JP6450570B2 - 粒状成形体 - Google Patents

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Description

本発明は、粒状成形体に関する。より詳しくは、本発明は、空隙率が50〜95%である、有機高分子樹脂及びケイ酸カルシウム水和物からなる粒状成形体であって、液体中の特定成分を高速で吸着・除去するために好適な粒状成形体、及びこれを含む吸着剤に関する。
近年、環境浄化の観点から、工場排水、下水道処理水、環境水中等から、リン酸イオン、ホウ酸イオン、フッ素イオン、金属イオン等を吸着除去する技術が求められている。
以下の非特許文献1と2に記載されているように、ケイ酸カルシウム水和物は、リン酸イオンや金属イオン等の種々のイオンを吸着することが知られており、液体中に存在するこれらイオンを除去するための吸着剤として使用されている。
また、吸着剤を用いて液体中の特定成分を吸着除去する方法としては、容器内に吸着剤を充填してその容器に吸着除去対象成分を含有する液体を通液する方法が広く行われている。このような方法で吸着除去処理を実施する場合、容器からの吸着剤の流出を防止するため、吸着剤層内の通液抵抗を低減してなるべく高い通水速度で通液するため、等の理由から、吸着剤は粉末状ではなく数100μm〜数mm程度の粒状で使用されることが多い。そして、このような粒度の粒状ケイ酸カルシウム水和物を得る簡便な方法としては、ブロック状、パネル状、塊状等の形状のケイ酸カルシウム水和物を粉砕した後に篩分け処理で所望の粒度の粒状成形体を得る方法が挙げられる。
しかしながら、このような方法で得られた粒状成形体は、吸着処理に供する場合、ケイ酸カルシウム水和物の粒径が大きいために、液体中の除去対象イオン等が粒状成形体の内部まで到達しにくい。そのため、高い通液速度での吸着処理に供した場合、すなわち液体と粒状成形体との接触時間が短い吸着処理に供した場合には、粒状成形体の表面近傍しか吸着処理に寄与しないため、吸着処理液量が少ない段階から吸着対象イオン等が吸着されずに吸着処理液中に漏れ出す現象いわゆる破過現象が認められる。破過現象が認められるまでの吸着処理液量を多くするためには、吸着処理での通液速度を非常に遅くし、粒状成形体との接触時間を長くする必要がある。その結果、吸着処理をするための設備が非常に大きくなってしまうという問題点がある。
また、このような粒状成形体はケイ酸カルシウム水和物という無機材料のみから構成されるために、脆く粉落ちや摩耗がしやすいという問題点もある。
イオン交換(講談社サイエンティフィック) p154−156 日本海水学会誌 第44巻 第3号 (1990) p159
本発明が解決しようとする課題は、工場排水、下水道処理水、環境水中等からコンパクトな設備で種々のイオンを吸着・除去するために好適な吸着剤として使用できる粒状成形体を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究し実験を重ねた結果、ケイ酸カルシウム水和物粉体にバインダーとして有機高分子樹脂を混合し、造粒して得られる粒状成形体は、前述のような通液による吸着処理に用いる場合に、通液速度を高めても高い吸着性能を示し、かつ、粉落ちもしにくいということを見出し、かかる知見に基づき、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は以下の通りのものである。
[1]液体中の金属イオンを吸着除去するための吸着剤であって、該吸着剤は、有機高分子樹脂、水溶性高分子、及びケイ酸カルシウム水和物を含有する粒状成形体を含み、該有機高分子樹脂は、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリスルホン(PS)、ポリエーテルスルホン(PES)、及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる群から選ばれ、かつ、該水溶性高分子は、ポリビニルアルコール、及びポリエチレングリコールからなる群から選ばれる、前記吸着剤。
[2]前記金属イオンは、コバルトイオン又はセシウムイオンである、前記[1]に記載の吸着剤。
[3]前記有機高分子樹脂は、ポリスルホン(PS)又はポリエーテルスルホン(PES)である、前記[1]又は[2]に記載の吸着剤。
[4]前記粒状成形体の空隙率が50〜95%である、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の吸着剤。
[5]前記粒状成形体の粒子径が100〜5000μmである、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の吸着剤
[6]前記ケイ酸カルシウム水和物の粒子径が0.1μm〜50μmである、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の吸着剤。
[7]前記ケイ酸カルシウム水和物の含有率が、前記有機高分子樹脂100質量部に対して60〜2000質量部である、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の吸着剤。
[8]前記ケイ酸カルシウム水和物が層状構造を有している、前記[1]〜[7]のいずれかに記載の吸着剤。
本発明に係る粒状成形体は、容器内に充填して本粒状成形体による層を形成し、原液をその層に通液して原液中の特定成分を吸着・除去する用途に用いる場合、高い通液速度で原水を通液しても、破過までに吸着処理が可能な処理液量が大きい。すなわち、高い通液速度で吸着処理を行っても高い吸着性能を示す。
したがって、本発明に係る粒状成形体は、コンパクトな設備で、液体中に含有される吸着除去対象成分を除去する吸着剤として好適利用が可能である。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本実施形態は、有機高分子樹脂及びケイ酸カルシウム水和物からなる粒状成形体である。
有機高分子樹脂は、特に限定されず、湿式相分離法による多孔化手法が可能なものが好ましい。有機高分子樹脂としては、例えば、ポリスルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリフッ化ビニリデン系ポリマー、ポリ塩化ビニリデン系ポリマー、ポリアクリロニトリル系ポリマー、ポリメタクリル酸メチル系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ポリイミド系ポリマー、セルロース系ポリマー、エチレンビニルアルコール共重合体系ポリマー等が挙げられる。
有機高分子樹脂は、水中での非膨潤性と耐生分解性、さらに製造のし易さの観点から、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリスルホン(PS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)が好ましく、また、成形性と耐薬品性を兼ね備えている観点から、ポリエーテルスルホン(PES)がより好ましい。
前記した湿式相分離法とは、有機高分子樹脂とその有機高分子樹脂の良溶媒の混合物を貧溶媒の中に浸漬して、溶媒交換により溶媒中に溶融している有機高分子樹脂のゲル化を行わせて有機高分子樹脂を固化する方法である。この溶媒交換過程で良溶媒の比率が減少し、それにつれてミクロ相分離が生じ、有機高分子の小球が形成し、成長し、絡み合い、多孔性の成形体が形成される。
本実施形態の粒状成形体は、高い通液速度で吸着処理を行っても高い吸着性能を示すという観点から、該成形体内に多数の細孔を有する多孔性構造であることが好ましい。多孔性を示す目安になる空隙率が50〜95%であることが、必要最低限の強度を有しかつ高い通水速度の吸着処理に用いても高い吸着性能を示すという観点から、好ましく、60〜90%であることがより好ましく、70〜90%であることがさらに好ましい。
本実施形態の粒状成形体は、粒子径が100〜5000μmであることが好ましい。ここで、粒状成形体の粒子径とは、実体顕微鏡観察により測定した最長径である。粒子径を100μm以上にすることで、通液時の通水抵抗を低くすることができ、また5000μm以下にすることで高い吸着性能が発現する。
本実施形態の粒状成形体は、必要最低限の強度を有しかつ種々のイオンに対して大きな吸着容量を有するという観点から、ケイ酸カルシウム水和物の含有率が有機高分子樹脂100質量部に対して60〜2000質量部であることが好ましく、100〜1500質量部であることがより好ましく、150〜1000質量部であることがさらに好ましい。
ケイ酸カルシウム水和物は、含水カルシウムケイ酸塩とも称される組成式:XCaO・YSiO・ZHO(X、Y、Z>0)で示される化合物で、ゾノトライト、フォシャジャイト、ヒレンブランダイト、トバモライト、ジェナイト、ジャイロライト、トラスコタイト、Z−フェーズや非晶質様のケイ酸カルシウム水和物であるC−S−H等である。これらのケイ酸カルシウム水和物は天然品であってもよいし、合成品であってもよい。これらの中でも、層状構造を有するトバモライト、ジャイロライト、トラスコタイト等を用いることが、種々のイオンの吸着容量が大きいという点で好ましい。また、ケイ酸カルシウム水和物はそれを合成する際に原料として用いる二酸化ケイ素等と混合したものであってもよい。
ケイ酸カルシウム水和物は、粒子径が0.1μm〜50μmの粉体であることが好ましい。ここで、ケイ酸カルシウム水和物の粒子径とは、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置で測定したメジアン径である。粒子径0.1μm以上のものを用いることで原料配合中のケイ酸カルシウム水和物の含有率を高めても、充分な強度を有する粒状成形体が得られる。他方、ケイ酸カルシウム水和物の粒子径を50μm以下にすることで、高い通液速度の吸着処理に用いても高い吸着性能を示すことができる。ケイ酸カルシウム水和物の粒子径は、より好ましくは0.5μm〜40μm、さらに好ましくは1μm〜30μmの範囲である。
次に、本実施形態の粒状成形体の製造方法について説明する。
本実施形態の粒状成形体の製造方法としては、有機高分子樹脂とその良溶媒と水溶性高分子とケイ酸カルシウム水和物を混合した後、この混合スラリーを所望の大きさの粒状にし、貧溶媒中に滴下し凝固させる方法が挙げられる。
有機高分子樹脂は、特に限定されないが、湿式相分離による多孔化手法が可能なものが好ましく、例えば、ポリスルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリフッ化ビニリデン系ポリマー、ポリ塩化ビニリデン系ポリマー、ポリアクリロニトリル系ポリマー、ポリメタクリル酸メチル系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ポリイミド系ポリマー、セルロース系ポリマー、エチレンビニルアルコール共重合体系ポリマー等が挙げられる。
前記したように、有機高分子樹脂としては、水中での非膨潤性と耐生分解性、さらに成形のし易さの観点から、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリスルホン(PS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)が好ましく、また、成形性と耐薬品性を兼ね備えている観点から、ポリエーテルスルホン(PES)がより好ましい。
良溶媒は、有機高分子樹脂及び水溶性高分子を共に溶解するものであればいずれでもよく、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルホルムアミド(DMF)等であることができ、これらの良溶媒は1種又は混合溶媒としてもよい。
有機高分子樹脂の添加率は、良溶媒100質量部に対して3〜30質量部にすることが、造粒が容易となるという観点から好ましい。
粒状成形体の製造においては、粒状成形体の多孔性をより高める目的で、水溶性高分子を原料に用いることができる。用いる水溶性高分子は有機高分子樹脂と相溶性のあるものであれば特に限定されない。
水溶性高分子としては、天然高分子、例えば、グアーガム、ローカストビーンガム、カラーギナン、アラビアゴム、トラガント、ペクチン、デンプン、デキストリン、ゼラチン、カゼイン、コラーゲン等;半合成高分子、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルデンプン、メチルデンプン等;合成高分子、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、また、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール等のポリエチレングリコール類が挙げられる。
これらの水溶性高分子の中でも、耐生分解性を有するという観点から、合成高分子が好ましい。また、より多孔性が高まるという点で、トリエチレングリコール等のポリエチレングリコール類を用いるのが特に好ましい。
水溶性高分子の添加量は、有機高分子樹脂100質量部に対して1〜50質量部であることができる。
粒状成形体の製造に用いる貧溶媒としては、例えば、水や、メタノール、エタノール等のアルコール類、エーテル類、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素類等の、有機高分子樹脂を溶解しない液体が用いられるが、水を用いることが好ましい。また、貧溶媒中に有機高分子樹脂の良溶媒を若干添加することにより凝固速度をコントロールすることも可能である。好ましい高分子樹脂の良溶媒と水の混合比は0〜70%であり、0〜60%がより好ましい。混合比が70%以下では、凝固速度が速くなるため、液滴等に成形したポリマースラリーが、貧溶媒中への突入する時および貧溶媒中を移動中に、貧溶媒と成形体の間で摩擦抵抗の影響を受けず、形状が良好になる。
貧溶媒の温度は、特に限定されるものではないが、好ましくは−30℃〜90℃、より好ましくは0℃〜90℃、さらに好ましくは0℃〜80℃である。貧溶媒の温度が90℃以下、又は−30℃以上であると、貧溶媒中の成形体の状態が安定する。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
実施例中に記載する測定値は、以下の方法で測定したものである。
[粒状成形体の粒子径]
実体顕微鏡観察により測定した最長径が粒子径である。
[ケイ酸カルシウム水和物粉末の粒子径]
レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(HORIBA社製のLA−950(商品名))で測定したメジアン径を粒子径とした。
[成形体の空孔率]
充分に水に濡れた成形体を乾いたろ紙上に拡げ、余分な水分をとった後に重量を測定し、成形体の含水時の重量(W1)とした。次に、成形体を室温下で24時間以上、真空乾燥を行って乾燥した成形体を得た。乾燥した成形体の重量を測定し、成形体の乾燥時の重量(W0)とした。
次に、比重瓶(ゲーリュサック型、容量10ml)を用意し、この比重瓶に純水(25℃)を満たしたときの重量を測定し、満水時の重量(Ww)とした。次に、この比重瓶に、純水に湿潤した状態の成形体を入れ、さらに標線まで純水を満たして重量を測定し、(Wwm)とした。次に、この成形体を比重瓶から取り出し、室温で24時間以上、真空乾燥に付して、乾燥した成形体を得た。乾燥した成形体の重量を測定して(M)とした。下記の計算式:
ρ=M/(Ww+M−Wwm)
Pr=(W1−W0)/(W1−W0+W0/ρ)×100
{式中、Prは空孔率(%)であり、W1は成形体の含水時の重量(g)、W0は成形体の乾燥時の重量(g)、ρは成形体の比重、Mは比重瓶に入れた成形体の乾燥後の重量(g)、Wwは比重瓶の満水時の重量(g)、そしてWwmは比重瓶に含水した成形体と純水を入れたときの重量(g)である。}に従って、成形体の真比重(ρ)、及び、空孔率(Pr)を求めた。
[実施例1]
ケイ酸カルシウム水和物として軽量気泡コンクリート粉(旭化成建材(株)製 製品名:サンパルファ)0.5kg、N‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP、三菱化学(株))1kgをビーズミルポットに入れ、15時間粉砕を行った。粉砕後の軽量気泡コンクリート粉の粒子径は2.6μmであった。
この混合スラリーに対し、ポリエーテルスルホン(PES、住友化学(株)、スミカエクセル PES パウダーグレード(商品名))0.15kg、ポリエチレングリコール(PEG、和光純薬工業(株)、ポリエチレングリコール2000(商品名))0.1kgを加え、60℃に加温して溶解し、よく混合してポリマースラリーを得た。
得られたポリマースラリーを60℃に加温し、側面に直径0.5mmのノズルを開けた円筒状回転容器の内部に供給し、この容器を回転させ、遠心力(15G)によりノズルから液滴を形成し、60℃の水からなる凝固浴槽中に吐出させ、ポリマースラリーを凝固させた。さらに、洗浄、篩分けを行い、粒子径300〜500μmの球形状の粒状成形体を得た。この粒状成形体の空隙率は82%だった。
この粒状成形体1Lを内径80mmの円筒形のカラム内に充填した。純水に塩化コバルト6水和物を溶解して作製したコバルト濃度10mg/Lの原水を作製し、この原水をカラムに通液速度(SV Space Velocity)20h−1の下降流で通液した。そしてカラム下部から流出する吸着処理水中のコバルト濃度をICP発光分析法で測定した。その結果、通液量640Lの時点までは吸着処理水中にコバルトは検出されなかったが、通水量650Lの時点で0.2mg/Lのコバルトが検出された。
[実施例2]
消石灰と珪砂とをCaO/SiOモル比0.9となる割合で水に添加して混合して作製した水/固形分質量比1.6のスラリーを、200℃で10時間水熱反応させて合成トバモライト系のケイ酸カルシウム水和物のブロック状成形体を得た。このブロックを粉砕して得た粒子径8.1μmのケイ酸カルシウム水和物粉末0.7kg、N‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP、三菱化学(株))1kg、ポリエーテルスルホン(PES、住友化学(株)、スミカエクセル PES パウダーグレード(商品名))0.1kg、ポリエチレングリコール(PEG、和光純薬工業(株)、ポリエチレングリコール2000(商品名))0.05kgを加え、60℃に加温して溶解し、よく混合してポリマースラリーを得た。
得られたポリマースラリーを60℃に加温し、側面に直径0.5mmのノズルを開けた円筒状回転容器の内部に供給し、この容器を回転させ、遠心力(15G)によりノズルから液滴を形成し、60℃の水からなる凝固浴槽中に吐出させ、ポリマースラリーを凝固させた。さらに、洗浄、篩分けを行い、粒子径200〜300μmの球形状の粒状成形体を得た。この粒状成形体の空隙率は76%だった。
この粒状成形体1Lを内径80mmの円筒形のカラム内に充填した。純水に塩化コバルト6水和物を溶解して作製したコバルト濃度10mg/Lの原水を作製し、この原水をカラムに通液速度(SV)30h−1の下降流で通液した。そしてカラム下部から流出する吸着処理水中のコバルト濃度をICP発光分析法で測定した。その結果、通液量720Lの時点までは吸着処理水中にコバルトは検出されなかったが、通水量735Lの時点で0.3mg/Lのコバルトが検出された。
[実施例3]
消石灰と珪砂とをCaO/SiOモル比0.5となる割合で水に添加して混合して作製した水/固形分質量比2.0のスラリーを、200℃で24時間水熱反応させてジャイロライト系のケイ酸カルシウム水和物と珪砂からなるブロック状成形体を得た。このブロックを粉砕して得た粒子径17μmのケイ酸カルシウム水和物粉末0.8kg、N‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP、三菱化学(株))1kg、ポリエーテルスルホン(PES、住友化学(株)、スミカエクセル PES パウダーグレード(商品名))0.08kg、ポリエチレングリコール(PEG、和光純薬工業(株)、ポリエチレングリコール2000(商品名))0.15kgを加え、60℃に加温して溶解し、よく混合してポリマースラリーを得た。
得られたポリマースラリーを60℃に加温し、側面に直径0.5mmのノズルを開けた円筒状回転容器の内部に供給し、この容器を回転させ、遠心力(15G)によりノズルから液滴を形成し、60℃の水からなる凝固浴槽中に吐出させ、ポリマースラリーを凝固させた。さらに、洗浄、篩分けを行い、粒子径500〜700μmの球形状の粒状成形体を得た。この粒状成形体の空隙率は73%だった。
この粒状成形体1Lを内径80mmの円筒形のカラム内に充填した。純水に塩化セシウムを溶解して作製したセシウム濃度1mg/Lの原水を作製し、この原水をカラムに通液速度(SV)30h−1の下降流で通液した。そしてカラム下部から流出する吸着処理水中のセシウム濃度をICP質量分析法で測定した。その結果、通液量1860Lの時点までは吸着処理水中にセシウムは検出されなかったが、通水量1890Lの時点で0.1mg/Lのセシウムが検出された。
[比較例]
実施例2で作製した合成トバモライト系のケイ酸カルシウム水和物のブロック状成形体を粉砕し、粉砕物の篩分けにより粒子径200μm〜300μmの粒状成形体を得た。
この粒状成形体1Lを内径80mmの円筒形のカラム内に充填した。純水に塩化コバルト6水和物を溶解して作製したコバルト濃度10mg/Lの原水を作製し、この原水をカラムに通液速度(SV)30h−1の下降流で通液した。そしてカラム下部から流出する吸着処理水中のコバルト濃度をICP発光分析法で測定した。その結果、通液量525Lの時点までは吸着処理水中にコバルトは検出されなかったが、通水量540Lの時点で0.2mg/Lのコバルトが検出された。
本発明に係る粒状成形体は、工場排水、下水道処理水、環境水中等から、金属イオン等を吸着除去する吸着剤として好適に利用可能である。

Claims (8)

  1. 液体中の金属イオンを吸着除去するための吸着剤であって、該吸着剤は、有機高分子樹脂、水溶性高分子、及びケイ酸カルシウム水和物を含有する粒状成形体を含み、該有機高分子樹脂は、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリスルホン(PS)、ポリエーテルスルホン(PES)、及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる群から選ばれ、かつ、該水溶性高分子は、ポリビニルアルコール、及びポリエチレングリコールからなる群から選ばれる、前記吸着剤。
  2. 前記金属イオンは、コバルトイオン又はセシウムイオンである、請求項1に記載の吸着剤。
  3. 前記有機高分子樹脂は、ポリスルホン(PS)又はポリエーテルスルホン(PES)である、請求項1又は2に記載の吸着剤。
  4. 前記粒状成形体の空隙率が50〜95%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の吸着剤。
  5. 前記粒状成形体の粒子径が100〜5000μmである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸着剤
  6. 前記ケイ酸カルシウム水和物の粒子径が0.1μm〜50μmである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸着剤。
  7. 前記ケイ酸カルシウム水和物の含有率が、前記有機高分子樹脂100質量部に対して60〜2000質量部である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の吸着剤。
  8. 前記ケイ酸カルシウム水和物が層状構造を有している、請求項1〜7のいずれか1項に記載の吸着剤。
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