JP6431289B2 - 粒子線治療システム及び装置 - Google Patents

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Description

本発明は、粒子線治療システム及び装置、粒子線治療システムの制御方法に関する。
本技術分野の背景技術として、WO2013/069379 A1(特許文献1)がある。この公報には、「本発明の粒子線治療システムは、荷電粒子ビームを加速する加速器系と、この加速器系から出射された荷電粒子ビームを照射位置まで輸送するビーム輸送系とからなる粒子線治療システムにおいて、前記ビーム輸送系に少なくとも1個のステアリング電磁石とこれに対応する少なくとも1個のビーム位置モニタを備え、前記ビーム位置モニタは前記ステアリング電磁石に周期的に変動するビーム位置を補正する励磁電流を供給することを特徴とするものである。」(段落0008)と記載されている。
WO2013/069379 A1
特許文献1には、粒子線治療システムにおいて照射ビーム位置の変動を抑制する方法が記載されている。特許文献1に記載の粒子線治療システムは、照射ビーム位置の周期的な変動をビーム輸送系中に設置されたビーム位置モニタにより測定し、ビーム輸送系中に設置されたステアリング電磁石の励磁電流を照射ビーム位置の変動を補正するよう周期的に変化させることにより照射ビーム位置の変動を抑制する。しかしながら、特許文献1に記載の粒子線治療システムは、ビーム輸送系中のステアリング電磁石の電源に出力電流を周期的に変化させる機能を持つ高価な電源(以下、パターン電源という)を使用する必要があるため、粒子線治療システムのコストが増大するという課題がある。
そこで本発明では、以上の点に鑑み、低コストかつ照射ビーム位置の変動を抑制できる粒子線治療システム及び装置、粒子線治療システムの制御方法を提供する。
本発明の第1の解決手段によると、
粒子線治療システムであって、
荷電粒子ビームを加速して取り出す加速器と、
前記荷電粒子ビームの形状を調整する複数の四極電磁石を有し、前記加速器から取り出された前記荷電粒子ビームを照射対象へ輸送するビーム輸送系と、
前記ビーム輸送系中の前記荷電粒子ビームに対し、前記荷電粒子ビームの進行方向に垂直で、前記加速器の偏向電磁石の動径方向又は前記加速器の周回ビーム軌道若しくは中心軌道が含まれる平面方向に沿った方向である第一の方向について定義された、前記加速器に由来する二種類の第一のディスパージョンが、前記照射対象の位置において0又は略0となるよう前記ビーム輸送系中の前記複数の四極電磁石の各々の励磁量を制御する制御装置と、
を備え
前記二種類の第一のディスパージョンは、加速周波数由来のディスパージョン(ηfx1)と偏向磁場由来のディスパージョン(ηBx1)であり、
前記二種類の第一のディスパージョンが前記照射対象の位置において略0となるとは、前記照射対象の位置における前記第一のディスパージョンと運動量ずれの積が、予め定められた照射ビーム位置の変動幅の制限以内であることを特徴とする粒子線治療システムが提供される。
本発明の第2の解決手段によると、
粒子線治療装置であって、
加速器から取り出した荷電粒子ビームの形状を調整する複数の四極電磁石を有し、前記加速器から取り出された前記荷電粒子ビームを照射対象へ輸送するビーム輸送系と、
前記ビーム輸送系中の前記荷電粒子ビームに対し、前記荷電粒子ビームの進行方向に垂直で、前記加速器の偏向電磁石の動径方向又は前記加速器の周回ビーム軌道若しくは中心軌道が含まれる平面方向に沿った方向である第一の方向について定義された、前記加速器に由来する二種類の第一のディスパージョンが、前記照射対象の位置において0又は略0となるよう前記ビーム輸送系中の前記複数の四極電磁石の各々の励磁量を制御する制御装置と、
を備え
前記二種類の第一のディスパージョンは、加速周波数由来のディスパージョン(ηfx1)と偏向磁場由来のディスパージョン(ηBx1)であり、
前記二種類の第一のディスパージョンが前記照射対象の位置において略0となるとは、前記照射対象の位置における前記第一のディスパージョンと運動量ずれの積が、予め定められた照射ビーム位置の変動幅の制限以内であることを特徴とする粒子線治療装置が提供される。
本発明によれば、低コストかつ照射ビーム位置の変動を抑制できる粒子線治療システムを提供することができる。
実施形態1の粒子線治療システムの構成図の例 実施形態1において四極電磁石励磁量を算出する手順を示すフローチャート図 実施形態1の粒子線治療システムの構成図の例 実施形態2の粒子線治療システムの構成図の例 実施形態2の粒子線治療システムの構成図の例 実施形態2において四極電磁石励磁量を算出する手順を示すフローチャート図 実施形態3の粒子線治療システムの構成図の例 実施形態3において四極電磁石励磁量を算出する手順を示すフローチャート図
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて説明する。
(実施形態1)
本実施形態では、低コストかつ照射ビーム位置の変動を抑制できる粒子線治療システムの例を説明する。
図1は、本実施形態による粒子線治療システムの例である。

本実施形態の粒子線治療システムは、入射器1よりシンクロトロン10へ入射された荷電粒子ビーム(以下、ビームという)をシンクロトロン10により所定のエネルギーまで加速して取り出し、患者40中の患部(照射対象)41へ照射するものである。
入射器1には、例えば、イオン源(図示せず)で生成したビームをシンクロトロン10への入射に適したエネルギー(以下、入射エネルギーという)まで加速する線形加速器(ライナック)が用いられる。入射器1から取り出された荷電粒子ビームは、低エネルギービーム輸送系2および入射用インフレクタ14を経由してシンクロトロン10へ入射される。
シンクロトロン10は、入射用インフレクタ14と、偏向電磁石11と、四極電磁石12と、高周波加速空胴13と、取り出し用デフレクタ15を備える。
偏向電磁石11はシンクロトロン10中を周回するビーム(以下、周回ビームという)を偏向して所定の周回軌道(以下、周回ビーム軌道という)を形成する。周回ビームの進行方向に沿った方向を進行方向(ビームが進む方向を正)、進行方向に垂直で偏向電磁石11の動径方向に沿った方向を水平方向(シンクロトロン外側方向を正)、進行方向および水平方向の両方に垂直な方向を垂直方向と呼ぶ(図面手前方向を正)。ここで、ビームを水平方向に偏向するとは、進行方向と水平方向を含む平面内でビームが進む方向を変化させることを表し、ビームを垂直方向に偏向するとは、進行方向と垂直方向を含む平面内でビームが進む方向を変化させることを表す。また、シンクロトロン10の設計上の周回ビーム軌道を中心軌道と呼ぶ。周回ビーム粒子は中心軌道の周りを水平および垂直方向に振動しており、この振動をベータトロン振動という。また、シンクロトロン一周あたりのベータトロン振動の振動数をチューンという。四極電磁石12は、周回ビームに収束あるいは発散の力を加えて周回ビームのチューンを周回ビームが安定となる値に保つ。高周波加速空胴13は周回ビームに進行方向の高周波電圧(以下、加速電圧という)を印加して周回ビームを進行方向の所定の位相に捕獲し、偏向電磁石11の励磁量と加速電圧の周波数(以下、加速周波数という)を徐々に上昇させることで周回ビームを所定のエネルギーまで加速する。周回ビームを加速する間は、四極電磁石12の励磁量を周回ビームの運動量に比例して増加させ、周回ビーム軌道および周回ビームのチューンを一定に保つ。取り出し用デフレクタ15は加速終了後の周回ビームを水平方向に偏向し、シンクロトロン15の外へ取り出す。
シンクロトロン15から取り出されたビーム(以下、取り出しビームという)は、高エネルギービーム輸送系20および照射野形成装置30を経由した後に患部41へ照射される。高エネルギービーム輸送系20および照射野形成装置30内の座標系はシンクロトロンの座標系に準じる。
高エネルギービーム輸送系20には、この例では、1台の偏向電磁石21、6台の四極電磁石22a〜22f、ステアリング電磁石24が設置されている。偏向電磁石21は取り出しビームを患者40のいる治療室(図示せず)へ向けて水平方向に偏向し、四極電磁石22a〜22fは取り出しビームに収束あるいは発散の力を加えて進行方向の患部41の位置(以下、照射地点という)におけるビームの水平および垂直方向の形状を調整する。四極電磁石22a〜22fは個別の四極電磁石電源23a〜23fにそれぞれ接続されており、四極電磁石電源23a〜23fは制御装置25に接続されている。四極電磁石電源23a〜23fが出力する四極電磁石22a〜22fの励磁電流は制御装置25により個別に制御される。四極電磁石22a〜22fが発生する四極磁場の強度(以下、四極電磁石22a〜22fの励磁量という)は四極電磁石22a〜22fの励磁電流と比例関係にあるため、四極電磁石22a〜22fの励磁電流を制御することは四極電磁石22a〜22fの励磁量を制御することと等価である。なお、四極電磁石22a〜22f及び四極電磁石電源23a〜23fの数はそれぞれ6台に限らず、それ以上又は以下の適宜の台数とすることができる。ステアリング電磁石24は高エネルギービーム輸送系20中のビームを水平、垂直方向に偏向し、高エネルギービーム輸送系20中および照射地点におけるビームの軌道を調整する。図1には2台のステアリング電磁石24が記載されているが、ステアリング電磁石の数は3台以上でも構わないし、ビームを水平方向に偏向するステアリング電磁石とビームを垂直方向に偏向するステアリング電磁石の数が同じでなくても構わない。また、高エネルギービーム輸送系20中にステアリング電磁石を設置しない構成としても良い。
照射野形成装置30は、高エネルギービーム輸送系20からのビームを整形し、患部41の形状に合わせた照射線量の分布(以下、照射野という)を形成する。照射野形成装置30が照射野を形成する際には、例えば、ビームを散乱体により拡散した後にコリメータなどを用いて患部41の形状に合わせて整形する二重散乱体法や、ビームを走査電磁石により患部41の形状に合わせて走査するスキャニング照射法が用いられる。
測定部50は、シンクロトロン10出口地点における水平ディスパージョンηfx0、ηBx0とその勾配ηfx0’、ηBx0’、及び、シンクロトロン10出口地点におけるTwissパラメータβx0、αx0、βy0、αy0を測定し、制御装置25に測定値を出力する。なお、測定部50は、図示の位置の他、適宜の測定位置に設けることができる。
シンクロトロン10は、周回ビームの取り出しが完了した後、偏向電磁石11の励磁量、四極電磁石12の励磁量、加速周波数をシンクロトロン10へのビーム入射時の値に変更し、次のビーム入射に備える。
本実施形態の粒子線治療システムは、あらかじめ治療計画装置(図示せず)が定めたビームの照射が完了するまで、前述のビームの加速、取り出し、照射を繰り返す。
本実施形態において、照射ビーム位置の変動を抑制する手法について説明する。照射ビーム位置とは、照射地点における水平および垂直方向のビーム位置を指すものとする。照射ビーム位置の変動とは、目標とする照射ビーム位置と実際の照射ビーム位置との差分の時間的な変化を表す。粒子線治療システムにおいて許容される照射ビーム位置の変動の範囲は、線量分布に求められる精度と照射野形成の方式から定まる。スキャニング照射法により照射野を形成する場合、照射ビーム位置の変動の範囲は水平、垂直両方向それぞれについて例えば±1mm以内であることが望ましい。なお、本実施形態の粒子線治療システムでは、高エネルギービーム輸送系中のステアリング電磁石が接続されている電源がパターン電源ではないため、ステアリング電磁石の励磁量の制御だけでは照射ビーム位置の変動を十分に抑制できない場合が想定される。
本実施形態の粒子線治療システムにおける照射ビーム位置の変動の要因として、シンクロトロン10からの取り出しビームの位置および運動量の変動がある。取り出しビームの位置のずれと取り出しビームの運動量のずれは比例関係にあり、その比例係数を分散関数あるいはディスパージョンと呼んで文字ηで表す。シンクロトロン10の出口地点における取り出しビームの水平方向のディスパージョンηx0は、同地点における取り出しビームの水平ビーム位置のずれΔx0と運動量の設計値で規格化した運動量のずれΔp/pを用いて数式1により表される。数式1において、添え字xは水平方向についての値であること、添え字0はシンクロトロン10の出口地点における値であることを表す。また、進行方向についてのディスパージョンの変化率、即ちビームが進行方向に単位長さ進む間のディスパージョンの変化量又は変化率をディスパージョンの勾配と呼び、文字η’で表す。シンクロトロン10出口地点における取り出しビームの垂直ディスパージョンηy0は、水平ディスパージョンと同様、シンクロトロン10出口地点における垂直ビーム位置のずれΔy0を用いて数式2により表される。添え字yは垂直方向についての値であることを表す。取り出し用デフレクタ15を含むシンクロトロン10の構成機器は、中心軌道が含まれる平面(以下、水平面という)を境として垂直方向に対称な構造であるため、シンクロトロン10出口地点における取り出しビームの垂直ディスパージョンηy0とその勾配ηy0’は共に0となる。
Figure 0006431289
照射地点におけるディスパージョンηx1、ηy1とその勾配ηx1’、ηy1’は、シンクロトロン10出口地点におけるディスパージョンηx0、ηy0とその勾配ηx0’ηy0’およびシンクロトロン10出口地点から照射地点までの輸送行列Ax、Ayを用いて数式3により求められる。添え字1は、照射地点における値であることを表す。水平方向の輸送行列Axは数式4の形をとる3行3列の行列であり、行列中の各要素の値は高エネルギービーム輸送系20中の機器配置や四極電磁石22a〜22fの励磁量から求められる。垂直方向の輸送行列Ayは、高エネルギービーム輸送系20中の偏向電磁石21がビームを垂直方向へ偏向しないことから、数式5の形をとる。
Figure 0006431289
以上より、照射地点におけるディスパージョンηx1、ηy1とその勾配ηx1’、ηy1’は、数式6により与えられる。
Figure 0006431289
本実施形態の粒子線治療システムでは、照射ビーム位置の変動を抑制するために、シンクロトロン10からの取り出しビームに対して以下に述べる二種類のディスパージョンを定義する。
第一のディスパージョンは、シンクロトロン10の加速周波数の設計値からのずれにより生じたシンクロトロン10からの取り出しビームの位置および運動量のずれに対して定義されるディスパージョン(以下、加速周波数由来のディスパージョンという)である。加速周波数由来のディスパージョンは記号ηfx、ηfyで表す。添え字fは、加速周波数にずれがある場合の値であることを表す。また、加速周波数由来のディスパージョンの勾配を記号ηfx’、ηfy’で表す。シンクロトロン10出口地点における加速周波数由来のディスパージョンηfx0、ηfy0とその勾配ηfx0’、ηfy0’は、例えばシンクロトロン10の例えば高周波加速空胴13の加速周波数を変更しながら高エネルギービーム輸送系20中のビーム位置を測定部50により測定することで求めることができる。高エネルギービーム輸送系20中のビーム位置の測定には、例えば、測定部50として水平、垂直方向におけるビーム粒子の分布を測定するビームプロファイルモニタ等を用いることができる。なお、測定部50の位置は図示の他に、適宜の位置に設けることができる。また、取り出しビーム軌道の計算結果から加速周波数由来のディスパージョンηfx0、ηfy0とその勾配ηfx0’、ηfy0’を計算により求めても良い。加速周波数由来のディスパージョンは輸送行列による変換に従うため、照射地点における加速周波数由来のディスパージョンηfx1、ηfy1とその勾配ηfx1’、ηfy1’は数式7により表される。
Figure 0006431289
第二のディスパージョンは、偏向電磁石11の励磁量の設計値からのずれにより生じたシンクロトロン10からの取り出しビームの位置および運動量のずれに対して定義されるディスパージョン(以下、偏向磁場由来のディスパージョンという)である。偏向磁場由来のディスパージョンは、記号ηBx、ηByで表す。添え字Bは、偏向電磁石11の励磁量にずれがある場合の値であることを表す。また、偏向磁場由来のディスパージョンの勾配を記号ηBx’、ηBy’で表す。シンクロトロン10出口地点における偏向磁場由来の水平ディスパージョンηBx0とその勾配ηBx0’は、一般にシンクロトロン10出口地点における加速周波数由来のディスパージョンηfx0とその勾配ηfx0’とは異なる値となる。シンクロトロン10出口地点における偏向磁場由来の垂直ディスパージョンηBy0とその勾配ηBy0’は、加速周波数由来の場合と同様0である。シンクロトロン10出口地点における偏向磁場由来のディスパージョンηBy0とその勾配ηBy0’は、例えばシンクロトロン10の偏向電磁石11の励磁量を変更しながら高エネルギービーム輸送系20中のビーム位置を測定部50により測定することで求めることができる。また、取り出しビーム軌道の計算結果からシンクロトロン10出口地点における偏向磁場由来のディスパージョンηBy0とその勾配ηBy0’を計算により求めても良い。加速周波数由来のディスパージョンおよびその勾配と同様、照射地点における偏向磁場由来のディスパージョンηBx1、ηBy1とその勾配ηBx1’、ηBy1’は数式8により表される。
Figure 0006431289
本実施形態の粒子線治療システムでは、制御装置25が高エネルギービーム輸送系20に設置された四極電磁石22a〜22fの励磁量を照射地点における加速周波数由来の水平ディスパージョンηfx1と偏向磁場由来の水平ディスパージョンηBx1が両方0となるように制御する。具体的には、シンクロトロン10の出口地点から照射地点までの水平方向の輸送行列の各成分が数式9の関係を満たすよう四極電磁石22a〜22fの励磁量を制御する。数式9に示されるディスパージョンに関する制約条件は二種類であるため、水平方向の輸送行列Axが数式9を満たすには、高エネルギービーム輸送系20中の四極電磁石22a〜22fのうち少なくとも2台の励磁量を独立に制御する必要がある。
Figure 0006431289
さらに、粒子線治療システムにおいては、照射地点におけるビームの水平サイズsx1とその変化率sx1’、垂直サイズsy1とその変化率sy1’を適切な値に制御する必要がある。ビームサイズとは、進行方向に垂直な平面内においてビーム粒子が存在する領域の幅を表す。ビームサイズの変化率とは、進行方向の位置の変化に対するビームサイズの変化の度合いを表す。ビームサイズに関する制約条件は水平方向で二種類(sx1、sx1’)、垂直方向で二種類(sy1、sy1’)の合計四種類であるため、照射地点におけるビームサイズsx1、sy1とその変化率sx1’、sy1’を適切な値に制御するためには、高エネルギービーム輸送系20中の四極電磁石22a〜22fのうち少なくとも4台の励磁量を独立に制御する必要がある。
制御装置25は、照射地点におけるビームサイズsx1、sy1とその変化率sx1’、sy1’が適切な値となり、なおかつ照射地点における加速周波数由来の水平ディスパージョンηfx1と偏向磁場由来の水平ディスパージョンηBx1が両方0となるよう高エネルギービーム輸送系20中の四極電磁石22a〜22fの励磁量を制御する。制御装置25は6台の四極電磁石22a〜22fの励磁量を独立に制御するため、水平方向の輸送行列Axがディスパージョンに関する制約条件とビームサイズに関する制約条件を同時に満たすように四極電磁石22a〜22fの励磁量を設定することができる。
水平方向の輸送行列Axがディスパージョンに関する制約条件とビームサイズに関する制約条件を同時に満たすような四極電磁石22a〜22fの励磁量は、高エネルギービーム輸送系の機器配置から作られるモデル、シンクロトロン10からの取り出しビームのTwissパラメータ、加速周波数由来の水平ディスパージョンηfx0とその勾配ηfx0’、偏向磁場由来の水平ディスパージョンηBx0とその勾配ηBx0’から制御装置25が計算により求める。
Twissパラメータとは、位相空間上のビーム粒子の分布を表現するために用いられるパラメータであり、水平方向のTwissパラメータβx、αxは、水平方向のビームサイズsx、水平方向のエミッタンスεxを用いて数式10により表される。数式10中のsは進行方向の位置を表す。同様に、垂直方向のTwissパラメータβy、αyは、垂直方向のビームサイズsy、垂直方向のエミッタンスεyを用いて数式11により表される。照射地点におけるTwissパラメータβx1、αx1、βy1、αy1はシンクロトロン10出口地点におけるTwissパラメータβx0、αx0、βy0、αy0とシンクロトロン10出口から照射地点までの輸送行列Ax、Ayの各成分を用いて数式12により表される。照射地点におけるビームサイズsx1、sy1とその変化率sx1’、sy1’を適切な値に制御するには、照射地点におけるTwissパラメータβx1、αx1、βy1、αy1が所定の値となるよう高エネルギービーム輸送系20中の四極電磁石22a〜22fの励磁量を制御すればよい。
Figure 0006431289
照射地点における水平ディスパージョンηfx1、ηBx1が両方0となり、なおかつ照射地点におけるTwissパラメータβx1、αx1、βy1、αy1が所定の値となるような四極電磁石22a〜22fの励磁電流を制御装置25が求める手法の一例を、図2を用いて説明する。
図2は、制御装置25が四極電磁石22a〜22fの励磁量を反復法により求める手順を示すフローチャート図である。制御装置25はまず始めに、測定部50により、シンクロトロン10出口地点における水平ディスパージョンηfx0、ηBx0とその勾配ηfx0’、ηBx0’を読み込み(S101)、次にシンクロトロン10出口地点におけるTwissパラメータβx0、αx0、βy0、αy0を読み込む(S103)。制御装置25は四極電磁石22a〜22fの計算用の励磁量K1〜K6に初期値(例えば四極電磁石22a〜22fの励磁量の設計値)を設定し(S105)、四極電磁石22a〜22fの計算用の励磁量K1〜K6を用いて、数式4及び数式5に示したように、シンクロトロン10出口地点から照射地点までの輸送行列Ax、Ayを計算する(S107)。制御装置25は、数式7及び数式8に従いシンクロトロン10出口地点における水平ディスパージョンηfx0、ηBx0およびその勾配ηfx0’、ηBx0’と輸送行列Ax、Ayから照射地点における水平ディスパージョンηfx1、ηBx1を計算し、また、数式12に従いシンクロトロン10出口地点におけるTwissパラメータβx0、αx0、βy0、αy0と輸送行列Ax、Ayから照射地点におけるTwissパラメータβx1、αx1、βy1、αy1を計算する(S107)。照射地点におけるTwissパラメータの目標値がβx1T、αx1T、βy1T、αy1Tである場合に、反復計算における目的関数Fを例えば数式13により定義する。
Figure 0006431289
数式13に示す目的関数Fは、照射地点における水平ディスパージョンηfx1、ηBx1が両方0となり、照射地点におけるTwissパラメータβx1、αx1、βy1、αy1が目標値と一致する場合に0となる関数である。制御装置25は照射地点における水平ディスパージョンηfx1、ηBx1およびTwissパラメータβx1、αx1、βy1、αy1の計算結果から目的関数Fを計算し(S109)、目的関数Fがあらかじめ設定した閾値以下であるか否かを判定する(S111)。目的関数が閾値よりも大きい、即ち判定結果がNoである場合、制御装置は計算用の四極電磁石励磁量を変更し(S113)、再度輸送行列Ax、Ayの計算から目的関数Fの判定までの処理(S107〜S111)を実施する。ステップS111で目的関数Fが閾値以下である、即ち判定結果がYesである場合、制御装置25は現在の計算用四極電磁石励磁量を四極電磁石22a〜22f励磁量の計算結果とし、四極電磁石22a〜22fの励磁量の算出を完了する(S115)。制御装置25は算出された四極電磁石22a〜22fの励磁量に一致するよう四極電磁石22a〜22fの励磁量を制御する。なお、制御装置25は、算出結果の値等を適宜のメモリに記憶しておき、メモリがその値を読み出し制御に用いてもよい。
本実施形態では制御装置25が制約条件を満たす四極電磁石22a〜22fの励磁量を計算するとしたが、四極電磁石22a〜22fの励磁量は粒子線治療システムの調整者が別途計算し、四極電磁石22a〜22f励磁量の計算結果を制御装置25に入力しても良い。この場合、制御装置25は入力された四極電磁石22a〜22fの励磁量に一致するよう四極電磁石22a〜22fの励磁量を制御する。本実施形態の粒子線治療システムでは、制御装置25が四極電磁石22a〜22fの励磁量を、水平方向の輸送行列が数式9を満たすよう制御するため、照射地点における加速周波数由来の水平ディスパージョンηfx1と偏向磁場由来の水平ディスパージョンηBx1が共に0となる。照射地点における垂直ディスパージョンηfy1、ηBy1は、数式7、数式8に示すように、四極電磁石22a〜22fの励磁量に依らず0である。
本実施形態の粒子線治療システムにおいてビーム照射中にシンクロトロン10の加速周波数が変動した場合、取り出しビームの水平位置と運動量が変動するが、照射地点における加速周波数由来の水平、垂直ディスパージョンηfx1、ηfy1が0であるため、照射ビーム位置は加速周波数のずれに依らず一定に保たれる。同様に、ビーム照射中にシンクロトロン10の偏向電磁石11の励磁量が変動した場合においても、照射ビーム位置における偏向磁場由来の水平、垂直ディスパージョンηBx1、ηBy1が0であるため、照射ビーム位置が偏向電磁石11の励磁量のずれに依らず一定に保たれる。
このように、本実施形態の粒子線治療システムでは、シンクロトロン10からの取り出しビームに対して定義された加速周波数由来の水平ディスパージョンと偏向磁場由来の水平ディスパージョンに対し、照射地点において二種類のディスパージョンが両方0となるよう制御装置25が高エネルギービーム輸送系20中の四極電磁石22a〜22fの励磁量を制御するため、高エネルギービーム輸送系20中のステアリング電磁石24の電源に高価なパターン電源を使用せずに、照射ビーム位置の変動を抑制することができる。
本実施形態の粒子線治療システムは、高エネルギービーム輸送系20中に6台の四極電磁石22a〜22fを設置する構成としたが、高エネルギービーム輸送系20中に設置される四極電磁石は6台より多くても構わない。高エネルギービーム輸送系20中に6台よりも多くの四極電磁石を設置する場合、上述のディスパージョンによる制約と上述のビームサイズによる制約を満たすことに加えて、高エネルギービーム輸送系20中を通過するビームの水平、垂直サイズを、高エネルギービーム輸送系20を構成する真空ダクト(図示せず)の内径以下に制御し、高エネルギービーム輸送系20におけるビーム損失を抑制することが可能となる。また、四極電磁石22a〜22fの一部あるいは全ては偏向電磁石21よりも上流側(シンクロトロン10に近い側)に設置しても良い。
本実施形態の粒子線治療システムでは高エネルギービーム輸送系20が1台の偏向電磁石21を備えるとしたが、高エネルギービーム輸送系20が備える偏向電磁石は2台以上でも構わない。また、高エネルギービーム輸送系20が偏向電磁石を1台も備えない構成としても良い。本実施形態では、高エネルギービーム輸送系20中の偏向電磁石の員数によらず照射ビーム位置の変動を抑えることができる。
本実施形態の粒子線治療システムでは、照射地点における加速周波数由来の水平ディスパージョンηfx1および偏向磁場由来の水平ディスパージョンηBx1を0に補正するとしたが、照射地点における補正後のディスパージョンは正確に0でなくても構わない。具体的には、照射地点における加速周波数由来の水平ディスパージョンηfx1の絶対値および偏向磁場由来の水平ディスパージョンηBx1の絶対値が十分に小さければ、照射ビーム位置の変動を抑制する本実施形態の効果を得ることができる。
照射地点における加速周波数由来の水平ディスパージョンηfx1の絶対値が十分に小さい(略0)とは、照射地点における加速周波数由来の水平ディスパージョンηfx1と加速周波数由来の運動量ずれの積が、粒子線治療システムの求める照射ビーム位置の変動幅の制限以内であることを指す。例えば、加速周波数由来の運動量ずれが全幅で±0.1%、照射ビーム位置の変動幅の制限が±1mm以内である場合、加速周波数由来の水平ディスパージョンηfx1の絶対値が十分に小さいとは、ηfx1が−1m以上1m以下であることを表す。同様に、照射地点における偏向磁場由来の水平ディスパージョンηBx1の絶対値が十分に小さいとは、照射地点における偏向磁場由来の水平ディスパージョンηBx1と偏向磁場由来の運動量ずれの積が、粒子線治療システムの求める照射ビーム位置の変動幅の制限以内であることを指す。
本実施形態の粒子線治療システムでは照射地点における加速周波数由来の水平ディスパージョンの勾配ηfx1’と偏向磁場由来の水平ディスパージョンの勾配ηBx1’は0とならないが、ディスパージョンの勾配は照射ビーム位置に影響しないため、水平ディスパージョンの勾配ηfx1’、ηBx1’が0でないことは照射ビーム位置の変動を抑制する上で問題とはならない。
本実施形態の粒子線治療システムでは、シンクロトロン10によりビームを照射に適したエネルギーまで加速するとしたが、図3に示すように、ビームをサイクロトロンにより照射に適したエネルギーまで加速する構成としても良い。図3に示す粒子線治療システムは図1に示す粒子線治療システムと同様の構成を有するが、入射器1およびシンクロトロン10の代わりにサイクロトロン70によりビームを照射に適したエネルギーまで加速する点が異なる。サイクロトロン70を用いた粒子線治療システムでは、例えばサイクロトロン70を構成する磁極間に発生する磁場のずれにより生じるビーム位置と運動量のずれに対して第一のディスパージョンを定義し、サイクロトロン70を構成するディー電極へ印加する高周波電圧の周波数のずれにより生じるビーム位置と運動量のずれに対して第二のディスパージョンを定義することにより、シンクロトロン10を用いる場合と同様にして照射ビーム位置の変動を抑制できる。
(実施形態2)
本実施形態では、低コストかつ、高エネルギービーム輸送系においてビームを垂直方向に偏向する場合であっても照射ビーム位置の変動を抑制できる粒子線治療システムの例を説明する。
図4は、本実施形態による粒子線治療システムの例である。
本実施形態の粒子線治療システムは、実施形態1の粒子線治療システムと同様の構成を有するが、高エネルギービーム輸送系20の構成および患部41に対してビームを照射する方向が異なっている。図4は、本実施形態による粒子線治療システムを、シンクロトロン10の垂直正方向から見た模式図となっている。また、図5は本実施形態による粒子線治療システムを、シンクロトロン10の取り出し用デフレクタ15が設置されている直線部における水平正方向から見た模式図である。
高エネルギービーム輸送系20には、この例では、偏向電磁石21、3台の偏向電磁石51a〜51c、7台の四極電磁石52a〜52g、ステアリング電磁石24が設置されている。偏向電磁石21は実施形態1と同様、シンクロトロン10からの取り出しビームを治療室へ向けて水平方向に偏向する。偏向電磁石51a〜51cはビームを垂直方向に複数回偏向し、患部41に対して垂直方向からのビームの照射を可能とする。四極電磁石52a〜52gは実施形態1と同様、照射地点におけるビームの形状を調整する。四極電磁石52a〜52gは個別の四極電磁石電源53a〜53gにそれぞれ接続されており、四極電磁石電源53a〜53gは制御装置25に接続されている。四極電磁石電源53a〜53gが出力する四極電磁石52a〜52gの励磁電流は制御装置25により個別に制御される。ステアリング電磁石24は実施形態1と同様、高エネルギービーム輸送系20中および照射地点におけるビームの軌道を調整する。
本実施形態において、照射ビーム位置の変動を抑制する手法について説明する。本実施形態では高エネルギービーム輸送系20中でビームを垂直方向に偏向するため、照射地点における垂直ディスパージョンは常に0になるとは限らない。シンクロトロン10出口地点における加速周波数由来の水平ディスパージョンをηfx0、その勾配をηfx0’、偏向磁場由来の水平ディスパージョンをηBx0、その勾配をηBx0’とする。シンクロトロン10出口地点における垂直ディスパージョンηfy0、ηBy0とその勾配ηfy0’、ηBy0’は、実施形態1と同様0である。本実施形態の高エネルギービーム輸送系20はビームを垂直方向にも偏向するため、シンクロトロン10出口地点から照射地点までの輸送行列Ax、Ayは数式14の形で表される。ビームが垂直方向に偏向されるため、垂直方向の輸送行列Ayの1行3列成分a13と2行3列成分a23は実施形態1のように0にはならない。照射地点におけるディスパージョンηfx1、ηfy1、ηBx1、ηBy1は、実施形態1と同様シンクロトロン10出口地点におけるディスパージョンηfx0、ηfy0、ηBx0、ηBy0およびその勾配ηfx0’、ηfy0’、ηBx0’、ηBy0’と輸送行列Ax、Ayとの積で与えられるため、照射地点におけるディスパージョンηfx1、ηfy1、ηBx1、ηBy1は数式15により表される。
Figure 0006431289
本実施形態の粒子線治療システムでは、制御装置25が高エネルギービーム輸送系20に設置された四極電磁石52a〜52gの励磁量を照射地点における加速周波数由来の水平、垂直ディスパージョンηfx1、ηfy1と偏向磁場由来の水平、垂直ディスパージョンηBx1、ηBy1が全て0となるように制御する。具体的には、シンクロトロン10の出口地点から照射地点までの水平、垂直方向の輸送行列Ax、Ayの各成分が数式16の関係を満たすよう四極電磁石52a〜52hの励磁量を制御する。数式16に示されるディスパージョンに関する制約条件は3種類であるため、水平、垂直方向の輸送行列Ax、Ayが数式16を満たすには、高エネルギービーム輸送系20中の四極電磁石52a〜52gのうち少なくとも3台の励磁量を独立に制御する必要がある。
Figure 0006431289
実施形態1と同様、本実施形態において照射地点におけるビームサイズsx1、sy1とその変化率sx1’、sy1’を適切な値に制御するためには、四極電磁石52a〜52gのうち少なくとも4台の励磁量を独立に制御する必要がある。照射地点におけるビームサイズsx1、sy1とその変化率sx1’、sy1’を適切な値に制御するには、実施形態1と同様、照射地点におけるTwissパラメータβx1、αx1、βy1、αy1を所定の値に制御すれば良い。制御装置25は、照射地点におけるTwissパラメータβx1、αx1、βy1、αy1が所定の値となり、なおかつ照射地点における加速周波数由来の水平、垂直ディスパージョンηfx1、ηfy1と偏向磁場由来の水平、垂直ディスパージョンηBx1、ηBy1が全て0となるよう高エネルギービーム輸送系20中の四極電磁石52a〜52gの励磁量を制御する。制御装置25は7台の四極電磁石52a〜52gの励磁量を独立に制御するため、輸送行列Ax、Ayがディスパージョンに関する制約条件とビームサイズに関する制約条件を同時に満たすよう、四極電磁石52a〜52gの励磁量を制御することができる。
輸送行列Ax、Ayがディスパージョンに関する制約条件とビームサイズに関する制約条件を同時に満たすような四極電磁石52a〜52gの励磁量は、実施形態1と同様、シンクロトロン10からの取り出しビームのTwissパラメータβx0、αx0、βy0、αy0、加速周波数由来の水平ディスパージョンηfx0とその勾配ηfx0’、偏向磁場由来の水平ディスパージョンηBx0とその勾配ηBx0’から制御装置25が計算により求める。また、四極電磁石52a〜52gの励磁量を計算するために必要となるシンクロトロン10からの取り出しビームのTwissパラメータβx0、αx0、βy0、αy0、加速周波数由来の水平ディスパージョンηfx0とその勾配ηfx0’、偏向磁場由来の水平ディスパージョンηBx0とその勾配ηBx0’は、実施形態1と同様にして測定あるいは計算することができる。
図6に、照射地点における水平、垂直ディスパージョンηfx1、ηfy1、ηBx1、ηBy1が全て0となり、なおかつ照射地点におけるTwissパラメータβx1、αx1、βy1、αy1が所定の値となるような四極電磁石52a〜52gの励磁電流を制御装置25が反復法により求める手順についてのフローチャート図を示す。制御装置25が四極電磁石52a〜52gの励磁量を計算する手順は実施形態1と同様であるが、ディスパージョン読み込み(S201)及びTwissパラメータ読み込み(S203)(実施形態1のS101及びS103に相当)の後、本実施形態では高エネルギービーム輸送系20中に設置された7台の四極電磁石を独立に制御するため、四極電磁石52a〜52gの計算用の励磁量はK1からK7までの7台分となる(S205、S213、S215参照)。また、本実施形態では照射地点における垂直ディスパージョンηfx1、ηBy1が四極電磁石52a〜52gの励磁量により変化するため、繰り返し計算の目的関数Fは例えば数式17の形とする必要がある(S207、S209、S211参照)。照射地点における偏向磁場由来の垂直ディスパージョンηBy1は、数式15に示すように照射地点における加速周波数由来のディスパージョンηfy1と一致するため、数式17では照射地点における垂直ディスパージョンηfy1、ηBy1のうち片方のηfy1のみを目的関数Fの計算に使用している(なお、ηfy1の代わりにηBy1を使用してもよい。)。
Figure 0006431289
本実施形態の粒子線治療システムにおいてビーム照射中にシンクロトロン10の加速周波数が変動した場合、取り出しビームの水平位置と運動量が変動するが、照射地点における加速周波数由来の水平、垂直ディスパージョンηfx1、ηfy1が0であるため、照射ビーム位置は加速周波数のずれに依らず一定に保たれる。同様に、ビーム照射中にシンクロトロン10の偏向電磁石11の励磁量が変動した場合においても、照射ビーム位置における偏向磁場由来の水平、垂直ディスパージョンηBx1、ηBy1が0であるため、照射ビーム位置が偏向電磁石11の励磁量のずれに依らず一定に保たれる。
このように、本実施形態の粒子線治療システムでは、シンクロトロン10からの取り出しビームに対して定義された加速周波数由来の水平、垂直ディスパージョンと偏向磁場由来の水平、垂直ディスパージョンに対し、照射地点においてこれらディスパージョンの値が全て0となるよう制御装置25が高エネルギービーム輸送系20中の四極電磁石52a〜52gの励磁量を制御するため、高エネルギービーム輸送系20中のステアリング電磁石24の電源に高価なパターン電源を使用せずに、照射ビーム位置の変動を抑制することができる。
本実施形態の粒子線治療システムは、高エネルギービーム輸送系20中に7台の四極電磁石52a〜52gを設置する構成としたが、高エネルギービーム輸送系20中に設置される四極電磁石は7台より多くても構わない。高エネルギービーム輸送系20中に7台よりも多くの四極電磁石を設置する場合、実施形態1と同様に、高エネルギービーム輸送系20におけるビーム損失を抑制することが可能である。また、四極電磁石52a〜52gは高エネルギービーム輸送系20中の何れの直線部に設置しても良い。
本実施形態の粒子線治療システムでは、実施形態1と同様、高エネルギービーム輸送系20が備えるビームを水平方向に偏向する偏向電磁石は2台以上でも構わないし、高エネルギービーム輸送系20がビームを水平方向に偏向する偏向電磁石を1台も備えない構成としても良い。同様に、本実施形態において高エネルギービーム輸送系が備えるビームを垂直方向に偏向する偏向電磁石は、1台以上であれば何台であってもかまわない。
本実施形態の粒子線治療システムでは、実施形態1と同様、照射地点における加速周波数由来の水平、垂直ディスパージョンηfx1、ηfy1および偏向磁場由来の水平垂直ディスパージョンηBx1、ηBy1が正確に0に補正されていなくても構わない。
(実施形態3)
本実施形態では、低コストかつ、高エネルギービーム輸送系が回転ガントリーを備える場合であっても照射ビーム位置の変動を抑制できる粒子線治療システムの例を説明する。
図7は、本実施形態による粒子線治療システムの例である。

本実施形態の粒子線治療システムは、実施形態1の粒子線治療システムと同様の構成を有するが、高エネルギービーム輸送系20が回転ガントリー60を有する点において実施形態1の粒子線治療システムと異なっている。
高エネルギービーム輸送系20は、偏向電磁石21、6台の四極電磁石62a〜62f、ステアリング電磁石24、回転軸64を軸として患者40の周囲を回転可能な回転ガントリー60からなる。回転ガントリー60は、複数の偏向電磁石および複数の四極電磁石を備える。高エネルギービーム輸送系20において、回転軸64を軸として回転可能な部分の開始地点を回転ガントリー60の入口(以下、回転ガントリー入口65という)とする。偏向電磁石21、四極電磁石62a〜62f、ステアリング電磁石24は、高エネルギービーム輸送系20のシンクロトロン10出口から回転ガントリー入口65までの間に設置されている。偏向電磁石21は実施形態1と同様、シンクロトロン10からの取り出しビームを治療室へ向けて水平方向に偏向する。四極電磁石62a〜62hは、ビームに収束あるいは発散の力を加えて回転ガントリー入口65におけるビームの形状を調整する。四極電磁石62a〜62fは個別の四極電磁石電源63a〜63fにそれぞれ接続されており、四極電磁石電源63a〜63fは制御装置25に接続されている。四極電磁石電源63a〜63fが出力する四極電磁石62a〜62fの励磁電流は制御装置25により個別に制御される。ステアリング電磁石24は実施形態1と同様、高エネルギービーム輸送系20中および照射地点におけるビームの軌道を調整する。回転ガントリー60は、回転軸64を軸として回転することにより照射ノズルと治療室鉛直方向のなす角(以下、ガントリー回転角と呼ぶ)を変更し、患部41に対して複数の異なる方向からのビーム照射を可能とする。回転ガントリー60中の四極電磁石は、実施形態1と同様照射地点におけるビームの形状を調整する。
本実施形態において、照射ビーム位置の変動を抑制する手法について説明する。まず、本実施形態では、回転ガントリー60中の座標系が回転ガントリー60の回転に合わせて回転するため、回転ガントリー入口65を境界として座標系が切り替わることになる。回転ガントリー入口65では二種類の座標系が重なるため、ディスパージョン等のパラメータについては、回転しない座標系における値を「回転ガントリー入口65固定側における値」と呼び、回転する座標系における値を「回転ガントリー入口65回転側における値」と呼ぶことにする。シンクロトロン10の出口地点から回転ガントリー入口65までの水平方向の輸送行列Hxが数式18の形で表されるとする。このとき、回転ガントリー入口65固定側における加速周波数由来の水平ディスパージョンηfx2とその勾配ηfx2’および偏向磁場由来の水平ディスパージョンηBx2とその勾配ηBx2’は、実施形態1と同様に数式20により表される。ディスパージョンの添え字2は、回転ガントリー入口65固定側における値であることを表す。なお、本実施形態では、シンクロトロン10の取り出し用デフレクタ15および高エネルギービーム輸送系20中の偏向電磁石21が水平方向にビームを変更するため、回転ガントリー入口65固定側における垂直ディスパージョンηfy2、ηBy2とその勾配ηfy2’、ηBy2’は実施形態1と同様0となる。なお、シンクロトロン10出口地点から回転ガントリー入口65までの垂直方向の輸送行列Hxは、実施形態1と同様、数式19の形で表される。
Figure 0006431289
本実施形態の粒子線治療システムでは、制御装置25が高エネルギービーム輸送系20に設置された四極電磁石62a〜62fの励磁量を回転ガントリー入口固定側における加速周波数由来の水平ディスパージョンの勾配ηfx2’と偏向磁場由来の水平ディスパージョンの勾配ηBx2’が共に0となるように制御する。具体的には、シンクロトロン10の出口地点から回転ガントリー入口65までの水平方向の輸送行列Hxの各成分が数式21の関係を満たすよう四極電磁石62a〜62fの励磁量を制御する。数式21に示されるディスパージョンに関する制約条件は2種類であるため、水平方向の輸送行列Hxが数式14を満たすには、高エネルギービーム輸送系20中の四極電磁石62a〜62fのうち少なくとも2台の励磁量を独立に制御する必要がある。
Figure 0006431289
さらに、本実施形態の粒子線治療システムにおいて、照射地点におけるビームサイズsx1、sy1とその変化率sx1’、sy1’を適切な値に制御するためには、回転ガントリー入口65固定側におけるビームサイズsx2、sy2とその変化率sx2’、sy2’を適切な値に制御する必要がある。このためには、回転ガントリー入口65固定側におけるTwissパラメータβx2、αx2、βy2、αy2を回転ガントリーの設計から定まる所定の値とすれば良い。回転ガントリー入口65固定側におけるTwissパラメータβx2、αx2、βy2、αy2を所定の値に制御するためには、実施形態1と同様、四極電磁石62a〜62fのうち少なくとも4台の励磁量を独立に制御する必要がある。制御装置25は、回転ガントリー入口65固定側におけるTwissパラメータβx2、αx2、βy2、αy2が所定の値となり、なおかつ回転ガントリー入口65固定側における加速周波数由来の水平ディスパージョンの勾配ηfx2’と偏向磁場由来の水平ディスパージョンの勾配ηBx2’が共に0となるよう高エネルギービーム輸送系20中の四極電磁石62a〜62fの励磁量を制御する。制御装置25は6台の四極電磁石62a〜62fの励磁量を独立に制御するため、輸送行列Ax、Ayがディスパージョンに関する制約条件とビームサイズに関する制約条件を同時に満たすよう四極電磁石62a〜62fの励磁量を制御することができる。
輸送行列Ax、Ayがディスパージョンに関する制約条件とビームサイズに関する制約条件を同時に満たすような四極電磁石62a〜62fの励磁量は、実施形態1と同様、シンクロトロン10からの取り出しビームのTwissパラメータβx0、αx0、βy0、αy0、加速周波数由来の水平ディスパージョンηfx0とその勾配ηfx0’、偏向磁場由来の水平ディスパージョンηBx0とその勾配ηBx0’から制御装置25が計算により求める。また、四極電磁石52a〜52hの励磁量を計算するために必要となるシンクロトロン10からの取り出しビームのTwissパラメータβx0、αx0、βy0、αy0、加速周波数由来の水平ディスパージョンηfx0とその勾配ηfx0’、偏向磁場由来の水平ディスパージョンηBx0とその勾配ηBx0’は、実施形態1と同様にして測定あるいは計算することができる。
図8に、回転ガントリー入口固定側65における水平ディスパージョンの勾配ηfx2’ηBx2’が0となり、なおかつ回転ガントリー入口固定側65におけるTwissパラメータβx2、αx2、βy2、αy2が所定の値となるような四極電磁石62a〜62fの励磁電流を制御装置25が反復法により求める手順についてのフローチャート図を示す。制御装置25が四極電磁石62a〜62fの励磁量を計算する手順は実施形態1と同様であるが、ステップS301〜S307(実施形態1のステップS101〜S107に相当)の後、本実施形態では回転ガントリー入口65固定側における水平ディスパージョンの勾配ηfx2’、ηBx2’を0に補正するため、繰り返し計算の目的関数Fは例えば数式22の形とする必要がある(S309)。数式22中のβx2T、αx2T、βy2T、αy2Tはそれぞれ回転ガントリー入口65固定側におけるTwissパラメータβx2、αx2、βy2、αy2の目標値である。
Figure 0006431289
本実施形態の回転ガントリー65は、一般的な粒子線治療システムにおける回転ガントリーと同様、回転ガントリー入口65回転側においてディスパージョンとその勾配が共に0の場合、照射地点におけるディスパージョンとその勾配も共に0となるよう回転ガントリー60中の四極電磁石の励磁量が制御されている。換言すれば、回転ガントリー60は、回転ガントリー入口65回転側から照射地点までのビーム輸送において新たにディスパージョンを発生させることがない。また、本実施形態の回転ガントリー60は、照射地点におけるビームサイズが回転ガントリー入口65回転側におけるビームサイズよりも小さくなる、即ち、ビームを回転ガントリー入口65回転側から照射地点へ向けて収束するように回転ガントリー65中の四極電磁石の励磁量が制御されている。これらにより、回転ガントリー65の水平方向の輸送行列Gxおよび垂直方向の輸送行列Gyは、数式23の形で近似することができる。輸送行列Gx、Gyの1行1列成分が0に近似できるのは回転ガントリー65が照射地点へ向けてビームを収束するためであり、輸送行列Gx、Gyの1行3列成分および2行3列成分が0であるのは回転ガントリー65が新たにディスパージョンを発生させないことによる。また、照射地点における水平ディスパージョンηx1および垂直ディスパージョンηy1は、回転ガントリー入口65回転側における水平ディスパージョンの勾配ηx3’と垂直ディスパージョンの勾配ηy3’を用いて数式24により近似される。ディスパージョンの添え字3は、回転ガントリー入口65回転側における値であることを表す。数式24に示すように、照射地点における水平、垂直ディスパージョンηx1、ηy1は回転ガントリー入口65回転側における水平、垂直ディスパージョンの勾配ηx3’、ηy3’に比例し、水平、垂直ディスパージョンηx3、ηy3には依存しない。
Figure 0006431289
本実施形態において、回転ガントリー入口65回転側の水平、垂直ディスパージョンηx3、ηy3は回転ガントリー入口65固定側の水平、垂直ディスパージョンηx2、ηy2の線形結合となり、回転ガントリー入口65回転側の水平、垂直ディスパージョンの勾配ηx3’、ηy3’は回転ガントリー入口65固定側の水平、垂直ディスパージョンの勾配ηx2’、ηy2’の線形結合となる。従って、回転ガントリー65固定側における水平、垂直ディスパージョンの勾配ηx2’、ηy2’が共に0である場合、回転ガントリー65回転側における水平、垂直ディスパージョンの勾配ηx3’、ηy3’も共に0となる。本実施形態では回転ガントリー固定側における加速周波数由来の水平、垂直ディスパージョンの勾配ηfx2’、ηfy2’と偏向磁場由来の水平、垂直ディスパージョンの勾配ηBx2’、ηBy2’が全て0であるから、回転ガントリー回転側における加速周波数由来の水平、垂直ディスパージョンの勾配ηfx3’、ηfy3’と偏向磁場由来の水平、垂直ディスパージョンの勾配ηBx3’、ηBy3’も全て0となる。従って、数式25より、本実施形態では照射地点における加速周波数由来の水平、垂直ディスパージョンηfx1、ηfy1と偏向磁場由来の水平、垂直ディスパージョンηBx1、ηBy1が全て0となる。
本実施形態の粒子線治療システムにおいてビーム照射中にシンクロトロン10の加速周波数が変動した場合、取り出しビームの水平位置と運動量が変動するが、照射地点における加速周波数由来の水平、垂直ディスパージョンηfx1、ηfy1が0であるため、照射ビーム位置は加速周波数のずれに依らず一定に保たれる。同様に、ビーム照射中にシンクロトロン10の偏向電磁石11の励磁量が変動した場合においても、照射ビーム位置における偏向磁場由来の水平、垂直ディスパージョンηBx1、ηBy1が0であるため、照射ビーム位置が偏向電磁石11の励磁量のずれに依らず一定に保たれる。
このように、本実施形態の粒子線治療システムでは、シンクロトロン10からの取り出しビームに対して定義された加速周波数由来の水平ディスパージョンと偏向磁場由来の水平ディスパージョンに対し、回転ガントリー入口65固定側におけるこれらディスパージョンの勾配が共に0となるよう制御装置25が高エネルギービーム輸送系20中の四極電磁石62a〜62fの励磁量を制御するため、高エネルギービーム輸送系20中のステアリング電磁石24の電源に高価なパターン電源を使用せずに、照射ビーム位置の変動を抑制することができる。
本実施形態の粒子線治療システムは、シンクロトロン10の出口から回転ガントリー入口65までの間に6台の四極電磁石62a〜62fを設置する構成としたが、この区間に設置される四極電磁石は6台より多くても構わない。シンクロトロン10の出口から回転ガントリー入口65までの間に6台よりも多くの四極電磁石を設置する場合、実施形態1と同様に、高エネルギービーム輸送系20におけるビーム損失を抑制することが可能である。また、四極電磁石62a〜62fはシンクロトロン10の出口から回転ガントリー入口65までの間の何れの直線部に設置しても良い。
本実施形態の粒子線治療システムでは、実施形態1と同様、高エネルギービーム輸送系20が備えるビームを水平方向に偏向する偏向電磁石は2台以上でも構わないし、高エネルギービーム輸送系20がビームを水平方向に偏向する偏向電磁石を1台も備えない構成としても良い。同様に、回転ガントリー60を構成する偏向電磁石および四極電磁石は何台であっても構わない。
本実施形態の粒子線治療システムでは、実施形態1と同様の理由により、回転ガントリー入口65固定側における加速周波数由来の水平ディスパージョンの勾配および偏向磁場由来の水平ディスパージョンの勾配が正確に0に補正されていなくても構わない。
本実施形態の粒子線治療システムでは、取り出し用デフレクタ15が垂直方向にビームを偏向しても良い。また、シンクロトロン10の出口から回転ガントリー入口65までの間にビームを垂直方向に偏向する偏向電磁石を備える構成としても良い。回転ガントリー入口65までにビームが垂直方向に偏向される場合、シンクロトロン10の出口から回転ガントリー入口65までの間に8台以上の四極電磁石を設置することにより照射ビーム位置の変動を抑制することが可能となる。具体的には、回転ガントリー入口65固定側における加速周波数由来の水平、垂直ディスパージョンの勾配ηfx2’、ηfy2’と偏向磁場由来の水平、垂直ディスパージョンの勾配ηBx2’、ηBy2’が全て0となるよう制御装置25が高エネルギービーム輸送計25中の四極電磁石の励磁量を制御することにより、照射ビーム位置の変動が抑制される。
(付記)
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上の必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
本発明の粒子線治療システム及び装置、粒子線治療システムの制御方法は、その各手順をコンピュータに実行させるための粒子線治療プログラム、粒子線治療プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体、粒子線治療プログラムを含みコンピュータの内部メモリにロード可能なプログラム製品、そのプログラムを含むサーバ等のコンピュータ、等により提供されることができる。
1 入射器
2 低エネルギービーム輸送系
10 シンクロトロン
11 偏向電磁石
12 四極電磁石
13 高周波加速空胴
14 入射用インフレクタ
15 取り出し用デフレクタ
20 高エネルギービーム輸送系
21 偏向電磁石
22 四極電磁石
23 四極電磁石電源
24 ステアリング電磁石
25 制御装置
30 照射野形成装置
40 患者
41 患部
50 測定部
51 偏向電磁石
52 四極電磁石
53 四極電磁石電源
60 回転ガントリー
62 四極電磁石
63 四極電磁石電源
70 サイクロトロン

Claims (12)

  1. 粒子線治療システムであって、
    荷電粒子ビームを加速して取り出す加速器と、
    前記荷電粒子ビームの形状を調整する複数の四極電磁石を有し、前記加速器から取り出された前記荷電粒子ビームを照射対象へ輸送するビーム輸送系と、
    前記ビーム輸送系中の前記荷電粒子ビームに対し、前記荷電粒子ビームの進行方向に垂直で、前記加速器の偏向電磁石の動径方向又は前記加速器の周回ビーム軌道若しくは中心軌道が含まれる平面方向に沿った方向である第一の方向について定義された、前記加速器に由来する二種類の第一のディスパージョンが、前記照射対象の位置において0又は略0となるよう前記ビーム輸送系中の前記複数の四極電磁石の各々の励磁量を制御する制御装置と、
    を備え、
    前記二種類の第一のディスパージョンは、加速周波数由来のディスパージョン(ηfx1)と偏向磁場由来のディスパージョン(ηBx1)であり、
    前記二種類の第一のディスパージョンが前記照射対象の位置において略0となるとは、前記照射対象の位置における前記第一のディスパージョンと運動量ずれの積が、予め定められた照射ビーム位置の変動幅の制限以内であることを特徴とする粒子線治療システム。
  2. 請求項1に記載の粒子線治療システムであって、
    前記制御装置は、前記照射対象の位置におけるビームサイズとその変化率が予め定められた値となり、且つ、前記加速器に由来する前記二種類の第一のディスパージョンが、前記照射対象の位置において0又は略0となるよう前記ビーム輸送系中の前記複数の四極電磁石の各々の励磁量を制御することを特徴とする粒子線治療システム。
  3. 請求項2に記載の粒子線治療システムであって、
    前記制御装置は、前記複数の四極電磁石の各々の励磁量を、前記ビーム輸送系の機器配置から作られるモデル、前記加速器から取り出した前記荷電粒子ビームのTwissパラメータ、前記加速器出口地点における前記第一の方向の前記加速周波数由来のディスパージョン(ηfx0)とその勾配(ηfx0’)、前記加速器出口地点における前記第一の方向の前記偏向磁場由来のディスパージョン(ηBx0)とその勾配(ηBx0’)から計算することを特徴とする粒子線治療システム。
  4. 請求項2に記載の粒子線治療システムであって、
    前記制御装置は、前記加速器出口地点における、前記二種類の前記第一の方向のディスパージョン(ηfx0、ηBx0)とそれらの勾配(ηfx0’、ηBx0’)、及び、Twissパラメータを読み込み、
    前記制御装置は、前記複数の四極電磁石の各々の励磁量の予め設定された設計値を用いて前記加速器出口地点から前記照射対象の位置までの輸送行列(Ax、Ay)を計算し、
    前記制御装置は、前記加速器出口地点における前記二種類の前記第一の方向のディスパージョン(ηfx0、ηBx0)およびそれらの勾配(ηfx0’、ηBx0’)と前記ビーム輸送系の輸送行列(Ax、Ay)から前記照射対象の位置における前記二種類の前記第一の方向のディスパージョン(ηfx1、ηBx1)を計算し、前記加速器出口地点におけるTwissパラメータと前記ビーム輸送系の輸送行列(Ax、Ay)から前記照射対象の位置におけるTwissパラメータを計算し、
    前記制御装置は、前記照射対象の位置における前記二種類の前記第一の方向のディスパージョン(ηfx1、ηBx1)が両方0となり且つ前記照射対象の位置におけるTwissパラメータが目標値と一致する場合に0となる関数である目的関数に従い、前記照射対象の位置における前記二種類の前記第一の方向のディスパージョン(ηfx1、ηBx1)およびTwissパラメータの計算結果から前記目的関数の値を計算し、
    前記制御装置は、前記目的関数の値が予め定められた閾値以下になるような前記複数の四極電磁石の励磁量を算出し、
    前記制御装置は、前記複数の四極電磁石の各々を、算出された励磁量に従い制御することを特徴とする粒子線治療システム。
  5. 請求項3または4に記載の粒子線治療システムであって、
    前記加速器出口地点における、前記二種類の前記第一の方向のディスパージョン(ηfx0、ηBx0)とそれらの勾配(ηfx0’、ηBx0’)、及び、Twissパラメータを測定し、前記制御装置に与える測定部をさらに備えたことを特徴とする粒子線治療システム。
  6. 請求項1に記載の粒子線治療システムであって、
    前記制御装置は、
    前記ビーム輸送系中の前記荷電粒子ビームに対し、前記加速器に由来する前記二種類の第一のディスパージョン(ηfx1、ηBx1)と、前記荷電粒子ビームの進行方向および前記第一の方向と垂直な第二の方向について定義された前記加速器に由来する二種類の第二のディスパージョンとが、前記照射対象の位置において0又は略0となるよう前記ビーム輸送系中の前記複数の四極電磁石の各々の励磁量を制御し、
    前記二種類の第二のディスパージョンは、加速周波数由来のディスパージョン(ηfy1)と偏向磁場由来のディスパージョン(ηBy1)であり、
    前記二種類の第二のディスパージョンが前記照射対象の位置において略0となるとは、前記照射対象の位置における前記第二のディスパージョンと運動量ずれの積が、予め定められた照射ビーム位置の変動幅の制限以内であることを特徴とする粒子線治療システム。
  7. 請求項6に記載の粒子線治療システムであって、
    前記ビーム輸送系は、
    前記加速器から取り出した前記荷電粒子ビームを前記照射対象へ向けて前記第一の方向に偏向する偏向電磁石と、
    前記荷電粒子ビームを前記第二の方向に複数回偏向し、前記照射対象に対して前記第二の方向からの前記荷電粒子ビームを照射するための複数の偏向電磁石と、
    を備え、
    前記第二の方向から前記照射対象に前記荷電粒子ビームを照射可能としたことを特徴とする粒子線治療システム。
  8. 請求項1記載の粒子線治療システムであって、
    前記ビーム輸送系から前記荷電粒子ビームを入力し、前記荷電粒子ビームを前記照射対象に対して複数の異なる方向から照射することができる回転ガントリー
    をさらに備え、
    前記回転ガントリーの入口地点における前記第一の方向について定義された前記二種類の前記第一の方向のディスパージョンの前記荷電粒子ビームの進行方向についての勾配(ηfx2’、ηBx2’)が0となるよう前記制御装置が前記複数の四極電磁石の各々の励磁量を制御することを特徴とする粒子線治療システム。
  9. 請求項1または2に記載の粒子線治療システムであって、
    前記加速器がシンクロトロンであり、
    前記二種類の第一のディスパージョンのうちの一種類が、前記シンクロトロンの周回ビームを所定のエネルギーまで加速する高周波加速空胴による加速周波数の変化により生じるビーム位置の変化とビーム運動量の変化に対して定義された加速周波数由来のディスパージョンであり、
    前記二種類の第一のディスパージョンのうちのもう一種類が、前記シンクロトロンの周回ビーム軌道を形成する複数の偏向電磁石による偏向磁場の変化により生じるビーム位置の変化とビーム運動量の変化に対して定義された偏向磁場由来のディスパージョンであることを特徴とする粒子線治療システム。
  10. 請求項1または2に記載の粒子線治療システムであって、
    前記加速器がサイクロトロンであり、
    前記二種類の第一のディスパージョンのうちの一種類が、前記サイクロトロンを構成するディー電極へ印加する高周波電圧の変化により生じるビーム位置の変化とビーム運動量の変化に対して定義された加速周波数由来のディスパージョンであり、
    前記二種類の第一のディスパージョンのうちのもう一種類が、前記サイクロトロンを構成する磁極間に発生する磁場の変化により生じるビーム位置の変化とビーム運動量の変化に対して定義された偏向磁場由来のディスパージョンであることを特徴とする粒子線治療システム。
  11. 請求項3または4に記載の粒子線治療システムであって、
    前記加速器出口地点における前記加速器から取り出された前記荷電粒子ビームの前記第一の方向のディスパージョンは、同地点における前記荷電粒子ビームの前記第一の方向のビーム位置のずれΔx0と、運動量の設計値で規格化した運動量のずれΔp/pを用いて、Δx0/(Δp/p)により表されることを特徴とする粒子線治療システム。
  12. 粒子線治療装置であって、
    加速器から取り出した荷電粒子ビームの形状を調整する複数の四極電磁石を有し、前記加速器から取り出された前記荷電粒子ビームを照射対象へ輸送するビーム輸送系と、
    前記ビーム輸送系中の前記荷電粒子ビームに対し、前記荷電粒子ビームの進行方向に垂直で、前記加速器の偏向電磁石の動径方向又は前記加速器の周回ビーム軌道若しくは中心軌道が含まれる平面方向に沿った方向である第一の方向について定義された、前記加速器に由来する二種類の第一のディスパージョンが、前記照射対象の位置において0又は略0となるよう前記ビーム輸送系中の前記複数の四極電磁石の各々の励磁量を制御する制御装置と、
    を備え、
    前記二種類の第一のディスパージョンは、加速周波数由来のディスパージョン(ηfx1)と偏向磁場由来のディスパージョン(ηBx1)であり、
    前記二種類の第一のディスパージョンが前記照射対象の位置において略0となるとは、前記照射対象の位置における前記第一のディスパージョンと運動量ずれの積が、予め定められた照射ビーム位置の変動幅の制限以内であることを特徴とする粒子線治療装置。
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