JP6434350B2 - 輸送機器用風防表面の改質方法 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車や鉄道等の車両、飛行機、船舶等の輸送機器の風防を構成する透視用材料、採光用材料として使用される輸送機器用の風防表面の改質方法に関する。
自動車や鉄道等の車両、飛行機、船舶等の輸送機器の風防は、屋外環境下に晒され、或いはワイパーにより継続的に摩擦される環境下において使用される。ポリカーボネート等の樹脂基板は、ガラス製の基板に比べて軽量であり、透視用及び採光用等の窓材料としてガラス製の基板に代わるものであるが、成形性に優れるものの、表面は非常に傷がつきやすい。そこで樹脂基板上に二酸化ケイ素を主成分とする改質膜を形成し、耐擦傷性の向上を図ることが行われている。この改質層は、樹脂基板の表面にアクリル樹脂あるいはシリコンポリマーを塗布形成し硬質薄膜を形成することによって行われる。
さらに、Si−O−Si結合を含む化合物に、200nm以下の短波長光を照射して二酸化ケイ素を主成分とする硬質薄膜層に改質する技術が特許文献1に開示されている。200nm以下の短波長光の持つエネルギーは有機高分子の結合鎖を切断し、化学的な構造を破壊する力を有する。これを光開裂とよぶが、レーザ強度、パルス幅及びパルス間隔などの諸条件を適宜選ぶことにより、基板上に形成されたシリコンポリマー層中の側鎖官能基を構成するC−H、Si−C、Si−O−Si結合を順次選択的に切断させ、更には、この開裂した酸素原子とケイ素原子を再結合させて、層の一部を二酸化ケイ素に改質する。
特許文献2には、190nm以下の光を照射した状態で、当該光の波長以上の波長を有する第2のレーザ光を集中照射してシリカガラス層を形成する技術が知られている。
また、特許文献3及び4には、ガスバリア性フィルムを製造する際に真空紫外線と近紫外線の両方を用いる技術が開示されている。特許文献3によれば、ポリシラザン化合物溶液を塗布した塗膜に対して200nm以下の波長を含む放射線(VUV)を照射して原子の結合を直接切断し、かつVUVによって生ずるオゾンを230〜300nmの波長成分を含む放射線により活性酸素に変化させることにより酸化ケイ素化を促進させ、ガスバリア性を持たせたフィルムを作成するとしている。また、特許文献4によれば、200nm以下の波長を含む放射線(VUV)を照射するだけでは、製造したフィルムは波長220nm付近に紫外線吸収スペクトルが表れる現象が生じる。特許文献4においては、これを欠陥と見做して、200nm以上230nm以下の紫外線を照射してこの欠陥を修復して、ガスバリア性を向上させるとしている。
WO−A1−2009110152号公報 特許第4691664号公報 特表2009−503157号公報 特開2014−223578号公報
特許文献1に記載されている方法では、光開裂を用いてシロキサン結合を有するシリコンポリマー層の上に二酸化ケイ素を主成分とする膜を形成するためには、波長200nm以下の紫外線(真空紫外線)を用いなければならない。真空紫外線は、空気中の酸素に吸収され照射距離により減衰量が大きく変化し、曲面や凹凸のある樹脂基板に対して光強度で照射して均一な膜厚の二酸化ケイ素を主成分とする膜に改質するのは難しかった。
特許文献2に記載されている方法によれば、190nm以下の光として172nmが使用され、172nmの波長以上の波長を有する第2のレーザ光として790nmの光をレンズにより集光して用いている。第2のレーザ光として用いる790nmの光は赤外線であり、130fsという超短時間の間にエネルギーをSi−O−Si結合を含む化合物に与え、ケイ素を熱酸化させてシリカガラス層へ改質している。また、波長の長い790nmの光は、Si−O−Si結合を含む化合物、例えば、シロキサンからなるシリコンポリマーを透過し、容易に通過してしまうため、レンズの焦点によって空間位置を選択し、光を特定の空間位置に集中させている。このため、狙った位置にシリカガラス層を作ることはできる一方で、当該曲面や凹凸のある樹脂基板の表面に倣った状態で、当該表面から均一な厚さの二酸化ケイ素を主成分とする膜を形成することは困難である。
特許文献3によれば、酸化ケイ素化させる効率が向上し、フィルムのコーティングにおいて、ロール・ツゥ・ロール方式でバリア性を有する皮膜を得ている。また、特許文献4に記載されている方法によれば、200nm以下の波長を含む放射線の照射により生じた欠陥を修復している。しかしながら、表面から均一な厚さの二酸化ケイ素を主成分とする膜を形成する点についての考慮はされていない。輸送機器の風防は、屋外での使用環境下において全表面に対して継続的な物理的な摩耗を受けるため、二酸化ケイ素の改質膜の厚さに部分的なバラツキがあると、薄い箇所から割れが生じる。また、真空紫外線は、大気中では酸素分子に吸収されてしまい、照射対象物との距離が30mm離れてしまうと、殆どエネルギーが到達しない。従って、被照射表面と光源との距離の制御は厳密さが要求される。輸送機器の風防は、表面が曲面となっているものが多く、この曲面に正確に追従して被照射表面と光源の距離を保つことは困難であり、厚さに部分的なバラツキが生じることは避けられない。
本発明は、曲面や凹凸のある樹脂基板の表面に対し、当該表面から均一な厚さの二酸化ケイ素を主成分とする膜を形成する製造方法を提供することを目的とする。
本発明の改質方法は、塗布により形成されたシロキサン結合を有するポリマー層を表面に有する樹脂基板に対し真空紫外線を照射することにより、前記シロキサン結合を有するポリマー層の表層に二酸化ケイ素を主成分とする膜を形成し、その後に近紫外線を照射することにより、前記二酸化ケイ素を主成分とする膜の膜厚を増加させることを特徴とする。
上述した本発明によれば、曲面や凹凸のある樹脂基板の表面であっても、当該表面から均一な厚さの二酸化ケイ素を主成分とする膜を形成することができる。
本実施例の改質方法によって製造された樹脂基板の断面を模式的に示した図である。 シリコンポリマー層に真空紫外線、近紫外線を照射して得られた二酸化ケイ素を主成分とする膜の厚さを示す図である。 FT−IRスペクトルを示す図である 段差面、曲面のシリコンポリマー層に、真空紫外線を照射する場合を示す図である。 真空紫外線、近紫外線を照射する改質装置を示す図である。 エネルギー量を決定するステップを示す図である。 シリコンポリマー層に紫外線吸収剤を添加した場合における各波長の吸収係数を示した図である。
輸送機器用の風防100は、ポリカーボネート等の樹脂基板1と、その上に形成されたプライマー層2と、その上に形成されたシリコンポリマー層3とから構成される。ここに、プライマー層2及びシリコンポリマー層3はそれぞれディップコーティング法により形成され、シリコンポリマー層3の表面は改質膜(硬質薄膜)4に改質されている。図1は、本実施例の改質方法によって製造された樹脂基板1の断面を模式的に示した図である。尚、シリコンポリマー層3として、シロキサン結合を有する他のポリマーを用いても良い。シロキサン結合を有するポリマーとは、シロキサン結合を有するシリコンポリマーのほかに、シロキサン結合を有するアクリルポリマーなどがある。但し、シロキサン結合を有するアクリルポリマーを用いる場合、プライマー層2は不要である。
以下、風防100の構成について説明する。
樹脂基板1としては、特に制限はないが、素材としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート基板、ポリアリレート、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート又はスチレン系重合体等の樹脂、あるいは各種オレフィン系樹脂が好適に挙げられる。
プライマー層2としては、樹脂基板1とシリコンポリマー層3との密着性の向上、耐衝撃性の向上等の目的で設けられるが、本発明に於いては、樹脂基板1の表面に生じている傷を消失する効果も有する。このようなプライマー層2は、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタンアクリレート樹脂等の各樹脂を使用することが可能である。
シリコンポリマー層3は、具体的には、アルコキシシランをベースとして、縮合反応を経由して得られたシロキサンゾルを、加水分解して得られるシロキサン樹脂を用いる。
改質膜4は、シリコンポリマー層の表面側に対して酸素の存在する雰囲気中(例えば大気中)或いは存在しない雰囲気中で真空紫外線を照射して改質した改質膜4aと、酸素の存在する雰囲気中或いは存在しない雰囲気中で改質膜4aの内側にその後近紫外線を照射して改質した改質膜4bとからなっており、いずれも二酸化ケイ素を主成分とする薄膜である。
次に、風防100の製造方法について説明する。樹脂基板1上に湿式法、例えばディップコーティング法により一定肉厚のプライマー層2を形成し、所定時間、室温にて乾燥させた後、加熱して所定時間、大気中にて硬化乾燥させる。樹脂基板1の温度が室温に戻った後に、同様にしてプライマー層2上に一定肉厚のシリコンポリマー層3を湿式法、例えばディップコーティング法により形成し、所定時間、室温にて乾燥させた後、加熱して大気中にて所定時間、硬化乾燥させる。硬化乾燥の温度や時間は、使用する素材の種類や膜厚に応じて適宜変更させる。
以上は、熱硬化型のシリコンポリマーを用いた場合の製造方法であるが、これに限定されるものではなく、UV硬化や他の製法にも有効である。
その後、水、又は過酸化水素(H)、有機光増感剤(メチレンブルー、ローズベンガル、エオシンY、テトラフェニルポルフィリン、プロトポルトフィリンIX、ルブレン、C60)水溶液または溶液(総称して酸化剤溶液と称する)に浸漬して、シリコンポリマー層中に含侵させる。浸漬時間は、シリコンポリマー層の液体バリア性を考慮して決定して、シリコンポリマー層中に含侵させる酸素量を制御する。シリコンポリマー層に含侵した水、又は酸化剤溶液は、二酸化ケイ素に改質するための酸素の供給源となるため、シリコンポリマー層の内層の深くまで二酸化ケイ素の膜厚を厚くすることが容易になるが、必須ではない。
本実施例においては、シリコンポリマー層3に真空紫外線を照射し、その後波長200nm以上400nm以下の近紫外線を照射するのであるが、その前に、二酸化ケイ素への改質において当発明者らが発見した現象について図2、図3を用いて説明する。
まず、波長222nmのKrClランプにてシリコンポリマー層3の表面の別の位置が2000mJ/cmと5000mJ/cmの2つのエネルギー密度となるようにそれぞれ照射した。その結果は、図2Aのグラフd1に示すように、両者とも殆ど二酸化ケイ素に改質された層が観測できず、200nm以上の光では、十分な光開裂は起こらないことを確認した。
次に、波長172nmのXeランプのみを用いてシリコンポリマー層3に照射した。その結果、図2Aのグラフd2(若しくは、図2Bのグラフd2)に示すように、表面のエネルギー量が増加するに従って、表面から順にシリコンポリマー層3の内側に向かって、二酸化ケイ素の層を厚くしてゆくことが観測された。シリコンポリマー層は、波長172nmの真空紫外線にとって透過率が著しく低い(20%程度)のに対して、二酸化ケイ素に改質された層は透明であり、シリコンポリマー層3の表面から順に真空紫外線が到達して、改質が行われているのである。
次に、Xeランプを照射した後に波長222nmのKrClランプを照射したときの改質膜4の厚みを測定した。図2Bのグラフd3は、その結果である。シリコンポリマー層3の改質膜4がさらに、厚くなっていることが観測された。波長172nmのXeランプのみを用いて改質された改質膜を改質膜4aに相当すると定義すると、この増加された二酸化ケイ素の層は、改質膜4bに相当すると定義される。改質膜4bは、波長172nmの照射のエネルギー量により若干増加する傾向に見られるが、ほぼ200nmの厚さである。これは、波長172nmの真空紫外線により、二酸化ケイ素の層の内側に、二酸化ケイ素になりきらない中間生成物がある一定量存在し、これが波長222nmの近紫外線により、二酸化ケイ素に改質されたものと推測される。また、シリコンポリマー層3は、波長222nmの近紫外線にとって透過率はやや低く(90%程度)、真空紫外線により改質された改質層4aは、近紫外線にとって透明であり、近紫外線は改質層4aを透過して、その内側でエネルギーが吸収されて改質層4bが形成されたと推測される。
そして、波長222nmのKrClランプを5000mJ/cmのエネルギー密度で照射後に、波長172nmのXeランプを照射した。その結果は図2Bのグラフd4に示すように、改質膜4aの内側のシリコンポリマー層3に二酸化ケイ素の層の増加が観測された。増加量は、波長172nmのXeランプの照射エネルギーによらず、平均して50nm程度の厚さが観測された。これは、自然に生じる酸化膜の厚さ1.2nmよりは厚いものの、波長222nmのKrClランプを後に照射した実験例と比べて遙かに薄く、膜厚の増加に関しては近紫外線の先の照射による効果は期待できないものであった。
図3は改質前のシリコンポリマー層3(グラフf1)に対して、波長200nm以下の紫外線を照射したとき(グラフf2)、および200nm以下の紫外線を照射した後に200nm以上の紫外線を照射したとき(グラフf3)のFT−IRスペクトルである。シリコンポリマー層3のスペクトルからシリコーン特有のピークが1100cm−1と1270cm−1に示されるが、200nm以下の紫外線を照射することにより、どちらのピークもピークが減少しており、改質効果が確認できる。さらに、200nm以上の紫外線を照射したときのほうが、ピークの減少が大きい。これは、図2の膜厚増加の結果と一致する。
近紫外線の照射は、真空紫外線の直後でも良く、又は、1日2日と時間をおいて近紫外線を照射しても良い。中間生成物は時間により容易に消失しないからである。
尚、真空紫外線により改質された改質層4aは、気体バリア性が高く、シリコンポリマー層3を二酸化ケイ素に改質するための酸素を大気中から取り入れることが困難であるため、先に水、又は酸化剤溶液を酸素の供給源としてシリコンポリマー層3に含侵させている。従って、本実施例においては、真空紫外線或いは近紫外線は、大気中でなくともシリコンポリマー層3中に含侵した又は酸化剤溶液の酸素を利用できるのである。
真空紫外線を発生する光源としてレーザを用いる場合は、波長126nmのAr2レーザ、波長157nmのF2レーザ、波長193nmのArFレーザを用いることができる。真空紫外線を発生する光源としてランプを用いる場合は、波長126nmのAr2ランプ、波長146nmのKr2ランプ、波長172nmのXeランプを用いることができる。
一方、近紫外線を発生する光源としてレーザを用いる場合は、波長222nmのKrClレーザ、波長248nmのKrFレーザ、波長308nmのXeCl、波長351nmのレーザを用いることができる。近紫外線を発生する光源としてランプを用いる場合は、波長222nmのKrClランプ、波長308nmのXeClランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯を用いることができる。しかし、波長が長くなるにつれて、シリコンポリマー層3に対する透過率が増加してしまうため、改質層4aの直下に改質層4bを形成することが困難になる。
ところで、真空紫外線は、大気中では酸素分子に吸収されてしまい、照射対象物との距離が30mm離れてしまうと、殆どエネルギーが到達しないことが知られている。一方、近紫外線は真空紫外線に比べて遙かに到達距離は長い。波長222nmの近紫外線であっても、波長172nmの真空紫外線よりも5乃至6倍の到達距離を有している。
これは、真空紫外線により改質される改質膜4aの膜厚が真空紫外線の光源とシリコンポリマー層3の間の距離に依存する程度は、近紫外線により改質される改質膜4bの膜厚が近紫外線の光源とシリコンポリマー層3の間の距離に依存する程度よりも大きいということを意味する。
すなわち、照射対象物の表面形状が、曲面や凹凸面であるときに、改質膜4の厚さを均一にしようとするとき、改質膜4aのみで所用の膜厚にするよりも、改質膜4aと改質膜4bとの組み合わせで、所用の膜厚するほうが、照射対象物の表面全体を観察したときに均一度が向上する。
図4に、風防100の一例として、表層のシリコンポリマー層3に表面段差或いは曲面の表面形状が有り、これに真空紫外線を照射する場合を示す。真空紫外線の光源13の移動には、図5Aに示されるようなロボットアーム11を使用する。図4Aは凹凸面であるシリコンポリマー層3に対し光源13を水平移動させている状況を示している。図4Bは曲面であるシリコンポリマー層3に対しロボットアーム11により光源を曲面に沿って移動させている状況を示しているが、ミクロ的にみるとロボットアーム11の関節におけるステップモータのステップ動作により、微少な水平、垂直方向の移動を繰り返しており、図において次の照射位置に移動するため、光源を垂直方向に移動し、水平方向に移動させている様子を示している。
図4Aでは、光源が水平方向に移動するため、凹凸面の高低が照射距離に影響する。また、図4Bでは、光源が曲面をスキャンする様子をミクロ的に示しており、光源の移動が曲面に正確に沿ったものでは無く、照射距離が均一ではない。一方、光源は真空紫外線の光源の場合、シリコンポリマー層3と光源の間隔は、真空紫外線の大気中での減衰を考慮して、せいぜい5mm程度(30%に減衰)であり、シリコンポリマー層3の表面に応じて、これに正確に追随するように光源を移動させる設備を備えることは難しい。これは、風防100が大面積である場合には、より顕著になる。尚、真空紫外線は大気中で30mm離れると0.1%以下に減衰する。
図4Aにおいて、凹凸面の高低差hが2mm程度であり、凹凸の平均高さに対して距離5mmで照射したとすると、光源(100%)から凹凸面の高いところ(距離4mm)におけるエネルギーは40%を超え、距離5mmで30%程度、低いところ(距離6mm)では10%半ばになる。このように、エネルギーは大きく相違することになる。
図4Aの例の段差表面において600nmの膜厚を目的の膜厚とするには、真空紫外線のみで達成するためには、2000mJ/cmのエネルギーが必要となる(図2を参照)。仮に光源との距離が5mmの位置で2000mJ/cmとなるように照射したとすると、凹凸面の高いところではエネルギーは3000mJ/cm弱となり、低いところでは1000mJ/cm程度となる。これでは、改質膜4の膜厚が大きく相違することとなってしまい均一化は図れない。
一方、光源との距離が5mmの位置で1500mJ/cmのエネルギー密度となるように真空紫外線を照射し、光源との距離が5mmの位置で5000mJ/cmのエネルギー密度となるように近紫外線を照射した場合、真空紫外線は凹凸面の高いところではエネルギーは2000mJ/cm弱となり、低いところでは800mJ/cm程度となる。近紫外線は、照射距離による減衰は殆どないので、形成される改質膜4の膜厚は+/−100nm程度であり変動幅は大幅に縮小できる。
図4Bの例の曲面においても、600nmの膜厚を目的の膜厚とするには、ロボットアーム21により、樹脂基板1の全表面に対して同一の照射距離を保つ必要がある。ロボットアーム21自体の位置決め精度に加え、ロボットアーム21関節におけるステップモータのステップ動作やギアを用いたときのバックラッシュの影響等により、照射距離を現実的には一定にすることはできない。本例においても、真空紫外線を照射し、近紫外線を照射した場合、真空紫外線は凹凸面により改質膜4aの膜厚は変動するが、近紫外線は照射距離による減衰は殆どないので形成される改質膜4bの膜厚はほぼ一定であり、曲面全体における均一化が図れる。
図5は、樹脂基板1上にプライマー層2を介して形成されたシリコンポリマー層3上に波長200nm以下の真空紫外線レーザ又はランプと波長200nm以上の400nm以下の近紫外線レーザまたはランプを照射する改質装置を示している。樹脂基板1は、車両や、航空機、船舶の風防として利用されるもので、曲面形状を有している。
図5Aは、改質装置10は大気中において、ロボットアーム11の腕先端に取り付けた真空吸着装置12により光源13を把持し、固定された樹脂基板1に対して、照射距離を制御しながら全表面の位置をずらしてスキャンする。ロボットアーム11には、樹脂基板1の表面形状のデータが記憶されており、関節に配置されたステップモータを動作させている。
図5Bは、改質装置20は大気中において、ロボットアーム21の先端に取り付けた真空吸着装置22により樹脂基板1を把持し、固定された光源23に対して、照射距離を制御しながら全表面の位置をずらしてスキャンする。ロボットアームには、樹脂基板1の表面形状のデータが記憶されており、関節に配置されたステップモータを動作させている。
図5Cは、改質装置10、20の光源13若しくは23である。真空紫外線のランプ14と、近紫外線のランプ24が交互に平面状に配置されている。樹脂基板1と光源との位置関係が、ロボットアーム11,21により変更されると、真空紫外線の照射と近紫外線の照射が時系列的に行われる。なお、近紫外線が先に照射されることがあるかもしれないが、このときには改質が生じないだけである。
図6は、本実施例による真空紫外線の光源のエネルギー量を決定するステップを示している。目標とする改質膜4の膜厚Tdが与えられると(ステップS1)、まず近紫外線による改質膜4bの厚さ膜厚Tuを決定する(ステップS2)。膜厚Tuは、近紫外線のランプ24の能力に応じて決定する。次に、膜厚Tdから膜厚Tuを減算した膜厚を改質膜4aとして形成すべき膜厚として求め(ステップS3)、(Td−Tu)の膜厚を得る真空紫外線のランプ14によるエネルギー量を求める(ステップS4)。求めたエネルギー量により、ランプ14によりある特定の表面位置に対する照射時間が決定される。
図7は、シリコンポリマー層3に紫外線吸収剤を添加した場合における各波長の吸収係数を示した図である。短波長になるほどシリコンポリマー層3の吸収が強い傾向は変わらないが、近紫外線における吸収率を増加させることができる。シリコンポリマー層3に紫外線吸収剤を添加しておけば、近紫外線のエネルギーがより効率よく吸収され改質膜4bを形成することができる。
上記実施例においては、真空紫外線及び近紫外線の光源としてランプを用いたが、それぞれレーザを用いても良い。この場合、レーザの照射範囲は、ランプ光源に比べて狭いため、大面積の樹脂基板1に対する処理にはやや不向きであるが、樹脂基板1の表面に改質膜4を形成する範囲と形成しない範囲を設ける用途には適している。
上記実施例においては、改質装置10,20は、大気中におかれたが、酸素を制御された雰囲気中に配置されても良い。地球上においては、酸素を完全に除外した作業環境を作ることは困難であり、酸素が存在する限り、真空紫外線の到達距離は長く出来ないからである。尚、近紫外線を照射する際には、近紫外線の到達距離に対する酸素の影響はほぼ考慮しなくてよいため、大気中であっても良い。
上記実施例は、光源として真空紫外線及び近紫外線の光源の両方を備えた光源を用いたが、それぞれ別の光源として用意し、別のロボットアームによりスキャンをさせても良い。
1 樹脂基板
2 プライマー層
3 シリコンポリマー層
4 改質膜
4a、4b 改質膜
10,20 改質装置
11,21 ロボットアーム
12,22 真空吸着装置
13,23 光源
14,24 ランプ
100 風防

Claims (4)

  1. 塗布により形成されたシロキサン結合を有するポリマー層を表面に有する樹脂基板に対し真空紫外線を照射することにより、前記シロキサン結合を有するポリマー層の表層に二酸化ケイ素を主成分とする膜を形成し、その後に近紫外線を照射することにより、前記二酸化ケイ素を主成分とする膜の膜厚を増加させる輸送機器用風防表面の改質方法。
  2. 請求項1の改質方法において、前記真空紫外線を照射する前に、シロキサン結合を有するポリマー層を水、過酸化水素(H)、有機光増感剤(メチレンブルー、ローズベンガル、エオシンY、テトラフェニルポルフィリン、プロトポルトフィリンIX、ルブレン、C60)水溶液または溶液に漬けることを特徴とする輸送機器用風防表面の改質方法。
  3. 請求項1の改質方法において、前記シロキサン結合を有するポリマー層は紫外線吸収剤が添加されたシロキサン結合を有するポリマーの塗布により形成されていることを特徴とする輸送機器用風防表面の改質方法。
  4. 請求項1の改質方法において、目標とする二酸化ケイ素を主成分とする膜の膜厚Tdに対して、まず近紫外線により形成される二酸化ケイ素を主成分とする膜の膜厚Tuを決定し、膜厚Tdから膜厚Tuを減じた膜厚を真空紫外線の照射により形成される膜厚であると決定して、真空紫外線を照射のエネルギー量を求めることを特徴とする輸送機器用風防表面の改質方法。
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