以下,本実施形態にかかる画像処理装置について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,読取機能,印刷機能,およびファクシミリ機能を有する複合機(MFP:Multi Function Peripheral)に本発明を適用したものである。
[画像処理システムの全体構成]
本形態の画像処理システム900は,図1に示すように,MFP100と,モバイル装置200とを備えている。MFP100と通信するデバイスは,図示されたモバイル装置200の他にも何台接続されていてもよい。MFP100は,画像処理装置の一例である。モバイル装置200としては,例えば,スマートフォンやタブレット型のPCが該当する。
本形態の画像処理システム900では,モバイル装置200とMFP100との間で,無線通信によるデータの受け渡しが可能になっている。データの受け渡しは,不図示のアクセスポイントを介して行ってもよいし,装置間で直接行ってもよい。
[MFPの構成]
続いて,MFP100の概略構成について説明する。MFP100は,図1に示したように,CPU31と,ROM32と,RAM33と,NVRAM(Non Volatile RAM)34とを備えるコントローラ30を有している。コントローラ30は,ASICの一部であってもよいし,コントローラ30がASICを含んでいてもよい。なお,図1中のコントローラ30は,CPU31等,MFP100の制御に利用されるハードウェアを纏めた総称であって,実際にMFP100に存在する単一のハードウェアと表すとは限らない。
ROM32には,MFP100を制御するための制御プログラムであるファームウェアや各種設定,初期値等が記憶されている。RAM33およびNVRAM34は,各種制御プログラムが読み出される作業領域として,あるいは画像データ等の各種のデータを一時的に記憶する記憶領域として利用される。
CPU31は,ROM32から読み出した制御プログラムや各種センサから送られる信号に従って,その処理結果をRAM33またはNVRAM34に記憶させながら,MFP100の各構成要素を制御する。CPU31は,制御部の一例である。なお,コントローラ30が制御部の一例であってもよい。
また,MFP100は,シートに画像を印刷する画像形成部10と,原稿の画像を読み取る画像読取部11と,操作部40と,無線通信インターフェース36と,電話インターフェース37とを有し,これらがCPU31によって制御される。なお,MFP100は,これらの他にも,例えば,有線LANインターフェースや,USBインターフェースを備えていてもよい。
画像形成部10は,カラー印刷が可能であってもモノクロ印刷のみが可能であってもよい。また,印刷方式についても,電子写真方式であってもインクジェット方式であってもよい。また,画像読取部11は,カラースキャンが可能であってもモノクロスキャンのみが可能であってもよい。また,読取機構についても,CCDであってもCISであってもよい。
無線通信インターフェース36は,無線通信によって,外部装置との通信を可能にするハードウェアである。本形態の無線通信インターフェース36は,IEEEの802.11の規格およびそれに準ずる規格に基づいて,WiFi方式での無線通信を可能にする構成を備えている。なお,無線通信の規格はWiFiに限るものではなく,NFC等の他の規格であってもよい。MFP100は,無線通信インターフェース36を介してモバイル装置200から送信されるデータを受信する。さらに,MFP100は,無線通信インターフェース36を介してモバイル装置200にデータを送信する。無線通信インターフェース36は,通信部の一例である。
電話回線インターフェース37は,電話回線接続を制御するNCUと,音声信号とデジタル信号との変調を行うモデムとを備え,電話回線を使用した通信を可能にするインターフェースである。MFP100は,電話回線インターフェース37を介して外部装置との間でファクシミリ通信を行う。
操作部40は,メッセージや各種の設定の表示およびユーザからの各種の情報の入力を可能にするハードウェアであり,MFP100の外装に設けられる。操作部40は,表示機能と入力機能とを有するタッチパネル41と,テンキー,矢印キー,OKボタン,キャンセルボタン等,各種の入力手段から構成されるボタン群42とを備えている。
[モバイル装置の構成]
続いて,モバイル装置200の概略構成について説明する。図1に示したように,モバイル装置200は,各種処理を実行するCPU51と,当該モバイル装置200の起動時にCPU51が行う起動処理のプログラム(BIOS)等を記憶したROM52と,CPU51が各種処理を行う際に一時的な記憶領域として利用されるRAM53と,各種のプログラムやデータを記憶したハードディスクドライブ(HDD)54とを有するコントローラ50を備えている。なお,図1中のコントローラ50は,CPU51等,モバイル装置200の制御に利用されるハードウェアを纏めた総称であって,実際にモバイル装置200に存在する単一のハードウェアを表すとは限らない。
モバイル装置200のHDD54には,OSや,インターネット上のファイルを閲覧するためのブラウザ,各種のデバイスを制御するデバイスドライバ等が組み込まれている。また,MFP100に対して,印刷,読み取り,データ転送等を実行させる実行指示を受け付けるアプリケーションプログラム(以下,「アプリ」とする)も記憶されている。
CPU51は,ROM52から読み出した制御プログラムやHDD54から読み出したプログラムに従って,その演算結果をRAM53またはHDD54に記憶させながら各種の処理を行う。上述したアプリの動作も,CPU51によって処理される。
また,モバイル装置200は,無線通信インターフェース56と,操作部60と,電話部70とを有し,これらがコントローラ50によって制御される。なお,モバイル装置200は,これらの他にも,例えば,USBインターフェースを備えていてもよい。
操作部60は,メッセージや各種の設定の表示およびユーザからの各種の情報の入力を可能にするハードウェアであり,モバイル装置200の前面に設けられる。また,操作部60は,表示機能と入力機能とを有するタッチパネル61と,OKボタン,キャンセルボタン等,各種の入力手段から構成されるボタン群62とを備えている。モバイル装置200には,例えば,画像を印刷させるジョブや画像を読み取らせるジョブが,ユーザによるタッチパネル61ないしボタン群62への操作によって入力される。
無線通信インターフェース56は,外部装置との通信を可能にするハードウェアである。本形態の無線通信インターフェース56は,MFP100の無線通信インターフェース36と同規格に基づいて,無線通信を可能にする構成を備えている。そのため,モバイル装置200は,無線通信インターフェース56を介して,MFP100に対して各種の指示を入力することが可能である。また,モバイル装置200は,無線通信インターフェース56を介して,MFP100からの各種の指示を受け付けることが可能である。無線通信インターフェース56は,通信部の一例である。
電話部70は,マイク,スピーカ,電話回線インターフェース等,電話機能を実現するためのハードウェアで構成され,不図示の基地局との間で携帯電話の通信方式(例えば,W−CDMA)に準ずる規格に基づいて,無線通信を可能にする。電話部70は,電話や,基地局を介したインターネット接続などに用いられる。
[リモート通信の概要]
続いて,本形態の画像処理システム900において,MFP100とモバイル装置200との間でリモート通信を行う動作について,図2のシーケンス図を参照しつつ説明する。始めに,モバイル装置200は,MFP100との間でリモート通信を行うために,MFP100との通信が許可される状態であるセッションを確立する。
具体的に,モバイル装置200からMFP100を利用する場合,モバイル装置200にて前述のアプリを起動させる。モバイル装置200は,アプリが提供する画面をタッチパネル61に表示させ,MFP100の利用開始の要求を,タッチパネル61への操作によって受け付ける。
モバイル装置200は,当該要求を受け付けると,MFP100に対してセッションを確立させる確立要求を,無線通信インターフェース56を介して送信する。そして,モバイル装置200は,MFP100との間でセッションが確立されると,アプリが提供する画面であって,MFP100での利用対象の処理をユーザに選択させる処理選択画面を,タッチパネル61に表示させる。
MFP100は,モバイル装置200からセッションの確立要求を無線通信インターフェース36を介して受信すると,通信を許可する条件を満たしていることを条件として,セッションを確立させる。MFP100は,他の装置との間でセッションが確立されていない場合や,モバイル装置200とのセッションの確立が制限されていない場合には,通信を許可する条件を満たす。
MFP100は,モバイル装置200とのセッションが確立されている間,モバイル装置200から無線通信インターフェース36を介して処理の実行命令を受信する。換言すると,MFP100は,モバイル装置200とのセッションが確立されていない場合,モバイル装置200から処理の実行命令を受信しない。また,MFP100は,モバイル装置200とのセッションが確立されると,他装置との通信中である旨のメッセージを表示する画面をタッチパネル41に表示させ,操作部40への操作による実行命令の入力を受け付けない。
モバイル装置200では,処理選択画面の表示中,ユーザによるタッチパネル61への操作によって,MFP100での利用対象の処理が選択される。MFP100は,例えば,印刷処理,スキャン処理,コピー処理,ファクシミリ送信処理が可能であり,これらの中の1つの処理が選択される。ここでは,コピー処理が選択されたものとして説明を続ける。
モバイル装置200は,コピー処理が選択されると,コピー処理の実行命令を,無線通信インターフェース56を介してMFP100に送信する。MFP100は,無線通信インターフェース36を介してモバイル装置200からコピー処理の実行命令を受信すると,MFP100にセットされた原稿の読み取りを画像読取部20に開始させる。そして,MFP100は,画像読取部20に読み取らせた原稿の画像データを,無線通信インターフェース36を介してモバイル装置200に送信する。MFP100は,画像データを送信した後,当該画像データの画像の印刷を直ぐには開始せず,ユーザによる開始命令の入力を待つ。モバイル装置200は,画像データを受信すると,当該画像データをRAM53に記憶する。
また,MFP100は,モバイル装置200からコピー処理の実行命令を受信すると,モバイル装置200のタッチパネル61の表示サイズ情報を取得する取得要求を,無線通信インターフェース36を介して送信し,モバイル装置200から当該表示サイズ情報を,無線通信インターフェース36を介して受信する。表示サイズ情報に含まれるサイズは,タッチパネル61の物理的なサイズである必要はなく,表示に関与する部分のサイズであればよい。
そして,MFP100は,表示サイズ情報を受信した後,表示サイズ情報に示されたサイズに応じた表示指示を,無線通信インターフェース36を介してモバイル装置200に送信する。具体的にMFP100は,予め定められた所定サイズが,表示サイズ情報によるサイズ,すなわちモバイル装置200のタッチパネル61の表示サイズの,所定割合よりも小さいか否かによって,表示指示を決定する。
所定サイズがタッチパネル61の表示サイズの所定割合よりも小さい場合,タッチパネル61の表示サイズは所定サイズに対して非常に大きい。そこで,MFP100は,モバイル装置200に対して,画像データの画像と,当該画像データの画像に対して加工処理を施す加工モードに移行するための操作画面と,を1画面に表示させる指示である第1指示を,無線通信インターフェース36を介して送信する。加工処理としては,例えば,ペン書入れ,文字入れ,色合い調整,トリミングが該当する。本形態の操作画面は,上述の所定サイズと同等である。
モバイル装置200は,無線通信インターフェース56を介して第1指示を受け付けた場合,図3に示すように,タッチパネル61に,受信した画像データの画像63と,操作画面64とを,1画面で表示させる。操作画面64には,画像データの画像63の加工を可能にするモードである加工モードに移行する指示を入力する加工ボタン641と,印刷を開始させるスタートボタン642と,コピー処理をキャンセルするキャンセルボタン643と,が表示される。なお,操作画面64に表示される,ユーザの入力を受け付ける画像は,ボタンに限らず,アイコン等の特定の図柄であってもよい。
タッチパネル61へのユーザ操作によって,加工ボタン641がタッチされると,モバイル装置200は,操作画面64の内容を,例えば加工処理の種類が選択できる加工選択画面(不図示)に切り換える。さらにタッチパネル61へのユーザのタッチ操作によって加工処理の種類が選択されると,モバイル装置200は,選択された種類の加工処理に関する設定の入力を可能にする加工設定画面(不図示)に切り換える。なお,モバイル装置200への入力は,タッチパネル61の他,ボタン群62を用いて行われてもよい。また,ボタン群62への入力によって,加工選択画面や加工設定画面から図3に示した最初の操作画面64に表示を切り換えてもよい。
また,タッチパネル61へのユーザ操作によって,スタートボタン642がタッチされると,モバイル装置200は,印刷の開始命令を,無線通信インターフェース56を介してMFP100に送信する。スタートボタン642がタッチされる前に,画像データの画像に対して加工処理が行われた場合,モバイル装置200は,加工後の画像データである加工画像データを,上述の開始命令に付加する。MFP100は,無線通信インターフェース36を介して開始命令を受信すると,読み取った画像データの画像あるいは開始命令に付加されていた加工画像データの印刷を,画像形成部10に開始させる。
また,モバイル装置200は,開始命令の送信後,セッションを解除させる解除要求を,無線通信インターフェース56を介してMFP100に送信する。MFP100は,無線通信インターフェース36を介してモバイル装置200から解除要求を受信すると,モバイル装置200との間で確立されているセッションを解除する。これにより,他の装置がMFP100との間でセッションを確立させることが可能になる。また,MFP100は,タッチパネル41の表示を初期画面に戻し,操作パネル40からの処理の実行命令の入力制限も解除する。
なお,モバイル装置200からのセッションの解除要求の他,MFP100からモバイル装置200への問合せに対する応答が無い場合,一定期間以上モバイル装置200からの要求が無い場合,ボタン群42を介してMFP100に解除要求が入力された場合には,MFP100は,自主的にセッションを解除する。
一方,所定サイズがタッチパネル61の表示サイズの所定割合よりも大きい場合,タッチパネル61の表示サイズは所定サイズに対してそれ程大きくない。そのため,タッチパネル61に操作画面64を表示させると,操作画面64以外を表示できる領域が狭く,画像データの画像63等,操作画面64内の情報以外の情報が見難くなる可能性が高い。そこで,MFP100は,モバイル装置200に対して,画像データの画像を表示させる指示である第2指示を,無線通信インターフェース36を介して送信する。
モバイル装置200は,無線通信インターフェース56を介して第2指示を受け付けた場合,図4に示すように,タッチパネル61に,受信した画像データの画像63を表示させる。すなわち,モバイル装置200は,図3に示したような操作画面64を,タッチパネル61に表示させない。その代りに,MFP100が,図5に示すように,MFP100のタッチパネル41に,モバイル装置200の操作画面64に相当する操作画面44を表示させる。
操作画面44のレイアウトは,図3に示したモバイル装置200の操作画面64と同じである。つまり,操作画面44にも,加工モードに移行する指示を入力する加工ボタン441と,印刷を開始させるスタートボタン442と,処理をキャンセルするキャンセルボタン443とが表示される。そして,タッチパネル41へのユーザ操作によって,加工ボタン41がタッチされると,MFP100は,モバイル装置200に対して,加工モード移行指示を,無線通信インターフェース36を介して送信する。
モバイル装置200は,無線通信インターフェース56を介してMFP100から加工モード移行指示を受信すると,タッチパネル61に,例えば加工処理の種類が選択できる加工選択画面(不図示)を表示させる。さらに,タッチパネル61へのユーザ操作によって,加工処理の種類が選択されると,モバイル装置200は,選択された種類の加工処理に関する設定の入力を可能にする加工設定画面(不図示)に,タッチパネル61の表示を切り換える。なお,MFP100にて加工処理の種類まで選択させ,MFP100は加工処理の種類を付加した加工モード移行処理を送信してもよい。この場合,モバイル装置200は,タッチパネル61に,加工選択画面ではなく,加工設定画面を表示させる。
モバイル装置200にて加工処理が行われると,モバイル装置200は,加工画像データを,無線通信インターフェース56を介してMFP100に送信する。MFP100は,無線通信インターフェース36を介して加工画像データを受信すると,当該加工画像データをRAM33に記憶する。
また,MFP100は,タッチパネル41へのユーザ操作によって,スタートボタン442がタッチされると,スタートボタン442がタッチされる前に,加工画像データを受信した場合には当該加工画像データの画像の印刷を,加工画像データを受信していない場合には読み取った画像データの画像の印刷を,画像形成部10に開始させる。
コピー処理が終了した後,MFP100は,終了通知を,無線通信インターフェース36を介してモバイル装置200に送信する。そして,モバイル装置200は,終了通知を無線通信インターフェース56を介して受信すると,解除要求を無線通信インターフェース56を介してMFP100に送信する。MFP100は,解除要求を無線通信インターフェース36を介して受信した後,モバイル装置200との間で確立されているセッションを解除する。
[リモート通信の手順]
続いて,前述したリモート通信を実現するMFP100およびモバイル装置200の,個々の動作について説明する。
[MFPの動作]
始めに,MFP100の動作として,外部装置からの処理の実行命令を受け付けて画像処理を実行するリモート実行処理について,図6および図7のフローチャートを参照しつつ説明する。リモート実行処理は,外部装置とのセッションが確立されたことを契機に,CPU31によって実行される。なお,以下のリモート実行処理の説明では,外部装置としてモバイル装置200とのセッションが確立されたものとして説明する。
リモート実行処理では,CPU31は先ず,図6に示すように,モバイル装置200から処理の実行命令を受信したか否かを判断する(S101)。実行命令を受信していない場合には(S101:NO),CPU31は,終了命令を受信したか否かを判断する(S102)。終了命令を受信した場合には(S102:YES),リモート実行処理を終了する。終了命令を受信していない場合には(S102:NO),S101に移行し,CPU31は,実行命令あるいは終了命令の受け付けを待つ。
実行命令を受信した場合(S101:YES),CPU31は,実行が命令された処理が読み取りの必要な処理か否かを判断する(S111)。読み取りの必要な処理としては,例えば,スキャン処理,コピー処理,FAX送信処理が該当する。読み取りの不要な処理としては,例えば,印刷処理が該当する。なお,FAX送信処理であっても,送信対象の画像データあるいは画像データの参照先が実行命令に付加されていた場合には,読み取りの不要な処理となる。読み取りの必要な処理の場合(S111:YES),CPU31は,画像読取部20に原稿の画像の読み取りを開始させる(S112)。
読み取りの不要な処理の場合(S111:NO),CPU31は,実行命令に画像データが付加されているか否かを判断する(S121)。画像データが付加されている場合(S121:YES),CPU31は,当該画像データを取得する(S131)。そして,当該画像データを用いて処理を実行する(S132)。S132では,例えば,印刷処理であれば,画像形成部10に当該画像データの画像を印刷させる。FAX送信処理であれば,電話インターフェース37を用いて当該画像データに基づくファクシミリ送信を行う。S132の後は,リモート実行処理を終了する。
一方,画像データが付加されていない場合(S121:NO),実行命令には,処理対象となる画像データの参照先,すなわち画像データが記憶されている記憶先の情報が付加されている。そこで,CPU31は,当該参照先から画像データをRAM33に読み出す(S122)。なお,画像データの記憶先は,MFP100自身のNVRAM34でもよいし,外部装置でもよい。
S112あるいはS122の後,CPU31は,取得した画像データを,モバイル装置200に送信する(S113)。S113は,画像データ送信処理の一例である。そして,CPU31は,送信対象となった画像データを,RAM33の所定の記憶領域に一時的に保存する(S114)。なお,保存先は,RAM33に限らず,NVRAM34であっても外部装置であってもよい。
S114の後,CPU31は,プレビュー機能が有効か否かを判断する(S141)。MFP100が画像データを読み取りによって取得した場合あるいは参照先から読み出して取得した場合,前述したように,取得した画像データの画像を直ぐには印刷せず,取得した画像データをモバイル装置200にて一旦表示し,その内容をユーザに確認させ,スタートボタンをタッチすることで,当該画像データに対する処理が継続される。モバイル装置200は,このようなプレビュー機能を有効とするか無効とするかの設定を,実行命令に付加できる。そのため,CPU31は,プレビュー機能を無効とする設定が付加されている場合は,プレビュー機能が無効と判断する。また,例えば,スキャン処理において,プレビューを行わないスキャン処理をダイレクトスキャン処理とし,プレビューを行うスキャン処理と区別する場合には,処理の種類によってプレビュー機能の無効を判断してもよい。また,ファクシミリ送信の場合は,加工処理の必要性が低い傾向にあることから,プレビュー機能が無効と判断してもよい。
プレビュー機能が無効の場合(S141:NO),CPU31は,開始命令の入力を待つことなく,処理の続きを実行する(S151)。例えば,コピー処理であれば,印刷を開始し,スキャン処理であれば,画像データを保存し,FAX送信処理であれば,画像データに基づくファクシミリ送信を開始する。処理が終了した後,CPU31は,S114で保存した画像データを削除し(S152),リモート実行処理を終了する。
一方,プレビュー機能が有効の場合(S141:YES),CPU31は,プレビュー機能を実現するための画面表示処理を実行する(S142)。画面表示処理については,図8のフローチャートを参照しつつ説明する。
S142の画面表示処理では,CPU31は先ず,モバイル装置200のタッチパネル61の表示サイズ情報の取得を要求する取得要求を,モバイル装置200に送信する(S001)。S001は,取得要求送信処理の一例である。そして,CPU31は,モバイル装置200から送信される表示サイズ情報を受信して取得する(S002)。S002は,表示サイズ受信処理の一例である。さらに,CPU31は,予め定められている所定サイズを,ROM32あるいはNVRAM34から読み出して取得する(S003)。
所定サイズは,モバイル装置200に表示される操作画面64のサイズによって規定される。本形態では,所定サイズを操作画面64のサイズと同等とする。なお,所定サイズを,操作画面64の所定倍のサイズとしてもよい。また,MFP100は,所定サイズとして,加工ボタン641等の各種のボタンがユーザの指で操作し易いサイズを確保する。例えば,本形態では,操作画面64には3つのボタンが横一列に表示されるため,所定サイズは,縦が少なくともボタン1つ分,横が少なくともボタン3つ分,の表示が可能なサイズになる。
S003の後,CPU31は,所定サイズがS002にて受信した表示サイズ情報によるサイズの所定割合よりも小さいか否かを判断する(S021)。例えば,所定サイズに基づく面積をS1とし,タッチパネル61の表示サイズに基づく面積をS2とし,所定割合をRとすると,次の関係(1)を満たすか否かを判断する。
S1<S2×R (1)
操作画面64のサイズによって規定される所定サイズが,タッチパネル61の表示サイズ情報によるサイズの所定割合よりも小さくない場合,すなわち前述の関係(1)を満たさない場合(S021:NO),CPU31は,画像データの画像を表示させる第2指示,すなわち操作画面64を表示させない第2指示を,モバイル装置200に送信する(S022)。S022は,第2指示送信処理の一例である。
さらに,CPU31は,図5に示したように,操作画面44をタッチパネル41に表示させる(S023)。S023は,本体側操作処理の一例である。モバイル装置200とMFP100とで表示を分担することで,画像データの画像63と操作画面44とを各々見易く表示できる。S022とS023とは,逆順であっても同時であってもよい。
一方,所定サイズがサイズの所定割合よりも小さい場合,すなわち前述の関係(1)を満たす場合(S021:YES),CPU31は,画像データの画像63と操作画面64とを1画面で表示させる第1指示を,モバイル装置200に送信する(S031)。S031は,第1指示送信処理の一例である。
また,第1指示を送信した後,モバイル装置200から第1指示の表示を拒否する旨を受信したか否かを判断する(S032)。モバイル装置200は,第1指示を受信したとしても,操作画面64を表示するプログラムが組み込まれていない等,操作画面64の表示に対応していない場合には,表示を拒否する旨を応答する。
CPU31は,第1指示の表示を拒否する旨を受信した場合には(S032:YES),第2指示をモバイル装置200に送信し(S022),操作画面44をタッチパネル41に表示させる(S023)。これにより,画像データの画像63をモバイル装置200で表示し得る可能性を高める。S023の後,あるいは第1指示の表示を拒否する旨を受信しなかった場合には(S032:NO),画像表示処理を終了し,図6のリモート実行処理に戻る。
リモート実行処理の説明に戻り,S142の後,図7に移行して,CPU31は,開始命令が入力されたか否かを判断する(S161)。S161では,操作画面64がモバイル装置200のタッチパネル61に表示されていれば,スタートボタン642へのタッチに応じてモバイル装置200から送信された開始命令を受信したか否かが判断され,操作画面44がMFP100のタッチパネル41に表示されていれば,スタートボタン442がタッチされたか否かが判断される。
開始命令が入力されていなければ(S161:NO),CPU31は,タッチパネル41に操作画面44を表示中か否かを判断する(S162)。操作画面44を表示中の場合(S162:YES),CPU31は,その操作画面44に含まれる加工ボタン441がタッチされたか否かを判断する(S163)。
加工ボタン441がタッチされた場合(S163:YES),CPU31は,加工モード移行指示をモバイル装置200に送信する(S164)。S164は,操作情報送信処理の一例である。モバイル装置200は,加工モード移行指示を受信することで加工モードに移行し,各種の加工処理の設定ないし実行命令の入力を受け付ける。そして,CPU31は,モバイル装置200から送信される加工画像データを受信してRAM33に記憶する(S165)。S165の後,あるいは加工ボタン441がタッチされていない場合(S163:NO),あるいはタッチパネル41に操作画面44を表示していない場合(S162:NO),S161に移行し,CPU31は,各種の入力を待つ。
開始命令が入力された場合(S161:YES),CPU31は,開始命令に加工画像データが付加されているか否かを判断する(S171)。加工画像データが付加されていた場合(S171:YES),CPU31は,加工画像データを受信してRAM33に記憶する(S172)。
S172の後,あるいは加工画像データが付加されていない場合(S171:NO),CPU31は,加工画像データがRAM33に記憶されているか否かを判断する(S181)。加工画像データは,S165あるいはS172によって一時的にRAM33に記憶される。
加工画像データが記憶されている場合(S181:YES),CPU31は,加工画像データを用いて処理の続きを実行する(S183)。すなわち,加工画像データの画像を出力する。そして,処理の終了後,CPU31は,加工画像データをRAM33から消去する(S184)。一方,加工画像データが記憶されていない場合(S181:NO),CPU31は,S114で保存した画像データを用いて処理の続きを実行する(S191)。すなわち,S112あるいはS122によって得られた画像データの画像を出力する。S184の後,あるいはS191の後,CPU31は,S114で保存した画像データも消去する(S185)。
S185の後,CPU31は,タッチパネル41に操作画面44を表示中か否かを判断する(S186)。操作画面44を表示中の場合(S186:YES),CPU31は,タッチパネル41の表示を初期画面に戻し(S187),さらに終了通知をモバイル装置200に送信する(S188)。S188の後,あるいは操作画面44を表示中でなければ(S186:NO),リモート実行処理を終了する。
なお,モバイル装置200のタッチパネル61に表示されたキャンセルボタン642がタッチされたことに応じてモバイル装置200から送信される終了命令を受信した場合,あるいはタッチパネル41に操作画面44を表示中であって,スタートボタン441がタッチされる前にキャンセルボタン443がタッチされた場合,CPU31は,S114で保存した画像データを消去し,加工画像データを受信している場合にはその加工画像データも消去する。さらに,終了通知をモバイル装置200に送信し,リモート実行処理を終了する。
[モバイル装置の動作]
次に,モバイル装置200の動作として,処理の実行を要求するリモート要求処理について,図9のフローチャートを参照しつつ説明する。リモート要求処理は,アプリが起動され,タッチパネル61への操作によってMFP100の利用開始要求を受け付けたことを契機に,CPU51によって実行される。
リモート要求処理では,CPU51は先ず,MFP100に対してセッションの確立要求を送信し,MFP100とのセッションを確立させる(S201)。セッションを確立させると,CPU51は,MFP100に実行させる処理の実行命令と,アプリの終了命令とを受け付ける画面を,タッチパネル61に表示させる。処理の実行命令は,処理の種類ごとに受け付ける。なお,セッションの確立に失敗した場合には,リトライしてもよいし,エラーを表示してアプリを終了させてもよい。
S201の後,CPU51は,MFP100に実行させる処理の実行命令を受け付けたか否かを判断する(S202)。実行命令を受け付けていない場合(S202:NO),CPU51は,終了命令を受け付けたか否かを判断する(S203)。終了命令を受け付けていない場合(S203:NO),S202に移行し,CPU51は,実行命令あるいは終了命令を待つ。終了命令を受け付けた場合(S203:YES),CPU51は,セッションの解除要求をMFP100に送信してセッションを解除し(S291),リモート要求処理を終了する。
実行命令を受け付けた場合(S202:YES),CPU51は,受け付けた処理に関する実行命令をMFP100に送信する(S211)。S211は,実行命令送信処理の一例である。
S211の後,CPU51は,プレビュー機能が有効か否かを判断する(S212)。S212では,プレビュー機能を有効にするか無効にするかの設定によって判断してもよいし,処理の種類によって判断してもよい。プレビュー機能を有効にするか無効にするかの設定は,ユーザによって入力される。プレビュー機能が無効の場合(S212:NO),モバイル装置200では,画像データの画像の表示や加工処理が行われないため,セッションを解除し(S291),リモート要求処理を終了する。
プレビュー機能が有効の場合(S212:YES),CPU51は,MFP100での処理の実行開始によってMFP100から送信される画像データを受信する(S213)。S213は,画像受信処理の一例である。S213の後,CPU51は,MFP100から送信される取得要求に応じて,タッチパネル61の表示サイズ情報をMFP100に送信する(S214)。そして,CPU51は,表示サイズ情報を受信したMFP100から送信される表示指示を受信する(S215)。表示指示は,前述した第1指示あるいは第2指示である。S215は,第1指示受信処理の一例である。
S215の後,CPU51は,表示指示が第1指示であったか否かを判断する(S221)。MFP100は,第1指示であった場合(S221:YES),画像データの画像63と操作画面64とを1画面で表示する第1表示処理を実行し(S222),第1指示でなかった場合,すなわち第2指示であった(S221:NO),画像データの画像63を表示し,操作画面64を表示しない第2表示処理を実行する(S223)。
図10は,S222の第1表示処理の手順を示している。第1表示処理では,CPU51は先ず,図3に示したように,画像データの画像63と操作画面64とを1画面で,タッチパネル61に表示させる(S231)。S231は,第1表示処理の一例である。画像データの画像63と操作画面64とを1画面で表示させると,1画面に多くの情報を表示させることができる。そのため,ユーザにとって使い勝手がよい。なお,CPU51は,画像データの画像63を,タッチパネル61の表示サイズに合わせて拡大ないし縮小してもよい。
S231の後,CPU51は,操作画面64に含まれる加工ボタン641がタッチされたか否かを判断する(S232)。加工ボタン641がタッチされた場合(S232:YES),CPU51は,加工モードに移行し,タッチパネル61の画面を加工処理の種類が選択できる加工選択画面に切り換え,さらに加工処理の種類が選択されると,選択された種類の加工処理に関する設定の入力を可能にする加工設定画面に切り換えることで,加工処理の各種の設定を受け付ける(S233)。例えば,加工処理の種類が文字入れであれば,文字と文字の位置との少なくとも2つ設定を受け付ける。また,例えば,加工処理の種類がトリミングであれば,トリミングされる範囲の設定を受け付ける。
S233の後,CPU51は,S233で受け付けた設定に従って加工処理を実行し,加工画像データを生成し,RAM53に記憶する(S234)。そして,CPU51は,タッチパネルの画面を操作画面64に戻し,加工画像データの画像63をタッチパネル61に表示させる(S235)。
S235の後,あるいは加工ボタン641がタッチされていない場合(S232:NO),CPU51は,操作画面64に含まれるスタートボタン642がタッチされたか否かを判断する(S236)。スタートボタン642がタッチされていない場合(S236:NO),S232に移行し,CPU51は,各種の入力を待つ。
スタートボタン642がタッチされた場合(S236:YES),CPU51は,加工画像データがRAM53に記憶されているか否かを判断する(S271)。すなわち,S271では,加工モードによる加工処理を実行したか否かを判断する。加工画像データが記憶されている場合(S271:YES),CPU51は,加工画像データを付加した開始命令を,MFP100に送信する(S273)。一方,加工画像データが記憶されていない場合(S271:NO),CPU51は,加工画像データを付加しない開始命令を,MFP100に送信する(S272)。S272あるいはS273の後,第1表示処理を終了し,図9のリモート要求処理に戻る。
図11は,S223の第2表示処理の手順を示している。第2表示処理では,CPU51は先ず,図4に示したように,画像データの画像63をタッチパネル61に表示させる(S241)。S241では,操作画面64をタッチパネル61に表示させない。そして,CPU51は,MFP100から加工モード移行指示を受信したか否かを判断する(S242)。
加工モード移行指示を受信した場合(S242:YES),CPU51は,S233と同様に,加工モードに移行し,加工処理の各種の設定を受け付ける(S251)。そして,CPU51は,S251で受け付けた設定に従って加工処理を実行し,加工画像データを生成する(S252)。なお,加工モード移行指示に加工設定が付加されていた場合,CPU51は加工モードに移行することなくその加工設定に従って加工画像データを生成してもよい。S252の後,CPU51は,S252にて生成された加工画像データをMFP100に送信する(S253)。
S253の後,あるいは加工モード移行指示を受信していない場合(S242:NO),CPU51は,MFP100から終了通知を受信したか否かを判断する(S243)。終了通知を受信していない場合(S243:NO),S242に移行し,CPU51は,各種の受信を待つ。終了通知を受信した場合(S243:YES),第2表示処理を終了し,図9のリモート要求処理に戻る。
図9の説明に戻り,S222の第1表示処理あるいはS223の第2表示処理が終了した後,CPU51は,セッションを解除し(S291),リモート要求処理を終了する。
なお,CPU51は,MFP100から命令ないし指示を受信した後,所定時間が経過しても次の命令ないし指示を受信しなかった場合,強制的にセッションを解除し,リモート要求処理を終了する。また,CPU51は,操作画面64を表示中,キャンセルボタン463がタッチされた場合,CPU51は,開始命令の代わりに終了命令を送信し,セッションを解除し,リモート要求処理を終了する。
以上詳細に説明したように本形態のMFP100では,モバイル装置200のタッチパネル61での画像データの画像の表示が必要な際,モバイル装置200からタッチパネル61の表示サイズ情報を取得し,所定サイズが表示サイズ情報のサイズの所定割合よりも小さい場合に,画像データの画像63と操作画面64とをモバイル装置200のタッチパネル61に1画面で表示させる第1指示を送信する。所定サイズが表示サイズ情報のサイズの所定割合よりも小さい場合には,所定サイズである操作画面64を表示したとしても,画像データの画像63等,操作画面64以外の情報が見難くなる可能性は低い。そこで,そのような場合に第1指示を送信することで,煩雑な表示の回避が期待できる。
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,画像処理装置は,画像処理を行う機能を少なくとも1つを有していればよく,MFPの他,例えば,プリンタ,スキャナ,ファクシミリ装置,コピー機であってもよい。
また,実施の形態では,MFP100がモバイル装置200とセッションを確立させている間,他の外部装置とのセッションを確立させていないが,セッションを確立させてもよい。ただし,セッションを確立させない方が,モバイル装置200からの要求と,他の外部装置からの要求との競合を回避する上で好ましい。また,セッションを確立させる台数の上限を設定し,セッションが確立されている外部装置の台数がその上限よりも少なければ,セッションを確立させる構成であってもよい。
また,実施の形態では,モバイル装置200とのセッションが確立されている間,MFP100は,操作部40からの入力を制限しているが,入力を制限しなくてもよい。ただし,入力を制限する方が,モバイル装置200からの要求と,自装置への直接入力による要求との競合を回避する上で好ましい。
また,実施の形態では,モバイル装置でのプレビュー表示が無効に設定された処理や,印刷処理等の特定の処理を,画像データの表示が必要ない処理としているが,これらに限らず,例えば,モバイル装置での加工処理が無効に設定された処理であってもよい。
また,実施の形態では,第2指示を送信した場合,MFP100は,自身のタッチパネル41に操作画面44を表示させ,画像データの画像に対する操作を受け付けているが,ボタン群42によって受け付けてもよい。この場合,操作画面44をタッチパネル41に表示させなくてもよい。
また,実施の形態では,操作画面64ないし操作画面44にて加工モードへの移行指示を受け付け,その後に画面を切り換えて加工処理を各種の設定を受け付けているが,操作画面64ないし操作画面44にて加工処理の各種の設定を直接受け付けてもよい。
また,実施の形態に開示されている処理は,単一のCPU,複数のCPU,ASICなどのハードウェア,またはそれらの組み合わせで実行されてもよい。また,実施の形態に開示されている処理は,その処理を実行するためのプログラムを記録した記録媒体,または方法等の種々の態様で実現することができる。