JP6440929B2 - 細胞または組織のガラス化凍結保存用治具 - Google Patents

細胞または組織のガラス化凍結保存用治具 Download PDF

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Description

本発明は、生物の細胞または組織などを凍結保存する際に使用するガラス化凍結保存用治具に関する。
生物の細胞または組織の優れた保存技術は、様々な産業分野で求められている。例えば、牛の胚移植技術に用いられる胚は、受胚牛の発情周期に合わせて移植が行われており、発情周期に胚の移植を合わせるために、胚を凍結保存し、発情周期に合わせて胚を融解して移植することが行われている。また、ヒトの不妊治療においては、母体から卵子または卵巣を採取後、移植に適したタイミングに合わせるために凍結保存しておき、移植時に融解して用いることがなされている。
一般に、生体内から採取された細胞または組織は、たとえ培養液の中であっても、次第に活性が失われていくことから、生体外での細胞または組織の長期間の培養は好ましくない。そのため、生体活性を失わせずに長期間保存する技術が重要である。優れた保存技術によって、採取された細胞または組織をより正確に分析することが可能になる。また優れた保存技術によって、より高い生体活性を保ったまま移植に用いることが可能となり、移植後の生着率が向上することが望める。さらには、生体外で培養した培養皮膚や生体外で構築したいわゆる細胞シートのような移植のための人工の組織を、順次生産して保存しておき、必要な時に使用することも可能となり、医療の面だけではなく、産業面においても大きなメリットが期待できる。
細胞または組織の保存方法として、例えば緩慢凍結法が知られている。この方法では、まず、例えばリン酸緩衝生理食塩水等の生理的溶液に耐凍剤を含有させることで得られた保存液に、細胞または組織を浸漬する。該耐凍剤としては、グリセロール、エチレングリコール等の化合物が用いられる。該保存液に、細胞または組織を浸漬後、比較的遅い冷却速度(例えば0.3〜0.5℃/分の速度)で、−30〜−35℃まで冷却することにより、細胞内外または組織内外の溶液が十分に冷却され、粘性が高くなる。このような状態で、該保存液中の細胞または組織をさらに液体窒素の温度(−196℃)まで冷却すると、細胞内または組織内とその外の周囲の微少溶液がいずれも非結晶のまま固体となるガラス化が起こる。ガラス化により、細胞内外または組織内外が固化すると、実質的に分子の動きがなくなるので、ガラス化された細胞または組織を液体窒素中に保存することで、半永久的に保存できると考えられる。
しかしながら、前記緩慢凍結法では、比較的遅い冷却速度で冷却する必要があるために、凍結保存のための操作に時間を要する。また、温度制御をするための装置または治具を必要とする問題がある。加えて、前記緩慢凍結法では、細胞外または組織外の保存液中に氷晶が形成されるので、細胞または組織が該氷晶により物理的に損害を受けるおそれがある。
前記緩慢凍結法での問題点を解決するための方法として、ガラス化保存法が提案されている。ガラス化保存法とは、グリセロールやエチレングリコール、DMSO(ジメチルスルホキシド)などの耐凍剤を多量に含む水溶液の凝固点降下により、氷点下でも氷晶ができにくくなる原理を用いたものである。この水溶液を急速に液体窒素中で冷却させると氷晶を生じさせないまま固体化させることができる。このように固体化することをガラス化凍結という。また、耐凍剤を多量に含む水溶液をガラス化液という。
前記ガラス化法の具体的な操作としては、ガラス化液に細胞または組織を浸漬させ、その後、液体窒素の温度(−196℃)で冷却する。このような簡便かつ迅速な工程であるために、凍結保存のための操作に時間を必要としない他、温度制御をするための装置または治具を必要としない。
ガラス化保存法を用いると、細胞内外のいずれにも氷晶が生じないために凍結時及び融解時の細胞への物理的障害(凍害)を回避することができるが、ガラス化液に含まれる高濃度の耐凍剤には化学的毒性があり、細胞の凍結保存時にはガラス化液が少ない方が好ましく、細胞がガラス化液に暴露される時間つまりは凍結までの時間が短時間であることが好ましい。さらには、解凍後ただちにガラス化液を希釈する必要がある。
これらガラス化保存法を用いた細胞または組織の凍結保存については、様々な方法で、様々な種類の細胞または組織を用いた例が示されている。例えば、特許文献1では、動物またはヒトの生殖細胞または体細胞へのガラス化保存法の適用が凍結保存、融解後の生存率の点で、極めて有用であることが示されている。
ガラス化保存法は、主にヒトの生殖細胞を用いて発展してきた技術であるが、最近では、iPS細胞やES細胞への応用も広く検討されている。また、非特許文献1では、ショウジョウバエの胚の保存にガラス化保存法が有効であったことが示されている。さらに、非特許文献2では、植物培養細胞や組織の保存において、ガラス化保存法が有効であることが示されている。このように、ガラス化法は広く様々な種の細胞や組織で有用であることが知られている。
ガラス化保存法をより効率的に行うための治具や操作方法としては、特許文献2、特許文献3などでは、ストローにガラス化液を充満させた中で卵子または胚をガラス化凍結保存させ、解凍時に素早く希釈液と接触させて再生率を向上させる試みがなされている。
特許文献4では卵子または胚の周囲に付着した余分なガラス化液を濾紙などの吸収体により吸収させることにより、優れた生存性で凍結保存させる方法を提案している。
特許文献5、特許文献6では、人の不妊治療分野で使用されているいわゆるクライオトップ法という方法で、卵付着保持用ストリップとして短冊状の可撓性かつ無色透明なフィルムを使用し、該フィルム上に極少量のガラス化液と共に卵子または胚を顕微鏡下で付着させ、凍結保存する方法が提案されている。
特許文献7では、金属性の板状部材であって、冷却媒体が侵入可能な多数の穴を有した、採取した組織片をガラス化凍結保存するための組織片凍結保存用プレートを用いて凍結保存する方法が提案されている。
特許第3044323号公報 特開平5−176946号公報 特開平10−248860号公報 特開2005−40073号公報 特開2002−315573号公報 特開2006−271395号公報 特開2008−222640号公報
Steponkus et al.,Nature 345:170−172(1990) 酒井昭,低温生物工学会誌 42:61−68(1996)
特許文献4では、卵子または胚の周囲に付着した余分なガラス化液を濾紙などの吸収体に吸収させることにより、優れた生存性でこれらの生殖細胞を凍結保存する方法が提案されている。しかしながら、この方法を細胞同士が重なり合うような細胞の集団や組織のガラス化保存に用いる場合には、十分な冷却速度が得られない問題がある。
特許文献5、特許文献6に提案されている方法では、無色透明な平坦フィルム上に極少量(0.1μL)のガラス化液と共に卵子または胚を滴下付着させることにより、卵子または胚を凍結保存できる。しかし、実際には、極少量のガラス液と共に細胞を滴下することは非常に困難であり、熟練を要する。また、多数の細胞からなる細胞集団や組織のガラス化に、該凍結保存用治具を用いる場合には、細胞または組織に付着したガラス化液も多くなることから、余分なガラス化液が卵子または胚の周囲に残り、ガラス化液自体の毒性のために、卵子または胚の生存性を低下させるおそれがある。さらに、特許文献4における問題点と同様に、十分な冷却速度が得られないという問題もある。
特許文献7に提案されている方法では、熱伝導性に優れた金属板を用い、さらに冷却媒体である液体窒素が侵入可能な多数の孔を有することにより、卵巣組織の保存において迅速な冷却速度を得るための工夫がなされている。しかしながら、特許文献5や特許文献6における問題と同様に、余分なガラス化液が組織や組織を構成する細胞の周囲に残り、ガラス化液の毒性のために、組織や組織を構成する細胞の生存性が低下するおそれがある。
本発明は、細胞または組織の凍結保存作業を容易にかつ確実に行うことが可能なガラス化凍結保存用治具を提供することを主な課題とする。より具体的には、細胞または組織と共にガラス化液を滴下する時に、余分なガラス化液を吸収するための優れた吸収性能を備え、また凍結解凍時であっても細胞や組織を確実に保持することが可能なガラス化凍結保存用治具を提供する。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下の構成を有する細胞または組織のガラス化凍結保存用治具によって、上記課題を解決できることを見い出した。
(1)複数の穴あるいは内部に空洞部分を有さない金属製支持体上にガラス化液吸収体を有し、該ガラス化液吸収体が、細胞または組織をガラス化液と共に付着させる面とは垂直な方向において、金属製支持体に近い方から接着層およびガラス化液吸収層をこの順に有し、該接着層が水溶性接着物質、酢酸ビニル系接着物質、アクリル系接着物質、エポキシ系接着物質、ウレタン系接着物質、ホットメルト接着物質、エラストマー系接着物質、瞬間接着物質、シリコーン系接着物質、ニトロセルロース系接着物質、ニトリルゴム系接着物質、スチレン−ブタジエン系接着物質、ユリア樹脂系接着物質、スチレン系樹脂接着物質、フェノール樹脂系接着物質、光硬化性接着物質から選ばれる少なくとも一種類の接着物質を含有する層である、細胞または組織のガラス化凍結保存用治具。
本発明により、細胞または組織と共にガラス化液を滴下する時に、余分なガラス化液を吸収するための優れた吸収性能を備え、また凍結解凍時であっても細胞や組織を確実に保持することが可能なガラス化凍結保存用治具を提供することができる。
図1は、細胞または組織のガラス化凍結保存用治具の一例を示す全体図である。 図2は、図1中のガラス化液吸収体の拡大図である。 図3は、複数の細胞または組織を1つの当該ガラス化凍結保存用治具で凍結保存させる場合に用いるガラス化液吸収体の一例を示す概略図である。 図4は、複数の細胞または組織を1つの当該ガラス化凍結保存用治具で凍結保存させる場合に用いるガラス化液吸収体の別の一例を示す概略図である。 図5は、ガラス化液吸収層を金属製支持体の両面に配したガラス化液吸収体の概略図である。 図6は、金属製支持体の一部に空孔構造部を設けたガラス化液吸収体の概略図である。 図7は、図6に図示したガラス化吸収体において、空孔構造部を含む領域で、ガラス化液吸収層と接着層が接する面に対して垂直な方向の切断面構造を示す概略図である。 図8は、図6に図示したガラス化液吸収体をガラス化液吸収層と反対側の金属製支持体側から見た場合の概略図である。
本発明のガラス化凍結保存用治具は、生物の細胞または組織を凍結保存する際に用いられるものである。本明細書中で細胞とは、単一の細胞のみならず、複数の細胞からなる細胞集団を含むものである。複数の細胞からなる細胞集団とは単一の種類の細胞から構成される細胞集団でも良いし、複数の種類の細胞から構成される細胞集団でも良い。また、組織とは、単一の種類の細胞から構成される組織でも良いし、複数の種類の細胞から構成される組織でも良く、細胞以外に細胞外マトリックスのような非細胞性の物質を含むものでも良い。本発明のガラス化凍結保存用治具は、好ましくは、ガラス化液吸収体に細胞または組織をガラス化液と共に付着させて、細胞または組織が付着した治具を液体窒素等の冷却溶媒に浸漬し凍結させるためのものである。上記ガラス化液吸収体を有することにより、細胞または組織をガラス化液と共に容易に保持することができ、凍結解凍時であっても細胞や組織を確実に保持でき、さらに細胞または組織の液体窒素への浸漬作業も容易に行うことができる。本発明のガラス化凍結保存用治具は、細胞または組織凍結保存用具、細胞または組織ガラス化保存用具と言い換えることができる。
本発明のガラス化凍結保存用治具は、該ガラス化液吸収体が余分なガラス化液を吸収するので、細胞または組織と共にガラス化液を滴下付着させる量が多くても安定した細胞または組織の生存性が達成できる。また、凍結解凍時であっても細胞や組織を確実に保持でき、さらにそのように操作された細胞または組織は極少量のガラス化液に覆われており、凍結操作する場合でも速やかに凍結状態にすることができる。更には、細胞または組織の周辺に付着したガラス化液が極少量であることから、凍結保存した細胞または組織を解凍後に、ただちにガラス化液を希釈することができる。
以下に、本発明のガラス化凍結保存用治具の構成を説明する。
本発明のガラス化凍結保存用治具は、金属製支持体上にガラス化液吸収体を有し、該ガラス化液吸収体は金属製支持体に近い方から、接着層及びガラス化液吸収層をこの順に有する。
本発明のガラス化凍結保存用治具が有する金属製支持体としては、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、金、金合金、銀、銀合金、鉄、ステンレスなどの金属製支持体を用いることができる。金属製支持体の厚さは10μm〜50mmであることが好ましい。金属製支持体の表面は、接着層との接着性を向上させる目的から、化学的または電気的に易接着処理されていても良いし、表面が粗面化されていてもよい。また、同様の目的のために、下塗り層を設けてもよい。金属製支持体は、冷却溶媒の侵入による冷却効率の向上や軽量化によるハンドリング性の向上を目的として、複数の穴や内部の空洞部分を有していても良い。金属製の支持体は、熱伝導率に優れるために、冷却効率が向上するだけでなく、蓄温性も高いため、ガラス化凍結後に低温環境を保つ際にも有効である。例えば、細胞または組織を凍結保存後、これを取り出し凍結融解液に浸漬する操作において、不測の事態のために凍結保存容器から取り出して、しばらく放置した場合においても、ガラス化凍結保存用治具上で一定時間低温を保つことが可能であり、細胞または組織の生存性を高めることが期待できる。
本発明のガラス化液吸収体が有する接着層としては、例えば、ポリビニルアルコール、ヒドロキシセルロース、ポリビニルピロリドン、澱粉糊のような水溶性接着物質、酢酸ビニル系接着物質、アクリル系接着物質、エポキシ系接着物質、ウレタン系接着物質、ホットメルト接着物質、エラストマー系接着物質、シアノアクリル系に代表される瞬間接着物質、シリコーン系接着物質、ニトロセルロース系接着物質、ニトリルゴム系接着物質、スチレン−ブタジエン系接着物質、ユリア樹脂系接着物質、スチレン系樹脂接着物質、フェノール樹脂系接着物質、光硬化性接着物質などの接着物質を含有する層が好ましく利用でき、一種類の接着物質を用いてもよいし、複数種類の接着物質を用いてもよい。
上記した接着層は、接着性の観点から、接着層の一部がガラス化液吸収層にある程度入り込むことが好ましいが、多量に入り込むとガラス化液吸収層の吸収性能を損なう場合がある。接着層の固形分量は、0.3〜50g/mの範囲が好ましく、更に0.5〜10g/mの範囲がより好ましい。
また、該接着層はガラス化液吸収層の一部として積極的に使用することもできる。このような観点から、該接着層に、ポリビニルアルコール、ヒドロキシセルロース、ポリビニルピロリドン、澱粉糊のような水溶性接着物質を含有させることが好ましい。さらに、溶解した成分及び一部遊離した成分の細胞または組織への毒性の観点から、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンを含有させることが好ましい。また、接着層には、各種マット化剤や界面活性剤、pH調整剤等を含有させることができる。
本発明のガラス化液吸収体が有するガラス化液吸収層としては、紙または不織布を好ましく用いることができる。紙または不織布の主要構成成分は繊維であり、毛細管現象によりガラス化液を素早く吸収することができる。また、繊維間の空隙にガラス化液を多く保持することができるため好ましい。
ガラス化液吸収層が紙の場合、紙を構成するパルプ繊維としては、広葉樹、針葉樹のいずれから製造されたパルプ繊維が挙げられる。パルプ繊維は、未漂白であってもよく、漂白されたものでもよいが、漂白されたバージンパルプ繊維が好ましく用いられる。またガラス化液吸収層として用いる紙の白色度は60%以上が好ましく、更には70%以上が好適である。白色度がこのような範囲であると、付着した細胞または組織の確認が容易であるため好ましい。このような白色度の紙は該バージンパルプ以外でも、漂白されたケナフなどの非木材系パルプ繊維でも使用することができる。また、雑分が多い再生紙用パルプ繊維は雑分が細胞または組織を構成する細胞の活性や生存性に影響を及ぼす可能性があるが、再生紙用パルプ繊維であっても雑分をしっかりと除き、白色度70%以上にすれば好適に使用できる。本発明においては、以上に挙げた各種パルプ繊維を混合して使用することもできる。なおパルプ繊維の白色度はJIS P8123を用いて測定することができる。
本発明においてガラス化液吸収層が紙の場合、該ガラス化液吸収層はバインダーなどの結着剤成分の紙全体に占める割合が10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以下であり、特に好ましくは3質量%以下である。通常の紙等には筆記性などを向上させるために5〜20質量%程の無機顔料が含まれており、更に様々な製紙用薬品が入っている。無機顔料の紙全体に占める割合は5質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは3質量%以下である。また製紙用薬品の中でも例えば蛍光増白剤や染料、カチオン系のサイズ剤などには細胞または組織を構成する細胞の活性や生存性に影響を与えると思われるものがあるため、これら成分もまた紙全体に占める割合を1質量%以下とすることが好ましい。
本発明におけるガラス化液吸収層が不織布の場合、バインダーなどの結着剤成分の不織布全体に占める割合が20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10質量%以下であり、特に好ましくは5質量%以下である。
本発明に用いる不織布を更に詳細に説明する。前記した紙と同様に、不織布も好適に使用される繊維がある。これら好適に使用される繊維として、セルロース繊維、セルロース繊維からの再生繊維であるレーヨン繊維やキュプラ繊維、更にはセルロース繊維からの半合成繊維であるアセテート繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ビニリデン繊維、ポリウレタン繊維、ビニロン繊維、ガラス繊維、絹繊維などが挙げられる。その中でも、吸収性能の観点から、繊維としてセルロース繊維、セルロース繊維からの再生繊維であるレーヨン繊維やキュプラ繊維、更にはセルロース繊維からの半合成繊維であるアセテート繊維、ビニロン繊維、ガラス繊維が更に好適に用いられる。
本発明におけるガラス化液吸収層が不織布の場合、前記した好適な繊維を各種混合した不織布も用いることができる。さらに、湿式抄紙法の漉き合せ技術を用いて、異なる繊維構成の不織布を2層構成としたものや、接着剤などで貼り合わせ加工した2層構成品を用いることができる。
次に本発明に用いる不織布の好適な製造方法について説明する。不織布は紙と異なり様々な製造方法があるが、例えば、以下の製造方法が好適に用いられる。不織布の製造には繊維を並べる工程と繊維同士を絡ませたり、結着させたりする工程の大きく分けて2工程ある。繊維を並べる方法としては、湿式法、乾式法があり、その他樹脂ペレットから直接繊維を製造し、同時に結着させるスパンボンド法、メルトブロー法がある。湿式法は繊維を水分散させた後、紙の抄紙工程と同様に漉き上げて並んだ繊維を絡ませたり、結着させたりする方法としてサーマルボンド方式、ケミカルボンド方式、水流交絡法などがある。また、乾式法は繊維をカードと呼ばれる機械で並べた後、サーマルボンド方式、ケミカルボンド方式、水流交絡法、ニードルパンチ法で繊維を絡ませ、結着させて不織布を製造する。これらのいずれの方法で製造された不織布も、本発明において用いることができる。
これら製造方法の中でも、スパンボンド法、メルトブロー法で製造された不織布、更には湿式法または乾式法で繊維を並べた後、水流交絡法またはニードルパンチ法で製造された不織布が好適に使用できる。これら製造方法はバインダーなしで繊維同士を結着することができ、100%繊維だけの不織布が製造できる。特に本発明において最も好適に使用される繊維である、セルロース繊維、セルロース繊維由来の繊維でセルロース再生繊維であるレーヨン繊維やキュプラ繊維、更にはセルロース繊維からの半合成繊維であるアセテート繊維を用いて製造する場合は湿式法、乾式法関わらず水流交絡法またはニードルパンチ法での製造方法が最も好適である。
本発明のガラス化液吸収層は、ガラス化液の吸収容量の観点から、厚みが、好ましくは10μm以上、より好ましくは50μm以上である。上限は1cm以下であることが好ましい。また、坪量が好ましくは10g/m以上、より好ましくは20g/m以上である。上限は、1kg/m以下であることが好ましい。凍結保存する細胞や組織に合わせて、このような範囲で厚みを調整することにより、ガラス化液吸収層の吸収容量を、滴下されるガラス化液の量に応じて容易に調整できる。
本発明のガラス化液吸収層は、ガラス化液の吸収性能と冷却速度の観点から、密度が、0.25g/cm以下であることが好ましい。この密度の範囲においては、ガラス化液吸収層が有する空隙の容積が高いために、ガラス化液吸収層の高い吸収性能が発揮される。
本発明のガラス化液吸収体において、ガラス化液吸収層が紙または不織布である場合、ガラス化凍結保存用治具上の細胞または組織を透過型顕微鏡を用いて観察するために、細胞または組織をガラス化液吸収層に付着させる部分において、金属製支持体と接着層が接する面に対して垂直な方向におけるガラス化液吸収層の下部に金属製支持体が存在しない空孔構造部を設けることができる。該ガラス化吸収層が、密度0.5g/cm以下かつ坪量100g/m以下の範囲においてはガラス化液付着時にある程度の全光線透過率が得られることから、該空孔構造部においては顕微鏡光源から照射される光の透過が可能であり、ガラス化凍結保存用治具上の細胞または組織の視認性が向上する。
本発明のガラス化液吸収層の面積は、細胞または組織と共に滴下されるガラス化液の滴下量等に応じて適宜設定すればよく特に限定されないが、例えば、40〜40000mmとすることがより好ましい。
以上、本発明におけるガラス化液吸収体を説明してきた。以下にこれらを用いたガラス化凍結保存用治具の構成について説明する。本発明のガラス化凍結保存用治具は、支持体上に接着層とガラス化液吸収層をこの順に有するようなガラス化液吸収体であればよいが、該ガラス化液吸収体が把持部に接続されていてもよい。把持部を有すると、凍結時の作業性が良好であるため、好ましい。
図1は本発明における細胞または組織のガラス化凍結保存用治具の一例を示す全体図である。図1においてガラス化凍結保存用治具5は、把持部1とガラス化液吸収体2から構成される。把持部1は耐液体窒素素材であることが好ましい。このような素材としては、例えばアルミニウム、鉄、銅、ステンレス合金などの各種金属、ABS樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエレン樹脂、フッ素系樹脂や各種エンジニアプラスチック、更にはガラスなどを好適に用いることができる。また基本的にガラス化液吸収体2はハンドリング上、短冊状またはシート状であることが好ましい。
本発明におけるガラス化液吸収体の一例を、図2に示す。図2は、図1中のガラス化液吸収体の拡大図である。図2のガラス化液吸収体2aは金属製支持体4上にガラス化液吸収層3を有する。なお、接着層は図示していない。図2に示すガラス化液吸収体2aは、ガラス化液吸収体の全面にガラス化液吸収層3を有する形態の一例である。
図1の把持部1とガラス化液吸収体2の接続方法について説明する。把持部1が樹脂の場合、例えば、成形加工する時にインサート成形によりガラス化液吸収体2を把持部1に接続することができる。更に、把持部1に図示しないガラス化液吸収体挿入部を作製して接着剤にてガラス化液吸収体2を接続することができる。接着剤は様々なものが使用できるが、低温に強いシリコーン系やフッ素系の接着剤が好適に用いることができる。
本発明における細胞または組織のガラス化液保存用治具で細胞または組織を長期凍結保存する場合、図1に示す治具本体に安全のため、外界と遮断するためにキャップを被せることも可能である。更に、通常液体窒素は滅菌されておらず、直接液体窒素に接触させて凍結させる場合、ガラス化液保存用治具が滅菌されていても滅菌状態を保証できない場合がある。よって凍結前に細胞または組織を付着させたガラス化液吸収体にキャップをして、直接液体窒素に接触させないで凍結させることがある。また、EUなど海外先進国では前記の様に液体窒素に直接接触させない凍結方法が主流である。このような理由からキャップは耐液体窒素性のある素材である各種金属、各種樹脂、ガラス、セラミックなどで作製することが好ましい。形状としては、鉛筆用のキャップや円柱状のストローキャップなどガラス化液吸収体と接触せず、外界と遮断できるような形状ならどのような形状でもよい。
図3〜6に、本発明におけるガラス化液吸収体の別の態様の例を示す。図1に示す細胞または組織のガラス化凍結保存用治具において、ガラス化液吸収体を図3〜6に示すものとすることもできる。なお、図3〜6においても図2と同様、接着層は図示していない。図3は、複数の細胞または組織を1つの当該ガラス化凍結保存用治具で凍結保存させる場合に用いるガラス化液吸収体の一例を示す概略図である。また図4は複数の細胞、または組織を1つの当該ガラス化凍結保存用治具で凍結保存させる場合に用いるガラス化液吸収体の別の一例を示す概略図である。図3及び図4ではガラス化液吸収層3が支持体4上に、不連続であって複数が配置されている。
前述した図2のようにガラス化液吸収層3が連続した形状である場合、複数の細胞または組織をガラス化液吸収層3に付着させようとすると、ガラス化液はガラス化液吸収層で横方向と厚み方向に広がるため、例えば2つ目の細胞または組織をガラス化液吸収層3に付着させた場合、ガラス化液の吸収性は低下する場合がある。しかし、図3及び図4のようにガラス化液吸収層3が支持体4上に、不連続で複数設けられているとその様な心配がなく、ガラス化液と共に細胞または組織を各ガラス化液吸収層3に1つずつ確実に付着させることができる。図3及び図4では、一例として、升目状のガラス化液吸収層3を複数配置した。図3及び図4に示すガラス化液吸収体2b及びガラス化液吸収体2cは、金属製支持体上の一部にガラス化液吸収層を有するガラス化液吸収体の一例でもある。
図5は操作性、迅速性を向上させるために、ガラス化液吸収層を支持体の両面に配したガラス化液吸収体2dの概略図である。ガラス化液吸収層3を支持体4両面に配することにより、表裏を気にせず、直ぐに細胞または組織を素早く滴下付着させることができる。
図6は透過型顕微鏡での細胞の視認性能を付与するために、金属製支持体の一部に空孔構造部6を設けたガラス化液吸収体2eの概略図である。空孔構造部6を設けることにより、空孔構造部の上部のガラス化液吸収層3上の細胞または組織を透過型顕微鏡を用いて観察することができる。図7は、ガラス化液吸収体2eの空孔構造部6を含む部分の切断面構造の概略図である。図8は、ガラス化液吸収体2eをガラス化液吸収層と反対側の金属製支持体4側から見た概略図である。
本発明のガラス化凍結保存用治具は、例えば、卵子または胚におけるクライオトップ法と同様の操作で細胞または組織を凍結保存する際に好適である。本発明のガラス化凍結保存用治具を用いると、細胞または組織の凍結時及び凍結融解時に細胞外のガラス化液による損傷を受けにくく、細胞または組織を優れた生存率で凍結保存することができる。
本発明のガラス化凍結保存用治具を用いて細胞または組織を凍結保存する方法は特に限定されず、例えば、まずガラス化液に浸漬した細胞または組織をガラス化液と共にガラス化液吸収体上のガラス化液吸収層に滴下し、該細胞または組織の周囲に付着しているガラス化液をガラス化液吸収層に吸収させる。次いで、前記細胞または組織をガラス化液吸収体上に保持させたまま液体窒素等の中に浸漬することにより、細胞を凍結することができる。ガラス化液は、通常の細胞の凍結のために使用されるものを使用でき、例えば、グリセロールやエチレングリコール、DMSO(ジメチルスルホキシド)などの各種耐凍剤を含有する水溶液を使用できる。
本発明のガラス化凍結保存用治具を用いて凍結保存することができる細胞として、例えば、哺乳類(例えば、人(ヒト)、牛、豚、馬、ウサギ、ラット、マウス等)の卵子または胚、精子等の生殖細胞、iPS細胞、ES細胞が挙げられる。また、初代培養細胞、継代培養細胞、及び細胞株細胞等の培養細胞が挙げられる。また、細胞は、一または複数の実施形態において、繊維芽細胞、膵ガン・肝ガン細胞等のガン由来細胞、上皮細胞、血管内皮細胞、リンパ管内皮細胞、神経細胞、軟骨細胞、組織幹細胞、胚性幹細胞、及び免疫細胞等の接着性細胞が挙げられる。さらに、凍結保存することができる組織として、同種または異種の細胞からなる組織、例えば、卵巣、皮膚、角膜上皮、歯根膜、心筋等の組織が挙げられる。本発明は、特にシート状構造を有する組織のガラス化凍結保存に好適である。本発明のガラス化凍結保存用治具は、直接生体から採取した組織だけでなく、例えば、生体外で培養し増殖させた培養皮膚、生体外で構築したいわゆる細胞シート、特開2012−205516号公報で提案されている三次元構造を有する組織モデルのような人工の組織のガラス化凍結保存についても、好適に用いることができる。
以下に本発明を実施例によりさらに詳細に示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1
<ガラス化液吸収体の作製>
厚さ300μmの銅製支持体に、接着層として、(株)クラレ製 PVA617(ケン化度95〜96mol%、重合度1700)の5質量%水溶液を乾燥時質量4g/mで塗布した。当該塗布層が乾燥する前に、ガラス化液吸収層として、セルロース(キュプラ)繊維で構成された旭化成せんい(株)製の不織布であるBemliese(登録商標) SA14G(厚み70μm、坪量14g/m、密度0.20g/cm)を当該塗布層に重ねて乾燥させた。以上のようにして、金属支持体上に接着層とガラス化液吸収層をこの順に有する実施例1のガラス化液吸収体を作製した。
実施例2
<ガラス化液吸収体の作製>
ガラス化液吸収層として、セルロース(キュプラ)繊維で構成された旭化成せんい(株)製の不織布であるBemliese(登録商標) SA28G(厚み130μm、坪量28g/m、密度0.22g/cm)を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2のガラス化液吸収体を作製した。
実施例3
<ガラス化液吸収体の作製>
ガラス化液吸収層として、セルロース(キュプラ)繊維で構成された旭化成せんい(株)製の不織布であるBemliese(登録商標) SA30G(厚み250μm、坪量30g/m、密度0.12g/cm)用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例3のガラス化液吸収体を作製した。
実施例4
<ガラス化液吸収体の作製>
ガラス化液吸収層として、セルロース(キュプラ)繊維で構成された旭化成せんい(株)製の不織布であるBemliese(登録商標) SA50U(厚み500μm、坪量50g/m、密度0.10g/cm)用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例4のガラス化液吸収体を作製した。
実施例5
<ガラス化液吸収体の作製>
ガラス化液吸収層として、セルロース(キュプラ)繊維で構成された旭化成せんい(株)製の不織布であるBemliese(登録商標) SE103(厚み540μm、坪量100g/m、密度0.19g/cm)用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例5のガラス化液吸収体を作製した。
実施例6
<ガラス化液吸収体の作製>
ガラス化液吸収層として、紙である大王製紙(株)製 エリエール(登録商標) プロワイプ ソフトマイクロワイパーS220(厚み160μm、坪量22g/m、密度0.14g/cm)を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例6のガラス化液吸収体を作製した。
実施例7
<ガラス化液吸収体の作製>
ガラス化液吸収層として、ビニロン繊維で構成された(株)クラレ製の不織布であるBFNNO.1(厚み50μm、坪量12g/m、密度0.24g/cm)を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例7のガラス化液吸収体を作製した。
実施例8
<ガラス化液吸収体の作製>
ガラス化液吸収層として、セルロース(レーヨン)繊維で構成された三木特種製紙(株)製の不織布であるD−17(厚み70μm、坪量17g/m、密度0.24g/cm)を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例8のガラス化液吸収体を作製した。
実施例9
<ガラス化液吸収体の作製>
ガラス化液吸収層として、PET繊維とセルロース(レーヨン)繊維の混抄繊維で構成された三木特種製紙(株)製の不織布であるS−17(厚み70μm、坪量17g/m、密度0.24g/cm)を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例9のガラス化液吸収体を作製した。
実施例10
<ガラス化液吸収体の作製>
厚さ300μmの銅製支持体にかわって、厚さ300μmのステンレス製支持体を用いた以外は実施例3と同様にして、実施例10のガラス化液吸収体を作製した。
実施例11
<ガラス化液吸収体の作製>
厚さ300μmの銅製支持体にかわって、厚さ300μmのアルミニウム製支持体を用いた以外は実施例3と同様にして、実施例11のガラス化液吸収体を作製した。
比較例1
<ガラス化液吸収体の作製>
無色透明なフィルムである透明PETフィルム(厚さ250μm)をそのまま用いて比較例1のガラス化液吸収体とした。
比較例2
<ガラス化液吸収体の作製>
濾紙であるアドバンテック製濾紙No.5C(厚み210μm、坪量120g/m、密度0.57g/cm)をそのまま用いて比較例2のガラス化吸収体とした。
比較例3
<ガラス化液吸収体の作製>
濾紙であるアドバンテック製濾紙No.2(厚み450μm、坪量124g/m、密度0.28g/cm)をそのまま用いて比較例3のガラス化吸収体とした。
比較例4
<ガラス化液吸収体の作製>
濾紙であるアドバンテック製濾紙No.7(厚み170μm、坪量90g/m、密度0.53g/cm)をそのまま用いて比較例4のガラス化吸収体とした。
比較例5
<ガラス化液吸収体の作製>
セルロース(キュプラ)繊維で構成された旭化成せんい(株)製の不織布であるBemliese(登録商標) SA28G(厚み130μm、坪量28g/m、密度0.22g/cm)をそのまま用いて比較例5のガラス化液吸収体とした。
比較例6
<ガラス化液吸収体の作製>
セルロース(キュプラ)繊維で構成された旭化成せんい(株)製の不織布であるBemliese(登録商標) SA28G(厚み130μm、坪量28g/m、密度0.22g/cm)を厚さ300μmの銅製支持体上に置き、これを比較例6のガラス化液吸収体とした(ガラス化液吸収層と支持体は接着されていない)。
比較例7
<ガラス化液吸収体の作製>
厚さ300μmの銅製金属板をそのまま用いて比較例7のガラス化液吸収体とした。
<ガラス化液の吸収性の評価1>
実施例1〜11、及び比較例1〜7の各ガラス化液吸収体を幅5mm、長さ50mmの短冊状にカットした。ガラス化液としては、シグマアルドリッチ社製 修正TCM199培地に、20容積%血清、15容積%DMSO、15容積%エチレングリコール、0.2容積%スクロースが含まれる組成のものを用いた。ガラス化液吸収体の吸収速度を試験するために、上記組成のガラス化液を短冊状にカットしたガラス化液吸収体上に、マイクロピペットを用いて2μL滴下付着させた。滴下付着後、ガラス化液吸収体上に付着したガラス化液の液滴の様子を目視で確認し、吸収性を以下の基準で評価した。
ガラス化液の吸収性の評価1は、以下の基準で評価した。
◎:ガラス化液滴下付着後、10秒未満でガラス化液が全て吸収された。
○:ガラス化液滴下付着後、10秒未満でガラス化液がほぼ吸収された。
×:ガラス化液滴下付着後、ガラス化液の吸収に10秒以上を要した。または吸収されなかった。
<ガラス化液の吸収性の評価2>
実施例1〜11、及び比較例1〜7の各ガラス化液吸収体を50mm角にカットした。ガラス化液としては、シグマアルドリッチ社製 修正TCM199培地に、20容積%血清、15容積%DMSO、15容積%エチレングリコール、0.2容積%スクロースが含まれる組成のものを用いた。ガラス化液吸収体の吸収容量を試験するために、ガラス化液を50mm角にカットしたガラス化液吸収体上に、マイクロピペットを用いて500μL滴下付着させた。滴下付着後、10秒後に、ガラス化液吸収体をピンセットでつかみ、裏表反転させた場合に、ガラス化液吸収体に保持されたガラス化液が液だれするかを観察し、以下の基準で評価した。
ガラス化液の吸収性の評価2は以下の基準で評価した。
◎:ガラス化液がガラス化液吸収層全体に均一に浸透し、液だれ等が全く見られない。
○:ガラス化液がガラス化液吸収層全体にほぼ均一に浸透し、わずかに液だれが見られる。
×:裏表反転させた場合に、明確な液だれが見られる。
<冷却溶媒への浸漬評価>
実施例1〜11、及び比較例1〜7の各ガラス化液吸収体を幅5mm、長さ50mmの短冊状にカットした。ガラス化液としては、シグマアルドリッチ社製 修正TCM199培地に、20容積%血清、15容積%DMSO、15容積%エチレングリコール、0.2容積%スクロースが含まれる組成のものを用いた。上記組成のガラス化液を短冊状にカットしたガラス化液吸収体上に、マイクロピペットを用いて2μL滴下付着させた。ガラス化液を滴化してから10秒後、短冊状のガラス化液吸収体の一端をピンセットで把持し、液体窒素に30秒間浸漬した。浸漬後、ガラス化液吸収体を取り出し、室温環境下に置き、液体窒素浸漬前と比較してガラス化液吸収体の変形や破損が無いかを目視で観察し、実使用上の耐久性を以下の基準で評価した。
冷却溶媒への浸漬評価は以下の基準で評価した。
○:ガラス化液吸収体の変形や破損が、一切認められない。
×:ガラス化液吸収体に変形または破損が認められ、実用に耐え得ない。
<視認性の評価>
透過型顕微鏡でのガラス化液吸収層上の細胞の視認性を確認するために、金属製支持体を有する実施例1〜11及び比較例6のガラス化液吸収体において、金属製支持体の一部に空孔構造部を設けた図6に示す実施形態で、ガラス化液吸収体を作製した。評価においては、該空孔構造部の上部に位置するガラス化液吸収層上に、疑似細胞として直径0.1mmのガラスビーズをガラス化液と共に滴下付着させ、透過型顕微鏡(オリンパス(株)製、SZH−121)にて、ガラス化液吸収層上の当該ガラスビーズが視認できるかどうかを以下の基準で評価した。ガラス化液としては、シグマアルドリッチ社製 修正TCM199培地に、20容積%血清、15容積%DMSO、15容積%エチレングリコール、0.2容積%スクロースが含まれる組成のものを用いた。なお、支持体を有さない比較例2〜5においては、ガラス化液吸収層上に滴下付着させたガラスビーズを、吸収層を有さない比較例1または7においては、支持体上に滴下付着させたガラスビーズを同透過型顕微鏡で観察し、評価を行った。
視認性の評価は以下の基準で評価した。
○:疑似細胞の形態が容易に確認できる。
×:疑似細胞の存在の確認が困難またはできない。
本発明の実施例1〜11のガラス化液吸収体は、いずれも優れたガラス化液吸収性能を示した。また、液体窒素に浸漬した場合においても、変形や破損は認められなかった。一方で、比較例1と比較例7のガラス化液吸収体は、ガラス化液吸収性能を持たず、余分なガラス化液による細胞または組織への毒性のリスクが懸念される。比較例2〜6のガラス化液吸収体は、ガラス化液吸収性能を有するが、ガラス化液滴下後に、液体窒素下で冷却すると、ガラス化液吸収層の繊維が吸水・凍結する過程において、ガラス化液吸収層の膨潤・収縮によるガラス化液吸収層の変形が認められた。このようなガラス化液吸収層の変形により、細胞が繊維の間隙に落ち込み、凍結解凍時の再融解処理に不具合が出たり、凍結保存時に冷却容器中で細胞がガラス化保存用治具上から落下してしまうおそれがある。そのため、実際の使用には耐え得ないものと判断された。実施例1〜11のガラス化液吸収体はガラス化液吸収層と金属製支持体との接着により、繊維の変形を防止し、実使用に耐え得るガラス化吸収体の作製が可能となることが分かる。さらには、比較例2〜5のガラス化液吸収体においては、ガラス化液吸収体の強度において自立支持できるものではないことから、ハンドリングが困難であった。なお、接着層をポリビニルアルコールにかえて、キシダ化学(株)製のポリビニルピロリドンK−90からなる乾燥時質量4g/mの接着層とした場合にも、実施例1〜11と同様の結果が得られた。
以上の結果から、本発明のガラス化凍結保存用治具が、優れたガラス化液吸収性能を有することで、細胞または組織のガラス化凍結作業において、余分なガラス化液による毒性のリスクを低減するのに好適であることが分かる。また、凍結解凍時であっても細胞や組織を確実に保持することが可能であることが分かる。
本発明は、牛などの家畜や動物の胚移植や人工授精、人への人工授精などの他、iPS細胞、ES細胞、一般に用いられている培養細胞、生体から採取した検査用または移植用の組織、生体外で構築した組織などの凍結保存に用いることができる。
1 把持部
2a ガラス化液吸収体
2b ガラス化液吸収体
2c ガラス化液吸収体
2d ガラス化液吸収体
2e ガラス化液吸収体
3 ガラス化液吸収層
4 金属製支持体
5 ガラス化凍結保存用治具
6 空孔構造部
7 接着層

Claims (1)

  1. 複数の穴あるいは内部に空洞部分を有さない金属製支持体上にガラス化液吸収体を有し、該ガラス化液吸収体が、細胞または組織をガラス化液と共に付着させる面とは垂直な方向において、金属製支持体に近い方から接着層およびガラス化液吸収層をこの順に有し、該接着層が水溶性接着物質、酢酸ビニル系接着物質、アクリル系接着物質、エポキシ系接着物質、ウレタン系接着物質、ホットメルト接着物質、エラストマー系接着物質、瞬間接着物質、シリコーン系接着物質、ニトロセルロース系接着物質、ニトリルゴム系接着物質、スチレン−ブタジエン系接着物質、ユリア樹脂系接着物質、スチレン系樹脂接着物質、フェノール樹脂系接着物質、光硬化性接着物質から選ばれる少なくとも一種類の接着物質を含有する層である、細胞または組織のガラス化凍結保存用治具。
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