(第1実施形態)
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1を参照して、第1実施形態に係わる道路境界検出装置1の全体構成を説明する。道路境界検出装置1は、車両の周囲における物体表面の高さを検出し、物体表面の高さ変化に基づいて道路の表面(以後、「路面」という)上の段差の位置を検出する。検出された段差の位置を車両の移動量に基づいて蓄積する。段差に堆積物が存在している場合には、存在しない場合に比べて、蓄積された段差の位置のうち、隣接度合いの高い段差の位置を選択し、選択された段差の位置に基づいて、道路境界を推定する。
具体的に、道路境界検出装置1は、車両の周囲における物体表面の高さを検出する測距センサ12と、車両の移動量を検出するための各種センサ(28、29)と、測距センサ12及び各種センサ(28、29)による測定データから、道路境界を検出する一連の情報処理を実行するマイクロコンピュータ13とを備える。
また、道路境界検出装置1は、自己位置検出部の一例としてのGPS26と、地図情報を格納する地図データベース27と、蓄積された段差の位置を一時的に記憶する段差位置データベース25とを更に備えることができる。或いは、道路境界検出装置1は、外部から自己位置情報や地図情報を取得しても構わない。また、蓄積された段差の位置をマイクロコンピュータ13が備えるメモリに一時的に記憶させても構わない。
測距センサ12の一例は、車両の周囲にある物体を複数の異なる方向から同時に撮影することにより、車両の周囲にある物体の奥行き方向(センサ12からの距離)の情報も記録することができるステレオカメラである。ステレオカメラにより得られたステレオ画像に対して所定の画像処理を施すことにより、車両の周囲にある物体のステレオ画像に映る物体の像に対する三次元情報を取得することができる。車両の周囲にある物体には、道路や縁石、或いは、落ち葉などの路面上の堆積物が含まれる。詳細は、後述する。
車両の移動量を検出するための各種センサ(28、29)として、道路境界検出装置1は、車両が備える車輪の回転速度を検出する車輪速センサ28と、タイヤの操舵角或いはステアリングの転舵角を検出する舵角センサ29とを備えることができる。或いは、道路境界検出装置1は、外部から、車輪の回転速度及びタイヤの操舵角或いはステアリングの転舵角を取得しても構わない。
マイクロコンピュータ13は、例えば、CPU、メモリ、及び入出力部を備える汎用のマイクロコントローラからなり、予めインストールされたコンピュータプログラムを実行することにより、道路境界検出装置1が備える複数の情報処理回路を構成する。マイクロコンピュータ13は、測距センサ12及び各種センサ(28、29)による測定データから道路境界を検出する一連の情報処理サイクルを所定の時間間隔で繰り返し実行する。マイクロコンピュータ13は、車両にかかわる他の制御に用いる電子制御ユニット(ECU)と兼用してもよい。
マイクロコンピュータ13により構成される複数の情報処理回路には、演算回路14と、段差検出回路18と、移動量検出回路30と、段差位置蓄積回路31と、堆積物推定回路32と、道路境界推定回路20とが含まれる。
演算回路14は、測距センサ12と共に測距部11を構成し、ステレオカメラにより得られたステレオ画像から車両周囲の物体のステレオ画像に映る物体の像に対する三次元情報を取得する一連のステレオ画像処理を実施する。
例えば、演算回路14は、ステレオ画像に対してレンズの歪みを補正するレンズ歪み補正処理を行い、ステレオ画像間の上下位置を補正する平行化補正処理(平行等位処理)を行う。そして、ステレオ画像間の各画素の対応付けを推定するステレオマッチング処理を行う。これにより、ステレオカメラの撮像面における物体の二次元座標のみならず、ステレオカメラの撮像面から物体までの距離を算出することができる。よって、車両周囲にある物体までの距離及び方位を検出することができる。
演算回路14は、更に座標変換処理を施すことにより、車両周囲にある物体のステレオ画像に映る物体の像に対する三次元情報を取得することができる。車両周囲にある物体の三次元情報には、車両の周囲における路面の三次元情報、及び路面上の堆積物も含まれる。よって、演算回路14は、車両の周囲における物体表面の高さを取得することができる。
レンズ歪み補正処理は、例えば黒白の市松模様のパターンを表した平板を各カメラで撮影し、市松模様の格子点が矩形で構成される格子状となるようにレンズ歪みパラメータやカメラレンズ中心パラメータを推定する。ただし、本処理は、レンズ歪み補正を行う一般的な手法でよく、本実施形態では特に問わない。
平行化補正処理は、例えば黒白の市松模様のパターンを表した平板をステレオカメラの両カメラで撮影し、市松模様の格子点の位置が各カメラ画像上で同じ上下位置になるようにステレオカメラ間の空間位置パラメータ及び角度パラメータを推定する。ただし、本処理は、平行化補正処理を行う一般的な手法でよく、本実施形態では特に問わない。
ステレオマッチング処理は、例えば、左カメラ画像を基準として左カメラ画像の各画素が右カメラ画像のどの画素に対応付けされるかを算出するものである。例えば、左カメラ画像の各画素の輝度値と右カメラ画像の各画素の輝度値の絶対値を評価値として算出して、評価値が最小となる右カメラ画像の画素を対応付けされた画素として算出する。評価値の算出方法には、例えば、差分絶対値の和(SAD:Sum of Absolute Differences)や差分二乗値の和(SSD:Sum of Squared Differences)を用いる方法や、評価値計算の範囲が各画素1点でなく各画素の周辺画素を含む方法がある。評価値の算出方法は、他の一般的な方式でもよく、本実施形態では特に問わない。
段差検出回路18は、車両の周囲における路面の高さ変化に基づいて、路面上の段差(LD)を検出する。例えば、段差検出回路18は、車両の周囲の路面に車幅方向に延びる線状の段差判定位置を設定し、段差判定位置における路面の高さ分布を用いて、段差を検出することができる。段差検出回路18は、車両の走行中において、段差検出周期(△t)ごとに繰り返し、段差を検出する。
段差の検出方法の一例を説明する。段差判定位置上に車両(Vc)の進行方向の走行可能領域(G1)を設定し、走行可能領域(G1)の車幅方向において、路面の傾斜を曲線で近似する。走行可能領域(G1)とは、車両(Vc)が走行することが可能な領域であって、車道の境界、例えば、段差を含まない領域を示す。段差検出回路18は、図2に示すように、車両(Vc)の幅(Wvc)に対して所定の走行余裕領域を付加した領域を、走行可能領域(G1)として推定する。例えば、走行余裕領域として、実際の道路境界を含まないように、0.1m〜0.5mに設定する。なお、Cvcは、車両(Vc)の車幅方向の中心軸を示している。
道路境界検出領域(Hg)は、走行可能領域(G1)の端部から車幅方向に所定距離までの領域である。所定距離としては、例えば、測距センサ12の有効検出距離(10m)以内で道路端(BON)が含まれる領域で設定すればよい。
段差検出回路18は、近似曲線と道路境界検出領域(Hg)における路面の高さとを比較する。路面の車幅方向の近似曲線と路面の高さとの差が、一般的な縁石高さである0.1m以上となる箇所に、段差があると判断する。
移動量検出回路30は、車輪速センサ28により検出された車輪の回転速度、及び舵角センサ29により検出された舵角から、車両の移動量を算出する。移動量検出回路30、車輪速センサ28及び舵角センサ29は、移動量検出部24を構成する。移動量検出部24が車両の移動量を算出するための具体的な構成は、図1の例に限らない。例えば、車輪の回転速度と舵角の代わりに、GPS26から得られる自己位置と車両の速度を用いてもよい。更に、ジャイロセンサによるヨーレート情報を付加して車両の移動量を算出することもできる。このほか、移動量検出部24は、既知の方法を用いて、車両の移動量を算出することができる。
移動量検出回路30は、図3に示すように、移動時間を段差検出周期(△t)ごとに分割する。そして、段差検出周期(△t)ごとの移動距離(L)及び移動方向(θ)を累積していくことで、移動軌跡を求める。たとえば、時刻(t4=Tc)よりも50秒前の時刻(t1)における車両の位置(P1)をXY座標の原点とし、車両の進行方向をY軸とする。時刻(t1)から段差検出周期(△t)の間の移動距離及び移動方向から時刻(t2)における車両の位置(P2)を求める。そして、時刻(t2)から段差検出周期(△t)の間の移動距離及び移動方向から時刻(t3)における車両の位置(P3)を求める。このように、段差検出周期(△t)ごとの移動距離(L)及び移動方向(θ)から車両の軌跡(P1、P2、P3、P4)を算出する。
段差位置蓄積回路31は、移動量検出回路30により検出された車両の移動量に基づいて、段差検出回路18により検出された段差の位置を蓄積する。段差検出回路18は、段差検出周期(△t)毎に、段差の位置を検出する。段差の位置は、車両を基準とする相対位置である。段差位置蓄積回路31は、この段差の相対位置を、図3に示した段差検出周期(△t)毎の車両の位置(P1、P2、P3、P4)に関連づける。これにより、図4に示すように、段差検出周期(△t)毎に検出された段差の相対位置を、XY座標上の位置(D1、D2、D3、D4)へ変換することができる。すなわち、段差検出回路18により検出された段差の位置を蓄積することができる。
堆積物推定回路32は、蓄積された段差の位置に基づいて、段差に落ち葉などの堆積物が存在していることを推定する。具体例は、図6〜図10を参照して後述する。
道路境界推定回路20は、蓄積された段差の位置に基づいて、道路境界を推定する。例えば、蓄積された段差の位置を、直線或いは曲線で近似したり、自己位置情報及び車両周辺の道路形状に沿って近似することができる。このほかにも、既知の方法により、段差の位置に基づいて道路境界を推定することができる。
道路境界推定回路20は、堆積物が存在している場合には、存在しない場合に比べて、蓄積された段差の位置のうち、隣接度合いの高い段差の位置を選択して、道路境界を推定する。道路境界推定回路20は、堆積物推定回路32による堆積物推定結果に応じて、道路境界の推定に用いる段差を変化させる。
図5を参照して、隣接度合いの高い段差の位置を選択して道路境界を推定する方法の一例を説明する。図5の例では、5つの段差(Da、Db、Dc、Dd、De)が検出されている。例えば、堆積物推定回路32が堆積物の存在を推定していない場合、5つの段差(Da〜De)の全てを用いて、道路境界を推定する。堆積物推定回路32が堆積物の存在を推定している場合、次に示す所定の条件を満たす段差を選択して、道路境界を推定する。すなわち、最寄りの段差までの距離(Lbc、Lde)が所定の基準値よりも短い段差だけを選択する。図5の例で、段差(Db)と段差(Dc)との距離(Lbc)は、所定の基準値よりも短いため、段差(Db)と段差(Dc)の両方が選択される。一方、段差(Dd)と段差(De)との距離(Lde)は所定の基準値以上に長いため、段差(Dd)の段差(De)のいずれか一方は選択されない。段差(Dc)と段差(Dd)との距離も、距離(Lde)と同様にして、所定の基準値以上に長い。よって、道路境界推定回路20は、段差(Dd)を選択せず、段差(Da、Db、Dc、De)を選択して、道路境界を推定する。
一般的に道路境界は人工物であるため、複数の段差は直線状に配列される。すなわち道路境界を成す複数の段差は短い距離間隔で検出されるのが一般的である。これに対して、落ち葉などの堆積物が段差の一部分を埋めてしまうと、道路境界では無い箇所に在る段差(例えば、敷地の壁など)を誤検出してしまう。したがって、堆積物が存在する場合、複数の段差は、長い距離間隔で出力される傾向にある。そこで、この距離に閾値(所定の基準値)を設定する(例えば、20cm)。そして、最寄りの段差の距離がこの閾値よりも長ければ、落ち葉などの堆積物により段差が誤検出されたと判断して、この段差を道路境界の推定対象から排除することができる。
なお、隣接度合いの高い段差の位置を選択して道路境界を推定する方法は、上記した例に限らない。例えば、堆積物の存在の有無にかかわらず、段差の位置を選択して道路境界を推定してもよい。ただし、堆積物が存在していない場合と堆積物が存在している場合とで、所定の基準値の大きさを変化させる。つまり、堆積物が存在していない場合の所定の基準値を、堆積物が存在している場合の所定の基準値を小さくすればよい。このように、道路境界推定回路20は、堆積物が存在している場合には、存在しない場合に比べて、蓄積された段差の位置のうち、隣接度合いの高い段差の位置を選択して、道路境界を推定する。
図6を参照して、堆積物の存在を推定する方法の第1の例を説明する。堆積物推定回路32は、蓄積された段差(Da、Db、Dc、Dd、De)の位置の連続性に基づいて、段差に堆積物が存在していることを推定することができる。隣接する第1及び第2の段差と通る直線を設定し、直線から第1又は第2の段差に隣接する第3の段差までの距離を算出する。距離に対する閾値(たとえば20cm)を設定し、当該距離が閾値よりも長ければ、堆積物による段差の誤検出があったと判断して、堆積物の存在を推定する。一方、当該距離が閾値以下であれば、堆積物の存在は推定しない。
例えば、図6の段差(Da)と段差(Db)を通る直線(Fab)から段差(Dc)までの距離は、ほぼゼロである。よって、堆積物推定回路32は、堆積物の存在を推定しない。一方、段差(Db)と段差(Dc)を通る直線(Fbc)から段差(Dd)までの距離(Ld)は、閾値よりも長い。よって、堆積物推定回路32は、段差(Dd)を堆積物により誤検出された段差であると判断して、堆積物の存在を推定する。
図7を参照して、堆積物の存在を推定する方法の第2の例を説明する。堆積物推定回路32は、蓄積された段差(Da、Db、Dc、Dd、De)の位置を近似した直線(CLN)に対する段差(Da、Db、Dc、Dd、De)の位置毎の合致度に基づいて、段差に堆積物が存在していることを推定してもよい。具体的には、先ず、段差(Da、Db、Dc、De、Dd)が直線状に並んでいると仮定して、直線近似を実施する。直線近似の方法は最小二乗法など既知の方法を用いることができる。そして、算出された直線(CLN)と各段差との距離(例えば、Ld、Le)を算出する。この距離が閾値以上である場合は、落ち葉などの堆積物により段差が誤検出されたと判断して、堆積物の存在を推定する。図7の例では、段差(Dd)までの距離(Ld)が閾値(たとえば20cm)以上であるため、堆積物の存在を推定する。
図8及び図9を参照して、堆積物の存在を推定する方法の第3の例を説明する。堆積物推定回路32は、蓄積された段差(Da、Db、Dc、Dd、De、Df)の位置を近似した曲線(CCV)に基づいて、段差に堆積物が存在していることを推定してもよい。例えば、図8に示すように、曲線(CCV)に対する段差(Da、Db、Dc、Dd、De、Df)の位置毎の合致度に基づいて、段差に堆積物が存在していることを推定してもよい。具体的には、先ず、段差(Da、Db、Dc、Dd、De、Df)が曲線状に並んでいると仮定して、曲線近似を実施する。曲線近似の方法は最小二乗法など既知の方法を用いることができる。そして、算出された曲線(CCV)と各段差との距離(Ld、Le)を算出する。この距離が閾値以上である場合は、落ち葉などの堆積物により段差が誤検出されたと判断して、堆積物の存在を推定する。図8の例では、段差(De)までの距離(Le)が閾値(例えば20cm)以上であるため、堆積物の存在を推定する。
図9を参照して、曲線近似の他の例を説明する。堆積物推定回路32は、蓄積された段差(Da、Db、Dc、Dd、De、Df)の位置を近似した曲線(CCV’)の曲率に基づいて、段差に堆積物が存在していることを推定してもよい。具体的には、先ず、全ての段差(Da、Db、Dc、Dd、De、Df)を通る曲線(CCV’)を近似する。よって、曲線(CCV’)と各段差(Da、Db、Dc、Dd、De、Df)との距離はゼロである。そして、曲線(CCV’)の曲率が閾値以下である場合は、落ち葉などの堆積物により段差が誤検出されたと判断して、堆積物の存在を推定する。図9の例では、段差(De)付近における曲線(CCV’)の曲率が閾値以下となるため、堆積物の存在を推定する。
図10を参照して、堆積物の存在を推定する方法の第4の例を説明する。先ず図1に示すように、堆積物推定回路32は、地図情報を取得する地図取得回路34を備える。地図取得回路34は、GPS26から地図上の車両の位置を取得し、地図情報から車両周辺の道路情報を抽出する。堆積物推定回路32は、地図上の車両の位置及び地図情報に含まれる道路情報に基づいて、段差(Da、Db、Dc、Dd、De、Df)に堆積物が存在していることを推定する。具体的に、堆積物推定回路32は、車両周辺の道路情報として、道路境界の形状を取得する。そして、段差(Da、Db、Dc、Dd、De、Df)と道路境界の形状とのマッチングを行う。マッチングを行う手法としては、ICP(Iterative Closest Points)手法を用いることが考えられる。マッチングの結果、図10に示すような道路境界形状(CMP)が得られる。上記した方法と同様にして、道路境界形状(CMP)と段差(Da、Db、Dc、Dd、De、Df)との距離(Ld、Le)に基づき、堆積物の存在を推定する。
図11を参照して、図1の道路境界検出装置1を用いた道路境界検出方法の一例を説明する。
まず、ステップS01で、測距センサ12の一例であるステレオカメラを用いて、ステレオ画像を取得する。ステップS03に進み、演算回路14は、ステレオ画像に対してレンズの歪みを補正するレンズ歪み補正処理を行い、ステレオ画像間の上下位置を補正する平行化補正処理を行う。ステップS05に進み、演算回路14は、ステレオ画像間の各画素の対応付けを推定するステレオマッチング処理を行う。これにより、車両周囲にある物体までの距離及び方位を検出することができる。更に、演算回路14は、座標変換処理を施すことにより、測距データの座標上の車両の周囲における路面の三次元情報を取得することができる。
ステップS07に進み、段差検出回路18は、車両の周囲の路面に車幅方向に延びる線状の段差判定位置を設定し、段差判定位置における路面の高さ分布を用いて、段差を検出する。段差検出回路18は、車両の走行中において、段差検出周期(△t)ごとに繰り返し、段差を検出する。
ステップS09に進み、移動量検出回路30は、段差検出周期(△t)ごとの移動距離(L)及び移動方向(θ)から車両の移動量を算出する。そして、図3に示すように、車両の移動量を累積していくことで、車両の移動軌跡を求める。
ステップS11に進み、段差位置蓄積回路31は、移動量検出回路30により検出された車両の移動量に基づいて、段差検出回路18により検出された段差(Da〜Df)の位置を蓄積する。具体的には、図4に示すように、段差検出周期(△t)毎に検出された段差の相対位置を、XY座標上の位置(D1〜D4)へ変換する。
ステップS13に進み、堆積物推定回路32は、蓄積された段差(Da〜Df)の位置に基づいて、段差に落ち葉などの堆積物が存在していることを推定する。図6〜図10を参照して説明した第1〜第4の例のいずれかを用いて、堆積物の存在を推定することができる。
ステップS15に進み、道路境界推定回路20は、蓄積された段差の位置に基づいて、道路境界を推定する。このとき、道路境界推定回路20は、図5に示したように、堆積物が存在している場合には、存在しない場合に比べて、蓄積された段差の位置のうち、隣接度合いの高い段差の位置を選択して、道路境界を推定する。
以上説明したように、第1実施形態によれば、以下の作用効果が得られる。
段差に堆積物が存在していると、段差の高さ変化を正しく検出できないため、段差の位置がずれて検出される場合がある。そこで、図5に示したように、堆積物が存在している場合には、存在しない場合に比べて、蓄積された段差(Da、Db、Dc、Dd、De)の位置のうち、隣接度合いの高い段差(Da、Db、Dc、De)の位置を選択して、道路境界を推定する。これにより、隣接度合いの低い段差(Dd)の位置は、堆積物によってずれて検出されたものと見なして、道路境界の推定から除外することができる。よって、道路境界の検出精度が向上する。
堆積物推定回路32は、図6に示したように、蓄積された段差(Da、Db、Dc、Dd、De)の位置の連続性に基づいて、段差に堆積物が存在していることができる。蓄積された段差の位置の連続性に基づいて、堆積物によるズレの有無を推定することができる。よって、堆積物の存在の推定精度が向上し、道路境界の検出精度が向上する。
堆積物推定回路32は、図7に示したように、蓄積された段差(Da、Db、Dc、Dd、De)の位置を近似した直線に対する段差の位置毎の合致度に基づいて、段差に堆積物が存在していることを推定することができる。近似直線に対する段差の位置各々の合致度に基づいて、堆積物によるズレの有無を推定することができる。よって、堆積物の存在の推定精度が向上し、道路境界の検出精度が向上する。
堆積物推定回路32は、図8及び図9に示したように、蓄積された段差(Da、Db、Dc、Dd、De、Df)の位置を近似した曲線(CCV、CCV’)に基づいて、段差に堆積物が存在していることを推定することができる。例えば、近似曲線の曲率或いは近似曲線に対する段差の位置の合致度に基づいて、堆積物によるズレの有無を推定することができる。よって、堆積物の存在の推定精度が向上し、道路境界の検出精度が向上する。
堆積物推定回路32は、地図上の車両の位置及び地図情報に含まれる道路情報に基づいて、段差に堆積物が存在していることを推定することができる。よって、堆積物の存在の推定精度が向上し、道路境界の検出精度が向上する。
(第2実施形態)
図12を参照して、第2実施形態に係わる自己位置推定装置2の全体構成を説明する。自己位置推定装置2は、第1実施形態の道路境界検出装置1により検出された道路境界と、地図情報に含まれる道路境界を示す情報とを照合することにより、車両(Vc)の地図上の位置を推定する。
具体的に、自己位置推定装置2は、測距センサ12と、地図データベース27と、測距センサ12による測定データ及び地図データベース27内の情報から、自己位置を推定する一連の情報処理を実行するマイクロコンピュータ13とを備える。マイクロコンピュータ13は、予めインストールされたコンピュータプログラムを実行することにより、図1に示す情報処理回路(13、18、30、31、32、20)の他に、自己位置推定回路33を更に構成する。自己位置推定回路33は、地図取得回路34を有する。自己位置推定装置2は、車輪速センサ28、舵角センサ29、段差位置データベース25を備える。
地図取得回路34は、車両周囲の地図情報を地図データベース27から取得する。自己位置推定回路33は、地図情報に含まれる道路境界を示す情報と、道路境界推定回路20により推定された道路境界とを照合することにより、車両の地図上の位置を推定する。具体的に、自己位置推定回路33は、車両周辺の地図情報として、道路境界の形状を取得する。そして、道路境界推定回路20により推定された道路境界と道路境界の形状とのマッチングを行う。マッチングを行う手法としては、ICP手法を用いることが考えられる。
図13は、図12の自己位置推定装置1を用いた自己位置推定方法の一例を示すフローチャートである。図13のステップS01〜S15は、図11のステップS01〜S15と同じであり、図13では、ステップS17が追加されている。ステップS17では、自己位置推定回路33が、推定された道路境界と地図データベース27から取得した道路境界の形状とのマッチングを行い、車両の地図上の位置を推定する。
例えば、道路境界を構成する点群(Ps)を求め、車両の位置(Vs)を仮決めする。車両周囲の地図情報に含まれる道路境界の情報を取得する。道路境界の情報に含まれる道路境界をしきい距離(例えば5cm〜10cm)以下の領域に分割し、各領域の代表点(Pm)を求める。マッチング処理を行い、代表点(Pm)に対して点群(Ps)が重なるようなオフセット量(Vo)を算出し、車両の位置(Vs)にオフセット量(Vo)を加算した値を、車両の位置として出力する。
自己位置推定装置2は、第1実施形態の道路境界検出装置1により検出された道路境界を用いて、車両の地図上の位置を推定する。よって、車両の位置の推定精度も向上する。
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
測距センサ12の他の例として、レーザレンジファインダ(LRF)がある。LRFは、車両周囲の物体に向けてレーザーを照射し、物体に反射して戻ってきたレーザーを観測する。そして、LRFは、レーザーの照射方向に基づいて物体が位置する方位を計測すると共に、レーザーの照射から反射レーザーの観測までの時間に基づいて物体までの距離を計測する。LRFは、レーザースキャナとも呼ばれる。LRFの照射範囲は任意に設定可能である。例えば、車両のルーフ中央部にLRFを設定し、周囲全体を照射範囲とする360度LRFを用いることができる。
なお、俯角を付けてLRFを搭載することで走行中に車両進行方向を広範囲にわたって調査することが可能となる。また、複数のレーザーを同時に照射可能なマルチレイヤー型のLRFを用いることも可能である。