの炭素以外の元素の原子、例えば、水素、酸素、窒素、ケイ素、リン、セレン、フッ素、ホウ素又は硫黄を含むものであることが好ましい。
共有結合性有機骨格材料(COF)としては、特に特定されないが、例えば、Science,2005,310,1166.J.Am.Chem.Soc.,2007,129,12914.,Science,2007,316,268.、J.Am.Chem.Soc.,2009,131,4570.、Chem.Matter,2006,18,5296.,Angew.Chem.,Int.Ed.,2008,47,8826.、米国特許公開US2006/0154807 A1号公報、特表2010−516869号公報に掲載されている共有結合性有機骨格材料(COF)が好適に用いられる。
金属有機骨格材料(MOF)は、金属イオンと有機物の配位結合を利用した多孔性構造を有する材料である。金属有機骨格材料(MOF)においては、少なくとも1種の金属イオンに配位結合した有機化合物が多孔性構造を形成する。金属有機骨格材料(MOF)を構成する金属イオンは周期表のほとんどすべての金属で可能であるが、中でも、Co2+、Ni2+、Cu2+、Fe2+、Fe3+又はZn2+であることが好ましく、Zn2+であることがより好ましい。金属イオンと配位結合を形成する有機物としては、3−ピリジルトリアジン、4−ピリジルトリアジン、アルキルイミダゾール、ビピリジン、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、又は1,3,5−ベンゼントリカルボン酸であることが好ましく、3−ピリジルトリアジン、4−ピリジルトリアジン、アルキルイミダゾール、又はビピリジンであることがさらに好ましく、3−ピリジルトリアジン、4−ピリジルトリアジン、又はアルキルイミダゾールであることが特に好ましい。中でも、金属有機骨格材料(MOF)は、等網目状金属有機骨格材料(IRMOF)、ゼオライト型イミダゾール骨格材料(ZIF)であることが特に好ましい。
金属イオンは、金属有機骨格材料(MOF)のコアとなり、コアは連結リガンド又は連結部分を用いて連結される。ここで、コアとは、骨格中に見いだされる繰り返し単位(単数または複数)を指す。このような骨格は均一な繰り返しコア構造又は不均一な繰り返しコア構造を含んでもよい。コアは金属または金属クラスターおよび連結部分を含み、互いに連結された複数のコアにより骨格が規定される。なお、ここで、金属クラスターとは、2個以上の金属原子が結合したものである。
連結部分とは、連結クラスターを介して、それぞれ金属または複数の金属を結合する単座または多座化合物を指す。一般に、連結部分は、炭素数1〜20の置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のシクロアルキル基、置換または無置換のアリール基を含む。また、連結部分には、炭素原子の他に窒素、酸素、硫黄、ホウ素、リン、ケイ素またはアルミニウムを含んでもよい。
連結クラスターとは、連結部分構造と金属との間、又は連結部分構造と別の連結部分構造との間に結合を形成することができる原子を含む、縮合可能な1個以上の反応種を指す。このような種の例は、ホウ素、酸素、炭素、窒素、およびリン原子からなる群より選択されることが好ましい。連結クラスターは、例えば、−COOH、−CSH、−NO、−SOH、−Si(OH)、−Ge(OH)、−Sn(OH)、−Si(SH)、−Ge(SH)、−Sn(SH)、−POH、−AsOH、−AsOH、−P(SH)、−As(SH)、−CH(RSH)、−C(RSH)、−CH(RNH、−C(RNH、−CH(ROH)、−C(ROH)、−CH(RCN)、−C(RCN)、−CH(SH)、−C(SH)、−CH(NH、−C(NH、−CH(OH)、−C(OH)、−CH(CN)又は−C(CN)を含んでもよい。なお、上記のRは炭素数1〜20のアルキル基、またはアリール基である。
金属有機骨格材料(MOF)としては、例えば、米国特許第5648508号公報、米国特許第7196210号公報、欧州特許公開EP0790253 A2号公報、M.O’Keeffeら、J.Sol.State Chem.,152(2000)、3〜20頁、H.Liら、Nature402,(1999)、276頁、M.Eddaudiら,Topics、in、Catalysis 9,(1999),105〜111頁、B.Chenら,Science 291,(2001),1021〜1023頁、ドイツ特許公開DE10111230 A1号公報、欧州特許公開EP1785428 A1号公報、国際公開WO2007/054581号公報、国際公開WO2005/049892号公報及び国際公開WO2007/023134号公報に記載されている材料を用いることができる。中でも、ZIF−8(Zn(2−MethylImidazole))が好ましい。
Figure 0006454350
ZIF−8
金属有機骨格材料(MOF)としては、多孔性構造が無限に拡がらない多面体の構造を有する制限骨格材料を用いてもよい。このような材料は有機化合物を特別に選択することで形成される。例えば、A.C.Sudikら,J.Am.Chem.Soc.127(2005),7110−7118には、このような特定の骨格材料が記載され、特に金属有機多面体(MOP)と呼ばれている。本発明では、このような金属有機多面体(MOP)も好ましく用いられる。
(無機金属塩及び有機金属錯体)
<無機金属塩>
本発明の含窒素カーボンアロイの製造方法にける前駆体の調製には、無機金属塩及び有機金属錯体から選択される少なくとも一種が用いられる。無機金属塩としては、特に限定はされないが、水酸化物、酸化物、窒化物、亜硫酸化物、硫化物、スルホン化物、カルボニル化物、硝酸化物、亜硝酸化物、ハロゲン化物等を用いることができる。好ましくは対イオンがハロゲンイオン、又は硝酸イオンである。対イオンがハロゲンイオン、硝酸イオン又は硫酸イオンであるハロゲン化物、又は硝酸化物であれば、加熱分解時に生成した炭素表面で炭素と結合し、比表面積を増大させることができるため好ましい。
本発明では、無機金属塩がハロゲン化物であることが好ましく、無機金属塩化物であることが特に好ましい。
また、無機金属塩は結晶水を含むことができ、無機金属塩は含水塩であることが好ましい。無機金属塩が結晶水を含むことにより熱伝導率が向上するため、均一に焼成可能になる点で好ましい。結晶水を含む無機金属塩としては、例えば、塩化コバルト(III)含水塩、塩化鉄(III)含水塩、塩化コバルト(II)含水塩、塩化鉄(II)含水塩を好適に使用することができる。
無機金属塩の金属種は、Fe、Co、Ni、MnおよびCrのうち少なくとも1種類であることが好ましく、FeまたはCoであることがより好ましく、Feであることがさらに好ましい。Fe、Co、Ni、Mn、Crの塩は、炭素触媒の触媒活性を向上させるナノサイズのシェル構造を形成することに優れ、その中でも特に、Co、Feは、ナノサイズのシェル構造を形成することに優れるため好ましい。また、炭素触媒に含有されたCo、Feは、炭素触媒中において触媒の酸素還元活性を向上させることができる。遷移金属として最も好ましくはFeである。Fe含有含窒素カーボンアロイは立上り電位が高く、反応電子数がCoよりも高く、燃料電池の耐久性を比較的向上させることができる。なお、炭素触媒の活性を阻害しない限り、遷移金属以外の元素(例えば、B、アルカリ金属(Na,K,Cs)、アルカリ土類(Mg,Ca,Ba)、鉛、スズ、インジウム、タリウム等)が1種類以上含まれてもよい。
なお、本発明では、焼成前の有機材料において、含窒素有機化合物と無機金属塩は均一分散させる必要がないという利点を有する。すなわち、含窒素有機化合物が焼成分解した際に、その分解生成物と無機金属塩等の気化物が接触していれば、酸素還元反応活性を有する活性種が形成すると考えられるため、室温での含窒素有機化合物と無機金属塩との混合状態にカーボンアロイの酸素還元反応活性は影響を受けない。
なお、無機金属塩の粒径は、直径0.001〜100μmであることが好ましい。より好ましくは0.01〜10μmである。無機金属塩の粒径をこの範囲内にすることで、含窒素有機化合物と均一に混合させることが可能となり、含窒素有機化合物が分解生成時に錯体を形成しやすくなる。
<有機金属錯体>
本発明の含窒素カーボンアロイの製造方法において、前駆体は無機金属塩及び有機金属錯体から選択される少なくとも一種を含む。前駆体に有機金属錯体を添加することにより、高いORR活性が得られることに加えて、高反応電子数を有するカーボンアロイ触媒を得ることができる。
有機金属錯体としては、基礎錯体工学研究会編、錯体化学−基礎と最新の話題−、講談社サイエンティフィク(1994)に記載されている化合物を例示することができ、具体的には金属イオンに配位子が配位した化合物を好ましく例示することができ、金属アセタート錯体、β−ジケトン金属錯体、及びサレン錯体から選択される少なくとも一種を好ましく用いることができる。また、有機金属錯体は、上述した金属錯体の誘導体であってもよい。有機金属錯体は、多様な配位子の配位数をとることができ、配位幾何異性体でもよいし、金属イオンの価数が異なってもよい。また、有機金属錯体は、金属−炭素結合を有する有機金属化合物でもよい。
金属イオンとして好ましいものは、Fe、Co、Ni、MnおよびCrのイオンである。配位子として好ましいものは、単座配位子(ハロゲン化物イオン、シアン化物イオン、アンモニア、ピリジン(py)、トリフェニルホスフィン、カルボン酸等)、二座配位子(エチレンジアミン(en)、β−ジケトナート(アセチルアセトナート(acac)、ピバロイルメタン(DPM)、ジイソブトキシメタン(DIBM)、イソブトキシピバロイルメタン(IBPM)、テトラメチルオクタジオン(TMOD))、トリフルオロアセチルアセトナート(TFA)、ビピリジン(bpy)、フェナントレン(phen)等)、多座配位子(エチレンジアミンテトラ酢酸イオン(edta))、N,N’−ビス(サリチリデン)エチレンジアミン(salen)等)である。
上述した金属錯体として用いることができるものとしては、β−ジケトン金属錯体(ビス(アセチルアセトナト)鉄(II)[Fe(acac)]、トリス(アセチルアセトナト)鉄(III)[Fe(acac)]、ビス(アセチルアセトナト)コバルト(II)[Co(acac)]、トリス(アセチルアセトナト)コバルト(III)[Co(acac)]、ビス(ジピバロイルメタン)鉄(II)[Fe(DPM)]、トリス(ジピバロイルメタン)鉄(III)[Fe(DPM)]、トリス(ジピバロイルメタン)コバルト(III)[Co(DPM)]、ビス(ジイソブトキシメタン)鉄(II)[Fe(DIBM)]、トリス(ジイソブトキシメタン)鉄(III)[Fe(DIBM)]、トリス(ジイソブトキシメタン)コバルト(III)[Co(DIBM)]、ビス(イソブトキシピバロイルメタン)鉄(II)[Fe(IBPM)]、トリス(イソブトキシピバロイルメタン)コバルト(III)[Co(IBPM)]、ビス(テトラメチルオクタジオン)鉄(II)[Fe(TMOD)])、トリス(テトラメチルオクタジオン)鉄(III)[Fe(TMOD)]、トリス(テトラメチルオクタジオン)コバルト(III)[Co(TMOD)])、トリス(1,10−フェナントロリナート)鉄(III)塩化物[Fe(phen)]Cl、トリス(1,10−フェナントロリナート)コバルト(III)塩化物[Co(phen)]Cl、N,N’−メチレンビス(サリチリデンアミナト)金属錯体および類縁体(サレン金属錯体)(N,N’−エチレンジアミンビス(サリチリデンアミナト)鉄(II)[Fe(salen)]、N,N’−エチレンジアミンビス(サリチリデンアミナト)鉄(III)塩化物[Fe(salen)Cl]、N,N‘−ビス(サリチリデン)−o−フェニレンヂアミノ鉄(II)[Fe(Saloph)]、N,N’−エチレンジアミンビス(サリチリデンアミナト)コバルト(II)[Co(salen)]、N,N’−エチレンジアミンビス(サリチリデンアミナト)コバルト(III)塩化物[Co(salen)Cl]、N,N’−ビス(サリチリデン)−o−フェニレンヂアミノコバルト(II)[Co(saloph)])、トリス(2,2’−ビピリジン)鉄(II)塩化物[Fe(bpy)]Cl、トリス(2,2’−ビピリジン)コバルト(II)塩化物[Co(bpy)]Cl、鉄フタロシアニン(MPc)及び酢酸鉄[Fe(OAc)]を挙げることができる。
その中でもβ−ジケトン金属錯体(ビス(アセチルアセトナト)鉄(II)[Fe(acac)]、トリス(アセチルアセトナト)鉄(III)[Fe(acac)]、ビス(ジピバロイルメタン)鉄(II)[Fe(DPM)]、ビス(ジイソブトキシメタン)鉄(II)[Fe(DIBM)]、ビス(イソブトキシピバロイルメタン)鉄(II)[Fe(IBPM)]、ビス(テトラメチルオクタジオン)鉄(II)[Fe(TMOD)])、N,N’−エチレンジアミンビス(サリチリデンアミナト)酸鉄(II)[Fe(salen)]、トリス(2,2’−ビピリジン)鉄(II)塩化物[Fe(bpy)]Cl、鉄フタロシアニン(MPc)、酢酸鉄[Fe(OAc)]、N,N’−エチレンジアミンビス(サリチリデンアミナト)鉄(II)[Fe(salen)]又はN,N’−エチレンジアミンビス(サリチリデンアミナト)コバルト(II)[Co(salen)]が好ましく、アセチルアセトン鉄(II)錯体であるビス(アセチルアセトナト)鉄(II)[Fe(acac)]、酢酸鉄[Fe(OAc)]又はN,N’−エチレンジアミンビス(サリチリデンアミナト)鉄(II)[Fe(salen)]がより好ましく用いられる。
(β−ジケトン金属錯体)
有機金属錯体としては、β−ジケトン金属錯体を含むことが好ましい。有機金属錯体としてβ−ジケトン金属錯体を単独で用いてもよく、β−ジケトン金属錯体と他の有機金属錯体を混合して用いてもよい。β−ジケトン金属錯体は、下記一般式(10)で表される化合物およびその互変異性体を示す。
Figure 0006454350
一般式(10)中、Mは金属を示し、RおよびRはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、また、Rは水素原子又は置換基を有していてもよい炭化水素基を示す。R、R、Rは、それぞれ互いに結合して環を形成していてもよい。nは0以上の整数を示し、mは1以上の整数を示す。この化合物においては、金属Mの原子又はイオンに対して、β−ジケトン又はそのイオンが配位又は結合している。
好ましい金属としては、Fe、Co、Ni、MnおよびCrを挙げることができ、より好ましくはFe、Coであり、さらに好ましくはFeである。
一般式(10)中、R、R、Rの置換基を有していてもよい炭化水素基における「炭化水素基」としては、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環式(ヘテロ環式)炭化水素基、およびこれらが複数個結合した基などが挙げられる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ヘキシル基などのアルキル基(C1−6アルキル基等);アリル基などのアルケニル基(C2−6アルケニル基等)などが挙げられる。脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基(3〜15員のシクロアルキル基等);シクロヘキセニル基などのシクロアルケニル基(3〜15員のシクロアルケニル基等);アダマンチル基などの橋かけ炭素環式基(炭素数6〜20程度の橋かけ炭素環式基等)などが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜20程度の芳香族炭化水素基(アリール基)などが挙げられる。複素環式(ヘテロ環式)炭化水素基としては、例えば、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基等の含窒素五員環炭化水素基;ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基の含窒素六員環炭化水素基;ピロリジジニル基、インドリジニル基、イソインドリル基、イソインインドリニル基、インドリル基、インダゾリル基、プリニル基、キノリジニル基、キノリニル基、ナフチリジニル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、シンノリニル基、プテリジニル基等の含窒素縮合二環系炭化水素基;カルバゾリル基、β−カルボリニル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、ペリミジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、アンチリジニル基等の含窒素縮合三環系炭化水素基;含酸素単環系、含酸素多環系、含硫黄系、含セレン・テルル環系炭化水素基などが挙げられる。
炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素、塩素、臭素原子などのハロゲン原子;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロピルオキシ、ブトキシ、イソブチルオキシ、t−ブチルオキシ基などのアルコキシ基(C1−4アルコキシ基等);ヒドロキシル基;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基(C1−4アルコキシ−カルボニル基等);アセチル、プロピオニル、ベンゾイル基などのアシル基(C1−10アシル基等);シアノ基;ニトロ基などが挙げられる。
一般式(10)中、R、R、Rが、それぞれ互いに結合して形成する環としては、例えば、シクロペンタン環、シクロペンテン環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環などの5〜15員のシクロアルカン環又はシクロアルケン環などが挙げられる。
一般式(10)におけるR、Rとしては、アルキル基(C1−6アルキル基等)、アルケニル基(C2−6アルケニル基等)、シクロアルキル基(3〜15員のシクロアルキル基等)、シクロアルケニル基(3〜15員のシクロアルケニル基等)、アリール基(C6−15アリール基等)、置換基を有するアリール基(p−メチルフェニル基、p−ヒドロキシフェニル基などの置換基を有するC6−15アリール基等)などが好ましい。Rとしては、水素原子、アルキル基(C1−6アルキル基等)、アルケニル基(C2−6アルケニル基等)、シクロアルキル基(3〜15員のシクロアルキル基等)、シクロアルケニル基(3〜15員のシクロアルケニル基等)、アリール基(C6−15アリール基等)、置換基を有するアリール基(p−メチルフェニル基、p−ヒドロキシフェニル基などの置換基を有するC6−15アリール基等)などが好ましい。
一般式(10)で表される化合物において、金属の価数nは、0価、1価、2価、3価等のいずれであってもよいが、通常2価または3価である。金属が2価又は3価の場合には、β−ジケトンは、対応するアニオンであるβ−ジケトナートとして配位する。金属の価数をnとした場合、通常、配位数mは同一である。ただし、金属に溶媒等を軸配位させても良く、その場合、金属の価数nと配位数mが異なっても良い。軸配位しても良い溶媒として、ピリジン、アセトニトリル、アルコール等が例示されるが、軸配位するものであれば特に制限されることはない。
β−ジケトン鉄錯体は、市販のものをそのまま、または精製して使用してもよいし、調製して使用してもよい。また、反応系中で発生させて使用することもできる。反応系中で発生させる場合には、例えば、鉄の塩化物、水酸化物とアセチルアセトン等のβ−ジケトンを添加すればよい。この際、必要に応じてアンモニア、アミン類、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物や炭酸塩、カルボン酸塩などの塩基を添加することができる。
本発明では、無機金属塩及び有機金属錯体から選択される少なくとも一種は、前駆体の全質量に対して0.1質量%を超えて含まれることが好ましく、0.5〜85質量%含まれることがより好ましく、0.5〜70質量%含まれることがさらに好ましい。無機金属塩及び有機金属錯体から選択される少なくとも一種を上記範囲内含有させることにより、窒素原子との相互作用によって、より高い酸素還元活性を有するカーボンアロイを生成し得る。なお、本発明では、無機金属塩及び有機金属錯体から選択される少なくとも一種は、前駆体の全質量に対して0.1〜10質量%とすることも可能である。このように、本発明では、特定の構造を有する含窒素有機化合物と、共有結合性有機骨格材料及び金属有機骨格材料を併用することにより、無機金属塩及び有機金属錯体から選択される少なくとも一種の含有量を少なく抑えた場合であっても、高い酸素還元活性を有するカーボンアロイを生成することができる。
酸素還元活性(ORR活性)は、実施例にて詳述する方法により電位を求め、これをORR活性値として測定することができる。高出力を得るために、酸素還元する際の電位の値が高いことが好ましく、具体的には、0.5mg/cmの電極塗布量における電流密度値−2mA/cmにおける電位が、0.67V以上が好ましく、0.70V以上がより好ましく、0.73V以上がさらに好ましい。塗布量と電流密度は直線的に増加するが、塗布量が増すとカーボンアロイ粒子間の抵抗の増加、酸素および水の拡散抵抗の増加等により電流密度が想定した直線から低くなる。オームの法則により、塗布量と電位の関係においても、同様に、塗布量と電位は直線からずれて低くなる。0.5mg/cmにおける電位の値は、0.05mg/cmにおける触媒活性を示す電位とカーボンアロイの導電性を加味した値であり、この電位の範囲にすることにより導電性に優れているため特に好ましい。
含窒素有機化合物を含む有機材料を焼成することにより、含窒素有機化合物が分解し、生成した分解生成物が気相中で含窒素カーボンアロイ触媒が形成される。その際に、気相中に金属が近傍に存在すると、分解生成物は金属と相互作用(錯体を形成)し、含窒素カーボンアロイ触媒の性能がさらに向上する。また、窒素原子(N)を構成元素として含む含窒素有機化合物に添加されている特定の遷移金属化合物の触媒作用等により、窒素原子(N)が炭素触媒表面に高濃度に固定化された含窒素カーボンアロイを形成し、この窒素原子(N)と相互作用した遷移金属化合物を含んだ炭素微粒子が形成されることが好ましい。なお、後述する酸処理によって一部の窒素原子(N)と相互作用した遷移金属化合物は脱落してもよい。
(導電助剤)
本発明では、前駆体に導電助剤を添加して焼成してもよく、カーボンアロイに添加してもよい。導電助剤が均一に分散されるため、導電助剤を添加して焼成する方が好ましい。
導電助剤としては、特に限定はされないが、例えば、ノーリット(NORIT社製)、ケッチェンブラック(Lion社製)、バルカン(Cabot社製)、ブラックパール(Cabot社製)、アセチレンブラック(Chevron社製)(いずれも商品名)等のカーボンブラック、黒鉛をはじめ、C60やC70等のフラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボン繊維等の炭素材料が挙げられる。
導電助剤の添加率は、前駆体の全体質量に対して、0.01〜50質量%であることが好ましく、0.1〜20質量%であることがより好ましく、1〜10質量%であることがさらに好ましい。導電助剤の添加量を上記範囲内とすることにより、系中で無機金属塩から生成する金属の凝集・成長が均一になり、目的とする多孔性含窒素炭素を得ることがきる。
<含窒素カーボンアロイの製造方法>
本発明の含窒素カーボンアロイの製造方法は、
(1)含窒素有機化合物と、共有結合性有機骨格材料及び金属有機骨格材料から選択される少なくとも一種と、無機金属塩及び有機金属錯体から選択される少なくとも一種を混合して前駆体を調製する工程と、
(2)前駆体を不活性雰囲気下で室温から炭素化温度まで毎分1〜2000℃で昇温する昇温工程と、
(3)400〜2000℃で、1秒〜100時間保持する炭素化工程と、
(4)炭素化温度から室温まで冷却する冷却工程を含んでいることが好ましい。
また、(2)〜(4)の前駆体を焼成する工程の後(炭素化処理後に、カーボンアロイを室温まで冷却した後)に、
(5)粉砕処理を行ってもよい。
さらに、本発明の含窒素カーボンアロイの製造方法は焼成工程の後に、
(6)焼成された含窒素カーボンアロイを酸で洗浄する工程を含むことが好ましく、
(7)酸洗浄工程の後に、酸洗浄された含窒素カーボンアロイを再焼成する工程を含むことがより好ましい。
以下、本発明の含窒素カーボンアロイの製造方法について、以上の(1)〜(7)の工程を順に説明する。
(1)前駆体の調製工程
前駆体の調製工程では、上述した含窒素有機化合物と、共有結合性有機骨格材料及び金属有機骨格材料から選択される少なくとも一種と、無機金属塩及び有機金属錯体から選択される少なくとも一種を混合して前駆体を調製する。
含窒素カーボンアロイの製造工程において調製された前駆体はその後焼成されるが、焼成工程の前に前駆体を粉砕する工程をさらに含むことが好ましい。
焼成工程の前に前駆体を粉砕する工程を含む場合、粉砕方法としては、当業者に公知のいずれの方法でも行うことができ、例えば、ボールミル(Ball Mill)、メノウ粉砕、機械粉砕等を用いて粉砕することができる。中でも、機械粉砕方法は好ましく用いられる。機械粉砕方法を用いることにより、生成される含窒素カーボンアロイの比表面積が大きくなり、高い酸素還元活性(ORR活性)が得られる。機械粉砕には、例えば、ワーリング社製、X−TREME MX1200XTMを用いることができる。粉砕条件に関して特に限定されないが、回転刃の回転数が80〜30000rpmで混合することが好ましく、300〜25000rpmで混合することがより好ましく、1300〜20000rpmで混合することがさらに好ましい。回転方法は、連続回転、断続回転、および連続と断続回転の組合せで行うことができる。粉砕時間は0.1秒〜15分間であることが好ましく、粉砕回数は少なくとも1回以上であることが好ましい。
断続粉砕において、回転刃の停止時間は粉砕時間の0.1〜100倍であることが好ましく、1〜50倍であることがより好ましく、2〜30倍であることがさらに好ましい。たとえば、回転数が10000rpm以上、粉砕時間が10秒以下、回転刃の停止時間が0.1倍以上、粉砕回数が2回以上の場合、前駆体混合物の熱による分解が低下し、前駆体混合物を微細化できることに加え、混合を均一にすることができるため、より効果的に酸素還元反応活性を高めることができる。
連続粉砕による粉砕時間が30秒以上の場合、前駆体混合物が発熱し、共有結合性有機骨格材料及び金属有機骨格材料から選択される少なくとも一種の細孔内に、含窒素有機化合物、含窒素有機化合物の互変異性体、含窒素有機化合物の塩及び含窒素有機化合物の水和物から選択される少なくとも一種と、無機金属塩及び有機金属錯体から選択される少なくとも一種が揮散するため、より効果的に酸素還元反応活性を高めることができる。
(2)昇温工程、(3)炭素化工程および(4)冷却工程
本発明の製造方法においては、特定の構造を有する含窒素有機化合物、その互変異性体、その塩及びその水和物の少なくとも一種と、共有結合性有機骨格材料及び金属有機骨格材料から選択される少なくとも一種と、無機金属塩及び有機金属錯体から選択される少なくとも一種とを含む前駆体を炭素化温度まで昇温し、加熱処理後、室温まで冷却することが好ましい。
また、昇温工程の昇温処理や後述の再焼成工程では、多段階で昇温しても良い。
多段階の昇温処理のうち、後段の昇温処理は、前段の昇温処理の終了後に、温度保持しても、そのまま温度を上げて昇温処理を行ってもよい。また、一旦室温まで冷却した後に温度を上げ、後段の昇温処理を行ってもよい。
また、前段の昇温処理後に室温まで冷却した際には、後述の(5)粉砕処理により、処理後の試料を均一に粉砕してもよいし、さらに成形してもよい。また、後述の、(6)酸洗浄工程により、処理後の試料を酸洗浄して金属を除去してもよい。
昇温処理においては、処理前の試料を炭化装置等に挿入した後に常温から所定温度まで昇温してもよいし、あるいは、所定温度の炭化装置等へ処理前の試料を挿入することで昇温してもよい。
好ましくは、処理前の試料を常温から所定温度まで昇温するのがよい。所定温度まで昇温する場合には、昇温速度を一定にすることが好ましい。より具体的には、昇温速度は毎分1〜2000℃で昇温することが好ましく、毎分1〜1000℃で昇温することがより好ましく、毎分1〜500℃で昇温することがさらに好ましい。
(予備炭化物)
細孔を形成した予備炭化物を得るために、含窒素有機化合物と、共有結合性有機骨格材料又は金属有機骨格材料と、無機金属塩等とを含む有機材料の前段の処理は、比較的低温で行うことが好ましい。また、このような低温処理においては、一定温度を保持してもよい。これにより、熱に安定な構造だけを保持し、不安定な不純物成分、溶媒等を除去できる。
比較的低温で行う昇温処理は、含窒素有機化合物と無機金属塩等とを含む有機材料を100〜1500℃まで昇温することが好ましく、150〜1050℃まで昇温することがより好ましく、200〜1000℃まで昇温することがさらに好ましい。これにより、均一な予備炭化物が得られる。
上記の昇温処理は、不活性雰囲気下で行うことが好ましい。不活性雰囲気とは、窒素ガスや希ガス雰囲気下などのガス雰囲気をいう。なお、酸素が含まれていたとしても、被処理物を燃焼させない程度まで酸素量を制限した雰囲気であればよい。不活性雰囲気は、閉鎖系又は新たなガスを流通させる流通系のいずれであってもよく、好ましくは流通系である。流通系とする場合には、内径36mmφ当たり0.01〜2.0リットル/分のガスを流通させることが好ましく、内径36mmφ当たり0.05〜1.0リットル/分のガスを流通させることがより好ましく、内径36mmφ当たり0.1〜0.5リットル/分のガスを流通させることが特に好ましい。
昇温処理後、温度保持の時間は、1秒〜100時間であり、好ましくは1分〜50時間であり、より好ましくは5分〜10時間である。100時間を超えて炭素化処理しても処理時間に相応する効果は得られない場合がある。
上記の昇温処理で使用する加熱装置は、特に限定されないが、管状炉(カンタル線炉、イメージング炉)、マッフル炉、真空ガス置換炉、回転炉(ロータリーキルン)、ローラーハースキルン、プッシャーキルン、多段炉、トンネル炉、流動焼成炉等を用いることが好ましく、管状炉(カンタル線炉、イメージング炉)、マッフル炉、回転炉(ロータリーキルン)、流動焼成炉を用いることがより好ましく、管状炉(カンタル線炉、イメージング炉)、マッフル炉を用いることが特に好ましい。
(不融体)
炭素化温度までの加熱処理において、昇温処理の部分をまとめて不融化処理とする。不融体を得るためには、前段の特定の構造を有する含窒素有機化合物と、共有結合性有機骨格材料及び金属有機骨格材料から選択される少なくとも一種と、無機金属塩及び有機金属錯体から選択される少なくとも一種とを含む前駆体の昇温処理に引き続き、後段の昇温処理を連続して行うことが好ましい。これにより、前段の余熱を利用することができ、有機材料の分解反応と炭素化反応を連続して行うことができ、分解生成物と金属とが相互作用して、金属をより活性が高い状態で安定化することができる。なお、金属としては、鉄イオンを、2価の状態で含むものを用いることが好ましい。その結果、高い酸素還元性能を有するカーボンアロイを製造することができる。
後段の昇温処理は、不活性雰囲気下で行うことが好ましく、不活性雰囲気は、閉鎖系又は新たなガスを流通させる流通系のいずれであってもよく、好ましくは流通系である。流通系とする場合には、内径36mmφ当たり0.01ミリリットル〜2.0リットル/分のガスを流通させることが好ましく、内径36mmφ当たり0.02ミリリットル〜1.0リットル/分のガスを流通させることがより好ましく内径36mmφ当たり0.05ミリリットル〜0.5リットル/分のガスを流通させることが特に好ましい。なお、後段のガス流量は、前段でのガス流量と異なっていても良い。
昇温処理後、温度保持の時間は、1秒〜100時間であり、好ましくは1分〜50時間であり、より好ましくは5分〜10時間である。100時間を超えて炭素化処理しても処理時間に相応する効果は得られない場合がある。
上記の昇温処理で使用する加熱装置は、特に限定されないが、管状炉(カンタル線炉、イメージング炉)、マッフル炉、真空ガス置換炉、回転炉(ロータリーキルン)、ローラーハースキルン、プッシャーキルン、多段炉、トンネル炉、流動焼成炉等を用いることが好ましく、管状炉(カンタル線炉、イメージング炉)、マッフル炉、回転炉(ロータリーキルン)、流動焼成炉を用いることがより好ましく、管状炉(カンタル線炉、イメージング炉)、マッフル炉を用いることが特に好ましい。
(炭化物)
炭化物を得るために、前段の昇温処理後、室温まで冷却し、均一に粉砕して、酸洗浄を行い後段の昇温処理をすることが好ましい。これにより、炭素化処理における処理温度を上げることができ、炭素構造の規則性がより高められたカーボンアロイを得ることが可能になる。その結果、カーボンアロイの導電性が向上し、高い酸素還元性能が得られ、また、触媒としての耐久性も向上する。
また、前段から直接高温度での炭素化処理を行うことも好ましい。これにより、カーボンアロイの収率が低減する場合があるが、得られるカーボンアロイの結晶子サイズが揃い、そのため金属が均一に分布し、活性が高い状態が保持される。結果として、優れた酸素還元性能を有するカーボンアロイの製造が可能となる。なお、このような処理温度は、炭素化温度を超えないことが好ましく、このような温度範囲で炭素化処理を行うことにより、適切なカーボンアロイを得ることができる。
特定の構造を有する含窒素有機化合物と無機金属塩とを含む前駆体の炭素化処理の焼成温度は、含窒素有機化合物が熱分解及び炭素化する温度であれば特に制限されないが、炭素化温度の上限は2000℃である必要がある。
無機金属塩及び有機金属錯体から選択される少なくとも一種を含む前駆体の場合、反応温度の下限は400℃であることが好ましく、500℃であることがより好ましく、600℃であることがさらに好ましく、700℃であることがよりさらに好ましい。反応温度を上記範囲内とすることによって、炭化が進んで高い触媒性能を有するカーボンアロイが得られる。また、反応温度が2000℃以下であれば炭素骨格中に窒素が残留し、所望のN/C原子比とすることでき、十分な酸素還元反応活性が得られる。
焼成温度は、600〜1500℃であることが好ましく、700〜1200℃であることがより好ましく、700〜1050℃であることが特に好ましい。この範囲内で炭素化処理を行うと、カーボンアロイの収率が低減する場合があるが、得られるカーボンアロイの結晶子サイズが揃い、そのため金属が均一に分布し、活性が高い状態が保持される。結果として、優れた酸素還元性能を有するカーボンアロイの製造が可能となる。また、上記範囲内で炭素化処理を行うことにより、生成した無機金属の作用に炭素骨格中に窒素が残留し易くなり、酸素還元反応活性を高めることができる。
昇温処理は、不活性ガスまたは非酸化性ガス流通下で行うことが好ましく、これらの雰囲気は、閉鎖系又は新たなガスを流通させる流通系のいずれであってもよく、好ましくは流通系である。流通系とする場合には、ガスの流速は、内径36mmφ当たり0.01ミリリットル〜2.0リットル/分であることが好ましく、内径36mmφ当たり0.02ミリリットル〜1.0リットル/分であることがより好ましく、内径36mmφ当たり0.05ミリリットル〜0.5リットル/分であることが特に好ましい。流速がこの範囲であると、好適に目的とする含窒素カーボンアロイを得ることができるので好ましい。
炭素化処理の処理時間は、1秒〜100時間であり、好ましくは1分〜50時間であり、より好ましくは1時間〜10時間である。炭素化処理の処理時間を上記範囲内とすることにより、酸素還元反応活性を高めることができる。特に、700℃以上で、1時間〜10時間保持することにより、共有結合性有機骨格材料または金属有機骨格材料の細孔外に存在する含窒素有機化合物、含窒素有機化合物の互変異性体、含窒素有機化合物の塩及び含窒素有機化合物の水和物及び無機金属塩及び有機金属錯体の内、炭化反応に用いられなかった不要物を揮散させることができる。さらに保持時間を1時間〜10時間とすることにより、前駆体混合物の分解生成物を除去することができ、より効果的に酸素還元反応活性を高めることができる。
上記の昇温処理で使用する加熱装置は、特に限定されないが、管状炉(カンタル線炉、イメージング炉)、マッフル炉、真空ガス置換炉、回転炉(ロータリーキルン)、ローラーハースキルン、プッシャーキルン、多段炉、トンネル炉、流動焼成炉等を用いることが好ましく、管状炉(カンタル線炉、イメージング炉)、マッフル炉、回転炉(ロータリーキルン)、流動焼成炉を用いることがより好ましく、管状炉(カンタル線炉、イメージング炉)、マッフル炉を用いることが特に好ましい。
(5)粉砕処理
また、炭素化処理後に、カーボンアロイを室温まで冷却した後、粉砕処理を行ってもよい。粉砕処理は当業者に公知のいずれの方法でも行うことができ、例えば、ボールミル(Ball Mill)、メノウ粉砕、機械粉砕等を用いて粉砕することができる。
(6)酸洗浄工程
本発明の含窒素カーボンアロイの製造方法は、焼成工程の後に、焼成された含窒素カーボンアロイを酸で洗浄する酸洗浄工程を含んでもよい。生成したカーボンアロイ触媒の表面上の金属を酸洗浄することにより、ORR活性を向上させることができる。この酸洗浄処理により、最適な多孔性を有する多孔性含窒素カーボンアロイを得ることができると予想される。
酸洗浄処理においては、pH7以下の強酸又は弱酸を含む、任意の水性ブロンステッド(プロトン)酸を酸洗浄工程内で用いることができる。さらに、無機酸(鉱酸)又は有機酸を用いることができる。好適な酸の例としては、HCI、HBr、HI、HSO、HSO、HNO、HClO、[HSO、[HSO、[HO]、H[C]、HCOH、HCIO、HBrO、HBrO、HIO、HIO、FSOH、CFSOH、CFCOH、CHCOH、B(OH)、など(これらの任意の組み合わせを含む)が挙げられるが、これらに限定されない。また、特表2010−524195号公報に記載の方法を本発明でも用いることができる。
(7)再焼成工程
本発明の含窒素カーボンアロイの製造方法は、焼成工程の後に、焼成された含窒素カーボンアロイを粉砕する工程と再焼成する工程をさらに含むことが好ましい。より好ましくは酸洗浄工程の後に、酸洗浄された含窒素カーボンアロイを再焼成する工程を含む。このような再焼成工程により、含窒素カーボンアロイを電極に塗布したときの塗布量の増加に伴って電位を向上させることができ、ORR活性を向上させることができる。また、再焼成工程を設けることにより、MOFが分解し、金属が炭素材料から揮散して、脱離するため、多孔化し、比表面積を増大することができ、より効果的に酸素還元反応活性を高めることができる。
再焼成工程は炭素の黒鉛化を促進する目的で、焼成工程以上の高温で行う必要があるため、再焼成工程の焼成温度は500〜2000℃であることが好ましく、600〜1500℃であることがより好ましく、1000〜1500℃であることがさらに好ましい。
焼成の際にカーボンアロイ中の窒素原子の含有割合を高く保持しながら炭素の黒鉛化を進行させる観点から、反応時に加圧状態で焼成しても良い。ガス排出口を水でトラップして背圧がかかる状態で焼成しても良い。炭素化工程の圧力は、0.01〜5MPa、好ましくは0.05〜1MPa、より好ましくは0.08〜0.3MPa、特に好ましくは、0.09〜0.15MPaである。
再焼成工程の方法は、特に限定されないが、好ましくは管状炉、回転炉(ロータリーキルン)、ローラーハースキルン、プッシャーキルン、多段炉、真空ガス置換炉、トンネル炉、流動焼成炉等を用い、より好ましくは回転炉(ロータリーキルン)、真空ガス置換炉、真空ガス置換回転炉(ロータリーキルン)、トンネル炉、流動焼成炉を用い、特に好ましくは真空ガス置換回転炉(真空ガス置換式ロータリーキルン)を用いる。
再焼成する工程の前には、脱気及び窒素置換する工程をさらに含むことが好ましい。このような工程を設けることで、酸素濃度を低減させることができる。脱気及び窒素置換する工程では、真空ポンプで脱気した後、窒素ガス置換することが好ましい。特に、真空ポンプで脱気した後、窒素ガス置換する操作を複数回繰り返すことが好ましい。この際、脱気用いる装置は、脱気が可能な装置であれば特に限定されないが、真空ガス置換炉、真空ガス置換回転炉(ロータリーキルン)を用いることが好ましい。真空脱気時の圧力は特に限定されないが、4×10Pa以下が好ましく、4×10Pa以下がより好ましく、2×10Pa以下が特に好ましい。
カーボンアロイの再焼成時、カーボンアロイの性能を均一化させる目的でカーボンアロイを流動させることが好ましい。この際用いられる装置は、カーボンアロイを流動させることが可能な装置あれば特に限定されないが、回転炉(ロータリーキルン)、真空ガス置換回転炉(ロータリーキルン)、流動焼成炉を用いることが好ましい。
回転炉(ロータリーキルン)、真空ガス置換回転炉(ロータリーキルン)を用いる場合、焼成時、試料管を回転させるが、回転速度、速度変化等は特に限定されない。回転速度は好ましくは10rpm以下、より好ましくは5rpm以下である。回転速度をこの範囲にすることにより、管壁と予備炭素間で擦りが生じてカーボンアロイの微細化が進み、多孔化するため、より効果的に酸素還元反応活性を高めることができる。
本発明の含窒素カーボンアロイの製造方法は、賦活剤の存在下で炭素化処理を行うことが好ましい(賦活工程)。賦活剤の存在下、高温で炭素化処理することにより、カーボンアロイの細孔が発達して表面積が増大し、カーボンアロイの表面における金属の露出度が向上することにより、触媒としての性能が向上する。なお、炭化物の表面積は、N吸着量により測定することができる。
使用できる賦活剤としては、特に制限されないが、例えば、二酸化炭素、アンモニアガス、水蒸気、空気、酸素ガス、水素ガス、一酸化炭素ガス、メタンガス、アルカリ金属水酸化物、塩化亜鉛、及びリン酸からなる群より選択される少なくとも1種を用いることができ、さらに好ましくは、二酸化炭素、アンモニアガス、水蒸気、空気、酸素ガスからなる群より選択される少なくとも1種を用いることができる。
気体賦活剤は、不活性ガスで希釈することが好ましく、希釈する不活性ガスとしては、窒素ガス、及び希ガス(例えば、アルゴンガス、ヘリウムガス及びネオンガス)が挙げられる。
気体賦活剤は、炭素化処理の雰囲気中に2〜80モル%、好ましくは10〜60モル%含有させればよい。気体賦活剤を上記範囲内となるように含有させることにより、十分な賦活効果が得られる。また、アルカリ金属水酸化物等の固体賦活剤は、固体の状態で被炭化物と混合してもよく、あるいは、水等の溶媒で溶解又は希釈した後、被炭化物を含浸するか、あるいはスラリー状にして被炭化物に練り込んでもよい。液体賦活剤は、水等で希釈した後、被炭化物を含浸するかあるいは被炭化物に練り込めばよい。
熱処理の際、気相の圧力は、常圧、加圧、減圧のいずれであってもよいが、高温下で加圧していることが好ましい。
ガスは静止していても流通していてもよいが、生成した不純物を排出する観点から、流通していることが好ましい。
炭素化後に窒素原子を導入することもできる。このとき、窒素原子を導入する方法としては、液相ドープ法、気相ドープ法、又は、気相−液相ドープ法を用いて行うことができる。例えば、カーボンアロイに窒素源であるアンモニア雰囲気下で200〜1200℃、5〜180分保持することにより、熱処理して、炭素触媒の表面に窒素原子を導入することができる。
(含窒素カーボンアロイ)
本発明は、上述した含窒素カーボンアロイの製造方法で製造された含窒素カーボンアロイに関する。
上記前駆体の焼成により得られた本発明の含窒素カーボンアロイは、窒素が導入されている含窒素カーボンアロイである。本発明の含窒素カーボンアロイには、炭素がsp混成軌道により化学結合し、二次元に広がった六角網面構造を持つ炭素原子の集合体であるグラフェンが存在することが好ましい。
さらに、本発明の含窒素カーボンアロイにおいて、炭素触媒中の表面窒素原子の含有量は表面の炭素に対して原子比(N/C)で0.02〜0.3であることがより好ましい。窒素原子と炭素原子との原子比(N/C)を上記範囲内とすることにより、金属と結合する有効な窒素原子の数を確保することができ、十分な酸素還元触媒特性が得られる。また、窒素原子と炭素原子との原子比(N/C)を上記範囲内とすることにより、カーボンアロイの炭素骨格の強度を高めることができ、電気伝導性の低下を抑制することができる。
また、カーボンアロイの骨格は、少なくとも炭素原子及び窒素原子により形成されていればよく、その他の原子として水素原子や酸素原子等を含んでいてもよい。その場合、その他の原子と炭素原子及び窒素原子との原子比((その他の原子)/(C+N))は0.3以下であることが好ましい。
比表面積分析は、カーボンアロイを所定の容器に入れて液体窒素温度(−196℃)に冷却し、容器内に窒素ガスを導入して吸着させ、その吸着等温線から単分子吸着量と吸着パラメーターを算出し、窒素の分子占有断面積(0.162cm)から試料の比表面積を算出して求めるBET(Brunauer−Emmett−Teller)法により求めることができる。
カーボンアロイの細孔形状は特に制限されず、例えば、表面のみに細孔が形成されていても、表面のみならず内部にも細孔が形成されていてもよい。内部にも細孔が形成されている場合には、例えば、トンネル状に貫通したものであってもよく、また、球状又は六角柱状等の多角形状の空洞が互いに連結したような形状を有していてもよい。
カーボンアロイの比表面積は、90m/g以上であることが好ましく、350m/g以上であることがより好ましく、560m/g以上であることが特に好ましい。ただし、触媒活性部位(少なくともCとNと金属イオンを構成要件とする金属配位物、あるいは配置空間(場))が高密度に生成・形成した場合は上記範囲外でもよい。
細孔奥まで酸素が十分に行き届き、十分な酸素還元触媒特性が得られる観点からは、カーボンアロイの比表面積は、3000m/g以下であることが好ましく、2000m/g以下であることがより好ましく、1500m/g以下であることが特に好ましい。
本発明の含窒素カーボンアロイの形状は、酸素還元反応活性を有する限り特に限定はされない。例えば、シート状、繊維状、板状、柱状、ブロック状、粒子状、球状以外の多くの楕円、扁平、角型など、大きく歪んだ構造等が挙げられる。分散がし易いという観点から、好ましくはブロック状、粒子状であるが、後述のスラリーを塗布して乾燥させる場合、チキソ性を付与する観点から好ましくは繊維状、板状、柱状である。
さらに、本発明の含窒素カーボンアロイを溶媒に分散させることにより、カーボンアロイを含有するスラリーを作製することができる。これにより、例えば、燃料電池の電極触媒や、蓄電装置の電極材の作製を容易する際に、カーボンアロイが溶媒に分散されたスラリーを支持材料に塗布して焼成、乾燥させて、任意の形状に加工した炭素触媒を形成することができる。このようにカーボンアロイをスラリーとすることにより、炭素触媒の加工性が向上し、容易に電極触媒や電極材として用いることができる。
本発明の燃料電池用カーボンアロイ触媒は、含窒素カーボンアロイの乾燥後の塗布量が0.01mg/cm以上であることが好ましく、0.02〜100mg/cmであることがより好ましく、0.05〜10mg/cmであることが特に好ましい。
溶媒としては、燃料電池の電極触媒や、蓄電装置の電極材を作製する際に用いられる溶媒を適宜選択して使用することができる。例えば蓄電装置の電極材を作製する際に用いられる溶媒としては、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、1,2−ジメトキシエタン(DME)、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、プロピレンカーボネート(PC)、γ−ブチロラクトン(GBL)等一般的な極性溶媒を単独又は複数混合して使用することができる。また、燃料電池の電極触媒を作製する際に用いられる溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン等を挙げることができる。
(含窒素カーボンアロイの用途)
本発明の含窒素カーボンアロイの用途は、構造材料、電極材料、ろ過材料、触媒材料など特に限定されないが、キャパシタやリチウム二次電池などの蓄電装置の電極材料として用いることが好ましく、高い酸素還元反応活性を有する燃料電池や亜鉛空気電池、リチウム空気電池などの炭素触媒として用いることがより好ましい。また、固体高分子電解質膜と、固体高分子電解質膜に接して設けられた触媒層とを備えた電極膜接合体において、上記触媒を触媒層に含むことができる。さらに、上記電極膜接合体は、燃料電池に備えることができる。
(燃料電池)
図1に本発明の含窒素カーボンアロイから成る炭素触媒を用いた燃料電池10の概略構成図を示す。炭素触媒はアノード電極及びカソード電極に適用されている。
燃料電池10は、固体高分子電解質14を挟むように、対向配置されたセパレータ12、アノード電極触媒(燃料極)13、カソード電極触媒(酸化剤極)15及びセパレータ16とから構成される。固体高分子電解質14としては、パーフルオロスルホン酸樹脂膜を代表とするフッ素系陽イオン交換樹脂膜が用いられる。また、炭素触媒をアノード電極触媒13及びカソード電極触媒15として、固体高分子電解質14の双方に接触させることにより、アノード電極触媒13及びカソード電極触媒15に炭素触媒を備えた燃料電池10が構成される。上述の炭素触媒を固体高分子電解質の双方の面に形成し、アノード電極触媒13及びカソード電極触媒15を電極反応層側で固体高分子電解質14の両主面にホットプレスにより密着することにより、MEA(Membrane Electrode Assembly)として一体化させる。
従来の燃料電池では、集電体としての機能も有する多孔質のシート(例えば、カーボンペーパー)からなるガス拡散層を、セパレータとアノード及カソード電極触媒との間に介在させていた。これに対して図1の燃料電池10では、比表面積が大きく、さらに、気体の拡散性が高い炭素触媒がアノード及びカソード電極触媒として用いることができる。上述の炭素触媒を電極として使用することにより、ガス拡散層が無い場合にも炭素触媒にガス拡散層の作用を持たせ、アノード及びカソード電極触媒13,15とガス拡散層とを一体化した燃料電池を構成することができるため、ガス拡散層を省略することによる燃料電池の小型化や、コストの削減が可能となる。
上記セパレータ12,16は、アノード及びカソード電極触媒層13,15を支持すると共に燃料ガスHや酸化剤ガスO等の反応ガスの供給・排出を行う。そして、アノード及びカソード電極触媒13,15にそれぞれ反応ガスが供給されると、両電極に備えられた炭素触媒と固体高分子電解質14との境界において、気相(反応ガス)、液相(固体高分子電解質膜)、固相(両電極が持つ触媒)の三相界面が形成される。そして、電気化学反応を生じさせることで直流電力が発生する。
上記電気化学反応において、下記の反応が起こる。
カソード側:O+4H+4e→2H
アノード側:H→2H+2e
アノード側で生成されたHイオンは固体高分子電解質14中をカソード側に向かって移動し、e(電子)は外部の負荷を通ってカソード側に移動する。一方、カソード側では酸化剤ガス中に含まれる酸素と、アノード側から移動してきたHイオン及びeとが反応して水が生成される。この結果、上述の燃料電池は、水素と酸素とから直流電力を発生し、水を生成することになる。
(蓄電装置)
次に、本発明の含窒素カーボンアロイから成る炭素触媒を電極材に適用した蓄電装置について説明する。図2に含窒素カーボンアロイから成る炭素触媒を用いた、蓄電容量に優れた電気二重層キャパシタ20の概略構成図を示す。
図2に示した電気二重層キャパシタ20は、セパレータ23を介して、分極性電極である第1の電極21及び第2の電極22が対向し、外装蓋24aと外装ケース24bの中に収容されている。また、第1の電極21及び第2の電極22は、それぞれ集電体25を介して、外装蓋24aと外装ケース24bに接続されている。また、セパレータ23には、電解液が含浸されている。そして、ガスケット26を介して電気的に絶縁させた状態で、外装蓋24aと外装ケース24bとをかしめて密封させて電気二重層キャパシタ20が構成されている。
図2の電気二重層キャパシタ20において、上述の含窒素カーボンアロイから成る炭素触媒を第1の電極21及び第2の電極22に適用することができる。そして、電極材に炭素触媒が適用された電気二重層キャパシタを構成することができる。上述の炭素触媒は、ナノシェル炭素が集合した繊維状の構造を有し、さらに、繊維径がナノメートル単位であるため比表面積が大きく、キャパシタにおいて電荷が蓄積する電極界面が大きい。さらに、上述の炭素触媒は、電解液に対して電気化学的に不活性であり、適度な電気導電性を有する。このため、キャパシタの電極として適用することにより、電極の単位体積あたりの静電容量を向上させることができる。
また、上述のキャパシタと同様に、例えば、リチウムイオン二次電池の負極材等のように、炭素材料から構成される電極材として上述の炭素触媒を適用することができる。そして、炭素触媒の比表面積が大きいことにより、蓄電容量の大きな二次電池を構成することができる。
(環境触媒)
次に、本発明の含窒素カーボンアロイを、白金等の貴金属を含む環境触媒の代替品として使用する例について説明する。
汚染空気に含まれる汚染物質を(主にガス状物質)等を分解処理により除去するための排ガス浄化用触媒として、白金等の貴金属系の材料が単独又は複合化物されて構成された触媒材料による環境触媒が用いられている。これらの白金等の貴金属を含む排ガス浄化用触媒の代替品として、上述の炭素触媒を使用することができる。上述の炭素触媒は、酸素還元反応触媒作用が付与されているため、汚染物質等の被処理物質の分解機能を有する。このため、上述の炭素触媒を用いて環境触媒を構成することにより、白金等の高価な貴金属類を使用する必要がないため、低コストの環境触媒を提供することができる。また、比表面積が大きいことにより、単位体積あたりの被処理物質を分解する処理面積を大きくすることができ、単位体積あたりの分解機能が優れた環境触媒を構成できる。
なお、上述の炭素触媒を担体として、従来の環境触媒に使用されている白金等の貴金属系の材料が単独又は複合化物を担持させることにより、より分解機能等の触媒作用に優れた環境触媒を構成することができる。なお、上述の炭素触媒を備える環境触媒は、上述の排ガス浄化用触媒だけでなく、水処理用の浄化触媒として用いることもできる。
また、本発明の含窒素カーボンアロイは、広く化学反応用の触媒として使用することができ、中でも白金触媒の代替品として使用することができる。つまり、白金等の貴金属を含む化学工業用の一般的なプロセス触媒の代替品として、上述の炭素触媒を使用することができる。このため、上述の炭素触媒によれば、白金等の高価な貴金属類を使用することなく、低コストの化学反応プロセス触媒を提供することができる。さらに、上述の炭素触媒は、比表面積が大きいことにより、単位体積あたりの化学反応効率に優れた化学反応プロセス触媒を構成することができる。
このような化学反応用の炭素触媒は、例えば、水素化反応用触媒、脱水素反応用触媒、酸化反応用触媒、重合反応用触媒、改質反応用触媒、水蒸気改質用触媒等に適用することができる。さらに具体的には、「触媒調製(講談社)白崎高保、藤堂尚之共著、1975年」等の触媒に関する文献を参照し、各々の化学反応に炭素触媒を適用することが可能である。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されない。
(実施例1)
<ZIF8、Fe(OAc)添加(2−mim)混合物の未酸洗浄の炭素材料合成(1E)>
(ZIF8、Fe(OAc)添加(2−mim)混合物の調製)
2−メチルイミダゾール(2−mim)(Aldrich社製)0.10g、ZIF8(BASF社製、Basolite Z1200)0.90g、Fe(OAc)(Aldrich社製、酢酸鉄(II)、純度99.99%以上(残存金属量基準))32mg、SUS(Stainless Used Steel)304鋼球20個をジルコニア製の45ml容器(フリッチュ製)に入れ、真空脱気し、窒素置換後、オバーポットで密閉した。遊星型ボールミル クラッシクラインP−7(フリッチュ製)を用いて、400rpmで3時間粉砕し、金属メッシュでSUS304鋼球を除き、ZIF8、Fe(OAc)添加2−mim混合物(1A)を得た。
Figure 0006454350
ZIF−8
分子式:C10Zn、分子量:227.57
元素分析(計算値):C,42.22;H,4.43;N,24.62;Zn,28.73
Figure 0006454350
Fe(OAc)
分子式:CFe、分子量:173.93
元素分析(計算値):C,27.62;H,3.48;Fe,32.11;O,36.79
Figure 0006454350
分子式:C、分子量:82.10
元素分析(計算値):C,58.51;H,7.37;N,34.12
(焼成・粉砕・酸洗浄処理、1回目焼成、流通炉)
ZIF8、Fe(OAc)添加2−mim混合物(1A)0.9591gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素流量を毎分200mLとし、30分間室温で流通させた。30℃から900℃まで毎分5℃昇温し、900℃で1時間保持した。その後、3時間かけて室温まで冷却し、炭素前駆体(1B)を得た。得られた炭素前駆体(1B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・遠心ろ過・上澄み液の除去を着色がなくなるまで繰返した。水で洗浄後、濾過・風乾した。得られた炭素材料を110℃で3時間真空乾燥し、室温まで放置し、そのまま一晩放置して、酸洗浄済み炭素前駆体(1C)を0.3463g得た。
(焼成・粉砕・水洗浄処理、2回目焼成、真空ガス置換/回転炉)
炭素前駆体(1C)0.1882gを石英ボートに測り取り、真空ガス置換回転炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素流量を毎分200mLとし、1分間室温で流通させた。次に、真空ポンプで管内が1.9×10Paとなるまで排気し、窒素置換を3度繰返した。その後、窒素の流量を毎分20mLに下げて、30℃から1000℃まで毎分5℃昇温し、1000℃で1時間保持した。その際に石英管を毎分2.0rpmで回転させた。その後、3時間かけて室温まで冷却し、未酸洗浄の炭素材料(1D)を得た。炭素材料(1D)をメノウ乳鉢で粉砕し、水で洗浄後、濾過・風乾した。得られた炭素材料を110℃で3時間真空乾燥し、室温まで放置し、そのまま一晩放置して、未酸洗浄の炭素材料(1E)を0.1381g得た。得られた未酸洗浄の炭素材料(1E)を実施例1の含窒素カーボンアロイとした。
<含窒素カーボンアロイの評価方法>
1.BET法による比表面積測定
試料前処理装置(日本ベル社製、BELPREP−flow)を用いて、含窒素カーボンアロイ(炭素材料(1E))を200℃で、3時間、真空下で乾燥した。その後、自動比表面積/細孔分布測定装置(日本ベル社製、BELSORP−miniII(商品名))を用いて、含窒素カーボンアロイの比表面積を簡易測定条件で測定した。
比表面積は、装置備え付けの解析プログラムを用いて、BET(Brunauer−Emmett−Teller)法により求めた。その結果を、下記表1の未酸洗浄含窒素カーボンアロイの欄に記載した。
2.カーボンアロイ塗付電極の酸素還元反応(ORR)活性
(カーボンアロイ塗付電極の作製)
実施例1の含窒素カーボンアロイ25mgに、バインダーとしてナフィオン溶液(5%アルコール水溶液)220mgと、溶媒としての水2.4mL及び1−プロパノール(IPA)1.6mLを加え、7mmφのアタッチメントを接続した超音波ホモジナイザー(日精社製、US−150T)で30分間分散させた。回転リングディスク電極(北斗電工社製HR2−RD1−Pt8/GC5)を用い、含窒素カーボンアロイ分散液を含窒素カーボンアロイが0.50mg/cmになるようにカーボン電極上に塗布し、室温で乾燥させて、カーボンアロイ塗付電極を得た。
(カーボンアロイ塗付電極の酸素還元反応(ORR)活性測定)
Automatic Polarization System(北斗電工(株)社製、HZ−3000)に回転電極装置(北斗電工(株)社製、HR−201)を接続し、作用極には得られたカーボンアロイ塗付電極を用い、対極と参照極にはそれぞれ白金電極と飽和カロメル電極(SCE)を用いて以下の手順により測定した。
A.カーボンアロイ塗付電極のクリーニングのため、20℃で、アルゴンを30分以上バブリングした0.1M硫酸水溶液中で掃引電位0.946〜−0.204V(vs.SCE)、掃引速度50mV/sで、10サイクルのサイクリックボルタンメトリーを測定した。
B.ブランク測定のため、20℃で、アルゴンを30分以上バブリングした0.1M硫酸水溶液中で掃引電位0.746〜−0.204V(vs.SCE)、掃引速度5mV/s、電極回転速度1500rpmでリニアースイープボルタンメトリーを測定した。
C.酸素還元活性測定のため、酸素を30分以上バブリングした0.5M硫酸水溶液中で掃引電位0.746〜−0.204V(vs.SCE)、掃引速度5mV/s、電極回転数1500rpmでリニアースイープボルタンメトリーを測定した。
D.Cの測定データからBの測定データを減算し、真の酸素還元活性として採用した。得られたボルタモグラム(電圧−電流密度曲線)から、電流密度−2.00mA/cmの時の電圧(V vs.RHE)を求め、これをORR活性値とした。
得られた結果を下記表1に記載した。
(実施例2)
<ZIF8、Fe(OAc)添加(2−mim)混合物の酸洗浄済み炭素材料合成(2E)>
上述の炭素材料(1D)0.1055gをメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・遠心ろ過・上澄み液の除去を着色がなくなるまで繰返した。水で洗浄後、濾過・風乾した。得られた炭素材料を110℃で3時間真空乾燥し、室温まで放置し、そのまま一晩放置して、酸洗浄済み炭素材料(2E)を0.0921g得た。得られた酸洗浄済み炭素材料(2E)を実施例2の含窒素カーボンアロイとした。
(BET法による比表面積測定)
酸洗浄済み炭素材料(2E)を用いた以外は実施例1と同様にして、比表面積をBET法により測定した。その結果を、下記表1の酸洗浄後に単離した含窒素カーボンアロイの欄に記載した。
(カーボンアロイ塗付電極の作製・酸素還元反応(ORR)活性測定)
酸洗浄済み炭素材料(2E)を用いた以外は実施例1と同様にして、カーボンアロイ塗付電極を製造し、ORR活性値を測定した。その結果を、下記表1に記載した。
(実施例3)
<ZIF8、Fe(OAc)添加(2−mim)混合物の炭素材料合成(3E)>
(ZIF8、Fe(OAc)添加(2−mim)混合物の調製)
2−メチルイミダゾール(2−mim)(Aldrich社製)1.00g、ZIF8 9.00g(BASF社製、Basolite Z1200)、Fe(OAc)0.32g(Aldrich社製、酢酸鉄(II)、純度99.99%以上(残存金属量基準))を、ワーリング社製、X−TREME MX1200XTM容器に添加し、窒素置換した後、10000rpmで、40秒間混合し、ZIF8、Fe(OAc)添加2−mim混合物(3A)を得た。
(焼成・粉砕・酸洗浄処理、1回目焼成、流通炉)
ZIF8、Fe(OAc)添加2−mim混合物(3A)0.9604gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素流量を毎分200mLとし、30分間室温で流通させた。30℃から900℃まで毎分5℃昇温し、900℃で1時間保持した。その後、3時間かけて室温まで冷却し、炭素前駆体(3B)を得た。得られた炭素前駆体(3B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・遠心ろ過・上澄み液の除去を着色がなくなるまで繰返した。水で洗浄後、濾過・風乾した。得られた炭素材料を110℃で3時間真空乾燥し、室温まで放置し、そのまま一晩放置して、酸洗浄済み炭素前駆体(3C)を0.3225g得た。
(焼成・粉砕・酸洗浄処理、2回目焼成、真空ガス置換/回転炉)
炭素前駆体(3C)0.1326gを石英ボートに測り取り、真空ガス置換回転炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素流量を毎分200mLとし、1分間室温で流通させた。次に、真空ポンプで管内が1.9×10Paとなるまで排気し、窒素置換を3度繰返した。その後、窒素の流量を毎分20mLに下げて、30℃から1000℃まで毎分5℃昇温し、1000℃で1時間保持した。その際に石英管を毎分2.0rpmで回転させた。その後、3時間かけて室温まで冷却し、未酸洗浄の炭素材料(3D)を得た。炭素材料(3D)をメノウ乳鉢で粉砕し、未酸洗浄の炭素材料(3E)を0.1175g得た。得られた未酸洗浄の炭素材料(3E)を実施例3の含窒素カーボンアロイとした。
(BET法による比表面積測定)
未酸洗浄の炭素材料(3E)を用いた以外は実施例1と同様にして、比表面積をBET法により測定した。その結果を、下記表1の未酸洗浄含窒素カーボンアロイの欄に記載した。
(カーボンアロイ塗付電極の作製・酸素還元反応(ORR)活性測定)
未酸洗浄の炭素材料(3E)を用いた以外は実施例1と同様にして、カーボンアロイ塗付電極を製造し、ORR活性値を測定した。その結果を、下記表1に記載した。
(実施例4)
<ZIF8、Fe(OAc)添加(2−mim)混合物の酸洗浄済み炭素材料合成(4E)>
上述の炭素材料(3D)0.0786gをメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・遠心ろ過・上澄み液の除去を着色がなくなるまで繰返した。水で洗浄後、濾過・風乾した。得られた炭素材料を110℃で3時間真空乾燥し、室温まで放置し、そのまま一晩放置して、酸洗浄済み炭素材料(4E)を0.0674g得た。得られた酸洗浄済み炭素材料(4E)を実施例4の含窒素カーボンアロイとした。
(BET法による比表面積測定)
酸洗浄済み炭素材料(4E)を用いた以外は実施例1と同様にして、比表面積をBET法により測定した。その結果を、下記表1の酸洗浄後に単離した含窒素カーボンアロイの欄に記載した。
(カーボンアロイ塗付電極の作製・酸素還元反応(ORR)活性測定)
酸洗浄済み炭素材料(4E)を用いた以外は実施例1と同様にして、カーボンアロイ塗付電極を製造し、ORR活性値を測定した。その結果を、下記表1に記載した。
(実施例5)
<ZIF8、Fe(acac)添加(2−mim)混合物の炭素材料合成(5E)>
(ZIF8、Fe(acac)添加(2−mim)混合物の調製)
2−メチルイミダゾール(2−mim)(Aldrich社製)1.00g、ZIF8 9.00g(BASF社製、Basolite Z1200)、Fe(acac)0.47g(Aldrich社製、純度99.95%以上(残存金属量基準))を、ワーリング社製、X−TREME MX1200XTM容器に添加し、窒素置換した後、10000rpmで、40秒間混合し、ZIF8、Fe(acac)添加2−mim混合物(5A)を得た。
Figure 0006454350
分子式:C1014Fe、分子量:254.061
元素分析(計算値):C,47.27;H,5.55;Fe,21.98;O,25.19
(焼成・粉砕・酸洗浄処理、1回目焼成、流通炉)
ZIF8、Fe(acac)添加2−mim混合物(5A)2.0361gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素流量を毎分200mLとし、30分間室温で流通させた。30℃から1000℃まで毎分5℃昇温し、1000℃で1時間保持した。その後、3時間かけて室温まで冷却し、炭素前駆体(5B)を得た。得られた炭素前駆体(5B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・遠心ろ過・上澄み液の除去を着色がなくなるまで繰返した。水で洗浄後、濾過・風乾した。得られた炭素材料を110℃で3時間真空乾燥し、室温まで放置し、そのまま一晩放置して、酸洗浄済み炭素前駆体(5C)を0.6244g得た。
(焼成・粉砕処理、2回目焼成、真空ガス置換/回転炉)
炭素前駆体(5C)0.4100gを石英ボートに測り取り、真空ガス置換回転炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素流量を毎分200mLとし、1分間室温で流通させた。次に、真空ポンプで管内が1.9×10Paとなるまで排気し、窒素置換を3度繰返した。その後、窒素の流量を毎分20mLに下げて、30℃から1000℃まで毎分5℃昇温し、1000℃で1時間保持した。その際に石英管を毎分2.0rpmで回転させた。その後、3時間かけて室温まで冷却し、未酸洗浄の炭素材料(5D)を得た。炭素材料(5D)をメノウ乳鉢で粉砕し、未酸洗浄の炭素材料(5E)を0.3587g得た。得られた未酸洗浄の炭素材料(5E)を実施例5の含窒素カーボンアロイとした。
(BET法による比表面積測定)
未酸洗浄の炭素材料(5E)を用いた以外は実施例1と同様にして、比表面積をBET法により測定した。その結果を、下記表1の酸洗浄後に単離した含窒素カーボンアロイの欄に記載した。
(カーボンアロイ塗付電極の作製・酸素還元反応(ORR)活性測定)
未酸洗浄の炭素材料(5E)を用いた以外は実施例1と同様にして、カーボンアロイ塗付電極を製造し、ORR活性値を測定した。その結果を、下記表1に記載した。
(実施例6)
<ZIF8、Fe(acac)添加(2−mim)混合物の炭素材料合成(6E)>
(連続焼成 流通炉・粉砕処理)
上述のZIF8、Fe(acac)添加2−mim混合物(5A)2.0666gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素流量を毎分200mLとし、30分間室温で流通させた。30℃から700℃まで毎分5℃昇温し、700℃で5時間保持し、さらに700℃から1000℃まで毎分5℃で昇温し、1000℃で1時間保持した。その後、3時間かけて室温まで冷却し、炭素前駆体(6B)を得た。得られた炭素前駆体(6B)をメノウ乳鉢で粉砕し、未酸洗浄の炭素前駆体(6C)を0.6206g得た。得られた未酸洗浄の炭素材料(6E)を実施例6の含窒素カーボンアロイとした。
(BET法による比表面積測定)
未酸洗浄の炭素材料(6E)を用いた以外は実施例1と同様にして、比表面積をBET法により測定した。その結果を、下記表1の未酸洗浄含窒素カーボンアロイの欄に記載した。
(カーボンアロイ塗付電極の作製・酸素還元反応(ORR)活性測定)
未酸洗浄の炭素材料(6E)を用いた以外は実施例1と同様にして、カーボンアロイ塗付電極を製造し、ORR活性値を測定した。その結果を、下記表1に記載した。
(実施例7)
<ZIF8、Fe(acac)添加(2−mim)混合物の炭素材料合成(7E)>
(連続焼成・粉砕・酸洗浄処理、1回目焼成、流通炉)
上述のZIF8、Fe(acac)添加2−mim混合物(5A)2.2351gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素流量を毎分200mLとし、30分間室温で流通させた。その後、窒素の流量を毎分20mLに下げて、30℃から700℃まで毎分5℃昇温し、700℃で10時間保持し、さらに700℃から1000℃まで毎分5℃で昇温し、1000℃で1時間保持した。その後、3時間かけて室温まで冷却し、炭素前駆体(7B)を得た。得られた炭素前駆体(7B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・遠心ろ過・上澄み液の除去を着色がなくなるまで繰返した。水で洗浄後、濾過・風乾した。得られた炭素材料を110℃で3時間真空乾燥し、室温まで放置し、そのまま一晩放置して、酸洗浄済み炭素前駆体(7C)を0.6257g得た。
(焼成・粉砕処理 2回目焼成 真空ガス置換炉)
炭素前駆体(7C)0.4424gを石英ボートに測り取り、真空ガス置換炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素流量を毎分200mLとし、1分間室温で流通させた。次に、真空ポンプで管内が1.9×10Paとなるまで排気し、窒素置換を3度繰返した。その後、窒素の流量を毎分20mLに下げて、30℃から1000℃まで毎分5℃昇温し、1000℃で1時間保持した。その後、3時間かけて室温まで冷却し、炭素材料(7D)を得た。炭素材料(7D)をメノウ乳鉢で粉砕し、未酸洗浄の炭素材料(7E)を0.3806g得た。得られた未酸洗浄の炭素材料(7E)を実施例7の含窒素カーボンアロイとした。
(BET法による比表面積測定)
未酸洗浄の炭素材料(7E)を用いた以外は実施例1と同様にして、比表面積をBET法により測定した。その結果を、下記表1の未酸洗浄含窒素カーボンアロイの欄に記載した。
(カーボンアロイ塗付電極の作製・酸素還元反応(ORR)活性測定)
未酸洗浄の炭素材料(7E)を用いた以外は実施例1と同様にして、カーボンアロイ塗付電極を製造し、ORR活性値を測定した。その結果を、下記表1に記載した。
(実施例8)
<ZIF8、FeCl・4HO添加(2−mim)混合物の炭素材料合成(8E)>
(ZIF8、FeCl・4HO添加(2−mim)混合物の調製)
2−メチルイミダゾール(2−mim)(Aldrich社製)1.00g、ZIF8 9.00g(BASF社製、Basolite Z1200)、FeCl・4HO 0.37g(和光純薬工業社製、純度99.9%)を、ワーリング社製、X−TREME MX1200XTM容器に添加し、窒素置換した後、10000rpmで、40秒間混合し、ZIF8、FeCl・4HO添加2−mim混合物(8A)を得た。
(連続焼成・粉砕・酸洗浄処理、1回目焼成、流通炉)
ZIF8、FeCl・4HO添加2−mim混合物(8A)2.0584gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素流量を毎分200mLとし、30分間室温で流通させた。30℃から700℃まで毎分5℃昇温し、700℃で10時間保持し、さらに700℃から1000℃まで毎分5℃で昇温し、1000℃で1時間保持した。その後、3時間かけて室温まで冷却し、炭素前駆体(8B)を得た。得られた炭素前駆体(8B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・遠心ろ過・上澄み液の除去を着色がなくなるまで繰返した。水で洗浄後、濾過・風乾した。得られた炭素材料を110℃で3時間真空乾燥し、室温まで放置し、そのまま一晩放置して、酸洗浄済み炭素前駆体(8C)を0.5412g得た。
(焼成・粉砕処理、2回目焼成、真空ガス置換炉)
炭素前駆体(8C)0.1409gを石英ボートに測り取り、真空ガス置換炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素流量を毎分200mLとし、1分間室温で流通させた。次に、真空ポンプで管内が1.9×10Paとなるまで排気し、窒素置換を3度繰返した。その後、窒素の流量を毎分20mLに下げて、30℃から1000℃まで毎分5℃昇温し、1000℃で1時間保持した。その後、3時間かけて室温まで冷却し、未酸洗浄の炭素材料(8D)を得た。炭素材料(8D)をメノウ乳鉢で粉砕し、未酸洗浄の炭素材料(8E)を0.1141g得た。得られた未酸洗浄の炭素材料(8E)を実施例8の含窒素カーボンアロイとした。
(BET法による比表面積測定)
未酸洗浄の炭素材料(8E)を用いた以外は実施例1と同様にして、比表面積をBET法により測定した。その結果を、下記表1の未酸洗浄含窒素カーボンアロイの欄に記載した。
(カーボンアロイ塗付電極の作製・酸素還元反応(ORR)活性測定)
未酸洗浄の炭素材料(8E)を用いた以外は実施例1と同様にして、カーボンアロイ塗付電極を製造し、ORR活性値を測定した。その結果を、下記表1に記載した。
(実施例9)
<ZIF8、Fe(salen)添加(2−mim)混合物の炭素材料合成(9E)>
(ZIF8、Fe(salen)添加(2−mim)混合物の調製)
2−メチルイミダゾール(2−mim)(Aldrich社製)1.00g、ZIF8(BASF社製、Basolite Z1200)9.00g、N,N’−エチレンビス(サリチリデンアミナト)鉄(II) (Fe(salen))(東京化成工業社製)0.596gを、ワーリング社製、X−TREME MX1200XTM容器に添加し、窒素置換した後、10000rpmで、40秒間混合し、ZIF8、Fe(salen)添加2−mim混合物(9A)を得た。
Figure 0006454350
分子式:C1614Fe、分子量:322.14
元素分析(計算値):C,59.65;H,4.38;Fe,17.34;N,8.70;O,9.93
(焼成・粉砕・酸洗浄処理、1回目焼成、流通炉)
ZIF8、Fe(salen)添加2−mim混合物(9A)2.1658gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素流量を毎分200mLとし、30分間室温で流通させた。30℃から700℃まで毎分5℃昇温し、700℃で10時間保持し、さらに700℃から1000℃まで毎分5℃で昇温し、1000℃で1時間保持した。その後、3時間かけて室温まで冷却し、炭素前駆体(9B)を得た。得られた炭素前駆体(9B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・遠心ろ過・上澄み液の除去を着色がなくなるまで繰返した。水で洗浄後、濾過・風乾した。得られた炭素材料を110℃で3時間真空乾燥し、室温まで放置し、そのまま一晩放置して、酸洗浄済み炭素前駆体(9C)を0.6795g得た。
(焼成・粉砕処理 2回目焼成 真空ガス置換炉)
炭素前駆体(9C)0.1618gを石英ボートに測り取り、真空ガス置換炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素流量を毎分200mLとし、1分間室温で流通させた。次に、真空ポンプで管内が1.9×10Paとなるまで排気し、窒素置換を3度繰返した。その後、窒素の流量を毎分20mLに下げて、30℃から1000℃まで毎分5℃昇温し、1000℃で1時間保持した。その後、3時間かけて室温まで冷却し、未酸洗浄の炭素材料(9D)を得た。炭素材料(9D)をメノウ乳鉢で粉砕し、未酸洗浄の炭素材料(9E)を0.1366g得た。得られた未酸洗浄の炭素材料(9E)を実施例9の含窒素カーボンアロイとした。
(BET法による比表面積測定)
未酸洗浄の炭素材料(9E)を用いた以外は実施例1と同様にして、比表面積をBET法により測定した。その結果を、下記表1の未酸洗浄含窒素カーボンアロイの欄に記載した。
(カーボンアロイ塗付電極の作製・酸素還元反応(ORR)活性測定)
未酸洗浄の炭素材料(9E)を用いた以外は実施例1と同様にして、カーボンアロイ塗付電極を製造し、ORR活性値を測定した。その結果を、下記表1に記載した。
(実施例10)
<ZIF8、FeCl・4HO添加DCPy混合物の炭素材料合成(10E)>
(ZIF8、FeCl・4HO添加DCPy混合物の調製)
3,4−ジシアノピリジン(DCPy、Aldrich社製)1.00g、ZIF8(BASF社製、Basolite Z1200)9.00g、FeCl・4HO(和光純薬工業社製、純度99.9%)0.37gを、ワーリング社製、X−TREME MX1200XTM容器に添加し、窒素置換した後、10000rpmで、40秒間混合し、ZIF8、FeCl・4HO添加DCPy混合物(10A)を得た。
Figure 0006454350
分子式:C733、分子量:129.119
元素分析(計算値):C,65.11;H,2.34;N,32.54
(連続焼成 流通炉・粉砕処理)
ZIF8、FeCl・4HO添加DCPy混合物(10A)3.2329gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素流量を毎分200mLとし、30分間室温で流通させた。
30℃から700℃まで毎分5℃昇温し、700℃で10時間保持し、さらに700℃から1000℃まで毎分5℃で昇温し、1000℃で1時間保持した。その後、3時間かけて室温まで冷却し、炭素前駆体(10B)を0.9369g得た。得られた炭素前駆体(10B)をメノウ乳鉢で粉砕し、未酸洗浄の炭素材料(10E)を得た。得られた未酸洗浄の炭素材料(10E)を実施例10の含窒素カーボンアロイとした。
(BET法による比表面積測定)
未酸洗浄の炭素材料(10E)を用いた以外は実施例1と同様にして、比表面積をBET法により測定した。その結果を、下記表1の未酸洗浄含窒素カーボンアロイの欄に記載した。
(カーボンアロイ塗付電極の作製・酸素還元反応(ORR)活性測定)
未酸洗浄の炭素材料(10E)を用いた以外は実施例1と同様にして、カーボンアロイ塗付電極を製造し、ORR活性値を測定した。その結果を、下記表1に記載した。
(実施例11)
<ZIF8、FeCl・4HO添加DCPy混合物の炭素材料合成(11E)>
(酸洗浄処理)
上述の未酸洗浄の炭素材料(10B)0.8496gをメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・遠心ろ過・上澄み液の除去を着色がなくなるまで繰返した。水で洗浄後、濾過・風乾した。得られた炭素材料を110℃で3時間真空乾燥し、室温まで放置し、そのまま一晩放置して、酸洗浄済み炭素材料(11C)を0.7923g得た。
(焼成・粉砕処理、2回目焼成、真空ガス置換/回転炉)
上述の炭素前駆体(11C)0.6589gを石英ボートに測り取り、真空ガス置換炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素流量を毎分200mLとし、1分間室温で流通させた。次に、真空ポンプで管内が1.9×10Paとなるまで排気し、窒素置換を3度繰返した。その後、窒素の流量を毎分20mLに下げて、30℃から1000℃まで毎分5℃昇温し、1000℃で1時間保持した。その際に石英管を毎分2.0rpmで回転させた。その後、3時間かけて室温まで冷却し、炭素材料(11D)を0.6017g得た。 炭素材料(11D)をメノウ乳鉢で粉砕し、未酸洗浄の炭素材料(11E)を実施例11の含窒素カーボンアロイとした。
(BET法による比表面積測定)
未酸洗浄の炭素材料(11E)を用いた以外は実施例1と同様にして、比表面積をBET法により測定した。その結果を、下記表1の未酸洗浄含窒素カーボンアロイの欄に記載した。
(カーボンアロイ塗付電極の作製・酸素還元反応(ORR)活性測定)
未酸洗浄の炭素材料(11E)を用いた以外は実施例1と同様にして、カーボンアロイ塗付電極を製造し、ORR活性値を測定した。その結果を、下記表1に記載した。
(実施例12)
<ZIF8、FeCl・4HO添加DCPN混合物の炭素材料合成(12E)>
(ZIF8、FeCl・4HO添加DCPN混合物の調製)
3,4−ジクロロフタロニトリル(DCPN、Aldrich社製)1.00g、ZIF8(BASF社製、Basolite Z1200)9.00g、FeCl・4HO(和光純薬工業社製、純度99.9%)0.37gを、ワーリング社製、X−TREME MX1200XTM容器に添加し、窒素置換した後、10000rpmで、40秒間混合し、ZIF8、FeCl・4HO添加DCPN混合物(12A)を得た。
Figure 0006454350
分子式:C82Cl22、分子量:197.02
元素分析(計算値):C,48.77;H,1.02;Cl,35.99;N,14.22
(焼成・粉砕処理、1回目焼成、流通炉)
ZIF8、FeCl・4HO添加DCPN混合物(12A)2.1185gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素流量を毎分300mLとし、30分間室温で流通させた。30℃から1000℃まで毎分5℃昇温し、1000℃で1時間保持した。その後、3時間かけて室温まで冷却し、炭素前駆体(12B)を0.7043g得た。得られた炭素前駆体(12B)をメノウ乳鉢で粉砕し、未酸洗浄の炭素前駆体(12C)を得た。
(焼成・粉砕処理、2回目焼成、真空ガス置換炉)
炭素前駆体(12C)0.2096gを石英ボートに測り取り、真空ガス置換炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素流量を毎分200mLとし、1分間室温で流通させた。次に、真空ポンプで管内が1.9×10Paとなるまで排気し、窒素置換を3度繰返した。その後、窒素の流量を毎分20mLに下げて、30℃から1000℃まで毎分5℃昇温し、1000℃で1時間保持した。その後、3時間かけて室温まで冷却し、炭素材料(12D)を0.1910g得た。炭素材料(12D)をメノウ乳鉢で粉砕し、未酸洗浄の炭素材料(12E)を実施例12の含窒素カーボンアロイとした。
(BET法による比表面積測定)
未酸洗浄の炭素材料(12E)を用いた以外は実施例1と同様にして、比表面積をBET法により測定した。その結果を、下記表1の未酸洗浄含窒素カーボンアロイの欄に記載した。
(カーボンアロイ塗付電極の作製・酸素還元反応(ORR)活性測定)
未酸洗浄の炭素材料(12E)を用いた以外は実施例1と同様にして、カーボンアロイ塗付電極を製造し、ORR活性値を測定した。その結果を、下記表1に記載した。
(比較例1)
<ZIF8、Fe(OAc)添加(2−Py)−TAz混合物の未酸洗浄の炭素材料合成(C1-E)>
(ZIF8、Fe(OAc)添加(2−Py)−TAz混合物の調製)
(2−Py)−TAz(東京化成工業社製)0.10g、ZIF8(BASF社製、Basolite Z1200)0.90g、Fe(OAc)(Aldrich社製、酢酸鉄(II)、純度99.99%以上(残存金属量基準))32mg、SUS304鋼球20個をジルコニア製45ml容器(フリッチュ製)に入れ、真空脱気し、窒素置換後、オバーポットで密閉した。遊星型ボールミル クラッシクラインP−7(フリッチュ製)を用いて、400rpmで3時間粉砕し、金属メッシュでSUS304鋼球を除き、ZIF8、Fe(OAc)添加(2−Py)−TAz混合物(C1-A)を得た。
Figure 0006454350
分子式:C1812、分子量:312.33
元素分析(計算値):C, 69.22, H, 3.87, N, 26.91
(焼成・粉砕・酸洗浄処理、1回目焼成、流通炉)
ZIF8、Fe(OAc)添加(2−Py)−TAz混合物(C1-A)0.5823gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素流量を毎分200mLとし、30分間室温で流通させた。30℃から900℃まで毎分5℃昇温し、900℃で1時間保持した。その後、3時間かけて室温まで冷却し、炭素前駆体(C1-B)を得た。得られた炭素前駆体(C1-B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・遠心ろ過・上澄み液の除去を着色がなくなるまで繰返した。水で洗浄後、濾過・風乾した。得られた炭素材料を110℃で3時間真空乾燥し、室温まで放置し、そのまま一晩放置して、酸洗浄済み炭素前駆体(C1-C)を0.1870g得た。
(焼成・粉砕・水洗浄処理、2回目焼成、真空ガス置換/回転炉)
炭素前駆体(C1-C)0.0909gを石英ボートに測り取り、真空ガス置換回転炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素流量を毎分200mLとし、1分間室温で流通させた。次に、真空ポンプで管内が1.9×10Paとなるまで排気し、窒素置換を3度繰返した。その後、窒素の流量を毎分20mLに下げて、30℃から1000℃まで毎分5℃昇温し、1000℃で1時間保持した。その際に石英管を毎分2.0rpmで回転させた。その後、3時間かけて室温まで冷却し、炭素材料(C1-D)を得た。炭素材料(C1-D)をメノウ乳鉢で粉砕し、水で洗浄後、濾過・風乾した。得られた炭素材料を110℃で3時間真空乾燥し、室温まで放置し、そのまま一晩放置して、未酸洗浄の炭素材料(C1-E)0.0540gを得た。得られた未酸洗浄の炭素材料(C1-E)を比較例1の含窒素カーボンアロイとした。
(BET法による比表面積測定)
未酸洗浄の炭素材料(C1-E)の比表面積をBET法により測定した。その結果を、下記表1の未酸洗浄含窒素カーボンアロイの欄に記載した。
(カーボンアロイ塗付電極の作製・酸素還元反応(ORR)活性測定)
未酸洗浄の炭素材料(C1-E)を用いた以外は実施例1と同様にして、カーボンアロイ塗付電極を製造し、ORR活性値を測定した。その結果を、下記表1に記載した。
(比較例2)
<ZIF8、Fe(OAc)添加(2−Py)−TAz混合物の酸洗浄済み炭素材料合成(C2-E)>
上述の炭素材料(C1-D)0.0547gをメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・遠心ろ過・上澄み液の除去を着色がなくなるまで繰返した。水で洗浄後、濾過・風乾した。得られた炭素材料を110℃で3時間真空乾燥し、室温まで放置し、そのまま一晩放置して、酸洗浄済み炭素材料(C2-E)0.0441gを得た。得られた酸洗浄済み炭素材料(C2-E)を比較例2の含窒素カーボンアロイとした。
(BET法による比表面積測定)
酸洗浄済み炭素材料(C2-E)を用いた以外は実施例1と同様にして、比表面積をBET法により測定した。その結果を、下記表1の酸洗浄後に単離した含窒素カーボンアロイの欄に記載した。
(カーボンアロイ塗付電極の作製・酸素還元反応(ORR)活性測定)
酸洗浄済み炭素材料(C2-E)を用いた以外は実施例1と同様にして、カーボンアロイ塗付電極を製造し、ORR活性値を測定した。その結果を、下記表1に記載した。
(比較例3)
<加熱乾燥済みZIF8の調製(C3-E)>
ZIF8(BASF社製、Basolite Z1200)2.0gを粉砕せずに、石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、脱気窒素置換を3回した後、窒素流量を毎分200mLとし、30分間室温で流通させた。30℃から100℃まで毎分5℃昇温し、100℃で24時間乾燥し、その後、12時間かけて室温まで冷却し、加熱乾燥済みZIF8を1.98g得た。得られた加熱乾燥済みZIF8を比較例3の加熱乾燥済みZIF8(C3-E)とした。表1の収率の欄には、加熱乾燥済みZIF8の収率を記載した。
(BET法による比表面積測定)
加熱乾燥済みZIF8(C3-E)の比表面積をBET法により測定した。その結果を、下記表1の未酸洗浄含窒素カーボンアロイの欄に記載した。
(カーボンアロイ塗付電極の作製・酸素還元反応(ORR)活性測定)
加熱乾燥済みZIF8(C3-E)を用いた以外は実施例1と同様にして、カーボンアロイ塗付電極を製造し、ORR活性値を測定した。その結果を、下記表1に記載した。
(比較例4)
<ZIF8の未酸洗浄の炭素材料合成(C4-E)>
(ZIF8粉砕品の調製)
ZIF8(BASF社製、Basolite Z1200)1.00g、SUS304鋼球20個をジルコニア製45ml容器(フリッチュ製)に入れ、真空脱気し、窒素置換後、オバーポットで密閉した。遊星型ボールミル クラッシクラインP−7(フリッチュ製)を用いて、400rpmで3時間粉砕し、金属メッシュでSUS304鋼球を除き、ZIF8粉砕品(C4-A)を得た。
(焼成・粉砕・酸洗浄処理、1回目焼成、流通炉)
ZIF8粉砕品(C4-A)0.5126gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素流量を毎分200mLとし、30分間室温で流通させた。30℃から900℃まで毎分5℃昇温し、900℃で1時間保持した。その後、3時間かけて室温まで冷却し、ZIF8の予備炭化物(C4-B)を得た。得られた予備炭化物(C4-B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・遠心ろ過・上澄み液の除去を着色がなくなるまで繰返した。水で洗浄後、濾過・風乾した。得られた予備炭化物材料を110℃で3時間真空乾燥し、室温まで放置し、そのまま一晩放置して、酸洗浄済み予備炭化物(C4-C)を0.2026g得た。
(焼成・粉砕処理、2回目焼成、真空ガス置換/回転炉)
上述の酸洗浄済み予備炭化物前駆体(C4-C)0.1836gを石英ボートに測り取り、真空ガス置換回転炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素流量を毎分200mLとし、1分間室温で流通させた。次に、真空ポンプで管内が1.9×10Paとなるまで排気し、窒素置換を3度繰返した。その後、窒素の流量を毎分20mLに下げて、30℃から1000℃まで毎分5℃昇温し、1000℃で1時間保持した。その際に石英管を毎分2.0rpmで回転させた。その後、3時間かけて室温まで冷却し、炭素材料(C4-D)を得た。炭素材料(C4-D)をメノウ乳鉢で粉砕し、水で洗浄後、濾過・風乾した。得られた炭素材料を110℃で3時間真空乾燥し、室温まで放置し、そのまま一晩放置して、未酸洗浄の炭素材料(C4-E)0.1159g得た。得られた未酸洗浄の炭素材料(C4-E)を比較例4の含窒素カーボンアロイとした。
(BET法による比表面積測定)
未酸洗浄の炭素材料(C4-E)を用いた以外は実施例1と同様にして、比表面積をBET法により測定した。その結果を、下記表1の未酸洗浄含窒素カーボンアロイの欄に記載した。
(カーボンアロイ塗付電極の作製・酸素還元反応(ORR)活性測定)
未酸洗浄の炭素材料(C4-E)を用いた以外は実施例1と同様にして、カーボンアロイ塗付電極を製造し、ORR活性値を測定した。その結果を、下記表1に記載した。
(比較例5)
<ZIF8の酸洗浄済み炭素材料合成(C5-E)>
上述の炭素材料(C4-D)0.0570gをメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・遠心ろ過・上澄み液の除去を着色がなくなるまで繰返した。水で洗浄後、濾過・風乾した。得られた炭素材料を110℃で3時間真空乾燥し、室温まで放置し、そのまま一晩放置して、酸洗浄済み炭素材料(C5-E)0.0513gを得た。得られた酸洗浄済み炭素材料(C5-E)を比較例5の含窒素カーボンアロイとした。
(BET法による比表面積測定)
酸洗浄済み炭素材料(C5-E)を用いた以外は実施例1と同様にして、比表面積をBET法により測定した。その結果を、下記表1の酸洗浄後に単離した含窒素カーボンアロイの欄に記載した。
(カーボンアロイ塗付電極の作製・酸素還元反応(ORR)活性測定)
酸洗浄済みZIF8材料(C5-E)を用いた以外は実施例1と同様にして、カーボンアロイ塗付電極を製造し、ORR活性値を測定した。その結果を、下記表1に記載した。
(比較例6)
<ZIF8、Fe(OAc)添加2−PyTAz(NH混合物の炭素材料合成(C6−E)>
(2−PyTAz(NHの調製)
J.Org.Chem.,2003,68,1158.を参考に、2−PyTAz(NHを調製した。2−ピリジルカルゴキシアルデヒド(東京化成工業社製)107.1mg、ヨウ素 500mgを、28%アンモニア水 9mLとTHF 1mLの混合溶媒に添加し、室温で1時間撹拌した。これにジシアノジアミド(東京化成工業社製)100mgとKOH 120mgの混合物を添加して、18時間加熱還流した。生成した沈殿をろ過し、Et2O(20%エタノール)で洗浄乾燥し2−PyTAz(NHを80mg得た。
Figure 0006454350
Figure 0006454350
2−PyTAz(NH
分子式:C、分子量:188.19
元素分析(計算値):C, 51.06, H, 4.28, N, 44.66
(ZIF8、Fe(OAc)添加2−PyTAz(NH混合物の調製)
2−PyTAz(NH0.10g、ZIF8(BASF社製、Basolite Z1200)0.90g、Fe(OAc)(Aldrich社製、酢酸鉄(II)、純度99.99%以上(残存金属量基準))32mg、SUS304鋼球20個をジルコニア製45ml容器(フリッチュ製)に入れ、真空脱気し、窒素置換後、オバーポットで密閉した。遊星型ボールミル クラッシクラインP−7(フリッチュ製)を用いて、400rpmで3時間粉砕し、金属メッシュでSUS304鋼球を除き、ZIF8、Fe(OAc)添加2−PyTAz(NH混合物(C6−A)を得た。
(焼成・粉砕・酸洗浄処理、1回目焼成、流通炉)
ZIF8、Fe(OAc)添加2−PyTAz(NH混合物(C6−A)2.5315gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素流量を毎分200mLとし、30分間室温で流通させた。30℃から900℃まで毎分5℃昇温し、900℃で1時間保持した。その後、3時間かけて室温まで冷却し、炭素前駆体(C6-B)を得た。得られた炭素前駆体(C6-B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・遠心ろ過・上澄み液の除去を着色がなくなるまで繰返した。水で洗浄後、濾過・風乾した。得られた炭素材料を110℃で3時間真空乾燥し、室温まで放置し、そのまま一晩放置して、酸洗浄済み炭素前駆体(C6-C)を0.4994g得た。
(焼成・粉砕・酸洗浄処理、2回目焼成、真空ガス置換/回転炉)
炭素前駆体(C6-C)0.3069gを石英ボートに測り取り、真空ガス置換回転炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素流量を毎分200mLとし、1分間室温で流通させた。次に、真空ポンプで管内が1.9×10Paとなるまで排気し、窒素置換を3度繰返した。その後、窒素の流量を毎分20mLに下げて、30℃から1000℃まで毎分5℃昇温し、1000℃で1時間保持した。その際に石英管を毎分2.0rpmで回転させた。その後、3時間かけて室温まで冷却し、炭素材料(C6-D)を得た。炭素材料(C6-D)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・遠心ろ過・上澄み液の除去を着色がなくなるまで繰返した。水で洗浄後、濾過・風乾した。得られた炭素材料を110℃で3時間真空乾燥し、室温まで放置し、そのまま一晩放置して、酸洗浄済み炭素材料(C6-E)0.2048gを得た。得られた酸洗浄済み炭素材料(C6-E)を比較例6の炭素材料とした。
(BET法による比表面積測定)
酸洗浄済み炭素材料(C6−E)を用いた以外は実施例1と同様にして、比表面積をBET法により測定した。その結果を、下記表1の酸洗浄後に単離した含窒素カーボンアロイの欄に記載した。
(カーボンアロイ塗付電極の作製・酸素還元反応(ORR)活性測定)
酸洗浄済み炭素材料(C6−E)を用いた以外は実施例1と同様にして、カーボンアロイ塗付電極を製造し、ORR活性値を測定した。その結果を、下記表1に記載した。
(比較例7)
<Fe(acac)、FeCl・4HO添加2−mim混合物の炭素材料合成(C7−E)>
(Fe(acac)、FeCl・4HO添加2−mim混合物の調製)
FeCl・4HO(和光純薬工業社製、純度99.9%)6.30g、2−メチルイミダゾール(2−mim)(Aldrich社製) 6.30g、Fe(acac)(Aldrich社製、純度99.95%)0.40gをワーリング社製、X−TREME MX1200XTM容器に添加し、窒素置換した後、10000rpmで、40秒間混合し、Fe(acac)、FeCl・4HO添加2−mim混合物(C7−A)を得た。
(焼成・粉砕・酸洗浄処理、1回目焼成、流通炉)
Fe(acac)、FeCl・4HO添加2−mim混合物(C7−A)2.9987gを石英ボートに測り取り、管状炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素流量を毎分200mLとし、30分間室温で流通させた。30℃から800℃まで毎分5℃昇温し、800℃で1時間保持した。その後、3時間かけて室温まで冷却し、炭素前駆体(C7−B)を得た。得られた炭素前駆体(C7-B)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・遠心ろ過・上澄み液の除去を着色がなくなるまで繰返した。水で洗浄後、濾過・風乾した。得られた炭素材料を110℃で3時間真空乾燥し、室温まで放置し、そのまま一晩放置して、酸洗浄済み炭素前駆体(C7-C)を0.2561g得た。
(焼成・粉砕・酸洗浄処理 2回目焼成 真空ガス置換炉)
炭素前駆体(C7−B)をメノウ乳鉢で粉砕し、0.1607gを石英ボートに測り取り、真空ガス置換回転炉内に挿入された4.0cmφ(内径3.6cmφ)の石英管の中央に設置し、窒素流量を毎分200mLとし、1分間室温で流通させた。次に、真空ポンプで管内が1.9×10Paとなるまで排気し、窒素置換を3度繰返した。その後、窒素の流量を毎分20mLに下げて、30℃から1000℃まで毎分5℃昇温し、1000℃で1時間保持した。その後、3時間かけて室温まで冷却し、炭素材料(C7-D)を得た。炭素材料(C7-D)をメノウ乳鉢で粉砕し、濃塩酸洗浄・遠心ろ過・上澄み液の除去を着色がなくなるまで繰返した。水で洗浄後、濾過・風乾した。得られた炭素材料を110℃で3時間真空乾燥し、室温まで放置し、そのまま一晩放置して、酸洗浄済み炭素材料(C7-E)0.1119gを得た。得られた酸洗浄済み炭素材料(C7-E)を比較例7の炭素材料とした。
(BET法による比表面積測定)
酸洗浄済み炭素材料(C7−E)を用いた以外は実施例1と同様にして、比表面積をBET法により測定した。その結果を、下記表1の酸洗浄後に単離した含窒素カーボンアロイの欄に記載した。
(カーボンアロイ塗付電極の作製・酸素還元反応(ORR)活性測定)
酸洗浄済み炭素材料(C7−E)を用いた以外は実施例1と同様にして、カーボンアロイ塗付電極を製造し、ORR活性値を測定した。その結果を、下記表1に記載した。
(比較例8)
無機金属塩又は有機金属錯体の割合が1質量%(対基質+触媒)になるように、2−メチルイミダゾール(2−mim)(Aldrich社製)1.00gに、FeCl・4HO(和光純薬工業社製、純度99.9%)16mg、Fe(acac)(Aldrich社製、純度99.95%)23mgをワーリング社製、X−TREME MX1200XTM容器に添加し、窒素置換した後、10000rpmで、40秒間混合し、Fe(acac)、FeCl・4HO添加2−mim混合物(C8−A)を得た。
Fe(acac)、FeCl・4HO添加2−mim混合物(C8−A)を比較例7と同様に焼成したが、極微量の炭素材料のみしか得られず、BET法による比表面積測定およびカーボンアロイ塗付電極の作製・酸素還元反応(ORR)活性測定もできなかった。
Figure 0006454350
表1より、実施例の含窒素カーボンアロイは、触媒性能を示すORR電圧が十分に高いことがわかった。さらに、含窒素カーボンアロイの収率も良好であった。
一方、比較例の含窒素カーボンアロイは、ORR電圧が低く、触媒として性能が劣るものであった。比較例1、2、6、7及び8は収率も劣るものであった。また、共有結合性有機骨格材料及び金属有機骨格材料を添加せず、無機金属塩又は有機金属錯体の割合を1質量%とした比較例8では、極微量の含窒素カーボンアロイしか得られなかった。
(燃料電池発電性能評価)
(1)触媒インクの調製
(1)−1 カソード用触媒インクの調製
各実施例の含窒素カーボンアロイ材料0.1gと、1.0gの5質量%ナフィオン(登録商標)溶液(溶媒:水と低級アルコールの混合物、WAKO 番号321−86703)、0.25mLの水(イオン交換水)、及び0.5mLの1−プロパノールを、超音波分散機で2.5時間分散し、カソード用非白金触媒インクを得た。
(1)−2 アノード用触媒インクの調製
50質量%白金が担持された白金担持カーボン(田中貴金属工業(株)社製、TEC10V50E)0.5gをガラス容器に秤取り、0.8mLの水を加えた後、セプタムシールでガラス容器を封管し、容器内を窒素置換した。上述した5質量%ナフィオン4.3mLと1−プロパノール1mLをガラス容器内に注入し、超音波を2.5時間照射することでアノード用触媒インクを得た。
(2)転写用触媒塗布膜の作製
(2)−1 カソード用触媒膜の調製
(1)−1で調製したカソード用触媒インクをテフロン(登録商標)シートベース上に、200μmクリアランスのアプリケータで塗布し、24時間かけてゆっくり乾燥させた。乾燥後、5cm×5cmサイズの正方形にカットした。この塗布膜の重量からベース重量を差し引いた塗布物重量は、47.6mg(1.9mg/cm)であった。
(2)−2 アノード用触媒膜の調製
(1)−2で調製したアノード用触媒インクをテフロン(登録商標)シートベース上に、300μmクリアランスのアプリケータで塗布し、24時間かけてゆっくり乾燥させた。乾燥後、5cm×5cmサイズの正方形にカットした。この塗布膜の重量からベース重量を差し引いた塗布物重量は、21.5mg(0.86mg/cm)であった。
(3)転写用プロトン伝導膜の調製
ナフィオン膜(NR211、デュポン社製)を8cm×8cmサイズの正方形にカットしたものを、1mol/LのCsCl水溶液に10時間浸漬し、イオン交換水で水洗した後、乾燥し、転写用プロトン伝導膜を得た。
(4)電極複合膜の調製
10cm×10cmサイズの正方形にカットした2枚のポリイミド膜(ユーピレックス75:宇部興産社製)の間に、(2)−1で調製した触媒膜、(3)で調製したプロトン伝導膜、(2)−2で調製した触媒膜の順に重ね合わせた。この際、触媒膜がプロトン伝導膜の中央で、塗布面がプトロン伝導膜に接する向きとした。この重ね合わせたシートを210℃、15MPaで10分間プレスした。2枚のポリイミド膜から、熱圧着された膜を取り出し、カソード塗布膜とアノード塗布膜のベースであるテフロン(登録商標)シートを剥離することにより、プロトン伝導膜の両面に触媒層が転写された電極複合膜を得た。この電極複合膜を0.5mol/Lの硫酸水溶液に10時間浸漬した後、イオン交換水で水洗し、乾燥後、目的の電極複合膜を得た。
(5)評価用燃料電池の組立て
(4)で得た電極複合膜を、5cm×5cmサイズの正方形にカットした2枚のカーボンクロス(ガス拡散層ELAT BASF社製)で挟み、200μm厚みのガスケット(テプロン製)を使用して、JARI標準セル(エフシー開発(株)社製)に組み込み、触媒有効面積25cmの燃料電池セルを得た。
(6)発電性能評価
この燃料電池セルを80℃に保ちながら、アノードに加湿水素、カソードに加湿空気を供給した。水素及び空気の加湿は、水を貯めたバブラーに各ガスを通すことで行った。水素用バブラーの水温は80℃、空気用バブラーの水温は80℃とした。ここで、水素のガス流量は1000ml/分、空気のガス流量は2500ml/分とし、常圧下で測定した。燃料電池セルの電流値を0Aから7.5Aまで、30秒毎に変化させ、各電流での安定した電圧を計測することにより、電流−電圧曲線を得た。
10 燃料電池、
12 セパレータ、
13 アノード電極触媒、
14 固体高分子電解質、
15 カソード電極触媒、
16 セパレータ、
20 電気二重層キャパシタ、
21 第1の電極、
22 第2の電極、
23 セパレータ、
24a 外装蓋、
24b 外装ケース、
25 集電体、
26 ガスケット

Claims (20)

  1. 下記一般式(1)で表される含窒素有機化合物、前記含窒素有機化合物の互変異性体、前記含窒素有機化合物の塩及び前記含窒素有機化合物の水和物から選択される少なくとも一種と、
    金属有機骨格材料と、
    無機金属塩及び有機金属錯体から選択される少なくとも一種とを含む前駆体を焼成する工程を含み、
    前記金属有機骨格材料は、多孔性材料であり、
    前記無機金属塩の金属種は、Fe及びCoから選択される少なくとも一種であり、
    前記有機金属錯体の金属種は、Fe及びCoから選択される少なくとも一種であり、
    前記焼成する工程は、前記前駆体を600〜1500℃で焼成する工程である含窒素カーボンアロイの製造方法;
    Figure 0006454350
    一般式(1)中、Qは、少なくとも1つの5〜7員環の芳香族環又は5〜7員環の複素芳香族環から構成される原子団を表し、Rは、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、又は下記一般式(2)〜(5)で表される置換基を表し、Qが含窒素複素芳香族環を含まない場合は、少なくとも1つのRは下記一般式(2)〜(5)で表される置換基を表す。nは1〜4の整数を表す。
    Figure 0006454350
    一般式(2)中、*はQへの結合部を表す。
    Figure 0006454350
    一般式(3)〜(5)中、R1〜R8はそれぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、又は置換もしくは無置換のヘテロ環基を表し、R1とR2、R3とR4、R7とR8は互いに結合して環を構成してもよい。*はQへの結合部を表す。
  2. 前記無機金属塩及び前記有機金属錯体の含有量は、前記前駆体の全質量に対して、0.1〜10質量%である請求項1に記載の含窒素カーボンアロイの製造方法。
  3. 前記一般式(1)において、Qは、5〜7員環の芳香族環又は5〜7員環の複素芳香族環である請求項1又は2に記載の含窒素カーボンアロイの製造方法。
  4. 前記一般式(1)において、Qは、ベンゼン環、ピリジン環又はイミダゾール環である請求項1〜3のいずれか1項に記載の含窒素カーボンアロイの製造方法。
  5. 前記一般式(1)において、Qは、5〜7員環の含窒素複素芳香族環である請求項1〜3のいずれか1項に記載の含窒素カーボンアロイの製造方法。
  6. 前記一般式(1)において、Qは、5〜7員環の含窒素複素芳香族環であり、Rは置換もしくは無置換のアルキル基、又は前記一般式(2)で表される置換基を表す請求項に記載の含窒素カーボンアロイの製造方法。
  7. 前記金属有機骨格材料は、ゼオライト型イミダゾール骨格材料である請求項1〜のいずれか1項に記載の含窒素カーボンアロイの製造方法。
  8. 前記無機金属塩は、無機金属塩化物である請求項1〜のいずれか1項に記載の含窒素カーボンアロイの製造方法。
  9. 前記無機金属塩の金属種が、Feである請求項1〜のいずれか1項に記載の含窒素カーボンアロイの製造方法。
  10. 前記無機金属塩は、含水塩である請求項1〜のいずれか1項に記載の含窒素カーボンアロイの製造方法。
  11. 前記有機金属錯体の金属種が、Feである請求項1〜10のいずれか1項に記載の含窒素カーボンアロイの製造方法
  12. 前記有機金属錯体は、金属アセタート錯体、β−ジケトン金属錯体、及びサレン錯体から選択される少なくとも一種である請求項1〜11のいずれか1項に記載の含窒素カーボンアロイの製造方法。
  13. 前記有機金属錯体は、アセチルアセトン鉄(II)錯体である請求項1〜12のいずれか1項に記載の含窒素カーボンアロイの製造方法。
  14. 前記有機金属錯体は、鉄サレン錯体である請求項1〜12のいずれか1項に記載の含窒素カーボンアロイの製造方法。
  15. 前記焼成する工程は、前記前駆体を700〜1050℃で焼成する工程である請求項1〜14のいずれか1項に記載の含窒素カーボンアロイの製造方法。
  16. 前記焼成する工程は、前記前駆体を700〜1050℃で1秒〜100時間保持する工程を含む請求項15に記載の含窒素カーボンアロイの製造方法。
  17. 前記焼成する工程の前に、前記前駆体を粉砕する工程をさらに含む請求項1〜16のいずれか1項に記載の含窒素カーボンアロイの製造方法。
  18. 前記焼成する工程の後に、焼成された含窒素カーボンアロイを粉砕する工程と、再焼成する工程とをさらに含む請求項1〜17のいずれか1項に記載の含窒素カーボンアロイの製造方法。
  19. 前記再焼成する工程は、1000〜1500℃で焼成する工程である請求項18に記載の含窒素カーボンアロイの製造方法。
  20. 前記再焼成する工程の前に、脱気及び窒素置換する工程をさらに含む請求項18又は19に記載の含窒素カーボンアロイの製造方法。

JP2016546611A 2014-09-01 2015-08-28 含窒素カーボンアロイの製造方法、含窒素カーボンアロイ及び燃料電池触媒 Expired - Fee Related JP6454350B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014177100 2014-09-01
JP2014177100 2014-09-01
PCT/JP2015/074426 WO2016035705A1 (ja) 2014-09-01 2015-08-28 含窒素カーボンアロイの製造方法、含窒素カーボンアロイ及び燃料電池触媒

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2016035705A1 JPWO2016035705A1 (ja) 2017-09-07
JP6454350B2 true JP6454350B2 (ja) 2019-01-16

Family

ID=55439768

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016546611A Expired - Fee Related JP6454350B2 (ja) 2014-09-01 2015-08-28 含窒素カーボンアロイの製造方法、含窒素カーボンアロイ及び燃料電池触媒

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP6454350B2 (ja)
WO (1) WO2016035705A1 (ja)

Families Citing this family (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6320333B2 (ja) * 2015-03-20 2018-05-09 富士フイルム株式会社 複合体、複合体の製造方法及び燃料電池触媒
KR20180036107A (ko) * 2016-09-30 2018-04-09 코오롱인더스트리 주식회사 담체, 연료전지용 전극, 막-전극 접합체 및 이를 포함하는 연료전지
JPWO2021177359A1 (ja) * 2020-03-04 2021-09-10
WO2022163752A1 (ja) * 2021-01-29 2022-08-04 国立大学法人東海国立大学機構 炭素材料の製造方法、炭素材料、電極の製造方法、電極、及び燃料電池
CN112827510B (zh) * 2021-02-08 2022-04-12 福州大学 一种用于催化合成碳酸丙烯酯的多孔复合材料及其制备方法
CN116396489B (zh) * 2023-03-17 2024-04-12 西北农林科技大学 一种柔性金属有机框架材料的制备方法及应用

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP2673084A4 (en) * 2011-02-08 2018-01-24 Institut National De La Recherche Scientifique Catalysts made using thermally decomposable porous supports
WO2013125503A1 (ja) * 2012-02-20 2013-08-29 富士フイルム株式会社 含窒素カーボンアロイとその製造方法、カーボンアロイ触媒および燃料電池

Also Published As

Publication number Publication date
WO2016035705A1 (ja) 2016-03-10
JPWO2016035705A1 (ja) 2017-09-07

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5820408B2 (ja) 含窒素カーボンアロイとその製造方法、カーボンアロイ触媒および燃料電池
JP6320333B2 (ja) 複合体、複合体の製造方法及び燃料電池触媒
JP6454350B2 (ja) 含窒素カーボンアロイの製造方法、含窒素カーボンアロイ及び燃料電池触媒
Wang et al. Metal–organic frameworks and metal–organic gels for oxygen electrocatalysis: Structural and compositional considerations
JP5608595B2 (ja) 含窒素カーボンアロイ、その製造方法及びそれを用いた炭素触媒
Liu et al. The solid‐phase synthesis of an Fe‐N‐C electrocatalyst for high‐power proton‐exchange membrane fuel cells
Kong et al. Nitrogen‐Doped Wrinkled Carbon Foils Derived from MOF Nanosheets for Superior Sodium Storage
JP2016102037A (ja) 含窒素カーボンアロイの製造方法、含窒素カーボンアロイ及び燃料電池触媒
Li et al. Metal–organic frameworks as platforms for clean energy
Ma et al. Cobalt imidazolate framework as precursor for oxygen reduction reaction electrocatalysts
JP5975826B2 (ja) 燃料電池用電極触媒の製造方法、燃料電池用電極触媒およびその用途
KR102014985B1 (ko) 복합체, 이를 포함하는 전극 촉매, 그 제조방법 및 이를 이용한 연료전지
CN106450347A (zh) 一种氮化钴纳米立方‑氮掺杂碳复合材料、制备方法和应用
JPWO2013021688A1 (ja) 燃料電池用電極触媒の製造方法、燃料電池用電極触媒およびその用途
US20150376218A1 (en) Method for manufacturing nitrogen-containing carbon alloy, nitrogen-containing carbon alloy, and fuel cell catalyst
KR101753126B1 (ko) 그래핀-백금-금 나노복합체의 제조방법 및 이로부터 제조된 그래핀-백금-금 3차원 나노복합체
Oh et al. Direct, soft chemical route to mesoporous metallic lead ruthenium pyrochlore and investigation of its electrochemical properties
JP5918156B2 (ja) カーボンアロイ材料、カーボンアロイ触媒および燃料電池の製造方法
WO2014208740A1 (ja) 含窒素カーボンアロイの製造方法、含窒素カーボンアロイ及び燃料電池触媒
WO2015199125A1 (ja) 含窒素カーボンアロイの製造方法、含窒素カーボンアロイ及び燃料電池触媒
JP2007042519A (ja) 燃料電池用触媒及びその製造方法並びに燃料電池用電極及び燃料電池
JP2009231049A (ja) 白金担持カーボン、燃料電池用触媒、電極膜接合体、および燃料電池
JP5164627B2 (ja) 白金担持カーボン、燃料電池用触媒、電極膜接合体、および燃料電池
KR102266893B1 (ko) 금속 인화물 나노구조체, 이의 제조 방법 및 이를 포함하는 전극
JP5837356B2 (ja) 燃料電池用電極触媒の製造方法、燃料電池用電極触媒およびその用途

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20170228

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20180424

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20180612

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20181204

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20181214

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6454350

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees