ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)運転支援システムの構成:
(2)運転支援システムの処理:
(3)他の実施形態:
(1)運転支援システムの構成:
図1は、本実施形態にかかる運転支援システムとしてのナビゲーション端末10の構成を示すブロック図である。ナビゲーション端末10は道路を走行する車両Qに搭載されている。ナビゲーション端末10はCPU,RAM,ROM等を備える制御部20と記録媒体30とを備える。制御部20は、記録媒体30やROMに記憶されたプログラムを実行する。本実施形態において制御部20は、このプログラムの一つとして運転支援プログラム21を実行する。
さらに、車両Qは、GPS受信部41と車速センサ42とジャイロセンサ43とECU(Electronic Control Unit)44と走行距離計45と制動部46とを備えている。GPS受信部41は、GPS衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して車両Qの現在位置を算出するための信号を出力する。制御部20は、この信号を取得して車両Qの現在位置を取得する。車速センサ42は、車両Qが備える車輪の回転速度に対応した信号を出力する。制御部20は、図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、車速を取得する。ジャイロセンサ43は、車両Qの水平面内の旋回についての角加速度を検出し、車両Qの向きに対応した信号を出力する。制御部20は、この信号を取得して車両Qの進行方向を取得する。車速センサ42およびジャイロセンサ43等は、車両Qの走行軌跡を特定するために利用される。本実施形態において、制御部20は、公知のマップマッチングを行うことにより、車両Qの走行軌跡にマッチングする位置と形状の道路区間である走行道路区間を特定し、当該走行道路区間上にて車両の現在位置を特定する。また、制御部20は、車両Qの走行軌跡をGPS受信部41の出力信号に基づいて補正する。
ECU44は、車両Qの各部を制御するためのコンピュータである。ECU44は、制御部20と通信可能であり、ECU44からの指令に応じて車両Qの各部を制御することが可能となっている。走行距離計45は、車両Qの走行距離を計測するセンサを含んでいる。具体的に、走行距離計45は、車両Qの車輪に連結する部材(例えば車軸)の回転数を計測する回転センサを含む。走行距離計45は、回転センサにて計測された回転数から車両Qの速度を算出し、当該速度から走行距離を算出する。走行距離計45は、車両Qの製造時からの走行距離である生涯走行距離を計測する。走行距離計45は生涯走行距離をECU44に出力し、さらにECU44は生涯走行距離を制御部20に出力する。制動部46は、摩擦ブレーキやエンジンブレーキや回生ブレーキ等の制動力を生じさせる機構である。ECU44は、運転者のブレーキペダルの操作に応じて制動部46に制動力を生じさせるとともに、制御部20からの指令に応じて制動部46に制動力を生じさせる。
記録媒体30には、地図情報30aが記録されている。地図情報30aには車両Qが走行する道路上に設定された交差点(ノード)の位置および標高等を示すノードデータ、交差点間の道路区間(リンク)の形状を特定するための形状補間点の位置および標高等を示す形状補間データ、道路区間についての情報(区間長等)を示すリンクデータ等が含まれている。制御部20は、地図情報30aが示すノードデータおよび形状補間データに基づいて道路形状を特定することができる。形状補間点は、概ね道路の幅方向の中央位置に設けられている点である。地図情報30aにおいて、各道路区間と各交差点について固有の識別情報が定義されており、制御部20は、識別情報に基づいて道路区間と交差点とを一意に取得できる。
記録媒体30には、学習情報DB(Database)30bが記録されている。学習情報DB30bは、学習情報を蓄積したデータベースである。学習情報とは、地図情報30aが示す地図上において、車両Qが減速した減速位置と、当該減速位置に至る車両Qの経路とを特定した学習経路、および、当該学習経路における運転支援の内容を示す情報である。
図2A〜2Cは、学習経路Rの模式図である。学習経路Rは、車両が所定の減速動作を行った減速位置E(白四角)を終点とし、当該減速位置Eまでの走行距離が所定の基準距離(例えば300m)となる開始位置S(白丸)を始点とする経路である。本実施形態の減速が終了することであり、減速位置Eは減速が終了した地点である。すなわち、減速位置Eにおける生涯走行距離は、開始位置Sにおける生涯走行距離よりも基準距離だけ大きい。また、減速が終了した地点とは、車速が停止閾値(例えば5km/時)以下となった地点、または、車速が所定量(例えば20km/時)以上減少したのに続いて車両が加速した地点である。
学習経路Rは、減速位置Eと、学習経路R上の所定の特徴点の位置である特徴位置と、当該減速位置と当該特徴位置との間において車両が走行した走行距離である地点間距離とによって特定される。ここで、特徴点は、交差点であり、具体的に、道なりに接続している道路以外の道路へと車両が退出した交差点(以下、右左折交差点)である。交差点とは、3個以上の道路区間が接続しているノードである。交差点において道なりに接続している道路へと車両が退出したとは、交差点における進行方向の変化角が基準角(例えば30度)未満であることを意味する。交差点に対する進入方向と、交差点からの退出方向との差が基準角以上であった交差点が、道なりに接続している道路以外の道路へと車両が退出した右左折交差点となる。交差点に対する進入方向とは、交差点を走行する直前の走行道路区間の方向であり、当該走行道路区間についての形状補間点データに基づいて特定できる。交差点からの退出方向とは、交差点を走行した直後の走行道路区間の方向であり、当該走行道路区間についての形状補間点データに基づいて特定できる。
図2A,2Bに示すように、特徴点には学習経路Rの始点と終点とが含まれ、特徴位置には右左折交差点に対応する特徴位置Cのほかに開始位置Sと減速位置Eとが含まれる。以下、開始位置Sと減速位置Eとを、それぞれ特徴位置S,Eと表記する場合もある。図2A,2Bの学習経路Rは、特徴位置S,C,Eの座標と、特徴位置Cにおける生涯走行距離から開始位置Sにおける生涯走行距離を減算した地点間距離SCと、減速位置Eにおける生涯走行距離から特徴位置Sにおける生涯走行距離を減算した地点間距離CEとによって特定される。図2A,2Bにおいては、特徴位置C(白三角)に対応する交差点において車両の進行方向ががほぼ90度左方向に変化している。なお、学習経路R上に複数の右左折交差点が存在してもよい。
一方、図2Cの学習経路Rは、特徴位置S,Eの座標と、減速位置Eにおける生涯走行距離から開始位置Sにおける生涯走行距離を減算した地点間距離SEとによって特定される。図2Cにおいては、位置T(ハッチングの三角)に対応する交差点において車両がほぼ90度直進しており、学習経路Rの特徴位置が開始位置Sと減速位置Eとで構成されている。また、学習情報DB30bにおいて、学習経路Rとともに、当該学習経路Rを構成する道路区間と交差点の識別情報が記録されている。
さらに、学習情報は、学習経路Rとともに当該学習経路Rにおける運転支援内容を示す情報を含む。本実施形態においては、運転支援として制動部46に制動力を生じさせる減速制御が実施される。具体的に、学習情報において、減速位置Eまでの走行距離ごとに目標車速が設定されており、当該目標車速を実現するように減速制御が実施される。さらに、学習情報は、学習経路Rにおける運転支援を禁止することを示す禁止フラグが含まれる。
本実施形態において制御部20は、記録媒体30に記録された運転支援プログラム21を実行可能であり、制御部20は、当該運転支援プログラム21の処理により、車両Qの減速制御を行うための指令をECU44に出力する。このために、運転支援プログラム21は、学習部21aと運転支援部21bと禁止部21cと解除部21dとを含んでいる。
学習部21aは、地図情報30aが示す地図上において、車両Qが減速した減速位置Eと、当該減速位置Eに至る車両の経路とを特定した学習経路R、および、当該学習経路Rにおける運転支援の内容を示す学習情報を記録媒体30に記録する機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。以下、学習情報を記録媒体30に記録する手順について説明する。
学習部21aの機能により制御部20は、車両が減速動作をするか否かに拘わらず、所定の走行距離周期ごとの車両の現在位置と車速とを蓄積した走行軌跡(不図示)を記録媒体30に記録する。制御部20は、現在の直前の走行軌跡を所定の記録距離(例えば500m分)分だけ記録媒体30に記録する。この走行軌跡には、車両が走行していた走行道路区間(現在位置が存在していた走行道路区間)を示す情報も含まれる。車速センサ42からの信号に基づいて車両が減速動作をしたことを検知すると、制御部20は、減速動作が行われた時点の現在位置を減速位置E(特徴位置)として取得するとともに、走行軌跡上において生涯走行距離が減速位置Eよりも基準距離だけ小さい位置を開始位置S(特徴位置)として取得する。
さらに、制御部20は、走行軌跡上の交差点を検出し、当該交差点において道なりに接続している道路以外の道路へと車両が退出したか否かを判定する。すなわち、制御部20は、交差点を走行する直前の走行道路区間の方向と、交差点を走行した直後の走行道路区間の方向とがなす角が基準角以上となっている場合、当該交差点を右左折交差点と見なし、当該右左折交差点の位置を特徴位置Cとして取得する。以上のようにして特徴位置S,C,Eを取得すると、制御部20は、走行順が連続する特徴位置S,C,Eにおける生涯走行距離の差分を算出することにより地点間距離SC,CE,SEを算出する。
さらに、制御部20は、開始位置Sと減速位置Eにおける車速とに基づいて、減速位置Eまでの走行距離(以下、残距離)ごとに目標の車速を設定する情報を、運転支援内容を示す情報として生成する。例えば、制御部20は、車両Qの乗り心地や燃費等を考慮して最適な車速となるように残距離ごとに目標の車速を設定してもよい。制御部20は、車両Qが減速動作を行うとごとに、学習経路Rを特定する情報と、運転支援内容を示す情報とが対応付けられた学習情報を学習情報DB30bに蓄積していく。なお、学習経路Rを特定する情報には、学習経路Rの特徴位置S,C,Eが存在する道路要素としての道路区間や交差点の識別情報も含まれる。これにより、制御部20は、地図情報30aが示す地図上において学習経路Rを特定でき、当該学習経路Rにおいて運転支援を実施できる。また、制御部20は、学習情報を学習情報DB30bに新たに記録する場合、当該学習情報が示す学習経路Rにおける運転支援を許可しておく。すなわち、制御部20は、学習情報において、当該学習情報が示す学習経路Rにおける運転支援を禁止することを示す禁止フラグを設定しない。
運転支援部21bは、学習情報に基づいて学習経路Rにて運転支援を実施する機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。本実施形態において、運転支援は、学習経路にて車両を制動することである。運転支援部21bの機能により制御部20は、禁止フラグが設定されていない学習情報が示す学習経路R上を車両Qが走行している場合に、当該学習情報が示す目標の車速を減速位置Eまでの残距離ごとに取得する。そして、制御部20は、車両の現在位置から減速位置Eまでの残距離を導出し、当該残距離に対応する目標の車速が実現できるようにECU44を介して制動部46に制御信号を出力する。
禁止部21cは、学習経路Rについての地図情報30aが更新された場合に、学習経路Rにおける運転支援を禁止する機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。本実施形態において、制御部20は、新たな地図情報30aを通信や光ディスク等を介して取得し、当該新たな地図情報30aで、すでに記録媒体30に記録されている新たな地図情報30aを書き換える。禁止部21cの機能により制御部20は、地図情報30aを書き換えた場合、学習情報DB30bに記録されたすべての学習情報において禁止フラグを設定する。なお、地図情報30aは、地域ごとに管理されてもよく、地域ごとに更新されてもよい。この場合、制御部20は、地図情報30aが更新された地域に学習経路Rが属する学習情報についいてのみ禁止フラグを設定してもよい。
解除部21dは、運転支援の禁止後に車両が減速した経路である比較経路と、運転支援が禁止されている学習経路とが類似する場合に、当該学習経路における運転支援の禁止を解除する機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。すなわち、解除部21dの機能により制御部20は、運転支援の禁止後に減速動作が行われた際に、学習経路Rと同様の手法により比較経路を取得する。そして、制御部20は、比較経路が、学習情報DB30bに記録されている学習情報のうち禁止フラグが設定されている学習情報が示す学習経路Rと類似するか否かを判定する。比較経路は、学習経路Rと同様の構成であり、比較経路のうち所定の条件を満足するものが、学習経路Rとして学習情報DB30bに記録されることとなる。
具体的に、解除部21dの機能により制御部20は、学習経路Rと比較経路とがそれぞれ含む特徴位置S,C,E同士の距離が基準距離(例えば12.5m)以下、かつ、学習経路Rと比較経路とがそれぞれ含む地点間距離SC,CE,SE同士の差分が基準値(例えば12.5m)以下である場合に、学習経路Rと比較経路とが類似すると判定する。すなわち、解除部21dの機能により制御部20は、直前に取得した学習経路Rを意味する比較経路と、すでに学習情報DB30bに記録されている学習情報のうち禁止フラグが設定されている学習情報が示す学習経路Rとの類似性を、特徴位置S,C,Eと地点間距離SC,CE,SEの類似性に基づいて判定する。なお、学習経路Rと比較経路とで右左折交差点に対応する特徴位置Cの個数が一致しない場合、制御部20は、学習経路Rと比較経路とが類似すると判定しない。
さらに、解除部21dの機能により制御部20は、運転支援が禁止されている学習経路Rと比較経路とが類似する場合に、更新後の地図情報30aにて比較経路を構成する道路要素の識別情報で、更新前の地図情報30aにて学習経路Rを構成する道路要素の識別情報を書き換える。上述したように比較経路は、地図情報30aの更新後におけるマップマッチングによって特定された経路であり、比較経路を構成する道路区間や右左折交差点は更新後の地図情報30aの識別情報によって特定される。その一方で、学習情報DB30bに記録されている学習情報が示す学習経路の道路区間や右左折交差点の識別情報は、更新前の地図情報30aにて使用されていた識別情報であり、現在の地図情報30aの識別情報と不整合が生じ得る。そこで、解除部21dの機能により制御部20は、運転支援が禁止されている学習経路Rと比較経路とが類似する場合に、学習情報DB30bにおいて、現在の地図情報30aで使用されている識別情報で、現在の地図情報30aで使用されている識別情報と不整合が生じ得る識別情報を書き換える。
以上説明した本実施形態において、地図情報30aが更新された場合に、学習経路Rにおける運転支援を禁止するため、学習経路Rを定義する情報が地図情報30aの更新前後で相違する場合においても、不適切な運転支援が行われることを防止できる。また、運転支援が禁止されている学習経路Rと類似する比較経路にて車両が実際に減速した場合に学習経路Rにおける運転支援の禁止を解除するため、学習経路Rが大きく変化しない場合に学習経路Rにおける運転支援の禁止を解除できる。すなわち、地図情報30aの更新前後において、同様の運転支援を行っても差し支えがない場合に、学習経路Rについての学習情報を地図情報30aの更新後も有効に利用できる。具体的に、学習経路を構成する道路区間の存否や形状等が地図情報30aの更新前後で相違する場合においても、減速制御において不適切な制動が行われることを防止できる。
学習経路Rは、特徴位置S,C,Eとの間において車両が走行した走行距離である地点間距離SC,CE,SEとによって特定される。このように、特徴位置S,C,E間の走行距離の情報を学習すればよいため、学習する情報の量を抑制できる。すなわち、特徴点の数を絞り込むことにより、学習する情報の量を抑制できる。具体的に、特徴点を交差点とすることにより、例えば所定の走行距離ごとの車両Qの位置や、所定期間ごとの車両Qの位置を記録しなくても済むため、学習する情報の量を抑制できる。
さらに、特徴点を、道なりに接続している道路以外の道路へと車両Qが退出した右左折交差点とすることにより、道なり以外の道路に退出した交差点というさらに限られた位置の学習で済むため学習する情報の量を抑制できる。また、道なり以外の道路に退出した交差点(減速位置Eの手前で、ある程度の減速が行われる地点)の位置が大きく変化しない場合には、同様の運転支援を行っても差し支えないと推定できる。すなわち、減速位置Eに至る直前に右左折する位置が類似していれば、道なりに直進した交差点の位置がずれていたとしても、同様の運転支援を行っても差し支えないと推定できる。
また、特徴位置S,C,Eの類似性と地点間距離SC,CE,SEの類似性とに基づいて学習経路Rと比較経路の類似性を判定できるため、簡素な処理によって学習経路Rと比較経路の類似性を判定できる。例えば、現実の道路形状が図2Aのままで、例えば定期的なバージョンアップにより地図情報30aが更新された場合に、学習経路R上を車両Cが走行したとすると、学習経路Rと比較経路とが類似し、学習経路Rにおける運転支援の禁止が解除されることとなる。一方、現実の道路形状が図2Aの形状から図2Bの形状へと変化した場合、開始位置Sの位置が大きく異なることとなり、学習経路Rと比較経路とが類似しなくなり、学習経路Rにおける運転支援の禁止が解除されないこととなる。さらに、現実の道路形状が図2Aの形状から図2Cの形状へと変化した場合、右左折交差点に対応する特徴位置Cが消滅し、学習経路Rと比較経路とが類似しなくなり、学習経路Rにおける運転支援の禁止が解除されないこととなる。
さらに、解除部21dの機能により制御部20は、運転支援が禁止されている学習経路Rと比較経路とが類似する場合に、更新後の地図情報30aにて比較経路を構成する道路要素の識別情報で、更新前の地図情報30aにて学習経路Rを構成する道路要素の識別情報を書き換える。これにより、学習経路の類似判定を利用して、運転支援の禁止解除だけでなく、地図情報の識別情報の書き換えも行うことができる。学習経路Rと比較経路とが類似する場合、学習経路Rの走行時と比較経路の走行時とで、車両Qが同一の道路要素を通過したと推定できるため、地図情報30aの識別情報の適切に書き換えることができる。更新後の地図情報30aの識別情報にて学習経路Rが特定できるため、更新後の地図情報30aを用いたマップマッチングによって車両Qが学習経路Rを走行しているか否かを容易に判定することが可能となる。
(2)運転支援処理:
次に、運転支援プログラム21によって制御部20が実行する運転支援処理について説明する。図3は、運転支援処理を示すフローチャートである。まず、禁止部21cの機能により制御部20は、地図情報30aが更新されたか否かを判定する(ステップS100)。地図情報30aが更新されたと判定した場合(ステップS100:Y)、禁止部21cの機能により制御部20は、運転支援を禁止する(ステップS110)。すなわち、制御部20は、学習情報DB30bに記録されたすべての学習情報において禁止フラグを設定する。
次に、運転支援部21bの機能により制御部20は、運転支援が禁止されていない学習経路Rを車両Qが走行しているか否かを判定する(ステップS120)。すなわち、制御部20は、車両Qの現在位置が、禁止フラグが設定されていない学習経路Rの開始位置Sが存在する道路区間上に存在し、かつ、開始位置Sを通過したか否かを判定する。上述したように、学習経路Rを構成する道路要素としての道路区間と右左折交差点の識別情報は、更新後の地図情報30aの識別情報によって書き換えられているため、更新後の地図情報30aを用いたマップマッチングによって車両Qが開始位置Sを通過したか否かを容易に判定できる。本実施形態において、ステップS110において、学習情報DB30bに記録されたすべての学習情報において禁止フラグが設定されるため、ステップS110の後における最初のステップS120においては、運転支援が禁止されていない学習経路Rを走行していると判定されることはない。
運転支援が禁止されていない学習経路Rを車両Qが走行していると判定しなかった場合(ステップS120:N)、解除部21dの機能により制御部20は、減速動作が行われたか否かを判定する(ステップS150)。すなわち、制御部20は、車両にて減速が終了したか否かを判定する。減速動作が行われたと判定しなかった場合(ステップS150:N)、制御部20は、運転支援処理の最初に戻る。すなわち、制御部20は、減速動作が行われるまで待機する。
一方、減速動作が行われたと判定した場合(ステップS150:Y)、解除部21dの機能により制御部20は、減速位置Eに至る経路を比較経路として設定する。すなわち、制御部20は、ステップS150において行われた減速動作の位置である減速位置Eに至る経路を取得し、当該経路を比較経路として設定する。比較経路は、学習経路Rと同様に、特徴位置S,C,Eと地点間距離SC,CE,SEとによって特定される経路である。ただし、比較経路は、更新後の地図情報30aを使用してマップマッチングを行うことにより特定された経路であり、比較経路を構成する道路要素(道路区間、交差点)の識別情報は、更新後の地図情報30aの識別情報となっている。一方、学習情報DB30bに記録されている運転支援が禁止中の学習経路Rは、更新前の地図情報30aを使用してマップマッチングを行うことにより特定された経路であり、禁止中の学習経路Rを構成する道路要素(道路区間、交差点)の識別情報は、更新前の地図情報30aの識別情報となっている。
次に、解除部21dの機能により制御部20は、減速位置Eが比較経路の減速位置Eと最も近い禁止中の学習経路Rを取得する(ステップS170)。すなわち、制御部20は、学習情報DB30bにおいて禁止フラグが設定されている学習情報が示す学習経路Rのなかから、減速位置Eが比較経路の減速位置Eと最も近い学習経路Rを取得し、当該学習経路Rを比較対象とする。
次に、解除部21dの機能により制御部20は、比較経路と学習経路Rとが類似するか否かを判定する(ステップS180)。すなわち、制御部20は、ステップS170にて取得した比較対象の学習経路Rと比較経路とが類似するか否かを判定する。具体的に、制御部20は、学習経路Rと比較経路とがそれぞれ含む特徴位置S,C,E同士の距離が基準距離(例えば12.5m)以下、かつ、学習経路Rと比較経路とがそれぞれ含む地点間距離SC,CE,SE同士の差分が基準値(例えば12.5m)以下である場合に、学習経路Rと比較経路とが類似すると判定する。
比較経路と学習経路Rとが類似すると判定した場合(ステップS180:Y)、解除部21dの機能により制御部20は、類似する学習経路Rの禁止を解除する(ステップS190)。すなわち、制御部20は、比較経路と類似する学習経路Rは、実際に車両Qが走行して減速行動を行った経路であるとして、地図情報30aの更新後においても運転支援が行われるようにする。具体的に、制御部20は、比較経路と類似する学習経路Rを示す学習情報について設定されている禁止フラグを解除する。
次に、解除部21dの機能により制御部20は、学習経路Rについての識別情報を書き換える(ステップS200)。すなわち、制御部20は、運転支援が禁止されている学習経路Rと比較経路とが類似する場合に、更新後の地図情報30aにて比較経路を構成する道路要素の識別情報で、更新前の地図情報30aにて学習経路Rを構成する道路要素の識別情報を書き換える。これにより、更新後の地図情報30aにてマップマッチングを行うことにより、禁止を解除した学習経路R上を車両Qが走行しているか否かを容易に判定できるようになる。
一方、比較経路と学習経路Rとが類似すると判定しなかった場合(ステップS180:N)、学習部21aの機能により制御部20は、比較経路を新たな学習経路Rとして学習する(ステップS210)。すなわち、制御部20は、比較経路における運転支援内容を設定し、当該運転支援内容と比較経路(学習経路R)とを示す学習情報を新たに学習情報DB30bに記録する。具体的に、制御部20は、比較経路を車両Qが走行した際に取得した車速に基づいて、減速位置Eまでの走行距離ごとの目標の車速を運転支援内容として設定する。また、制御部20は、新たに記録する学習情報について禁止フラグを設定しない。
学習情報DB30bの学習情報のすべてについて一度は禁止フラグが設定されることとなるが、以上説明した処理を実行することにより、禁止フラグが設定されていない学習情報が生じることとなる。従って、ステップS120において、運転支援が禁止されていない学習経路Rを走行していると判定される場合が生じ得ることとなる。
ここで、運転支援が禁止されていない学習経路Rを車両Qが走行していると判定した場合(ステップS120:Y)、運転支援部21bの機能により制御部20は、運転支援を実施する(ステップS130)。すなわち、制御部20は、現在位置に基づいて学習経路Rの減速位置Eまでの残距離を導出し、当該残距離に対応する目標の車速が実現できるように車両Qの制動部46を制御する。
そして、学習部21aの機能により制御部20は、運転支援を実施した学習経路Rの学習情報を更新する(ステップS140)。例えば、制御部20は、既存の学習経路Rを車両Qが走行した際における車両Qの走行状態に基づいて、運転支援内容を更新してもよい。具体的に、制御部20は、既存の学習経路Rを車両Qが走行した際に取得した車速に基づいて、目標の車速を更新してもよい。さらに、制御部20は、既存の学習経路Rを車両Qが走行した際に減速動作が行われた位置によって減速位置Eを更新してもよい。なお、本実施形態において、できるだけ急激な減速制御が行われないように、制御部20は、目標の車速を大きくするような目標の車速の更新のみを許可したり、制動距離が大きくなるような減速位置Eの更新のみを許可したりしてもよい。また、既存の学習経路Rを車両Qが走行した際における減速位置Eや車速が突発的な異常値(ノイズ)であると判断される場合には、制御部20は、学習情報の更新をスキップしてもよい。
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、本発明の実施形態として他の実施形態を採用し得る。例えば、運転支援は、地図情報30aに基づいて表示する地図上において、車両Qが減速した減速位置Eを表示することであってもよい。本発明の実施形態として他の実施形態を採用し得る。すなわち、運転支援部21bの機能により制御部20は、禁止フラグが設定されていない学習情報が示す学習経路Rの終点である減速位置Eを取得し、当該減速位置Eを示す地図上の位置に運転者に注意喚起するマーカ等の画像を表示するようにディスプレイ(不図示)を表示制御してもよい。これにより、学習経路Rを構成する道路区間の存否や形状等が地図情報30aの更新前後で相違する場合においても、不適切な地図の表示が行われることを防止できる。
さらに、本発明の各手段の全部または一部は、車両Qの搭載されたナビゲーション端末10と通信可能なサーバに備えられてもよい。例えば、サーバが複数の車両Qのナビゲーション端末10が減速した減速位置に至る学習経路Rを学習するとともに、いずれかの車両が学習経路Rに類似する比較経路を走行して減速した場合に、当該学習経路Rにおける運転支援の禁止を解除してもよい。
また、学習経路Rは、所定の走行距離ごとの車両Qの現在位置や、所定の時間周期ごとの車両Qの現在位置の軌跡によって特定されてもよい。すなわち、学習経路Rは、必ずしも特徴位置と地点間距離とによって特定されなくてもよい。このように学習経路Rを現在位置の軌跡で特定する場合、制御部20は、比較経路と学習経路Rとの類似度を現在位置の軌跡の線形状の類似度によって評価してもよい。また、特徴位置は、道なりに接続する道路へと退出した交差点の位置に限らず、開始位置Sから減速位置Eまでの間に通過したすべての交差点の位置であってもよい。
さらに、本発明の運転支援は、少なくと減速位置Eに基づいて実施する運転支援であればよく、必ずしも減速制御と地図の表示でなくてもよい。例えば、制御部20は、例えば減速位置Eに対して所定距離以内に接近した場合に注意喚起のメッセージをスピーカから出力させてもよい。さらに、運転支援は走行予定経路の案内であってもよく、制御部20は、減速位置Eをできるだけ通過しないように走行予定経路を探索し、当該走行予定経路を案内してもよい。
地図情報は、減速位置を含む学習経路が特定可能な地図情報であればよく、学習経路が存在し得る道路区間や交差点を定義する情報であってもよい。減速位置に至る車両の経路とは、減速位置の走行する直前に車両が走行した経路であり、減速位置を終点とする経路である。減速位置に至る車両の経路は、所定の走行距離の経路であってもよいし、所定数の道路区間の経路であってもよいし、所定の期間の間に走行した経路であってもよい。車両が減速した減速位置は、車両が所定の減速動作を行った位置であり、車両が減速を開始した位置であってもよいし、車両が減速を終了した位置であってもよい。運転支援とは、学習経路上の少なくとも一部分において実施される運転支援であればよく、車両を制御することであってもよいし、運転者に減速について案内(音声出力、表示等)することであってもよい。学習経路を学習しておくことにより、減速位置に接近する適切なタイミングで運転支援を実施できる。運転支援手段は、学習情報に基づいて学習経路にて運転支援を実施すればよく、学習経路上の少なくとも一部分において運転支援を実施すればよい。
地図情報が更新された場合とは、地図情報の全体(地図を規定する地域の全域)についての情報が更新された場合であってもよいし、地図情報の一部(地図を規定する地域の一部)についての情報が更新された場合であってもよい。前者の場合、禁止手段は、学習経路が属する地域に拘わらず、すべての学習経路における運転支援を禁止してもよい。後者の場合、禁止手段は、地図情報が更新された地域に属する学習経路における運転支援を選択して禁止してもよいし、すべての学習経路における運転支援を禁止してもよい。
比較経路とは運転支援の禁止後に車両が減速した経路であり、学習経路と同様に、地図上において、減速位置と、当該減速位置に至る車両の経路とが特定された経路である。比較経路と学習経路とが類似するとは、比較経路と学習経路との類似度が閾値以上であることであってもよいし、比較経路と学習経路とが同一と見なせる場合であってもよい。解除手段は、学習経路における運転支援の禁止を解除すればよく、運転支援が禁止されている学習経路のうち、比較経路と類似する学習経路を選択して運転支援の禁止を解除すればよい。
ここで、学習経路は、減速位置と、学習経路上の所定の特徴点の位置である特徴位置と、当該減速位置と当該特徴位置との間において車両が走行した走行距離である地点間距離とによって特定されてもよい。この構成において、減速位置と特徴位置と、これらの位置間の走行距離の情報を学習すればよいため、学習する情報の量を抑制できる。すなわち、特徴点の数を絞り込むことにより、学習する情報の量を抑制できる。例えば、特徴点は、交差点であってもよい。これにより、例えば所定の走行距離ごとの車両の位置や、所定期間ごとの車両の位置を記録しなくても済むため、学習する情報の量を抑制できる。
さらに、特徴点は、道なりに接続している道路以外の道路へと車両が退出した交差点であってもよい。すなわち、道なり以外の道路に退出した交差点というさらに限られた位置の学習で済むため学習する情報の量を抑制できる。また、道なり以外の道路に退出した交差点(減速位置の手前で、ある程度の減速が行われる地点)の位置が大きく変化しない場合には、同様の運転支援を行っても差し支えないと推定できる。すなわち、減速位置に至る直前に右左折する位置が類似していれば、道なりに直進した交差点の位置がずれていたとしても、同様の運転支援を行っても差し支えないと推定できる。道なりに接続している道路とは、交差点に進入する際に走行した道路とほぼ直進方向に接続している道路であってもよいし、交差点に進入する際に走行した道路と、同一路線、同一幅員、同一レーン数の道路であってもよい。
また、解除手段は、学習経路と比較経路とがそれぞれ含む特徴位置同士の距離が基準距離以下、かつ、学習経路と比較経路とがそれぞれ含む地点間距離同士の差分が基準値以下である場合に、学習経路と比較経路とが類似すると判定してもよい。このように、特徴位置の類似性と地点間距離の類似性とに基づいて学習経路と比較経路の類似性を判定することにより、簡素な処理によって学習経路と比較経路の類似性を判定できる。
さらに、解除手段は、運転支援が禁止されている学習経路と比較経路とが類似する場合に、更新後の地図情報にて学習経路を構成する道路要素の識別情報で、更新前の地図情報にて比較経路を構成する道路要素の識別情報を書き換えてもよい。これにより、学習経路の類似判定を利用して、運転支援の禁止解除だけでなく、地図情報の識別情報の書き換えも行うことができる。道路要素とは、学習経路を構成する道路区間や交差点等の要素であり、道路要素を識別するために地図情報において固有の識別情報が定義されている。学習経路と比較経路とが類似する場合、学習経路の走行時と比較経路の走行時とで、車両が同一の道路要素を通過したと推定できるため、地図情報の識別情報の適切に書き換えることができる。更新後の地図情報の識別情報にて学習経路が特定できるため、更新後の地図情報を用いたマップマッチングによって車両が学習経路を走行しているか否かを容易に判定することが可能となる。
また、運転支援は、学習経路にて車両を制動することであってもよい。これにより、学習経路を構成する道路区間の存否や形状等が地図情報の更新前後で相違する場合においても、不適切な制動が行われることを防止できる。さらに、運転支援は、地図情報に基づいて表示する地図上において、車両が減速した位置を表示することであってもよい。これにより、学習経路を構成する道路区間の存否や形状等が地図情報の更新前後で相違する場合においても、不適切な地図の表示が行われることを防止できる。
さらに、本発明のように、地図情報の更新に応じて運転支援を禁止する手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のようなシステム、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。例えば、以上のようなシステムを備えた運転支援システムやナビゲーションシステム、方法、プログラムを提供することが可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、運転支援システムを制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。