以下、図面を参照しながら、本発明の各実施形態について説明する。各図面において、同一又は同等の構成要素には同一の符号を付す。本発明は下記実施形態に限定されるものではない。
(第一実施形態)
第一実施形態に係る磁気ヘッド装置は、ヘッドスタックアセンブリ(HSA)である。図1、図2、図3及び図4に示すように、HSA2は、複数のアーム4を有するキャリッジ6と、各アーム4の先端部に重なるサスペンション8と、各サスペンション8の先端部に位置するスライダ10と、アーム4の先端部とサスペンション8との間に位置し、アーム4とサスペンション8とを接合する第一接合部12と、を備える。換言すれば、HSA2は、複数のアーム4を有するキャリッジ6と、各アーム4の先端部に接合されたヘッドジンバルアセンブリ(HGA11)と、アーム4とHGA11とを接合する第一接合部12と、を備える。アーム4及びサスペンション8其々は、扁平又は略板状であってよい。アーム4及びサスペンション8其々は、所定の方向に延びていてよい。つまり、アーム4及びサスペンション8其々は、長尺であってよい。サスペンション8は、アーム4の先端部の片面のみに重なっていてよい。一つのサスペンション8がアーム4の先端部の表面に重なり、別のサスペンション8が同アーム4の先端部の裏面に重なっていてもよい。つまり、一つのアーム4の先端部が一対のサスペンション8によって挟まれていてもよい。各スライダ10には、磁気ヘッド(例えば、薄膜磁気ヘッド)が組み込まれている。複数のアーム4及びHGA11は、所定の間隔で、同一の方向を向いて重なっている。説明の便宜上、図示されたアーム4の数は3つであるが、アーム4の数は限定されない。説明の便宜上、図示されたサスペンション8及びスライダ10其々の数は4つであるが、サスペンション8及びスライダ10の数は限定されない。
HSA2は、複数の磁気ディスク16を備える磁気ディスク装置18(HDD)に搭載される。複数の磁気ディスク16は、スピンドルモータ20に取り付けられ、所定の間隔で重ねられている。各磁気ディスク16は、一対のHGA11の間に配置されていてよい。HGA11の先端部に位置する各スライダ10は、磁気ディスク16に対向している。キャリッジ6においてアーム4の反対側に位置する部分は、コイル部14である。コイル部14と、コイル部14を挟んで対向する一対の永久磁石22とは、ボイスコイルモータ(VCM; Voice Coil Motor)を構成する。説明の便宜上、図示された磁気ディスク16の枚数は2枚であるが、磁気ディスク16の枚数は限定されない。
第一接合部12はSn、又は樹脂系接着剤を含む。第一接合部12はSn、又は樹脂系接着剤のうち、いずれか一方のみを含めばよい。第一接合部12はSn単体を含んでよい。第一接合部12はSn単体のみからなっていてよい。第一接合部12は、Snを含有する合金を含んでよい。第一接合部12は、Snを含有する合金のみからなっていてよい。Snを含有する合金は、Ag、Cu、Bi、In、Ni、Zn、P及びAuからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有してもよい。以下では、Snを含有する合金を、「Sn系合金」と記す場合がある。第一接合部12が含む樹脂系接着剤は、既に硬化された樹脂系接着剤を意味する。第一接合部12は、硬化された樹脂系接着剤のみからなっていてよい。樹脂系接着剤は、例えば、加熱硬化型樹脂であってよい。加熱硬化型樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、又はフェノール樹脂であってよい。
アーム4を構成する物質(アーム4の素地)は、特に限定されないが、例えば、Al(アルミニウム)等であってよい。アーム4の表面の一部又は全体が、Ni−P(リンを含むNi)からなる保護層であってもよい。つまり、アーム4は、Al等からなる基体と、基体の表面の一部又は全部を覆う保護層と、を有してもよい。第一接合部12は、アーム4の表面を構成する保護層の上に位置してよい。キャリッジ6全体(コイル部14を除く。)を構成する物質は、アーム4を構成する物質と同じであってよい。キャリッジ6(コイル部14を除く。)の表面の一部又は表面の全体が、上記保護層であってもよい。サスペンション8を構成する物質(サスペンション8の素地)は、特に限定されないが、例えば、SUS(ステンレス鋼)等であってよい。
図5bに基づき、第一接合部12を詳しく説明する。なお、図5bに示す断面は、図1のVb−Vb線方向の断面に対応する。ただし、図5bにおけるアーム4及びサスペンション8の上下関係は、図1のVb−Vb線方向の断面におけるアーム4及びサスペンション8の上下関係とは必ずしも一致しない。また、後述する図7b、図9、図11、図13及び図14bそれぞれにおけるアーム4及びサスペンション8の上下関係も、図1のVb−Vb線方向の断面に対応するが、各図中のアーム4及びサスペンション8の上下関係も、図1のVb−Vb線方向の断面におけるアーム4及びサスペンション8の上下関係とは必ずしも一致しない。
図5bに示すように、アーム側接合面4Aは、アーム4の表面のうちサスペンション8に対向する面と定義される。サスペンション側接合面8Aは、サスペンション8の表面のうちアーム4に対向する面と定義される。アーム側接合面4A及びサスペンション側接合面8Aのうち、アーム側接合面4Aは、サスペンション側接合面8Aと重なる第一重なり域4Aaと、サスペンション側接合面8Aと重ならない第一非重なり域4Abと、を含む。サスペンション側接合面8Aの全体は、サスペンション8の表面に重なっている。アーム4及びサスペンション8の延びる方向(長手方向)に垂直な断面において、アーム4の幅はサスペンション8の幅よりも広い。換言すれば、アーム4の短手方向の幅は、サスペンション8の短手方向の幅よりも広い。第一接合部12は、第一重なり域4Aaにおいてアーム4及びサスペンション8の両方に接している。第一接合部12の一部は、第一非重なり域4Abの少なくとも一部へ延在している。換言すると、第一接合部12の一部は、第一非重なり域4Abの少なくとも一部を覆っている。換言すると、アーム4及びサスペンション8の間からはみ出た第一接合部12(フィレット)が、第一非重なり域4Abの少なくとも一部へ広がっている。第一接合部12の一部は、第一非重なり域4Ab全体に延在していてもよい。
第一接合部12の一部は、第一非重なり域4Abに略垂直なサスペンション8の側面8Bの一部を覆っている。換言すると、第一接合部12の一部は、第一非重なり域4Abに略垂直なサスペンション8の側面8Bの一部へ延存している。換言すると、第一接合部12の一部は、サスペンション側接合面8Aと一辺を共有するサスペンション8の側面8Bの一部を覆っている。換言すると、アーム4及びサスペンション8の間からはみ出た第一接合部12(フィレット)が、サスペンション側接合面8Aと隣り合うサスペンション8の側面8Bの一部へ広がっている。
アーム4及びサスペンション8の間からはみ出た第一接合部12(フィレット)は、第一非重なり域4Abの外縁よりも内側に位置しており、第一接合部12(フィレット)は、アーム側接合面4Aと、当該接合面に略垂直なサスペンション8の側面8Bと、の間の溝に沿って形成されている。換言すれば、フィレットは、サスペンション8の外縁、又はサスペンション側接合面8Aの外縁に沿って形成されている。
第一実施形態に係るHSA2は、下記の第一工程と、第一工程に続く第二工程と、を備える製造方法によって製造されてよい。以下では、第一接合部12がSnを含む場合の製造方法を説明する。
第一工程では、アーム側接合面4A及びサスペンション側接合面8Aのうち一方の接合面又は両接合面を、Sn系合金、又はSn単体で覆う。換言すれば、第一工程では、Snを含む膜を、アーム側接合面4A及びサスペンション側接合面8Aのうち、少なくとも一方の接合面に形成する。第一工程では、アーム4及びサスペンション8のうち一方の全表面又は両方の全表面を、Sn系合金、又はSn単体で覆ってもよい。つまり、第一工程では、アーム4の全表面を、Snを含む膜で覆ってよく、サスペンション8の全表面を、Snを含む膜で覆ってもよい。以下では、第一工程においてアーム4の表面に形成する膜を、「アーム膜」と記す。また、第一工程においてサスペンション8の表面に形成する膜を、「サスペンション膜」と記す。第一接合部12の組成は、例えば、アーム膜又はサスペンション膜の組成の調整によって、制御することができる。アーム膜及びサスペンション膜うちの少なくとも一方がSnを含めばよい。Snを含むアーム膜がある場合、サスペンション膜はなくてもよい。Snを含むサスペンション膜がある場合、アーム膜はなくてもよい。第一工程では、アーム4の表面を構成する保護層の上にアーム膜を形成してもよい。
アーム膜及びサスペンション膜の形成方法は、例えば、めっき、スパッタリング、又は化学気相蒸着(CVD)であってよい。めっきは、電解めっき又は無電解めっきのどちらであってもよい。これらの形成方法によれば、アーム膜及びサスペンション膜其々の組成及び厚さを自在に調整することできる。第一工程の前にマスキング工程を行うことにより、アーム4の表面のうち一部分(例えば、アーム側接合面4A)のみを露出させ、他部をマスクで覆ってよい。マスキング工程後の第一工程では、アーム4の表面のうち露出した部分(例えば、アーム側接合面4A)のみにアーム膜を形成してよい。第一工程の前にマスキング工程を行うことにより、サスペンション8の表面のうち一部分(例えば、サスペンション側接合面8A)のみを露出させ、他部をマスクで覆ってよい。マスキング工程後の第一工程では、サスペンション8の表面のうち露出した部分(例えば、サスペンション側接合面8A)のみにサスペンション膜を形成してよい。マスキング工程とは、樹脂膜によるアーム4又はサスペンション8の被覆であってよい。つまり、マスクは樹脂膜であってよい。マスキング工程に用いる樹脂膜は、第一接合部12に含まれる樹脂系接着剤とは異なる。第一工程において、アーム側接合面4Aに隣接する面(側面4B)において、アーム4の素地を露出させてよい。この場合、第二工程において、溶融金属が側面4B上で濡れ広がり難く、アーム4の側面4B近傍におけるフィレットの形成又は成長が抑制され易い。なお、第一工程では、アーム側接合面4Aの裏面をアーム膜で覆ってもよく、アーム側接合面4Aの裏面をアーム膜で覆わなくてもよい。
第二工程では、アーム側接合面4Aの第一重なり域4Aaとサスペンション側接合面8Aとを重ねて、これらを加熱する。つまり、サスペンション側接合面8Aを、アーム側接合面4Aの第一重なり域4Aaに接触させ、アーム膜又はサスペンション膜の少なくとも一方又は両方を加熱により溶融させる。その結果、アーム膜又はサスペンション膜の一方又は両方から第一接合部12が形成される。第一接合部12により、アーム側接合面4Aとサスペンション側接合面8Aとが接合される。アーム側接合面4Aとは、アーム4側の被接合面と言い換えてもよい。サスペンション側接合面8Aとは、サスペンション8側の被接合面と言い換えてもよい。第一工程前にマスキング工程を行う場合、第二工程の後でマスクをアーム4又はサスペンション8から剥がす工程を行ってよい。
第二工程では、アーム膜又はサスペンション膜の溶融により、溶融金属が生じる。溶融金属は、第一非重なり域4Abの少なくも一部に濡れ広がる。特に溶融金属は、アーム膜又はサスペンション膜が形成された部分へ濡れ広がり易い。濡れ広がった溶融金属が固化することにより、第一接合部12の一部(小さなフィレット)が第一非重なり域4Ab上に形成される。第一重なり域4Aaとアームの側面4Bとの間には、第一非重なり域4Abが介在するので、溶融金属は、第一重なり域4Aaからアーム4の側面4Bへ到り難く、アーム4の側面4B近傍に溜まり難く、アームの側面4Bを流れ落ち難い。したがって、アームの側面4Bではフィレットの形成又は成長が抑制される。また、第二工程では、溶融金属が、第一非重なり域4Abのみならず、第一非重なり域4Abに略垂直なサスペンション8の側面8Bの一部へ濡れ広がるため、アームの側面4B近傍におけるフィレットの形成又は成長が抑制され易い。換言すると、溶融金属は、アーム側接合面4Aと、当該接合面に略垂直なサスペンション8の側面8Bと、の間の溝に沿って溜まり易く、サスペンション8の側面8Bから離れたアームの側面4B近傍には溜まり難い。その結果、アームの側面4B近傍におけるフィレットの形成又は成長が抑制され易い。
以上のような原理により、アームの側面4B近傍におけるフィレットの形成又は成長が抑制されたHSA2が得られる。つまり、サイズ及び形状の精度が高いHSA2が得られる。
仮に第一非重なり域4Abがない場合、フィレットがアームの側面4B近傍に形成され易く、HSA2のサイズ及び形状の精度を損われ易い。その理由を、図16a及び図16bを用いて説明する。
図16aは、第一工程後(接合前)のアーム4及びサスペンション8を示す。図16bは、図16a中のアーム4及びサスペンション8を用いた第二工程によって形成された第一接合部12及びフィレット40等を示す。図16a及び16b中のアーム4の断面は、アーム4の長手方向に垂直である。図16a及び16b中のサスペンション8の断面は、サスペンション8の長手方向に垂直である。図16aに示すように、アーム4及びサスペンション8それぞれの短手方向において、アーム側接合面4A及びサスペンション側接合面8Aは互いに完全に重なる。つまり、アーム側接合面4A及びサスペンション側接合面8Aのいずれも、第一非重なり域を有しない。第二工程では、アーム膜34又はサスペンション膜38の加熱により、溶融金属が生じる。アーム4及びサスペンション8を接触させると、第一非重なり域がないため、溶融金属はアーム4及びサスペンション8の間からアーム4及びサスペンション8其々の側面まで流動して、固化する。その結果、アーム4及びサスペンション8それぞれの短手方向に突出する大きなフィレット40が形成されてしまう。
フィレット40は、いわゆるバリと同様に、HSA2(磁気ヘッド装置)のサイズ及び形状の精度を損なう。例えば、HSA2の製造では、アーム4及びサスペンション8の位置合わせのために、アーム4及びサスペンション8其々に位置決め孔を形成することがある。これらの位置決め孔内にフィレットが形成された場合、位置決め孔の寸法の精度が損なわれ、アーム4及びサスペンション8の位置を正確に決することが困難になる。また、フィレットは、HSA2から脱落して、磁気ディスク16の表面を傷付けることもある。
一方、第一実施形態によれば、上記の通り、第一非重なり域4Abが、第二工程において溶融金属が濡れ広がるマージン(余白)として機能するため、溶融金属がアームの側面4B近傍に溜まり難く、アームの側面4B近傍におけるフィレットの形成又は成長が抑制される。
第二工程における加熱法は、例えば、リフロー等の雰囲気加熱法であってもよい。第二工程では、アーム側接合面4Aとサスペンション側接合面8Aとを、例えば150〜450℃で加熱すればよい。この温度範囲での加熱により、第一接合部12が形成され易く、アーム4及びサスペンション8の接合強度が向上し易い。レーザー加熱により、アーム側接合面4Aとサスペンション側接合面8Aとを接合して、第一接合部12を形成してもよい。ただし、サスペンション8間の間隔が狭まるほど、レーザーを各接合面へ正確に照射し難くなる。一方、雰囲気加熱法を用いた場合、サスペンション8間の間隔に関わらず、熱は各接合面へ均一に伝わり易いので、複数の第一接合部12間における接合強度の斑又はばらつきが抑制され易い。
第一接合部12におけるSnの含有量は、例えば、40質量%以上100質量%未満であってよい。Snの含有量が40質量%以上である場合、接合強度が向上し易い。第一接合部12におけるSnの含有量は、例えば、第一工程において形成するアーム膜又はサスペンション膜におけるSnの含有量の調整によって自在に制御される。
第一接合部12の厚みは、例えば、2〜50μmであってよく、5〜30μmであってもよい。第一接合部12の厚みとは、第一接合部12を介して接合されたアーム4とサスペンション8との間隔と言い換えてよい。第一接合部12の厚みは、例えば、第一工程において形成するアーム膜又はサスペンション膜の厚さの調整によって、自在に制御される。第一接合部12の厚みを2μm以上に制御することにより、接合強度が向上し易い。第一接合部12の厚みを50μm以下に制御することにより、第二工程におけるアーム膜又はサスペンション膜を構成する成分の溶融及び流れだし(すなわち、にじみ)並びにフィレットの形成又は成長を必要且つ十分な程度に制御し易い。
サスペンション8の厚みは、例えば、0.05〜0.3mmであってよい。アーム4の厚みは、例えば、0.3〜1.0mmであってよい。
第一工程で用いるSn系合金は、例えば、はんだ(solder)、又はろう材(braze material)であってよい。Sn系合金は、Snに加えて、Ag、Cu、Bi、In、Ni、Zn、P及びAuからなる群より選ばれる少なくとも一種を含有してよい。これらの元素を含有するSn系合金を用いることにより、第二工程において、第一接合部12が形成され易く、接合強度が向上し易い。なお、アーム膜及びサスペンション膜のうち一方の膜がSnを含む場合、他方の膜はSnを含まなくてよい。例えば、アーム膜及びサスペンション膜のうち一方の膜がSnを含む場合、他方の膜は、Ag、Cu、Bi、In、Ni、Zn、P及びAuからなる群より選ばれる少なくとも一種からなる膜であってよい。つまり、他方の膜は、Sn以外の元素からなる膜であってよい。アーム膜が、重なった2つの膜から構成されてよく、うち1つの膜はSnを含み、他方の膜はSnを含まなくてよい。同様に、サスペンション膜が、重なった2つの膜から構成されていてもよい。
第一工程において、アーム側接合面4A及びサスペンション側接合面8Aのうち、一方の接合面を、Sn単体又はSn系合金で覆ってよく、他方の接合面を、Sn単体よりも融点が高い金属、又はSn系合金よりも融点が高い金属で覆ってよい。このような第一工程を実施した場合、第二工程における各接合面の過度の溶融及びにじみ、並びにフィレットの形成又は成長が抑制され易い。その結果、第一接合部12が厚くなり易い。Sn単体又はSn系合金よりも融点が高い金属は、例えば、Ni単体、又はPを含むNiである。したがって、第一工程では、一方の接合面を、Sn単体又はSn系合金からなる膜で覆い、他方の接合面を、Ni単体からなる膜、又はPを含むNiからなる膜で覆ってよい。Pを含むNiからなる膜は、例えば、リン化合物を含む無電解ニッケルめっき液から形成することができる。リン化合物とは、例えば、次亜リン酸ナトリウム等の次亜リン酸塩であってよい。
第一接合部12が樹脂系接着剤を含む場合、又は第一接合部12が樹脂系接着剤からなる場合、例えば、以下の製造方法により、HSA2を製造すればよい。
第一工程では、アーム側接合面4A及びサスペンション側接合面8Aのうち一方の接合面又は両接合面を、未硬化の樹脂系接着剤で覆う。換言すれば、第一工程では、未硬化の樹脂系接着剤を含む膜を、アーム側接合面4A及びサスペンション側接合面8Aのうち、少なくとも一方の接合面に形成する。
第二工程では、サスペンション側接合面8Aを、アーム側接合面4Aの第一重なり域4Aaに接触させ、アーム4とサスペンション8との間にある樹脂系接着剤を硬化させる。例えば、樹脂系接着剤が加熱硬化型である場合、アーム側接合面4Aの第一重なり域4Aaとサスペンション側接合面8Aとを重ねて、これらを加熱する。その結果、樹脂系接着剤が硬化して、第一接合部12が形成される。
樹脂系接着剤を用いて第一接合部12を形成する場合であっても、第二工程において、未硬化の樹脂系接着剤は溶融金属と同様に流動する。しかし、第一実施形態によれば、第一非重なり域4Abが、第二工程において樹脂系接着剤が濡れ広がるマージン(余白)として機能するため、樹脂系接着剤がアームの側面4B近傍に溜まり難く、アームの側面4Bにおけるフィレットの形成又は成長が抑制される。つまり、樹脂系接着剤から第一接合部12を形成する場合も、Sn単体又はSn系合金から第一接合部12を形成する場合の同様のメカニズムにより、アームの側面4B近傍におけるフィレットの形成又は成長が抑制される。第一工程では、アーム側接合面4Aに隣接する面(側面4B)において、アーム4の素地を露出させてよい。この場合、第二工程において、未硬化の樹脂系接着剤が側面4B上で濡れ広がり難く、アーム4の側面4B近傍におけるフィレットの形成又は成長が抑制され易くなる。なお、第一工程では、アーム側接合面4Aの裏面を未硬化の樹脂系接着剤で覆ってもよく、アーム側接合面4Aの裏面を未硬化の樹脂系接着剤で覆わなくてもよい。
以上のように、第一実施形態では、第一接合部12がSn又は樹脂系接着剤のどちらを含む場合であっても、第一接合部12がアーム4及びサスペンション8を化学的又は物理的に接合する。したがって、第一実施形態によれば、嵌合接合等の従来の機械的接合方法を用いる場合に比べて、アーム4及びサスペンション8の接合強度が向上する。また第一実施形態では、第一接合部12の一部が、アーム4及びサスペンション8の間からはみ出し、アーム4の第一非重なり域4Ab及びサスペンション8の側面8Bに接している。したがって、第一接合部12がアーム4及びサスペンション8の間からはみ出さない場合に比べて、第一接合部12とアーム4及びサスペンション8との接触面積が大きい。さらに、第一実施形態では、面接触により第一接合部12を形成することができるため、嵌め孔を形成するためにアーム4及びサスペンション8を厚くする必要がない。つまり、第一実施形態では、篏合接合ができないほどアーム4及びサスペンション8が薄い場合であっても、接合強度が損なわれ難い。これらの理由により、第一実施形態に係るHSA2によれば、接合強度を確保しつつ、アーム4及びサスペンション8其々を薄くして、磁気ディスク16の枚数を増やすことができる。その結果、従来よりも信頼性が高く、容量が大きい磁気ディスク装置18を実現することができる。
以上、本発明の第一実施形態に係る磁気ヘッド装置(HSA2)について説明したが、本発明は第一実施形態に何ら限定されるものではない。以下に示す他の実施形態においても、第一実施形態と同様のメカニズムにより、アーム及びサスペンションの接合強度に優れ、サイズ及び形状の精度が高い磁気ヘッド装置が提供される。以下では、第一実施形態と他の実施形態との相違点についてのみ説明し、第一実施形態と他の実施形態とに共通する事項についての説明を省略する。
(第二実施形態)
図6に示すように、第二実施形態に係るHSAでは、サスペンション8は、スペーサ50、ロードビーム54及びフレキシャ56を含んでいる。つまり、サスペンション8は、スペーサ50、ロードビーム54及びフレキシャ56から構成されている。スペーサ50がアーム4の先端部に重なり、第一接合部12がアーム4の先端部とスペーサ50との間に位置する。つまり、第一接合部12が、アーム4とスペーサ50とを接合している。ロードビーム54の一方の先端部はスペーサ50に重なっている。第二接合部52が、スペーサ50とロードビーム54の間に位置し、スペーサ50とロードビーム54とを接合する。ロードビーム54の他方の先端部にはフレキシャ56が設置され、フレキシャ56の表面にスライダ10が位置している。
第二実施形態におけるスペーサ50は、サスペンション8の一部である。つまり、第一接合部12によってアーム4と接合される点において、スペーサ50は、第一実施形態におけるサスペンション8に対応する。第二実施形態では、第一実施形態の場合と同様に、アーム4の第一非重なり域4Abが、第二工程において溶融金属又は樹脂系接着剤が濡れ広がるマージン(余白)として機能する。そのため、溶融金属又は樹脂系接着剤がアームの側面4Bの近傍に溜まり難く、アームの側面4B近傍におけるフィレットの形成又は成長が抑制される。
第二接合部52は、Sn、又は樹脂系接着剤を含む。第二接合部52の具体的な組成は、上述した第一接合部12と同じであってよい。以下では、図7bに基づき、第二接合部52を詳しく説明する。図7bは、アーム4、第一接合部12、スペーサ50、第二接合部52、及びロードビーム54の断面であり、図7aのb−b線における断面である。
図7bに示すように、スペーサ側接合面50Aは、スペーサ50の表面のうちロードビーム54に対向する面と定義される。ロードビーム側接合面54Aは、ロードビーム54の表面のうちスペーサ50に対向する面と定義される。スペーサ側接合面50A及びロードビーム側接合面54Aのうち、ロードビーム側接合面54Aは、スペーサ側接合面50Aと重なる第二重なり域54Aaと、スペーサ側接合面50Aと重ならない第二非重なり域54Abと、を含む。換言すると、ロードビーム54の短手方向の幅が、スペーサ50の幅よりも広い。第二接合部52は、ロードビーム54の第二重なり域54Aaにおいてスペーサ50及びロードビーム54の両方に接している。第二接合部52の一部(小さなフィレット)は、ロードビーム54の第二非重なり域54Abの少なくとも一部へ延在している。第二接合部52の一部は、スペーサ側接合面50Aと隣り合うスペーサ50の側面50Bの一部にも延在している。スペーサ50はサスペンション8の一部であるので、スペーサ50の側面50Bはサスペンション8の側面8Bと言い換えられる。
第二接合部52がSnを含む合金である場合、以下の製造方法により、HSAを製造すればよい。まず、上記の第一工程と同様に、スペーサ側接合面50A及びロードビーム側接合面54Aのうち一方の接合面又は両接合面を、Sn単体、又はSn系合金で覆う。続いて、上記の第二工程と同様に、ロードビーム側接合面54Aの第二重なり域54Aaとスペーサ側接合面50Aとを重ねて、これらを加熱することにより、第二接合部52を形成する。換言すれば、サスペンション8(スペーサ50が接合されたロードビーム54)を形成する。続いて、上記の第一工程及び第二工程を実施することにより、サスペンション8の一部であるスペーサ50を、第一接合部12を介して、アーム4に接合する。
第二接合部52が樹脂系接着剤を含む場合、又は第二接合部52が樹脂系接着剤からなる場合、例えば、以下の製造方法により、HSAを製造すればよい。まず、上記第一工程と同様に、スペーサ側接合面50A及びロードビーム側接合面54Aのうち一方の接合面又は両接合面を、未硬化の樹脂系接着剤で覆う。続いて、上記第二工程と同様に、スペーサ側接合面50Aを、ロードビーム側接合面54Aの第二重なり域54Aaに接触させ、スペーサ50とロードビーム54との間にある樹脂系接着剤を硬化させる。例えば、樹脂系接着剤が加熱硬化型である場合、ロードビーム側接合面54Aの第二重なり域54Aaとスペーサ側接合面50Aとを重ねて、これらを加熱する。その結果、樹脂系接着剤が硬化して、第二接合部52が形成される。
第二実施形態では、第二接合部52の形成時、ロードビーム54の第二非重なり域54Abが、溶融金属又は未硬化の樹脂系接着剤が濡れ広がるマージン(余白)として機能する。その結果、溶融金属又は未硬化の樹脂系接着剤がロードビーム54の側面54Bの近傍に溜まり難く、ロードビーム54の側面54Bにおけるフィレットの形成又は成長が抑制される。
第二実施形態では、第二接合部52がスペーサ50及びロードビーム54を化学的又は物理的に接合する。したがって、嵌合接合等の従来の機械的接合方法を用いる場合に比べて、スペーサ50及びロードビーム54の接合強度が向上する。また第二実施形態では、第二接合部52の一部が、スペーサ50及びロードビーム54の間からはみ出し、ロードビーム54の第二非重なり域54Ab及びスペーサ50の側面50Bに接している。したがって、第二接合部52がスペーサ50及びロードビーム54の間からはみ出さない場合に比べて、第二接合部52とスペーサ50及びロードビーム54との接触面積が大きい。さらに、面接触により第二接合部52を形成することができるため、嵌め孔を形成するためにスペーサ50及びロードビーム54を厚くする必要がない。つまり、篏合接合ができないほどスペーサ50及びロードビーム54が薄い場合であっても、スペーサ50及びロードビーム54の接合強度が損なわれ難い。
第二実施形態の別の態様においては、スペーサ側接合面及びロードビーム側接合面のうち、スペーサ側接合面が、ロードビーム側接合面と重なる第二重なり域と、ロードビーム側接合面と重ならない第二非重なり域と、を含んでもよい。つまり、スペーサの幅が、ロードビームの短手方向における幅より大きくてもよい。この場合、スペーサ及びロードビームの間からはみ出した第二接合部52の一部(小さなフィレット)は、スペーサの第二非重なり域の少なくとも一部へ延在していてよい。また第二接合部の一部は、ロードビーム側接合面と隣り合うロードビームの側面の一部にも延在していてよい。
(第三実施形態)
図8及び9に示すように、第三実施形態に係るHSAでは、アーム4及びサスペンション8が重なる方向をおいて、円形の孔がサスペンション8を貫通している。この孔をサスペンション貫通孔8Cという。また、同じ方向において、円形の孔がアーム4を貫通している。この孔をアーム貫通孔4Cという。サスペンション貫通孔8Cの中心軸は、アーム貫通孔4Cの中心軸と一致している。サスペンション貫通孔8Cの内径は、アーム貫通孔4Cの内径よりも大きい。図8に示すように、アーム貫通孔4Cとアーム貫通孔4Cを囲むアーム4の表面(第一非重なり領域)が、サスペンション貫通孔8Cの内側に露出している。第一接合部12の一部は、サスペンション貫通孔8Cの内周とサスペンション8の外縁に沿って形成されている。
図9は、第三実施形態に係るアーム4、サスペンション8及び第一接合部12の断面であり、図8のIX−IX線における断面である。図9に示す一対の断面では、アーム4の一対の側面4Bの内側に、アーム貫通孔4Cの一対の内壁が位置する。また、サスペンション8の一対の側面8Bの内側に、サスペンション貫通孔8Cの一対の内壁が位置する。これらの点を除いて、図9に示す一対の断面それぞれは、図5bの断面とほぼ同様である。つまり、図9に示す一対の断面それぞれは、第一実施形態におけるアーム4、サスペンション8及び第一接合部12の断面とほぼ同様である。したがって、第三実施形態では、第一実施形態の場合と同様に、アーム4の第一非重なり域4Abが、第二工程において溶融金属又は樹脂系接着剤が濡れ広がるマージン(余白)として機能する。そのため、溶融金属又は樹脂系接着剤がアームの側面4B近傍に溜まり難く、アームの側面4B近傍におけるフィレットの形成又は成長が抑制される。
第三実施形態では、第二工程において、サスペンション貫通孔8Cの中心軸が、アーム貫通孔4Cの中心軸と一致するように、アーム側接合面4Aとサスペンション側接合面8Aとを重ねる。つまり、各位置決め孔の位置を合わせることにより、アーム4及びサスペンション8それぞれの位置を正確に決定する。仮に各貫通孔内にフィレットが形成された場合、各貫通孔の寸法の精度が損なわれ、アーム4及びサスペンション8の正確な位置決めが困難になる。しかし、第三実施形態では、第一実施形態の場合と同様に、アーム4の第一非重なり域4Abが、第二工程において溶融金属又は樹脂系接着剤が濡れ広がるマージン(余白)として機能する。そのため、溶融金属又は樹脂系接着剤がアーム貫通孔4Cの内壁近傍に溜まり難く、アーム貫通孔4Cの内壁内におけるフィレットの形成又は成長が抑制される。したがって、アーム貫通孔4Cの位置合わせにより、アーム4の位置を正確に決定することができる。
(第四実施形態)
図10に示すように、第四実施形態に係るHSAでは、サスペンション貫通孔8Cの内径は、アーム貫通孔4Cの内径よりも小さい。そして、第四実施形態では、第一接合部12の一部は、アーム貫通孔4Cの内周とサスペンション8の外縁に沿って形成されている。
図11は、第四実施形態に係るアーム4、サスペンション8及び第一接合部12の断面であり、図10のXI−XI線における断面である。図11に示すように、第四実施形態では、アーム側接合面4A及びサスペンション側接合面8Aそれぞれが、第一重なり域と、第一非重なり域と、を有する。
つまり、アーム側接合面4Aは、サスペンション側接合面8Aと重なる第一重なり域4Aaと、サスペンション側接合面8Aと重ならない第一非重なり域4Abと、を含む。サスペンション側接合面8Aは、アーム側接合面4Aと重なる第一重なり域8Aaと、アーム側接合面4Aと重ならない第一非重なり域8Abと、を含む。第一接合部12は、アーム4の第一重なり域4Aaにおいてアーム4及びサスペンション8の両方に接している。換言すれば、第一接合部12は、サスペンション8の第一重なり域8Aaにおいてアーム4及びサスペンション8の両方に接している。
第一接合部12の一端は、アーム4の第一非重なり域4Abの少なくとも一部へ延在している。また第一接合部12の一端は、サスペンション側接合面8Aと隣り合うサスペンション8の側面8Bの一部へ延在している。第四実施形態では、アーム4の第一非重なり域4Abが、第二工程において溶融金属又は樹脂系接着剤が濡れ広がるマージン(余白)として機能する。そのため、溶融金属又は樹脂系接着剤がアーム4の側面4B近傍に溜まり難く、アーム4の側面4B近傍におけるフィレットの形成又は成長が抑制される。
第一接合部12の他端は、サスペンション8の第一非重なり域8Abの少なくとも一部へ延在している。また第一接合部12の他端は、アーム側接合面4Aと隣り合うアーム貫通孔4Cの内壁の一部へ延在している。第四実施形態では、サスペンション8の第一非重なり域8Abが、第二工程において溶融金属又は樹脂系接着剤が濡れ広がるマージン(余白)として機能する。そのため、溶融金属又は樹脂系接着剤がサスペンション貫通孔8Cの内壁近傍に溜まり難く、サスペンション貫通孔8Cの内壁内におけるフィレットの形成又は成長が抑制される。したがって、サスペンション貫通孔8Cの位置合わせにより、サスペンション8の位置を正確に決定することができる。
(第五実施形態)
図12及び13に示すように、第五実施形態に係るHSAでは、第二実施形態と同様に、スペーサ50がアーム4の先端部に重なり、第一接合部12が、アーム4と、スペーサ50(サスペンション8の一部)を接合している。ロードビーム54の一方の先端部はスペーサ50に重なり、第二接合部52が、スペーサ50とロードビーム54とを接合する。
第五実施形態では、アーム4、スペーサ50及びロードビーム54が重なる方向をおいて、アーム4、スペーサ50及びロードビーム54其々に円形の貫通孔が形成されている。スペーサ50に形成された貫通孔をスペーサ貫通孔50Cという。ロードビーム54に形成された貫通孔をロードビーム貫通孔54Cという。アーム貫通孔4C、スペーサ貫通孔50C及びロードビーム貫通孔54Cそれぞれの中心軸は一致している。ロードビーム貫通孔54Cの内径は、アーム貫通孔4Cの内径とほぼ等しい。スペーサ貫通孔50Cの内径は、アーム貫通孔4Cの内径より大きい。第一接合部12の一部は、アーム4及びスペーサ50の間からはみ出し、スペーサ貫通孔50Cの内周とスペーサ50の外縁に沿って形成されている。第二接合部52の一部は、スペーサ50及びロードビーム54の間からはみ出し、スペーサ貫通孔50Cの内周とスペーサ50の外縁に沿って形成されている。
図13は、第五実施形態に係るアーム4、第一接合部12、スペーサ50、第二接合部52及びロードビーム54の断面であり、図12のXIII−XIII線における断面である。図13に示す一対の断面では、アーム4の一対の側面4Bの内側に、アーム貫通孔4Cの一対の内壁が位置する。スペーサ50の一対の側面8Bの内側に、スペーサ貫通孔50Cの一対の内壁が位置する。ロードビーム54の一対の側面54Bの内側に、ロードビーム貫通孔54Cの一対の内壁が位置する。これらの点を除いて、図13に示す一対の断面それぞれは、図7bの断面とほぼ同様である。つまり、図13に示す一対の断面それぞれは、第二実施形態におけるアーム4、第一接合部12、スペーサ50、第二接合部52及びロードビーム54の断面とほぼ同様である。
第五実施形態では、第二実施形態と同様に、第二接合部52の形成時、ロードビーム54の第二非重なり域54Abが、溶融金属又は未硬化の樹脂系接着剤が濡れ広がるマージン(余白)として機能する。その結果、溶融金属又は未硬化の樹脂系接着剤がロードビーム54の側面54B及びロードビーム貫通孔54Cの近傍に溜まり難い。したがって、ロードビーム54の側面54B及びロードビーム貫通孔54Cにおけるフィレットの形成又は成長が抑制される。したがって、第五実施形態では、ロードビーム貫通孔54Cの位置合わせにより、ロードビーム54の位置を正確に決定することができる。
(第六実施形態)
図14a及び図14bに示すように、第六実施形態では、サスペンション8の短手方向の幅が、アーム4の短手方向の幅よりも広い。第六実施形態では、アーム側接合面4A及びサスペンション側接合面8Aのうち、サスペンション側接合面8Aが、アーム側接合面4Aと重なる第一重なり域8Aaと、アーム側接合面4Aと重ならない第一非重なり域8Abと、を含む。第一接合部12は、第一重なり域8Aaにおいてアーム4及びサスペンション8の両方に接しており、第一接合部12の一部は、サスペンション8の第一非重なり域8Abの少なくとも一部へ延在している。第一接合部12の一部は、アーム側接合面4Aと隣り合うアーム4の側面4Bの一部にも延在している。
第六実施形態では、第二接合部52の形成時、サスペンション8の第二非重なり域8Abが、溶融金属又は未硬化の樹脂系接着剤が濡れ広がるマージン(余白)として機能する。また、溶融金属又は未硬化の樹脂系接着剤は、サスペンション8の第一非重なり域8Abのみならず、アーム側接合面4Aと隣り合うアーム4の側面4Bの一部へ濡れ広がる。これらの理由により、溶融金属又は未硬化の樹脂系接着剤はサスペンション8の側面8Bの近傍に溜まり難く、サスペンション8の側面8Bにおけるフィレットの形成又は成長が抑制される。第六実施形態の第一工程では、サスペンション側接合面8Aに隣接する面(側面8B)において、サスペンション8の素地を露出させてもよい。悠々金属又は未硬化の樹脂系接着剤に対する濡れ性に乏しいサスペンション8の素地を側面8Bに露出させることにより、第二工程において、溶融金属又は未硬化の樹脂系接着剤が側面8B上で濡れ広がり難く、サスペンション8の側面8B近傍におけるフィレットの形成又は成長が抑制され易くなる。なお、第六実施形態の第一工程では、サスペンション側接合面8Aの裏面を、サスペンション膜又は未硬化の樹脂系接着剤で覆ってよい。サスペンション側接合面8Aの裏面を、サスペンション膜又は未硬化の樹脂系接着剤で覆わなくてもよい。
(第七実施形態)
図15は、アーム4の長手方向に垂直な方向における、アーム4の先端部近傍の断面図である。図15に示すように、第七実施形態では、アーム側接合面の一部が凹部を形成している。スペーサ50(又はサスペンション8)の全部が、凹部の内側に位置する。アーム側接合面のうち凹部の底及び内壁の一部が、第一重なり域4Aaである。スペーサ50(又はサスペンション8)の表面のうち、凹部の底及び内壁の一部と対向する部分は全て、スペーサ側接合面50A(又はサスペンション側接合面8A)である。凹部の内壁の残部及び凹部を囲むアーム側接合面4Aが、第一非重なり域4Abである。第一接合部12は、凹部の底及び内壁の一部とスペーサ50(又はサスペンション8)との間を充填する。第一接合部12の一部は、アーム4の第一非重なり域4Abに延在する。また、第一接合部12の一部は、凹部の底とは反対側を向くスペーサ50(又はサスペンション8)の上面の一部へ延在する。
第七実施形態では、第二接合部52の形成時、アーム4の第二非重なり域4Abが、溶融金属又は未硬化の樹脂系接着剤が濡れ広がるマージン(余白)として機能する。また、溶融金属又は未硬化の樹脂系接着剤は、アーム4の第二非重なり域4Abのみならず、スペーサ50(又はサスペンション8)の上面の一部にも濡れ広がる。これらの理由により、溶融金属又は未硬化の樹脂系接着剤はアーム4の側面4Bの近傍に溜まり難く、アーム4の側面4Bにおけるフィレットの形成又は成長が抑制される。
(その他の実施形態)
磁気ヘッド装置は、一つのアーム4と、当該アーム4の先端部に重なるサスペンション8と、サスペンション8の先端部に位置するスライダ10と、アーム4の先端部とサスペンション8との間に位置し、アーム4とサスペンション8とを接合する第一接合部12と、を備え、第一接合部12がSnを含む、ヘッドアームアセンブリ(HAA)であってよい。
スペーサ50とロードビーム54とは、例えばスポット溶接により、直接溶接されていてよい。この場合、第二接合部52は、スペーサ50及びロードビーム54の間に形成されていなくてよい。