JP2008280985A - 燃料噴射装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ニードルの開閉動作に伴なって生じる圧力変動が噴孔に流入する燃料流れへ影響するのを抑制することを目的とする。
【解決手段】内部に縦孔(第1内周)21a、および縦孔の下流側端部にテーパ部24が形成されると共に、上記縦孔に通じかつ内外に貫通する噴孔22を有する弁ボディ21と、縦孔の内部を軸方向に移動可能であり、かつテーパ部に着座および離座するアウタニードル6と、アウタニードルがテーパ部に着座および離座するシート部25aとを備え、高圧燃料を蓄圧するコモンレール9から供給される高圧燃料によりアウタニードルに開弁方向の作用力を作用させる燃料噴射装置において、縦孔とアウタニードル6との周面であって、ニードルの開閉弁方向への移動に伴なってその周面間の開口の大きさが変化しない位置に、シート部へ導く燃料を制限する絞り部33が設けられ、絞り部は、噴孔へ流入する燃料の最大流量を規定している。
【選択図】図2

Description

本発明は、燃料噴射装置に関し、例えば内燃機関に燃料を噴射する燃料噴射装置に用いられる燃料噴射弁に適用して好適なものである。
近年、内燃機関(特に、ディーゼルエンジン)からの排気ガスに含まれる有害物質の低減や、内燃機関の低燃費・高出力運転を目的として、燃焼サイクル1回に行なう燃料噴射を、多段等に段階的に実行する燃料噴射装置が提案されており、2段階に分けて順次に開放可能な複数の噴孔を有するいわゆる可変噴孔式の燃料噴射弁がある(特許文献1等参照)。
特許文献1の開示する技術は、第1噴孔および第2噴孔を有する弁ボディ内に、それぞれの噴孔を開閉するアウタニードルと、アウタニードル内に配置されたインナニードルとを備えており、アウタニードルがインナニードルに先行してリフトし、所定のリフトL1(以下、中間リフトと呼ぶ)にてインナニードルに衝突することでインナニードルがリフトする。
上記各ニードルは、弁ボディ内のシート部に離座および着座することで、シート部下流に配置された各噴孔から燃料を噴射および噴射停止するものである。このシート部は、シート部での燃料流路面積いわゆるシート面積がニードルのリフト量に応じて決定されるものであり、噴孔へ燃料を導く高圧燃料経路において最小絞り部位を形成している。
即ち、アウタニードルの閉弁する燃料噴射停止時において、上記アウタニードル側のシート部(以下、第1シート部)は、噴孔へ流れる燃料をせき止める部位であり、またアウタニードルの開弁する燃料噴射時においても、アウタニードルがリフトし、このリフトが最大リフトに到達する場合であっても、シート部は、高圧燃料経路において第1噴孔へ流れる燃料の最大流量値を決める最小絞り部であった。
特開2005−320904号公報
特許文献1には記載されていないが、上記高圧燃料経路を第1噴孔へ向けて流れる燃料流れにおいて、最小絞り部であるシート部でせき止められ、圧力が反転する。即ち、アウタニードルの開閉動作に伴なってシート部へ流入する定常流れの燃料が、シート部で圧力反転する。それ故にシート部の上流側の高圧燃料経路内で燃料の圧力脈動(圧力変動)が生じるので、噴孔から噴射される燃料噴射量の精度が低下するおそれがある。
このように上記特許文献1による従来技術では、噴孔と、圧力が反転し圧力変動が生じるシート部とが近接しているので、その燃料の圧力変動が噴孔への燃料流れに直接影響することで、噴射量がばらつく等の噴射量変動を引き起こして噴射量が狙い通りにならない。
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、ニードルの開閉動作に伴なって生じる圧力変動が噴孔に流入する燃料流れへ影響するのを抑制することを目的とする。
また、別の目的は、ニードルの開閉動作に伴なって生じる圧力変動が噴孔に流入する燃料流れへ影響するのを抑制するとともに、シート部で流通する最大流量を規定する最大リフト側において、全噴孔が開放されるときに生じるリフトの不安定挙動を抑制する燃料噴射装置を提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するために以下の技術的手段を備える。
即ち、請求項1乃至8記載の発明では、内部に縦孔、および縦孔の下流側端部に弁座としてのテーパ部が形成されるとともに、縦孔に通じ、かつ内外に貫通する噴孔を有する弁ボディと、縦孔の内部を軸方向に移動可能であり、かつテーパ部に着座および離座するニードルと、ニードルがテーパ部に着座および離座するシート部とを備え、高圧燃料を蓄圧するコモンレールから供給される高圧燃料によりニードルに開弁方向の作用力を作用させる燃料噴射装置において、
縦孔とニードルとの周面であって、ニードルの開閉弁方向への移動に伴なってその周面間の開口の大きさが変化しない位置に、シート部へ導く燃料を制限する絞り部が設けられ、絞り部は、噴孔へ流入する燃料の最大流量を規定していることを特徴とする。
これによると、弁ボディの縦孔とニードルとの周面の間を経由し、ニードルの開閉動作によりシート部を通じて噴孔に導かれる高圧燃料の燃料経路において、縦孔とニードルとの周面であって、ニードルの開閉弁方向への移動に伴なってその周面間の開口の大きさが変化しない位置に、シート部へ導く燃料を制限する絞り部が設けられ、絞り部は、噴孔へ流入する燃料の最大流量を規定している。
即ち、従来技術においてシート部を噴孔へ流れる燃料の最大流量を決める部位にしているのに対し、シート部とは別に、噴孔へ流入する燃料の最大流量を規定する即ち最小絞りとなる絞り部を設けている。しかも、上記絞り部と噴孔との間にシート部を挟み込んでいるので、上記絞り部は、噴孔からシート部までの距離に比べて噴孔から引き離されている。
これにより、ニードルの開閉動作に伴なう圧力脈動(圧力変動)の発生要因となる圧力反転が、従来技術の如く噴孔に近接するシート部上流側で生じるのではなく、噴孔から引き離された上記絞り部で生じる。それ故に、従来技術の如く上記圧力変動が噴孔に流入する燃料流れへ直接影響を及ぼすのを、回避することができる。
このように最小絞りとなる絞り部をシート部には設けず別の部位に設け、その絞り部を噴孔から引き離しているので、上記ニードルの開閉動作に伴なう圧力変動による噴孔に流入する燃料流れへの影響を抑制することができる。
ここで、上記絞り部を、シート部より上流側のテーパ部の部位に配置する場合においては、ニードルのリフト量に応じて絞り部の絞り面積が変化する。このため、上記絞り部を、例えばニードルの最大リフト時でのシート部の燃料流路面積(以下、シート面積)より小さく形成した最小絞り部位とすることができない。
これに対し、上記周面に設けられた絞り部は、請求項2乃至3に記載の発明の如く、シート部の上流側であって、シート部を形成する面とは隣合う縦孔の前記周面における、シート部に近接した配置されていることが好ましい。即ち、上記絞り部は、テーパ部を除くシート部の上流側に近接した部位に配置されるので、リフトにより上記絞り部の絞り面積が変化しないため、上記絞り部を、ニードルの最大リフト時でのシート部のシート面積より小さく形成した所定の絞り面積に設定することができる。
特に、上記絞り部は、請求項3に記載の発明の如く、テーパ部の上流側端部の近傍に設けられていることが好ましい。
絞り部を噴孔から引き離すほど、圧力反転する部位を噴孔から遠ざけることは可能であるが、絞り部を配置する部位がシート部から離れすぎると、絞り部とシート部の間での燃料流路抵抗が増大する傾向にあるため、噴孔から噴射する噴射燃料の圧力低下を招くおそれがある。
これに対し、請求項3に記載の発明では、シート部とは別に最小絞りとなる絞り部を設定可能な部位で、かつ噴孔と絞り部との離間距離をできる限り短縮する部位に、絞り部を配置することができる。
また、上記弁ボディの縦孔とニードルとの周面間を経由し、ニードルの開閉動作によりシート部を通じて噴孔に導かれる高圧燃料の燃料経路において、絞り部が上記周面間の燃料流れ方向の全体にわたって形成されるのではなく、請求項4および請求項5に記載の発明の如く、上記周面間の隙間においてその隙間の燃料流れ方向の一部に、他部より狭い隙間を設けていることが好ましい。
ここで、上記燃料経路において絞り部を最小絞りにするためには、絞り部における隙間を比較的微小な隙間に形成する必要がある。そのような微小隙間を形成するには、ラップ加工やホーニング加工などの特殊な加工が必要となるため、製品コストが高価となる。
これ対し請求項4および請求項5に記載の発明では、絞り部を設ける範囲を上記周面間の隙間の一部に限定するので、製品コストが高価になるのを抑えられる。
詳しくは、請求項4に記載の発明の如く、上記周面間の一方の周面であるニードルの外周面が、外径が小径の第1外周面と、第1外周面より大径である第2外周面とに形成され、絞り部は、この第2外周面と、他方の周面である縦孔の内周面との隙間に限定して形成されている。また、請求項5に記載の発明の如く、上記周面間の一方の周面である縦孔の内周面が、外径が大径の第1内周面と、第1内周面より小径である第2内周面とに形成され、
絞り部は、この第2内周面と、他方の周面であるニードルの外周面との隙間に限定して形成されている。
上記周面間の隙間の一部で形成される絞り部は、請求項6に記載の発明の如く、ニードルの軸方向移動にラップする円筒状の隙間であることが好ましい。
これにより、円筒状の隙間に形成された絞り部内を燃料流れが流通する場合において、その燃料流れを整流することができる。
また、請求項7乃至8に記載の発明の如く、上記ニードルは、内外に二重配置された二つのニードルであって、二つのニードルは、シート部側の端部より高圧燃料を受圧し独立して離座可能なインナニードルと、インナニードルを内側に配置するアウタニードルを有しており、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の絞り部が、弁ボディの縦孔と、縦孔に対向するアウタニードルとの周面に形成されている。
これにより、上記絞り部で、これら噴孔へ流入する燃料の最大流量が規定されるので、アウタニードルの開閉動作に伴なって生じる圧力変動が上記噴孔に流入する燃料流れへ影響するのが抑制される。
しかも、アウタニードルおよびインナニードルの最大リフト側において、その圧力脈動(圧力変動)が上記絞り部で抑止されているため、アウタニードルおよびインナニードルのシート部側の端部で受圧する高圧燃料の開弁方向の作用力を比較的安定させることが可能である。これにより、全噴孔が開放されるときに生じるリフトの不安定挙動を抑制することができる。
特に、請求項8に記載の如く、弁ボディを含むハウジングに設けられ、アウタニードル及びインナニードルに閉弁方向の作用力を作用させる圧力を蓄積し、この圧力が変化することによりアウタニードル及びインナニードルの軸方向移動を制御する圧力制御室を備え、噴孔は、アウタニードルの軸方向移動により開閉する第1噴孔と、インナニードルの軸方向移動により開閉する第2噴孔を有しており、アウタニードル及びインナニードルの軸方向移動により前記噴孔において一部の噴孔および全噴孔のいずれかを選択的に開閉することを特徴とする。
最良の形態は、本発明燃料噴射装置を、内燃機関の蓄圧式燃料噴射装置に用いられる燃料噴射弁に適用したものである。
燃料噴射弁は、
(a)内部に第1内周(縦孔の一例)(21a)、および第1内周21aの下流側端部に弁座としてのテーパ部(24)が形成されるとともに、第1内周(21a)に通じ、かつ内外に貫通する第1噴孔(噴孔の一例)(22)を有するノズルボディ(弁ボディの一例)(21)と、
(b)第1内周(21a)内に軸方向に移動可能であり、かつテーパ部(24)に着座および離座するアウタニードル(ニードルの一例)(6)と、
(c)アウタニードル(6)がテーパ部(24)に着座および離座する第1シート部(シート部の一例)(25a)と備えている。
この燃料噴射弁は、コモンレール(高圧燃料供給源の一例)(9)から供給される高圧燃料により、アウタニードル(6)の第1シート部(25a)側の端部に開弁方向の作用力を作用させるものである。
燃料噴射弁の噴射停止時に、アウタニードル(6)がテーパ部(24)に着座し、第1噴孔(22)へ向かう上記高圧燃料は上記第1シート部(25a)でせき止められている。また噴射時には、アウタニードル(6)がテーパ部(24)から離座してリフトする。このアウタニードル(6)のリフト量に応じて第1シート部(25a)における燃料流路面積即ちシート面積が決められている。
ここで、上記高圧燃料が燃料噴射弁のノズルボディ(21)を含むハウジングに供給され、第1噴孔(22)に向かう燃料経路は、以下の2つの燃料通路に分岐している。
即ち、第1燃料通路(32)は、ノズルボディ(21)とアウタニードル(6)との周面の間に形成される隙間経路の一例であり、即ちノズルボディ(21)の第1内周(21a)とアウタニードル(6)の第1外周(6a)との間で形成されるものである。
また、アウタニードル(6)の内側にはインナニードル(7)が軸方向移動可能に配置されており、第2燃料通路(36)は、アウタニードル(6)の第2内周(6b)とインナニードル(7)の第2外周(7b)との間で形成される隙間経路であり、この隙間経路は、アウタニードル(6)を内外を貫通するバイパス通路(連通路の一例)(63)を介して第1燃料通路(32)に連通している。
第1燃料通路(32)および第2燃料通路(36)は、第1噴孔22へ供給する燃料の流量を比率で表すと、第1燃料通路(32)内を流通する流量(以下、第1流量)が90〜80%、第2燃料通路(32)内を流通する流量(以下、第2流量)が10〜20%の範囲に設定されている。第1流量および第2流量の総和は100%であり、第1噴孔22へ燃料を供給する通路は他にはない。
このような第1燃料通路(32)は、上記第1噴孔(22)に向かう燃料経路において第1噴孔(22)へ供給される燃料の主流れを形成している。
そして、第1燃料通路(32)には、ノズルボディ(21)とアウタニードル(6)との上記周面(21a、6a)に、上記第1シート部25部へ導く燃料を制限する絞り部(33)が設けられており、この絞り部(33)は、第1噴孔(22)へ流入する燃料の最大流量を規定するものである。
なお、ここで、上記各部材ないし構成に付した括弧内の符号は、後述する第1の実施形態記載の構成との対応関係を示すものである。
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態の燃料噴射弁を適用した燃料噴射装置の全体構成を示す模式的断面図である。図2は、図1中の燃料噴射弁のノズル部を示す断面図であって、図2(a)はノズル部の全体を示す部分縦断面図、図2(b)は図2(b)中のA区間でのノズル部内部構造を示す横断面図、図2(c)は図2(a)中のB区間でのノズル部内部構造を示す横断面図、図2(d)は図2(a)中のC区間でのノズル部内部構造を示す横断面図、図2(e)は図2(d)のシート部の開口面積を説明する部分縦断面図である。図3は、図1中のノズル部のニードルのリフト動作の一例を説明するタイムチャートであって、図3(a)はECUから圧電素子を駆動するための駆動信号を示す特性図、図3(b)は背圧室の圧力変化を示す特性図、図3(c)はアウタニードル、インナニードルの軸方向移動量(リフト量)およびそのサイクル間の挙動を示す特性図、図3(d)は両ニードルの軸方向移動による噴射率およびそのサイクル間の挙動を示す特性図である。
なお、図4は、図3(d)の噴射率特性を、そのサイクル間の挙動を重ね合わせた状態で計測された噴射率波形の比較例を示す説明図である。図5は、ECUによるニードルを駆動させるための駆動信号と、燃料噴射量の関係の一例を示す模式的特性図である。
燃料噴射装置は、例えば多気筒(本実施例では、4気筒)のディーゼルエンジン等の内燃機関(以下、エンジン)の蓄圧式燃料噴射装置(コモンレール式燃料噴射装置とも呼ぶ)に適用される。この燃料噴射装置は、図1に示すように、燃料を高圧状態で蓄えるコモンレール9と、燃料タンク11から汲み上げられた燃料を加圧してコモンレール9に圧送する高圧ポンプ(以下、サプライポンプ)10と、コモンレール9より高圧配管14を通って供給される高圧燃料をディーゼル機関の気筒内に噴射する燃料噴射弁1とを備え、制御装置(以下、ECU)12により制御される。
図1に示すように、コモンレール9には、コモンレール9内の燃料噴射圧力相当の燃料圧力(以下、コモンレール圧)Pcを検出してECU12に出力する圧力検出手段としての圧力センサ(図示せず)と、コモンレール9内のコモンレール圧Pcが予め設定された上限値を超えないように制限するプレッシャリミッタ(図示せず)が取り付けられている。サプライポンプ10は、燃料タンク11から汲み上げられた燃料をポンプ室(図示しない)に導入する燃料通路(図示しない)に電磁弁(以下、入口調量弁)(図示せず)が設けられ、ポンプ室に内蔵されるプランジャの圧送中に入口調量弁が燃料通路を遮断すると、ポンプ室の燃料がプランジャによって加圧され、図示しない逆止弁を押し開いてコモンレール9へ高圧燃料を圧送する。
燃料噴射弁1は、図1および図2(a)に示すように、2つのニードル6、7を内蔵するノズル部2と、アクチュエータ部8を用いてニードル6、7の反噴孔側端部62、72の背圧を制御する駆動弁5、8とを備えており、この駆動弁5への通電および通電停止時にノズル部2より燃料の噴射および噴射停止を行なう。駆動弁5に通電すると、ノズル部2内に設けられる圧力制御室(以下、背圧室)31の燃料圧力が低下するため、各ニードル6、7が段階的に上昇して噴射が開始される。その後、駆動弁5への通電を停止すると、背圧室31の燃料圧力が上昇するため、ニードル6、7が押し下げられて噴射が終了する。従って、駆動弁5の通電時期により噴射時期が制御され、駆動弁5、8への通電期間(駆動パルス期間Tq)により噴射量が制御される。
具体的には、サプライポンプ10からコモンレール9を経て供給される高圧燃料は、高圧配管14を介して、燃料噴射弁1においてノズルボディ21を含むハウジング内に形成された高圧燃料供給経路28に導かれる。この高圧燃料供給経路28は、以下の2つの燃料供給経路28a、28bに分岐する。即ち、第1燃料供給経路28aは、ノズル部2の噴孔22、23に燃料を供給する燃料経路であり、ノズル部2を構成する後述のアウタニードル6とノズルボディ21との間で形成される第1燃料通路32内に配置の、絞り部33、シート部25a、25b、26、および噴孔22、33の順に燃料を導いている。なお、ノズル部2の詳細については後述する。
第2燃料供給経路28bは、ニードルのシート部25a、25b、26側とは反対の端部に背圧を付与することで、ニードル6、7に閉弁方向の作用力を加える背圧制御燃料経路であり、詳しくは圧力制御弁としての3方弁5に接続されており、その3方弁5が、低圧系の燃料タンク11に連通する燃料排出通路29と、背圧室31に連通する第3燃料通路30にも接続している。
アクチュエータ部8は、圧電素子81、ピストン82、および制御室83とから構成される周知の構造であり、圧電素子81の伸縮により制御室83内の容積が変化し、制御室83内の燃料圧力が変化する。この変化した燃料圧力は制御通路27を介して3方弁5に伝達し、3方弁5を切換駆動させる。なお、この3方弁の切換駆動の方法としては、これに限らず、圧電素子81の伸縮により制御室83内の容積を変化させることにより、ピストン82との間に制御室83を挟み込んだ図示しないピストンの変位を伝達し、その伝達された変位で3方弁5を切換駆動するものであってもよい。
3方弁5は、第3燃料通路30と第1燃料供給経路28bとを接続する第1の位置と、第3燃料通路30と燃料排出通路29とを接続する第2の位置とを切換える圧力制御弁である。図1に示す第1の位置では、第3燃料通路30と第1燃料供給経路28bとが接続され、高圧燃料がノズル部2の背圧室31に供給される。第2の位置では、第3燃料通路30と燃料排出通路29とが接続され、背圧室31内の燃料が燃料タンク11に排出される。
なお、背圧室31の燃料圧力を変化させる圧力制御手段としては、上記圧電素子81および3方弁5とで構成されるものに限らず、例えば周知の電磁弁装置などで選択通路を切換えるものであってもよい。
次に、ノズル部2を、図2(a)に従って説明する。ノズル部2は、ノズルボディ21と、アウタニードル6と、インナニードル7と、アウタニードル6を付勢する付勢部材(以下、第1スプリング)43と、インナニードル7を付勢する第2スプリング44とを備えている。
ノズルボディ21は、略有底円筒状に形成されており、その内部に、アウタニードル6およびインナニードル7を軸方向に往復移動可能に収容する縦孔としての内周(以下、第1内周)21aが設けられている。ノズルボディ5の先端部には、第1内周21aを通じ、第1内周21a側とノズルボディ21の外壁面とを内外に貫通する第1噴孔22、第2噴孔23が設けられている。
ノズルボディ21には、アウタニードル6の外周(以下、第1外周)6aと上記第1内周21aとの間に第1燃料通路32が形成されており、この燃料通路32は、絞り部33およびシート部25a、25b、26を経由して、第1噴孔22および第2噴孔23へ高圧燃料を供給する燃料流路を構成している。この第1燃料通路32は、上記ハウジングを構成するプレート部4およびシリンダ42に形成され、第1燃料供給経路28aに接続している燃料通路と連通しており、コモンレール9から高圧燃料が供給されるようになっている。なお、上記絞り部33の詳細については後述する。
第1内周21aの先端側の底部には、アウタニードル6およびインナニードル7が着座および離座する共通の弁座25a、25b、26が形成されている。これら弁座25a、25b、26はノズルボディ21の下部をテーパ状に縮径したテーパ部(以下、弁座円錐面)24によって形成されている。弁座25a、25b、26には、上記噴孔22および第2噴孔23が、燃料流れの下流(以下、燃料下流)側に向かって第1噴孔22、第2噴孔23の順で配置されている。
また、弁座25a、25b、26には、アウタニードル6の当接部66、67が着座および離座するシート部25a、25bと、インナニードル7の当接部(以下、第3当接部)76が着座および離座するシート部(以下、第3シート部)26とが設けられている。
上記シート部(以下、第1シート部)25aとシート部(以下、第2シート部)25bは、第1噴孔22を挟んで配置されており、また、第3シート部26は第2噴孔23の燃料流れの上流(以下、燃料上流)側に配置され、かつ第2シート部25bの燃料下流側に配置されている。
アウタニードル6は、略中空円筒状に形成されており、第1噴孔22側とは反対の端部側に第1スプリング43が設けられている。アウタニードル6は、第1スプリング43の付勢力によって、常時、第1噴孔22のある方向に向かって付勢されている。
ここで、以下、噴孔のある方向のことを噴孔方向(閉弁方向)と呼び、その反対方向を、反噴孔方向(開弁方向)と呼ぶ。
また、アウタニードル6は、上記当接部(以下、第1当接部)66と当接部(以下、第2当接部)67を挟んで、凹状の溝(以下、凹状溝)が形成されている。この凹状溝は、第1噴孔22の入口部に対向して配置され、円錐台状の第1噴孔10側端部(以下、第1受圧部)61に環状に形成されている。このような第1当接部66と第2当接部66は、アウタニードル6の軸方向移動(以下、リフト動作)において、アウタニードル6がシート部25a、25bに着座する際に、第1当接部66の第1シート部25aへの着座を、第2当接部67の第2シート部25bへの着座より僅かに早められる。第1当接部66と第2当接部62を、第1シート部25aおよび第2シート部25bへ確実に着座させるためである。
なお、アウタニードル6の第1受圧部61には、第1燃料通路32を介して高圧燃料が導かれており、高圧燃料を受圧する受圧面(以下、第1受圧面)を構成している。
アウタニードル6の内側には、略円柱状に形成されたインナニードル7が軸方向に往復移動可能に収容されている。インナニードル7の反噴孔側には、第2スプリング44が設けられており、インナニードル7は、常時、第2スプリング44の付勢力により噴孔方向に付勢されている。
インナニードル7の第2噴孔23側の端部(以下、第2受圧部)71には、第1燃料通路32および第2燃料通路36を介して高圧燃料が導かれており、高圧燃料を受圧する受圧面(以下、第2受圧面)を構成している。第1受圧部61、第2受圧部71に高圧燃料が作用すると、それぞれ、アウタニードル6、インナニードル7を反噴孔方向(開弁方向)に押し上げる力が発生する。
なお、アウタニードル6には左右に貫通する連通路(以下、バイパス通路)63が形成されており、第1燃料通路32と第2燃料通路36は、バイパス通路63を介して連通している。
ここで、本実施例では、第1燃料通路32および第2燃料通路36は、第1噴孔22へ供給する燃料の流量を比率で表すと、第1燃料通路32内を流通する第1流量が90%を占めており、第2燃料通路32内を流通する第2流量は僅かに10%程度である。
また、各ニードル6、7の反噴孔側には、プレート部3の下端面とシリンダ42の内周で囲まれる背圧室31が設けられている。アウタニードル6の反噴孔側端部(以下、反第1噴孔側受圧部)62、インナニードル7の反噴孔側端部(以下、反第2噴孔側受圧部)72には、背圧室31内の燃料圧力が噴孔方向(閉弁方向)に作用する。
各ニードル6、7の反噴孔側受圧部62、72に作用する背圧室31内の燃料圧力による噴孔方向の力(以下、噴孔方向受圧力)、および各スプリング43、44の付勢力とによる噴孔方向の力(以下、噴孔方向付勢力)との噴孔方向(閉弁方向)の力の総和と、燃料通路32を通じて受圧部61、71に導入された高圧燃料による反噴孔方向の力(以下、反噴孔方向受圧力)との釣り合いによって、ニードル6、7と各シート部25a、25b、26との離着座が決定される。これらの力の釣り合いを調整することにより、燃料の噴射が制御される。
ここで、アウタニードル6の最大リフト量(以下、フルリフトとも呼ぶ)は、図2(a)に示すように、第1軸方向隙間L1と第2軸方向隙間L2の総和L1+L2で決定される。第1軸方向隙間L1は、アウタニードル6の反噴孔側受圧部62の受圧面と、インナニードル7の係止部73の下端面75との間の軸方向寸法である。また、第2軸方向隙間L2は、インナニードル7の係止部73の上端面と、プレート部4の下端面との間の軸方向寸法である。一方、インナニードル7の最大リフト量は、第2軸方向隙間L2のみで決定される。
また、第1軸方向隙間L1は、アウタニードル6に対するインナニードル7の無効リフト量を規定するものである。第1軸方向隙間L1をインナ無効リフト量とも呼ぶ。
まず、ニードル6、7のリフト動作、特にアウタニードル6のリフト動作に従いリフトするインナニードル7の動作について以下説明する。インナ無効リフト量L1のリフト行程間では、アウタニードル6の当接部66、67が第1および第2シート部25a、25bから離座すると共に、リフト量に応じて第1噴孔22のみから噴射が行われ、初期噴射率を低減しつつ初期噴射圧を上昇させられる。
更にアウタニードル1のリフト量がインナ無効リフト量L1に到達すると、反噴孔側受圧部62がインナニードル7側の係止部73に到達して当接するので、インナニードル7が第3シート部26から離座する。このとき、インナニードル7は、第3シート部26により僅かでもリフトすると、高圧燃料が第2受圧部71に加わりインナニードル7の先端部全体に作用するため、インナニードル7は瞬時にリフト上昇し、第2噴孔23からも燃料噴射を開始する。従って、第1噴孔22及び第2噴孔23の両噴孔からの燃料噴射により噴射中期の噴射率を増加させられる。このように燃料を噴射する噴孔22、23を切替えることにより、噴射初期に2段階の噴射特性で燃料を噴射することが可能となる。
このように、噴孔22、23の切り替えにより2段階にする噴射特性は、図5のTq−Q特性に示すような燃料噴射量Qと、噴射パルス期間Tqの関係になる。なお、図5中の横軸に示される噴射パルス期間Tqは、図3(a)のオン期間に対応しており、図3中のt1〜t5の時間区間に相当するものである。また、第1通電パルス期間Tq1は、図3中のt1〜t2の第1時間区間に相当する。第3通電パルス期間Tq3は、図3中のt1〜t3の第2時間区間に相当する。第4通電パルス期間Tq4は、図3中のt1〜t4の第3時間区間に相当する。
図5に示すように、通電パルス期間Tqが、第1通電パルス期間Tq1になると、第1噴孔22から噴射が開始される。図3に示す如く、通電オンが第1時間区間t1〜t2継続した結果、背圧室22の圧力低下量がアウタニードル6を開弁させる開弁圧力に達するからである。即ち、アウタニードル6の反噴孔方向受圧力が、アウタニードル用ばね(第1スプリング)43の付勢力(噴孔方向付勢力)と背圧室31の背圧力(噴孔方向受圧力)の和を勝ると、噴射を開始する(図5中のQTq1点、および図3(d)のt2点を参照)。
更に第2通電パルス期間Tq2になると、アウタニードル6がインナニードル7に衝突する。第1通電パルス期間Tq1と第2通電パルス期間Tq2の間は、インナ無効リフト量L1のリフト行程にあるため、第1の噴孔22よりアウタニードル6のリフト量に応じた燃料が噴射される。
インナニードル7には、アウタニードル6の第1スプリング43とは別個に、インナニードル7のみを付勢する第2スプリング44が設けられているため、インナニードル8における反噴孔方向受圧力が第2スプリング44の付勢力と背圧室31の背圧力の和を勝る必要がある。第3通電パルス期間Tq3に到達した時点で、インナニードル7が離座し、アウタニードル6と共にインナニードル7がリフトを開始する。図3(b)に示す如く、アウタニードル6の開弁圧力条件とは独立して、背圧室31の更なる背圧力低下が生じるに相当する時間区間に相当する増分ΔTqが必要なためである。
ここで、上記増分ΔTq間である第2通電パルス期間Tq2と第3通電パルス期間Tq3の間においては、アウタニードル6はインナニードル7により係止され、擬似的なフルリフト状態(図5のQTq2点〜QTq3点を参照)にあり、図3(d)の如く、噴射率が一定となる時間区間が形成される。
更に第3通電パルス期間Tq3より増分ΔTqすると、第1の噴孔22および第2の噴孔23の双方より燃料が噴射される。この増分ΔTq期間は、図3(c)および(d)の如く、時間区間t3〜t4に対応するものであるので、通電パルス期間間Tq3〜Tq4の噴射量の増分は、図3(c)の如く第1の噴孔22および第2の噴孔23を開放する各ニードル6、7のリフト量に応じて増加する。
更に増分ΔTqし、第4通電パルス期間Tq4になると、アウタニードル1およびインナニードル8は、機械的なフルリフト状態になる。この後の噴射量Qの増分ΔQは、図3(c)に示すフルリフト状態の時間区間t5〜t6が単に増加することで得られるものであるので、増分量ΔTqにほぼ比例する。
発明者らは、上記噴射特性において、噴射量変動のばらつき要因について鋭意検討した。上記噴射特性は、図4のサイクル間の挙動を重ね合わせて計測した噴射率波形で示すように、フルリフトに到達直前の各ニードル6、7のリフト動作領域において、そのリフト挙動が不安定になることを見出した。即ち、図3(c)に示す如く、第1、第2噴孔22、23の全噴孔が開放されるリフト領域において、インナニードル6およびアウタニードル7の両リフト挙動が不安定となる。詳しくは、サイクル間でニードル6、7の軸方向移動速度(リフト速度)等の変動が発生することを見出した。この不安定なリフト挙動は、サイクル間の噴射量にばらつきを生じさせ、噴射量変動が発生する要因となっている。
ここで、噴射量変動は燃料噴射弁1の開閉動作即ちアウタニードル6の開閉動作に伴なう第1シート部25aでの圧力反転であることを見出した。即ち、燃料噴射弁1の噴射停止時において、第1燃料通路32において少なくとも第1噴孔22に向かう燃料流れが第1シート部25aでせき止められ、高圧燃料は第1シート部25aの上流側部位までしか到達していない。そして、アウタニードル6の開閉動作に伴なって第1シート部25aに流入する定常流れの燃料が、第1シート部25aの部位で圧力反転する。そしてこの圧力反転が生じるが故に、第1シート部25aの上流側の第1燃料通路32において燃料の圧力脈動(圧力変動)が生じ、第1シート部25aに近接する第1噴孔22へ流入する燃料の流れに、その圧力脈動(圧力変動)が直接影響することになる。
このように圧力脈動の要因となる圧力反転が起きる第1シート部25aと、第1噴孔22とを近接配置する条件では、その圧力脈動(圧力変動)が第1噴孔22へ流入する燃料の流れに直接影響するため、噴射量変動を引き起こして噴射量が狙い通りにならないのである。
そこで、発明者らは、図2(a)〜(e)に示すように、上述したノズル部2内の第1燃料通路32の途中に、シート部25a、25b、26へ導く燃料流れを制限する絞り部33を設けた。なお、第1シート部25aと第2シート部25bは、第1噴孔22を開閉するためにほぼ同時離座および着座するものであるので、以下シート部25a、25bを、シート部25aで説明する。
具体的には、図1および図2(a)に示すように、絞り部33は、第1燃料通路32のB区間の途中に設けられている。
第1燃料通路32において、A、B、およびCの3区間は以下の通りに定義される。即ち、A区間は、内部を流通する燃料流れに対して燃料流路抵抗による流体損失を抑制するために、他の区間に比べて比較的に大きな流路断面積に設定されている。そして、B区間は、A区間よりは下流側部位に設けられ、かつ第1シート部25aが設定された弁座傾斜面(テーパ部)24の上流端部より上流側に配置されている。C区間は、上記弁座傾斜面(テーパ部)において第1シート部25a側より上流側の範囲ある部分に相当するものである。
上記第1燃料通路32の上記B区間に設けた絞り部33は、その流路断面積(以下、絞り面積)が、A区間のうちの、ノズルボディ21の第1内周21aとアウタニードル6の第1外周6aの間で区画された隙間経路におけるいずれの部位の流路断面積よりも極めて小さく形成されている。即ち、絞り部33は、第1燃料通路32内を流通し第1噴孔22に向かう燃料流れにおいて、第1シート部25aとは別に、第1噴孔22に流入する燃料の最大流量を決める最小絞りを設定するものである。
上記絞り部33は、リフト動作に伴ない軸方向移動する第1外周6aに延設された円筒状の段差部(以下、第1外周段差部)35と、第1内周21aから第1外周段差部35に向かって延設された段差部(第1内周段差部)34とで構成されている。
また、絞り部33の絞り面積は、図2(a)および(c)に示す如く、第1外周段差部35の外周と第1内周段差部34の内周との間で形成された隙間δ3で形成されており、その隙間δ3による上記絞り面積は、最大リフト量(フルリフト)時のアウタニードル6の第1シート部25aにおける隙間δ1に相当するシート面積に比べて小さく設定されている。
これによると、ノズルボディ21の第1内周21aとアウタニードル6との第1外周面6aの間の隙間経路を経由し、アウタニードル6の開閉動作により第1シート部25aを通じて第1噴孔22に導かれる第1燃料通路32において、上記第1内周21aおよび第1外周面6aのうちのB区間に、第1シート部25aへ導く燃料流れを制限する絞り部33を設けており、その絞り部33は、第1噴孔22に流入する燃料の最大流量を規定している。
即ち、従来技術において第1シート部を第1噴孔へ流れる燃料の最大流量を決める部位にしているのに対し、本実施形態では、第1シート部25aとは別に、第1噴孔22へ流入する燃料の最大流量を規定する即ち最小絞りとなる絞り部33を設けている。しかも、上記絞り部33と第1噴孔22との間に第1シート部25aを挟み込んでいるので、上記絞り部33は、第1噴孔22から第1シート部25aまでの距離に比べて第1噴孔22から十分に引き離されている。
これにより、少なくともアウタニードル6の開閉動作に伴なう圧力脈動(圧力変動)の発生要因となる圧力反転が、従来技術の如く第1噴孔に近接した第1シート部上流側で生じるのではなく、第1噴孔22から引き離された上記絞り部33で生じる。それ故に、従来技術の如く上記圧力変動が第1噴孔22に流入する燃料流れへ直接影響を及ぼすのを、回避することができる。
したがって、最小絞りとなる絞り部33を第1シート部25aとは別に設け、その絞り部33を第1噴孔22から引き離しているので、上記アウタニードル6の開閉動作に伴なう圧力変動による第1噴孔22に流入する燃料流れへの影響を抑制することができる。
ここで、上記絞り部33を、弁座傾斜面(テーパ部)24において第1シート部25aより上流側の部位に配置する場合に関しては、アウタニードル6のリフト量に応じて絞り部33の絞り面積が変化してしまって、一定の絞り面積に設定することができない。即ち、例えば上記絞り部を、アウタニードル6の最大リフト時での第1シート部25aのシート面積より小さく形成した最小絞り部位とすることができない。
これに対し、上記第1燃料通路32においてB区間に設けられた絞り部33は、
弁座傾斜面(テーパ部)24を除く第1シート部25aの上流側に近接した部位に配置されるので、上記絞り部33を、アウタニードル6の最大リフト時での第1シート部25aのシート面積より小さく形成した所定の絞り面積に設定することができる。
ここで、上記絞り部33を、例えばB区間でなくA区間に設定する如く、第1シート部25aおよび第1噴孔25aから引き離す場合において、絞り部33を第1噴孔22から引き離す離隔距離を拡大させられ、圧力反転する部位を噴孔から効果的に遠ざけることは可能である。しかしながら、絞り部33を配置する部位が第1シート部25aから離れすぎると、絞り部33と第1シート部25aの間での燃料流路抵抗が増大する傾向にあるため、第1噴孔22から噴射する噴射燃料の圧力低下を招くおそれがある。
これに対し、上記絞り部33の配置部位は、B区間の如き弁座傾斜面(テーパ部)24の上流側端部の近傍、即ち上記上流側端部に近接した部位であることが好ましい。これにより、第1シート部25aとは別に最小絞りとなる絞り部33を設定可能な部位で、かつ第1噴孔22と絞り部33との離間距離をできる限り短縮する部位に、絞り部33を配置することができる。
上記第1燃料通路32の弁座傾斜面(テーパ部)24の上流側に絞り部33を配置する場合に関して、本実施形態では、ノズルボディ21の第1内周21aにおいて弁座傾斜面24側の部分即ち第1内周段差部34に対して、図2(a)に示す如く、アウタニードル6の第1外周面6a側を、第1外周段差部35の外周面の如き大径の外周面(以下、大径外周面)と、この大径外周面より小径である他の外周面(以下、小径外周面)とに形成している。
即ち、本実施形態では、第1燃料通路32における上記第1内周21aと第1外周面6aの間の隙間経路において、この隙間経路の全区間にわたって絞り部を形成するのではなく、隙間経路の一部に限定して絞り部が形成されている。
ここで、上記第1燃料通路32のような隙間経路において絞り部33を最小絞りにするためには、絞り部33とする隙間を比較的微小な隙間に形成する必要がある。そのような微小隙間を形成するには、ラップ加工やホーニング加工などの特殊な加工が必要となるため、製品コストが高価となる。
これ対し、本実施形態では絞り部33を設ける範囲を、第1燃料通路32おいて隙間経路の一部の隙間区間に限定するので、製品コストが高価になるのを抑えられる。
上記絞り部33の絞り面積を規定する隙間形状は、図2(a)に示す如く、アウタニードル6の軸方向移動にラップする円筒状の隙間であることが好ましい。なお、この円筒状の絞り部33においては、比率(L/S3)で規定され、この比率が、以下の範囲に設定されている。
即ち、絞り部33の軸方向長さをL、絞り面積をS3とすると、その比L/S3は、6〜9の範囲にある。
このような円筒状の絞り部33に形成するので、絞り部33内を燃料流れが流通する場合において、その燃料流れを整流することができる。
ここで、上記絞り部33で、これら噴孔22、23へ流入する燃料の最大流量が規定されるので、アウタニードル6の開閉動作に伴なって生じる圧力変動が上記噴孔に流入する燃料流れへ影響するのが抑制される。
さらに、上記絞り部33における絞り面積は、図4の噴射率特性の一例に示される如く、フルリフト時の第1シート部25aにおけるシート面積以下に設定されていることが好ましい。これにより、アウタニードル6およびインナニードル7の最大リフト側において、その圧力脈動(圧力変動)が上記絞り部33で抑止されているため、アウタニードル6およびインナニードル7のシート部側の端部即ち受圧部61、71で受圧する高圧燃料の開弁方向の作用力を比較的安定させることが可能である。これにより、全噴孔22、23が開放されるときに生じるリフトの不安定挙動を抑制することができる。
また、上記絞り部33における絞り面積は、図4の噴射率特性の一例に示される如く、フルリフト時の上記シート面積の3/4以下に設定することもできる。これにより、従来技術の如くシート部のシート面積で噴孔22、22から噴射される燃料の流量(噴射量)が決定されるのではなく、絞り部33の絞り面積で決められる。したがって、インナニードル6およびアウタニードル7がフルリフトに到達直前に生じるリフトの不安定挙動に対して、不安定挙動となるリフト量での第1シート部25aのシート面積で噴射量が制御されることなく、絞り部33の絞り面積で噴射量が制御されるので、リフトの不安定挙動による噴射量への影響を抑制することができる。
また、上記絞り部33は、図2(a)に示す如く、アウタニードル6のリフト動作にラップさせて配置されており、B区間は、絞り部33がラップ可能な範囲で設定されており、アウタニードル6における最大リフト量(L1+L2)に相当するリフト可能範囲より広く設定されていることが好ましい。即ち、アウタニードル6のリフト量によって絞り部33の絞り面積は変化しない。これにより、上記ニードル6、7の全リフト領域において、常に安定した一定の絞り面積を確保することができる。
(第2の実施形態)
以下、本発明を適用した他の実施形態を説明する。なお、以下の実施形態においては、第1の実施形態と同じもしくは均等の構成には同一の符号を付し、説明を繰返さない。
第2の実施形態を図6に示す。第2の実施形態は、第1燃料通路32における上記第1内周21aと第1外周面6aの間の隙間経路において、隙間経路の一部に限定して絞り部を形成する他の一例を示すものである。図6は、本実施形態に係わるノズル部を示す部分縦断面図である。
図6に示すように、絞り部133は、アウタニードル6の第1外周6aと、第1内周段差部134の内周との間で区画されている。
即ち、アウタニードル6の第1外周面21aにおいて弁座傾斜面24側の部分に対して、図6に示す如く、ノズルボディ21の第1内周面21a側を、第1内周段差部134の内周面の如き小径の内周面(以下、小径内周面)と、この小径内周面より大径である他の内周面(以下、大径外周面)とに形成している。
このような構成においても、第1燃料通路32における上記第1内周21aと第1外周面6aの間の隙間経路において、この隙間経路の全区間にわたって絞り部を形成するのではなく、隙間経路の一部に限定して絞り部が形成されている。
また、本実施形態では、絞り部を設定するためにアウタニードル6側に第1外周段差部のような突起部を設けることなく、絞り部133を形成することができる。したがって、アウタニードル6を製造する加工工数が低減することができ、安価に製作することができる。
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定して解釈されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態に適用可能である。
(1)以上説明した本実施形態では、ニードルを、アウタニードル6およびインナニードル7で構成される内外に二重配置される二つのニードルで構成される場合で説明したが、これに限らず、一つのニードルで構成されるものであってもよい。
(2)以上説明した本実施形態では、燃料噴射弁1内の背圧室31の燃料圧力を変化させるアクチュエータとして、圧電素子81および圧力制御弁(3方弁)5を用いるもので説明した。アクチュエータは、これに限らず、図7に示すような可動子51、固定子52、および可動子51を付勢する付勢部材53を備えた周知の電磁弁305であってもよい。
本発明の第1の実施形態の燃料噴射弁を適用した燃料噴射装置の全体構成を示す模式的断面図である。 図1中の燃料噴射弁のノズル部を示す断面図であって、図2(a)はノズル部の全体を示す部分縦断面図、図2(b)は図2(b)中のA区間でのノズル部内部構造を示す横断面図、図2(c)は図2(a)中のB区間でのノズル部内部構造を示す横断面図、図2(d)は図2(a)中のC区間でのノズル部内部構造を示す横断面図、図2(e)は図2(d)のシート部の開口面積を説明する部分縦断面図である。 図1中のノズル部のニードルのリフト動作の一例を説明するタイムチャートであって、図3(a)はECUから圧電素子を駆動するための駆動信号を示す特性図、図3(b)は背圧室の圧力変化を示す特性図、図3(c)はアウタニードル、インナニードルの軸方向移動量(リフト量)およびそのサイクル間の挙動を示す特性図、図3(d)は両ニードルの軸方向移動による噴射率およびそのサイクル間の挙動を示す特性図である。 図3(d)の噴射率特性を、そのサイクル間の挙動を重ね合わせた状態で計測された噴射率波形の比較例を示す説明図である。 ECUによるニードルを駆動させるための駆動信号と、燃料噴射量の関係の一例を示す模式的特性図である。 第2の実施形態に係わるノズル部を示す部分縦断面図である。 第3の実施形態に係わるアクチュエータ部の他の一例を示す模式的断面図である。
符号の説明
1 燃料噴射弁
2 ノズル部
21 ノズルボディ(弁ボディ)
21a 第1内周(縦孔の周面)
22 第1噴孔
23 第2噴孔
24 弁座円錐面(テーパ部)
25a 第1シート部(シート部)
25b 第2シート部(シート部)
26 第3シート部(シート部)
27 制御通路
28 高圧燃料供給経路
28a 第1燃料供給経路
28b 第2燃料供給経路
29 燃料排出通路
30 第3燃料通路(燃料通路)
31 背圧室(圧力制御室)
32 第1燃料通路
33 絞り部
34 第1内周段差部(弁ボディ側ラップ用段差部)
35 第1外周段差部(アウタニードル側ラップ用段差部)
36 第2燃料通路
5 3方弁(圧力制御弁)
6 アウタニードル
6a 第1外周(ニードルの周面)
61 第1受圧部(シート部側の端部)
62 反第1噴孔側受圧部
63 バイパス通路(連通路)
66 第1当接部
67 第2当接部
7 インナニードル
71 第2受圧部(シート部側の端部)
72 反第2噴孔側受圧部
73 係止部
76 第3当接部
8 アクチュエータ部
81 圧電素子
82 ピストン
83 制御室
9 コモンレール
10 サプライポンプ(高圧ポンプ)
11 燃料タンク

Claims (8)

  1. 内部に縦孔、および前記縦孔の下流側端部に弁座としてのテーパ部が形成されるとともに、前記縦孔に通じ、かつ内外に貫通する噴孔を有する弁ボディと、
    前記縦孔の内部を軸方向に移動可能であり、かつ前記テーパ部に着座および離座するニードルと、
    前記ニードルが前記テーパ部に着座および離座するシート部と、
    を備え、高圧燃料を蓄圧するコモンレールから供給される高圧燃料により前記ニードルに開弁方向の作用力を作用させる燃料噴射装置において、
    前記縦孔と前記ニードルとの周面であって、前記ニードルの開閉弁方向への移動に伴なってその周面間の開口の大きさが変化しない位置に、前記シート部へ導く燃料を制限する絞り部が設けられ、
    前記絞り部は、前記噴孔へ流入する燃料の最大流量を規定していることを特徴とする燃料噴射装置。
  2. 前記周面に設けられる前記絞り部は、前記シート部の上流側であって、前記シート部を形成する面とは隣合う前記縦孔の前記周面における、前記シート部に近接した配置されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射装置。
  3. 前記絞り部は、前記テーパ部の上流側端部の近傍に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の燃料噴射装置。
  4. 前記周面としての前記縦孔の内周面および前記ニードルの外周面において、
    前記ニードルの前記外周面は、外径が小径の第1外周面と、前記第1外周面より大径である第2外周面とが形成され、
    前記絞り部は、前記縦孔の前記内周面と前記ニードルの前記第2外周面との隙間で形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の燃料噴射装置。
  5. 前記周面としての前記縦孔の内周面および前記ニードルの外周面において、
    前記縦孔の前記内周面は、外径が大径の第1内周面と、前記第1内周面より小径である第2内周面とが形成され、
    前記絞り部は、前記縦孔の前記第2内周面と前記ニードルの前記外周面との隙間で形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の燃料噴射装置。
  6. 前記隙間で形成された前記絞り部は、前記ニードルの軸方向移動にラップする円筒状の隙間であることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の燃料噴射装置。
  7. 前記ニードルは、内外に二重配置された二つのニードルであって、
    前記二つのニードルは、前記シート部側の端部より高圧燃料を受圧し独立して離座可能なインナニードルと、前記インナニードルを内側に配置するアウタニードルを有し、
    前記絞り部が設けられる前記周面は、前記弁ボディの前記縦孔と、前記縦孔に対向する前記アウタニードルとの周面であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の燃料噴射装置。
  8. 前記弁ボディを含むハウジングに設けられ、前記アウタニードル及び前記インナニードルに閉弁方向の作用力を作用させる圧力を蓄積し、この圧力が変化することにより前記アウタニードル及び前記インナニードルの軸方向移動を制御する圧力制御室を備え、
    前記噴孔は、前記アウタニードルの軸方向移動により開閉する第1噴孔と、前記インナニードルの軸方向移動により開閉する第2噴孔を有しており、
    前記アウタニードル及び前記インナニードルの軸方向移動により前記噴孔において一部の噴孔および全噴孔のいずれかを選択的に開閉することを特徴とする請求項7に記載の燃料噴射装置。
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