JP6436127B2 - 粉末冶金用混合粉末 - Google Patents
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Description
前記マイクロカプセルが液状硬化性化合物を内包しており、
前記粉末冶金用混合粉末中における、マイクロカプセルに内包されていない液状硬化性化合物の含有量が、前記鉄基粉末100質量部に対して0.10質量部以下である、粉末冶金用混合粉末。
本発明の粉末冶金用混合粉末(以下、単に「混合粉末」ともいう)は、鉄基粉末、融点80〜120℃の共重合ポリアミド、およびマイクロカプセルを含有する粉末冶金用混合粉末である。そして、前記マイクロカプセルは、液状硬化性化合物を内包しており、さらに、前記粉末冶金用混合粉末中における、前記マイクロカプセルに内包されていない液状硬化性化合物の含有量は、前記鉄基粉末100質量部に対して0.10質量部以下である。
上記鉄基粉末としては、特に限定されることなく任意のものを用いることができる。ここで「鉄基粉末」とは、Fe含有量が50質量%以上である粉末を意味する。前記鉄基粉末としては、例えば、純鉄粉、合金鋼粉などが挙げられる。
上記共重合ポリアミドとしては、特に限定されることなく任意のものを用いることができるが、鉄基粉末への付着性の観点から、該共重合ポリアミドの融点を80〜120℃とする。共重合ポリアミドの融点が80〜120℃であれば、上記混合粉末を製造するために鉄基粉末や共重合ポリアミドを加熱混合する際に、前記鉄基粉末の表面に前記共重合ポリアミドを良好に付着させることができる。
共重合ポリアミドの平均粒径は特に限定されず、任意の値とすることができる。しかし、平均粒径が大きすぎると、混合粉末の密度が低下して目的の強度が得られにくくなる場合があり、小さすぎると流動性が不十分となる場合があることから、共重合ポリアミドの平均粒径を5〜100μmとすることが好ましい。共重合ポリアミドの平均粒径が前記範囲内であれば、混合粉末の流動性がより良好となり、圧粉体にしたときの焼結前の加工性がより優れる。なお、ここで共重合ポリアミドの「平均粒径」とは、体積平均粒子径を指し、レーザー回折/散乱式粒度分布計を用いて測定することができる。
本発明の混合粉末における共重合ポリアミドの含有量は特に限定されず、任意の値とすることができる。しかし、共重合ポリアミドの含有量が少なすぎると十分な強度が得られにくい場合があり、多すぎると圧粉体の密度が低下する場合があり得ることから、粉末冶金用混合粉末中における共重合ポリアミドの含有量を、鉄基粉末100質量部に対して0.05〜0.4質量部とすることが好ましく、0.1〜0.2質量部とすることがより好ましい。
上記マイクロカプセルとしては、液状硬化性化合物を内包するものであれば任意のものを用いることができる。前記マイクロカプセルは、膜物質からなるカプセル壁の内部に、内包剤(芯物質)として、少なくとも液状硬化性化合物を内包する。このように、本発明の混合粉末では液状硬化性化合物がマイクロカプセル化された状態で存在しているため、加圧成形する前の状態では鉄基粉末の粒子どうしが接着されることがなく、流動性に優れている。なお、本明細書において、「液状」とは、常温(25℃)で液体であることを意味する。同様に、「粉末状」とは、常温で固体であることを意味する。また、マイクロカプセルに、液状の硬化性化合物以外の他の成分を共存させることは許容される。
上記マイクロカプセルの平均粒径は特に限定されず、任意の値とすることができる。しかし、平均粒径が大きすぎると混合粉末の密度が低下して目的の強度が得られにくくなる場合があり、小さすぎると流動性が不十分となる場合がある。そのため、マイクロカプセルの平均粒径は5〜100μmとすることが好ましい。マイクロカプセルの平均粒径が前記範囲内であれば、混合粉末の流動性がより良好となり、圧粉体にしたときの焼結前の加工性がより優れる。マイクロカプセルの平均粒径は、20〜90μmとすることがより好ましく、30〜80μmとすることがさらに好ましい。なお、ここでマイクロカプセルの「平均粒径」とは、体積平均粒子径を指し、レーザー回折/散乱式粒度分布計を用いて測定することができる。
上記粉末冶金用混合粉末中における、液状硬化性化合物を内包するマイクロカプセルの含有量(以下、単に「マイクロカプセルの含有量」という場合がある)は、特に限定されず、任意の値とすることができる。しかし、マイクロカプセルの含有量が少なすぎると加圧成形時に内包剤が十分に染み出さず、十分な強度が得られにくい場合がある。また、逆にマイクロカプセルの含有量が多すぎると内包剤が圧粉体外へ染み出して金型へ付着し、抜出し性が悪化する場合や、鉄基粉末の粒子どうしのネッキングを阻害して強度が低下する場合があり得る。そのため、マイクロカプセルの含有量は鉄基粉末100質量部に対して0.05〜2質量部とすることが好ましく、0.08〜1.5質量部とすることがより好ましく、0.10〜1.0質量部とすることがさらに好ましい。
マイクロカプセルの内包剤である液状硬化性化合物(以下、単に「硬化性化合物」ともいう)は、本発明の混合粉末を加圧成形して圧粉体を得る際に、マイクロカプセルから染み出して、鉄基粉末の粒子どうしを接着する。前記液状硬化性化合物としては、特に限定されることなく、液状の硬化性化合物であれば任意のものを用いることができる。例えば、接着剤等として用いられる硬化性化合物を使用でき、具体的には、レゾール型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ウレタンプレポリマー、エポキシ樹脂プレポリマー、(メタ)アクリレート化合物(嫌気性)、変成シリコーン樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。ここで、「(メタ)アクリレート」は「アクリレートおよび/またはメタクリレート」を意味する。
本発明においては、粉末冶金用混合粉末中における、マイクロカプセルに内包されていない液状硬化性化合物の含有量を、鉄基粉末100質量部に対して0.10質量部以下とする。これにより、本発明の混合粉末を加圧成形する前の状態では、鉄基粉末の粒子どうしが接着されることがなく、流動性に優れる。前記マイクロカプセルに内包されていない液状硬化性化合物としては、例えば、マイクロカプセルの内包剤である液状硬化性化合物として説明したものを用いることができる。マイクロカプセルに内包されていない液状硬化性化合物の含有量は、鉄基粉末100質量部に対して0.01質量部以下とすることがより好ましく、マイクロカプセルに内包されていない液状硬化性化合物を実質的に含有しないことがさらに好ましい。なお、ここで「マイクロカプセルに内包されていない液状硬化性化合物を実質的に含有しない」とは、「マイクロカプセルに内包されていない液状硬化性化合物を粉末冶金用混合粉末に添加しない」ことを意味する。
本発明の混合粉末は、上記構成成分に加え、さらに必要に応じてその他の添加剤を、マイクロカプセルに内包されていない状態で任意に含有することができる。前記添加剤としては、例えば、上述したように硬化剤、硬化促進剤、可塑剤、および、カップリング剤からなる群より選択される少なくとも1種を用いることができる。また、他に潤滑剤を用いることもできる。前記潤滑剤としては、例えば、金属石鹸(ステアリン酸亜鉛など)、脂肪酸アミド、アミドワックス、共重合ポリアミド、ポリエチレン、酸化ポリエチレンからなる群より選択される少なくとも1種を用いることができる。
次に、本発明の粉末冶金用混合粉末の製造方法および使用方法について説明する。なお、以下の説明は本発明の一実施形態に関するものであって、本発明はこれに限定されるものではない。
上記液状硬化性化合物として、アクリル系やフェノール系、及びエポキシ系等の熱硬化性化合物を使用した場合には、圧粉体成形後、さらに該液状硬化性化合物を硬化させるための硬化処理(加熱処理)を行うこともできる。加熱して液状硬化性化合物を硬化させることによって、圧粉体の強度をさらに向上させることができる。前記硬化処理の条件は、使用する熱硬化性液状化合物の種類に応じて決定すればよいが、一般的には80℃〜200℃で10分から1時間、より好適には15分から30分の範囲で行うことが好ましい。
純鉄粉(JFEスチール社製 アトマイズ鉄粉301A)に銅粉:2質量%および黒鉛粉:0.8質量%を添加した鉄基粉末を準備し、この鉄基粉末100質量部に対して、共重合ポリアミド粒子(融点116℃,平均粒径40μm)を0.2質量部添加(1次添加)し、高速底部撹拌式混合機で所定温度にて加熱混合を行った。次いで、徐冷した後、液状のエポキシ樹脂プレポリマーを内包するマイクロカプセルと、粉末状の硬化剤である芳香族アミン(メタフェニレンジアミン)とを、4:1の割合(質量比)で鉄基粉末100質量部に対して0.5質量部添加(2次添加)し、再度高速底部撹拌式混合機で室温にて混合して粉末冶金用混合粉末を得た。前記粉末冶金用混合粉末には、マイクロカプセルに内包されていない液状硬化性化合物が添加されておらず、したがって、該粉末冶金用混合粉末は、マイクロカプセルに内包されていない液状硬化性化合物を実質的に含有しない。
・カプセル壁:尿素樹脂
・内包剤:液状のエポキシ樹脂プレポリマー(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)
・質量比(内包剤/カプセル壁):80/20
・平均粒径:60μm
成形後、さらに80℃、30分での加熱硬化処理を施した点以外は実施例1と同様にして、粉末冶金用混合粉末および圧粉体を得た。
成形後、さらに120℃、30分での加熱硬化処理を施した点以外は実施例1と同様にして、粉末冶金用混合粉末および圧粉体を得た。
2次添加で添加されるマイクロカプセルと硬化剤の合計量を、鉄基粉末100質量部に対して1質量部とした以外は、実施例3と同様の方法で粉末冶金用混合粉末および圧粉体を得た。
2次添加で添加されるマイクロカプセルと硬化剤の合計量を、鉄基粉末100質量部に対して2.5質量部とした以外は、実施例3と同様の方法で粉末冶金用混合粉末を得た。
添加する共重合ポリアミド粒子を、融点が140℃,平均粒径40μmのものに置き換えた以外は実施例3と同様の方法で粉末冶金用混合粉末および圧粉体を得た。
2次添加を行わなかった以外は、実施例1と同様の方法で粉末冶金用混合粉末および圧粉体を得た。したがって、得られた粉末冶金用混合粉末にはマイクロカプセルおよび硬化剤が添加されていない。
1次添加を行わなかった以外は、実施例1と同様の方法で粉末冶金用混合粉末をおよび圧粉体を得た。したがって、得られた粉末冶金用混合粉末には共重合ポリアミドが添加されていない。
成形後、さらに80℃、30分での加熱硬化処理を施した点以外は比較例2と同様にして、粉末冶金用混合粉末および圧粉体を得た。
成形後、さらに120℃、30分での加熱硬化処理を施した点以外は比較例2と同様にして、粉末冶金用混合粉末および圧粉体を得た。
1次添加の際に、共重合ポリアミドに代えてエチレンビスステアロアミド(EBS)を0.2質量部添加した以外は比較例1と同様の方法で粉末冶金用混合粉末および圧粉体を得た。
1次添加の際に、共重合ポリアミドに代えてエチレンビスステアロアミド(EBS)を0.2質量部添加した以外は実施例1と同様の方法で粉末冶金用混合粉末および圧粉体を得た。
得られた粉末冶金用混合粉末を用いて、以下の評価を行なった。各粉末冶金用混合粉末の製造条件と評価結果を表1に示す。
得られた粉末冶金用混合粉末50gを、オリフィス径:2.5mmの容器に充填し、充填してから排出するまでの時間を測定して、流動度(単位:sec/50g)を求めた。なお、その他の測定条件は、JIS Z 2502:2012に準拠した。流動度は、金型充填時の混合粉の流動性を示す指標であり、流動度の値が小さいほど混合粉の流動性が優れていることを意味する。
得られた粉末冶金用混合粉末を、日本粉末冶金工業会規格JPMA P10−1992に準拠して、588MPaの成形圧力で成形し、得られた圧粉体の密度(単位:g/cm3)および抜出し力(単位:MPa)を測定した。抜出し力の値が低いほど抜出し性が優れることを意味する。
得られた粉末冶金用混合粉末について、日本粉末冶金工業会規格JPMA P10−1992に準拠して、588MPaの成形圧力で成形し、得られた圧粉体の抗折強度(単位:MPa)を測定した。圧粉体の抗折強度は、ドリル加工時に発生する割れに対する数値的指標であり、抗折強度の値が大きいほど、圧粉体が高強度化されており、焼結前の圧粉体の加工性に優れることを意味する。
Claims (4)
- 鉄基粉末、融点80〜120℃の共重合ポリアミド、およびマイクロカプセルを含有する粉末冶金用混合粉末であって、
前記マイクロカプセルが液状硬化性化合物を内包しており、
前記液状硬化性化合物を内包する前記マイクロカプセルの含有量が、前記鉄基粉末100質量部に対して0.4〜2質量部であり、
前記粉末冶金用混合粉末中における、マイクロカプセルに内包されていない液状硬化性化合物の含有量が、前記鉄基粉末100質量部に対して0.10質量部以下である、粉末冶金用混合粉末。 - 前記共重合ポリアミドの含有量が、前記鉄基粉末100質量部に対して0.05〜0.4質量部である、請求項1に記載の粉末冶金用混合粉末。
- 前記鉄基粉末が前記共重合ポリアミドによって被覆されている、請求項1または2に記載の粉末冶金用混合粉末。
- 前記マイクロカプセルに内包されていない、硬化剤、硬化促進剤、可塑剤、および、カップリング剤からなる群より選択される少なくとも1種をさらに含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の粉末冶金用混合粉末。
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