従前からステンレス板等の金属薄板を箱曲げして成るワークのコーナー部を外側からコーナー溶接する自動溶接機が開発され、実用に供されている。
しかし、従前の自動溶接機によるワークのコーナー溶接は、溶接によるビードが過大であるため、溶接後にグラインダーやサンダー等による仕上げ加工が必要になり、多大の労力と時間を要するうえ、騒音の問題等が発生している。
そこで、本件発明者は、ワークのコーナー溶接を好適に行えるようにした金属薄板材の自動溶接装置を開発し、これを特開2003−205369号公報として公開している(特許文献1参照)。
ところで、前記金属薄板材の自動溶接装置は、ワークを支持するマンドレルが溶接作業時に両端部を支持した格好になるため、角筒状になったワークのコーナー部しか溶接することが出来ず、箱曲げしたワークのコーナー部の溶接を行えないと言う問題があった。
一方、箱曲げしたワークのコーナー部の溶接を行える自動溶接装置しては、例えば、実用新案登録第2546453号公報(特許文献2参照)に開示された横型溶接機が知られている。
即ち、前記横型溶接機は、図20に示す如く、箱状のワークWのコーナー部を裏面側から支持する裏当て金型60を備えたマンドレル61と、裏当て金型60に支持されたワークWを上方からクランプするクランプ板62を有するクランプ装置63と、ワークWのコーナー部を溶接する溶接トーチ64等を備えている。
而して、前記横型溶接機によれば、先ず、箱状のワークWの開口部にマンドレル61の先端部を挿入してワークWのコーナー部を裏当て金型60で支持し、次に、クランプ装置63のクランプ板62を下方へ下降させてワークWのコーナー部を上方からクランプし、その後、溶接トーチ64の高さ調整及び幅方向調整を行い、最後にアークを発生させて溶接トーチ64をワークWのコーナー部に沿って移動させ、ワークWのコーナー部を溶接することによって、箱曲げしたワークWのから箱状の製品を作製することができる。
しかし、前記横型溶接機は、四隅のコーナー部に隙間が生じないようにワークWを箱曲げしていても、箱曲げしたワークWのコーナー部を裏面側から裏当て金型60で支持した際に、図21に示す如く、ワークWの直角に対向する2面の対向縁の間隔がワークWの自重により広がり、ワークWのコーナー部に隙間が生じ、この状態でクランプ装置63によりクランプされることになる。
特に、肉厚が薄くて大形の箱状のワークWの場合には、ワークWのコーナー部を裏当て金型で支持した際に、ワークWのコーナー部に生じる隙間がより大きくなって問題である。
その結果、前記横型溶接機は、ワークWのコーナー部に隙間ができた状態でコーナー溶接させることがあり、穴あきやヘコミ等の溶接欠陥が発生し、溶接済みのワークWの品質が著しく低下するという問題があった。
また、前記横型溶接機は、マンドレル61が上下方向へ位置調整自在となっているため、箱状のワークWの大きさに応じて背の高さの異なる裏当て金型に交換して使用した場合でも、裏当て金型60の上端の位置をほぼ同じ高さ位置に保つことができ、裏当て金型60の交換の度にクランプ装置63や溶接トーチ64の上下方向の位置調整を行う必要がなく、作業能率の向上を図れると言う利点がある。
しかし、前記横型溶接機は、マンドレル61がクランプ装置63や溶接トーチ64を支持するフレーム65の下方位置に配設されているため、マンドレル61上の裏当て金型60にワークWをセットする際にフレーム65が邪魔になってワークWのセットを行い難いと言う問題もあった。
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜図3は本発明の一実施形態に係るコーナー自動溶接装置を示し、当該コーナー自動溶接装置は、ステンレス板や銅板、アルミ板等の金属薄板(例えば、0.3mm〜0.8mmの金属板)を箱曲げして成るワークWの四つのコーナー部を共付け溶接し、一面が開放された箱状の製品を作製するものである。
即ち、前記コーナー自動溶接装置は、図1〜図3に示す如く、フレーム1と、四隅のコーナー部に隙間が生じないように箱曲げしたワークWのコーナー部を裏面側から支持するコーナー治具18を有する下治具ユニット2と、コーナー治具18に支持されたワークWのコーナー部を上方から押圧してコーナー治具18の上面へ押圧固定する左右のクランプ34を有するクランプユニット3と、ワークWのコーナー部に沿って往復移動し、ワークWのコーナー部を共付け溶接する溶接用トーチ53(TIG溶接用トーチ)を有するトーチユニット4と、コーナー治具18に支持されたワークWのコーナー部付近の底面部をコーナー治具18の先端面18fへ押圧保持する押圧保持部材5とを備えている。
前記フレーム1は、図1〜図3に示す如く、水平姿勢のベースフレーム1aと、ベースフレーム1a上に設けたボックス状の本体フレーム1bとを備えており、本体フレーム1bの内部には、溶接電源6、配電盤(図示省略)、コンプレッサー(図示省略)等がそれぞれ収容されている。
尚、図1〜図3において、7はタッチ式の操作パネル、8は自動運転スイッチ、9はフットスイッチ、10は溶接ガス等の接続口、11は安全カバー、12はキャスター、13は吊下げ用のアイボルトである。
前記下治具ユニット2は、図4〜図7及び図8〜図11に示す如く、縦向き姿勢のマンドレル取付台14と、マンドレル取付台14の前面に水平姿勢で固定されたほぼ直方体形状のマンドレル15と、マンドレル15の上面にリニアガイド16(ガイドレール16a及びガイドレール16a上を摺動するスライダ16bから成る)を介してマンドレル15の長手方向へ往復移動自在に支持された厚肉板状の治具スライド体17と、治具スライド体17の先端部に着脱自在に設けられ、ワークWのコーナー部を裏面側から支持すると共に、ワークWのコーナー部を溶接する際に余分な熱を吸収してビードの溶け落ちや穴あき、熱歪等を防止するコーナー治具18と、マンドレル15と治具スライド体17の間に介設され、治具スライド体17をマンドレル15に沿って往復移動させる治具スライド体用駆動部19とを備えており、前記コーナー治具18が、治具スライド体17の往復移動により左右のクランプ34の下方に位置する後退位置(図6の一点鎖線位置)と左右のクランプ34の斜め下方前方に位置する前方位置(図6の実線位置)とに亘って前後方向へ往復移動自在となっている。
具体的には、前記コーナー治具18は、図9に示す如く、銅部材により上面18aが山形状に形成されており、コーナー治具18の下面に形成した凹溝18bを治具スライド体17の先端部側上面に形成した凸条部17aに嵌め込むことにより治具スライド体17に支持されている。このとき、コーナー治具18は、治具スライド体17の凸条部17aに着脱自在に取り付けた治具ストッパー20により位置決めされた状態で治具スライド体17に支持されている。
尚、この実施形態では、コーナー治具18の山形状の上面18aの一方の面18aと他方の面18aとが為す角度は、90度に設定されており、正方形状又は長方形状に箱曲げしたワークWのコーナー部を支持できるようになっている。
また、コーナー治具18は、図6及び図10に示す如く、治具スライド体17の先端部側面に位置決めピン21を介して設けた治具押え板22と、治具押え板22及び治具スライド体17に挿着されたクランプレバー23とにより治具スライド体17に対して着脱自在となっており、クランプレバー23を締め付ける方向へ回動操作すると、治具押え板22がコーナー治具18側及び治具スライド体17側へ押圧され、治具押え板22の先端部(上端部)でコーナー治具18を治具スライド体17側へ押圧固定するとこができ、また、クランプレバー23を緩める方向へ回動操作すると、治具押え板22がフリーの状態となり、コーナー治具18を治具スライド体17から取り外すことができるようになっている。
更に、コーナー治具18の山形状の上面18aには、図6、図9及び図11に示す如く、箱曲げしたワークWの開口側の外周縁部に施したヘミング加工した部分(図示省略)又は箱曲げしたワークWの開口側の外周縁部に形成した内向きのフランジ部分(図示省略)が嵌り込む受け入れ溝18cが形成されている。この受け入れ溝18cの形成位置及び溝18cの幅は、ワークWのヘミング加工した部分又はワークWのフランジ部分を溝18cに挿入したときに、ワークWの底面部内面をコーナー治具18の先端面18fに当接させることができるようにそれぞれ設定されている。
このように、コーナー治具18の上面18aに形成した受け入れ溝18cにワークWのヘミング加工した部分やワークWのフランジ部分を挿入し、ワークWのコーナー部を裏面側からコーナー治具18の山形状の上面18aで支持すると、ヘミング加工を施したワークWやフランジ部を形成したワークWであっても、ワークWのコーナー部内面がコーナー治具18の山形状の上面18aに面接触状態で当接することになり、左右のクランプ34によるクランプを良好且つ確実に行えることになる。
加えて、コーナー治具18は、図11に示す如く、コーナー治具18の頂部にワークWのコーナー部に沿って形成されたアルゴンガス等のシールドガス(このシールドガスは溶接部の酸化を防止する)が流れるガス溝18dと、治具スライド体17に形成したシールドガスのガス通路17bと前記ガス溝18dとを連通すべくコーナー治具18の頂部に縦向きに形成されたガス供給口18eとを備えており、ガス供給用継手24から治具スライド体17のガス通路17bに供給されたシールドガスがガス供給口18eからガス溝18d内へ流れるようになっている。
尚、コーナー治具18には、図示していないが、長さが異なるもの、上面18aの一方の面と他方の面とが為す角度が90度以外のも、山形状の上面18aに溝18cを形成していないもの等、様々なコーナー治具18が用意されており、ワークWの大きさや形状に合わせて交換できるようになっている。例えば、長さの長いコーナー治具18を使用すれば、深い箱物を作製することができ、また、コーナー治具18の上面18aの一方の面と他方の面とが為す角度が120度のコーナー治具18を使用すれば、六角形状の箱を作製することができる。
前記治具スライド体用駆動部19は、図6及び図9に示すことく、マンドレル15の下面にマンドレル15に沿って取り付けたロッドレスシリンダ19aと、ロッドレスシリンダ19aの可動部19bと治具スライド体17とを連結する連結金具19cとを備えており、ロッドレスシリンダ19aの両端部に設けた二つの作動流体供給用継手19dから作動流体を交互に供給することによりコーナー治具18を後退位置(図6の一点鎖線位置)と前方位置(図6の実線位置)とに亘って前後方向へ往復移動させることができる。
尚、治具スライド体用駆動部19には、図示していないが、ロッドレスシリンダ19aに替えて通常の複動型シリンダを使用しても良く、或いは、ボールネジ機構とモータを使用しても良い。
そして、前記下治具ユニット2は、本体フレーム1bの前面に下治具ユニット用昇降支持機構25を介して昇降自在に支持されており、下治具ユニット2全体が下降してコーナー治具18がクランプユニット3から大きく離れる下降位置(図5及び図6に示す位置)と、下治具ユニット2全体が上昇してコーナー治具18とクランプユニット3の左右のクランプ34とでワークWのコーナー部を挟持固定するクランプ位置(図8に示す位置)とに亘って昇降自在となっている。
即ち、前記下治具ユニット用昇降支持機構25は、図4〜図6に示す如く、フレーム1の前面に固定した縦向き姿勢の治具ベース25aと、治具ベース25aの前面にリニアガイド25bを介して昇降自在に支持され、下治具ユニット2のマンドレル取付台14が固定される治具上下スライド板25cと、治具ベース25aに縦向き姿勢で固定され、治具上下スライド板25cにシリンダ連結板25dを介して連結された流体圧シリンダ25eとを備えており、流体圧シリンダ25eを伸縮動作して治具上下スライド板25cを上下動させることにより下治具ユニット2を昇降させることができるようになっている。
前記クランプユニット3は、下治具ユニット用昇降支持機構25の治具ベース25aに設けられ、コーナー治具18に支持されたワークWのコーナー部を上方から押圧してコーナー治具18の山形状の上面18aへ押圧固定する左右のクランプ34等を備えており、左右のクランプ34のうち、一方のクランプ34(図5の右側のクランプ34)を左右方向(他方のクランプ34に対して近づいたり、離れたりする方向)へ移動調整可能として左右のクランプ34の間隔を微調整できるようにし、また、他方のクランプ34(図5の左側のクランプ34)を左右方向へ移動調整可能として左右のクランプ34の間隔を微調整できるようにすると共に、上下方向へも揺動可能とし、クランプ34の先端部を複数の加圧バネ36によりワークWのコーナー部の上面18aへ弾性的に当接させるようにしている。
即ち、前記クランプユニット3は、図4〜図8、図12及び図13に示す如く、治具ベース25aの上端部に一定の間隔を空けて水平姿勢で且つ平行状に固定した左右のクランプブロック26と、左右のクランプブロック26の先端部同士を連結する正面カバー27と、右側のクランプブロック26の下面に固定した右側のクランプスライドベース28と、左側のクランプブロック26の下面に鉛直姿勢で螺着したクランプガイドネジ29に上下方向へ揺動自在に支持された左側のクランプスライドベース28と、左右のクランプスライドベース28の下面にボールスライドガイド30(レール30a、ブロック30b及びボール30cから成る)を介して左右方向へ水平移動自在に取り付けた左右のクランプスライド板31と、左右のクランプスライド板31にクランプ押え板32及びクランプレバー33を介して着脱自在に取り付けられ、ワークWのコーナー部をコーナー治具18の上面18aへ押圧固定する左右のクランプ34と、左右のクランプスライドベース28と左右のクランプスライド板31との間にそれぞれ設けられ、左右のクランプスライド板31を左右方向へ移動調整する左右のクランプ幅調整機構35と、左側のクランプブロック26と左側のクランプスライドベース28との間に介設され、左側のクランプスライドベース28を下方へ付勢して左側のクランプ34の先端部をコーナー治具18に支持されたワークWのコーナー部の上面18aへ弾性的に当接させる複数の加圧バネ36(圧縮コイルスプリング)とを備えている。
また、前記左右のクランプ34は、ワークWのコーナー部を溶接する際に、主にアークの拡がりを遮断してワークWのコーナー部にアークエネルギーを集中的に与えるものであり、図12に示す如く、断面形状が逆L字形の板状に形成された金属部材製の基端側クランプ34aと、基端側クランプ34aの下端に固定され、先端部が鋭角状に形成された銅部材製の板状の先端側クランプ34bとから成る。この左右のクランプ34には、長さの異なるものが複数用意されており、箱曲げしたワークWの深さに応じて交換し、ワークWの深さに関係なくワークWのコーナー部をコーナー治具18の上面18aへ確実且つ良好に押圧固定できるようにしている。
更に、前記左右のクランプ幅調整機構35は、図8及び図12に示す如く、クランプスライドベース28の下面に固定したクランプ調整台35aと、クランプ調整台35aに水平姿勢で正逆回転自在に挿通支持され、先端部がクランプスライド板31に螺挿されたクランプ調整ボルト35bと、クランプ調整台35aとクランプスライド板31との間に介設され、クランプ調整ボルト35bの弛み止めをすると共に、クランプスライド板31を他方のクランプ34側へ付勢する圧縮コイルスプリング35cと、クランプ調整台35aに螺挿され、クランプ調整ボルト35bを回り止めする固定用ボルト35dとをそれぞれ備えており、クランプ調整ボルト35bを正回転若しくは逆回転させると、クランプ調整ボルト35bが一回転するごとにクランプスライド板31がクランプ調整ボルト35bに形成したネジのピッチ分だけ左右方向へ移動するようになっている。
従って、左右のクランプスライド板31に取り付けた左右のクランプ34も、左右方向(図12の左右方向)へ移動し、左右のクランプ34の間隙が調整されることになる。
而して、前記クランプユニット3によれば、左右のクランプ34の間隔を溶接するワークWの厚みに応じてクランプ幅調整機構35により調整した後、左右のクランプ34とコーナー治具18とでワークWのコーナー部を上下方向から挟持固定するときに、右側のクランプ34の先端を基準にして左側のクランプ34が加圧バネ36の作用により均一にワークWのコーナー部を押えることができる。
前記トーチユニット4は、溶接用トーチ53が後退位置にあるコーナー治具18の上方後方に位置する待機位置と溶接トーチ53がコーナー治具18の上方に位置する溶接作業位置とに亘って前後方向へ往復移動自在となっており、コーナー治具18に支持されたワークWのコーナー部の溶接時に待機位置から溶接作業位置へ引き出され、溶接トーチが所定の速度でワークWのコーナー部に沿って直線移動するようになっている。
即ち、トーチユニット4は、図14〜図17に示す如く、本体フレーム1b内に水平姿勢で配設したトーチユニットベース37と、トーチユニットベース37の上面18aに固定した前後レール台38と、前後レール台38の上面にリニアガイド39を介して前後方向へ往復移動自在に支持された左右スライドベース40と、前後レール台38と左右スライドベース40との間に配設され、左右スライドベース40を前後方向へ往復移動させる前後用モータ41及びベルト伝動機構42と、左右スライドベース40の上面にリニアガイド43を介して左右方向へ往復移動自在に支持された左右スライドベ板44と、左右スライドベース40と左右スライドベ板44との間に配設され、左右スライドベ板44を左右方向へ往復移動させるボールネジ機構(図示省略)及び左右用モータ46と、左右スライドベ板44に設けた縦向き姿勢の上下スライドベース47と、上下スライドベース47にリニアガイド48を介して昇降自在に支持された上下スライド板49と、上下スライドベース47と上下スライド板49との間に配設され、上下スライド板49を昇降動させるボールネジ機構50及び上下用モータ51と、基端部が上下スライド板49に固定され、先端部が本体フレーム1bから前方へ突出する水平姿勢のトーチ支持アーム52と、トーチ支持アーム52の先端部に取り付けられ、先端部からシールドガスを流すと共に、タングステン電極棒を挿着した溶接用トーチ53(TIG溶接用トーチ)とを備えており、左右スライドベース40、左右スライドベ板44及び上下スライド板49を動かすことによって、溶接用トーチ53が前後方向、左右方向及び上下方向へ動くようになっている。
前記押圧保持部材5は、下降位置にあるコーナー治具18よりも高い位置に配設されており、コーナー治具18が下降位置からクランプ位置へ上昇したときにコーナー治具18に支持されたワークWのコーナー部付近の底面部をコーナー治具18の先端面18fへ押圧保持するものである。
即ち、前記押圧保持部材5は、図5、図6及び図8に示す如く、コーナー治具18に支持されたワークWの底面部表面に当接し得る鉛直回転自在な複数のローラーから成り、左右のクランプ34の何れか一方のクランプ34先端(この例では、右側のクランプ34先端)に固定した取付台54に設けられている。
具体的には、押圧保持部材5を形成する各ローラーは、何れもベアリング構造のガイドローラーから成り、図8及び図18に示す如く、取付台54の両端部に固定したシャフト金具55に支持された水平姿勢のシャフト56に並列状態で且つ鉛直回転自在に支持されている。これら各ローラーは、下治具ユニット2が下降位置からクランプ位置に上昇したときに、後退位置にあるコーナー治具18に支持されたワークWのコーナー部付近の底面部外表面に当接してワークWの底面部をコーナー治具18の先端面18fへ押圧保持するようになっている。
また、押圧保持部材5によるワークWの底面部のコーナー治具18への押圧保持は、ワークWのコーナー部がコーナー治具18と左右のクランプ34とにより上下方向から挟持固定される前に行われるようになっている。そのため、押圧保持部材5は、左右のクランプ34の先端部よりも下方位置に配置されており、左右のクランプ34よりも先にワークWの底面部表面側に当接するようになっている。
尚、押圧保持部材5の上方位置で且つ取付台54の上端部には、図18に示す如く、初期アークを発生させるブロック状に形成された銅製のスタートタブ57が設けられている。
次に、上述したコーナー自動溶接装置を用いて四隅に隙間が生じないように箱曲げした金属薄板製のワークWのコーナー部を共付け溶接し、一端面が開放された箱状の製品を作製する場合について説明する。
先ず、作業員は、下降位置にある下治具ユニット2のコーナー治具18を後退位置(図6の一点鎖線位置)から前進位置(図6の実線位置)へ前進させ、前進位置にあるコーナー治具18に箱曲げしたワークWをセットする。即ち、箱曲げしたワークWの四つのコーナー部のうち、一つのコーナー部の裏面を前記コーナー治具18の上面18aに被せ、ワークWのコーナー部を裏面側からコーナー治具18で支持する。
このとき、コーナー治具18が前進位置にあるため、コーナー治具18の上方空間が別の部材で塞がれると言うことが無く、コーナー治具18へのワークWのセットを行い易くなる。
また、外周縁部にヘミング加工を施したワークWや外周縁部に内向きのフランジを形成したワークWをコーナー治具18にセットする際には、ワークWのヘミング加工した部分やワークWのフランジ部がコーナー治具18の受け入れ溝18cに嵌り込むようにしてワークWをコーナー治具18にセットする。
コーナー治具18にワークWをセットしたら、前進位置にあるコーナー治具18を後退位置まで後退させた後、下降位置にある下治具ユニット2をクランプ位置(図8参照)まで上昇させ、コーナー治具18に支持されたワークWのコーナー部付近の底面部を押圧保持部材5によりコーナー治具18の先端面18fへ押圧保持した後、ワークWのコーナー部をコーナー治具18の傾斜状の上面18aと左右のクランプ34とで上下方向から挟持固定する。
ところで、箱曲げしたワークWのコーナー部を裏面側からコーナー治具18で支持した際に、ワークWの直角に対向する2面の対向縁の間隔がワークWの自重により広がり、ワークWのコーナー部に隙間ができることがある。
しかし、上述したコーナー自動溶接装置は、図19に示す如く、コーナー治具18が下降位置からクランプ位置に上昇するときに押圧保持部材5によりワークWのコーナー部付近の底面部をコーナー治具18の先端面18fへ押圧保持するようにしているため、ワークWのコーナー治具18に支持された2面に掛かっていたワークWの自重が取り除かれ、ワークWのコーナー部が弾性力により元の状態に戻り、ワークWのコーナー部の隙間が無くなる。しかも、押圧保持部材5であるローラーの外周面でワークWの底面部をコーナー治具18の先端面18fへ押圧保持するようにしているため、ワークWの底面部外表面に傷が付くのを防止することができる。
従って、コーナー治具18に支持されたワークWのコーナー部は、隙間の無い状態でコーナー治具18と左右のクランプ34とによりクランプされることになる。
そして、ワークWのコーナー部がコーナー治具18及び左右のクランプ34によりクランプされたら、自動運転スイッチ8をONの状態にする。
そうすると、トーチユニット4が作動し、溶接用トーチ53のタングステン電極棒先端とスタートタブ57との間にアークを発生させる。アークが安定したら、この状態で溶接用トーチ53がワークWのコーナー部に沿って移動し、溶接用トーチ53によりワークWのコーナー部を共付け溶接する。
このとき、ワークWのコーナー部が隙間の無い状態でクランプされて溶接されているため、ワークWのコーナー部に穴あきやヘコミ等の溶接欠陥が発生すると言うことが無くなる。
また、ヘミング加工を施したワークWやフランジ部を形成したワークWであっても、ワークWのヘミング加工した部分やワークWのフランジ部がコーナー治具18の受け入れ溝18cに嵌り込むようにワークWをコーナー治具18にセットしているため、ワークWのコーナー部内面がコーナー治具18の山形状の上面18aに面接触状態で当接することになり、左右のクランプ34によるクランプを良好且つ確実に行えることになり、ワークWのコーナー部を精密に溶接することができる。
ワークWのコーナー部の溶接が終了したら、トーチユニット4が溶接作業位置から待機位置へ後退すると共に、下治具ユニット2がクランプ位置から下降位置に下降した後、下治具ユニット2のコーナー治具18が後退位置から前進位置へ移動する。これにより、作業員は、コーナー治具18から取り外すことができる。
以下、同様にしてコーナー自動溶接装置によりワークWの残りの三つのコーナー部を順次溶接して行き、箱曲げしたワークWから箱状の製品を作製する。
尚、上記の実施形態においては、コーナー自動溶接装置を用いて箱曲げしたワークWのコーナー部を共付け溶接するようにしたが、他の実施形態においては、コーナー自動溶接装置により二枚の金属薄板を直角状に突き合せ、二枚の金属薄板のコーナー部を溶接しても良く、また、コーナー自動溶接装置により金属薄板を角筒状に曲げ加工し、角筒状の突き合せたコーナー部を溶接するようにしても良い。
また、上記の実施形態においては、押圧保持部材5を複数のローラー(複数のガイドローラー)から形成したが、他の実施形態においては、押圧保持部材5を一つのローラーで形成しても良く、或いは、ローラー以外のもので形成しても良い。即ち、押圧保持部材5は、コーナー治具18に支持されたワークWのコーナー部付近の底面部をコーナー治具18の先端面18に傷をつけることなく押圧保持することができれば、如何なる形状及び構造のものであっても良い。
更に、上記の実施形態においては、押圧保持部材5を右側のクランプ34の先端面に設けたが、押圧保持部材5を設ける位置は、上記の実施形態のものに限定されるものではなく、ワークWのコーナー部をコーナー治具18と左右のクランプ34とで上下方向から挟持固定する前に、ワークWのコーナー部付近の底面部をコーナー治具18の先端面18に押圧保持することができれば、如何なる位置であっても良い。例えば、押圧保持部材5を正面カバー27やクランプスライドベース27等に設けるようにしても良い。この場合、押圧保持部材5の位置は、左右のクランプ34の先端よりも下方位置にする。