JP6447679B2 - 蛍光色素内包樹脂粒子および該蛍光色素内包樹脂粒子を含む組織多重染色用蛍光色素内包樹脂粒子セット - Google Patents

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Description

本発明は、新規な蛍光色素内包樹脂粒子及びその用途に関する。詳しくは、本発明は、異なる色の蛍光の蛍光色素内包樹脂粒子を発光させる場合に、簡便な操作で、それぞれの蛍光色素内包樹脂粒子の蛍光を同時に発光させることができる蛍光色素内包樹脂粒子に関する。更に、本発明は、該蛍光色素内包樹脂粒子を含む組織多重染色用の蛍光色素内包樹脂粒子のセット、及び該蛍光色素内包樹脂粒子を用いた組織多重染色法に関する。
生物試料中の特定の物質を染色して検出或いは定量する方法として、抗原抗体反応を利用する免疫染色法、レクチンと糖鎖の反応を利用する方法、核酸とハイブリダイズする配列を利用する方法、その他が知られており、これらの方法は、病理診断その他の分野において、採取した組織切片の標本から特定の細胞や組織を検査する方法として利用されている。例えば、病理切片において、免疫組織化学(IHC、immunohistochemistry)を利用した蛍光免疫染色によるタンパク質の量の評価や、蛍光 in situ ハイブリダイゼーション(FISH、fluorescence in situ hybridization)による遺伝子の増幅や欠損の評価が行われており、癌関連のタンパク質や遺伝子の増幅、欠損の評価が行われている。この場合、同一組織上で複数の物質を2種以上の抗体等を用いて同時に標識する多重染色は、複数の物質の局在を同時に調べることができ、ワークフローの改善や効果の高い治療方針を立てる上で、期待されている。
一方、上記の免疫染色法等においては、抗原抗体反応等によって捕捉した特定の物質を標識する方法として、蛍光色素内包樹脂粒子を用いた方法も知られている。蛍光色素内包趣旨粒子は、ポリスチレン等の樹脂に企図した蛍光色素の分子を複数個内包させたもので、強い蛍光強度が得られるという利点がある。蛍光色素内包樹脂粒子の例としては、FluoSpheres(登録商標)Fluorescent Microspheres(Invitrogen社)が市販されており、これは、発光色毎に、対応する波長を持つ蛍光色素が内包されたポリスチレン粒子である(非特許文献1)。
このような蛍光色素内包樹脂粒子を複数用いて多重染色を行う場合、従来は、蛍光色素内包樹脂粒子毎に内包されている蛍光色素の発光色が異なったものを複数用いて染色していた。すなわち、従来は、蛍光色素内包樹脂粒子毎に励起波長及び蛍光波長の異なった蛍光色素を内包させることによって、蛍光色素内包樹脂粒子毎の発光色を変えて、多重染色を行っていた。このため、蛍光顕微鏡観察の際には、励起波長、蛍光波長をそれぞれ内包させた蛍光色素に応じて切り替える必要があり、多数の励起波長、蛍光波長があると、これらの波長に合せて、観察に用いる蛍光顕微鏡の励起フィルター、蛍光フィルターをその都度変更する必要があった。従って、観察時の発光色の変更手順が煩雑であった。また、染色された複数の発光色を同時に観察することも困難であるという問題もあった。
又、従来は、発光色が異なる蛍光色素内包樹脂粒子を多数作製する場合、蛍光色素内包樹脂粒子毎に異なる蛍光色素を用意する必要があることから、用意する蛍光色素も多数揃える必要があり、作製が煩雑であった。
なお、異なる色を発光する量子ドットを複数内包する多色蛍光粒子については、特表2005-508493(多色量子ドット標識ビーズおよびそのコンジュゲートの製造方法)(特許文献1)に記載されている。しかしながら、量子ドットは比重が重いため、多色量子ドットを複数内包する粒子は、相対的に内包粒子の比重が大きくなる。従って、例えば組織切片や培養細胞の染色に用いる場合、早期に沈降してしまい、抗原部へのアクセスが妨げられる。また、II-IV族の赤色発光の量子ドットは、粒径が10nm程度で蛍光色素に比べてかなり大きいため、これを複数個内包させた場合、粒子を染色に適した10-150nmの粒径に制御することが困難である。更に、1個の粒子に内包させることができる個数も、蛍光色素の場合に比べ、はるかに少ない。多色の量子ドットを内包させた粒子の場合にはこのような問題があり、前記の問題が解決された蛍光色素内包ナノ粒子が望まれている。
特表2005−508493号公報
URL: 「http://probes.invitrogen.com/media/pis/mp05000.pdf」 FluoSpheres(登録商標)Fluorescent Microspheres
本発明の課題は、蛍光色素内包樹脂粒子を用いて生物試料を多重染色する場合に、蛍光顕微鏡観察における励起フィルター、蛍光フィルターの変更を伴う発光色の変更手順の煩雑さを解消するとともに、蛍光顕微鏡観察において複数の発光色を同時に観察することを可能とする新規な蛍光色素内包樹脂粒子を提供することにある。又、本発明の課題は、発光色が異なる蛍光色素内包樹脂粒子を多数作製する場合でも、作製が容易な蛍光色素内包樹脂粒子を提供することにある。
更に、本発明の課題は、該蛍光色素内包樹脂粒子を含む組織多重染色用の蛍光色素内包樹脂粒子のセット、及び該蛍光色素内包樹脂粒子を用いた組織多重染色法を提供することにある。
本発明者らは、1個の蛍光色素内包樹脂粒子中に、赤色蛍光色素、緑色蛍光色素及び青色蛍光色素の2種又は3種の蛍光色素を内包させ、これらの色素を同時に励起、発光させれば、1個の蛍光色素内包樹脂粒子からこれらの色素の蛍光が混合された色の蛍光を検出することが可能であることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の項の通りである。
[項1]
1個の樹脂粒子中に赤色蛍光色素、緑色蛍光色素及び青色蛍光色素の2種又は3種の蛍光色素を内包する蛍光色素内包樹脂粒子。
[項2]
前記蛍光色素の蛍光スペクトルのピークの波長の半値幅がいずれも90nm以下である、項1に記載の蛍光色素内包樹脂粒子。
[項3]
前記蛍光色素内包樹脂粒子の平均粒径が10nm以上150nm以下である、項1又は2に記載の蛍光色素内包樹脂粒子。
[項4]
前記蛍光色素内包樹脂粒子の母体がメラミン樹脂又はポリスチレン樹脂である、項1〜3のいずれか一項に記載の蛍光色素内包樹脂粒子。
[項5]
蛍光色素内包樹脂粒子を2種以上含み、該蛍光色素内包樹脂粒子の少なくとも1種が項1〜4のいずれか一項に記載の蛍光色素内包樹脂粒子である、組織多重染色用蛍光色素内包樹脂粒子セット。
[項6]
組織標本中の2種以上の検出対象物質のそれぞれに対して、検出対象物質と、該検出対象物質を特異的に捕捉する物質と、蛍光色素内包樹脂粒子を結合させる組織多重染色法であって、
(1)前記蛍光色素内包樹脂粒子の少なくとも1種が項1〜4のいずれか一項に記載の蛍光色素内包樹脂粒子であり、
(2)前記組織標本に、前記蛍光色素内包樹脂粒子に内包される全ての蛍光色素の励起波長の光を同時に照射し、
(3)前記組織標本から、前記蛍光色素内包樹脂粒子に内包される全ての蛍光色素の蛍光波長の光を同時に検出する、
組織多重染色法。
[項7]
前記検出対象物質を特異的に捕捉する物質が抗体である、項6に記載の組織多重染色法。
[項8]
前記検出対象物質を特異的に捕捉する物質がヌクレオチド鎖である、項6に記載の組織多重染色法。
[項9]
蛍光in situハイブリダイゼーション法で実施する項8に記載の組織多重染色法。
本発明の蛍光色素内包樹脂粒子は、1個の蛍光色素内包樹脂粒子中に、赤色蛍光色素、緑色蛍光色素及び青色蛍光色素の2種又は3種の蛍光色素が内包されており、内包されたこれらの色素を同時に励起し、同時に発光させることによって、1個の蛍光色素内包樹脂粒子から、これらの色素の蛍光が混合された色の蛍光を検出することが可能である。
従って、本発明の蛍光色素内包樹脂粒子を用いて多重染色する場合、用いた蛍光色素内包樹脂粒子に内包された全ての色素の励起波長の光を同時に照射できるフィルターとこれらの色素の蛍光波長の光を同時に検出できるフィルターの2枚のフィルターだけで、多重染色に用いた全ての蛍光色素内包樹脂粒子が発光する蛍光を検出することができる。本発明の蛍光色素内包樹脂粒子を用いた多重染色では、蛍光顕微鏡観察において、フィルター変更がなく、煩雑さが解消されているとともに、複数の発光色が同時に観察可能である。
又、本発明の蛍光色素内包樹脂粒子から発光する蛍光の色は、蛍光色素内包樹脂粒子に内包させる赤色蛍光色素、緑色蛍光色素及び青色蛍光色素の2種又は3種の種類及び割合を適宜調製することで、企図した色とすることができる。従って、発光色が異なる蛍光色素内包樹脂粒子を多数作製する場合でも、作製が容易である。
更に、本発明では、該蛍光色素内包樹脂粒子を含む組織多重染色用の蛍光色素内包樹脂粒子のセット、及び該蛍光色素内包樹脂粒子を用いた組織多重染色法を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
1.蛍光色素内包樹脂粒子
本発明の蛍光色素内包樹脂粒子は、
『1個の樹脂粒子中に赤色蛍光色素、緑色蛍光色素及び青色蛍光色素の2種又は3種の蛍
光色素を内包する蛍光色素内包樹脂粒子』
である。
(1)母体とする樹脂粒子
蛍光色素内包樹脂粒子は、樹脂でできた粒子(樹脂粒子)を母体とし、この中に蛍光色素の分子が内包されたものである。すなわち、蛍光色素の分子が、化学結合、電気的な引力、物理的な包含、吸着、その他により、母体とする樹脂粒子に内包されたものである。
粒子を形成する樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリアミド、ポリ乳酸、ポリアクリロニトリル、ポリグリシジルメタクリレート、ポリメラミン、ポリウレア、ポリベンゾグアナミン、ポリフラン、ポリキシレン、フェノール樹脂等が挙げられる。粒子を形成する樹脂は、蛍光色素分子を安定的に内包できる樹脂であれば特に制限はないが、メラミン樹脂又はポリスチレン樹脂が好ましい。メラミン樹脂は色素を共有結合あるいは静電結合で内包できるので内包性に優れる。特に静電結合の場合は色素同士の反発が生じる事で色素の凝集を防ぎ量子収率を向上できる。また、ポリスチレン樹脂は色素を共有結合あるいは疎水相互作用で内包できるので内包性に優れる。
蛍光色素内包樹脂粒子の平均粒径、すなわち、母体とする樹脂粒子の平均粒径は、特に限定されないが、通常は10nm以上500nm以下であるが、蛍光免疫染色やFISHへの適用の点からは、10nm以上150nm以下が好ましい。また、粒径のばらつきを示す変動係数も特に限定されないが、通常は20%以下であり、好ましくは5〜15%である。
なお、蛍光色素内包ナノ粒子の粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて電子顕微鏡写真を撮影し、蛍光色素内包ナノ粒子の断面積を計測し、その計測値を相当する円の面積としたときの直径(面積円相当径)として測定することができる。蛍光色素内包ナノ粒子の集団の粒子サイズの平均(平均粒径)および変動係数は、十分な数(たとえば1000個)の蛍光色素内包ナノ粒子について上記のようにして粒子サイズ(粒径)を測定した後、平均粒径はその算術平均として算出され、変動係数は式:100×粒径の標準偏差/平均粒径、により算出される。
(2)内包させる蛍光色素
1個の樹脂粒子中に内包させる蛍光色素は、赤色蛍光色素、緑色蛍光色素及び青色蛍光色素の2種又は3種である。このように、赤色蛍光色素、緑色蛍光色素及び青色蛍光色素の2種又は3種を1個の樹脂粒子中に内包させ、これらの色素を同時に励起し、これらの色素から発光する蛍光を同時に検出することによって、これらの蛍光が混合された色の蛍光が1個の樹脂粒子から発光することになる。
内包させる赤色蛍光色素、緑色蛍光色素及び青色蛍光色素には特に制限はない。赤色蛍光色素の例としては、SulfoRhodamine 101、Alexa Fluor 594(登録商標、インビトロジェン社製)、BODIPY TR、Cy3.5(登録商標、GEヘルスケア社製)、HiLyte Fluor 594(登録商標、アナスペック社製)、DyLight 594(登録商標、サーモサイエンティフィック社製)、ATTO 594(登録商標、ATTO−TEC社製)、MFP 594(登録商標、Mobitec社製)、N, N−Bis−(2,6−diisopropylphenyl)−1,6,7,12−(4−tert−butylphenoxy)−perylen−3,4,9,10−tetracarbonacid diimide、N, N'−Bis(2,6−diisopropylphenyl)−1,6,7,12−tetraphenoxyperylene−3,4:9,10−tetracarboxdiimide、Benzenesulfonic acid, 4, 4', 4'', 4'''−[(1,3,8,10−tetrahydro−1,3,8,10−tetraoxoperylo[3,4−cd:9,10−c'd']dipyran−5,6,12,13−tetrayl)tetralis(oxy)]tetrakis等が挙げられる。緑色蛍光色素の例としては、pyromethene 556、Fluorescein、FITC、5(6)−Carboxyfluorescein、Alexa Fluor 488、Oregon Green 488、HiLyte Fluor 488、ATTO 488、等が挙げられる。青色蛍光色素の例としては、Cyto 415,carboxylic acid、DyLight 405、Aminomethylcoumarin、8−Methoxypyrene−1,3,6−trisulfonic acid trisodium salt、7−(Diethylamino)coumarin−3−carboxylic acid、7−Hydroxycoumarin−3−carboxylic acid N−succinimidyl ester等が挙げられる。
これらの内包させる蛍光色素の種類、組合せ、量比は、特に制限はなく、蛍光色素内包樹脂粒子から発光する蛍光の色に応じて適宜選べばよい。例えば、蛍光色素内包樹脂粒子から発光する蛍光を企図した色にするために、まず、3原色の混合と色の関係に基づいて、内包させる色素の種類、組合せ、量比を予め決めて、蛍光色素内包樹脂粒子を製造する。そして、製造した蛍光色素樹脂粒子に内包されたこれらの色素を同時に励起し、これらの色素の蛍光を同時に検出して、蛍光色素樹脂粒子としての蛍光を観察する。その結果、企図した色の蛍光と異なる場合は、これらの蛍光色素の量比を変更して、蛍光色素内包樹脂粒子を製造することによって、企図した色の蛍光を発光する蛍光色素樹脂粒子を得ることができる。
また、企図した色の蛍光を発光する蛍光色素内包樹脂粒子を製造しやすくするためには、内包させる蛍光色素はその蛍光スペクトルのピークの波長の半値幅が90nm以下であることが好ましい。蛍光スペクトルのピークの波長の半値幅が広い蛍光色素を用いた場合、他の色の蛍光色素の蛍光スペクトルと重なる部分が多くなり、蛍光色素内包樹脂粒子から発光する蛍光の色の調整が難しくなる。
これらの蛍光色素の種類、組合せ、量比と製造した蛍光色素粒子の発光する蛍光の色の例は、実施例に記載した通りである。
なお、前記でも記載したように、本発明の蛍光色素内包樹脂粒子を用いて多重染色を行う場合、用いた蛍光色素内包樹脂粒子に内包された全ての色素を同時に励起できるフィルターと全ての色素の蛍光を同時に検出できるフィルターの2枚のフィルターで、多重染色に用いた全ての蛍光色素内包樹脂粒子が発光する蛍光を検出できるという効果が得られる。この場合、多重染色で用いる蛍光色素内包樹脂粒子の間で同じ色の蛍光色素が内包されている場合は、その色の蛍光色素は同じ蛍光色素であることが必要である(例えば、多重染色で、赤色蛍光色素と緑色蛍光色素を内包する蛍光色素内包樹脂粒子と緑色蛍光色素と青色蛍光色素を内包する蛍光色素内包樹脂粒子を用いる場合は、共通して内包されている緑色蛍光色素は同じ蛍光色素であることが必要である。)
(3)蛍光色素内包樹脂粒子の製造方法
蛍光色素内包樹脂粒子の製造方法は、特に限定されるものではなく、前記の樹脂粒子に対応する原料及び前記の蛍光色素を用いて、通常用いられている方法で製造することができる。例えば、樹脂粒子の原料である樹脂のモノマーに蛍光色素分子を結合させた後に重合し粒子を合成する方法、重合した樹脂の粒子に蛍光色素を吸着又は結合させて導入する方法、樹脂のモノマーと蛍光色素とを混合して重合と蛍光色素の結合を同時に行う方法等がある。これらの方法で製造した蛍光色素内包ナノ粒子は、通常、1粒子中に複数個の蛍光色素分子が内包される。
(4)蛍光色素内包樹脂粒子の励起、蛍光の検出
本発明の蛍光色素樹脂粒子は、内包させた2種又は3種の蛍光色素の蛍光を混合して、企図した色の蛍光をその蛍光色素内包樹脂粒子から発光させるために、前記の通り、これらの色素を同時に励起し、これらの色素の蛍光を同時に検出することが必要である。内包させた色素を別々に励起し、別々にその蛍光を観察するのでは、1個の蛍光色素内包樹脂粒子に内包させた2種又は3種の蛍光色素の蛍光の混合が起こらず、その蛍光色素内包樹脂粒子から発光する蛍光は、企図した色にならない。
この場合、前記の通り、赤色蛍光色素、緑色蛍光色素、青色蛍光色素の2種又は3種の励起波長の光を同時に照射できるフィルター、及びこれらの色素が発光する赤色蛍光、緑色蛍光、青色蛍光の2種又は3種の蛍光波長の光を同時に検出できるフィルターが用いられる。このようなフィルターは、通常用いられているものの中から、目的に応じたものを選べばよく、例えば、励起用フィルターとして、420nm(青色蛍光励起波長)、490nm(緑色蛍光励起波長)、580nm(青色蛍光励起波長)を同時に透過させることのできるフィルター、例えば、FF01-407/494/576-25(Semrock製)を用いることができ、蛍光検出用フィルターとして、450nm(青色蛍光検出波長)、520nm(緑色蛍光検出波長)、610nm(青色蛍光検出波長)を同時に透過させることのできるフィルター、例えば、FF01-457/530/628-25(Semrock製)を用いることができる(実施例参照)。
2.組織多重染色用蛍光色素内包樹脂粒子セット
本発明の組織多重染色用蛍光色素内包樹脂粒子セットは、
『蛍光色素内包樹脂粒子を2種以上含み、該蛍光色素内包樹脂粒子の少なくとも1種が項1〜4のいずれか一項に記載の蛍光色素内包樹脂粒子である、組織多重染色用蛍光色素内包樹脂粒子セット。』
である。
本セットには蛍光色素内包樹脂粒子が2種以上含まれ、そのうちの少なくとも1種は本発明の蛍光色素内包樹脂粒子である。従来の蛍光色素内包樹脂粒子(1個の樹脂粒子中に1種の蛍光色素を内包する蛍光色素内包樹脂粒子)が本セットに含まれていてもよい。
本セットに含まれる本発明の蛍光色素内包樹脂粒子は、前記に記載したものであり、目的とする組織多重染色に応じて、蛍光色素内包樹脂粒子の種類の数(二重染色の場合は2種、三重染色の場合は3種、等)、平均粒子径、発光する蛍光の色、その他必要な条件を満たすもの選べばよい。
本セットは組織多重染色のためのセットであるので、前記でも記載したように、1枚のフィルターで多重染色に用いた全ての蛍光色素を同時に励起し、1枚のフィルターでこれらの蛍光色素の全ての蛍光を検出する必要がある。この場合のフィルターは、本発明の蛍光色素内包樹脂粒子に内包される赤色色素、緑色色素、青色色素の全てを励起させるフィルターとこれらの蛍光色素の蛍光の全てを検出するフィルターである。従って、本セットに含まれる蛍光色素内包樹脂粒子の間で同じ色の蛍光色素が内包されている場合は、その色の蛍光色素は同じ蛍光色素であることが必要であることも前記で記載した通りである。
蛍光色素内包樹脂粒子を用いた組織多重染色法については、次に記載する。
3.組織多重染色法
本発明の組織多重染色方法は、
『組織標本中の2種以上の検出対象物質のそれぞれに対して、検出対象物質と、該検出対象物質を特異的に捕捉する物質と、蛍光色素内包樹脂粒子を結合させる組織多重染色法であって、
(1)前記蛍光色素内包樹脂粒子の少なくとも1種が項1〜4のいずれか一項に記載の蛍光色素内包樹脂粒子であり、
(2)前記組織標本に、前記蛍光色素内包樹脂粒子に内包される全ての蛍光色素の励起波長の光を同時に照射し、
(3)前記組織標本から、前記蛍光色素内包樹脂粒子に内包される全ての蛍光色素の蛍光波長の光を同時に検出する、
組織多重染色法。』
である。
(1)組織標本、検出対象物質
組織標本としては、多重染色が行われる生物試料の組織であれば特に制限はなく、また、血液細胞等の細胞も使用可能である。通常は、採取した生物試料から公知の方法によって調整した、パラフィン包埋切片、その他の組織切片が用いられる。
多重染色の対象である検出対象物質としては、検出対象組織に含まれている物質を、多重染色の目的に応じて、2種以上、選べばよい。
(2)検出対象物質を捕捉する物質
検出対象物質を捕捉する物質は、検出対象物質と特異的に結合する物質であって、例えば、検出対象物質がタンパク質、ポリペプチド、糖等の場合にはその抗体、検出対象物質が糖鎖を含む物質の場合にはこれと結合するレクチン、検出対象物質が核酸の場合にはこれとハイブリダイズするDNA配列又はRNA配列が挙げられる。これらの検出対象物質を捕捉する物質は、通常の方法を用いて取得することができる。
(3)蛍光色素内包樹脂粒子
組織多重染色法で用いる蛍光色素内包樹脂粒子は、そのうちの少なくとも1種は本発明の蛍光色素内包樹脂粒子であり、その説明は前記に記載した通りである。目的とする組織多重染色に応じて、蛍光色素内包樹脂粒子の種類の数、平均粒子径、発光する蛍光の色、その他必要な条件を満たすものを選ぶこと、1枚のフィルターで多重染色に用いた全ての蛍光色素を同時に励起し、1枚のフィルターでこれらの蛍光色素の全ての蛍光を検出するために、蛍光色素内包樹脂粒子に内包させる赤色蛍光色素、緑色蛍光色素、青色蛍光色素は、それぞれの蛍光色素内包樹脂粒子間で、同じ色素であることが必要であること、等も前記で記載した通りである。
(4)検出対象物質と、該検出対象物質を特異的に捕捉する物質と、蛍光色素内包樹脂粒子の結合
以下、蛍光色素内包樹脂粒子を「標識物質」ともいい、検出対象物質と、該検出対象物質を特異的に捕捉する物質と、蛍光色素内包樹脂粒子が結合したものを「検出対象物質−捕捉物質−標識物質結合体」ともいう。
本発明の組織多重染色方法では、組織標本上で、検出対象物質−捕捉物質−標識物質結合体を作成する。検出対象物質−捕捉物質−標識物質結合体の作成方法は、通常いられている方法であればよい。検出対象物質−捕捉物質−標識物質結合体の結合方法に特に制限はなく、直接結合している場合の外に、2次抗体等を介して、いわゆるサンドイッチ法によって結合している場合も含まれる。
捕捉物質に標識物質を結合させる方法としては、ビオチン−アビジン法、チオール基−マレイミド基のカップリング反応法、既存の化学リンカーを用いる方法、架橋剤(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)等)を用いた架橋反応法、イオン結合法等が知られており、捕捉物質と標識物質の化学的性質等に基づいて、目的に応じた方法を用いればよい。
検出対象物質と捕捉物質を結合させる方法としては、前記で記載したように、検出対象物質に応じて、抗原抗体反応を利用する免疫染色法、レクチンと糖鎖の反応を利用する方法、核酸とハイブリダイズする配列を利用する方法等を用いればよい。
2次抗体を介する方法としては、例えば、検出対象物質と特異的に結合した捕捉物質としての一次抗体に対して、特異的な親和性を有する二次抗体を介して、標識物質を結合させる方法がある。
なお、検出対象物質−捕捉物質−標識物質結合体を作成する場合、異なる検出対象物質に対しては、異なる蛍光を発光する標識物質(蛍光色素内包樹脂粒子)を使用することは言うまでもなく、その蛍光の色の調整も、前記で説明した通りである。
(5)励起光の照射
検出対象物質−捕捉物質−標識物質結合体が作成された組織標本に対して、標識物質(蛍光色素内包樹脂粒子)に内包させた全ての赤色蛍光色素、緑色蛍光色素及び青色蛍光色素の励起波長の光を同時に照射する(内包させた蛍光色素が2種の場合は、2種の色素の励起波長の光を同時に照射する)。このために使用するフィルターについても、前記で説明した通りであり、例えば、420nm(青色蛍光励起波長)、490nm(緑色蛍光励起波長)、580nm(赤色蛍光励起波長)を同時に透過させることのできるFF01-407/494/576-25(Semrock製)を、励起用フィルターとして、用いることができる。
光源、その他の励起光の照射装置についても、通常使われているものが用いられる。
(6)蛍光の検出
前記の励起光の照射によって組織標本から発光される全ての蛍光、すなわち標識物質(蛍光色素内包樹脂粒子)に内包させた全ての赤色蛍光色素、緑色蛍光色素及び青色蛍光色素の蛍光波長の光、を同時に検出する(内包させる蛍光色素が2種の場合は、2種の色素の蛍光波長の光を同時に検出する)。このために使用するフィルターについても、前記で説明した通りであり、例えば、450nm(青色蛍光検出波長)、520nm(緑色蛍光検出波長)、610nm(青色蛍光検出波長)を同時に透過させることのできるFF01-457/530/628-25(Semrock製)を、蛍光検出用フィルターとして、用いることができる。
受光装置、蛍光顕微鏡等についても、通常使われているものが用いられる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
[実施例1](蛍光in situハイブリダイゼーション用の種々の色の蛍光色素内包樹脂粒子の作製)
(1)粒子1−1:赤色メラミン粒子の作製
蛍光色素として赤色発光色素であるSulfoRhodamine101(シグマアルドリッチ社製)14.4mgを水22mLに加えて溶解した。その後、この溶液に乳化重合用乳化剤のエマルジョン(登録商標)430(ポリオキシエチレンオレイルエーテル、花王社製)の5%水溶液を2mL加えた。この溶液をホットスターラー上で撹拌しながら70℃まで昇温させた後、この溶液にメラミン樹脂原料ニカラックMX−035(日本カーバイド工業社製)を0.65g加えた。
さらに、この溶液に界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸(関東化学社製)の10%水溶液を1000μL加え、70℃で50分間加熱撹拌した。その後、90℃に昇温して20分間加熱撹拌した。得られた色素樹脂粒子の分散液から、余剰の樹脂原料や蛍光色素等の不純物を除くため、純水による洗浄を行った。
具体的には、遠心分離機(クボタ社製マイクロ冷却遠心機3740)にて20000Gで15分間、遠心分離し、上澄み除去後、超純水を加えて超音波照射して再分散した。遠心分離、上澄み除去および超純水への再分散による洗浄を5回繰り返した。得られたメラミン粒子はメラミン樹脂自体が骨格に多くのアミノ基を含むことから、プラス電荷となった。樹脂粒子の電荷の評価は、 NMRやIR等による樹脂成分分析と、ゼータ電位測定により行なった。
得られた粒子の表面修飾を行なった。色素樹脂粒子0.1mgをエタノール1.5mL中に分散し、アミノプロピルトリメトキシシラン(LS−3150、信越化学工業社製)2μLを加え、8時間反応させることにより、樹脂粒子の樹脂表面に存在するヒドロキシル基をアミノ基に変換する表面アミノ化処理を行った。
2mLのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含有したリン酸緩衝液生理的食塩水(PBS)を用いて、得られた色素樹脂粒子の濃度を3nMに調整した。濃度調整した色素樹脂粒子の分散液に対して、終濃度10mLとなるように、SM(PEG)12(Duccinimidy1−[(N−maleomidopropionamid)サーモサイエンティフィック社製)を混合し、20℃1時間反応させて、末端にマレイミドがついた蛍光色素を有する色素樹脂粒子を含む混合液を得た。
この混合液を10000Gで20分間遠心分離を行い、上澄みを除去した後、2mLのEDTAを含有したPBSを加えて沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順による上記洗浄を3回行った。
HER2遺伝子に結合するDNAプローブは、フナコシ社よりBACプローブを購入して用いた。HER2のDNAプローブに対してニックトランスレーションにより、チオール基を導入した後、作製した赤色メラミン粒子とリン酸緩衝液生理的食脱水(PBS)中で1時間撹排する事で、粒子への遺伝子の結合を行なった。混合液を10000Gで20分間遠心分離を行い、上澄みを除去した後、2mLのEDTAを含有したPBSを加えて沈降物を分散させ、再度遠遠心分離を行った。同様の手順による上記洗浄を3回行い。遺伝子が結合した粒子を得た。
(2)粒子1−2:橙色メラミン粒子の作製
蛍光色素として赤色発光色素であるSulfoRhodamine101(シグマアルドリッチ社製)9.6mgと緑色発光色素であるpyromethene556(Exciton社製)4.8mgを水22mLに加えて溶解した。その後は、赤色メラミン粒子と同様に粒子を作製した。
MET遺伝子に結合するDNAプローブは、フナコシ社よりBACプローブを購入して用いた。粒子への結合は赤色粒子と同様に行なった。
(3)粒子1−3:黄色メラミン粒子の作製
蛍光色素として赤色発光色素であるSulfoRhodamine101(シグマアルドリッチ社製)7.2mgと緑色発光色素であるpyromethene556(Exciton社製)7.2mgを水22mLに加えて溶解した。その後は、赤色メラミン粒子と同様に粒子を作製した。
P53遺伝子に結合するDNAプローブは、フナコシ社よりBACプローブを購入して用いた。粒子への結合は赤色粒子と同様に行なった。
(4)粒子1−4:ピンク色メラミン粒子の作製
蛍光色素して赤色発光色素であるSulfoRhodamine101(シグマアルドリッチ社製)9.6mgと青色発光色素であるCyto415,carboxylic acid(cytodiagnostics社製)4.8mgを水22mLに加えて溶解した。その後は、赤色メラミン粒子と同様に粒子を作製した。
RB−1遺伝子に結合するDNAプローブは、フナコシ社よりBACプローブを購入して用いた。粒子への結合は赤色粒子と同様に行なった。
(5)粒子1−5:赤紫色メラミン粒子の製造
蛍光色素として赤色発光色素であるSulfoRhodamine101(シグマアルドリッチ社製)7.2mgと青色発光色素であるCyto415,carboxylic acid(cytodiagnostics社製)7.2mgを水22mLに加えて溶解した。その後は、赤色メラミン粒子と同様に粒子を作製した。
MYC遺伝子に結合するDNAプローブは、フナコシ社よりBACプローブを購入して用いた。粒子への結合は赤色粒子と同様に行なった。
(6)粒子1−6:緑色メラミン粒子の製造
蛍光色素として緑色発光色素であるpyromethene556(Exciton社製)14.4mgを水22mに加えて溶解した。その後は、赤色メラミン粒子と同様に粒子を作製した。
TOP2A遺伝子に結合するDNAプローブは、フナコシ社よりBACプローブを購入して用いた。粒子への結合は赤色粒子と同様に行なった。
(7)粒子1−7:黄緑色メラミン粒子の作製
蛍光色素として赤色発光色素であるSulfoRhodamine101(シグマアルドリッチ社製)4.8mgと縁色発光色素であるpyromethene556(Exciton社製)9.6mgを水22mLに加えて溶解した。その後は、赤色メラミン粒子と同様に粒子を作製した。
EGFR遺伝子に結合するDNAプローブは、フナコシ社よりBACプローブを購入して用いた。粒子への結合は赤色粒子と同様に行なった。
(8)粒子1−8:青緑色メラミン粒子の作製
蛍光色素として緑色発光色素であるpyromethene556(Exciton社製)9.6mgと青色発光色素であるCyto415,carboxylic acid(cytodiagnostics社製)4.8mgを水22mLに加えて溶解した。その後は、赤色メラミン粒子と同様に粒子を作製した。
ヒト第17番染色体セントロメアに結合するDNAプローブは、フナコシ社よりBACプローブを購入して用いた。粒子への結合は赤色粒子と同様に行なった。
(9)粒子1−9:水色メラミン粒子の作製
蛍光色素として緑色発光色素であるpyromethene556(Exciton社製)7.2mgと青色発光色素であるCyto415,carboxylic acid(cytodiagnostics社製)7.2mgを水22mLに加えて溶解した。その後は、赤色メラミン粒子と同様に粒子を作製した。
ヒト第7番染色体セントロメアに結合するDNAプローブは、フナコシ社よりBACプローブを購入して用いた。粒子への結合は赤色粒子と同様に行なった。
(10)粒子1−10:青色メラミン粒子の作製
蛍光色素として青色発光色素であるCyto415,carboxylic acid(cytodiagnostics社製)14.4mgを水22mに加えて溶解した。その後は、赤色メラミン粒子と同様に粒子を作製した。
ヒト第8番染色体セントロメアに結合するDNAプローブは、フナコシ社よりBACプローブを購入して用いた。粒子への結合は赤色粒子と同様に行なった。
粒子1−1〜1−10の内容をまとめると表1の通りである。
Figure 0006447679
[実施例2](赤色、緑色、青色の蛍光色素を内包した蛍光色素内包樹脂粒子を用いた多重染色FISH)
表1に記した粒子を用いてFISHを行なった。ヒトの乳がん組織切片を用いて染色した。(染色は常光社HER2ヒストラFISHキットの染色法に準じて染色を行なった。)観察の際には、励起波長が420、490、580nmを同時に励起できるフィルター(FF01-407/494/576-25(Semrock製))を用い、発光波長(蛍光波長)として、450、520、610nmを同時に検出できるフィルター(FF01-457/530/628-25(Semrock製))を用いた。これにより、粒子1−1〜1−10の10種の発光色の異なる粒子を同時に観察する事ができた。例えば、癌の増殖や分子標的薬の奏効率に関係する、HER2(粒子1−1赤色)、TOP2A(粒子1−6緑色)、RB−1(粒子1−4ピンク色)、EGFR(粒子1−7黄緑色)、P53(粒子1−3黄色)の欠損を、同時に確認できた。この際、17番染色体(粒子1−8青緑色)の増殖の有無を確認し、染色体自体の増幅では無く、HER等の特定の遺伝子が憎幅あるいは欠損している事を確認した。
同様に、癌の増殖や分子標的薬の奏効率に関係する、MET(粒子1−2橙色)、 EGFR(粒子1−7黄緑色)の増幅を同時に確認できた。この際に、7番染色体(粒子1−9水色)の増殖の有無を確認し、染色体自体の増幅では無い事を確認した。
同様に、癌の増殖や分子標的薬の奏効率に関係する、MYC(粒子1−5赤紫色)の増幅を同時に確認できた。この際に、8番染色体(粒子1−10青色)の増殖の有無を確認し、染色体自体の増幅では無い事を確認した。
上記のように、染色体上の遺伝子の噌幅、欠損を、フィルターの切り替え無しに同時に観察できた。
[比較例1](発光波長(蛍光波長)の異なる色素を内包した蛍光色素内包樹脂粒子セットを用いた多重染色FISH)
下記の表2に記した粒子を用いてFISHを行なった。実施例と同様にして、ヒトの乳がん組織切片を用いて染色した。観察の際には、例えば粒子2−1の赤色発光を検出する場合は励起580nm、発光615nmのフィルターを装着して蛍光顕微鏡観察を行なった。粒子2−2の黄色発光色素を検出する場合は励起530nm、発光560nmのフィルターを装着して蛍光顕微鏡観察を行なった。粒子2−1〜2−5と、5種の発光色の異なる粒子を、励起・発光(蛍光)フィルターをそれぞれ変更して観察するため、観察が煩雑であった。また、例えば、赤色と黄色と緑色の発光色の樹脂粒子では、それぞれ励起・発光(蛍光)フィルターが異なるため、同時に観察する事ができなかった。
Figure 0006447679
なお、参考までに、実施例で用いた各遺伝子の観察項目は下記の表3の通りである。
Figure 0006447679
[実施例3](抗体染色用の種々の色の蛍光色素内包樹脂粒子の作製)
(1)粒子3−1:赤色メラミン粒子の作製
粒子1−1と同様にして赤色メラミン粒子を作製し、表面修飾を行ない、末端にマレイミド基を結合させた。一方、抗HER2抗体に、N−succinimidyl S−acetylthioacetate(SATA)にてチオール基付加処理を行ったのち、ゲルろ過カラムによるろ過を行い、チオール基が付加した抗HER2抗体溶液を得た。これと前記の赤色粒子を混合して反応させた。反応後、遠心分離と分散による粒子の洗浄を3回行ない、抗HER2抗体修飾赤色メラミン粒子を得た。
(2)粒子3−2:橙色メラミン粒子の作製
粒子1−2と同様にして橙色メラミン粒子を作製し、表面修飾を行ない、末端にマレイミド基を結合させた。これに粒子3−1と同様の手順で抗体を結合させ、抗MET抗体修飾橙色メラミン粒子を得た。
(3)粒子3−3:黄色メラミン粒子の作製
粒子1−3と同様にして黄色メラミン粒子を作製し、表面修飾を行ない、末端にマレイミド基を結合させた。これに粒子3−1と同様の手順で抗体を結合させ、抗P53抗体修飾黄色メラミン粒子を得た。
(4)粒子3−4:ピンク色メラミン粒子の作製
粒子1−4と同様にしてピンク色メラミン粒子を作製し、表面修飾を行ない、末端にマレイミド基を結合させた。これに粒子3−1と同様の手順で抗体を結合させ、抗HER2抗体修飾ピンク色メラミン粒子を得た。
(5)粒子3−5:赤紫色メラミン粒子の製造
粒子1−5と同様にして赤紫色メラミン粒子を作製し、表面修飾を行ない、末端にマレイミド基を結合させた。これに粒子3−1と同様の手順で抗体を結合させ、抗MYC抗体修飾赤紫色メラミン粒子を得た。
(6)粒子3−6:緑色メラミン粒子の製造
粒子1−6と同様にして緑色メラミン粒子を作製し、表面修飾を行ない、末端にマレイミド基を結合させた。これに粒子3−1と同様の手順で抗体を結合させ、抗TOP2A抗体修飾緑色メラミン粒子を得た。
(7)粒子3−7:黄緑色メラミン粒子の作製
粒子1−7と同様にして黄緑色メラミン粒子を作製し、表面修飾を行ない、末端にマレイミド基を結合させた。これに粒子3−1と同様の手順で抗体を結合させ、抗EGFR抗体修飾黄緑色メラミン粒子を得た。
粒子3−1〜3−7の内容をまとめると表4の通りである。
Figure 0006447679
[実施例4](赤色、緑色、青色の蛍光色素を内包した蛍光色素内包樹脂粒子を用いた多重抗体染色)
表4に記した粒子を用いて抗体染色を行なった。ヒトの乳がん組織切片を用いて染色した。(染色はダコ社HercepTest IIの染色法に準じて染色を行なった。)観察の際には、励起波長が420、490、580nmを同時に励起できるフィルター(FF01-407/494/576-25(Semrock製))を用い、発光波長(蛍光波長)として、450、520、610nmを同時に検出できるフィルター(FF01-457/530/628-25(Semrock製))を用いた。これにより、粒子3−1〜3−7の7種の発光色の異なる粒子を同時に観察する事ができた。例えば、癌の増殖や分子標的薬の奏効率に関係する、HER2(粒子3−1赤色)、TOP2A(粒子3−6緑色)、RB−1(粒子3−4ピンク色)、EGFR(粒子3−7黄緑色)、P53(粒子3−3黄色)MET(粒子3−2橙色)、EGFR(粒子3−7黄緑色)、MYC(粒子3−5赤紫色)の抗原たんぱくの増加の有無を評価できた。
[比較例2](発光波長(蛍光波長)の異なる色素を内包した蛍光色素内包樹脂粒子セットを用いた多重抗体染色)
下記の表5に記した粒子を用いて抗体染色を行なった。実施例と同様にして、ヒトの乳がん組織切片を用いて染色した。観察の際には、例えば粒子4−1の赤色発光を検出する場合は励起580nm、発光615nmのフィルターを装着して蛍光顕微鏡観察を行なった。粒子4−2の黄色発光色素を検出する場合は励起530nm、発光560nmのフィルターを装着して蛍光顕微鏡観察を行なった。粒子4−1〜4−5と、5種の発光色の異なる粒子を、励起・発光(蛍光)フィルターをそれぞれ変更して観察するため、観察が煩雑であった。また、例えば、赤色と黄色と緑色の発光色の樹脂粒子では、それぞれ励起・発光(蛍光)フィルターが異なるため、同時に観察する事ができなかった。
Figure 0006447679

Claims (4)

  1. 1個の樹脂粒子(母体)中に赤色蛍光色素、緑色蛍光色素及び青色蛍光色素の2種又は3種の蛍光色素(但し、蛍光色素としては下記式(1)で表されるポリアザインダセン染料を除き、蛍光色素が2種であり、かつ2種が共にクマリン染料である場合を除き、蛍光色素が2種であり、かつ1種がクマリン染料であり、他方が下記式(1)で表されるポリアザインダセン染料である場合を除く)を内包し、母体がメラミン樹脂であり、前記各蛍光色素から得られる蛍光色を合成することで蛍光色を調整できる蛍光色素内包樹脂粒子。
    Figure 0006447679
    [式中、R 1 〜R 6 は同一又は異なる基であり、単独の又は組合せた、水素、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アルケニル、シクロアルキル、アリールアルキル、アシル(これらのアルキル部分はそれぞれ、炭素数20未満である)、アリールもしくはヘテロアリールであり;R 7 は窒素、メチン、又はハロゲン−、アルキル−、アルコキシ−、アルケニル−、シクロアルキル−、アリールアルキル−、アシル−(これらのアルキル部分はそれぞれ、炭素数20未満である)、アリール−もしくはヘテロアリール−置換メチンである]
  2. 前記蛍光色素の蛍光スペクトルのピークの波長の半値幅がいずれも90nm以下である、請求項1に記載の蛍光色素内包樹脂粒子。
  3. 前記蛍光色素内包樹脂粒子の平均粒径が10nm以上150nm以下である、請求項1又は2に記載の蛍光色素内包樹脂粒子。
  4. 蛍光色素内包樹脂粒子を2種以上含み、該蛍光色素内包樹脂粒子の少なくとも1種が請求項1〜のいずれか一項に記載の蛍光色素内包樹脂粒子である、組織多重染色用蛍光色素内包樹脂粒子セット。
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