JP6444797B2 - 風力発電システム - Google Patents

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Description

本発明の実施形態は、風力発電システムに関する。
現在、地球温暖化防止の観点から、全地球規模で再生エネルギ発電システムの導入が進められている。風力発電システムは、普及が進められている再生エネルギ発電システムの一つであって、風力エネルギを利用して発電を行う。しかし、日本における風力発電システムの普及率は、欧州などに比べて低い。
日本で風力発電システムの普及率が低いのは、地理的制約によるところが大きい。日本は、気象が山岳性であり、風力の変化および風向の変化が大きいので、風力発電の出力を安定的に維持することが困難である。このため、風車1台当たりの発電効率が低下し、その結果、風力発電システムの導入コストが上昇する。
日本のように風速および風向の変動が激しい地域に大規模な風力発電システムを導入するためには、上記の問題を克服する必要がある。つまり、耐変動型の風車を開発することが必須になる。そこで、風速および風向の変動に対応するために、プラズマ誘起流(気流)を発生させる気流発生装置を風車の翼面に配設することが提案されている。気流発生装置は、一対の電極間に誘電体が介在しており、その一対の電極間に電圧を印加することによって、プラズマ誘起流を発生させる。
風力発電システムにおいては、気流発生装置の他に、加熱装置、音響発生装置などの電気機器が、風車の翼に設置される場合がある。加熱装置は、たとえば、翼に固着した氷を融解するために、風車の翼に設置される。また、音響発生装置は、たとえば、振動を抑制するために、風車の翼に設置される。
特開2008−25434号公報 国際公開2012/126558号
風力発電システムは、高さが高いため、風車の翼などに頻繁に雷撃を受ける。そのため、雷撃の際に、翼に設置した電気機器に雷電流(サージ電流)が流れて電気機器が破損する場合がある。たとえば、翼に気流発生装置を設置した場合には、気流発生装置において金属材料で形成された電極に雷電流が流れることによって、電極が破損する。また、雷電流によって、気流発生装置の電極に電気的に接続された電源が破損する場合がある。この他に、翼において気流発生装置が設置された位置に近い部分が、雷電流によって損傷する可能性がある。ここで、雷電流とは、電気機器に雷が直撃する直撃雷による電流だけでなく、電気機器以外の部分、たとえば翼に備えられた受雷部やタワー等に雷が直撃した場合に電磁誘導によって電気機器に流れる、誘導雷による電流も含む。
このため、風力発電システムにおいて翼に設置された電気機器などを、雷撃から的確に保護する必要がある。つまり、信頼性が高い雷対策を施す必要がある。
したがって、本発明が解決しようとする課題は、翼に設置された電気機器などを雷撃から的確に保護することが可能であって、安全性を向上可能な電気機器の電源および風力発電システムを提供することである。
実施形態に係る風力発電システムは、翼と、前記翼に設置されており、第1導電体と第2導電体とが間を隔てて設けられている電気機器と、前記第1導電体と前記第2導電体との間に電圧を印加する電圧印加機構と、前記第1導電体に一端が電気的に接続され、他端が接地されている第1避雷素子と、前記第2導電体に一端が電気的に接続され、他端が接地されている第2避雷素子と、前記第1導電体に一端が電気的に接続され、前記第2導電体に他端が電気的に接続されている第3避雷素子とを有し、前記第3避雷素子のインパルス動作電圧は、前記第1避雷素子のインパルス動作電圧、および、前記第2避雷素子のインパルス動作電圧よりも低い。
実施形態に係る風力発電システムの要部を模式的に示す斜視図である。 実施形態に係る風力発電システムにおいて、気流発生装置が設置された部分を拡大して示す図である。 実施形態に係る風力発電システムにおいて、気流発生装置およびレセプタが設置された部分を拡大して示す図である。 実施形態に係る風力発電システムの電気配線系統を模式的に示す図である。
実施形態について、図面を参照して説明する。
[A]風力発電システム10の構成
図1は、実施形態に係る風力発電システム10の要部を模式的に示す斜視図である。
風力発電システム10は、プロペラ風車であって、図1に示すように、タワー30、ナセル31、ロータ40、および、風向風速計50を備えている。この他に、風力発電システム10は、気流発生装置60(電気機器)およびレセプタ70を備えている。
風力発電システム10を構成する各部に関して、順次、説明する。
[A−1]タワー30
風力発電システム10のうち、タワー30は、図1に示すように、垂直方向に沿って延在しており、下端部が地面20に固定されている。
[A−2]ナセル31
風力発電システム10のうち、ナセル31は、図1に示すように、タワー30の上端部に設置されている。ナセル31は、ヨー角の調整のために、タワー30の上端部において垂直方向を軸にして回転可能に支持されている。
[A−3]ロータ40
風力発電システム10のうち、ロータ40は、図1に示すように、ナセル31に回転可能に支持されており、水平方向を回転軸として回転する。ロータ40は、ナセル31の内部に収容された発電機(図示省略)に連結されており、ロータ40の回転によって発電機が駆動して、発電が行われる。
図1に示すように、ロータ40は、ハブ41と複数の翼42(ブレード)とを備えており、ハブ41に複数の翼42が設置されている。複数の翼42のそれぞれは、ハブ41を中心にして回転方向に間を隔てて取付けられている。たとえば、3枚の翼42が設けられている。この3枚の翼42のそれぞれは、ピッチ角の調整のために、翼根側に位置する一端がハブ41に回転可能に支持されている。
[A−4]風向風速計50
風力発電システム10のうち、風向風速計50は、図1に示すように、ナセル31の上面に取付けられている。風向風速計50は、風速および風向きについて計測し、その計測したデータを制御部(図示省略)に出力する。そして、その計測データに応じて、制御部がヨー角やピッチ角の調整を行う。また、その計測データに応じて、制御部が放電用電源(図示省略)の動作を制御することによって、気流発生装置60の動作を制御する。
[A−5]気流発生装置60およびレセプタ70
風力発電システム10のうち、気流発生装置60およびレセプタ70は、図1に示すように、翼42に設置されている。
図2は、実施形態に係る風力発電システム10において、気流発生装置60が設置された部分を拡大して示す図である。図2は、断面図であって、翼42の前縁部分について拡大して示している。
図3は、実施形態に係る風力発電システム10において、気流発生装置60およびレセプタ70が設置された部分を拡大して示す図である。図3は、斜視図であって、一枚の翼42について拡大して示している。図3は、翼42のうち背側の表面を示している。
[A−5−1]気流発生装置60
気流発生装置60は、図2に示すように、翼42に設置されている。気流発生装置60は、第1電極61(第1導電体)と第2電極62(第2導電体)と誘電体63とを備えている。
図2に示すように、気流発生装置60において、第1電極61は、誘電体63の表面に設けられている。第2電極62は、誘電体63の内部に設けられている。第1電極61と第2電極62との間には、誘電体63が介在している。第1電極61と第2電極62とのそれぞれは、金属材料などの導電材料で形成されている。
気流発生装置60において、誘電体63は、誘電材料で形成されている。誘電体63を構成する誘電材料は、使用用途および使用環境に応じて、固体の誘電材料から適宜選択して利用可能であって、複数種の誘電材料を組み合わせて利用してもよい。
図2に示すように、第1電極61は、第1ケーブル配線64aが接続されている。そして、第2電極62は、第2ケーブル配線64bが接続されている。第1ケーブル配線64aと第2ケーブル配線64bとのそれぞれは、翼42の内部に収容された部分を含み、放電用電源65(電圧印加機構)に電気的に接続されている。気流発生装置60は、放電用電源65が第1ケーブル配線64aと第2ケーブル配線64bとのそれぞれを介して第1電極61と第2電極62との間に電圧を印加することによって、プラズマ誘起流が発生する。
気流発生装置60において第1電極61と第2電極62との間には、たとえば、パルス状にパルス変調制御された電圧(正極性、負極性、正負の両極性(交番電圧))、交流状の波形(正弦波、断続正弦波)を有する電圧が、放電用電源65によって印加される。ここでは、電圧値、周波数、電流波形、デューティ比などの電流電圧特性を放電用電源65が変化させて、第1電極61と第2電極62との間に電圧が印加される。放電用電源65の詳細な構成については後述する。
気流発生装置60は、プラズマ誘起流が翼42の前縁から翼42の背側42aに向かって流れるように翼42に配置されている。ここでは、気流発生装置60は、図2に示すように、たとえば、第1電極61のうち第2電極62側に位置する一端が、翼42の前縁に一致すると共に、第2電極62を第1電極61よりも翼42の背側42aに位置するように配置されている。
図3に示すように、気流発生装置60は、複数が翼スパン方向において並ぶように、翼42の表面に設置されている。気流発生装置60は、第1電極61および第2電極62の延在方向が、翼スパン方向に沿うように設置されている。
翼スパン方向に並ぶ複数の気流発生装置60のそれぞれは、たとえば、複数の放電用電源65のそれぞれに電気的に接続されており、互いに独立して動作が制御される。つまり、第1電極61と第2電極62との間に印加される電圧の条件(波高値、周波数、波形、変調周波数、デューティ比など)が、翼スパン方向に並ぶ複数の気流発生装置60のそれぞれについて制御される。なお、複数の気流発生装置60のそれぞれについて独立に電圧を制御可能な機能を備える電源であれば、複数でなく、単一であってもよい。
気流発生装置60の配置は、上記の場合に、特に限定されない。気流発生装置60は、翼42の表面に発生する剥離流れ等を制御可能な位置に設置されることが好ましい。たとえば、気流発生装置60は、上記のように、翼42の前縁部に配置されることが好ましい。
気流発生装置60は、上記の他に、たとえば、翼42に形成した溝(図示なし)に嵌めこむように設置されてもよい。つまり、気流発生装置60は、翼42の表面から突き出た部分がないように設置されてもよい。
この他に、気流発生装置60を翼42に直接形成してもよい。この場合には、翼42を構成する部分が上記の誘電体63として機能するように、翼42を形成することによって気流発生装置60を設ける。たとえば、グラスファイバで合成樹脂の強度が強化されたGFRP(グラスファイバ強化樹脂)などの誘電材料で翼42を形成する場合に、気流発生装置60を翼42に直接形成することができる。
上記では、翼スパン方向に複数の気流発生装置60を設置する場合について説明したが、これに限らない。たとえば、翼幅が小さい場合には、翼スパン方向において複数の気流発生装置60を設置せずに、一つの気流発生装置60を設置してもよい。
[A−5−2]レセプタ70
風力発電システム10のうち、レセプタ70は、図1,図3に示すように、翼42に設置されている。レセプタ70は、翼42において意図していない部分へ落雷が生ずることがないように落雷を誘導し、落雷によって翼42が損傷することを防止するために設けられている。
ここでは、レセプタ70は、一の翼42に対して複数が設置されている。具体的には、レセプタ70は、翼42の先端部42bに設置されている。また、レセプタ70は、図1および図3に示すように、翼42において先端部42b側に位置する部分であって、腹側の表面(図1参照)および背側の表面(図3参照)のそれぞれに設置されている。
レセプタ70は、たとえば、落雷時の溶損量が小さい金属材料で構成されることが好ましい。たとえば、レセプタ70は、例えば、銅−タングステン合金、アルミニウムなどの金属材料を用いて形成される。
詳細については後述するが、レセプタ70は、落雷保護装置(図示省略)を構成しており、レセプタ70が受けた雷電流が地中に導かれるように構成されている。
[B]風力発電システム10の電気配線系統
以下より、実施形態に係る風力発電システム10の電気配線系統について説明する。
図4は、実施形態に係る風力発電システム10の電気配線系統を模式的に示す図である。
図4に示すように、風力発電システム10は、上記したレセプタ70を含む落雷保護装置700が設けられている。この他に、風力発電システム10は、気流発生装置60に電力を供給する放電用電源65が設けられている。
落雷保護装置700と放電用電源65とに関して順次説明する。
[B−1]落雷保護装置700
落雷保護装置700は、図4に示すように、上述したレセプタ70の他に、避雷導線73を含む。落雷保護装置700において、レセプタ70は、避雷導線73に電気的に接続されており、避雷導線73を介して接地されている。
落雷保護装置700のうち、避雷導線73は、ケーブル配線71と引き下げ導線72と接続部74とを含む。避雷導線73は、ケーブル配線71と引き下げ導線72とが接続部74を介して電気的に接続されている。
避雷導線73において、ケーブル配線71は、一端がレセプタ70に電気的に接続されており、一端が接続部74に電気的に接続されている。図示を省略しているが、ケーブル配線71は、たとえば、ハブ41と翼42とを含むロータ40(図1参照)などの回転体の内部に配置されている。図示を省略しているが、ケーブル配線71は、ハブ41と翼42とを含むロータ40(図1参照)などの回転体の内部において、第1ケーブル配線64aと第2ケーブル配線64bとのそれぞれから、ほぼ等しい距離に位置している。
避雷導線73において、引き下げ導線72は、一端が接続部74に電気的に接続され、他端が接地されている。引き下げ導線72の他端は、たとえば、地中に埋め込まれている。引き下げ導線72は、たとえば、ナセル31、タワー30などの静止体の内部に配置されている。
避雷導線73において、接続部74は、たとえば、ブラシや放電ギャップなどを含み、回転体に設置されたケーブル配線71と、静止体に設置された引き下げ導線72との間を電気的に接続している。
避雷導線73は、落雷時には、数十kAにも達する大電流が流れる。このため、避雷導線73を構成するケーブル配線71および引き下げ導線72は、その大電流に対して十分に耐えるように、導線の径が設計されている。また、接続部74は、接続抵抗が十分に低くなるように設計されている。
[B−2]放電用電源65
[B−2−1]電圧印加部83
放電用電源65は、図4に示すように、電圧印加部83を有する。電圧印加部83は、発振器81とトランス82とを含み、筐体651に収容されている。なお、発振器81とトランス82とのそれぞれを別々の筐体に収納してもよい。
電圧印加部83において、発振器81は、1次電源80に電気的に接続されており、1次電源80から電力が供給され、高周波電圧を出力する。
電圧印加部83において、トランス82(変圧器)は、入力側の一次コイルが発振器81に電気的に接続されており、出力側の二次コイルが気流発生装置60に電気的に接続されている。トランス82は、発振器81から高周波の電圧が入力され、その入力された高周波の電圧を変圧する。
電圧印加部83は、第1出力端子84と第2出力端子85とを含む。第1出力端子84は、第1ケーブル配線64aを介して、気流発生装置60の第1電極61に電気的に接続されている。第2出力端子85は、第2ケーブル配線64bを介して、気流発生装置60の第2電極62に電気的に接続されている。電圧印加部83は、第1出力端子84および第2出力端子85を介して、トランス82が変圧した電圧を第1電極61と第2電極62との間に印加する。
筐体651は、接地導線100が電気的に接続している。ここでは、接地導線100は、一端が筐体651に電気的に接続され、他端が接地されている。接地導線100は、避雷導線73とは別系統で設けられていることが好ましい。すなわち、接地導線100と避雷導線73との間は、それぞれが独立した接地系統を構成していることが好ましい。なお、図示を省略しているが、接地導線100の電路には、避雷導線73の接続部74と同様に、ブラシや放電ギャップなどの電気接続部品が介在していてもよい。
[B−2−2]第1避雷素子91、第2避雷素子92、第3避雷素子93
放電用電源65は、図4に示すように、電圧印加部83の他に、第1避雷素子91と第2避雷素子92と第3避雷素子93とを有する。第1避雷素子91と第2避雷素子92と第3避雷素子93とのそれぞれは、筐体651に収容されている。第1避雷素子91と第2避雷素子92と第3避雷素子93とのそれぞれは、サージ防護機器である。
第1避雷素子91は、対地避雷素子であって、図4に示すように、第1電極61に一端(図4では左端)が電気的に接続され、他端(図4では右端)が接地されている。ここでは、第1避雷素子91の一端は、第1ケーブル配線64aを介して、気流発生装置60の第1電極61に電気的に接続されている。そして、第1避雷素子91の他端は、接地導線100が電気的に接続している筐体651を介して、接地されている。第1避雷素子91は、電圧印加部83のトランス82を雷撃から保護するために設けられている。
第2避雷素子92は、対地避雷素子であって、図4に示すように、第2電極62に一端(図4では右端)が電気的に接続され、他端(図4では左端)が接地されている。ここでは、第2避雷素子92の一端は、第2ケーブル配線64bを介して、気流発生装置60の第2電極62に電気的に接続されている。そして、第2避雷素子92の他端は、接地導線100が電気的に接続している筐体651を介して、接地されている。第2避雷素子92は、第1避雷素子91と同様に、電圧印加部83のトランス82を雷撃から保護するために設けられている。
第3避雷素子93は、線間避雷素子であって、図4に示すように、第1電極61に一端(図4では右端)が電気的に接続され、第2電極62に他端(図4では左端)が電気的に接続されている。ここでは、第3避雷素子93の一端は、第1ケーブル配線64aを介して、気流発生装置60の第1電極61に電気的に接続されている。そして、第3避雷素子93の他端は、第2ケーブル配線64bを介して、気流発生装置60の第2電極62に電気的に接続されている。第3避雷素子93は、気流発生装置60を雷撃から保護するために設けられている。
第1避雷素子91と第2避雷素子92と第3避雷素子93とのそれぞれは、固有のインパルス動作電圧を有する。第1避雷素子91と第2避雷素子92と第3避雷素子93とのそれぞれは、両端に印加される印加電圧が、インパルス動作電圧以上である場合には、動作して、導通状態になり、インパルス動作電圧未満の場合には、絶縁状態を保持する。第1避雷素子91のインパルス動作電圧V91iと、第2避雷素子92のインパルス動作電圧V92iとは、互いに同じであることが好ましい(つまり、V91i=V92i)。また、第3避雷素子93のインパルス動作電圧V93iは、第1避雷素子91のインパルス動作電圧V91i、および、第2避雷素子92のインパルス動作電圧V92iよりも低い(つまり、V91i=V92i>V93i)。
この他に、第1避雷素子91と第2避雷素子92とのそれぞれは、放電用電源65が気流発生装置60に気流を発生させるときに第1電極61と第2電極62との間に印加する通常の動作電圧Vopeでは絶縁状態から導通状態にならずに、トランス82のインパルス耐電圧未満で絶縁状態から導通状態になるように構成されている。そして、第3避雷素子93は、放電用電源65が気流発生装置60に気流を発生させるときに印加する通常の動作電圧Vopeでは絶縁状態から導通状態にならずに、気流発生装置60のインパルス耐電圧未満で絶縁状態から導通状態になるように構成されている。
なお、第1避雷素子91と第2避雷素子92と第3避雷素子93とのそれぞれは、一対の球がギャップを介在して保持されている空間球ギャップアレスタであることが好ましい。空間球ギャップアレスタは、針ギャップアレスタに比べて、ギャップ間における等電界の面積が広く、球の表面が雷撃によって粗くなっても、動作電圧の変化が小さい。また、空間球ギャップアレスタは、平板ギャップアレスタに比べて、端部の電界ひずみの影響が小さい。
図4に示すように、放電用電源65の筐体651に収容した第1避雷素子91と第2避雷素子92と第3避雷素子93とのそれぞれが空間球ギャップアレスタである場合には、空間球ギャップアレスタの球の周囲に絶縁物の隔壁を設けることが好ましい。これにより、空間球ギャップアレスタの球から筐体へ放電が生ずることを防止可能である。
この他に、ギャップ間に所定の電圧で絶縁破壊する絶縁体を挿入した固体ギャップアレスタを、第1避雷素子91と第2避雷素子92と第3避雷素子93とのそれぞれとして利用してもよい。
[C]動作
以下より、実施形態に係る風力発電システム10の動作について説明する。
ここでは、風力発電システム10が通常運転を行う場合と、風力発電システム10に雷雲が接近した場合と、風力発電システム10のレセプタ70が雷を受けた場合とのそれぞれに関して、図4を参照して、順次、説明する。
[C−1]風力発電システム10が通常運転を行う場合
まず、風力発電システム10が通常運転を行うときの各部の動作に関して説明する。つまり、風力発電システム10に雷雲が接近していない状態であって、レセプタ70が雷を受けていない場合に関して説明する。
この場合には、第1避雷素子91と第2避雷素子92と第3避雷素子93とのそれぞれは、インパルス動作電圧未満であるので動作せずに、絶縁状態である。気流発生装置60の第1電極61と電圧印加部83の第1出力端子84との間は、電気的に接続された状態である。これと共に、気流発生装置60の第2電極62と電圧印加部83の第2出力端子85との間は、電気的に接続された状態である。このため、電圧印加部83が第1電極61と第2電極62との間に電圧を印加して、気流発生装置60が気流を発生する動作を行うことが可能な状態である。
放電用電源65の筐体651は、接地導線100を介して接地されており、接地電位になっている。これに対して、トランス82の2次側から気流発生装置60までの間は、接地されていない状態であって、すべてが浮遊電位になっている。つまり、第1電極61と第1出力端子84との間を電気的に接続している第1ケーブル配線64aは、浮遊電位である。そして、第2電極62と第2出力端子85との間を電気的に接続している第2ケーブル配線64bは、浮遊電位である。
上記の状態で、電圧印加部83が第1電極61と第2電極62との間に電圧を印加することによって、気流発生装置60が気流を発生する。
具体的には、電圧印加部83においては、1次電源80から発振器81に電力が供給され、発振器81が高周波の電圧をトランス82に出力する。そして、その高周波の電圧をトランス82が変圧する。そして、そのトランス82で変圧された高周波の電圧が、第1ケーブル配線64aおよび第2ケーブル配線64bを介して、第1電極61と第2電極62との間に印加される。第1電極61と第2電極62との間の電位差が一定の閾値以上になると、第1電極61の近傍に放電が誘起される。このとき生成された電子やイオンは、電界によって駆動されて気体分子に衝突し、運動量が気体分子に移行する。これにより、第1電極61付近に、プラズマ誘起流が発生する。
[C−2]風力発電システム10に雷雲が接近した場合
つぎに、風力発電システム10に雷雲が接近した場合について説明する。
風力発電システム10に雷雲が接近した場合において、気流発生装置60の第1電極61が接地電位になっているときには、第1電極61は、レセプタ70と同様に受雷部として機能し、雷を受ける場合がある。気流発生装置60の第1電極61は、受雷部として機能することを想定した構造ではない。このため、第1電極61は、直撃雷を受けて大電流が通流した場合、溶けて損傷する場合がある。これと共に、第1電極61の付近にある誘電体63が損傷する場合がある。
たとえば、負極性の雷雲が接近した場合には、レセプタ70および第1電極61は、大地から正極性の電荷が供給され、正極性の誘導電位を有することになる。そのため、第1電極61のエッジ部から正極性のストリーマが進展する先駆放電が発生する。その結果、誘雷の確率が増加する。
しかしながら、本実施形態では、上記したように、トランス82の2次側から気流発生装置60までの間は、接地電位でなく、浮遊電位である。
このため、本実施形態では、気流発生装置60に雷が直撃することを効果的に防止可能である。
[C−3]風力発電システム10のレセプタ70が雷を受けた場合
つぎに、風力発電システム10のレセプタ70が雷を受けた場合について説明する。
この場合には、たとえば、数十kAの雷電流が、レセプタ70から避雷導線73を介して地中に流れる。つまり、ケーブル配線71と接続部74と引き下げ導線72とを順次が介して雷電流が地中に流れる。
このとき、本実施形態では、ケーブル配線71を流れる雷電流に起因して、第1ケーブル配線64aおよび第2ケーブル配線64bにおいて、大きな誘導電圧が生ずる。
誘導電圧の大きさは、ケーブル配線71に対する距離に反比例する。本実施形態では、上述したように、第1ケーブル配線64aとケーブル配線71との間の距離、および、第2ケーブル配線64bとケーブル配線71との間の距離は、ほぼ等しい。このため、第1ケーブル配線64aと第2ケーブル配線64bとのそれぞれは、互いがほぼ同じ電位になるように、電位が上昇する。つまり、コモンモードが誘起される。
しかし、本実施形態では、このコモンモードの電圧上昇から、第1避雷素子91と第2避雷素子92とのそれぞれが、トランス82を保護している。
具体的には、第1避雷素子91は、上述したように、一端が第1ケーブル配線64aに電気的に接続され、他端が接地されている。そして、第2避雷素子92は、上述したように、一端が第2ケーブル配線64bに電気的に接続され、他端が接地されている。第1避雷素子91と第2避雷素子92とのそれぞれは、トランス82のインパルス耐電圧以下の状態で動作して導通状態になる。このため、第1避雷素子91と第2避雷素子92とのそれぞれは、コモンモードで上昇する電圧がトランス82のインパルス耐電圧を超える前に導通状態になるので、第1ケーブル配線64aの電位および第2ケーブル配線64bの電位の上昇を制限することができる。その結果、本実施形態では、トランス82を効果的に保護することができる。
上述したように、第1避雷素子91のインパルス動作電圧V91iと、第2避雷素子92のインパルス動作電圧V92iとは、互いに同じであることが好ましい(つまり、V91i=V92i)。しかしながら、第1避雷素子91のインパルス動作電圧V91iおよび第2避雷素子92のインパルス動作電圧V92iは、確率的にバラツキを有し、互いに異なる場合がある。特に、第1避雷素子91および第2避雷素子92が空間球ギャップアレスタである場合には、空間の破壊電圧は、球の表面状態、および、球から空間へ電子を供給する状態に応じて、大きくばらつく場合がある。その結果、第1避雷素子91と第2避雷素子92との両者が同時に動作せずに、いずれかが先に動作する場合がある。
たとえば、第1避雷素子91よりも先に第2避雷素子92が動作して、第1避雷素子91が絶縁状態であるときに第2避雷素子92が導通状態になる場合がある。第1避雷素子91と第2避雷素子92との両者が動作せずに絶縁状態である場合には、第1ケーブル配線64aと第2ケーブル配線64bとの間の電位差は小さく、第1電極61と第2電極62との間においては大きな電位差が発生しない。これに対して、上記のように、第2避雷素子92が第1避雷素子91よりも先に導通状態になったときには、第2電極62は、第1電極61とほぼ同じ電位から接地電位に変わる。その結果、第1電極61と第2電極62との間においては、大きな電位差が生じる。つまり、ノーマルモードの電圧が第1電極61と第2電極62との間に印加される。そして、第1電極61と第2電極62との間に生じたノーマルモードの電圧が、誘電体63の耐電圧を超えたときには、誘電体63において絶縁破壊が生じ、気流発生装置60が損傷する場合がある。
しかし、本実施形態では、上記したノーマルモードの電圧の発生から、第3避雷素子93が気流発生装置60を保護している。
具体的には、第3避雷素子93は、上述したように、一端が第1ケーブル配線64aを介して第1電極61に電気的に接続され、他端が第2ケーブル配線64bを介して第2電極62に電気的に接続されている。第3避雷素子93は、気流発生装置60の誘電体63のインパルス耐電圧未満で動作して、絶縁状態から導通状態になる。このため、第3避雷素子93は、ノーマルモードの電圧が気流発生装置60の誘電体63のインパルス耐電圧を超える前に導通状態になるので、第1ケーブル配線64aと第2ケーブル配線64bとの間の電位差が上昇することを制限することができる。その結果、本実施形態では、気流発生装置60の誘電体63に大きなノーマルモードの電圧が印加されずに、気流発生装置60を効果的に保護することができる。
以上のように、実施形態に係る風力発電システム10は、第1避雷素子91と第2避雷素子92と第3避雷素子93とを有するので、レセプタ70が雷を受けたときに生じる誘導電圧から、トランス82と気流発生装置60との両者を効果的に保護することができる。その結果、風力発電システム10について、安全性を更に高めることが可能である。
[D]変形例
上記の実施形態では、気流発生装置60を含む風力発電システム10について説明したが、これに限らない。気流発生装置60以外の電気機器が翼42に設置された風力発電システムにおいて、第1避雷素子91と第2避雷素子92と第3避雷素子93とを、上記の実施形態の場合と同様に設置してもよい。たとえば、電気機器が、加熱装置、音響発生装置等の能動的機器、ひずみセンサ、温度センサ等の計測機器である場合などに、上記のように構成してもよい。
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、翼に設置された電気機器などを雷撃から的確に保護することが可能であって、安全性を向上できる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
10…風力発電システム、20…地面、30…タワー、31…ナセル、40…ロータ、41…ハブ、42…翼、42a…背側、42b…先端部、50…風向風速計、60…気流発生装置、61…第1電極、62…第2電極、63…誘電体、64a…第1ケーブル配線、64b…第2ケーブル配線、65…放電用電源、70…レセプタ、71…ケーブル配線、72…引き下げ導線、73…避雷導線、74…接続部、80…1次電源、81…発振器、82…トランス、83…電圧印加部、84…第1出力端子、85…第2出力端子、100…接地導線、651…筐体、700…落雷保護装置

Claims (4)

  1. 翼と、
    前記翼に設置されており、第1導電体と第2導電体とが間を隔てて設けられている電気機器と
    前記第1導電体と前記第2導電体との間に電圧を印加する電圧印加機構と、
    前記第1導電体に一端が電気的に接続され、他端が接地されている第1避雷素子と、
    前記第2導電体に一端が電気的に接続され、他端が接地されている第2避雷素子と、
    前記第1導電体に一端が電気的に接続され、前記第2導電体に他端が電気的に接続されている第3避雷素子と
    を有し、
    前記第3避雷素子のインパルス動作電圧は、前記第1避雷素子のインパルス動作電圧、および、前記第2避雷素子のインパルス動作電圧よりも低い風力発電システム
  2. 前記電気機器は、気流発生装置であって、前記第1導電体として第1電極が設けられ、
    前記第2導電体として第2電極が設けられ、前記第1電極と前記第2電極とが誘電体を介して離間しており、
    前記電圧印加機構は、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加することによって、前記気流発生装置に気流を発生させる、
    請求項1に記載の風力発電システム
  3. 前記第1電極および前記第2電極のそれぞれは、浮遊電位である、
    請求項2に記載の風力発電システム
  4. 前記第1避雷素子と前記第2避雷素子と前記第3避雷素子とのそれぞれは、球ギャップアレスタである、
    請求項1から3のいずれかに記載の風力発電システム
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