JP6441182B2 - マスターバッチ及び消臭性樹脂組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
図1に示されるように、第1の実施形態の消臭性樹脂組成物は、樹脂1中にガラス質消臭剤2を練り込んだものである。ガラス質消臭剤2は、銅成分及び2〜7モル%のR´Oを含有すホウケイ酸ガラスまたは銅成分及び2〜10モル%のR´Oを含有するケイ酸塩ガラスからなり、D96=40μm以下の粉体であることが望ましい。
上記したホウケイ酸ガラスは、SiO2:46〜70モル%、B2O3+R2O(R:アルカリ金属):15〜50モル%、R´O(R´:アルカリ土類金属):2〜7モル%、Al2O3:0〜6%、CuO:0.01〜23モル%含有するガラスである。ここで、B2O3:5〜20モル%、R2O:10〜30モル%とすることができる。
SiO2は、ガラスの構造骨格を形成する主成分であり、その含有量は46〜70モル%、好ましくは、51〜63モル%、更に好ましくは53〜62モル%とする。46モル%未満の場合、ガラスの化学的耐久性が不十分となり、またガラスが失透しやすくなり好ましくない。更に、46モル%未満の場合、ガラスの耐水性が不十分となり、水分存在下(大気中の水分を含む)で銅イオンが溶出しやすくなる結果、触媒作用による消臭効果よりも、イオン溶出によって起こる硫化反応による消臭効果が強くなるため好ましくない。70モル%を超える場合、融点が上昇することにより、ガラスの溶融性が困難となる他、粘度上昇も起こるため好ましくない。
B2O3は、ガラスの溶解性、清澄性を向上させる成分であり、特定の組成においてはガラスの構造骨格を形成する成分ともなる。B2O3は、その含有量によって、ガラスの安定性を大きく左右するものであり、本願発明ではガラスの融剤としての意味合いが大きい。その含有量は、B2O3の揮発量を勘案して、5〜20モル%、好ましくは8〜17モル%、さらに好ましくは10〜17モル%とする。20モル%を超える場合、B2O3は溶融過程において揮発しやすく、組成制御が困難となるため好ましくない。
R2O(R=Li、Na、K)は、ガラスの構造骨格におけるSiとOの結合を切断して非架橋酸素を形成し、その結果、ガラスの粘性を低下させ、成形性や溶解性を向上させる成分であり、B2O3同様の融剤である。その含有量は、R2Oの一種もしくは二種以上を、多成分との含有比も考慮しつつ、合計10〜30モル%、好ましくは13〜22モル%、更に好ましくは13〜19モル%とする。30モル%を超える場合、ガラスの化学的耐久性が不十分となる。具体的には、ガラス剤と大気中の水分が反応してブルームと称される白化現象が引き起こされる。ブルームが発生することにより、悪臭ガスとの接触面積が減少するため望ましくない。
前記のように、B2O3とR2Oは、共に、融剤として使用される。B2O3とR2Oの合計含有量が、15〜50モル%、好ましくは21〜39モル%の範囲が、安全に消臭効果を示す領域となる。15モル%未満の場合、ガラスの溶融性が不十分となり、成形の際に失透が発生しやすくなるため好ましくない。50モル%を超えると、ガラスの耐水性が不十分となり、水分存在下(大気中の水分を含む)で銅イオンが溶出しやすくなる結果、触媒作用による消臭効果よりも、イオン溶出によって起こる硫化反応による消臭効果が強くなるため好ましくない。また、50モル%を超えると、溶融の際に分相を起こしやすく、それに伴いガラス剤の消臭効果が不十分となるため好ましくない。
R´O(R´=Mg、Ca、Sr、Ba)は、ガラスの化学的耐久性を向上させる成分である。その含有量は、R´O(R´=Mg、Ca、Sr、Ba)の一種もしくは二種以上を、合計2〜7モル%、更に好ましくは3〜6モル%とする。7モル%を超えると溶融時の粘性が高くなるとともに、ガラスが失透しやすくなるため好ましくない。なおR´Oはガラスの化学的耐久性を向上させるため、2モル%以上とする。
Al2O3は、ガラスの化学的耐久性を向上させ、結晶構造安定性に影響を与える成分である。また、Al2O3は、ガラスの分相を抑制しガラス剤の均質性を高める働きをする。粘性を上げること、添加によってガラス中の銅イオンの酸化還元状態に影響を与える可能性があることから、その含有量は、6モル%以下、好ましくは5.5モル%以下、最も好ましくは4.5モル%以下とする。
CuOは、触媒として機能して、硫黄系悪臭物質の分解反応を促進し、硫黄系悪臭物質の消臭効果を奏するものである。その含有量は、0.01〜23モル%、好ましくは1〜13モル%、さらに好ましくは4〜13モル%とする。23モル%を超えると未溶解物が残留しやすくなる他、急冷の際や加工時に金属銅が析出しやすくなるため好ましくない。金属銅の析出に伴いガラスに変色を生じるため、ガラスの変色が問題となる用途には適さない。また、金属銅として析出した場合、被毒が進行してしまう。これに対し、CuOをガラス成分として含ませれば被毒が進行し難く、触媒機能を長期間に亘って安定して発揮することができる。
上記成分以外にも、微量成分として、ZnO、SrO、BaO、TiO2、ZrO2、Nb2O5、P2O5、Cs2O、Rb2O、TeO2、BeO、GeO2、Bi2O3、La2O3、Y2O3、WO3、MoO3、またはFe2O3等も含めることができる。さらに、F、Cl、SO3、Sb2O3、SnO2、あるいはCe等を清澄剤として添加してもよい。
また本発明ではガラス質消臭剤2として、銅成分及び2〜10モル%のR´Oを含有するアルカリ−アルカリ土類−ケイ酸塩ガラスを用いることもできる。このガラスは、SiO2:50〜70モル%、R2O:10〜33モル%、R´O:2〜10モル%、Al2O3:0〜6%、CuO:0.01〜23モル%含有するガラスである。
以下に本発明の実施例を示す。なお、表中のn.d.は未検出を意味する。
得られたガラス質消臭剤を表2に示す条件でベース樹脂中に練り込み、消臭性樹脂組成物を成形した。この消臭性樹脂組成物を用いて、消臭効果の確認試験を行った。
表2の実験例1〜30の樹脂組成物により形成されたマスターバッチ(最終形状が約3φ、長さ約5mm)5gを1Lのテドラーバッグ1Lに悪臭成分と封入し、室温で、経過時間に伴う袋内の悪臭濃度を測定した。比較として、表3に示す溶解性ガラス1、2〜3からなるガラス質消臭剤を製造し、ポリエチレン中に含有率がそれぞれ1、10質量%となるように練り込み、同様のマスターバッチとした。なお、銅成分を含まないブランクは、実験例29、30に該当する。ナイロン6は透水性があり、水分存在下の効果を確認するためにテドラーバッグ内に蒸留水1mLを合わせて封入し、マスターバッチと接触させた。硫黄系悪臭は全てガスクロマトグラフで、低級脂肪酸はガス検知管で、加齢臭は高速液体クロマトグラフで測定した。各種硫黄系悪臭に対する消臭効果を表4に、各種低級脂肪酸と加齢臭(トランス−2−ノネナール)を表5に示した。その結果、表4に示すように、ブランクを除いて、メチルメルカプタン、硫化水素、エチルメルカプタン、ブチルメルカプタン、2-メルカプトエタノール、いずれの硫黄系悪臭に対しても消臭効果があることが確認された。また、表5に示すように、ブランク、溶解性ガラスを除いていずれの低級脂肪酸、加齢臭に対しても消臭効果があることが確認された。
表2の実験例31〜52の樹脂組成物により形成されたシート(10cm×10cm、厚み50μm)を1Lのテドラーバッグに悪臭成分と封入し、室温で、経過時間に伴う袋内の悪臭濃度をガスクロマトグラフで測定した。比較として、表3に示す溶解性ガラス2、3、4からなるガラス質消臭剤を製造し、ポリエチレン中に含有率が1質量%となるように練り込み、同様のシートとした。なお、銅成分を含まないブランクは、実験例47、50に該当する。ナイロン6は透水性があり、水分存在下の効果を確認するためにテドラーバッグ内に蒸留水1mLを合わせて封入し、シートと接触させた。その結果、表6に示すように、溶解性ガラスは消臭限界に達して収束することが確認された。ナイロン6は透水性があるため、内部の溶解性ガラスも効果を発現したと思われる。一部n.d.も確認されたが、さらに初期濃度が高いとき、収束するであろうことは容易に想定できる。これに対し、実験例31〜46は消臭総量が大きいことが確認された。溶解性ガラスは、露出量に応じて消臭限界が決定するのに対し、実験例は、触媒作用を示すため、少量でも露出すれば消臭総量が期待できる。実験例48、51は銅添加量が少ないため消臭スピードが緩やかだが、さらに時間経過の後、消臭総量が期待できる。しかし、ガラスは組成によって連続的に変化し、その効果も触媒反応から溶解性ガラスの吸着反応まで連続的に変化する。実験例49、52は、耐久性が低下した組成のため、溶解性ガラス同様の吸着反応の傾向が強くなり、消臭限界に達したことが確認された。
D50=4.2μmまで粉砕した表1の組成番号6からなるガラス1gとメチルメルカプタンを5Lのテドラーバッグに封入し、室温で、経過時間に伴う袋内のメチルメルカプタン、ジメチルジスルフィドをガスクロマトグラフで測定した。またブランクとして、ガラス質消臭剤なしで同様の操作を行った。なお、事前にガスクロマトグラフ質量分析計にて、袋内に存在するガス成分がこの二成分のみであることを確認していた。その結果、図3に示すように、本発明のガラス質消臭剤がメチルメルカプタンを分解し、ジメチルジスルフィドを生成する作用を示すことを確認した。ガラス質消臭剤の基本特性は、樹脂と混合しても、当然保持される。
D50=5.0μmまで粉砕した表1の組成番号6、9、表3の溶解性ガラス1からなるガラス200mgに対し、pH=7.4の0.1mоl・L−1のリン酸緩衝溶液200μLを添加した。そこに9.2mоl・L−1のDMPO(LABOTEC.製、LM−2110)10μLを添加し、シェイクした。DMPO添加時点から10秒後、1分後、5分後にシェイクをやめ、溶液のみをヘマトクリット管で採取し、ESR(日本電子株式会社製、FR−30、Xバンド)測定を実施した。また、ガラスを除いたものをブランクとした。全て、室温、蛍光灯下で実施した。当手法は、ラジカル測定の一般的手法であるスピントラップ法に該当し、DMPOがラジカルを補足するとスピンアダクトが生成する。この生成物(DMPO−OH)をESRで検出した。なお、検出値の単位は、基準物質Mn2+に対するピーク面積値比率(エリアシングル/エリアマンガン、S/M)である。その結果を表7に示す。組成番号6のガラスはDMPO−OHの生成が確認されたのに対し、組成番号9、溶解性ガラス1はブランクと同様にバックグラウンドの値を示しただけであった。本発明のガラス質消臭剤がラジカルを発生する可能性が高いことが確認された。
D50=4.2μmまで粉砕した表2の組成番号6からなるガラス0.1gとCuO試薬(平均粒径4μm)0.1gのそれぞれを1Lのテドラーバッグに封入し、室温で、経過時間に伴う袋内のメチルメルカプタン濃度をガスクロマトグラフで測定した。メチルメルカプタンの初期濃度は55ppmとし、繰返し10回まで実施した。また、ブランクとしてガラスなしで同様の操作を行った。その結果、表8に示すように、CuO試薬は、繰返しに伴い消臭効果が低減している。これは、一般的に知られるCuOの触媒劣化(硫黄吸着)である。それに対し、ガラスは消臭効果を維持しており、持続性が高いことが確認された。このメカニズム解明は課題が残るが、ガラス化することで触媒劣化が抑制されることが確認された。このときのガラス表面をXPS(アルバックファイ(株)製、PHI 5000 VersaProbe)で解析したところ、表9に示すように、確かに消臭後に硫黄の吸着がないことが確認された。ガラス質消臭剤の基本特性は、樹脂と混合しても、当然保持される。
2 ガラス質消臭剤
Claims (4)
- マスターバッチ用樹脂にガラス質消臭剤を含有させたマスターバッチであって、
このガラス質消臭剤は、銅成分及び2〜7モル%のR´O(R´=Mg、Ca、Sr、Ba)を含有するホウケイ酸ガラス、または銅成分及び2〜10モル%のR´Oを含有するケイ酸塩ガラスからなり、銅成分をガラス中に保持させたまま、ガラス中に保持された銅成分の触媒作用により、空気中の悪臭成分を分解する機能を有することを特徴とするマスターバッチ。 - ガラス質消臭剤の含有率を1〜30質量%としたことを特徴とする請求項1記載のマスターバッチ。
- ガラス質消臭剤が、D96=40μm以下の粉体であることを特徴とする請求項1または2記載のマスターバッチ。
- 請求項1〜3の何れかに記載のマスターバッチを用いた消臭性樹脂組成物の製造方法であって
このマスターバッチをベース樹脂に添加して、ガラス質消臭剤の含有率を0.1〜15質量%とすることを特徴とする消臭性樹脂組成物の製造方法。
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