JP6432441B2 - 高圧ポンプ - Google Patents

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Description

本発明は、高圧ポンプに関する。
従来、シリンダ内をプランジャが往復移動することにより、加圧室に吸入された燃料を加圧して圧送する高圧ポンプが知られている。加圧室への燃料の吸入口には吸入弁が設けられており、その開閉作動によって加圧される燃料が調量される。
一般に、高圧ポンプの吸入弁は電磁弁であり、閉弁時、駆動電流によって発生した磁気吸引力が弁部材を引きつけ、弁部材が台座に着座する。また、開弁時、駆動電流が停止した状態でスプリング力が働くことにより、弁部材が台座から離座し、ストッパに当接する。このため、弁部材が台座又はストッパに衝突することによる衝突音が発生する。
そこで、特許文献1では、弁部材が台座に着座する直前に駆動電流の上昇を抑制することにより、弁部材の着座速度を緩和している。これにより弁部材と台座との衝突音が低減する。
特開2009−293456号公報
しかしながら、特許文献1の方法では、弁部材の着座速度を緩和するため、開閉制御に対する応答性が低下してしまうという問題が生じる。また、特許文献1の方法は、閉弁時の衝突音を低減することはできても、開弁時の衝突音を低減することはできないため、高圧ポンプの静音化のためには不十分である。
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、吸入弁の開閉時に衝突音が発生せず、静音性が向上した高圧ポンプを提供することにある。
本発明は、軸方向に往復移動するプランジャと、プランジャを移動可能に収容するポンプボディと、プランジャの側面に対して軸方向に摺動可能である摺動弁部材と、摺動弁部材を軸方向に駆動する動力伝達部と、を備える。
プランジャには、一端面に開口する第1プランジャ開口及び側面に開口する第2プランジャ開口を有する第1燃料通路が形成されている。
ポンプボディは、燃料が供給される供給通路、第1プランジャ開口に連通している加圧室、及び、プランジャの往復移動により前記加圧室で加圧された燃料を吐出する吐出通路を有する。
摺動弁部材には、プランジャの側面に向かって開口する第1摺動弁開口及び供給通路に連通している第2摺動弁開口を有する第2燃料通路が形成されている。
動力伝達部は、摺動弁部材のプランジャに対する軸方向の相対的な位置を変化させる。これにより、摺動弁部材は、第1摺動弁開口が第2プランジャ開口に接続して第1燃料通路と第2燃料通路とが連通する「開状態」と、摺動弁部材の壁面が第2プランジャ開口を液密に覆って第1燃料通路と第2燃料通路との連通が遮断される「閉状態」とを切り替える。すなわち、摺動弁部材は、加圧室への燃料の吸入弁として機能する。
本発明の第1の態様では、ポンプボディは、燃料が供給される駆動用燃料通路、及び、摺動弁部材を軸方向に移動可能に収容している燃料貯留室をさらに有する。燃料貯留室は、供給通路と第2摺動弁開口とを連通し摺動弁部材の一端面が面する第1圧力室と、駆動用燃料通路に連通し摺動弁部材の他端面が面する第2圧力室とに液密に区分されている。動力伝達部は、供給通路及び駆動用燃料通路の少なくとも一方に供給される燃料の流量を調整し、第1圧力室内の燃料と第2圧力室内の燃料との圧力差によって摺動弁部材を軸方向に駆動する燃料圧力調整部である。
本発明の第2の態様では、高圧ポンプは、摺動弁部材を加圧室側に向けて軸方向に付勢する付勢部材と、摺動弁部材を軸方向に移動可能に収容している燃料貯留室内において付勢部材との間に摺動弁部材を挟むように配置されており、ポンプボディに取り付けられているストッパと、をさらに備えている。第2プランジャ開口及び第1摺動弁開口は、軸方向の径が互いに異なる。第2プランジャ開口又は第1摺動弁開口のうち大きい方の軸方向の径は、プランジャの下死点から上死点までの距離よりも大きい。摺動弁部材がストッパに当接した状態において、プランジャが下死点と上死点との間を往復する間、第1摺動弁開口は第2プランジャ開口に継続して接続する。
摺動弁部材は、プランジャの往復移動に同期して軸方向に移動することで、プランジャに対する軸方向の相対的な位置を保つことができる。また、摺動弁部材は、その移動速度をプランジャの移動速度から変更したり、その移動を停止したりすることで、往復移動するプランジャに対して摺動し、プランジャに対する軸方向の相対的な位置を変えることができる。このような動きによって、摺動弁部材は、他の部材に衝突せずに、「開状態」と「閉状態」とを切り替えることができる。
したがって、本発明の高圧ポンプでは、摺動弁部材の開閉時に衝突音が発生せず、その静音性が向上する。
本発明の第1実施形態による高圧ポンプを示す軸方向断面図である。 本発明の第1実施形態による高圧ポンプを用いた燃料供給システムを示す模式図である。 図1に示す高圧ポンプの制御方法を示すタイムチャートである。 図1に示す高圧ポンプを示す部分断面図であり、(a)は吸入行程、(b)は調量行程、(c)は吐出行程を示している。 高圧ポンプの制御方法の変形例を示すタイムチャートである。 高圧ポンプの制御方法の変形例を示すタイムチャートである。 (a)は(b)のVIIa切断線断面図であり、(b)は図1のVIIb部分の変形例を示す拡大図である。 (a)は(b)のVIIIa切断線断面図であり、(b)は図1のVIIIb部分の変形例を示す拡大図である。 (a)は(b)のIXa切断線断面図であり、(b)は図1のIXb部分の変形例を示す拡大図である。 (a)は(b)のXa切断線断面図であり、(b)は図1のXb部分の変形例を示す拡大図である。 図1のXI部分の変形例を示す拡大図である。 図1のXII部分の変形例を示す拡大図である。 本発明の第2実施形態による高圧ポンプを示す軸方向断面図である。 図13に示す高圧ポンプの制御方法を示すタイムチャートである。 図13に示す高圧ポンプを示す部分拡大図であり、吐出行程を示している。 本発明の第3実施形態による高圧ポンプを示す軸方向断面図である。 図16に示す高圧ポンプを示す部分断面図であり、(a)は吸入行程、(b)は調量行程、(c)は吐出行程を示している。 本発明の第4実施形態による高圧ポンプを示す軸方向断面図である。 本発明の第5及び第6実施形態による高圧ポンプを用いた燃料供給システムを示す模式図である。 本発明の第5及び第6実施形態による高圧ポンプを示す軸方向断面図である。 本発明の第5実施形態の高圧ポンプの制御方法を示すタイムチャートである。 図20に示す高圧ポンプの部分断面図であり、(a)は吸入行程、(b)は調量行程、(c)は吐出行程を示している。 本発明の第6実施形態の高圧ポンプの制御方法を示すタイムチャートである。 燃料供給システムの変形例を示す模式図である。 燃料供給システムの他の変形例を示す模式図である。
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、複数の実施形態において、実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態による高圧ポンプ1について、図1〜図6に基づいて説明する。
図2に示すように、高圧ポンプ1は、例えば車両の内燃機関に対する燃料供給システム100に用いられる。高圧ポンプ1は、ECU90の指令に応じて、燃料タンク80から低圧ポンプ81によって供給された燃料を加圧し、インジェクタ71が接続されている燃料レール70へ加圧した燃料を吐出する。
本実施形態による高圧ポンプ1の全体構成について、図1及び図2を参照して説明する。高圧ポンプ1は、ポンプボディ10、プランジャ部20、吸入弁部30、吐出弁部40等を備えている。以下、各部の構成について順に説明する。
なお、本明細書では、便宜上、参照する図の上側を「上」、下側を「下」として説明する。また、プランジャ21の軸方向を単に「軸方向」と記載する。
ポンプボディ10は、例えば金属材料で形成され、高圧ポンプ1の外郭を構成する。
ポンプボディ10には、プランジャ21が挿入されるシリンダ11が形成されている。シリンダ11は、上側小径部111、下側小径部112、及び、それらの間に配置された大径部113を有する。上側小径部111及び下側小径部112は、プランジャ側面211に摺動可能に接しており、往復移動するプランジャ21を支持している。大径部113は、プランジャ側面211との間に隙間を有している。
シリンダ11では、上側小径部111とプランジャ21の加圧端212とによって加圧室12が区画されている。加圧室12では、プランジャ21の移動によって燃料が加圧される。
また、シリンダ11では、大径部113とプランジャ側面211とによって燃料貯留室13が区画されている。燃料貯留室13には、加圧室12に供給される前の燃料が貯留されると共に、後述するタイミングスリーブ31が収容されている。シリンダ11内において、加圧室12と燃料貯留室13とは、プランジャ21によって液密に区画されている。
また、燃料貯留室13には、環状の脈動減衰器39がプランジャ21に挿通された状態で配置されている。脈動減衰器39は、燃料貯留室13内の燃料の圧力変化に応じて弾性変形することで、燃圧脈動を低減する。
また、ポンプボディ10には、低圧ポンプ81から燃料を供給される供給通路15、及び、加圧室12で加圧された燃料を吐出弁部40に供給する吐出通路16が形成されている。
さらに、ポンプボディ10には、燃料貯留室13に面するように配置されたギア室14が形成されている。ギア室14には、後述するギア32が収容されている。
プランジャ部20は、プランジャ21、及び、プランジャスプリング22等を備えている。
プランジャ21は、軸方向の加圧室12側に、シリンダ11内を摺動可能なプランジャ側面211を有する大径部215を有し、加圧室12と反対側に、シリンダ11から突出している小径部216を有している。大径部215の端部である加圧端212は加圧室12を区画しており、小径部216の端部である駆動端213には、スプリング座23が取り付けられている。
プランジャスプリング22の両端は、スプリング座23及びポンプボディ10に取り付けられている。プランジャスプリング22がプランジャ21を付勢することによって、プランジャ21の駆動端213はカムシャフト91のカム92に当接している。プランジャスプリング22が戻りバネとして機能することにより、プランジャ21は、カムシャフト91のプロファイルに従ってシリンダ11内を軸方向に往復移動する。このプランジャ21の往復移動により、加圧室12の容積が変化し、燃料の吸入及び加圧が行われる。
プランジャ21には、第1燃料通路26が形成されている。第1燃料通路26は、加圧端212に開口する第1プランジャ開口24と、プランジャ側面211に開口する第2プランジャ開口25とを有する。第1プランジャ開口24は、加圧室12に常時連通している。
吸入弁部30は、「摺動弁部材」としてのタイミングスリーブ31、「動力伝達部」としてのギア32、及び、モータ33(図2参照)を備えている。
タイミングスリーブ31は、プランジャ21に挿通された円筒形状であり、軸方向に移動可能であるように燃料貯留室13に収容されている。タイミングスリーブ31の径方向内側の壁面である内側面311は、プランジャ側面211と液密に接触している。
タイミングスリーブ31には、第2燃料通路36が形成されている。第2燃料通路36は、内側面311に開口している「第1摺動弁開口」としての第1スリーブ開口34と、上端面312及び下端面313にそれぞれ開口している「第2摺動弁開口」としての第2スリーブ開口35とを有する。第2スリーブ開口35は燃料貯留室13を介して供給通路15に常時連通している。本実施形態では、第1スリーブ開口34は、第2プランジャ開口25と略等しい大きさを有する。
タイミングスリーブ31の径方向外側の壁面である外側面314には、ギア32と係合可能な複数の係合歯37が軸方向に形成されている。ギア32が回転すると、ギア32の歯と係合歯37が噛み合うことによって、タイミングスリーブ31は軸方向に移動する。すなわち、ギア32とタイミングスリーブ31とは、ラックアンドピニオン機構を構成している。なお、図中では、複数の係合歯37のうちの1つに代表的に符号を付している。
タイミングスリーブ31がプランジャ21に対して相対的に移動するとき、タイミングスリーブ31の内側面311はプランジャ側面211に対して摺動する。
タイミングスリーブ31は、プランジャ21に対する相対的な位置を変えることにより、第1スリーブ開口34が第2プランジャ開口25に接続される「開状態」(図1、図4(a)(b)参照)と、タイミングスリーブ31の内側面311が第2プランジャ開口25を液密に覆っている「閉状態」(図4(c)参照)とを切り替える。
タイミングスリーブ31が「開状態」であるとき、第1燃料通路26と第2燃料通路36とが連通する。これにより、供給通路15と加圧室12とが連通する。一方、タイミングスリーブ31が「閉状態」であるとき、第1燃料通路26と第2燃料通路36との間が遮断される。これにより、供給通路15と加圧室12との連通が遮断される。
ギア32は、ギア室14に収容されており、モータ33によって回転駆動される。ギア32の歯は、ギア32の周の一部に形成されていてもよい。ギア32と複数の係合歯37とのギア比を設定することにより、タイミングスリーブ31の移動速度を設定し、開閉制御に対する応答性を調整することができる。
モータ33は、例えばステッピングモータやサーボモータ等であり、ECU90からの駆動制御信号を受けて所定角度回転し、これによりギア32が所定角度だけ回転する。ECU90は、カム角センサ95が検出したカム角度に基づいて、モータ33の回転を制御する。なお、カム角センサ95は、例えばカムシャフト91に設けられたシグナルロータ97に基づいてカム角度を検出することができる。
吐出弁部40は、吐出弁41、吐出スプリング42、係止部43、弁座44、及び吐出口45を備えている。
吐出弁41は、吐出通路16に往復移動可能に収容されている。吐出弁41は、弁座44に着座することで、吐出通路16を遮断する。吐出スプリング42は、一端が係止部43に当接し、他端が吐出弁41に当接し、吐出弁41を弁座44側へ付勢している。
加圧室12の燃料の圧力が上昇し、加圧室12側の燃料から吐出弁41にかかる力が吐出スプリング42の付勢力よりも大きくなると、吐出弁41は弁座44から離座する。そして、吐出口45から燃料が吐出される。
一方、加圧室12の燃料の圧力が低下し、加圧室12側の燃料から吐出弁41にかかる力が吐出スプリング42の付勢力よりも小さくなると、吐出弁41は弁座44に着座する。これにより、弁座44の下流側の燃料が加圧室12へ逆流することが防止される。
(高圧ポンプの作動)
次に、高圧ポンプ1の作動について図3及び図4を参照しつつ説明する。
カムシャフト91が回転すると、プランジャ21は、その軸方向に上死点TDCと下死点BDCとの間を往復移動する。ここでは高圧ポンプ1の作動を、(1)吸入行程、(2)調量行程、及び(3)吐出行程に分けて説明する。
なお、図3に示すタイミングチャートでは、上から順に、タイミングスリーブ31の開閉状態、タイミングスリーブ31の挙動、プランジャ21の挙動を表している。また、図4(a)〜(c)について、(a)は吸入行程、(b)は調量行程、(c)は吐出行程を示している。
(1)吸入行程
プランジャ21が上死点TDCから下死点BDCに向かって下降すると、加圧室12の容積が増加し、加圧室12内の燃料が減圧される。このとき、吐出弁41は閉弁状態である。また、ギア32の回転により、タイミングスリーブ31はプランジャ21と同速度で下降し、第2プランジャ開口25と第1スリーブ開口34とが接続された「開状態」を保つ。これにより、供給通路15から供給された燃料が、燃料貯留室13、第2燃料通路36、及び第1燃料通路26を介して加圧室12に吸入される。
(2)調量行程
プランジャ21が下死点BDCから上死点TDCに向かって上昇すると、加圧室12の容積が減少する。このとき、ギア32の逆回転により、タイミングスリーブ31はプランジャ21と同速度で上昇し、第2プランジャ開口25と第1スリーブ開口34とが接続された「開状態」を保つ。これにより、加圧室12に一度吸入された低圧燃料は、第1燃料通路26及び第2燃料通路36を介して燃料貯留室13へ戻される。したがって、加圧室12の圧力は上昇せず、吐出弁41は閉弁状態のままである。
(3)吐出行程
プランジャ21が下死点BDCから上死点TDCに向かって上昇する途中の所定の移行点Trで、ギア32の回転が停止し、タイミングスリーブ31の移動が停止する。すると、プランジャ21に対するタイミングスリーブ31の相対的な位置が変化し、その内側面311が第2プランジャ開口25を液密に覆い、タイミングスリーブ31が「閉状態」になる。これにより、第1燃料通路26と第2燃料通路36との連通は遮断される。
移行点Tr以降、加圧室12の燃料圧力は、プランジャ21が上昇すると共に高くなり、吐出弁41が開弁する。これにより、加圧室12で加圧された高圧燃料は吐出通路16を経由して吐出口45から吐出される。
そして、プランジャ21が上死点TDCに達するタイミングに合わせて、ギア32が逆回転を高速で再開することにより、タイミングスリーブ31は急上昇し、「開状態」になる。なお、本明細書で記載する急上昇又は急下降の「急」とは、プランジャ21の移動速度よりも早い速度を意味する。
プランジャ21は、上死点TDCを通過すると、再び下死点BCDに向かって下降する。そして再び吸入行程に移行する。
このように、上記(1)から(3)の行程を繰り返すことにより、高圧ポンプ1は吸入した燃料を加圧して吐出する。
(タイミングスリーブ31の挙動例)
タイミングスリーブ31は、プランジャ21に対する軸方向の相対的な位置を変えることで「開状態」と「閉状態」とを切り替えるものであるが、その挙動は図3に示す例に限られない。
例えば、図5に示すように、タイミングスリーブ31は、移行点Trで移動を停止した後、一定時間停止を続け、その後プランジャ21と同速度で上昇を再開してもよい。タイミングスリーブ31は、再上昇する間、「閉状態」を保つ。すなわち、タイミングスリーブ31は、「閉状態」を保ったまま、第1スリーブ開口34が第2プランジャ開口25から所定距離Aよりも離れないような挙動を行う。
このような挙動によれば、タイミングスリーブ31が「閉状態」から「開状態」へ切り替わる際、急上昇するための移動距離が所定距離Aよりも長くならず、素早い切り替えが可能になる。これは、特に、移行点Trが下死点BDCに近く、吐出行程が長くなる場合に効果的である。
また、図6に示すように、タイミングスリーブ31は、移行点Trで急上昇を行うことで「閉状態」に切り替わっても良い。その後、タイミングスリーブ31は停止を続け、プランジャ21が上死点TDCに達することでタイミングスリーブ31は「開状態」になる。このような挙動によれば、例えばエンジンのアイドル時など、微少量の燃料を吐出する場合の制御性が良好になる。また、図6に示すタイミングスリーブ31の開→閉→開の挙動を1つの吐出行程において複数回行うことにより、少量の燃料を吐出する多段吐出を行ってもよい。これにより、低圧経路の脈動を抑制することができる。
(効果)
(1)上述したとおり、「摺動弁部材」としてのタイミングスリーブ31は、加圧室12への燃料の吸入弁として機能するものであり、プランジャ21に対する軸方向の相対的な位置を変えることによって、他の部材に衝突することなく「開状態」と「閉状態」とを切り替えることができる。
したがって、本実施形態の高圧ポンプ1では、タイミングスリーブ31の開閉時に衝突音が発生しないため、その静音性が向上する。
また、プランジャ21に対するタイミングスリーブ31の相対的位置は、タイミングスリーブ31自身の移動のみでなく、プランジャ21の移動によっても変更できる。このため、プランジャ21の移動速度を利用することにより、タイミングスリーブ31の開閉切り替えの応答性が向上可能である。
(2)また、本実施形態では、タイミングスリーブ31が軸方向の係合歯37を有し、係合歯37に係合するギア32がタイミングスリーブ31を駆動している。
よって、ギア32が所定角度回転することにより、タイミングスリーブ31は容易に所定距離だけ移動することができる。
(3)特許文献1等の従来技術では、プランジャに対して加圧室を挟んだ反対側に燃料室が配置されており、その燃料室に脈動減衰器が配置されている。このため、高圧ポンプの軸方向の体格が大きくなっている。また、吐出弁部の配置が燃料室によって制限される。
これに対して、本実施形態には従来技術のような燃料室は配置されていない。すなわち、本実施形態において、ポンプボディ10は、タイミングスリーブ31を軸方向に移動可能に収容すると共に供給通路15と第2燃料通路36とを連通する燃料貯留室13を有している。また、高圧ポンプ1は、燃料貯留室13に配置された脈動減衰器39を備えている。
上記構成によれば、高圧ポンプ1の軸方向の体格を小さくすることが可能である。また、吐出弁部40の配置の自由度が増す。また、本実施形態では、従来技術にはないタイミングスリーブ31という部材を用いているが、タイミングスリーブ31と脈動減衰器39とが同じ燃料貯留室13に配置されることにより、省スペース化が可能である。
(第1実施形態の変形例)
本実施形態のタイミングスリーブ31等は、上述した態様に限られず、図7〜図12に示すように様々な態様を採りうる。
例えば、図7(a)(b)に示すように、タイミングスリーブ51の第2スリーブ開口35は、タイミングスリーブ51の上端面512のみに開口していてもよい。このような構成によれば、第2燃料通路36を形成するために孔加工の工数が低減される。
また、図8(a)(b)に示すように、タイミングスリーブ52の外側面524に軸方向の溝526が形成されていてもよい。この場合、溝526の底部に第2スリーブ開口35が開口し、第2燃料通路36は一直線状に配置される。このような構成によれば、第2燃料通路36の加工性が向上する。
また、図9(a)(b)に示すように、タイミングスリーブ53は、外側の一部が軸方向に一直線上に切断された形状を成していてもよい。この場合、第2スリーブ開口35は、タイミングスリーブ53の平面状の外壁面537に開口し、第2燃料通路36は一直線状に配置される。このような構成によっても、第2燃料通路36の加工性が向上する。
また、図10(a)(b)に示すように、タイミングスリーブ54は、径方向外側に突出する突出部548を有しており、この突出部548に複数の係合歯37が形成されていてもよい。また、ポンプボディ10には、タイミングスリーブ31の側方に配置されて軸方向に延びる長孔燃料通路17が形成されており、燃料貯留室13及び第2スリーブ開口35は、長孔燃料通路17を介して連通可能である。このような構成によれば、タイミングスリーブ54の径方向厚みについて、突出部318以外の部分の厚みを上記例よりも薄くできる。このため、タイミングスリーブ54を小型化可能である。
また、第2プランジャ開口25と第1スリーブ開口34との軸方向の大きさの関係について、第2プランジャ開口25の方が大きくともよいし(図11参照)、その逆に、第1スリーブ開口34の方が大きくともよい(図12参照)。このような構成によれば、プランジャ21が移動する間、タイミングスリーブ31が移動せずとも、一定時間、開状態を保つことができるため、消費電力を低減することができる。なお、このような構成は、図7〜図10に示す変形例にも適用可能である。
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態による高圧ポンプ2について、図13〜図15を参照しつつ説明する。第2実施形態による高圧ポンプ2は、フェールセーフ機構を有する点、及び、第1スリーブ開口34の軸方向の開口径に関する点が第1実施形態と異なる。
第2実施形態の高圧ポンプ2は、フェールセーフ機構を構成するスプリング61及びストッパ62を備えている。
「付勢部材」としてのスプリング61は、燃料貯留室13内において、タイミングスリーブ55に対して加圧室12側とは反対側に配置されている。スプリング61の両端は、ポンプボディ10及びタイミングスリーブ55に取り付けられている。
ストッパ62は、燃料貯留室13内においてスプリング61との間にタイミングスリーブ55を挟むように配置されており、ポンプボディ10に取り付けられている。
タイミングスリーブ55は、ギア32の駆動を受けない状態において、スプリング61の付勢力によってストッパ62に当接する。
また、第2実施形態のタイミングスリーブ55において、第1スリーブ開口34の軸方向の開口径Lは、プランジャ21の下死点BDCから上死点TDCまでの移動距離Dよりも大きい。これにより、プランジャ21の下死点BDCと上死点TDCとの間を往復する間、タイミングスリーブ55がストッパ62に当接した状態のままであっても、第1スリーブ開口34は第2プランジャ開口25に継続して接続し、タイミングスリーブ55は開状態を保つ。なお、図13では、上死点TDCに位置するプランジャ21の配置を二点鎖線で示している。
第2実施形態の高圧ポンプ2の作動を図14のタイムチャートに基づいて説明する。なお、図14では、タイミングスリーブ55の挙動に関して、第1スリーブ開口34の上端341及び下端342の各位置を実線で示しており、相対的な第2プランジャ開口25の位置を二点鎖線で示している。
吸入行程及び調量行程において、プランジャ21が上死点TDCから下死点BDCに向かって下降する、及び、下死点BDCから移行点Trまで上昇する間、タイミングスリーブ55は、ギア32の駆動力を受けず、スプリング61の付勢力によってストッパ62に当接した状態のまま停止している。このとき、タイミングスリーブ55は「開状態」を保っている(図13参照)。
吐出行程では、プランジャ21が移行点Trに達するタイミングに合わせて、タイミングスリーブ55はギア32に駆動されて急下降する。すると、タイミングスリーブ55は第1燃料通路26と第2燃料通路36との間が遮断される「閉状態」になる(図15参照)。これにより、プランジャ21の上昇に伴って、加圧室12の燃料が加圧され、吐出される。
その後、プランジャ21が上死点TDCに達するタイミングに合わせて、ギア32の駆動が停止し、タイミングスリーブ55は、プリング61の付勢力によって急上昇し、再び「開状態」になる。
仮に、モータ33が動かなくなる等の何らかの障害が発生した等の場合、スプリング61の付勢力によって、タイミングスリーブ55がストッパ62に当接した状態が保たれる。タイミングスリーブ55がストッパ62に当接した状態では、上述したようにプランジャ21が動いたとしてもタイミングスリーブ55は開状態のままであるため、燃料が圧送されることはなく、内燃機関を停止することができる。
以上のように、第2実施形態の高圧ポンプ2によれば、第1実施形態にて上述した効果に加え、安全性を向上させることができる。また、第2実施形態の高圧ポンプ2の作動によれば、タイミングスリーブ55の停止時間が第1実施形態よりも長いため、消費電力を低減することが可能である。
(第2実施形態の変形例)
第2実施形態において、第2プランジャ開口25及び第1スリーブ開口34の軸方向の開口径の関係は逆でもよい。これにより、上述の第2実施形態と同様の効果が得られる。
また、第2実施形態におけるスプリング61とストッパ62とは、軸方向において互いに逆の位置に配置されてもよい。この場合、プランジャ21が移行点Trに達するタイミングに合わせて、タイミングスリーブ55は、ギア32によって駆動されて急上昇することで、「閉状態」になってもよい。
また、図13には図示していないが、第1実施形態にて説明した脈動減衰器39を燃料貯留室13に配置してもよい。
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態による高圧ポンプ3について、図16及び図17を参照しつつ説明する。第3実施形態は、高圧ポンプ3が「動力伝達部」としてギア32の代わりにレバー63を備える点が第1実施形態と異なる。
図16に示すように、「動力伝達部」としてのレバー63は、軸部635を中心に回転可能であるように、レバー室18に収容されている。レバー63の一端部631は、モータ33に連結している。レバー63の他端部である回動先端部632は、タイミングスリーブ56の外側面564に形成された凹部569に係合している。モータ33がレバー63を回転駆動すると、回動先端部632はタイミングスリーブ56を軸方向に押し上げ又は押し下げる。
レバー63の回動先端部632及びタイミングスリーブ56の凹部569は、タイミングスリーブ56の移動範囲内において、互いに係合状態を保つように構成されている。また、回動先端部632及び凹部569は、互いの摺動を滑らかにするために、それぞれ丸みを有するように形成されている。
高圧ポンプ3の作動については、ギア32の回転をレバー63の回転に置き換えれば、第1実施形態の説明を適用可能である。すなわち、モータ33に駆動されたレバー63が所定角度回転することによって、タイミングスリーブ56はレバー63に駆動され、所定距離移動する。タイミングスリーブ56は、プランジャ21に対するの相対的位置を切り替えることにより、「開状態」と「閉状態」とを切り替える。
例えば、高圧ポンプ3の作動例を図17に示す。図17(a)〜(c)において、(a)は吸入行程、(b)は調量行程、(c)は吐出行程を示している。
吸入行程及び調量行程において、タイミングスリーブ56は、レバー63が回転することにより、プランジャ21に対する相対位置を保つように移動し、「開状態」を保つ。吐出行程において、レバー63の回転が停止し、駆動タイミングスリーブ56は、移動を停止して「閉状態」に切り替わる。そして、再び吸入行程が開始するタイミングに合わせて、レバー63が回転を高速で再開することにより、タイミングスリーブ56は急上昇し、「開状態」に切り替わる。
第3実施形態の高圧ポンプ3によれば、第1実施形態と同様に、静音性を向上させる効果を得られる。また、ギア32の代わりにレバー63を用いることにより、高圧ポンプ3を軽量化することができる。
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態による高圧ポンプ4について、図18を参照しつつ説明する。
第4実施形態は、高圧ポンプ4が「動力伝達部」としてギア32の代わりにレバー64を備える点、及び、モータ33の代わりに電磁駆動部65を備える点が第1実施形態と異なる。
電磁駆動部65は、ポンプボディ10の内側に収容されたコイル651、コイル651の内側に固定された固定コア652、固定コア652と対向して配置され、軸方向に往復移動可能である可動コア653、及び、可動コア653に固定されたニードル654を備えている。また、固定コア652と可動コア653との間には、リターンスプリング655が配置されている。
レバー64は、軸部645を中心に回転可能であるように、レバー室18に収容されている。レバー64の一端部641は、ニードル654に連結している。レバー64の他端部である回動先端部642は、タイミングスリーブ57の外側面574に形成された凹部579に係合している。なお、レバー64の回動先端部642及びタイミングスリーブ57の凹部579の構成は、第3実施形態と同様である。
ECU90からの駆動制御信号により、コイル651に通電が行われると、固定コア652と可動コア653との間に磁気吸引力が発生する。その結果、可動コア653が、リターンスプリング655の付勢力に抗して固定コア652側に移動する。これに伴って、ニードル654が軸方向下側に移動すると、レバー64は、一端部641が下がることによって軸部645を中心に回転し、回動先端部642がタイミングスリーブ57を軸方向に押し上げる。
一方、コイル651への通電が停止すると、リターンスプリング655の付勢力によって、可動コア653が軸方向上側に移動する。これにより、ニードル654が軸方向上側に移動すると、レバー64は、一端部641が上がることによって軸部645を中心に回転し、回動先端部642がタイミングスリーブ57を軸方向に押し下げる。
また、第4実施形態のタイミングスリーブ57は、第1スリーブ開口34の軸方向の開口径Lがプランジャ21の下死点BDCから上死点TDCまでの移動距離Dよりも大きい点において第2実施形態と同様である(図13参照)。これにより、プランジャ21の下死点BDCと上死点TDCとの間を往復する間、タイミングスリーブ57が電磁駆動部65によって軸方向に押し上げられた状態のままであっても、第1スリーブ開口34は第2プランジャ開口25に継続して接続し、タイミングスリーブ57は開状態を保つ。
第4実施形態の高圧ポンプ4の作動を説明するために、第2実施形態で参照している図14のタイムチャートを参照可能である。
具体的には、吸入行程及び調量行程において、プランジャ21が上死点TDCから下死点BDCに向かって下降する、及び、下死点BDCから移行点Trまで上昇する間、タイミングスリーブ57は、電磁駆動部65の駆動力を受けることによって押し上げられた状態で停止している。このとき、タイミングスリーブ57は「開状態」を保っている。
吐出行程では、プランジャ21が移行点Trに達するタイミングに合わせてコイル651への通電が停止し、タイミングスリーブ57は、リターンスプリング655の負勢力によって急下降する。すると、タイミングスリーブ57は第1燃料通路26と第2燃料通路36との間が遮断される「閉状態」になる。これにより、プランジャ21の上昇に伴って、加圧室12の燃料が加圧され、吐出される。
その後、プランジャ21が上死点TDCに達するタイミングに合わせて、コイル651への通電が開始することにより、タイミングスリーブ57は急上昇し、再び「開状態」になる。
第4実施形態の高圧ポンプ4によれば、第1実施形態と同様に、静音性を向上させる効果を得られる。また、ギア32の代わりにレバー64を備えること、及び、モータ33の代わりに電磁駆動部65を備えることにより、高圧ポンプ4を軽量化及び小型化することができる。
[第5実施形態]
本発明の第5実施形態による高圧ポンプ5について、図19〜図22を参照しつつ説明する。第5実施形態は、「動力伝達部」として「燃料圧力調整部」を備える点が第1実施形態の構成と大きく異なる。
また、図19に示すように、第5実施形態の高圧ポンプ5が適用される燃料供給システム101では、燃料タンク80から高圧ポンプ5に向かって延びる供給流路82が、その途中で、第1流路83及び第2流路84に分岐している。
図20に示すように、第5実施形態において、高圧ポンプ5の燃料貯留室13は、タイミングスリーブ58の上端面582が面する第1圧力室131と、タイミングスリーブ58の下端面583が面する第2圧力室132とに液密に区分されている。
具体的には、タイミングスリーブ58の外側面584は、シリンダ11の大径部113に液密に接している。また、第2スリーブ開口35は、タイミングスリーブ58の上端面582のみに開口し、下端面583には開口していない。このため、第1圧力室131は、第2燃料通路36に常時連通している一方、第2圧力室132は、第2燃料通路36に連通していない。
また、第5実施形態において、高圧ポンプ5のポンプボディ10は、上述した供給通路15に加えて、燃料が供給される駆動用燃料通路19をさらに有している。供給通路15には第1流路83から燃料が供給され、駆動用燃料通路19には第2流路84から燃料が供給される。また、供給通路15は、第1圧力室131に連通しており、駆動用燃料通路19は、第2圧力室132に連通している。
タイミングスリーブ58が「開状態」であるとき、供給通路15は、燃料貯留室13の第1圧力室131、第2燃料通路36、及び、第1燃料通路26を介して、加圧室12に連通する。
一方、駆動用燃料通路19は加圧室12に連通しないため、駆動用燃料通路19に供給される燃料は、第2圧力室132に留まる。
第5実施形態の高圧ポンプ5は、「燃料圧力調整部」として流量制御弁66を備えている(図19参照)。
第5実施形態の流量制御弁66は、供給通路15に供給される燃料の流量を制限するように設けられており、例えばECU90からの駆動制御信号によって、その流路面積が無段階に制御される。
なお、図19では、流量制御弁66が模式的に示されているが、高圧ポンプ5の本体と一体的に構成されてもよいし、高圧ポンプ5の本体とは別に設けられてもよい。
ここで、低圧ポンプ81からは一定の圧力で燃料が送り出されており、供給通路15に供給される流量(第1流量と称する)と駆動用燃料通路19に供給される流量(第2流量と称する)とを合わせた総流量は一定である。よって、流量制御弁66が第1流量を調整することによって、第1流量と第2流量との流量比が調整される。これによって、第1圧力室131内の燃料の圧力(第1燃圧と称する)と第2圧力室132内の燃料の圧力(第2燃圧と称する)との差が調整される。
また、第1圧力室131には、スプリング67が配置されている。スプリング67の両端は、ポンプボディ10及びタイミングスリーブ58に取り付けられている。スプリング67は、第1圧力室131側から第2圧力室132側に向かってタイミングスリーブ58を付勢している。
タイミングスリーブ58は、上側から第1燃圧及びスプリング67の負勢力による押圧(第1押圧と称する)を受け、下側から第2燃圧による押圧(第2押圧と称する)を受ける。第1押圧と第2押圧とが等しいとき、タイミングスリーブ58は軸方向の位置を保つ。また、第1押圧が第2押圧よりも大きいとき、タイミングスリーブ58は下降し、第2押圧が第1押圧よりも大きいとき、タイミングスリーブ58は上昇する。
第5実施形態の高圧ポンプ5の作動を図21及び図22に基づいて説明する。
なお、図21に示すタイミングチャートでは、上から順に、タイミングスリーブ31の開閉状態、タイミングスリーブ58の挙動、第1流量、第2流量、プランジャ21の挙動を表している。また、図22(a)〜(c)について、(a)は吸入行程、(b)は調量行程、(c)は吐出行程を示している。
また、第5実施形態では、プランジャ21及びタイミングスリーブ58の挙動は第1実施形態と同様である。よって、以下では、タイミングスリーブ58の挙動を実現するための流量制御弁66の作動について主に説明する。
(吸入行程)
吸入行程の間、流量制御弁66は、流路面積が徐々に大きくなるように作動し、第1流量を最小設定値Fminから最大設定値Fmaxまで増加させる。このとき、第2流量は最大設定値Fmaxから最小設定値Fminまで減少する。このような作動により、吸入行程の間、第1押圧を第2押圧よりも大きくし、タイミングスリーブ58をプランジャ21と同速度で下降させることができる。これにより、タイミングスリーブ58は「開状態」を保つ。
(調量行程)
調量行程の間、流量制御弁66は、流路面積が徐々に小さくなるように作動し、第1流量を最大設定値Fmaxから停止設定値Fsまで減少させる。このとき、第2流量は最小設定値Fminから増加する。このような作動により、調量行程の間、第2押圧が第1押圧よりも大きくなり、タイミングスリーブ58はプランジャ21と同速度で上昇することができる。これにより、タイミングスリーブ58は「開状態」を保つ。
(吐出行程)
プランジャ21が移行点Trに達したときから、流量制御弁66は、第1流量を停止設定値Fsに保つ。第1流量が停止設定値Fsのとき、第1押圧と第2押圧とが等しくなる。これにより、タイミングスリーブ58の移動が停止し、プランジャ21に対するタイミングスリーブ58の相対的な位置が変化することによって、タイミングスリーブ58が「閉状態」になる。
なお、最大設定値Fmax、最小設定値Fmin、及び、停止設定値Fsは、流量制御弁66の全開時における第1流路83及び第2流路84の各流量、第1圧力室131及び第2圧力室132の総容積、スプリング67の負勢力、並びに、プランジャ21の移動速度等を考慮して設定することが好ましい。
その後、プランジャ21が上死点TDCに達するタイミングに合わせて、流量制御弁66は、第1流量を停止設定値Fsから最小設定値Fminまで急激に減少させる。このとき、第2流量は最大設定値Fmaxまで急激に増加する。このような作動により、第2押圧は第1押圧よりも大幅に大きくなり、タイミングスリーブ58は急上昇して「開状態」になることができる。
以上のように、第5実施形態の高圧ポンプ5によれば、流量制御弁66が供給通路15に供給される燃料の流量を制限することによって、タイミングスリーブ58を駆動することができる。これにより、第1実施形態と同様に、タイミングスリーブ58の開閉時における静音性を向上させることができる。
また、第5実施形態の高圧ポンプ5は、第1〜第4実施形態のように、モータ33や電磁駆動部65などの駆動源を一体に備えることを必要とせず、小型化可能である。
また、第5実施形態の流量制御弁66によれば、その流路面積を増減させる簡単な制御によって、タイミングスリーブ58を駆動することができる。
[第6実施形態]
本発明の第6実施形態による高圧ポンプ6について説明する。なお、第6実施形態の高圧ポンプ6を説明する図面としては、第5実施形態と同様に、図19、図20、図22を参照可能である。第6実施形態の高圧ポンプ6は、「燃料圧力調整部」としてデューティ弁67を備える点が第5実施形態の構成と異なる。
デューティ弁67は、供給通路15に供給される燃料の流量を制限するように設けられており、例えばECU90からの駆動制御信号によって開弁率をデューティ制御される。これにより、デューティ弁67は、第1圧力室131の第1燃圧と、第2圧力室132の第2燃圧との圧力差を多段階で調整することができる。
なお、デューティ弁67は、流量制御弁66と同様、高圧ポンプ6の本体と一体的に構成されてもよいし、高圧ポンプ6の本体とは別に設けられてもよい。
第6実施形態による高圧ポンプ6の作動について、図23のタイムチャートに基づいて説明する。なお、図23では、図21の「第1流量」及び「第2流量」の代わりに、「第1燃圧」を実線で示し、「第2燃圧」を点線で示している。
吸入行程の間、デューティ弁67は、第1燃圧が所定値P1(>第2燃圧)になるように、第1流量を調整する。このような作動により、吸入行程の間、第1押圧を第2押圧よりも大きくし、タイミングスリーブ58をプランジャ21と同速度で下降させることができる。これにより、タイミングスリーブ58は「開状態」を保つ。
調量行程の間、デューティ弁67は、第1燃圧を所定値P2(<第2燃圧)になるように、第1流量を調整する。このような作動により、調量行程の間、第2押圧が第1押圧よりも大きくない、タイミングスリーブ58はプランジャ21と同速度で上昇することができる。これにより、タイミングスリーブ58は「開状態」を保つ。
プランジャ21が移行点Trに達したときから、デューティ弁67は、第1燃圧が所定値P3(>P1)になるように第1流量を調整する。このとき、第1押圧は第2押圧よりも大きくなる。このような作動により、プランジャ21の上昇に対してタイミングスリーブ58は下降し、プランジャ21に対するタイミングスリーブ58の相対的な位置が変化する。これによって、タイミングスリーブ58が「閉状態」になる。
その後、プランジャ21が上死点TDCに達するタイミングに合わせて、デューティ弁67は、第1燃圧が所定値P4(<P2)になるように第1流量を調整する。このような作動により、第2押圧が第1押圧よりも大幅に大きくなり、タイミングスリーブ58は急上昇して「開状態」になることができる。
なお、図23に示す第1燃圧の所定値P1〜P4は一例であって、例えば吐出期間の長さに合わせてタイミングスリーブ58が最適に挙動するように、適宜設定可能である。
以上のように、第6実施形態の高圧ポンプ6によれば、デューティ弁67が供給通路15に供給される燃料の流量を制限することによって、タイミングスリーブ58を駆動することができる。これにより、第1実施形態と同様に、タイミングスリーブ58の開閉時における静音性を向上させることができる。
また、第6実施形態の高圧ポンプ6は、第1〜第4実施形態のように、モータ33や電磁駆動部65などの駆動源を一体に備えることを必要とせず、小型化可能である。
また、第6実施形態のデューティ弁67によれば、第5実施形態よりもタイミングスリーブ58をより正確に駆動することができる。
[その他の燃料供給システム]
上述した各実施形態の高圧ポンプ1〜6は、図24、図25に示すような燃料供給システム102、103に適用されてもよい。燃料供給システム102、103は、高圧ポンプ1〜6が故障した時のフェールセーフ機構を有する点で、第1実施形態に示す燃料供給システム100と異なる。
なお、以下では、燃料供給システム102、103が第1実施形態の高圧ポンプ1を備える場合を説明しているが、他の実施形態の高圧ポンプ2〜6を備える場合にも同様の説明が適用される。
図24に示すように、燃料供給システム102は、燃料タンク80から高圧ポンプ1に向かって延びる高圧ポンプ1への供給流路82と、高圧ポンプ1から燃料レール70に向かって延びる高圧ポンプ1の吐出流路72との間にぞれぞれ配置された第1調整弁75及び第2調整弁85を備えている。第1調整弁75及び第2調整弁85の各構成は、高圧ポンプ1の吐出弁部40と同様である。
第1調整弁75は、高圧ポンプ1の過剰吐出などにより、吐出流路72内の燃料圧力が通常値を上回った場合に開弁し、吐出流路72内の燃料を供給流路82に向けて吐出する。これにより、インジェクタ71への燃圧が過剰に高くなることを防止でき、エンジンの停止が容易なる。
第2調整弁85は、高圧ポンプ1の吐出不良などにより、供給流路82内の燃料圧力が通常値を上回った場合に開弁し、供給流路82の燃料を吐出流路72に向けて吐出する。これにより、高圧ポンプ1の作動不良時には、高圧ポンプ1を介さずに供給流路82から吐出流路72に燃料を供給することができ、エンジンの稼働を継続することができる。よって、車両の退避や修理工場までの移動が容易になる。
なお、第1調整弁75の開弁圧力は、第2調整弁85の開弁圧力よりも大きい。
また、燃料供給システム102は、吐出流路72内の燃料圧力を測定する圧力センサ99を備えている。圧力センサ99による測定値は、ECU90に送信される。ECU90は、圧力センサ99の測定値に基づいて、高圧ポンプ1の作動を制御することができる。
図25に示すように、燃料供給システム103は、第2調整弁85に代えて電動弁86を備える点が、燃料供給システム102とは異なる。
電動弁86は、ECU90によって開閉を制御される。ECU90は、圧力センサ99の測定値が吐出流路72内の燃料圧力の通常値を上回ったと判断した場合、電動弁86を開状態から閉状態に切り替える。これにより、高圧ポンプ1への燃料供給が停止され、燃料レール70内の燃料圧力が過剰に高くなることを防止でき、内燃機関を停止することができる。
[その他の実施形態]
(ア)第1実施形態にて説明したタイミングスリーブ31、51〜54の構成は、第1スリーブ開口34又は第2プランジャ開口25の軸方向の開口径をプランジャ21の移動距離Dよりも長くすることにより、第2実施形態のタイミングスリーブ55に適用可能である。
(イ)上記実施形態において、第1燃料通路26及び第2燃料通路36は各1つであるが、それぞれ複数であってもよい。すなわち、連通及び遮断が成される第1燃料通路26及び第2燃料通路36の組み合わせが、プランジャ21及びタイミングスリーブ31に複数形成されていてもよい。
(ウ)第2実施形態において、タイミングスリーブ55をスプリング61側に引きつけるための動力伝達部は、モータ33に駆動されるギア32に限られず、例えばソレノイドアクチュエータ等を用いてもよい。
(エ)第5実施形態の流量制御弁66、及び、第6実施形態のデューティ弁67は、供給通路15に供給される燃料の流量を調整するもの限定されない。
例えば、流量制御弁66及びデューティ弁67は、低圧ポンプ81側にインポートを有し、駆動用燃料通路19側にアウトポートを有するものであってもよい。この場合、タイミングスリーブ58を付勢するスプリングは、第2圧力室132に設けられ、第2圧力室132側から第1圧力室131側に向かって、タイミングスリーブ58を付勢する。
また、流量制御弁66及びデューティ弁67は、上述したような第2方向弁に限られず、低圧ポンプ81側にインポートを有し、供給通路15側及び駆動用燃料通路19側の各々にアウトポートを有する3方向弁であってもよい。
また、本発明の「燃料圧力調整部」は、流量制御弁及びデューティ弁に限られず、供給通路及び前記駆動用燃料通路の少なくとも一方に供給される燃料の流量を調整するものであればよい。
(オ)上記実施形態のタイミングスリーブ31、51〜58の構成及び挙動は、各実施形態に説明したものに限定されず、他の実施形態に示されたものと組み合わせることが可能である。
(カ)上記実施形態における高圧ポンプ1〜6は、低圧燃料を圧縮して高圧燃料を吐出する場合を説明したが、本願発明はこのような用途に限定されるものではなく、燃料のみならず、他の液体や気体等の流体を対象とする高圧ポンプにも広く利用することが可能である。
以上、本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
1〜6・・・高圧ポンプ
10・・・ポンプボディ
12・・・加圧室
15・・・供給通路
16・・・吐出通路
21・・・プランジャ
24・・・第1プランジャ開口
25・・・第2プランジャ開口
26・・・第1燃料通路
31、51〜58・・・タイミングスリーブ(摺動弁部材)
32・・・ギア(動力伝達部)
34・・・第1スリーブ開口(第1摺動弁開口)
35・・・第2スリーブ開口(第2摺動弁開口)
36・・・第2燃料通路
63、64・・・レバー(動力伝達部)
66、67・・・燃料圧力調整部(動力伝達部)

Claims (10)

  1. 一端面(212)に開口する第1プランジャ開口(24)及び側面(211)に開口する第2プランジャ開口(25)を有する第1燃料通路(26)が形成されており、軸方向に往復移動するプランジャ(21)と、
    燃料が供給される供給通路(15)、前記第1プランジャ開口に連通している加圧室(12)、及び、前記プランジャの往復移動により前記加圧室で加圧された燃料を吐出する吐出通路(16)を有し、前記プランジャを移動可能に収容するポンプボディ(10)と、
    前記プランジャの前記側面に向かって開口する第1摺動弁開口(34)及び前記供給通路に連通している第2摺動弁開口(35)を有する第2燃料通路(36)が形成されており、前記プランジャの前記側面に対して前記軸方向に摺動可能である摺動弁部材(31、51〜58)と、
    前記摺動弁部材を前記軸方向に駆動し、前記摺動弁部材の前記プランジャに対する前記軸方向の相対的な位置を変えることにより、前記第1摺動弁開口が前記第2プランジャ開口に接続して前記第1燃料通路と前記第2燃料通路とが連通する前記摺動弁部材の開状態と、前記摺動弁部材の壁面(311)が前記第2プランジャ開口を液密に覆って前記第1燃料通路と前記第2燃料通路とが遮断される前記摺動弁部材の閉状態とを切り替えることが可能である動力伝達部(32、63、64、66、67)と、
    を備え
    前記ポンプボディは、燃料が供給される駆動用燃料通路(19)、及び、前記摺動弁部材を前記軸方向に移動可能に収容している燃料貯留室(13)をさらに有し、
    前記燃料貯留室は、前記供給通路と前記第2摺動弁開口とを連通し前記摺動弁部材の一端面(582)が面する第1圧力室(131)と、前記駆動用燃料通路に連通し前記摺動弁部材の他端面(583)が面する第2圧力室(132)とに液密に区分されており、
    前記動力伝達部は、前記供給通路及び前記駆動用燃料通路の少なくとも一方に供給される燃料の流量を調整し、前記第1圧力室内の燃料と前記第2圧力室内の燃料との圧力差によって前記摺動弁部材を前記軸方向に駆動する燃料圧力調整部(66、67)であることを特徴とする高圧ポンプ。
  2. 前記燃料圧力調整部は、前記供給通路及び前記駆動用燃料通路の少なくとも一方に供給される燃料の流量を制限する流量制御弁(66)であることを特徴とする請求項に記載の高圧ポンプ。
  3. 前記燃料圧力調整部は、前記供給通路及び前記駆動用燃料通路の少なくとも一方に供給される燃料の流量を制限し、前記第1圧力室内の燃料と前記第2圧力室内の燃料との圧力差を多段階に調整可能なデューティ弁(67)であることを特徴とする請求項に記載の高圧ポンプ。
  4. 前記燃料貯留室に配置され、燃料の脈動を減衰可能な脈動減衰器(39)をさらに備えることを特徴とする請求項のいずれか一項に記載の高圧ポンプ。
  5. 前記摺動弁部材は、前記閉状態において、前記第2プランジャ開口と前記第1摺動弁開口との距離を一定範囲以内に保つように動作することを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の高圧ポンプ。
  6. 前記摺動弁部材は、前記プランジャが下死点から上死点に向かって移動する途中、前記第1摺動弁開口が前記第2プランジャ開口よりも前記上死点側に位置するように移動することにより、前記開状態から前記閉状態に切り替えることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の高圧ポンプ。
  7. 一端面(212)に開口する第1プランジャ開口(24)及び側面(211)に開口する第2プランジャ開口(25)を有する第1燃料通路(26)が形成されており、軸方向に往復移動するプランジャ(21)と、
    燃料が供給される供給通路(15)、前記第1プランジャ開口に連通している加圧室(12)、及び、前記プランジャの往復移動により前記加圧室で加圧された燃料を吐出する吐出通路(16)を有し、前記プランジャを移動可能に収容するポンプボディ(10)と、
    前記プランジャの前記側面に向かって開口する第1摺動弁開口(34)及び前記供給通路に連通している第2摺動弁開口(35)を有する第2燃料通路(36)が形成されており、前記プランジャの前記側面に対して前記軸方向に摺動可能である摺動弁部材(31、51〜58)と、
    前記摺動弁部材を前記軸方向に駆動し、前記摺動弁部材の前記プランジャに対する前記軸方向の相対的な位置を変えることにより、前記第1摺動弁開口が前記第2プランジャ開口に接続して前記第1燃料通路と前記第2燃料通路とが連通する前記摺動弁部材の開状態と、前記摺動弁部材の壁面(311)が前記第2プランジャ開口を液密に覆って前記第1燃料通路と前記第2燃料通路とが遮断される前記摺動弁部材の閉状態とを切り替えることが可能である動力伝達部(32、63、64、66、67)と、
    前記摺動弁部材を前記加圧室側に向けて前記軸方向に付勢する付勢部材(61)と、
    前記摺動弁部材を前記軸方向に移動可能に収容している燃料貯留室(13)内において前記付勢部材との間に前記摺動弁部材を挟むように配置されており、前記ポンプボディに取り付けられているストッパ(62)と、
    を備え、
    前記第2プランジャ開口及び前記第1摺動弁開口は、前記軸方向の径が互いに異なり、
    前記第2プランジャ開口又は前記第1摺動弁開口のうち大きい方の前記軸方向の径は、前記プランジャの下死点から上死点までの距離よりも大きく
    前記摺動弁部材が前記ストッパに当接した状態において、前記プランジャが下死点と上死点との間を往復する間、前記第1摺動弁開口は前記第2プランジャ開口に継続して接続することを特徴とする高圧ポンプ。
  8. 前記摺動弁部材は、前記軸方向に配置された複数の係合歯(37)を有し、
    前記動力伝達部は、前記係合歯に係合するギア(32)であることを特徴とする請求項に記載の高圧ポンプ。
  9. 前記動力伝達部は、回動可能なレバー(63、64)を有しており、
    前記摺動弁部材は、前記レバーの回動先端部(632、642)が係合する凹部(569、579)を有することを特徴とする請求項に記載の高圧ポンプ。
  10. 前記燃料貯留室に配置され、燃料の脈動を減衰可能な脈動減衰器(39)をさらに備えることを特徴とする請求項のいずれか一項に記載の高圧ポンプ。
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