JP6449708B2 - 車両の潤滑装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両における所定の各部に潤滑オイルを供給する車両の潤滑装置についての技術分野に関する。
特開2011−122711号公報
車両の動力伝達機構における各部に潤滑オイルを供給し、これらの各部を潤滑する潤滑装置がある(例えば、特許文献1参照)。
このような潤滑装置は、例えば、回転駆動されることによりオイルタンクから潤滑オイルを汲み上げて圧送するオイルポンプと、オイルポンプによって圧送された潤滑オイルの油路を有する中空シャフトとを備えている。オイルポンプによってオイルタンクから汲み上げられた潤滑オイルは中空シャフトの油路を流動され、動力伝達機構における各部に供給される。
潤滑が必要な動力伝達機構における各部としては、例えば、遊星歯車式や平行二軸式等の有段変速機、ベルト式等の無段変速機、傘歯車式の差動装置、前輪と後輪の駆動力の比を切り替える電子制御カップリング、動力の伝達を行うプロペラシャフト等の各部がある。
また、オイルポンプによって汲み上げられた潤滑オイルは動力伝達機構以外の各部、例えば、モータージェネレーターのステーターコイル等にも供給されて冷却される。
オイルポンプは、一般に、車速に応じて回転速度が変化され、車速が上昇するに従って回転速度が高くなってオイルポンプから供給される油量が多くなり、車速が低下するに従って回転速度が低くなってオイルポンプから供給される油量が少なくなる。
特許文献1に記載された潤滑装置にあっては、モータージェネレーターのステーターコイルに潤滑オイルが供給され、ステーターコイルから流れ落ちる潤滑オイルがキャッチタンクに貯留される。出力軸(中空シャフト)には潤滑オイルが流動される油路が形成され、キャッチタンクの内部の空間である貯留空間と出力軸の油路との間で連通孔等によって潤滑オイルが両方向に流動可能な状態にされている。
このような構造において、オイルポンプから供給される油量が多くなって油路における油圧が高くなる高速走行時には、油路からキャッチタンクに連通孔等を介して潤滑オイルが流動されてキャッチタンクに貯留される油量が増加する。従って、中空シャフトの油路から潤滑が必要な各部への潤滑オイルの過剰な供給が抑制される。
一方、オイルポンプから供給される油量が少なくなって油路における油圧が低くなる低速走行時には、キャッチタンクから油路に連通孔等を介して潤滑オイルが流動されて油路を流動される油量が増加する。従って、中空シャフトの油路から潤滑が必要な各部への潤滑オイルの供給量が増加する。
ところが、特許文献1に記載された車両の潤滑装置にあっては、キャッチタンクの貯留空間と出力軸の油路とが連通孔によって常時連通された状態にされている。
従って、貯留空間に貯留されている潤滑オイルの量等が油圧の高さに影響を及ぼし易く、キャッチタンクの貯留空間と出力軸の油路との間での潤滑オイルの流動方向や流動量に関する流動制御が容易ではなく、潤滑が必要な各部に対する潤滑性能が低下するおそれがある。
そこで、本発明は、上記した問題点を克服し、潤滑が必要な各部に対する潤滑オイルの潤滑量を制御して各部に対する潤滑性能の向上を図ることを目的とする。
第1に、本発明に係る車両の潤滑装置は、状に形成され内周面と外周面の間で貫通された供給路を有する第1のシャフトと、一部が前記第1のシャフトに挿入された挿入部として設けられ他の部分が前記第1のシャフトから軸方向へ突出された突出部として設けられると共に前記挿入部の外周面が前記第1のシャフトの前記内周面に接した状態で前記第1のシャフトに対して軸方向へ移動可能とされた第2のシャフトとを備え、前記挿入部から前記突出部に亘る位置には潤滑オイルが流動される流動路が形成され、前記挿入部には前記流動路に連通され前記潤滑オイルを前記供給路を介して外部に流出させる第1の流出路が形成され、前記突出部には前記流動路に連通され前記潤滑オイルを外部に流出させる第2の流出路が形成され、前記第2のシャフトの前記第1のシャフトに対する移動位置に応じて前記挿入部によって前記供給路が開閉されるものである。
これにより、第2のシャフトの挿入部によって第1のシャフトの供給路が開閉されることにより、第1の流出路と第2の流出路から流出される潤滑オイルの量が制御される。
第2に、上記した本発明に係る車両の潤滑装置においては、前記流動路における油圧の高さに応じて前記第2のシャフトが前記第1のシャフトに対して移動されることが望ましい。
これにより、第2のシャフトを第1のシャフトに対して移動させる移動機構を必要としない。
第3に、上記した本発明に係る車両の潤滑装置においては、油圧が高くなるときに前記第2のシャフトが移動される方向と反対方向へ前記第2のシャフトを付勢する付勢バネが設けられることが望ましい。
これにより、油圧が低くなるときに付勢バネの付勢力によって第2のシャフトが第1のシャフトに対して移動される。
第4に、上記した本発明に係る車両の潤滑装置においては、前記付勢バネの付勢力が付与される方向への前記第2のシャフトの移動を規制するストッパーが設けられることが望ましい。
これにより、付勢バネの付勢力によって第2のシャフトが第1のシャフトに対して移動されたときに第2のシャフトの過剰な移動がストッパーによって規制される。
第5に、上記した本発明に係る車両の潤滑装置においては、車速が上昇するに従って前記潤滑オイルのオイルポンプからの前記流動路への供給量が増加することが望ましい。
これにより、車速が上昇するに従って流動路における油圧の高さが高くなる。
第6に、上記した本発明に係る車両の潤滑装置においては、前記第2のシャフトは前記突出部における前記挿入部と反対側の端部が閉塞された形状に形成されることが望ましい。
これにより、突出部における一端部が閉塞された第2のシャフトにおいて油圧の変化が生じる。
第7に、上記した本発明に係る車両の潤滑装置においては、前記第1の流出路から流出された前記潤滑オイルが前記供給路から電子制御カップリングに供給され、前記第2の流出路から流出された前記潤滑オイルがプロペラシャフトの軸方向における一端部に供給されることが望ましい。
これにより、電子制御カップリングとプロペラシャフトにそれぞれの駆動状態に応じた適正な潤滑オイルの量を供給することが可能になる。
第8に、上記した本発明に係る車両の潤滑装置においては、車速が一定以上にされたときに前記第1の流出路から前記潤滑オイルが流出されて前記供給路から電子制御カップリングに供給されることが望ましい。
これにより、車速が上昇したときに潤滑の必要性がより高くなる電子制御カップリングに潤滑オイルが供給される。
本発明によれば、第2のシャフトの挿入部によって第1のシャフトの供給路が開閉されることにより、第1の流出路と第2の流出路から流出される潤滑オイルの量が制御されるため、潤滑が必要な各部に対する潤滑オイルの潤滑量を制御して各部に対する潤滑性能の向上を図ることができる。
図2乃至図6と共に本発明車両の潤滑装置の実施の形態を示すものであり、本図は、車両における動力伝達機構等の概略構成を示す図である。 電子制御カップリングとその周辺構造を示す断面図である。 電子制御カップリングの片側半分を示す拡大断面図である。 潤滑オイルが流動される構造を示す拡大断面図である。 低速走行時において第1のシャフトの供給路が閉塞されている状態を示す拡大断面図である。 高速走行時において第1のシャフトの供給路が開放されている状態を示す拡大断面図である。
以下に、本発明車両の潤滑装置を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。
<動力伝達機構等の概略構成>
先ず、潤滑装置を有する車両に設けられた動力伝達機構等の概略構成を説明する(図1参照)。
車両100は、例えば、4輪駆動(4WD)タイプであり、前端側にエンジン(内燃機関)101を有し、エンジン101には図示しないトルクコンバーターや摩擦クラッチ等によってトランスミッション102が接続されている。尚、車両100がEV(Electric Vehicle:電気自動車)やHEV(Hybrid Electric Vehicle:ハイブリッド電気自動車)やPHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle:プラグインハイブリッド電気自動車)等である場合には、エンジン101に代えて、又は、エンジン101とともにモーターが設けられている。
トランスミッション102はマニュアルトランスミッション、オートマチックトランスミッション又はセミオートマチックトランスミッションの何れであってもよく、内部に図示しない遊星歯車機構や電子制御カップリング103が設けられている。尚、トランスミッション102の内部機構として無段変速機(Continuously Variable Transmission:CVT)が用いられていてもよい。
トランスミッション102にはフロントデファレンシャル104が接続されている。フロントデファレンシャル104には左右の前輪駆動軸105が連結され、前輪駆動軸105にはそれぞれ前輪106が連結されている。従って、エンジン101の駆動力はフロントデファレンシャル104及び前輪駆動軸105を介して前輪106に伝達される。
車両100のコーナーリング時にはフロントデファレンシャル104によって前輪106の左右の回転数の差が吸収され、エンジン101から前輪106に同じトルクが伝達される。
トランスミッション102の後端部にはプロペラシャフト107が連結されている。エンジン101からトランスミッション102に伝達される駆動力はトランスミッション102からプロペラシャフト107に伝達されてプロペラシャフト107が回転される。
プロペラシャフト107は前後に延びる状態で配置され、プロペラシャフトの後端部にはリアデファレンシャル108が接続されている。リアデファレンシャル108には左右の後輪駆動軸109が連結され、後輪駆動軸109にはそれぞれ後輪110が連結されている。従って、プロペラシャフト107に伝達されたエンジン101の駆動力はリアデファレンシャル108及び後輪駆動軸109を介して後輪110に伝達される。
車両100のコーナーリング時にはリアデファレンシャル108によって後輪110の左右の回転数の差が吸収され、エンジン101から後輪110に同じトルクが伝達される。
トランスミッション102の内部又は下方には、潤滑が必要な各部に供給される潤滑オイルを貯留する図示しないオイルタンクとオイルタンクから潤滑オイルを汲み上げて圧送する図示しないオイルポンプとが配置されている。オイルポンプから汲み上げられた潤滑オイルは、所定の油路を通り一部が後述する第1のシャフトから第2のシャフトに圧送されて潤滑が必要な各部に供給される。従って、オイルポンプ、第1のシャフト及び第2のシャフトは潤滑が必要な各部に潤滑オイルを供給する潤滑装置の構成要素とされる。
オイルポンプは、例えば、車速に応じて回転速度が変化され、車速が上昇するに従って回転速度が高くなってオイルポンプから供給される潤滑オイルの量が多くなり、車速が低下するに従って回転速度が低くなってオイルポンプから供給される潤滑オイルの量が少なくなる。
<潤滑装置及び電子制御カップリング等の構成>
次に、各部に潤滑オイルを供給する潤滑装置及び潤滑装置によって潤滑オイルが供給される電子制御カップリング等の構成について説明する(図2乃至図4参照)。
潤滑装置1を構成する第1のシャフトと第2のシャフトはトランスミッション102の内部に設けられている。
トランスミッション102はハウジング2の内部に所要の各部が配置されて構成されている。ハウジング2は何れも前後に開口されたカップリングケース3とリアケース4を有し、カップリングケース3とリアケース4が前後で結合されている。
カップリングケース3には第1のシャフト5が貫通された状態で配置されている。カップリングケース3の内部の空間における第1のシャフト5の外周側の部分は第1のオイル供給空間3aとして形成されている。
第1のシャフト5は前後に延びる筒状に形成され前端部が出力軸6の後端部に連結されている。出力軸6にはエンジン101の駆動力が伝達され、出力軸6はエンジン101の駆動力が伝達されることによりカップリングケース3に対して第1のベアリング7を介して回転される。第1のシャフト5は出力軸6と一体になって回転される。
第1のシャフト5の内部空間8は、後側の部分が潤滑オイルを流動させるオイル流動部8aとして形成され、オイル流動部8aの後側の部分が被挿入部8bとして形成されている。オイル流動部8aにはオイルポンプから汲み上げられて圧送される潤滑オイルが出力軸6の内部を通って流動される。第1のシャフト5には被挿入部8bに連通された供給路9が前後方向及び周方向に離隔して形成されている。供給路9は第1のシャフト5の内周面5aと外周面5bの間で貫通されている。
第1のシャフト5の被挿入部8bは前端部の径が他の部分の径より大きくされ、第1のシャフト5の内部には被挿入部8bにおける前端部の径が他の部分の径より大きくされることにより前方を向く円環状の受け面5cが形成されている。尚、オイル流動部8aの径は被挿入部8bにおける前端部の径と同じにされている。
第1のシャフト5の内部にはオイル流動部8aと被挿入部8bの境界部分にストッパー10が取り付けられている。ストッパー10は受け面5cの前側に離隔して位置されている。
第1のシャフト5の被挿入部8bには第2のシャフト11の一部が挿入されている。第2のシャフト11は前後に延びる円筒部12と円筒部12の後側の開口を閉塞する閉塞部13とが一体に形成されて成る。第2のシャフト11の内部の空間は流動路14として形成されている。第2のシャフト11は円筒部12の内径がストッパー10の内径より小さくされている。
第2のシャフト11は後端側の部分を除いて第1のシャフト5の被挿入部8bに挿入されている。第2のシャフト11のうち、被挿入部8bに挿入された部分は挿入部15として設けられ、挿入部15より後側の部分が第1のシャフト5から後方に突出された突出部16として設けられている。挿入部15は前端部の径が他の部分の径より大きくされ、前端部の後面が後方を向く環状の支持面15aとして形成されている。
挿入部15には第2のシャフト11の内周面11aと外周面11bの間で貫通された第1の流出路17が前後方向及び周方向に離隔して形成されている。突出部16には内周面11aと外周面11bの間で貫通された第2の流出路18が前後方向及び周方向に離隔して形成されている。
第2のシャフト11は外周面11bが第1のシャフト5の内周面5aに接した状態で挿入部15が第1のシャフト5の被挿入部8bに挿入されている。挿入部15が被挿入部8bに挿入された状態において、第1のシャフト5の受け面5cと挿入部15の支持面15aとの間には付勢バネ19が配置される。付勢バネ19は、例えば、圧縮コイルバネであり、付勢バネ19によって第2のシャフト11が第1のシャフト5に対して前方へ付勢される。従って、第2のシャフト11に後方への移動力が付与されていない状態においては、第2のシャフト11の前面が付勢バネ19の付勢力によってストッパー10に押し当てられ、第2のシャフト11が前方の移動端に保持される。
リアケース4にはリアシャフト20が貫通された状態で配置されている。リアシャフト20は前後に延びる形状に形成され、前方に開口された配置空間21を有している。配置空間21は前側の部分が大径部21aとして形成され大径部21aより後側の部分が大径部21aより径の小さい小径部21bとして形成されている。
リアシャフト20には内周面20aと外周面20bの間で貫通された送油路22が前後方向及び周方向に離隔して形成されている。
配置空間21には第1のシャフト5の後端部と第2のシャフト11の突出部16とが挿入されている。第1のシャフト5の後端部は配置空間21の大径部21aに挿入され、第2のシャフト11の突出部16は配置空間21の小径部21bに挿入される。リアシャフト20の小径部21bの内径は突出部16の外径より大きくされている。従って、リアシャフト20の小径部21bには突出部16の外周側に一定の大きさの空間(隙間)が形成されている。
配置空間21に第1のシャフト5の後端部と第2のシャフト11の突出部16とが挿入された状態において、第1のシャフト5の後端部における外面とリアシャフト20の内面との間にベアリング23が配置され、配置空間21が封止される。
リアシャフト20は第2のベアリング24を介してリアケース4に対して回転される。リアシャフト20は後端部がプロペラシャフト107の前端部に連結され、プロペラシャフト107の前端部がブッシュ111を介してリアケース4に支持されている。従って、リアシャフト20とプロペラシャフト107はリアケース4に対して一体になって回転されると共に第1のシャフト5に対して相対的に回転される。
リアケース4の内部にはリアシャフト20の外周側に第2のオイル供給空間4aが形成され、第2のオイル供給空間4aはリアシャフト20の配置空間21に送油路22を介して連通されている。尚、第2のオイル供給空間4aは一部がカップリングケース3の第1のオイル供給空間3aに連通されている。
プロペラシャフト107とリアケース4の後端部との間にはシール体25が配置され、シール体25とプロペラシャフト107の前端部はリアケース4の後端部における外周面に取り付けられたカバー26によって外側から覆われている。
カップリングケース3の内部には第1のシャフト5の外周側に電子制御カップリング103が配置されている(図2及び図3参照)。電子制御カップリング103はCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等を有する図示しない電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)によって制御され、電子制御ユニットから送出される駆動信号に基づいて後述するコイルに電流が供給されることにより動作される。
電子制御ユニットから電子制御カップリング103には、例えば、車速に応じた大きさの駆動信号が送出され、電子制御カップリング103は車速が上昇するに従って高い駆動状態にされる。
電子制御カップリング103はコイル(電磁ソレノイド)27と制御カム28と制御クラッチ29とメインカム30とメインクラッチ31とアーマチュア32とを有している。
コイル27はカップリングケース3の第1のオイル供給空間3aにおける前端寄りの位置に配置され、コイルホルダー33によって保持されている。コイルホルダー33は磁性金属材料によって形成され、第1のオイル供給空間3aにおいて固定された状態で配置されている。コイル27には電子制御ユニットから送出される駆動信号に基づいて電流が供給される。
コイル27は後方からコイルカバー34によって覆われている。コイルカバー34は外周側部材34aと内周側部材34bと圧入部材34cとを有している。外周側部材34aと内周側部材34bは何れも磁性金属材料によって形成され、圧入部材34cは非磁性材料によって形成されている。内周側部材34bは外周側部材34aの内周側に位置され、外周側部材34aと内周側部材34bの間に圧入部材34cが圧入されている。
コイルホルダー33と外周側部材34aと内周側部材34bが磁性金属材料によって形成されているため、電子制御ユニットから送出される駆動信号に基づいてコイル27に電流が供給されると、コイル27の周囲に磁界が発生する。
コイルカバー34は内周部が第1のシャフト5に相対回転自在に嵌合されており、第1のシャフト5に対して回転されると共に第3のベアリング35を介してコイルホルダー33に対して回転される。
コイルカバー34の外周側部材34aには環状ベース36が結合されている。環状ベース36には外周面と内周面の間で貫通された送出路36aが前後方向及び周方向に離隔して形成されている。環状ベース36は外周側部材34aの外周部における後端部に結合され、コイルカバー34と一体になって回転される。
制御カム28はコイルカバー34における内周側部材34bの後側に位置され、第1のシャフト5に対して回転可能とされている。制御カム28の後面には後方に開口された凹部28aが形成されている。制御カム28の凹部28aには周方向へ行くに従って深さが変化する傾斜面が形成されている。
制御クラッチ29は外周側摩擦板29aと内周側摩擦板29bとが前後方向において交互に配置されて成る。外周側摩擦板29aは外周部が環状ベース36の内周部における前端部に支持され、環状ベース36と一体になって回転されると共に環状ベース36に対して前後方向へ移動可能にされている。内周側摩擦板29bは内周部が制御カム28の外周部に支持され、制御カム28と一体になって回転されると共に制御カム28に対して前後方向へ移動可能にされている。
制御クラッチ29は外周側摩擦板29aと内周側摩擦板29bが互いに接近し係合又はスリップされることにより動力を制御カム28からコイルカバー34を介して環状ベース36に伝達する機能を有している。制御クラッチ29においては、外周側摩擦板29aと内周側摩擦板29bとの間の摩擦力の大きさに応じて制御カム28から環状ベース36に伝達される動力の大きさが変化される。
メインカム30は制御カム28の後側において制御カム28に対向して位置され、第1のシャフト5に対して回転可能とされている。メインカム30の前面には前方に開口された凹部30aが形成されている。メインカム30の凹部30aには周方向へ行くに従って深さが変化する傾斜面が形成されている。
制御カム28とメインカム30の間には周方向に離隔して複数のボール37が配置されている。ボール37は制御カム28の凹部28aとメインカム30の凹部30aとに挿入されて保持されている。
メインカム30の後側には伝達ベース38が配置され、伝達ベース38は環状ベース36の内周側に位置されている。伝達ベース38は第1のシャフト5に結合されており、第1のシャフト5と一体になって回転される。伝達ベース38は一部がメインカム30に結合されており、第1のシャフト5及びメインカム30と一体になって回転される。伝達ベース38には外周面と内周面の間で貫通された導出路38aが周方向に離隔して形成されている。導出路38aはそれぞれ第1のシャフト5に形成された供給路9と位置が一致されている。
メインクラッチ31は外周側係合板31aと内周側係合板31bとが前後方向において交互に配置されて成る。外周側係合板31aは外周部が環状ベース36の内周部における後半部に支持され、環状ベース36と一体になって回転されると共に環状ベース36に対して前後方向へ移動可能にされている。内周側係合板31bは内周部が伝達ベース38の外周部に支持され、伝達ベース38と一体になって回転されると共に伝達ベース38に対して前後方向へ移動可能にされている。
メインクラッチ31は外周側係合板31aと内周側係合板31bが互いに接近し係合又はスリップされることにより動力を環状ベース36から後述する連結部材に伝達する機能を有している。制御クラッチ31においては、外周側係合板31aと内周側係合板31bとの間の摩擦力の大きさに応じて環状ベース36から連結部材に伝達される動力の大きさが変化される。
メインクラッチ31の後側には連結部材39が配置されている。連結部材39は内周部がリアシャフト20の前端部に結合され、リアシャフト20と一体になって回転される。連結部材39は環状ベース36に対して回転可能にされている。
メインクラッチ31において外周側係合板31aと内周側係合板31bが後方へ移動されて係合され又はスリップされると、環状ベース36に伝達されている動力がメインクラッチ31によって連結部材39に伝達されてリアシャフト20が連結部材39と一体になって回転される。
アーマチュア32は制御カム28の外周側において制御クラッチ29とメインカム30の間に配置されている。アーマチュア32は鉄等の強磁性材料によって形成され、コイル27への通電状態に応じて磁界に発生する推進力によって前後方向へ移動される。
<電子制御カップリングにおける動作>
以下に、電子制御カップリング103の動作について説明する。
電子制御カップリング103において、出力軸6の回転時にコイル27に対して電子制御ユニットから電流が供給されると、コイル27の周囲に磁界が発生してアーマチュア32が制御クラッチ29側へ引き寄せられて前方へ移動される。このとき出力軸6の回転に伴って、第1のシャフト5と伝達ベース38とメインカム30と制御クラッチ29の内周側摩擦板29bとが一体になってカップリングケース3に対して回転されている。
アーマチュア32が制御クラッチ29側へ移動されると、アーマチュア32に押圧されて外周側摩擦板29aと内周側摩擦板29bが前方へ移動されて互いに接近し係合又はスリップされる。外周側摩擦板29aと内周側摩擦板29bが係合又はスリップされると、制御カム28からコイルカバー34を介しての環状ベース36への動力の伝達が可能な状態になる。
このときメインカム30が回転されており、メインカム30からボール27を介して制御カム28及びコイルカバー34を経て環状ベース36に動力が伝達されて外周側係合板31aの回転が開始されるが、制御カム28とメインカム30の間で回転差が生じる。従って、凹部28aと凹部30aに保持されているボール37が凹部28aと凹部30aの各傾斜面上を転動されボール37によってメインカム30が後方へ押圧されて移動される。メインカム30が後方へ移動されると、メインカム30によってメインクラッチ31の外周側係合板31aと内周側係合板31bが後方へ移動されて互いに接近し係合又はスリップされる。外周側係合板31aと内周側係合板31bが係合又はスリップされると、環状ベース36に伝達されている動力がメインクラッチ31から連結部材39に伝達される。
尚、このとき伝達ベース38と内周側係合板31bは外周側係合板31aと内周側係合板31bの係合状態に応じた速度で第1のシャフト5に対して回転される。
連結部材39に動力が伝達されると、連結部材39からリアシャフト20に動力が伝達され、連結部材39の回転に伴ってリアシャフト20とプロペラシャフト107が一体になってリアケース4に対して回転され、コイル27に供給された電流量に応じた比率の出力軸6からの動力がプロペラシャフト107を介して後輪110に伝達される。従って、前輪106と後輪110にエンジン101からの動力が配分され車両100の4輪駆動での走行が行われる。
一方、コイル27に電流が供給されない状態においては、電子制御カップリング103によって出力軸6の動力がリアシャフト20には伝達されないため、前輪106による車両100の2輪駆動での走行が行われる。
<潤滑装置の動作>
次に、潤滑装置1の動作について説明する(図5及び図6参照)。
上記したように、オイルポンプの回転速度は車速に応じて変化され、車速が上昇するに従って回転速度が高くなってオイルポンプから供給される潤滑オイルの量が多くなり、車速が低下するに従って回転速度が低くなってオイルポンプから供給される潤滑オイルの量が少なくなる。
車両100の低速走行時にはオイルポンプから供給される潤滑オイルの量が少なく、第1のシャフト5のオイル流動部8aにおける油圧及び第2のシャフト11の流動路14における油圧が低い状態にされている。従って、付勢バネ19によって前方へ付勢されている第2のシャフト11は前面がストッパー10に押し当てられて前方の移動端に保持されている(図5参照)。
このとき第2のシャフト11の挿入部15に形成された第1の流出路17と第1のシャフト5の供給路9とがそれぞれ前後方向において異なって位置されており、供給路9が挿入部15によって閉塞されている。従って、流動路14に充填された潤滑オイル40が供給路9には流入されず、電子制御カップリング103への潤滑オイル40の供給が制限される。
一方、第2のシャフト11が前方の移動端に保持されている状態において、突出部16は第1のシャフト5から後方へ突出されリアシャフト20の配置空間21に位置されているため、流動路14に充填されている潤滑オイル40が突出部16に形成された第2の流出路18から配置空間21に流出される。潤滑オイル40は配置空間21からリアシャフト20の送油路22を介してリアケース4の第2のオイル供給空間4aに流出され、プロペラシャフト107の前端部に支持されたブッシュ111に供給され、ブッシュ111に対する潤滑が行われる。
尚、上記したように、第2のオイル供給空間4aは一部がカップリングケース3の第1のオイル供給空間3aに連通されているため、第2のオイル供給空間4aに流出された潤滑オイル40の一部がカップリングケース3の第1のオイル供給空間3aに流入されて電子制御カップリング103の潤滑が行われる。
逆に、車両100の高速走行時にはオイルポンプから供給される潤滑オイルの量が多くなり、第1のシャフト5のオイル流動部8aにおける油圧及び第2のシャフト11の流動路14における油圧が高い状態にされている。従って、第2のシャフト11は高い油圧によって付勢バネ19の付勢力に反して後方へ移動され、前面がストッパー10から後方に離隔される(図6参照)。
車両100の車速が一定以上にされて流動路14における油圧が一定以上の高さになると、第2のシャフト11の挿入部15に形成された第1の流出路17と第1のシャフト5の供給路9とがそれぞれ前後方向において一致され、供給路9の挿入部15による閉塞状態が解除される。従って、流動路14に充填された潤滑オイル40が第1の流出路17から供給路9に流入され、供給路9から第1のオイル供給空間3aに流動され電子制御カップリング103の各部に供給される。
供給路9から流出される潤滑オイル40は、一部が伝達ベース38の導出路38aを通ってメインクラッチ31に供給されると共に環状ベース36の送出路36aを通って電子制御カップリング103の各部に供給される。
また、第2のシャフト11が後方へ移動された状態においても、突出部16は第1のシャフト5から後方へ突出されリアシャフト20の配置空間21に位置されているため、流動路14に充填されている潤滑オイル40が突出部16に形成された第2の流出路18から配置空間21に流出される。潤滑オイル40は配置空間21からリアシャフト20の送油路22を介してリアケース4の第2のオイル供給空間4aに流出され、ブッシュ111に供給され、ブッシュ111に対する潤滑が行われる。
第2のオイル供給空間4aは一部がカップリングケース3の第1のオイル供給空間3aに連通されているため、第2のシャフト11が後方へ移動された状態においても、第2のオイル供給空間4aに流出された潤滑オイル40の一部がカップリングケース3の第1のオイル供給空間3aに流入されて電子制御カップリング103の潤滑が行われる。
車両100が高速走行から低速走行に移行するときには、第2のシャフト11が付勢バネ19の付勢力によって前方へ移動され、再び、上記した低速走行時における潤滑オイル40による潤滑状態とされる。
<まとめ>
以上に記載した通り、潤滑装置1にあっては、供給路9を有する第1のシャフト5と、挿入部15と突出部16を有し外周面11bの一部が第1のシャフト5の内周面5aに接した状態で第1のシャフト5に対して移動される第2のシャフト11とが設けられ、第2のシャフト11の第1のシャフト5に対する移動位置に応じて挿入部15によって供給路9が開閉される。
従って、挿入部15によって供給路9が開閉されることにより、第1の流出路17と第2の流出路18から流出される潤滑オイル40の量が制御されるため、潤滑が必要な各部に対する潤滑オイル40の潤滑量を制御して各部に対する潤滑性能の向上を図ることができる。
また、第2のシャフト11の流動路14における油圧の高さに応じて第2のシャフト11が第1のシャフト5に対して移動されて挿入部15によって第1のシャフト5の供給路9が開閉される。
従って、第2のシャフト11を第1のシャフト5に対して移動させる移動機構を必要とせず、潤滑装置1の構造の簡素化による製造コストの低減を図った上で各部への潤滑オイル40の潤滑量を制御することができる。
さらに、油圧が高くなるときに第2のシャフト11が移動される方向(後方)と反対方向(前方)へ第2のシャフト11を付勢する付勢バネ19が設けられているため、油圧が低くなるときに付勢バネ19の付勢力によって第2のシャフト11が第1のシャフト5に対して移動される。
従って、油圧が低くなるときに第2のシャフト11を確実に移動させることが可能になり、挿入部15による供給路9の開閉が確実に行われ潤滑装置1における動作の信頼性の向上を図ることができる。
また、付勢バネ19の付勢力が付与される方向への第2のシャフト11の移動を規制するストッパー10が設けられている。
従って、付勢バネ19の付勢力によって第2のシャフト11が第1のシャフト5に対して前方へ移動されたときに第2のシャフト11の過剰な移動がストッパー10によって規制され、第2のシャフト11の適正な移動量を確保して潤滑動作の安定化を図ることができる。
さらに、車速が上昇するに従って潤滑オイル40のオイルポンプからの流動路14への供給量が増加するようにされているため、車速が上昇するに従って流動路14における油圧の高さが高くなり、車速に応じた潤滑オイル40の潤滑量の制御を行うことができる。
さらにまた、第2のシャフト11は突出部16の後端部が閉塞部13によって閉塞された形状に形成されているため、第2のシャフト11の突出部16における一端部が閉塞されており、流動路14における油圧の変化が容易かつ確実に行われ、第2のシャフト11の第1のシャフト5に対する移動動作における信頼性の向上を図ることができる。
また、第1の流出路17から流出された潤滑オイル40が供給路9から電子制御カップリング103に供給され、第2の流出路18から流出された潤滑オイル40がブッシュ111に供給される。
従って、電子制御カップリング103とプロペラシャフト107にそれぞれの駆動状態に応じた適正な潤滑オイル40の量を供給することが可能になり、電子制御カップリング103とプロペラシャフト107の双方の駆動状態の安定化を図ることができる。
加えて、車速が一定以上にされたときに第1の流出路17から潤滑オイル40が流出されて供給路9から電子制御カップリング103に供給される。
従って、車速が上昇したときに潤滑の必要性がより高くなる電子制御カップリング103に潤滑オイル40が供給され、電子制御カップリング103の駆動状態の安定化を図ることができる。
また、プロペラシャフト107の前端部に支持されたブッシュ111は車速に拘わらず潤滑を必要とする部位であるため、車速に拘わらず第2の流出路18から潤滑オイル40が流出されてブッシュ111が潤滑されることにより、プロペラシャフト107が車速に拘わらず円滑に回転され、車両100の走行状態の安定化を図ることができる。
103…電子制御カップリング、107…プロペラシャフト、1…潤滑装置、5…第1のシャフト、5a…内周面、5b…外周面、9…供給路、10…ストッパー、11…第2のシャフト、11b…外周面、14…流動路、15…挿入部、16…突出部、17…第1の流出路、18…第2の流出路、19… 付勢バネ、40…潤滑オイル

Claims (8)

  1. 筒状に形成され内周面と外周面の間で貫通された供給路を有する第1のシャフトと、
    一部が前記第1のシャフトに挿入された挿入部として設けられ他の部分が前記第1のシャフトから軸方向へ突出された突出部として設けられると共に前記挿入部の外周面が前記第1のシャフトの前記内周面に接した状態で前記第1のシャフトに対して軸方向へ移動可能とされた第2のシャフトとを備え、
    前記挿入部から前記突出部に亘る位置には潤滑オイルが流動される流動路が形成され、
    前記挿入部には前記流動路に連通され前記潤滑オイルを前記供給路を介して外部に流出させる第1の流出路が形成され、
    前記突出部には前記流動路に連通され前記潤滑オイルを外部に流出させる第2の流出路が形成され、
    前記第2のシャフトの前記第1のシャフトに対する移動位置に応じて前記挿入部によって前記供給路が開閉される
    車両の潤滑装置。
  2. 前記流動路における油圧の高さに応じて前記第2のシャフトが前記第1のシャフトに対して移動される
    請求項1に記載の車両の潤滑装置。
  3. 油圧が高くなるときに前記第2のシャフトが移動される方向と反対方向へ前記第2のシャフトを付勢する付勢バネが設けられた
    請求項2に記載の車両の潤滑装置。
  4. 前記付勢バネの付勢力が付与される方向への前記第2のシャフトの移動を規制するストッパーが設けられた
    請求項3に記載の車両の潤滑装置。
  5. 車速が上昇するに従って前記潤滑オイルのオイルポンプからの前記流動路への供給量が増加する
    請求項2から請求項4までのいずれか1項に記載の車両の潤滑装置。
  6. 前記第2のシャフトは前記突出部における前記挿入部と反対側の端部が閉塞された形状に形成された
    請求項2から請求項5までのいずれか1項に記載の車両の潤滑装置。
  7. 前記第1の流出路から流出された前記潤滑オイルが前記供給路から電子制御カップリングに供給され、
    前記第2の流出路から流出された前記潤滑オイルがプロペラシャフトの軸方向における一端部に供給される
    請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の車両の潤滑装置。
  8. 車速が一定以上にされたときに前記第1の流出路から前記潤滑オイルが流出されて前記供給路から電子制御カップリングに供給される
    請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の車両の潤滑装置。
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