以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
(1)ハニカム構造体:
図1〜図6に示すように、本発明のハニカム構造体の第一実施形態は、流体(すなわち、排ガスG)の流路となる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1を有するハニカム基材4を備えたハニカム構造体100である。この隔壁1によって、排ガスGが流入する側の端面である排ガス流入端面11から排ガスGが流出する側の端面である排ガス流出端面12まで延びる複数のセル2が区画形成されている。以下、「排ガス流入端面11」を、単に、「流入端面11」ということがある。また、以下、「排ガス流出端面12」を、単に、「流出端面12」ということがある。本実施形態のハニカム構造体100においては、複数のセル2が、貫通セル2aと、ガス流入端面目封止セル2bと、を含んでいる。貫通セル2aとは、流入端面11側から流出端面12側まで実質的に貫通するセル2のことである。ガス流入端面目封止セル2bとは、ハニカム基材4の流入端面11側において当該セル2の端部が目封止部5によって実質的に塞がれたセル2のことである。
本実施形態のハニカム構造体100においては、少なくとも1つの貫通セル2aが、少なくとも2つのガス流入端面目封止セル2bと隣接するように配置されている。そして、当該少なくとも2つのガス流入端面目封止セル2bのそれぞれにおいて、流入端面11からの目封止部5のセル2の延びる方向の長さが、各セル2(具体的には、各ガス流入端面目封止セル2b)内で異なっている。更に、本実施形態のハニカム構造体100においては、当該少なくとも2つのガス流入端面目封止セル2bにおいて、目封止部5が、隣接する貫通セル2aを挟んで非鏡像対称である。以下、非鏡像対称の目封止部5を有する少なくとも2つのガス流入端面目封止セル2bのそれぞれと隣接している貫通セル2aのことを、「特定貫通セル2aa」ということがある。すなわち、「特定貫通セル2aa」とは、非鏡像対称の関係にある2つのガス流入端面目封止セル2bと隣接するように配置されている貫通セル2aのことである。ここで、貫通セル2aとガス流入端面目封止セル2bとが隣接するとは、ハニカム基材4のセル2の延びる方向に垂直な断面において、貫通セル2a及びガス流入端面目封止セル2bが、共通する隔壁1によって区画形成されていることを意味する。特に、上記断面において、貫通セル2a及びガス流入端面目封止セル2bの形状が多角形の場合には、貫通セル2aの一辺と、ガス流入端面目封止セル2bの一辺とが、隔壁1を挟んで隣接していることをいう。
図1〜図6に示すハニカム構造体100において、特定貫通セル2aaは、2つのガス流入端面目封止セル2bと隣接するように配置されている。ここで、特定貫通セル2aaと隣接する2つのガス流入端面目封止セル2bを、第一のガス流入端面目封止セル2ba及び第二のガス流入端面目封止セル2bbとする。第一のガス流入端面目封止セル2ba及び第二のガス流入端面目封止セル2bbは、ハニカム基材4のセル2の延びる方向に垂直な断面における形状が、四角形である。ここで、第一のガス流入端面目封止セル2baの上記断面における四角形の4つの頂点を、一の頂点O1から流入端面側から見て時計回りに、頂点O2、頂点O3、及び頂点O4とする。また、第二のガス流入端面目封止セル2bbの上記断面における四角形の4つの頂点を、一の頂点P1から流入端面側から見て反時計回りに、頂点P2、頂点P3、及び頂点P4とする。頂点O1と頂点P1、頂点O2と頂点P2、頂点O3と頂点P3、及び頂点O4と頂点P4のそれぞれは、特定貫通セル2aaを挟んで、鏡像の位置関係にある。
第一のガス流入端面目封止セル2ba及び第二のガス流入端面目封止セル2bbの流入端面11側には、目封止部5a,5bが配設されている。第一のガス流入端面目封止セル2baにおいて、流入端面11からの目封止部5aのセル2の延びる方向の長さは、頂点O1では長さT1、頂点O2では長さT2、頂点O3では長さT2、頂点O4では長さT1となっている。一方、第二のガス流入端面目封止セル2bbにおいて、流入端面11からの目封止部5bのセル2の延びる方向の長さは、頂点P1では長さT2、頂点P2では長さT1、頂点P3では長さT1、頂点P4では長さT2となっている。このように、本実施形態のハニカム構造体においては、鏡像の位置関係にある、頂点O1と頂点P1、頂点O2と頂点P2、頂点O3と頂点P3、及び頂点O4と頂点P4において、目封止部5a,5bのセル2の延びる方向の長さが異なっている。本明細書において、「目封止部5が、隣接する貫通セル2aを挟んで非鏡像対称である」とは、上述したように、鏡像の位置関係にある頂点、例えば、頂点O1と頂点P1において、目封止部5a,5bのセル2の延びる方向の長さが異なっていることを意味する。図1〜図6に示すハニカム構造体100においては、鏡像の位置関係にある、頂点O1と頂点P1、頂点O2と頂点P2、頂点O3と頂点P3、及び頂点O4と頂点P4の全てにおいて、目封止部5a,5bのセル2の延びる方向の長さが異なっている。ただし、頂点O1と頂点P1、頂点O2と頂点P2、頂点O3と頂点P3、及び頂点O4と頂点P4のうちの少なくとも1つにおいて、目封止部5a,5bのセル2の延びる方向の長さが異なっていれば、非鏡像対称であるといえる。すなわち、頂点O1と頂点P1、頂点O2と頂点P2、頂点O3と頂点P3、及び頂点O4と頂点P4の全てにおいて、目封止部5a,5bのセル2の延びる方向の長さがそれぞれ同じものを、鏡像対称とし、このような鏡像対称以外の場合を、非鏡像対称とする。
ここで、「セルの端部が目封止部によって「実質的」に塞がれる」とは、セルの端部が目封止部によって塞がれ、それにより排ガスが当該セルを通過し難い状態であることを意味する。目封じ形成時にできるわずかな隙間や、目封止部5が多孔体であることにより、目封止部を通過する微量のガス流れがあってもよい。また、「セルが「実質的」に貫通する」とは、排ガスが当該セルを通過することができる状態を意味する。これは、目封止部等がセル内に配設されていても、当該目封止部等に孔が開いている等の状態により、排ガスが当該セルを通過できるような場合も含むものである。また、図1に示すような円柱形のハニカム構造体100において、「セルの延びる方向」とは、円柱形のハニカム構造体100の中心軸方向のことを意味する。「目封止部5の長さ」とは、目封止部5の、セルの延びる方向の長さのことを意味する。
図1は、本発明のハニカム構造体の第一実施形態を模式的に示す、流入端面側からみた斜視図である。図2は、本発明のハニカム構造体の第一実施形態を模式的に示す、流出端面側からみた斜視図である。図3は、本発明のハニカム構造体の第一実施形態を模式的に示す、流入端面側からみた平面図である。図4は、本発明のハニカム構造体の第一実施形態を模式的に示す、流出端面側からみた平面図である。図5は、図3のA−A’を模式的に示す断面図である。図6は、本発明のハニカム構造体の第一実施形態の流入端面近傍の拡大透視斜視図である。
本実施形態のハニカム構造体によれば、排ガス中に含まれる粒子状物質を良好に捕集することができ、且つ、捕集した粒子状物質の外部への流出を有効に抑制できると共に、当該粒子状物質によるハニカム構造体の端面詰まりを抑制することができる。すなわち、図7Aに示すように、本実施形態のハニカム構造体100によれば、ハニカム基材4の流入端面11から排ガスGを流入させたときに、排ガスG中に含まれる粒子状物質を、貫通セル2aを区画形成する隔壁1によって捕集することができる。具体的には、ハニカム構造体100は、ハニカム基材4の流入端面11における、ガス流入端面目封止セル2bの端部に目封止部5が配設されている。この構造により、目封止部5が配設されていないセル(すなわち、貫通セル2a)に排ガスGが流入すると、当該貫通セル2a内の圧力が上昇し、貫通セル2aに隣接するガス流入端面目封止セル2b内の圧力が貫通セル2a内の圧力に対して相対的に低くなる。このため、排ガスGの一部が、貫通セル2aから多孔質の隔壁1を透過してガス流入端面目封止セル2bに流入し、このガス流入端面目封止セル2bに流入した排ガスGが、ガス流入端面目封止セル2bの、目封止部5が配設されていない側(ハニカム基材4における流出端面12側)の端部から排出される。貫通セル2aとガス流入端面目封止セル2bとが隣接することにより、貫通セル2aとガス流入端面目封止セル2bとの間に位置する多孔質の隔壁1を透過して、排ガスGが「貫通セル2aからガス流入端面目封止セル2bへと」移動することができる。そして、排ガスGの一部が隔壁1を透過することにより、貫通セル2a内の隔壁1に、排ガスGに含有される粒子状物質が堆積するため、粒子状物質を捕集することができる。図7Aは、本発明のハニカム構造体の第一実施形態の、排ガスの流れる方向に平行な断面を示す模式図である。
そして、本実施形態のハニカム構造体100においては、特定貫通セル2aaが、各セル2内で目封止部5の長さが異なっている2つ以上のガス流入端面目封止セル2ba,2bbと隣接するように構成されている。更に、この少なくとも2つのガス流入端面目封止セル2ba,2bbにおいて、目封止部5a,5bが、隣接する特定貫通セル2aaを挟んで非鏡像対称となっている。このように構成することによって、図7Bに示すように、特定貫通セル2aa内の隔壁1において、粒子状物質13が堆積し始める流入端面11側からの開始点に差異を設けることができる。すなわち、特定貫通セル2aaにおいて、目封止部5が配設された部分の隔壁1では排ガスGが殆ど透過できず、隔壁1の目封止部5が配設されていない部分(別言すれば、目封止部5が途切れた箇所)から、粒子状物質13が堆積し始めることとなる。したがって、特定貫通セル2aaと第一のガス流入端面目封止セル2baとを隔てている隔壁1と、特定貫通セル2aaと第二のガス流入端面目封止セル2bbとを隔てている隔壁1とで、粒子状物質13の堆積し始める位置に差異を設けることができる。このため、ハニカム構造体100の流入端面11近傍における、粒子状物質13の堆積開始位置がずれることとなり、特定貫通セル2aaの流入端面11側が、粒子状物質13の堆積によって狭くなり難くなる。そして、特定貫通セル2aa内の流路を広く確保することができれば、排ガスGの流量が増大しても、堆積した粒子状物質13にかかる圧力を抑制することができ、粒子状物質13の隔壁1からの剥がれ落ちを防止することができる。したがって、本実施形態のハニカム構造体100によれば、一旦捕集した粒子状物質13の外部への流出(別言すれば、ブローオフ)を有効に抑制することができる。このようなブローオフを有効に抑制するという効果は、貫通セル2aを有し、この貫通セル2aを区画する隔壁1にて粒子状物質13を捕集するハニカム構造体100に特有の顕著な効果である。
尚、図示は省略するが、本実施形態のハニカム構造体においては、特定貫通セルが、3つのガス流入端面目封止セルと隣接するように配置され、且つ、当該3つのガス流入端面目封止セル内で目封止部の長さが異なっていてもよい。また、特定貫通セルが、4つのガス流入端面目封止セルと隣接するように配置され、且つ、当該4つのガス流入端面目封止セル内で目封止部の長さが異なっていてもよい。このように、特定貫通セルに隣接するガス流入端面目封止セルの数は、2つ以上であれば、特定貫通セルと隣接し得るセルの個数まで増やすことができる。また、特定貫通セルに隣接するガス流入端面目封止セルにおいて、2つのガス流入端面目封止セル内で目封止部の長さが異なっていれば、目封止部の長さが同じガス流入端面目封止セルが複数存在してもよい。もちろん、特定貫通セルに隣接するガス流入端面目封止セルの全てにおいて、各セル内で目封止部の長さが異なっていてもよい。なお、特定貫通セルが、3つ以上のガス流入端面目封止セルと隣接するように配置されている場合には、少なくとも2つのガス流入端面目封止セルにおいて、目封止部が、隣接する特定貫通セルを挟んで非鏡像対称となることが必要である。
本実施形態のハニカム構造体においては、ガス流入端面目封止セルの個数が、セルの全個数に対して、25〜50%であることが好ましい。別言すれば、貫通セルの個数が、全てのセルの個数に対して、50〜75%であることが好ましい。以下、「全てのセルの個数に対するガス流入端面目封止セルの個数の割合」を、単に、「ガス流入端面目封止セルの個数割合」又は「ガス流入端面目封止セルの割合」ということがある。また、「全てのセルの個数に対する貫通セルの個数の割合」を、単に、「貫通セルの個数割合」又は「貫通セルの割合」ということがある。ガス流入端面目封止セルの割合が、25%未満であると、ハニカム構造体の粒子状物質を捕集する捕集効率が低下することがある。50%を超えると、ハニカム構造体の圧力損失が大きく増加することがある。ガス流入端面目封止セルの割合は、35〜50%であることが更に好ましい。
また、上述した、一旦捕集した粒子状物質の隔壁からの剥がれ落ちを有効に防止するためには、特定貫通セルの個数が、全ての貫通セルの個数に対して、50%以上であることが好ましい。以下、「全ての貫通セルの個数に対する特定貫通セルの個数の割合」を、単に、「特定貫通セルの個数割合」又は「特定貫通セルの割合」ということがある。特定貫通セルの割合が、50%未満であると、一旦捕集した粒子状物質の流出を抑制する効果が十分に発現し難いことがある。特定貫通セルの割合は、70%以上であることが更に好ましく、100%であることが特に好ましい。特定貫通セルの割合を上記のような数値範囲とすることで、粒子状物質の外部への流出を特に有効に抑制することができる。
本実施形態のハニカム構造体においては、セルの延びる方向に垂直なセル断面が複数の角部を有する多角形である。そして、ガス流入端面目封止セルの一つのセル内の角部において、排ガス流入端面を起点として、各角部の目封止部のセルの延びる方向の長さの差の最大値が、5mm以上、25mm以下である。このように構成することによって、粒子状物質の堆積開始点の差を十分に確保することができるとともに、ハニカム構造体の捕集効率の過度な低下を抑制することができる。例えば、各角部の目封止部のセルの延びる方向の長さの差の最大値が、5mm未満であると、粒子状物質の堆積開始点の差を十分に確保することができず、特定貫通セル内の流路が閉塞し易くなることがある。一方、各角部の目封止部のセルの延びる方向の長さの差の最大値が、25mmを超えると、目封止部によってフィルタ機能の発現しない部分の長さが長くなり過ぎて、ハニカム構造体の捕集効率が低下したり、ハニカム構造体の圧力損失が増大したりすることがある。例えば、図5において、第一のガス流入端面目封止セル2baの頂点O1及び頂点O4の目封止部5の長さT1と、第一のガス流入端面目封止セル2baの頂点O2及び頂点O3の目封止部5の長さT2との差T2−T1が、5mm以上、25mm以下である。各角部の目封止部のセルの延びる方向の長さの差の最大値は、15mm以上であることが好ましい。また、各角部の目封止部のセルの延びる方向の長さの差の最大値は、20mm以下であることが好ましい。
また、ガス流入端面目封止セルの一つのセル内の角部において、排ガス流入端面を起点として、各角部の目封止部のセルの延びる方向の長さが、2mm以上、35mm以下であることが好ましい。各角部の目封止部のセルの延びる方向の長さは、5mm以上、25mm以下であることが更に好ましい。ガス流入端面目封止セルの各角部の目封止部のセルの延びる方向の長さが、2mm未満であると、煤が入口近くに堆積しガスに流されやすく、また目封じ深さが浅いと目封じが外れ易くなるのであり好ましくない。ガス流入端面目封止セルの各角部の目封止部のセルの延びる方向の長さが、35mmを超えると、目封止部によってフィルタ機能の発現しない部分の長さが長くなり過ぎて、ハニカム構造体の捕集効率が低下したり、ハニカム構造体の圧力損失が増大したりすることがある。
ガス流入端面目封止セルの一つのセル内の角部において、排ガス流入端面を起点として、各角部からの目封止部のセルの延びる方向の長さのうち、2つ以下の当該長さが同一であってもよい。例えば、図5において、第一のガス流入端面目封止セル2baの頂点O1及び頂点O4の目封止部5aの長さが同一である。また、図5において、第一のガス流入端面目封止セル2baの頂点O2及び頂点O3の目封止部5bの長さが同一である。このように構成することによって、これまでに説明した、捕集した粒子状物質の外部への流出抑制及びハニカム構造体の端面詰まり抑制の効果を良好に発現させつつ、目封止部の形状を比較的に簡素なものとすることができる。
本実施形態のハニカム構造体においては、ハニカム基材に形成されたセルが、貫通セルと、ハニカム基材の流入端面側においてのみ目封止部によって塞がれたガス流入端面目封止セルとのいずれか一方のセルであることが好ましい。このように構成することによって、本実施形態のハニカム構造体を、粒子状物質を捕集するフィルタとして有効に使用することができる。もちろん、本実施形態のハニカム構造体においては、ハニカム基材に形成されたセルの一部のセルが、ハニカム基材の流出端面側が目封止部によって塞がれたものであってもよい。
ここで、本発明のハニカム構造体の第二実施形態及び第三実施形態について説明する。図8は、本発明のハニカム構造体の第二実施形態における、流入端面近傍の拡大透視斜視図である。図8は、本発明のハニカム構造体の第三実施形態における、流入端面近傍の拡大透視斜視図である。第二実施形態のハニカム構造体は、以下に説明するように、ガス流入端面目封止セルの一つのセル内の角部における目封止部のセルの延びる方向の長さが相違すること以外は、第一実施形態のハニカム構造体と同様に構成されている。第二実施形態のハニカム構造体は、図8に示すように、第一のガス流入端面目封止セル2ba及び第二のガス流入端面目封止セル2bbの流入端面11側には、目封止部25a,25bが配設されている。第一のガス流入端面目封止セル2baにおいて、流入端面11からの目封止部25aのセル2の延びる方向の長さは、頂点O1では長さT3、頂点O2及び頂点O3では長さT4、頂点O4では長さT5となっている。第二のガス流入端面目封止セル2bbにおいて、流入端面11からの目封止部25bのセル2の延びる方向の長さは、頂点P1及び頂点P3では長さT4、頂点P2では長さT5、頂点P4では長さT3となっている。目封止部25aと目封止部25bは、貫通セル2a(特定貫通セル2aa)を挟んで非鏡像対称である。
次に、第三実施形態のハニカム構造体について説明する。第三実施形態のハニカム構造体も、ガス流入端面目封止セルの一つのセル内の角部における目封止部のセルの延びる方向の長さが相違すること以外は、第一実施形態のハニカム構造体と同様に構成されている。第三実施形態のハニカム構造体は、図9に示すように、第一のガス流入端面目封止セル2ba及び第二のガス流入端面目封止セル2bbの流入端面11側には、目封止部45a,45bが配設されている。第一のガス流入端面目封止セル2baにおいて、流入端面11からの目封止部45aのセル2の延びる方向の長さは、頂点O1及び頂点O2では長さT7、頂点O3及び頂点O4では長さT6となっている。一方、第二のガス流入端面目封止セル2bbにおいて、流入端面11からの目封止部45bのセル2の延びる方向の長さは、頂点P1及び頂点P2では長さT6、頂点P3及び頂点P4では長さT7となっている。目封止部45aと目封止部45bは、貫通セル2a(特定貫通セル2aa)を挟んで非鏡像対称である。このように構成された第二実施形態及び第三実施形態のハニカム構造体においても、特定貫通セル内の流路が閉塞し難くなる。なお、特定貫通セルを挟んで非鏡像対称となる目封止部の態様については、これまでに説明した第一〜第三実施形態のハニカム構造体に限定されることはなく、種々に変更可能である。
また、目封止部が、隣接する貫通セルを挟んで非鏡像対称である場合の他の実施形態として、対称線を45°とした位置関係にある2つのガス流入端面目封止セルにおいて、それぞれの目封止部が、隣接する特定貫通セルを挟んで非鏡像対称となっていてもよい。また、セルの延びる方向に垂直な断面におけるセル形状が、六角形の場合には、対称線を60°とした位置関係にある2つのガス流入端面目封止セルにおいて、それぞれの目封止部が、隣接する特定貫通セルを挟んで非鏡像対称となっていてもよい。例えば、セルの形状が六角形の場合には、特定貫通セルとガス流入端面目封止セルの配列として、図10A及び図10Bに示すような態様を挙げることができる。図10A及び図10Bは、特定貫通セルとガス流入端面目封止セルの配列の他の例を示す模式図である。図10A及び図10Bにおいては、貫通セル32aとしての特定貫通セル32aaが、6つのセル32と隔壁31を隔てて配置されている。そして、図10A及び図10Bに示す態様では、一の特定貫通セル32aaと隣接する6つのセル32が、当該特定貫通セル32aaの周囲を、貫通セル32aとガス流入端面目封止セル32bとが交互に配列するように配置されている。そして、図10Aにおいては、一の特定貫通セル32aaに対して、対称線を60°とした位置関係にある2つのガス流入端面目封止セル32ba,32bbにおいて、目封止部が非鏡像対称となっている。また、図10Bにおいては、一の特定貫通セル32aaに対して、対称線を60°とした位置関係にある3つのガス流入端面目封止セル32ba,32bb,32bcにおいて、目封止部が非鏡像対称となっている。
ハニカム基材のセルの形状は、セルの延びる方向に直交する断面において、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形等の多角形であることが好ましい。
隔壁の気孔率は、40〜80%であることが好ましく、45〜67%であることが更に好ましい。40%より小さいと、捕集性能が著しく低下することがあり、80%より大きいと、ハニカム基材の強度が低くなるため、キャニングが難しくなる(収納容器に収納する際に破損したりする)ことがある。更に、気孔率が45〜67%であると、ハニカム構造体の捕集効率(100×[捕集した粒子状物質の質量]/[流入した粒子状物質の質量])を、フィルタとして良好な値とすることができる。また、気孔率が45〜67%であると、ハニカム構造体の強度も向上し、キャニングも、し易くなる。隔壁の気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
隔壁の厚さは、150〜410μmであることが好ましく、200〜360μmであることが更に好ましい。150μmより薄いと、ハニカム基材の強度が低下することがある。410μmより厚いと、捕集性能が低下し、圧力損失が増大することがある。また、ディーゼルエンジンから排出される排ガスを処理する場合には、ディーゼルエンジンから排出される排ガス中のPM量が比較的多いため、通常、セル数を少なくする(セル密度を小さくする)傾向がある。そのため、隔壁1の厚さを200〜360μmとすることが、強度と捕集性能のバランスをよくするために好ましい。また、ガソリンエンジンから排出される排ガスを処理する場合には、ガソリンエンジンから排出される排ガス中のPM量が比較的少ないため、通常、セル数を多くする(セル密度を大きくする)傾向がある。そのため、隔壁の厚さを150〜310μmとすることが、強度と捕集性能のバランスをよくするために好ましい。隔壁の厚さは、ハニカム基材の軸方向の断面を顕微鏡観察する方法で測定した値である。
ハニカム基材のセル密度(ハニカム基材のセルの延びる方向に直交する断面における、単位面積当たりのセルの個数)は、15〜62セル/cm2であることが好ましい。15セル/cm2より小さいと、捕集性能が低下することがある。62セル/cm2より大きいと、ハニカム基材の流入端面付近にPMが堆積し、セルがPMによって閉塞していくため、圧力損失が大きくなることがある。また、ディーゼルエンジンから排出される排ガスを処理する場合には、15〜47セル/cm2であることが更に好ましい。15セル/cm2より小さいと、捕集性能が低くなることがある。47セル/cm2より大きいと、圧力損失が大きくなることがある。また、ガソリンエンジンから排出される排ガスを処理する場合には、31〜62セル/cm2であることが更に好ましい。ガソリンエンジンから排出される排ガスは、PM量が少ないため、セルが閉塞するリスクが低いため、セル密度を高くすることが可能であり、セル密度を高くすることにより捕集性能を高くすることができる。また、セルが閉塞し難いため、連続再生も行い易い。31セル/cm2より小さいと、捕集性能が低くなることがあり、62セル/cm2より大きいと、PM捕集時の圧力損失が大きくなることがある。
隔壁の平均細孔径は、80μm以下であることが好ましく、0.1〜80μmであることが更に好ましく、1〜80μmであることがより更に好ましく、5〜25μmであることが特に好ましい。80μmより大きいと、ハニカム基材が脆くなり欠落し易くなり、また、隔壁内に粒子状物質が入り込み、深層ろ過となることがある。そして、このような平均細孔径の大きな隔壁は、PM捕集に伴って、粒子状物質捕集性能が低下しやすいため好ましくない。また、隔壁の平均細孔径が、0.1μmより小さいと、粒子状物質の堆積が少ない場合でも圧力損失が増大するため好ましくない。更に、隔壁の平均細孔径が、5μmよりも小さいと、酸化触媒を担持した場合の壁透過抵抗(排ガスが隔壁を透過する際の抵抗)が大きくなることがある。また、隔壁の平均細孔径が、25μmよりも大きいと、隔壁内部に灰分(Ash)が堆積し、長期間の使用の後、捕集性能が悪化する可能性が高くなることがある。隔壁の平均細孔径は、水銀ポロシメータで測定した値である。
ハニカム基材4の外周壁3の厚さは、特に限定されないが、0.5〜6mmが好ましい。0.5mmより薄いと、外周近傍のセルが欠けやすく、強度が低下することがある。6mmより厚いと、圧力損失が増大することがある。
ハニカム基材の形状(別言すれば、ハニカム構造体の形状)は、特に限定されないが、円柱形状、底面が楕円形の柱状、底面が四角形、五角形、六角形等の多角形の柱形状等が好ましい。ハニカム構造体は、セルの延びる方向を中心軸方向とする柱形状であることが好ましい。また、ハニカム基材(別言すれば、ハニカム構造体)の大きさは、特に限定されないが、セルの延びる方向における長さが15〜200mmであることが好ましい。ハニカム基材の長さがこのような範囲であると、ハニカム構造体によって、圧力損失を増大させずに、優れた捕集性能で排ガスを処理することができる。15mmより短いと、捕集性能が悪化することがある。また、200mmより長いと、捕集性能向上はあまり期待できず、むしろ、圧力損失が増大することがある。捕集性能と圧力損失のバランスを考えると、ハニカム基材の長さは、50〜153mmが更に好ましい。特に複数個のハニカム構造体を、収納容器内に直列に配置する場合において、効果的である。また、例えば、ハニカム基材(別言すれば、ハニカム構造体)の外形が円柱形の場合、その底面(端面)の直径は、80〜400mmであることが好ましい。ハニカム基材の底面の直径は、上記範囲内において、エンジン排気量や出力に合わせて、適宜選定される。
ハニカム基材の隔壁及び外周壁は、セラミックを主成分とするものであることが好ましい。隔壁及び外周壁の材質としては、具体的には、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、及びアルミニウムチタネートからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。これらの中でも、熱伝導率に優れた炭化珪素、及び、熱膨張係数が小さく、耐熱衝撃性に優れたコージェライトが好ましい。通常のDPFでは、PM堆積量を増やし、再生間隔を長くすることが必要であるため、炭化珪素のように熱容量の大きい材質が好ましいが、本発明においては、連続再生しやすい熱容量の比較的小さいコージェライトが特に好ましい。隔壁と外周壁の材質は、同じであることが好ましいが、異なっていてもよい。また、「セラミックを主成分とする」というときは、セラミックを全体の90質量%以上含有することを意味する。
図1〜図6に示すように、本実施形態のハニカム構造体100においては、ハニカム基材4の流入端面11側における、一部のセル2の端部を塞ぐように目封止部5が配設されている。本実施形態のハニカム構造体100においては、目封止部5が配設される一部のセル(ガス流入端面目封止セル2b)と、目封止部が配設されない残余のセル(貫通セル2a)とは、隣接して配置されている。更に、ガス流入端面目封止セル2bと、貫通セル2aとが交互に並び、ハニカム基材4の流入端面11において、貫通セル2aの開口部と、ガス流入端面目封止セル2bの端部に配設された目封止部とにより市松模様が形成されることが好ましい。目封止部5の材質は、ハニカム基材4の隔壁1の材質と同じであることが好ましい。
本実施形態のハニカム構造体は、隔壁の少なくとも一部に酸化触媒が担持されたものであってもよい。更に詳細には、ハニカム構造体を構成するハニカム基材の隔壁に触媒が担持されていることが好ましい。触媒の、単位体積当りの担持量は、0.1〜150g/リットルであることが好ましく、10〜80g/リットルであることが更に好ましい。「g/リットル」は、ハニカム構造体1リットル当たりの触媒のグラム数(g)を示す。0.1g/リットルより少ないと、触媒効果が発揮され難くなることがある。150g/リットルより多いと、隔壁の細孔が閉塞することにより、圧力損失が大きくなり、捕集効率が著しく低下することがある。また、ウォッシュコート層を形成する酸化触媒の場合、触媒の単位体積当たりの担持量は、10〜150g/リットルであることが好ましい。触媒担持量が10g/リットルより少ないと、ウォッシュコート層を形成し難くなることがある。
酸化触媒としては貴金属を含有するものを挙げることができ、具体的には、Pt、Rh及びPdからなる群より選択される少なくとも一種を含有するものが好ましい。貴金属の合計量は、ハニカム構造体の単位体積当り、0.1〜5g/リットルであることが好ましい。
(2)ハニカム構造体の製造方法:
本発明のハニカム構造体の製造方法の一の実施形態について説明する。本実施形態のハニカム構造体の製造方法は、ハニカム成形体形成工程と、フィルム配設工程と、目封止部形成工程と、を含む。ハニカム成形体形成工程は、成形原料を押出成形して、一方の端面から他方の端面まで延びる、流体の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁を有するハニカム成形体を形成する工程である。フィルム配設工程は、得られたハニカム成形体に、又はハニカム成形体を焼成したハニカム焼成体に、セル開口部を覆うフィルムを一方の端面に配設する工程である。目封止部形成工程は、目封止すべきでないセルに隣接する、少なくとも2つの目封止すべきセルに目封止部を形成する工程である。そして、本実施形態のハニカム構造体の製造方法は、目封止部形成工程が、以下の穿孔部形成ステップと、目封止材料供給ステップと、を含む。穿孔部形成ステップにおいては、目封止すべきセルを夫々覆っているフィルムの一部分に穿孔部を形成し、その際、当該穿孔部の重心が、目封止すべきセルのセル開口部の重心からずれている。目封止材料供給ステップは、フィルムの配設された面から目封止材料を供給することにより、目封止材料の供給面からの目封止部のセルの延びる方向の長さが、一つのセル内で異なる目封止部を形成するものである。
本実施形態のハニカム構造体の製造方法によれば、図1〜図6に示すようなハニカム構造体100を簡便に製造することができる。以下、本実施形態のハニカム構造体の製造方法について、工程ごとに更に詳細に説明する。
(2−1)ハニカム成形体形成工程:
ハニカム成形体形成工程においては、成形原料を押出成形して、一方の端面から他方の端面まで延びる、流体の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁を有するハニカム成形体を形成する工程である。成形原料は、セラミック原料に分散媒及び添加剤を加えたものであることが好ましい。添加剤としては、有機バインダ、造孔材、界面活性剤等を挙げることができる。分散媒としては、水等を挙げることができる。ハニカム成形体形成工程においては、成形原料を混練して坏土とすることが好ましい。
セラミック原料としては、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト化原料、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、及びアルミニウムチタネートからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。これらの中でも、熱膨張係数が小さく、耐熱衝撃性に優れたコージェライト化原料が好ましい。添加剤としては、有機バインダ、造孔材、界面活性剤等を挙げることができる。分散媒としては、水等を挙げることができる。
成形原料を混練して坏土を形成する方法としては、特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
このような成形原料からなる坏土を押出成形して、一方の端面から他方の端面まで延びる、流体の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁を有するハニカム成形体を形成することが好ましい。押出成形は、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を用いて行うことができる。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。ハニカム成形体形成工程は、従来公知のハニカム構造体の製造方法における、ハニカム成形体を形成する工程に準じて行うことができる。
(2−2)フィルム配設工程:
フィルム配設工程は、得られたハニカム成形体に、セル開口部を覆うフィルムを一方の端面に配設する工程である。なお、フィルム配設工程を行う前に、得られたハニカム成形体を乾燥してもよい。また、フィルム配設工程は、ハニカム成形体又は当該ハニカム成形体を乾燥したハニカム乾燥体を焼成したハニカム焼成体に対して行うものであってもよい。例えば、フィルム配設工程は、図11A及び図11Bに示すように、ハニカム成形体600の一方の端面71に、セル2のセル開口部を覆うフィルム75を配設する工程である。このフィルム配設工程では、貫通セルとなるセル(即ち、目封止すべきでないセル62a)、及びガス流入端面目封止セルとなるセル(目封止すべきセル62b)の双方のセル開口部が、フィルム75により塞がれている。図11Aは、本発明のハニカム構造体の製造方法の一の実施形態におけるフィルム配設工程を説明する図であって、ハニカム成形体の一方の端面にフィルムを配設する前の状態を示す説明図である。図11Bは、本発明のハニカム構造体の製造方法の一の実施形態におけるフィルム配設工程を説明する図であって、ハニカム成形体の一方の端面にフィルムを配設した後の状態を示す説明図である。図11A及び図11Bにおいて、符号61は、ハニカム成形体600の「隔壁」を示し、符号62は、隔壁61によって区画形成された「セル」を示す。
セル開口部を覆うフィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルムを使用することができる。フィルムの片面には粘着剤を塗布し、ハニカム成形体の端面に貼着することができる。
(2−3)目封止部形成工程:
目封止部形成工程は、目封止すべきでないセルに隣接する、少なくとも2つの目封止すべきセルに目封止部を形成する工程である。そして、目封止部形成工程が、以下の穿孔部形成ステップと、目封止材料供給ステップと、を含む。穿孔部形成ステップにおいては、目封止すべきセルを夫々覆っているフィルムの一部分に穿孔部を形成し、その際、当該穿孔部の重心が、目封止すべきセルのセル開口部の重心からずれている。目封止材料供給ステップは、フィルムの配設された面から目封止材料を供給することにより、目封止材料の供給面からの目封止部のセルの延びる方向の長さが、一つのセル内で異なる目封止部を形成するものである。ここで、目封止すべきでないセルとは、製造されるハニカム構造体において、貫通セルとなるセルのことである。また、目封止すべきセルとは、製造されるハニカム構造体において、ガス流入端面目封止セルとなるセルのことである。
すなわち、目封止部形成工程では、まず、図11Cに示すように、目封止すべきセル62bを夫々覆っているフィルム75の一部分に穿孔部76を形成する。この際、穿孔部76を、当該穿孔部76の重心が、目封止すべきセル62bのセル開口部の重心からずれるように形成する。図11Cは、本発明のハニカム構造体の製造方法の一の実施形態における目封止部形成工程を説明する図であって、フィルムの一部分に穿孔部を形成するステップを示す説明図である。
次に、図11D及び図11Eに示すように、フィルム75の配設された面から目封止材料81を供給する。図11D及び図11Eにおいては、目封止材料81は、板状の目封止材料載置台82の上に載置されている。目封止材料81は、例えば、セラミック原料、水又はアルコール、及び有機バインダを含むスラリー状のものを挙げることができる。セラミック原料としては、ハニカム成形体の原料として用いられるセラミック原料と同じであることが好ましい。セラミック原料は、目封止材料全体の68〜90質量%であることが好ましい。目封止材料が、有底筒状の貯留容器内に貯留されていてもよい。
図11Eに示すように、ハニカム成形体600のフィルム75が配設された一方の端面71を、目封止材料81に押し付けることにより、目封止材料81が、フィルム75の穿孔部76を経由して、目封止すべきセル62bの内部に充填される。上述したように、穿孔部76は、当該穿孔部76の重心が、目封止すべきセル62bのセル開口部の重心からずれるよう穿孔されているため、目封止すべきセル62bの内部に充填される際に、重心から偏った箇所において、充填量が多くなる。このため、目封止材料81の供給面からの目封止部の長さが、一つのセル内で異なる目封止部を形成することができる。なお、上述した「目封止部の長さ」とは、「目封止部の、セルの延びる方向の長さ」のことである。ここで、図11D及び図11Eは、本発明のハニカム構造体の製造方法の一の実施形態における目封止部形成工程を説明する図であって、目封止部を形成するステップを示す説明図である。
穿孔部形成ステップにおいて、セル開口部が複数の角部を有する多角形であって、穿孔部の重心が、セル開口部の重心とセル開口部の角部とを通る直線上にずれていることが好ましい。また、穿孔部形成ステップにおいて、穿孔部の重心が、セル開口部の重心から隔壁へ引いた垂線上にずれていてもよい。これらのように構成することによって、目封止部を形成するステップにおいて、目封止材料の供給面からの目封止部のセルの延びる方向の長さが、一つのセル内で異なる目封止部を形成し易くなる。
また、穿孔部形成ステップにおいて、目封止すべきセルを夫々覆っているフィルムに穿孔する穿孔部の重心が、目封止すべきでないセルを覆っているフィルムを挟んで非線対称性となるように、穿孔部を形成することが好ましい。このように構成することによって、目封止すべきでないセルを挟んで配置される2つの目封止すべきセルの内部に、当該目封止すべきでないセルを挟んで非鏡像対称となるように、目封止材料を充填することができる。また、フィルムに開ける穿孔部の大きさや位置、セル開口部の重心からのずれの程度を調節することにより、一つのセル内に充填される目封止材料の局所的な長さを制御することができる。
目封止材料の粘度は、100〜400Pa・sであることが好ましい。尚、目封止材料の粘度は、温度30℃において回転式粘度計で30rpmの回転数で測定した値である。なお、目封止材料の粘度が、100Pa・s未満であると、目封止材料の供給面からの目封止部のセルの延びる方向の長さが、一つのセル内で平準化され易くなる。一方で、目封止材料の粘度が、400Pa・sを超えると、フィルムの穿孔部から、目封止材料が供給され難くなり、目封止部の形成が困難になることがある。
本実施形態のハニカム構造体の製造方法においては、目封止材料をセルの開口部に充填したハニカム成形体を焼成してもよい。焼成温度は、ハニカム成形体の材質によって適宜決定することができる。例えば、ハニカム成形体の材質がコージェライトの場合、焼成温度は、1380〜1450℃が好ましく、1400〜1440℃が更に好ましい。また、焼成時間は、3〜10時間程度とすることが好ましい。また、ハニカム成形体を焼成する前に乾燥させてもよい。以上のようにして、本実施形態のハニカム構造体を製造することができる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
(ハニカム構造体)
まず、コージェライト化原料100質量部に、造孔材を13質量部、分散媒を35質量部、有機バインダを6質量部、分散剤を0.5質量部、それぞれ添加し、混合、混練して坏土を調製した。コージェライト化原料としては、アルミナ、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク、及びシリカを使用した。分散媒としては水を使用し、造孔材としては平均粒子径1〜10μmのコークスを使用し、有機バインダとしてはヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用し、分散剤としてはエチレングリコールを使用した。
次に、所定の金型を用いて坏土を押出成形し、セル形状が四角形で、全体形状が円柱形のハニカム成形体を得た。
次に、ハニカム成形体をマイクロ波乾燥機で乾燥し、更に熱風乾燥機で完全に乾燥させた後、ハニカム成形体の両端面を切断し、所定の寸法に整えた。次に、ハニカム成形体の一方の端面全域を覆うようにフィルムを被せ、当該フィルムの、ガス流入端面目封止セルとなるセルのセル開口部に該当する箇所に穿孔部を開けた。この際、穿孔部を、当該穿孔部の重心が、ガス流入端面目封止セルとなる目封止すべきセルのセル開口部の重心からずれるように形成した。図12Dに示すように、穿孔部96の大きさは、半径0.27mmの円形とし、穿孔部96の重心97と、目封止すべきセルのセル開口部92の重心93とのずれ量は、図12Dの紙面の左へ0.28mm、下へ0.28mmとした。図12Dは、実施例における、穿孔部の穿孔位置を説明するための模式図である。
次に、ハニカム成形体のフィルムを施した側の端部を、コージェライト化原料を含有するスラリー状の目封止材料に浸漬することによって、排ガス流入端面における所定のセル(マスクが施されていないセル)に目封止材料を充填した。このようにして、実施例1のハニカム構造体を作製した。得られたハニカム構造体のハニカム基材は、中心軸に直交する断面の直径が143.8mmであり、中心軸方向の長さが101.6mmの円柱形であった。隔壁の厚さは、305μmであり、セル密度は、46.5セル/cm2であった。セルの形状は、四角形であった。表1に、ハニカム基材の直径(mm)及び長さ(mm)、隔壁の厚さ(mm)、セル密度(セル/cm2)、及びセルの形状を示す。
実施例1のハニカム構造体は、貫通セルの割合が50%となり、ガス流入端面目封止セルの割合が50%となるものであった。すなわち、実施例1のハニカム構造体は、全てのセルの個数に対して、排ガス流入端面又は排ガス流出端面のうちの少なくとも一方に目封止部が配設されたセルの個数の割合は、50%である。以下、全てのセルの個数に対して、排ガス流入端面又は排ガス流出端面のうちの少なくとも一方に目封止部が配設されたセルの個数の割合を、「目封止セルの割合(%)」という。表2に、目封止セルの割合(%)を示す。また、実施例1のハニカム構造体は、ガス流入端面目封止セルの全てが、排ガス流入端面からの目封止部のセルの延びる方向の長さが、1つのセル内で異なっているものであった。本実施例では、排ガス流入端面からの目封止部のセルの延びる方向の長さが、1つのセル内で異なっているガス流入端面目封止セルを、「特定目封止セル」とする。表2の「特定目封止セルの割合」の欄に、ガス流入端面目封止セルの全個数に対する、特定目封止セルの個数の割合を示す。実施例1のハニカム構造体においては、特定目封止セルの割合は、100%である。
また、表2の「目封止のパターン」の欄に、ハニカム構造体の流入端面及び流出端面における態様を示す。表2の「流入端面」の「割合(%)」の欄に、全てのセルに対する、流入端面にて目封止が施されているセルの割合を記す。表2の「流入端面」の「パターン」の欄に、この目封止が施されているセル(ここでは、ガス流入端面目封止セル)の目封止部のパターンを、A〜Cの3個のパターンに分類し、該当するパターンを記す。なお、「流入端面」の「パターン」の欄において、「なし」と記載されたものは、流入端面において、目封止部が配置されていないことを意味する。
「A」で示されるパターンは、図12Aに示すように、一つのガス流入端面目封止セル内で、排ガス流入端面からの目封止部のセルの延びる方向の長さが一定であり、このようなガス流入端面目封止セルが、排ガス流入端面に千鳥状に配置されているパターンである。パターンAの場合には、図12Eに示すように、穿孔部96の重心97と、目封止すべきセルのセル開口部92の重心93とが重なるようにして、穿孔部96を形成した。図12Eは、実施例における、穿孔部の穿孔位置を説明するための模式図である。
「B」で示されるパターンは、図12Bに示すように、一つのガス流入端面目封止セル内で、排ガス流入端面からの目封止部のセルの延びる方向の長さが異なっている。目封止部のセルの延びる方向の長さは、セルの4つの頂点において、隣り合う2つの頂点を一組として、2種類の長さを有する。「B」で示されるパターンでは、対向する2つのガス流入端面目封止セルにおいて、セル開口部の重心を中心に、目封止部が、180°反転した状態となっている。対向する2つのガス流入端面目封止セルは、隣接する貫通セルを挟んで非鏡像対称である。パターンBの場合には、図12Fに示すように、穿孔部96の大きさは、短軸の長さが0.28mmの楕円形とし、穿孔部96の重心97と、目封止すべきセルのセル開口部92の重心93とのずれ量は、図12Fの紙面の下へ0.28mmとした。図12Fは、実施例における、穿孔部の穿孔位置を説明するための模式図である。
「C」で示されるパターンは、図12Cに示すように、一つのガス流入端面目封止セル内で、排ガス流入端面からの目封止部のセルの延びる方向の長さが異なっている。目封止部のセルの延びる方向の長さは、セルの4つの頂点において、3種類の長さを有し、1組の対向する2つの頂点において、目封止部の長さが同じであるが、もう1組の対向する頂点においては、目封止部の長さは異なっている。「C」で示されるパターンでは、このようなガス流入端面目封止セルが、排ガス流入端面に千鳥状に配置されている。対向する2つのガス流入端面目封止セルは、隣接する貫通セルを挟んで非鏡像対称である。パターンCの場合には、図12Dに示すような位置に、穿孔部を形成した。
また、表2に、「1セルでの最大目封止深さ」、「1セルでの最小目封止深さ」、及び「1セル内の目封止深さの差」を示す。「1セルでの最大目封止深さ」は、図12B及び図12Cのパターンにおいて、目封止部のセルの延びる方向の長さが、セルの4つの頂点において最も長い頂点における長さのことである。「1セルでの最小目封止深さ」は、図12B及び図12Cのパターンにおいて、目封止部のセルの延びる方向の長さが、セルの4つの頂点において最も短い頂点における長さのことである。「1セル内の目封止深さの差」は、「1セルでの最大目封止深さ」から「1セルでの最小目封止深さ」を差し引いた値のことである。
得られたハニカム構造体について、以下の方法で、「圧力損失」、「捕集効率」、「スス詰まり」、及び「ブローオフ」の評価を行った。また、「圧力損失」、「捕集効率」、「スス詰まり」、及び「ブローオフ」の評価結果に基づいて、総合評価を行った。結果を、表3に示す。総合評価においては、「捕集効率」、「スス詰まり」、及び「ブローオフ」の評価結果において、評価Dが1つもない場合には「合格」とし、評価Dが1つ以上あった場合を「不合格」とした。
(圧力損失)
ディーゼルエンジン(3.0リットル、直噴コモンレール、直列6気筒)から排出される排気ガスをハニカム構造体に流入させて、ハニカム構造体の体積に対する煤の堆積量が4g/Lとなるように、ハニカム構造体の隔壁にて煤を捕集する。そして、煤の堆積量が4g/Lとなった状態で、200℃のエンジン排ガスを3.0Nm3/minの流量で流入させてハニカム構造体の流入端面側と流出端面側との圧力を測定し、その圧力差を算出することにより、圧力損失(kPa)を求める。
評価A:圧力損失が10.0kPa以下の場合を評価Aとする。評価Aの場合は、圧力損失の評価について「優」とする。
評価B:圧力損失が10.0kPaを超え、17.5kPa以下の場合を評価Bとする。評価Bの場合は、圧力損失の評価について「良」とする。
評価C:圧力損失が17.5kPaを超える場合を評価Cとする。評価Cの場合は、圧力損失の評価について「可」とする。
(捕集効率)
軽油を燃料とするバーナーを用いて煤を発生させる。ガス全体の流量が1.5Nm3/minとなるように、燃焼ガスに所定量の空気を混合し、得られた混合ガスをハニカム構造体に導入する。混合ガスの温度は、200℃とする。また、混合ガス中の粒子状物質の濃度が、4g/時間となるように設定する。ハニカム構造体の上流側及び下流側に設けたサンプリング用の配管から、真空ポンプにより排ガスを約2分間サンプリングする。そして、排ガスをサンプリングする際に、排ガスを、ろ紙をセットしたホルダーに通すことにより、PMをろ紙に捕集する。尚、予め、ろ紙の質量を測定しておく。ハニカム構造体の上流側からサンプリングした排ガス中のPMの質量(ろ紙に捕集されたPMの質量)と、ハニカム構造体の下流側からサンプリングした排ガス中のPMの質量(ろ紙に捕集されたPMの質量)とから、捕集効率(%)を算出する。具体的には、下記式(1)により、測定開始から120分の時の捕集効率(%)を求める。
捕集効率(%)={(PM質量A−PM質量B)/PM質量A}×100・・・(1)
(ただし、上記式(1)において、「PM質量A」は、ハニカム構造体の上流側からろ紙に捕集されたPMの質量(g)を示す。「PM質量B」は、ハニカム構造体の下流側からろ紙に捕集されたPMの質量(g)を示す。)
上述した方法にて測定された捕集効率(%)の値から、以下の基準で、捕集効率の評価を行った。
評価A:捕集効率が50%を超える場合を評価Aとする。評価Aの場合は、捕集効率の評価について「優」とする。
評価B:捕集効率が35%を超え、50%以下の場合を評価Bとする。評価Bの場合は、捕集効率の評価について「良」とする。
評価C:捕集効率が20%を超え、35%以下の場合を評価Cとする。評価Cの場合は、捕集効率の評価について「可」とする。
評価D:捕集効率が20%以下の場合を評価Dとする。評価Dの場合は、捕集効率の評価について不可とする。
(スス詰まり)
軽油を燃料とするバーナーを用いて煤を発生させる。ガス全体の流量が1.5Nm3/minとなるように、燃焼ガスに所定量の空気を混合し、得られた混合ガスをハニカム構造体に導入する。混合ガスの温度は、200℃とする。また、混合ガス中の粒子状物質の濃度が、4g/時間となるように設定する。このように設定されたガスをハニカム構造体に24時間流入させ続け、下記式(2)によりスス詰まり(%)を求める。
スス堆積前の貫通孔の開口面積の総和(S1)
スス堆積後の貫通孔の開口面積の総和(S2)
スス詰まり(%)=(S1−S2)/(S1)・・・(2)
上述した方法にて測定されたスス詰まり(%)の値から、以下の基準で、スス詰まりの評価を行った。
評価A:スス詰まりが25%未満の場合を評価Aとする。評価Aの場合は、スス詰まりの評価について「優」とする。
評価B:スス詰まりが25%以上、50%未満の場合を評価Bとする。評価Bの場合は、スス詰まりの評価について「良」とする。
評価C:スス詰まりが50%以上、75%未満の場合を評価Cとする。評価Cの場合は、スス詰まりの評価について「可」とする。
評価D:スス詰まりが75%以上の場合を評価Dとする。評価Dの場合は、スス詰まりの評価について不可とする。
(ブローオフ)
ディーゼルエンジン(3.0リットル、直噴コモンレール、直列6気筒)から排出される排気ガスをハニカム構造体に流入させて、ハニカム構造体に10.0g/Lの煤を堆積させる。次に、エンジン始動後アイドリング運転を行い、5秒後に回転数2000rpm、トルク178N・mとし2分間運転した。運転開始後、AVL社製のスートセンサーにて、ハニカム構造体の流出端面から排出されるガス中の煤の量を測定する。スートセンサーに計測された最大値を、ブローオフ量(mg/m3)とする。ブローオフの計測結果から、以下の基準で、ブローオフの評価を行った。
評価A:煤の漏れ量が200mg/m3以下の場合を評価Aとする。評価Aの場合は、ブローオフの評価について「優」とする。
評価B:煤の漏れ量が200mg/m3を超え、500mg/m3以下の場合を評価Bとする。評価Bの場合は、ブローオフの評価について「良」とする。
評価C:煤の漏れ量が500mg/m3を超え、800mg/m3以下の場合を評価Cとする。評価Cの場合は、ブローオフの評価について「可」とする。
評価D:煤の漏れ量が800mg/m3を超える場合を評価Dとする。評価Dの場合は、ブローオフの評価について不可とする。
(実施例2〜19、比較例1〜3)
ハニカム基材の構成、及び目封止を施すセルの配列等を、表1及び表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様の方法でハニカム構造体を作製した。得られたハニカム構造体について、実施例1と同様の方法で、「圧力損失」、「捕集効率」、「スス詰まり」、及び「ブローオフ」の評価を行った。また、「圧力損失」、「捕集効率」、「スス詰まり」、及び「ブローオフ」の評価結果に基づいて、総合評価を行った。結果を、表3に示す。
実施例18においては、目封止セルの割合が50%であり、更に、特定目封止セルの割合が50%である。すなわち、実施例18においては、全てのセルに対して、特定目封止セルの割合が25%であり、また、特定目封止セル以外の目封止セルの割合が25%である。そして、実施例18においては、25%の特定目封止セルが、パターンCとなるように配置され、25%の特定目封止セル以外の目封止セルが、パターンAとなるように配置されている。
実施例19においては、目封止セルの割合が50%であり、更に、特定目封止セルの割合が70%である。すなわち、実施例19においては、全てのセルに対して、特定目封止セルの割合が35%であり、また、特定目封止セル以外の目封止セルの割合が15%である。そして、実施例19においては、35%の特定目封止セルが、パターンCとなるように配置され、15%の特定目封止セル以外の目封止セルが、パターンAとなるように配置されている。
比較例1においては、目封止セルの割合が100%である。比較例1においては、特定目封止セルの割合が0%である。すなわち、比較例1においては、一つのセル内で、目封止部のセルの延びる方向の長さが一定である。比較例1においては、ハニカム構造体の流入端面と流出端面とで、セルの開口部が交互に目封止されている。比較例2においては、目封止セルの割合が0%である。比較例3においては、目封止セルの割合が50%である。比較例3においては、特定目封止セルの割合が0%である。
(結果)
表3に示すように、実施例1〜19のハニカム構造体は、「圧力損失」、「捕集効率」、「スス詰まり」、及び「ブローオフ」の評価において、全て良好な結果を得ることができた。比較例1のハニカム構造体は、貫通セルが存在せず、流入端面と流出端面とに50%ずつ目封止部が配設されたものであったため、圧力損失が大きく、「圧力損失」の評価が不合格であった。比較例2のハニカム構造体は、目封止セルが存在しないため、捕集効率が著しく低いものであった。比較例3のハニカム構造体は、特定目封止セルが存在しないため、流入端面側の目封止部が途切れる箇所にて、粒子状物質が集中して堆積し、スス詰まり、ブローオフが起こり易いものであった。このため、比較例2のハニカム構造体は、「スス詰まり」及び「ブローオフ」の評価が不合格であった。