JP6452321B2 - 配管締結用ステンレス鋼製ねじ部材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、配管締結用ステンレス鋼製ねじ部材の製造方法及び配管締結用ステンレス鋼製ねじ部材に関する。
例えば、上水道管、下水道管、都市ガス供給管などパイプラインの接合部では、ボルト及びナットを用いてゴム輪やガスケットを締め付け、水密性や気密性保持、さらには接合部の離脱阻止を図る、いわゆるメカニカル継手が多く使用されている。また、パイプラインの長寿命化に伴い、耐食性に優れたステンレス鋼製ボルト及びナットの使用比率も年々上昇してきている。
しかしながら、ステンレス鋼製ボルト及びナットについては、締結時に焼き付くという問題が払拭できない。特に、先に述べたパイプラインの接合においては、締め付けるトルクも大きく、かつ締め付け行程も長いことが多い。
ステンレス鋼は、熱伝導率が鉄の約1/3と小さいことから、締結時の摩擦による発生熱が締結部材全体に拡散されにくく、荷重の掛かるねじ面が局部的に高温になり、最終的には溶着してしまう。これを一般に、焼き付きと呼んでいる。
また、締結部材の滑りやすさを示す指標にトルク係数がある。これは数値が大きくなるほど、ねじの回転抵抗が増加することになる。締結初期には、0.2〜0.3程度であるが、締結が進行して、およそ0.4を超えると焼き付きの可能性が格段に高くなると言われている。
何も処理をしていないステンレス鋼製ボルト及びナットであれば、締結時に、焼き付きあるいはその前段階であるカジリが発生してしまう。このため、焼き付きを防止する施策は、過去より種々考案されている。
このような施策として、ステンレス鋼製ボルト及びナットに、油などの液状潤滑材を塗布する方法がある。この場合、トルク係数の低減に有効である。しかし、この方法では、液状潤滑材が垂れて被締結物を汚染する問題、誤って地面に落下させた時に土砂などが付着する問題、さらには水中配管に使用した場合には液状潤滑材が流出して水を汚染する問題などがある。
また、特開2000−205226号公報(特許文献1)に開示されているように、金属有機化合物を含むコーティング組成物からなる塗膜を形成する方法がある。特許文献1では、固体潤滑材を用いているので、油などの液状潤滑剤を塗布する場合に起因する問題を防止できる。
また、特開平11−350151号公報(特許文献2)に開示されているように、スズあるいはスズ亜鉛合金をめっきした後に、熱拡散処理により金属間化合物を形成する方法がある。特許文献2では、形成された金属間化合物がステンレス鋼に比較して硬いこと、及び金属組織が緻密で潤滑性があることを、焼き付きあるいはカジリ防止に利用している。また、特許文献2においても、液状潤滑剤を用いていないので、液状潤滑剤に起因する問題を防止できる。
また、ステンレス鋼の表面に銀めっきを施す方法がある。この方法においても、液状潤滑剤を用いていないので、液体潤滑剤に起因する問題を防止できる。
特開2000−205226号公報 特開平11−350151号公報
しかしながら、本発明者が特許文献1の製造方法により得られるねじ用部材を用いて焼き付き防止処理試験を実施した結果、荷重の掛かったねじ面の塗膜は剥離されており、トルク係数も上昇した。このため、特許文献1のねじ用部材では、締め付けを繰り返すと焼き付きあるいはカジリが発生する可能性が高い。
さらに、特許文献1では、塗膜を形成した後に400℃以下で熱処理をしているため、熱エネルギーを多く消費してしまい、コストが高くなる。
また、特許文献2においては、金属間化合物を形成するために、実施例1で430℃×8時間、実施例2で550℃×3時間、実施例3で400℃×10時間、実施例4で200℃×20時間の熱拡散処理を実施している。本発明者が特許文献2の実施例3にしたがってステンレスナットを作製した結果、熱拡散処理を施したナットの表面は、熱履歴により斑に変色し、ステンレス鋼製品として著しく美観を損ねていることがわかった。このことから、特許文献2のステンレスナットは、商品価値を低下させてしまう。
さらに、特許文献2では、高温で長時間の熱拡散処理を行っている。このため、熱エネルギーを多く消費してしまい、コストが高い。
また、ステンレス鋼の表面に銀めっきを施す方法では、全体に貴金属である銀を使用するため、コストが高い。
本発明は、上記問題点に鑑み、液体潤滑剤に起因する問題を防止し、コストを低減し、美観を向上し、カジリ及び焼き付きの防止を向上する配管締結用ステンレス鋼製ねじ部材の製造方法及び配管締結用ステンレス鋼製ねじ部材を提供することを課題とする。
本発明の配管締結用ステンレス鋼製ねじ部材の製造方法は、ステンレス鋼製ねじ部材の表面にニッケル層を形成する工程と、このニッケル層上に銅層を形成する工程と、この銅層上にスズ層を形成する工程と、このスズ層を形成する工程後に、100℃以下で乾燥する工程とを備えている。
本発明の一の局面における配管締結用ステンレス鋼製ねじ部材は、上記配管締結用ステンレス鋼製ねじ部材の製造方法により製造される。
本発明の一の局面における配管締結用ステンレス鋼製ねじ部材において好ましくは、ニッケル層の厚みは、0.2μm以上1μm以下であり、銅層の厚みは、4μm以上12μm以下であり、スズ層の厚みは、5μm以上10μm以下である。
本発明の他の局面における配管締結用ステンレス鋼製ねじ部材は、ステンレス鋼製ねじ部材の表面に第1層として形成され、ステンレス鋼製ねじ部材の表面酸化層の活性化を行い、第2層との密着性を向上させるプライマ材料層と、このプライマ材料層の表面に第2層として形成され、締結時の摩擦により発生する熱を吸収拡散する機能材料層と、この機能材料層の表面に第3層として形成され、機能材料層の吸収した熱を擦れ合う表面に保持しないようにし、かつ擦れ合う表面の摩擦を軽減するとともに美観を維持するための機能性化粧材料層とを備えている。
本発明の配管締結用ステンレス鋼製ねじ部材の製造方法によれば、液体潤滑剤に起因する問題を防止し、コストを低減し、美観を向上し、カジリ及び焼き付きの防止を向上することができる。
以下、本発明の一実施形態の配管締結用ステンレス鋼製ねじ部材について説明する。本発明の実施の形態の配管締結用ステンレス鋼製ねじ部材は、ステンレス鋼製ねじ部材の表面に3層のめっきが形成されており、ステンレス鋼製ねじ部材と、プライマ材料層と、機能材料層と、機能性化粧材料層とを備えている。プライマ材料層は、第1層であり、ステンレス鋼製ねじ部材の表面に形成されている。機能材料層は、第2層であり、プライマ材料層の表面に形成されている。機能性化粧材料層は、第3層であり、機能材料層の表面に形成されている。なお、ステンレス鋼製ねじ部材を被覆する第1〜第3層は、内側から外側に向けて順に形成されている。第1〜第3層はめっき層であり、第1〜第3層を構成するそれぞれの素材に応じた適正なめっき厚みが選定される。
プライマ材料層は、ステンレス鋼の外表面全体に接するように設けられている。プライマ材料層は、ステンレス鋼製ねじ部材の表面酸化層の活性化を行い、第2層(機能材料層)との密着性を向上させる。
プライマ材料層は、ニッケル層である。ニッケル層の厚みは、機能材料層としての効果を高める観点から、0.2μm以上1μm以下であることが好ましい。
このプライマ材料層の外表面全体に接するように、機能材料層が設けられている。機能材料層は、締結時の摩擦により発生する熱を吸収拡散する。機能材料層は、ステンレス鋼よりも熱伝導率が高い材料で構成される。機能材料層は、銅層である。銅層の厚みは、機能材料層としての効果を高める観点から、4μm以上12μm以下であることが好ましい。
この機能材料層の外表面全体に接するように、機能性化粧材料層が設けられている。機能性化粧材料層は、機能材料層の吸収した熱を擦れ合う表面に保持しないようにし、かつ擦れ合う表面の摩擦を軽減するとともに美観を維持する。機能性化粧材料層は、スズ層である。スズ層の厚みは、機能性化粧材料層としての効果を高める観点から、5μm以上10μm以下であることが好ましい。
配管締結用ステンレス鋼製ねじ部材は、例えば、ボルト、ナットなどのねじ部材である。ボルトと組み合わせられるナットとの両方が上記の3層構造を有していてもよく、いずれか一方が上記の3層構造を有していてもよい。例えば、配管締結用ステンレス製ねじ部材がボルトであり、ボルトと組み合わせられるナットは、上記の3層構造ではなく、表面にめっき層が形成されていない、または2層以下のめっき層が形成されたステンレス鋼製ねじ部材である。
配管締結用ステンレス鋼製ねじ部材のめっき層の合計の厚みは、9μm以上23μm以下であることが好ましい。また、配管締結用ステンレス鋼製ねじ部材を構成する銅層及びスズ層の合計の厚みは、12μm以上16μm以下であることが好ましい。
続いて、本実施の形態の配管締結用ステンレス鋼製ねじ部材の製造方法について説明する。
まず、ステンレス鋼製ねじ部材を準備する。ステンレス鋼製ねじ部材は、ステンレス製のボルト、ナットなどである。
次に、このステンレス鋼製ねじ部材の表面に、第1層としてのニッケル層を形成する。この工程では、酸化被膜を形成して不動態化しめっきの密着性を阻害する表面層を活性化しながら、ニッケル被膜をめっきにより形成する。この工程では、0.2μm以上1μm以下の厚みを有するニッケル層を形成することが好ましい。
次に、ニッケル層上に、第2層としての銅層を形成する。この工程では、締結時に発生する熱を擦れ合う表面から速やかに逃がすための熱伝導率の高い銅層をめっきにより形成する。この工程では、4μm以上12μm以下の厚みを有する銅層を形成することが好ましい。
次に、銅層上に、第3層としてのスズ層を形成する。この工程では、銅層が逃がした熱を擦れ合う表面に保持しないように、銅層よりも熱伝導率の低い被膜として、さらに擦れ合う表面の摩擦を軽減し、美観を向上するスズ層をめっきにより形成する。この工程では、5μm以上10μm以下のスズ層を形成することが好ましい。
次に、ステンレス鋼製ねじ部材の表面に第1〜第3層が形成されたねじ部材を洗浄する。この洗浄工程では、例えば、酸性溶液を用いて洗浄し、さらにアルカリ溶液を用いて洗浄し、さらに水洗する。
次に、洗浄したねじ部材を100℃以下で乾燥する。この工程では、金属間化合物を形成するような熱を加えるのではなく、先の洗浄工程によって表面に付着した水分を飛ばすために行う。このため、乾燥する温度は100℃以下であれば特に限定されないが、常温で乾燥してもよい。工業的な観点からは、80℃以下で乾燥することが好ましい。乾燥時間は特に限定されないが、短い方が工業的に好ましいので、例えば30分以下である。この工程では、洗浄したねじ部材を乾燥するための乾燥手段を用いてもよい。
以上の工程を実施することにより、本実施の形態の配管締結用ステンレス鋼製ねじ部材を製造することができる。
本実施の形態の配管締結用ステンレス部材及びその製造方法によれば、ステンレス鋼製ねじ部材の表面に第1層としてニッケル層(プライマ材料層)を形成している。ニッケル層は、ステンレス鋼に密着性の良いめっきを施すことができる。このニッケル層の表面に第2層として銅層(機能材料層)を形成している。銅層は、熱伝導率が高いので、締結時の摩擦により発生する熱を吸収拡散することができる。このため、締結時に発生する熱を逃がすことができるので、ステンレス鋼製ねじ部材のカジリ及び焼き付きを抑制できる。この銅層の表面に第3層としてスズ層(機能性化粧材料層)を形成している。スズ層は、滑り性がよく、銅層よりも熱伝導率が低いので、銅層の保護及び美観を維持することができる。したがって、第1〜第3層がそれぞれの機能を発現することにより、カジリ及び焼き付きの防止を向上するとともに、美観を向上することができる。
また、本実施の形態では、スズ層を形成する工程後に、100℃以下で乾燥する工程を実施している。本発明者は、鋭意研究の結果、100℃を超える熱処理を行わなくても、カジリ及び焼き付きを防止する性能を維持しつつ、美観を向上できることを見出した。このため、本実施の形態では、高温の熱処理を省略することにより、コストを低減できる。また、第1〜第3層を構成する材料は、銀などに比べて安価である。また、第1〜第3層を構成する材料の厚みは薄くてもカジリ及び焼き付きを防止する性能を維持できるので、コストを低減できる。したがって、美観を向上できるとともに、コストを低減できる。
また、本実施の形態では、上記材料で構成される3層のめっきを施すことにより、カジリ及び焼き付けを防止しているので、油を塗布した場合のように液状潤滑剤を用いる必要がない。このため、被締結物、水、土壌などを汚染することを防止でき、土砂などが付着することを防止できる。したがって、液体潤滑剤に起因する問題を防止できる。
以上より、本実施の形態の配管締結用ステンレス鋼製ねじ部材及びその製造方法は、液体潤滑剤に起因する問題を防止し、コストを低減し、美観を向上し、カジリ及び焼き付きの防止を向上することができる。したがって、このように製造された3層のめっきが施されたステンレス鋼製ねじ部材は、配管締結用として広く用いられ、水道の配管締結用に好適に用いられる。なお、ステンレス鋼製ねじ部材としては、M16、M20、M24及びM30のサイズが好適に用いられる。
特に、本実施の形態の配管締結用ステンレス鋼製ねじ部材は、ボルト及びナットの両方に適用される場合と、ボルトのみに適用される場合と、ナットのみに適用される場合とがあり、ボルトのみに適用される場合と、ナットのみに適用される場合とが好ましい。ボルトのみに適用される場合には、ボルトのみに上述した3層のめっきを施し、ナットにはめっきを施さないことが好ましい。ナットのみに適用される場合には、ナットにのみ上述した3層のめっきを施し、ボルトにはめっきを施さないことが好ましい。これらの場合、クリアランスが小さくなりすぎることを防止しつつ、界面で発生した熱をナット側またはボルト側で吸収することができる。
(実施例1)
本実施例では、カジリ及び焼き付きの防止の効果及びコスト低減の効果について調べた。
(試料No.Q〜W)
まず、ステンレス鋼製ねじ部材として、SUS304製六角ナットM20を準備した。その後、下地処理として脱脂洗浄した。
次に、第1層目のプライマ材料層としてニッケルを0.2〜1.0μm、第2層目の機能材料層として銅を5〜15μm、第3層目の化粧層にスズを2〜10μmを順次、それぞれ電気めっき法により、六角ナットのねじ面のみならず全体に積層した。第1〜第3層の厚みは、山部の厚みを測定した。なお、山部の厚みは、最大厚みである。その結果を下記の表1に記載する。
次に、酸性溶液を用いた洗浄、アルカリ溶液を用いた洗浄、及び水洗を順次行った。洗浄後に、80℃で30分間乾燥した。以上の工程により、試料No.Q〜Wの配管締結用ステンレス鋼製ねじ部材を製造した。
(試料No.O、P)
試料No.O及びPは、基本的には試料No.Qと同様に製造したが、第3層に銀層及びニッケル層をそれぞれ形成した点において異なっていた。
(試料No.H〜N)
試料No.H〜Nは、基本的には試料No.Q〜Wと同様に製造したが、第3層が形成されていない点、及び、第1層(プライマ材料層)と第2層(機能材料層、兼、化粧材料層)として表1に記載の材料を用いて、表1に記載の厚みに形成した点において異なっていた。
(試料No.A〜G)
試料No.A〜Gは、基本的には試料No.Q〜Wと同様に製造したが、第2層及び第3層は形成されていない点、及び第1層として表1に記載の材料を用いて、めっき法以外の方法で第1層を形成した点において異なっていた。
(評価方法)
試料No.A〜Wの配管締結用ステンレス鋼製ねじ部材について、公益社団法人日本水道協会が規定する、焼き付き防止処理試験を実施した。具体的には、試料No.A〜Wのナットとしての配管締結用ステンレス鋼製ねじ部材について、下記のa)〜d)の条件を1サイクルとして5サイクル繰り返した。
a)クッション材としてのゴム板に当たるまで試料No.A〜Wの配管締結用ステンレス鋼製ねじ部材を手で締める。
b)190N・mのトルクまで試料No.A〜Wの配管締結用ステンレス鋼製ねじ部材を締め付ける。
c)トルクが加わり始めてから所定のトルクに達するまでの試料No.A〜Wの配管締結用ステンレス鋼製ねじ部材の移動距離を測定する。
d)クッション材から離れるまで試料No.A〜Wの配管締結用ステンレス鋼製ねじ部材をゆるめる。
このサイクルを実施している際に、焼き付きあるいはその前段階であるカジリが発生するかを確認した。その結果を下記の表1に記載する。
また、各回の締め付け・締め戻しによるNo.A〜Wの配管締結用ステンレス鋼製ねじ部材の移動距離を下記の表2に記載する。5回の締め付け・緩め戻しでカジリが発生しなかったものについては、5回のナットの移動距離の最大値と最小値との差を測定した。その結果を下記の表2に「最大最小差」として記載する。なお、公益社団法人日本水道協会が規定する焼き付き防止処理試験では、5回のナットの移動距離の最大値と最小値との差が5mm以下であると、合格と判定している。また、公益社団法人日本水道協会が規定する焼き付き防止処理試験では、上記d)の条件において、ナットの移動距離がおよそ10〜20mmとなるものを用いることを規定している。
また、5回の締め付け・緩め戻しでカジリが発生しなかったものについては、さらに3回(合計8回)の締め付け・緩め戻しを行った。その結果を下記の表1に記載する。
6回目以降について締め付け・締め戻しを行ったものついては、締め付け・締め戻しによるナットの移動距離を下記の表2に記載する。8回の締め付け・緩め戻しでカジリが発生しなかったものについては、8回のナットの移動距離の最大値と最小値との差を測定した。その結果を下記の表2に、「最大最小差」として記載する。
なお、表面層を形成しないステンレス鋼製ナットであれば、1回で焼き付きあるいはカジリが発生してしまう。
Figure 0006452321
Figure 0006452321
(評価結果)
表1に示すように、ステンレス鋼製ねじ部材の表面に銀以外の材料で構成された1層の被膜を形成した試料No.A〜Gと、第1層の被膜及び第2層の被膜を形成した試料No.H〜Mとは、いずれも3回目以前でカジリが発生した。また、ステンレス鋼製ねじ部材の表面に3層の被膜を形成した試料No.Pは、第3層にニッケル層を形成したので、2回目でカジリが発生した。一方、表2に示すように、ステンレス鋼製ねじ部材の表面にニッケル層を形成する工程と、このニッケル層上に銅層を形成する工程と、この銅層上にスズ層を形成する工程と、このスズ層を形成する工程後に、100℃以下で乾燥する工程とを備えていた試料No.Q〜Wは、4回目以降でカジリが発生した。このことから、ステンレス鋼製ねじ部材にニッケル層、銅層及びスズ層の3層の被膜を形成することにより、高温での熱処理をせずに100℃以下の乾燥をしても、カジリの防止を向上できることがわかった。また、高温の熱処理を省略できるため、コストを低減できることもわかった。
また、試料No.Q〜Wについて、試験後のナットのねじ面を観察したが、3層の被膜の剥離はなかった。3層の被膜を全体に施したことから、中間層に用いた熱伝導率の大きな銅によりねじ面で発生した熱を速やかにナット全体に逃がしたことによって、ねじ面が局部的に高温にならなかったと考えられる。
また、締め付け・緩め戻し時に、供試材からきしみ音が発生していた。これは最外層に形成したスズが鳴ったのであるが、ねじ面に発生した熱エネルギーの少なくとも一部を、音に変換して消費したと考えられる。
このように、高温での熱処理をせずに、100℃以下の乾燥をし、試料No.N、Oのように高価な銀の被膜を形成しなくても、試料No.P〜Wはカジリの防止を向上できることがわかった。
また、試料No.Q〜Wについて外観を観察した結果、スズ層により、美観が維持されていた。
また、表2に示すように、5回の締め付け・緩め戻しを行った試料R、T〜Wは、5回のナットの移動距離の最大値と最小値との差が0.8mm以下であった。これは、公益社団法人日本水道協会が規定する、焼き付き防止処理試験(5mm)に合格することを意味している。さらに、試料No.T及びVは、8回のナットの移動距離の最大値と最小値との差も、5mm以下であった。なお、5回の締め付け・緩め戻しを行った試料R、T〜Wは、上記焼き付き防止処理試験で規定されている5回のナットの移動距離が、10〜20mmの範囲であった。
また、ニッケル層の厚みが0.2μm以上1μm以下であり、銅層の厚みが4μm以上12μm以下であり、スズ層の厚みが2μm以上10μm以下である試料R、T、Wは、公益社団法人日本水道協会が規定する、焼き付き防止処理試験において、規定の5回繰り返しに対し、焼き付き及びカジリは全く発生せず、5回のナットの移動距離が10〜20mmの範囲内であった。これは、公益社団法人日本水道協会が規定する、焼き付き防止処理試験に合格することを意味している。
また、ニッケル層の厚みが0.2μm以上1μm以下であり、銅層の厚みが4μm以上12μm以下であり、スズ層の厚みが5μm以上10μm以下である試料T、Vは、8回の締め付け・締め戻しを行っても、焼き付き及びカジリは全く発生せず、8回のナットの移動距離が10〜20mmの範囲内であり、非常に優れた特性を有していた。
以上より、本実施例によれば、ステンレス鋼製ねじ部材の表面にニッケル層を形成する工程と、このニッケル層上に銅層を形成する工程と、この銅層上にスズ層を形成する工程と、このスズ層を形成する工程後に、100℃以下で乾燥する工程とを備えることにより、カジリ及び焼き付きの防止の効果及びコスト低減の効果があることが確認できた。
(実施例2)
本実施例では、カジリ及び焼き付きの防止の効果及び耐食性の効果について調べた。
本実施例では、実施例1の試料No.Vの製造方法にしたがって、15体(No.1〜No.15)の配管締結用ステンレス鋼製ねじ部材を製造した。
(評価方法)
試料No.1〜15の配管締結用ステンレス鋼製ねじ部材について、実施例1と同様に、公益社団法人日本水道協会が規定する、焼き付き防止処理試験を実施した。その結果を下記の表3に示す。
Figure 0006452321
また、試料No.1〜15の配管締結用ステンレス鋼製ねじ部材について、JIS Z 2371の塩水噴霧試験を実施した。試験時間は5000時間とした。その結果を下記の表4に示す。
Figure 0006452321
(評価結果)
ステンレス鋼製ねじ部材の表面にニッケル層を形成する工程と、このニッケル層上に銅層を形成する工程と、この銅層上にスズ層を形成する工程と、このスズ層を形成する工程後に、100℃以下で乾燥する工程とを備えていた試料No.Vの方法で製造した試料No.1〜15は、8回目の締め付け・緩め戻しの繰り返しをしても、焼き付き及びカジリは全く発生しなかった。
また、表3に示すように、5回の締め付け・緩め戻しを行った試料No.1〜15について、5回のナットの移動距離が10〜20mmの範囲であり、かつ5回のナットの移動距離の最大値と最小値との差が5mm以下であった。これは、公益社団法人日本水道協会が規定する、焼き付き防止処理試験に合格することを意味している。また、試料No.1〜15は、8回のナットの移動距離の最大値と最小値との差も5mm以下であった。
また、表4に示すように、最外層に用いたスズ特有の白錆は見られたが、中間層に用いた銅の腐食生成物いわゆる緑錆や鉄系の赤錆は認められなかった。このことから、第3層の機能性化粧材料層としてのスズ層を形成することが耐食性に有効であることが確認できた。
なお、本発明者が特許文献1の製造方法により製造したねじ用部材を観察すると、特許文献1では塗膜を形成する際に400℃以下に熱処理するので、ステンレス鋼の表面が薄茶色に変色していた。これはステンレス鋼の表面に酸化スケールが形成されている状態である。
また、特許文献2では、200℃以上500℃以下の熱処理をしている。SUS304に代表されるオーステナイト系ステンレス鋼は、450〜850℃程度に加熱すると、クロム炭化物が結晶粒界に析出し、応力腐食割れの原因となりやすく、ボルトの場合は首切れが発生することもある。このため、特許文献2については、耐食性が損なわれている。
したがって、表4に示す耐食性の結果から、本発明の配管締結用ステンレス鋼製ねじ部材の製造方法により製造された配管締結用ステンレス鋼製ねじ部材は、特許文献1及び2に比べて、耐食性においても優れていることがわかった。
なお、特許文献2に関して、耐食性を維持するために、約1050℃で固溶化熱処理を施し、正常なオーステナイト組織に戻す技術が考えられる。しかし、この場合には、余分な処理が必要となり、コストが増加してしまう。この点においても、本発明の配管締結用ステンレス鋼製ねじ部材の製造方法により製造された配管締結用ステンレス鋼製ねじ部材は優れている。
以上より、本実施例によれば、ステンレス鋼製ねじ部材の表面にニッケル層を形成する工程と、このニッケル層上に銅層を形成する工程と、この銅層上にスズ層を形成する工程と、このスズ層を形成する工程後に、100℃以下で乾燥する工程とを備えることにより、カジリ及び焼き付きの防止の効果及び耐食性の効果があることが確認できた。
今回開示された実施の形態及び実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態及び実施例ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

Claims (1)

  1. ステンレス鋼製ねじ部材の表面に0.2μm以上1μm以下のニッケル層を形成する工程と、
    前記ニッケル層上に4μm以上12μm以下の銅層を形成する工程と、
    前記銅層上に5μm以上10μm以下のスズ層を形成する工程と、
    前記スズ層を形成する工程後に、100℃以下で乾燥する工程とを備える、配管締結用ステンレス鋼製ねじ部材の製造方法。
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