JP6453552B2 - セラミック抵抗体、導電性セラミックスおよびその製造方法 - Google Patents

セラミック抵抗体、導電性セラミックスおよびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、セラミック抵抗体、セラミック抵抗体等に用いることが可能な導電性セラミックスおよびその製造方法に関する。
この種の導電性セラミックスに用いられる導電材としては、例えば特許文献1に記載のように、何ら処理等されていない未処理の炭素粉末(以下、未処理炭素粉末という。)を混合することが一般的である。本特許文献1は、電気絶縁粉末を主成分とし、結合材である粘土鉱物と導電材であるカーボン(未処理炭素粉末)を焼成してセラミック抵抗体を製造する方法が開示されている。特に、電気絶縁粉末としてアルミナ、結合材としてモンモリナイト、溶材として長石、および導電材としてカーボンを乾式混合して原料粉末を得ており、骨材として加える電気絶縁粉末として、メジアン径が異なる2種類の球状粒子と溶材とを適切な量ほど加えることでTCRを向上させている。
特開平11−214201号公報
導電性セラミックスのなかでも、特に抵抗体として用いられる導電性セラミックスは、TCRがゼロに近い値であり、かつ比抵抗が低いものが望まれている。しかしながら、上記特許文献1に記載の従来技術においては、未処理炭素粉末のカーボンを用いている。このため、未処理炭素粉末を混合した導電材は、抵抗材料として供するに十分なTCR(抵抗温度係数:Temperature Coefficient of Resistance)の低下が見込めず、また比抵抗が高くなる傾向にあるという問題を有している。すなわち、導電材として炭素粉末を用いる場合において、TCRがゼロに近い値を示す場合には比抵抗が高くなる傾向にあるため、TCRがゼロに近く、かつ比抵抗が低い導電性セラミックスを製造することは容易ではなかった。
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、比抵抗を低く維持したままTCRをゼロに近づけることができるセラミック抵抗体、導電性セラミックスおよびその製造方法を提供することにある。
この目的を達成するために、本発明は、炭素粉末を導電材として含有する導電性セラミックスであって、前記炭素粉末は、ニッケル(Ni)を主成分とするニッケル系金属めっき被膜された炭素粉末と、銅(Cu)を主成分とする銅系金属めっき被膜された炭素粉末との混合物であることを特徴としている。
このように構成した本発明は、導電材として用いる炭素粉末を、ニッケル(Ni)を主成分とするニッケル系めっき被膜された炭素粉末と、銅(Cu)を主成分とする銅系金属めっき被膜された炭素粉末との混合物とすることにより、比抵抗を低く維持したままTCRをゼロに近づけることができる。
また本発明は、上記発明において、前記炭素粉末は、グラファイトであることを特徴としている。
このように構成した本発明は、炭素粉末をグラファイトとすることにより、比抵抗を低く維持したままTCRをゼロに近づけることができる。
また本発明は、炭素粉末を導電材として含有する導電性セラミックスの製造方法であって、アルミナ粉末、ガラス粉末、ニッケル(Ni)を主成分とするニッケル系金属めっき被膜された炭素粉末、および銅(Cu)を主成分とする銅系金属めっき被膜された炭素粉末を混合して混合物とする混合工程と、前記混合工程にて混合した前記混合物を、不活性雰囲気中で焼結する焼結工程と、を備えたことを特徴としている。
このように構成した本発明は、アルミナ粉末、ガラス粉末、ニッケル(Ni)を主成分とするニッケル系金属めっき被膜された炭素粉末、および銅(Cu)を主成分とする銅系金属めっき被膜された炭素粉末を混合して混合物とする。そして、この混合物を、不活性雰囲気中で焼結することにより、炭素粉末を導電材として含有する導電性セラミックスの比抵抗を低く維持したままTCRをゼロに近づけることができる。
本発明は比抵抗を低く維持したままTCRをゼロに近づけることができる。なお、前述した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明より明らかにされる。
本発明の導電性セラミックスに係るめっきした炭素粉末の構成を示す表である。 上記導電性セラミックスの製造方法を示すフローチャートである。 ニッケルを0.1μmめっきした炭素粉末を導電材として混合した導電性セラミックスの試料No.1〜10の組成を示す表である。 ニッケルを1.0μmめっきした炭素粉末を導電材として混合した導電性セラミックスの試料No.11〜20の組成を示す表である。 図4と同様に、ニッケルを1.0μmめっきした炭素粉末を導電材として混合した導電性セラミックスの試料No.21〜25の組成を示す表である。 銅を0.1μmめっきした炭素粉末を導電材として混合した導電性セラミックスの試料No.26〜35の組成を示す表である。 銅を1.0μmめっきした炭素粉末を導電材として混合した導電性セラミックスの試料No.36〜45の組成を示す表である。 本発明の第1実施形態に係る導電性セラミックスの試料No.46〜50の組成を示す表である。 本発明の第2実施形態に係る導電性セラミックスの試料No.51〜57の組成を示す表である。 本発明の第2実施形態に係る導電性セラミックスの試料No.58〜67の組成を示す表である。 未被膜のグラファイトのみを導電材として混合した試料No.68〜76の組成を示す表である。 未被膜のグラファイト、および図3ないし図7に示すグラファイト材料をそれぞれ混合した導電性セラミックスのグラファイト材料の混合量に対する比抵抗を示すグラフである。 未被膜のグラファイト、および図3ないし図7に示すグラファイト材料をそれぞれ混合した導電性セラミックスのグラファイト材料の混合量に対するTCRを示すグラフである。 図3に示す導電性セラミックス(Ni0.1μmグラファイト)の比抵抗に対するTCRを示すグラフである。 図4および図5に示す導電性セラミックス(Ni1.0μmグラファイト)の比抵抗に対するTCRを示すグラフである。 図6に示す導電性セラミックス(Cu0.1μmグラファイト)の比抵抗に対するTCRを示すグラフである。 図7に示す導電性セラミックス(Cu1.0μmグラファイト)の比抵抗に対するTCRを示すグラフである。 比較となる導電性セラミックス(未被膜のグラファイト)の比抵抗に対するTCRを示すグラフである。 本発明の導電性セラミックスの第1実施形態に係るNiグラファイトの体積比に対する比抵抗およびTCRを示すグラフである。 本発明の導電性セラミックスの第2実施形態に係るNiグラファイトおよびCuグラファイトの体積比に対する比抵抗およびTCRを示すグラフである。 上記第2実施形態に係るNiグラファイトおよびCuグラファイトの体積比に対する比抵抗およびTCRを示す詳細なグラフである。 上記第2実施形態に係るNiグラファイトおよびCuグラファイトの体積比に対するTCRを示すグラフである。 上記第2実施形態に係る導電性セラミックスの最適条件でのTCRの再現性を示すグラフである。 図3ないし図7、および図11に示す導電性セラミックスのグラファイト材料混合量に対する収縮率を示すグラフである。 上記導電性セラミックスの第1実施形態に係るNiグラファイト混合量に対する収縮率を示すグラフである。 上記導電性セラミックスの第2実施形態に係るNiグラファイトおよびCuグラファイトの混合量に対する収縮率を示すグラフである。 上記導電性セラミックスの第2実施形態に係る試料No.63〜67の収縮率の再現性を示すグラフである。 上記第2実施形態に係る導電性セラミックスの試料No.58、60、61、65、66のTCR、抵抗値、および比抵抗値を示す表である。
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る導電性セラミックスは、炭素粉末を導電材として含有し、例えば、セラミック抵抗体の導電材等として用いられる。導電材は、炭素粉末として、表面が金属被膜された炭素粉末と、表面を金属によって被覆しない炭素粉末(以下、未被膜の炭素粉末という。)とが混合された混合物が用いられる。具体的に、炭素粉末は、グラファイト粉末である。金属被膜は、ニッケル(Ni)を主成分とするニッケル系金属めっき、または銅(Cu)を主成分とする銅系金属めっき等の金属めっきを施した金属めっき被膜等である。
本発明では、炭素粉末として、TCRがマイナスであり、比抵抗が低く、分散性が良いとの特性から、グラファイトを選択した。炭素粉末としては、グラファイト粉末以外にもグラファイト粉末よりは比抵抗−TCR(抵抗温度係数:Temperature Coefficient of Resistance)特性が劣るものの、導電性を有しマイナスのTCRを有するものであれば、例えば、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラフェン、ホウ素(B)や窒素(N)のドープにより導電化したダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン、カーボンマイクロコイル、カーボンナノホーン等を用いることができる。
金属被膜は、例えば無電解めっき法にて形成されており、本発明では、一般的に抵抗器のTCR調整に用いられるニッケルを主成分とするニッケル系めっき被膜と、導電性の良い銅を主成分とする銅系めっき被膜とを選択した。なお、金属被膜としては、上記ニッケル系めっき被膜、銅系めっき被膜に加え、(1)融点が比較的高く、(2)比抵抗が低く、かつTCRが高く、(3)安価でめっき処理が容易であることが好ましく、例えば、銀(Ag)、金(Au)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)のいずれかの金属を主成分とするめっき被膜を用いることもできる。
導電性セラミックスの製造には、例えば、アルミナ粉(アルミナ粉末)、800℃〜1000℃で焼成可能な低温焼成用ガラスにて構成されたガラス粉(ガラス粉末)、ポリビニルアルコール(PVA)、鱗片状黒鉛を球状化した粒径8μmの未被膜のグラファイト粉末(未被膜のグラファイト)、金属被膜したグラファイト粉末、プロピレングリコール、およびイオン交換水が用いられる。
本第1実施形態では、金属被膜したグラファイトとして、図1に示すめっき厚1.0μmとなるようニッケルめっき処理したグラファイト粉末(以下、Ni1.0μmグラファイト)のみを混合したときにTCRがプラス方向へ変動したことから(図13)、導電材として、Ni1.0μmグラファイトを用いた。また、導電性セラミックス全体に対するNi1.0μmグラファイトと未被膜のグラファイトは、導電材としてNi1.0μmグラファイトのみを混合したときにTCRが飽和状態となった、試料No.18〜25(図13)の中から適当な値として34.8体積%(vol%)を選択して混合した。これらの条件に基づき、図8に示す試料No.47〜49を作製した。これらの試料No.47〜49と、Ni1.0μmグラファイトのみを混合した試料No.46、および未被膜のグラファイトのみを混合した試料No.50の5つの試料についてTCRおよび比抵抗を測定し、その結果を図19に示した。図19の各点は図8の各試料に対応しており、横軸は左側から試料No.46、No.47、No.48、No.49、No.50である。導電材の体積全体に対してNi1.0μmグラファイトの体積比が多いほどTCRはプラス方向へ変化した。これは、ニッケルのTCRとグラファイトのTCRのバランスが取れる金属被膜の厚みが1.0μmであったということであり、他の金属により金属被膜を形成する場合にはグラファイトのTCRとバランスが取れる被膜の厚みを選択することが好ましい。Ni1.0μmグラファイトを7割混合した試料No.47ではTCRがほぼゼロの値となった。したがって、導電性セラミックス全体に対して導電材を34.8体積%混合したとき、Ni1.0μmグラファイトを5割以上の割合で、特に未被膜のグラファイトとNi1.0μmグラファイトを体積比で3:7で混合すると、TCRがゼロに近い値となり、かつ比抵抗が低い導電性セラミックスを得た。
以上から、本発明の第1実施形態に係る導電性セラミックスは、ニッケルまたは銅等のめっきを施した炭素粉末(以下、めっき炭素粉末)と、未被膜の炭素粉末とを混合することにより、比抵抗を低く維持したまま、TCRがゼロ(0)付近のセラミック抵抗体を製造できる。すなわち、未被膜の炭素粉末は、TCRがマイナスであり比抵抗が高くなる傾向がある。また、TCRがプラスであり比抵抗が低い傾向にある金属粉末、例えばニッケル粉末を単に炭素粉末に混合しただけでは、ニッケル粉末へ電流が流れやすくなるため、炭素粉末が導電材として機能しにくく、セラミックス全体のTCRにニッケル粉末のTCRが大きく影響するため、全体のTCRをゼロに近づけることができない。これに対し、めっき炭素粉末は、TCRがプラスであり比抵抗が低い。このことから、未被膜の炭素粉末とめっき炭素粉末とを混合しつつ、その混合バランスを調整することによって、比抵抗を低く維持したままTCRがゼロ(0)付近にできるから、本発明に係るセラミックス材料を抵抗体として用いることに適している。
また、導電材として金属粉末、例えばニッケル粉末と未被膜の炭素粉末とを混合して使用する場合、ニッケルは炭素と比較して比重が重いため、これらを均一に分散させることは難しい。しかし、本発明におけるめっき炭素粉末はニッケルと炭素が複合化された材料であることに加え、めっき炭素粉末と未被膜の炭素粉末とは比重が近いため、均一に分散させることが容易である。さらに、セラミックス材料へ未被膜の炭素粉末を混合する場合、炭素が疎水性を有するため分散性が低く混ざりにくい。本発明においては、めっき炭素粉末を用いることによって、めっき炭素粉末のニッケル表面に酸化膜が形成されて濡れ性が向上するため、分散性を向上できる。この結果、セラミックス材料とめっき炭素粉末との間に空隙ができにくくなり、セラミック抵抗体としての導電性や強度、すなわち抗折力等の特性を向上できる。
さらに、未被膜の炭素粉末のみをそのまま混合して導電性セラミックスとした場合には、焼成時に炭素成分の一部が焼失してしまい、導電性が劣化するおそれがあるが、めっき炭素粉末を混合することにより、炭素成分を焼失しにくくでき、導電性セラミックスとしての導電性を維持できる。よって、従来では困難であったTCRが±200×10−6/K以内であり、かつ比抵抗が2×10−2Ω・cm以下の導電性セラミックスをも製造できる。
<第2実施形態>
ニッケルと銅との合金であるコンスタンタンは、TCRがゼロに近い値を示すとの知見があり、この知見に基づき、ニッケルめっきしためっき炭素粉末と銅めっきしためっき炭素粉末とを混合して導電材とした。すなわち、本発明の第2実施形態に係る導電性セラミックスが、前述した第1実施形態に係る導電性セラミックスと異なるのは、第1実施形態は、めっき炭素粉末と未被膜の炭素粉末とを混合したのに対し、第2実施形態は、ニッケルめっきしためっき炭素粉末と、銅めっきしためっき炭素粉末とを混合したことである。なお、その他の構成は第1実施形態と同じである。
本第2実施形態に係る導電性セラミックスは、導電材として、表面にニッケル系金属被膜を有する炭素粉末と、表面に銅系金属被膜を有する炭素粉末とが混合された混合物が用いられる。具体的には、炭素粉末は第一実施形態と同様のグラファイトを用いる。導電性セラミックスの製造には、めっき厚1.0μmでニッケルめっき処理しためっきグラファイト(Ni1.0μmグラファイト)と、同様にグラファイトをめっき厚1.0μmで銅めっき処理した銅めっき処理グラファイト(Cu1.0μmグラファイト)が用いられる。
本第2実施形態では、導電材として混合するめっき炭素粉末として、Ni1.0μmグラファイトとCu1.0μmグラファイトとを用い、上記第1実施形態と同様に、電性セラミックス全体に対して、Ni1.0μmグラファイトとCu1.0μmグラファイトとを34.8体積%混合した。これらの条件にしたがい、図9に示す試料No.51〜54を作製した。これら試料No.51〜54と、比較としてNi1.0μmグラファイトのみを導電材として混合した試料No.46とにつき、TCRおよび比抵抗を測定した結果を図20に示す。図20は横軸左から試料No.46、No.54、No.53、No.52、No.51に対応している。導電材の体積全体に対して、Cu1.0μmグラファイトが2割以下の範囲内のときはゼロ付近の値をとり、比抵抗も低くなった。
以上から、本発明の第2実施形態に係る導電性セラミックスは、ニッケルめっきしためっき炭素粉末と、銅めっきしためっき炭素粉末とを混合させた混合物を用いることにより、上記第1実施形態に係る導電性セラミックスと同様に、比抵抗を低く維持したまま、TCRがゼロ(0)付近のセラミック抵抗体を製造することができる。すなわち、ニッケルめっきしためっき炭素粉末および銅めっきしためっき炭素粉末は、熱拡散にてニッケルと銅の一部を合金化することで、接触界面にコンスタンタンが形成されたことと、上記第1実施形態と同様に、炭素粉末のTCRと金属のTCRとが互いに打ち消し合うことによる二つの相乗効果により、セラミックス材料全体としてTCRをゼロに近づけることができる。
なお、上記各実施形態においては、アルミナ粉を用いた導電性セラミックスについて説明したが、アルミナ粉に加えて窒化アルミニウム粉末を用いることにより、導電性セラミックスの熱伝導率を向上できる。また、PVA等のエポキシの含有率を増加させたり、アルミナ粉やガラス粉の含有率を増加させたりすることにより、導電性セラミックスの抗折力を向上させることもできる。
次に、本発明に係る導電性セラミックスの上記第1実施形態および第2実施形態の評価結果について説明する。
<材料>
導電性セラミックスの製造には、次の材料を使用した。
*アルミナ粉(昭和電工株式会社製 AL−45−1:中心径0.79μm)
*ガラス粉(日本電気硝子株式会社製 SNG−26A/F014:中心径2.58μm)
*PVA(電気化学工業株式会社製 デンカブチラール3000−K)
*未被膜のグラファイト粉末(伊藤黒鉛工業株式会社製 SG−BH8:粒径8μm)
*Niグラファイト(めっき厚:0.1μm、1.0μm)
*Cuグラファイト(めっき厚:0.1μm、1.0μm)
*プロピレングリコール(関東化学株式会社製 1−メトキシ2−プロパノール:99.00%)
*イオン交換水(純水度50mS/m)
<NiグラファイトおよびCuグラファイト>
上記NiグラファイトおよびCuグラファイトは、上記未被膜のグラファイト粉末(粒径8μm)を、めっき厚(膜厚)が0.1μmまたは1.0μmとなるよう、ニッケルまたは銅を主成分とする金属によりめっき処理したグラファイト粉末である。この結果、図1に示すようになった。以下、ニッケルめっき厚が0.1μmのグラファイト粉末をNi0.1μmグラファイトといい、同様に銅めっき厚が0.1μmのグラファイト粉末をCu0.1μmグラファイトと示す。
図1に示す各膜厚(めっき厚)は、めっきによる重量増加を元に未被膜のグラファイト粉末を8μmの真球とみなして算出している。
<製造プロセス>
図2に示すように、上述した各材料、具体的には、アルミナ粉、ガラス粉、PVA、導電材(未被膜のグラファイト粉末、Niグラファイト、Cuグラファイト)、プロピレングリコール、イオン交換水を、上皿電子天秤等を用いて計量して混合しスラリ状とする(S1:計量工程)。各材料の体積比については、図3ないし図10に示すように調整して試料No.1〜No.67とした。また、未被膜のグラファイト粉末は、図11に示すように調整して試料No.68〜No.76とした。
その後、このスラリ状の材料を、ハイブリッドミキサ(株式会社キーエンス製 HM−500)にて、例えば0.5hrほど混合してスラリ状の混合物とする(S2:混合工程)。次いで、スラリ状の混合物を、例えば70℃の温度で0.5hrほど乾燥させる(S3:乾燥工程)。
この乾燥させた混合物を、乳鉢にて粉砕してから、開口200μmメッシュのふるいを用いて粉状とする(S4:粉砕工程)。この後、この粉状の混合物を、プレス成型機(株式会社丸七鉄工所製 M−8 )にて、約1000kg/cmの圧力で加圧して、直径(Φ)16.5mm、又は4.5mmのディスク状にプレス成型する(S5:成型工程)。
これらディスク状に成型したものを、特殊雰囲気炉(ATV TECNOLOGY INC社製 PEO−603)を用いて、不活性雰囲気、すなわち窒素雰囲気中で、本実施形態で用いたガラス粉が溶ける温度、すなわち1000℃以下、好ましくは850℃まで昇温して1.5hr保持した後、80℃まで降温して0.5hr保持して、試料No.1〜No.76となる導電性セラミックスとする(S6:焼結工程)。そして、これら試料として製造した各導電性セラミックスの比抵抗、TCRおよび抗折力の評価を行った(S7:評価工程)。
<評価方法>
上記試料No.1〜No.76の評価方法は、次のように行った。
(1)比抵抗評価
高精度高機能抵抗率計(三菱ダイアインスツル株式会社製 Loresta−GP MCP−T600)を用い、測定電圧:10V、ブローブ:QPP(n=各1)として比抵抗を評価した。
(2)TCR評価
リード線をAg系導電性接着剤(硬化条件:180℃で30分)で各試料の両端に接着したサンプルを作成し、これらサンプルを、TCR検査装置を用い、常温から常温+100℃上昇するまでの測定(n=各1)にてTCRを評価した。
(3)収縮率評価
デジタルノギス(株式会社ミツトヨ製)を用い、各試料の焼結工程後のd寸法(n=各1)を測定して収縮率を評価した。
<評価結果>
(1)未被膜のグラファイトのみを混合した導電性セラミックス
未被膜のグラファイトのみを導電材として混合した試料No.68〜76(図11)を上記方法により製造し、TCRと比抵抗を測定した。図13に示すように、導電性セラミックス材料の全体に対する未被膜のグラファイトの体積比が変化してもTCRはマイナス(負)のまま推移し、未被膜のグラファイトを18.5体積%混合したとき(試料No.72)、TCRはマイナスの値のまま飽和状態となった。
(2)めっき処理したグラファイト粉末を1種類ずつ混合した導電性セラミックス
図3ないし図7に示すNi0.1μmグラファイト(試料No.1〜10)、Ni1.0μmグラファイト(試料No.11〜25)、Cu0.1μmグラファイト(試料No.26〜35)、およびCu1.0μmグラファイト(試料No.36〜45)をそれぞれ1種類ずつ導電材として混合した導電性セラミックスを上記方法により製造した。図12に示すように、いずれの試料においても、NiグラファイトまたはCuグラファイトの体積比に応じて、比抵抗(Ω・cm)の低下が確認できた。特に、Ni1.0μmグラファイトを混合させた場合に、最も比抵抗が低下する傾向があり、Ni1.0μmグラファイトを37.91体積%混合させた場合には、5.3×10−3Ω・cmという最小比抵抗値を得た。
図13に示すように、各試料においても、NiグラファイトまたはCuグラファイトの混合量(体積%)に応じて、TCRの上昇が確認できた。特に、Ni1.0μmグラファイトを混合させた場合には、その混合量20体積%付近(試料No.18)を境として、TCRが正側へ変化し、試料No.18以降はTCRが飽和状態となった。最小比抵抗値を示した37.91体積%混合品のTCRは、1159.8×10−6/Kであった。すなわち、図12および図13に示すように、各試料とも、めっき処理したグラファイト粉末の混合比を増やすと比抵抗は低下し、TCRが上昇する傾向が確認できた。以上のような結果から、TCRがマイナスである未被膜の炭素粉末と、金属被膜した炭素粉末とを混合することにより、TCRをゼロに近づけ、より比抵抗の低い導電性セラミックスを実現することが可能であることが明らかになった。
(3)第1実施形態に係る、未被膜のグラファイトとNi1.0μmグラファイトを混合した導電性セラミックス
未被膜のグラファイトとNi1.0μmグラファイトとを混合した試料No.47〜49と、Ni1.0μmグラファイトのみを混合した試料No.46、および未被膜のグラファイトのみを混合した試料No.50の各試料についてTCRおよび比抵抗を測定した。図19に示すように、Ni1.0μmグラファイトの導電材に占める比率を変化させると、導電性セラミックス全体に対して導電材を34.8体積%混合したとき、未被膜のグラファイトとNi1.0μmグラファイトとを体積比で3:7(試料No.47)の割合で混合すると、TCRがゼロに近い値となり、かつ比抵抗が低い導電性セラミックスとなった。
(4)第2実施形態に係る、Ni1.0μmグラファイトとCu1.0μmグラファイトとを混合した導電性セラミックス
Ni1.0μmグラファイトとCu1.0μmグラファイトとを導電材として用いた、図9に示す試料No.51〜54を作製した。この場合のNi1.0μmグラファイトおよびCu1.0μmグラファイトは、導電性セラミックス全体に対して34.8体積%である。これら試料No.51〜54と、比較としてNi1.0μmグラファイトのみを導電材として混合した試料No.46についてTCRおよび比抵抗を測定した。図20に示すように、導電材全体に対するCu1.0μmグラファイトの体積比を増加させるとTCRがゼロに近づく傾向を示し、Ni1.0μmグラファイトとCu1.0μmグラファイトとの体積比が8:2(試料No.54)よりもCu1.0μmグラファイトの体積比が少ない場合にTCRがゼロ付近となる数値が得られた。
以上の結果から、図19および図20に示すように、第1および第2実施形態のそれぞれにおいて、グラファイトの混合比率の変化に応じてTCRの負側への変化および比抵抗の低下が見られた。なお、第2実施形態は、第1実施形態に比べ、グラファイトの混合比率の変化に応じた比抵抗の変化が緩やかであり、比抵抗に対する影響が小さい傾向を示した。
(5)第2実施形態に係るTCR最適条件
Ni1.0μmグラファイトとCu1.0μmグラファイトとを混合した場合にTCRがゼロ付近となる混合比率を求めるため、Ni1.0μmグラファイトとCu1.0μmグラファイトとの体積比を1:0から8:2までの間でより詳細に変化させた、図9に示す試料のTCRと比抵抗とを測定した。図21は、左側から試料No.46、No.55、No.56、No.57、No.54に対応しており、Cu1.0μmグラファイトの混合比率に応じ、略直線状にTCRが下降し比抵抗が上昇した。また、図22に示すグラフ中の一次関数の傾きから、TCR=0となる最適な混合比率を算出したところ、Ni1.0μmグラファイト:Cu1.0μmグラファイト=8.4:1.6となった。すなわち、導電性セラミックス全体に対してNi1.0μmグラファイトとCu1.0μmグラファイトとを34.8体積%混合するとき、Cu1.0μmグラファイトを20体積%以下、好ましくは16体積%の割合で混合すると、TCRがゼロに近く、比抵抗が低い導電性セラミックスを得ることができる。
(6)TCR最適条件の再現性
Ni1.0μmグラファイトとCu1.0μmグラファイトとの合計混合量が34.8体積%の場合のTCRの最適条件(Ni1.0μmグラファイト:Cu1.0μmグラファイト=8.4:1.6)によって、5セット、各1個の混合体を試作してTCRの再現性について確認したところ、図23に示すように、TCRは、−90.67×10−6/K〜769.51×10−6/Kに亘ってばらついた結果となった(図23中の未処理)。これら試料につき、大気熱処理(エージング)することにより、TCRのばらつきが小さくなる傾向が確認でき、400℃の大気熱処理によって、TCRのばらつきの範囲を、−130.16×10−6/K〜28.65×10−6/Kまで小さくできた。
(7)収縮率
図24に示すように、いずれの試料についても、NiグラファイトまたはCuグラファイトの混合量(体積%)に応じて、収縮率の低下が確認できた。特に、Ni1.0μmグラファイトを混合させた試料は、最も収縮率が大きく、焼き締まる傾向があることが確認できた。
また、上記第1および第2実施形態に係る試料について、収縮率の確認を行なったところ、図25および図26に示すように、NiグラファイトまたはCuグラファイトの混合比率の変化に応じて、収縮率の低下が確認できた。特に、第1実施形態は、第2実施形態に比べ、収縮率に対する影響が小さい傾向を示し、また第2実施形態は、第1実施形態に比べ、焼き締まることが確認できた。
(収縮率の再現性)
NiグラファイトおよびCuグラファイトの合計混合量が、34.82体積%の場合のTCR最適条件(Niグラファイト:Cuグラファイト=8.4:1.6)によって、5セット、各1個の混合体を試作して収縮率σの再現性Δd(%)について確認したところ、図27に示すように、最小値(Min):−8.42%〜最大値(Max):−7.64%、収縮率σは0.293であった。
<碍子状抵抗体の評価>
Ni1.0μmグラファイトおよびCu1.0μmグラファイトの合計混合量が、34.8体積%の場合のTCR最適条件によって、下記作製条件に基づいて、図10に示す試料No.58〜67の碍子形状の抵抗体を試作した。これら抵抗体を焼結してから組み立てた試料No.58、No.60、No.61、No.65、No.66の5セット各1個の抵抗値およびTCRを確認したところ、図28に示すように、TCRは目標とした±200×10−6/Kの範囲内のものを作製することができた。さらに比抵抗は最も低い値で5.44×10−2Ω・cmのものを得ることができた。
<試料No.58〜67の作製条件>
*金型:Φ4.5mm 焼結後にD=約4.4mm、L=約14mmに加工した。
*導電材配合量:Niグラファイト:29.24体積%、Cuグラファイト:5.57体積% (Niグラファイト:Cuグラファイト=8.4:1.6)
*焼結条件:N雰囲気で850℃まで1.5Hrで昇温させ1.5Hr保持した後、0.5Hrで降温させた。
*エージング:大気雰囲気で400℃まで3Hrで昇温させ3Hr保持した後、3Hrで降温させた。
*各試料には、リード付キャップを手動組立機にて圧入して取り付けた。
*フェノールホルムアルデヒド系樹脂(群栄化学工業株式会社製 PL2207)を170℃で2分間試料にレジン塗装してから、TCRおよび抵抗値の評価を行った。

Claims (3)

  1. 炭素粉末を導電材として含有する導電性セラミックスであって、
    前記炭素粉末は、ニッケル(Ni)を主成分とするニッケル系金属めっき被膜された炭素粉末と、銅(Cu)を主成分とする銅系金属めっき被膜された炭素粉末との混合物である
    ことを特徴とする導電性セラミックス。
  2. 請求項記載の導電性セラミックスにおいて、
    前記炭素粉末は、グラファイトである
    ことを特徴とする導電性セラミックス。
  3. 炭素粉末を導電材として含有する導電性セラミックスの製造方法であって、
    アルミナ粉末、ガラス粉末、ニッケル(Ni)を主成分とするニッケル系金属めっき被膜された炭素粉末、および銅(Cu)を主成分とする銅系金属めっき被膜された炭素粉末を混合して混合物とする混合工程と、
    前記混合工程にて混合した前記混合物を、不活性雰囲気中で焼結する焼結工程と、
    を備えたことを特徴とする導電性セラミックスの製造方法。
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