JP6433686B2 - 癌治療用組成物の調製のためのイカリチンの使用 - Google Patents

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Description

本発明は癌治療用組成物の調製のためのイカリチンの使用に関する。
発明の背景
ER−α36は、近年発見されたエストロゲンレセプターであり、主として原形質膜上および細胞質内に位置し、膜で開始される「核外」シグナル伝達経路を介在することが見出されている。膜潜在性シグナルは、エストロゲンに関する即応性シグナルとして認められており、一般に、たとえば、MAPK/ERK、ホスファチジルイノシトール−3−キナーゼ、およびプロテインキナーゼCのようなシグナル伝達経路を活性化する。腫瘍細胞におけるER−α36の発現が乳癌細胞の増殖を推進するようであることが、臨床前実験によって開示されている。さらに、ER−α36が多くの癌において発現していることが見出されており、癌および腫瘍の進行において重要な役割を果たす。
式(I)で示されるイカリチンは、イカリインの酵素加水分解によって得られる、効能のある新規モノマーであり、イカリインは、インヨウカク(Epimedium Herb)から単離される有効成分である。
イカリチンは、ER−α36を発現するエストロゲンレセプター細胞の異常増殖に関係する疾患の治療法として中国特許第200780039276.9号(China patent ZL.200780039276.9)において開示され、前述の疾患は数種類の癌を含む。
イカリチンを調製する方法は、中国特許第101302548号公報(CN101302548B)において開示されている。本方法において、出発物質イカリインをβ−D−グルコシダーゼで加水分解し、遠心分離を行い、加水分解産物を遠心分離して得られたペレットをアセトンに溶解する。二回目の遠心分離および濾過に続いて上清を収集する。上清を再結晶した後に純粋なイカリチンが得られる。
先行技術において、対象へのイカリチンの投与についての報告はない。
本発明は癌治療用の組成物の調製のためのイカリチンの使用を対象とする。
一つの側面において、本発明は癌治療用組成物の調製のためのイカリチンの使用を提供し、組成物は、患者に少なくとも1サイクル経口投与され、各サイクルは連続的な28日間投薬スケジュールを含み、イカリチンは、1日400〜1800mgの用量で少なくとも1日に1回投与される。
好ましくは、組成物は食後患者に経口投与される。
好ましくは、イカリチンの用量は600〜1600mgを1日2回である。
好ましくは、イカリチンの用量は800〜1600mgを1日2回である。
好ましくは、イカリチンの用量は1200〜1600mgを1日2回である。
好ましくは、イカリチンの用量は600〜800mgを1日2回である。
好ましくは、イカリチンの用量は600mgを1日3回である。
好ましくは、組成物は患者に少なくとも2サイクル投与される。
本発明の利点は、癌治療のために患者にイカリチンを投与する最適なパターンを本発明者らが発見したことである。本発明者らは、本発明の投与方法が改善された効果を有し、副作用が低減することを見出した。
図1は、食事の前または後にそれぞれ1日1回800mg投与されたイカリチンの薬物動態を示す。 図2は、食事の前または後にそれぞれ1日1回1600mg投与されたイカリチンの薬物動態を示す。 図3は、食後に1日1回400、800、および1600mg投与されたイカリチンの薬物動態を示す。 図4は、例におけるHCC(肝細胞癌)患者のB−モード超音波画像を示す。 図5は、例におけるHCC患者のAFP変化曲線を示す。 図6は、例におけるHCC患者の増悪までの時間を示す。 図7は、例におけるHCC患者の全生存期間を示す。
発明の詳細な説明
定義
ここで使用される場合、以下の用語は下記に示す意味を有する。
「対象」または「患者」は癌を患っている哺乳動物を意味し、ヒトを含むがそれだけに限られない。
「最大耐量(MTD)」とは、容認できない毒性は示さずに所期の効果を生み出す、放射線学的または薬理学的治療の最大投与量を意味する。本発明において、2人の患者がサイクル1において薬剤関連用量制限毒性(drug-related dose limited toxicity)を経験した群より低い一つの用量レベルが、MTDである。
「CR」は、完全奏功が治療後達成されたこと、すなわち、患者の癌のすべての徴候が治療に応じて消失したことを意味する。
「PR」は、部分奏功が治療後達成されたこと、すなわち、治療の終わりにいくらかの疾患が残っているものの臨床検査またはX線検査およびスキャンにおいて、30%またはそれ以上の疾患の減少が患者において達成されたことを意味する。
「SD」は、安定した病態が見られたこと、すなわち、治療の終わりに患者の病態が治療前の状態からほとんど変化しなかったことを意味する。
「PD」は、進行性の病態が見られたこと、すなわち、治療中または治療後に、疾患のサイズまたは範囲における増加が微増以上であることを意味する。
「OS」は、患者の全生存期間日数を意味する。全生存期間は、問題の癌に関連するものと関連しないものの両方に係わるあらゆる原因による死を考慮に入れた上で、規定時間後生存していると期待される、グループ内の人々の割合の指標である。
「TTP」は、患者における増悪までの時間、すなわち、疾患に対する診断日または治療の開始から、疾患が悪くなりまたは体の他の部分に広がりはじめるまでの時間の長さを意味する。臨床試験において増悪までの時間を測定することは、新規治療法がいかによく効いているかを見る一つの方法である。
実施例
以下に示す例は本発明を説明するために提供されるものであり、本発明を限定するものではない。いかなる修正または変更も本発明の範囲内である。
I.研究計画
1.研究の段階
臨床試験は二つの段階を含む。すなわち、第I相試験は患者にとっての最大耐量を求めることを目的とする。第II相試験は、患者の治療における投薬量を得ることを目的とする。
1.1 第1a相試験:進行性乳癌を患っている患者における用量拡大試験。3〜6人の患者の群が1種類の用量を受け、50、100、200、400、800、1600mg/日の6種類の設定用量が、少なくとも28日サイクルにわたって患者に経口投与された。
1.2 第1b相試験:600mgおよび800mgの一定用量のイカリチンがBID(1日2回)で、進行性の固形腫瘍を患っている患者に少なくとも28日間のサイクル投与された。
2.主な選択基準
第Ia相試験:米国東海岸癌臨床試験グループ(Eastern Cooperative Oncology Group)(ECOG)スコアが1以下であることに基づいて、従来の標準治療では効かない進行性乳癌を患っている18歳以上65歳以下の女性を選抜した。
第Ib相試験:標準治療を行わない進行性癌患者、特に、チャイルド・ピュー分類(Child-Pugh Class)でAまたはBの肝機能のHCC患者を選抜した。
3.主な除外基準
第Ib相試験:次に示す状態を有する患者は除外した:ECOGスコア≧2、ANC≦細胞1500個/μL、血小板≦細胞80,000個/μL、Hb≦9.0g/dL、ビリルビン>1.5×ULN(正常値上限)、ASTもしくはALT>5×ULN、またはアルブミン<2.8g/dL。
次に示す状態を有する患者もまた除外した:以前の全身化学療法、化学塞栓、経皮的エタノール注入、またはHCCの外科手術後30日未満。
II.第Ia相試験治療サイクル
1.第Ia相試験の患者構成
2.治療サイクル(1サイクル28日間)
腫瘍判定は28日毎に行った。CRまたはPRは観察されなかった。
さらに、1人の患者は9サイクルを完了した。
3.第Ia相試験の有害事象
G3/4有害事象は観察されなかった。筋肉痛、関節痛、高トリグリセリド血症、のぼせ、食欲不振、発疹、および不正出血を含む、表に載っていない他の有害事象はすべて、1人の患者のみにおいて見出された。
4.薬物動態
図1に見られるように、イカリチン800mgの食後血漿中濃度は、イカリチン800mgの空腹時血漿中濃度より高い。
図2に見られるように、1600mgの食後血漿中濃度は、イカリチン1600mgの空腹時血漿中濃度より高い。
したがって、生物学的利用能は空腹時投薬より食事後投薬の方が良好である。
図3に見られるように、イカリチン用量400mg、800mg、および1600mgにおけるイカリチンの血漿中濃度は、完全な直線パターンではないが用量とともに増加する。イカリチン800mgによって達成される最大血漿中濃度は、イカリチン1600mgの血漿中濃度と近似する。加えて、イカリチン1600mgの投与で吸収飽和が起こる。
本研究は、イカリチン800mgおよび1600mgBIDの半減期が、それぞれ4.8±2.7hおよび4.5±0.8hであることを明らかにするものである。したがって、イカリチンは1日に2回または3回経口投与され得る。患者の便宜上、イカリチンは第Ib相試験において1日に2回投与され得る。
III.第Ib相試験におけるHCC患者試験
1.患者構成−第Ib相HCC患者試験
2人のMBC(転移性乳癌)患者、2人のCRC(大腸癌)患者、3人のICC(肝内胆管癌)患者、1人の肺癌患者、および2人のHCCと臨床的に診断された患者もまた第Ib相試験段階で登録された。
2.重篤有害事象−第Ib相試験
G2薬剤関連有害事象は観察されなかったことが本構成から認められる。薬剤関連毒性特性は第Ia相試験に類似し、試験中ただ1人のみ肺炎の重篤有害作用が観察されたが、薬剤関連性はないと考えられた。
3.HCC患者における効果−第Ib相試験
1サイクルは28日であり、腫瘍判定は2サイクル毎に行った。
*」は評価可能な患者に基づくことを意味する。
「#」は、1人のHCC患者が、PDの前に12か月間イカリチンの投与を受け、心停止による死に至る前さらに3か月の間試験外延長治療を継続したことを意味する。
「&」は、3人の患者が3か月を超えて試験外延長治療を継続したことを意味する。
図4aは治療前のHCC患者のB−モード超音波画像を示し、図4bは治療後のHCC患者のB−モード超音波画像を示しており、8か月の治療後、腹部のリンパ節の完全な消失が認められる。
図5は、治療が進むにつれて患者のAFPが5216ng/mlから3.53ng/mlまで減少することを示す。
4.第Ib相試験におけるHCC患者の生存期間
図6に見られるように、HCC患者のTTP中央値は112であった。図7に関して、1人の患者が本試験にちょうど補充されたため、17人の患者の生存期間を分析した。図7は、OS中央値が113日であった(95%CI:32〜265)ことを示す。
全体で1600mg/dまでのイカリチンが、進行性の悪性腫瘍(advanced maligancies)を有する患者に十分に許容され、用量許容毒性(dose tolerated toxicity)は、臨床試験のこの相の試験には見出されなかった。
薬物動態の結果は、摂食投薬(fed dosing)においてより良好な生物学的利用能を示す。
イカリチンは、進行性乳癌において潜在的な抗腫瘍効果を、肝細胞癌において有望な効果を示す。
以下に、本願の種々の実施態様を付記する。
[1]
癌治療用組成物の調製のためのイカリチンの使用であって、前記組成物は、患者に少なくとも1サイクル経口投与され、各サイクルが連続的な28日間投薬スケジュールを含み、イカリチンが1日400〜1800mgの用量で1日に少なくとも1回投与される使用。
[2]
前記組成物は、食後、前記患者に経口投与される、[1]に記載の使用。
[3]
イカリチンの前記用量は600〜1600mgを1日2回である、[1]または[2]に記載の使用。
[4]
イカリチンの前記用量は800〜1600mgを1日2回である、[1]または[2]に記載の使用。
[5]
イカリチンの前記用量は1200〜1600mgを1日2回である、[1]または[2]に記載の使用。
[6]
イカリチンの前記用量は600〜800mgを1日2回である、[1]または[2]に記載の使用。
[7]
イカリチンの前記用量は600mgを1日3回である、[1]または[2]に記載の使用。
[8]
前記組成物は患者に少なくとも2サイクル投与される、[1]に記載の使用。

Claims (4)

  1. 癌治療用組成物の調製のためのイカリチンの使用であって、前記組成物は、患者に少なくとも1サイクル経口投与され、各サイクルが連続的な28日間投薬スケジュールを含み、イカリチンが1日800〜1600mgの用量で1日に2回投与され、ここで、前記イカリチンは、食後に患者に経口投与され、前記癌が乳癌または肝細胞癌から選択される使用。
  2. イカリチン1200〜1600mgの総用量で1日2回投与される、請求項1に記載の使用。
  3. 前記組成物は患者に少なくとも2サイクル投与される、請求項1に記載の使用。
  4. が肝細胞癌から選択される、請求項1に記載の使用。
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