本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
〔実施形態1〕
実施形態1に係る電力伝送通信ユニット及び電力伝送通信装置について説明する。図1は、実施形態1に係る電力伝送通信ユニットの構成例を示す斜視図である。図2は、実施形態1に係る電力伝送通信装置の構成例を示す斜視図である。
電力伝送通信ユニット1は、電界結合(電界共振結合)により電力を伝送すると共に、無線通信を行うものである。電力伝送通信ユニット1は、図1に示すように、基材10と、第1電極20と、第2電極30と、インダクタ21,31と、電線22,32と、スロットアンテナ40と、信号線42a,42bと、信号入出力回路50とを備えている。
基材10は、平板状の絶縁素材から形成され、長辺10aと短辺10bとを有する矩形状に形成されている。ここで、基材10の長辺10aに沿う方向をX軸方向とし、基材10の短辺10bに沿う方向をY軸方向とし、X軸方向とY軸方向とに同一平面上で直交する方向をZ軸方向とする。
第1電極20は、非接触で電力を伝送するものである。第1電極20は、平板状の導電部材から形成され、長辺20aと短辺20bとを有する矩形状に形成されている。第1電極20は、長辺20aがY軸方向と平行になるように基材10に配置され、かつ、短辺20bがX軸方向と平行になるように基材10に配置されている。第1電極20は、インダクタ21を介して電線22が接続されている。例えば、インダクタ21の一端は、第1電極20のX軸方向における一方側の端部に接続されている。インダクタ21の他端は、電線22の一端が接続されている。
第2電極30は、非接触で電力を伝送するものである。第2電極30は、平板状の導電部材から形成され、長辺30aと短辺30bとを有する矩形状にされている。第2電極30は、第1電極20と略同じサイズに形成されている。第2電極30は、長辺30aがY軸方向と平行であり、かつ、短辺30bがX軸方向と平行である。第2電極30は、X軸方向に第1電極20と並んで基材10の同一平面上に配置され、Y軸方向において第1電極20と同じ位置に配置されている。X軸方向における第1電極20と第2電極30との間には、キャパシタCが形成されている。第2電極30は、インダクタ31を介して電線32が接続されている。例えば、インダクタ31の一端は、第2電極30のX軸方向における一方側の端部に接続されている。インダクタ31の他端は、電線32の一端が接続されている。電線32,22は、例えば、同軸ケーブルである。
電力伝送通信ユニット1は、X軸方向における第1電極20と第2電極30との間に形成されるキャパシタCと、インダクタ21,31とにより直列共振回路を構成する。
第1電極20の電線22と第2電極30の電線32とは、第1電極20と第2電極30との領域、及び第1電極20と第2電極30との間のキャパシタCの領域を回避するように配置されると共に、これらの領域から遠ざかるようにY軸方向に延在して配置されている。電線22,32の他端には、後述する交流電源60又は負荷70が接続される。
スロットアンテナ40は、電波を送信又は受信するものである。スロットアンテナ40は、スリット(スロット)41を有している。スリット41は、第1電極20又は第2電極30の少なくとも一方に形成された開口部である。本実施形態1では、スリット41は、第1電極20の略中央に形成されている。スリット41は、第1電極20をZ軸方向に貫通している。スリット41は、長辺41aと短辺41bとを有する矩形状に形成され、スリット41の長辺41aは、Y軸方向に沿って形成され、スリット41の短辺41bは、X軸方向に沿って形成されている。スリット41の長辺41aの長さslは、電波の波長λの1/2であり、スリット41の短辺41bの長さswは、電波の波長λの1/30以下である。スロットアンテナ40は、信号線42a、42bが接続される給電点41cを有する。スリット41の一方の長辺41aの給電点41cには、信号線42aの一端が接続され、スリット41の他方の長辺41aの給電点41cには、信号線42bの一端が接続されている。スリット41の給電点41cは、スリット41の長辺41aのY軸方向における中心からY軸方向にオフセットされている。信号線42a,42bは、例えば、同軸ケーブルである。
信号入出力回路50は、信号線42a,42bの他端が接続され、高周波数の電気信号を信号線42a,42bを介してスロットアンテナ40に出力する。また、信号入出力回路50は、高周波数の電気信号を信号線42a,42bを介してスロットアンテナ40から入力する。
電力伝送通信ユニット1は、図2に示すように、電力を送電する送電通信ユニット1A、又は、電力を受電する受電通信ユニット1Bとして機能する。送電通信ユニット1Aと受電通信ユニット1Bとは、電力伝送通信装置100を構成する。
電力伝送通信装置100において、送電通信ユニット1Aの第1電極20及び第2電極30と、受電通信ユニット1Bの第1電極20及び第2電極30とは、電力伝送可能に対向している。例えば、送電通信ユニット1Aの第1電極20と受電通信ユニット1Bの第1電極20とは、X軸方向とY軸方向とからなるXY平面に対して平行に配置され、かつ、XY平面座標において同じ位置に配置されている。また、送電通信ユニット1Aの第1電極20と受電通信ユニット1Bの第1電極20とは、Z軸方向に所定の間隔dを有して配置されている。同様に、送電通信ユニット1Aの第2電極30と受電通信ユニット1Bの第2電極30とは、XY平面に対して平行に配置され、かつ、XY平面座標において同じ位置に配置されている。また、送電通信ユニット1Aの第2電極30と受電通信ユニット1Bの第2電極30とは、Z軸方向に所定の間隔dを有して配置されている。
電力伝送通信装置100において、送電通信ユニット1Aのスロットアンテナ40と、受電通信ユニット1Bのスロットアンテナ40とは、通信可能に対向されている。例えば、送電通信ユニット1Aのスロットアンテナ40のスリット41と受電通信ユニット1Bのスロットアンテナ40のスリット41とは、XY平面に対して平行に配置され、かつ、XY平面座標において同じ位置に配置されている。また、送電通信ユニット1Aのスリット41と受電通信ユニット1Bのスリット41とは、Z軸方向に所定の間隔、つまり送電通信ユニット1Aの第1電極20と受電通信ユニット1Bの第1電極20と同じ間隔dを有して配置されている。
電力伝送通信装置100は、交流電源60と負荷70とを備えている。交流電源60は、送電通信ユニット1Aの第1電極20に電線22とインダクタ21とを介して接続されている。また、交流電源60は、送電通信ユニット1Aの第2電極30に電線32とインダクタ31とを介して接続されている。交流電源60は、電線22とインダクタ21とを介して送電通信ユニット1Aの第1電極20に交流電力を供給し、電線32とインダクタ31とを介して送電通信ユニット1Aの第2電極30に交流電力を供給する。
負荷70は、例えば蓄電池であり、受電通信ユニット1Bの第1電極20に電線22とインダクタ21とを介して接続されている。また、負荷70は、受電通信ユニット1Bの第2電極30に電線32とインダクタ31とを介して接続されている。負荷70は、インダクタ21と電線22とを介して受電通信ユニット1Bの第1電極20から交流電力を受電し、インダクタ31と電線32とを介して受電通信ユニット1Bの第2電極30から交流電力を受電する。
次に、電力伝送通信装置100の動作例について説明する。送電通信ユニット1Aは、交流電源60から交流電力が供給されると、電界結合により受電通信ユニット1Bに非接触で交流電力を供給する。受電通信ユニット1Bは、送電通信ユニット1Aから供給された交流電力を受電して、蓄電池である負荷70に蓄電する。
送電通信ユニット1Aは、信号入出力回路50から電気信号が出力されると、スロットアンテナ40から受電通信ユニット1Bのスロットアンテナ40に電波を送信する。受電通信ユニット1Bは、送電通信ユニット1Aから送信された電波をスロットアンテナ40により受信し、電気信号を信号入出力回路50に出力する。また、受電通信ユニット1Bは、信号入出力回路50から電気信号が出力されると、スロットアンテナ40から送電通信ユニット1Aのスロットアンテナ40に電波を送信する。送電通信ユニット1Aは、受電通信ユニット1Bから送信された電波をスロットアンテナ40により受信し、電気信号を信号入出力回路50に出力する。
次に、電力伝送通信装置100の動作特性について説明する。図3は、実施形態1に係る電力伝送特性(S21)を示す図である。図4は、実施形態1に係るアイソレーション特性(S31)を示す図である。図5は、実施形態1に係る通信伝送特性(S34)を示す図である。図6は、実施形態1に係る通信反射特性(S33)を示す図である。図7は、実施形態1に係るアイソレーション特性(S31)を示す図である。
この例では、スロットアンテナ40から送信する電波の周波数を1GHz帯とする。また、スロットアンテナ40のスリット41の長辺41aの長さslを150mmとし、短辺41bの長さswを1mmとし、スリット41の長辺41aのY軸方向における中央QからY軸方向にオフセットされる給電点41cのオフセット量sfを50mmとする。なお、電波の周波数を1GHz帯(波長λ=300mm)とするので、電波をスロットアンテナ40に共振させるためにスリット41の長辺41aの長さslを150mm(λ/2)とした。また、送電通信ユニット1Aと受電通信ユニット1Bとの間隔dを10mm、20mm、50mm、100mm又は200mmとする。また、第1電極20の短辺20bの長さw1は、107.8mmであり、第1電極20の長辺20aの長さw2は、250mmである。同様に、第2電極30の短辺30bの長さw1は、107.8mmであり、第2電極30の長辺30aの長さw2は、250mmである。第1電極20と第2電極30とのX軸方向における間隔wgは、34.4mmである。インダクタ21,31のインダクタンスは、2.8e−6(H)である。
電力伝送通信装置100は、図3に示すように、電力伝送特性(S21)は、30MHz周辺の周波数において90%以上となることが確認できる。つまり、送電通信ユニット1Aの第1電極20と受電通信ユニット1Bの第1電極20とにスロットアンテナ40を設けても、電力伝送特性に影響がないことを確認できる。なお、図3の縦軸は、電力伝送特性(S21)を示し、横軸は、交流電源60から供給する交流電力の周波数を示す。
電力伝送通信装置100は、図4に示すように、電力供給が通信に及ぼす影響を示すアイソレーション特性(S31)は、35dB以上である。つまり、電力供給が通信に及ぼす影響は、抑えられていることが確認できる。なお、35dB以上のアイソレーションでも不足する場合、フィルタ等によりアイソレーションを強化することも可能である。図4の縦軸は、アイソレーション特性(S31)を示し、横軸は、交流電源60から供給する交流電力の周波数を示す。
電力伝送通信装置100は、図5に示すように、通信伝送特性(S34)は、1GHz帯付近において、10dB以下程度である。つまり、電力供給が通信に及ぼす影響は、抑えられていることが確認できる。また、1GHz帯付近においてフラットな通信伝送特性が得られている。図5の縦軸は、通信伝送特性(S34)を示し、横軸は、信号入出力回路50から出力する電気信号の周波数を示す。
電力伝送通信装置100は、図6に示すように、通信反射特性(S33)は、広帯域に渡り、0.5以下である。以下に示す表1には、送電通信ユニット1Aと受電通信ユニット1Bとの間隔dごとに、通信反射特性(S33)が0.5以下となる周波数帯域と比帯域とを示している。また、比較例として、スロットアンテナ40を単体で用いた場合における周波数帯域と比帯域とを示している。表1によれば、距離(間隔)dが200mm以外においては、スロットアンテナ40単体の比帯域(19%)よりも比帯域が広くなっている。これは、相互に結合する送電通信ユニット1Aの第1電極20と受電通信ユニット1Bの第1電極20とにスロットアンテナ40を形成したため、スロットアンテナ40同士の過結合が起こったためである。なお、図6の縦軸は、通信反射特性(S33)を示し、横軸は、信号入出力回路50から出力する電気信号の周波数を示す。
電力伝送通信装置100は、図7に示すように、通信が電力供給に及ぼす影響を示すアイソレーション特性(S31)は、20dB以上である。つまり、通信が電力供給に及ぼす影響は、抑えられていることが確認できる。なお、通信の電力は小電力であるので、大電力である電力供給に及ぼす影響については、あまり厳しく考える必要はなく、現状で十分である。図7の縦軸は、アイソレーション特性(S31)を示し、横軸は、信号入出力回路50から出力する電気信号の周波数を示す。
次に、上述した電力伝送通信装置100の動作特性(1GHz帯)を満たすスロットアンテナ40のスリット41の短辺41bの長さswの範囲例について説明する。図8は、実施形態1に係る反射特性(S11)を示す図である。図9は、実施形態1に係るスリットの短辺の長さが10mmにおける通信反射特性(S33)を示す図である。この例では、単体のスロットアンテナ40、つまり送電通信ユニット1Aのスロットアンテナ40又は受電通信ユニット1Bのスロットアンテナ40のいずれか一方を用いてシミュレーションを行った。図8に示すように、スリット41の短辺41bの長さswが10mm程度を超えると、反射特性(S11)が0.5よりも大きくなり、スロットアンテナ40として動作しなくなることが確認できる。このため、スリット41の短辺41bの長さswを10mm(λ/30)以下にする必要がある。ここで、スリット41の短辺41bの長さsw(=10mm)を1GHzにおける波長λで正規化すると、スリット41の短辺41bの長さswは、λ/30である。電力伝送通信装置100は、図9に示すように、スリット41の短辺41bの長さswが10mm(λ/30)における通信反射特性(S33)は、0.5以下となっているものの、限界に近いことが確認できる。また、図9に示すスリット41の短辺41bの長さswが10mmの通信反射特性(S33)は、図6に示すスリット41の短辺41bの長さswが1mmの通信反射特性(S33)と比較すると、帯域拡大の効果は少なくなっている。これにより、スリット41の短辺41bの長さswは、λ/30以下に設定することが好ましい。なお、図8の縦軸は、反射特性(S11)を示し、横軸は、信号入出力回路50から出力する電気信号の周波数を示す。また、図9の縦軸は、通信反射特性(S33)を示し、横軸は、信号入出力回路50から出力する電気信号の周波数を示す。
次に、スロットアンテナ40から送信する電波の周波数を2GHz帯とする例について説明する。また、スロットアンテナ40のスリット41の長辺41aの長さslを75mmとし、短辺41bの長さswを0.5mmとし、給電点41cのオフセット量sfを25mmとする。なお、電波の周波数を2GHz帯(波長λ=150mm)とするので、共振させるためにスリット41の長辺41aの長さslを75mm(λ/2)とした。また、送電通信ユニット1Aと受電通信ユニット1Bとの間隔dを10mm、20mm、50mm、100mm又は200mmとする。
図10は、実施形態1に係るアイソレーション特性(S31)を示す図である。図11は、実施形態1に係る通信伝送特性(S34)を示す図である。図12は、実施形態1に係る通信反射特性(S33)を示す図である。図13は、実施形態1に係るアイソレーション特性(S31)を示す図である。図14は、実施形態1に係る反射特性(S11)を示す図である。
電力伝送通信装置100は、図示は省略するが、電力伝送特性(S21)は、30MHz周辺の周波数において90%以上となることが確認できた。つまり、送電通信ユニット1Aの第1電極20と受電通信ユニット1Bの第1電極20とにスロットアンテナ40を設けても、電力伝送特性に影響がないことを確認できた。
電力伝送通信装置100は、図10に示すように、電力供給が通信に及ぼす影響を示すアイソレーション特性(S31)は、55dB以上である。つまり、電力供給が通信に及ぼす影響は、抑えられていることが確認できる。図10の縦軸は、アイソレーション特性(S31)を示し、横軸は、交流電源60から供給する交流電力の周波数を示す。
電力伝送通信装置100は、図11に示すように、通信伝送特性(S34)は、2GHz帯付近において、10dB以下程度である。つまり、電力供給が通信に及ぼす影響は、抑えられていることが確認できる。また、2GHz帯付近においてフラットな通信伝送特性が得られている。図11の縦軸は、通信伝送特性(S34)を示し、横軸は、信号入出力回路50から出力する電気信号の周波数を示す。
電力伝送通信装置100は、図12に示すように、通信反射特性(S33)は、広帯域に渡り、0.5以下である。以下の表2には、送電通信ユニット1Aと受電通信ユニット1Bとの間隔dごとに、通信反射特性(S33)が0.5以下となる周波数帯域と比帯域とを示している。また、比較例として、スロットアンテナ40を単体で用いた場合における周波数帯域と比帯域とを示している。表2によれば、距離(間隔)dが100mmと200mmとにおいて、スロットアンテナ40単体の比帯域(27%)よりも比帯域が広くなっている。これは、相互に結合する送電通信ユニット1Aの第1電極20と受電通信ユニット1Bの第1電極20とにスロットアンテナ40を形成したため、スロットアンテナ40同士の過結合が起こったためである。なお、図12の縦軸は、通信反射特性(S33)を示し、横軸は、信号入出力回路50から出力する電気信号の周波数を示す。
電力伝送通信装置100は、図13に示すように、通信が電力供給に及ぼす影響を示すアイソレーション特性(S31)は、45dB以上である。つまり、通信が電力供給に及ぼす影響は、抑えられていることが確認できる。図13の縦軸は、アイソレーション特性(S31)を示し、横軸は、信号入出力回路50から出力する電気信号の周波数を示す。
次に、上述した電力伝送通信装置100の動作特性(2GHz帯)を満たすスロットアンテナ40のスリット41の短辺41bの長さswの範囲例について説明する。この例では、単体のスロットアンテナ40、つまり送電通信ユニット1Aのスロットアンテナ40又は受電通信ユニット1Bのスロットアンテナ40のいずれか一方を用いてシミュレーションを行った。図14に示すように、スリット41の短辺41bの長さswが5mm程度を超えると、反射特性(S11)が0.5よりも大きくなり、スロットアンテナ40として動作しなくなることが確認できる。このため、スリット41の短辺41bの長さswを5mm(λ/30)以下にする必要がある。ここで、スリット41の短辺41bの長さsw(=5mm)を2GHzにおける波長λで正規化すると、スリット41の短辺41bの長さswは、λ/30である。
以上のように、実施形態1に係る電力伝送通信ユニット1によれば、第1電極20に形成されたスリット41を介して電波を送信又は受信するスロットアンテナ40を備える。これにより、従来のように、通信モジュールを電力伝送モジュールと同一平面上の別の場所に追加する必要がないので、電力伝送通信ユニット1を小型化できる。また、電力供給が通信に及ぼす影響を抑制することができ、通信が電力供給に及ぼす影響を抑制することができる。つまり、第1電極20とスロットアンテナ40を一体化しても、電力供給と通信とが干渉することを抑制できる。
また、スロットアンテナ40のスリット41の短辺41bの長さswは、電波の波長λの1/30以下であるので、反射特性(S11)を0.5よりも小さくすることができる。これにより、反射波を抑制できるので、スロットアンテナ40により良好に通信を行うことができる。また、スリット41の短辺41bの長さswが波長λの1/30以下において、短辺41bの長さswが短くなるに従って、反射特性(S11)を改善することができる。
また、電力伝送通信ユニット1は、信号入出力回路50を備えるので、スロットアンテナ40に電気信号を出力したり、又は、当該スロットアンテナ40から電気信号を入力したりすることができる。
また、実施形態1に係る電力伝送通信装置100によれば、送電通信ユニット1Aの第1電極20及び第2電極30と、受電通信ユニット1Bの第1電極20及び第2電極30とを電力伝送可能に対向させ、かつ、送電通信ユニット1Aのスロットアンテナ40と受電通信ユニット1Bのスロットアンテナ40とを通信可能に対向させて配置する。これにより、電力伝送通信装置100は、送電通信ユニット1Aと受電通信ユニット1Bとの間で、電力伝送及び通信を行うことができる。
また、相互に結合する送電通信ユニット1Aの第1電極20と受電通信ユニット1Bの第1電極20とにスロットアンテナ40を形成したため、スロットアンテナ40同士の過結合が起り、スロットアンテナ40単体の比帯域よりも比帯域を広くすることができる。これにより、電力伝送通信装置100は、高速無線通信で必要とされる広帯域通信に有効である。
また、送電通信ユニット1Aは、交流電力を供給する交流電源60を備えるので、電界結合により受電通信ユニット1Bに交流電力を供給することができる。
〔実施形態1の変形例〕
次に、実施形態1の変形例について説明する。基材10は、長辺10aと短辺10bとを有する矩形の平板状に形成される例を説明したが、これに限定されない。例えば、基材10は、正方形や円形などの形状であってもよい。
また、第1電極20は、長辺20aと短辺20bとを有する矩形の平板状に形成され、第2電極30は、長辺30aと短辺30bとを有する矩形の平板状に形成される例を説明したが、これに限定されない。例えば、第1電極20と第2電極30とは、正方形や円形などの形状であってもよい。
また、スロットアンテナ40は、第1電極20の略中央に形成される例を説明したが、これに限定されない。例えば、スロットアンテナ40は、第1電極20のX軸方向における端部に形成されてもよいし、第1電極20のY軸方向における端部に形成されてもよい。また、スロットアンテナ40は、長辺41aがY軸方向に沿って形成されている例について説明したが、これに限定されない。例えば、スロットアンテナ40は、長辺41aがX軸方向に沿って形成されてもよいし、長辺41aがX軸方向とY軸方向とに沿わない方向に形成されてもよい。また、スロットアンテナ40は、第2電極30に形成されてもよい。なお、送電通信ユニット1Aのスロットアンテナ40と受電通信ユニット1Bのスロットアンテナ40とは、スロットアンテナ40の位置や向きにおいて、通信可能に対向させて配置する必要がある。
また、電力伝送通信ユニット1は、X軸方向における第1電極20と第2電極30との間に形成されるキャパシタCと、インダクタ21,31とにより直列共振回路を構成する例として説明したが、直列共振回路を構成するものでなくてもよい。
また、電力伝送通信装置100は、給電点41cのオフセット量sfを50mm(25mm)としたが、これに限定されない。図15は、変形例に係るアイソレーション特性(S31)を示す図である。図16は、変形例に係る通信伝送特性(S34)を示す図である。図17は、変形例に係る通信反射特性(S33)を示す図である。
変形例に係る電力伝送通信装置100A及び電力伝送通信ユニット2は、スロットアンテナ40の給電点41cのオフセット量sfが0mmである。つまり、電力伝送通信装置100Aは、スロットアンテナ40の給電点41cが、スリット41の長辺41aの中央Qに設けられる。なお、給電点41cの位置は、スリット41の長辺41aの中央Qから第1電極20の幅方向(X軸方向)にずれていてもよい。
電力伝送通信装置100Aの動作特性について説明する。この例では、スロットアンテナ40から送信する電波の周波数を1GHz帯とする。電力伝送通信装置100Aは、図示は省略するが、電力伝送特性(S21)が、30MHz周辺の周波数において90%以上となることが確認できた。つまり、電力伝送通信装置100Aは、送電通信ユニット1Aの第1電極20と受電通信ユニット1Bの第1電極20とにスロットアンテナ40を設けても電力伝送特性に影響がないことを確認できた。
電力伝送通信装置100Aは、図15に示すように、電力供給が通信に及ぼす影響を示すアイソレーション特性(S31)は、15dB以上である。つまり、電力伝送通信装置100Aは、電力供給が通信に及ぼす影響が抑えられている。図15の縦軸は、アイソレーション特性(S31)を示し、横軸は、交流電源60から供給する交流電力の周波数を示す。
電力伝送通信装置100Aは、図16に示すように、通信伝送特性(S34)が、1GHz帯付近において、概ね10dB以下である。つまり、電力伝送通信装置100Aは、電力供給が通信に及ぼす影響が抑えられている。また、電力伝送通信装置100Aは、1GHz帯付近において実施形態1の電力伝送通信装置100よりもフラットな通信伝送特性が得られており、さらに広帯域化されている。なお、図16の縦軸は、通信伝送特性(S34)を示し、横軸は、信号入出力回路50から出力する電気信号の周波数を示す。
電力伝送通信装置100Aは、図17に示すように、通信反射特性(S33)が、広帯域に渡り、0.5以下である。以下に示す表3には、電力伝送通信装置100Aの送電通信ユニット1Aと受電通信ユニット1Bとの間隔dごとに、通信反射特性(S33)が0.5以下となる周波数帯域と比帯域とを示している。また、比較例として、スロットアンテナ40を単体で用いた場合における周波数帯域と比帯域とを示している。表3によれば、電力伝送通信装置100Aは、距離(間隔)dが100mmを除いて、スロットアンテナ40単体の比帯域(53%)よりも比帯域が広くなっている。また、電力伝送通信装置100Aは、実施形態1の電力伝送通信装置100よりも比帯域を広くすることができる。なお、図17の縦軸は、通信反射特性(S33)を示し、横軸は、信号入出力回路50から出力する電気信号の周波数を示す。
次に、スロットアンテナ40の信号線42a,42bのオフセット量sfが0mmにおいて、スロットアンテナ40から送信する電波の周波数を2GHz帯とする例について説明する。図18は、変形例に係るアイソレーション特性(S31)を示す図である。図19は、変形例に係る通信伝送特性(S34)を示す図である。図20は、変形例に係る通信反射特性(S33)を示す図である。
電力伝送通信装置100Aは、図示は省略するが、電力伝送特性(S21)が、30MHz周辺の周波数において90%以上となることが確認できた。つまり、電力伝送通信装置100Aは、送電通信ユニット1Aの第1電極20と受電通信ユニット1Bの第1電極20とにスロットアンテナ40を設けても、電力伝送特性に影響がないことを確認できた。
電力伝送通信装置100Aは、図18に示すように、電力供給が通信に及ぼす影響を示すアイソレーション特性(S31)が、45dB以上である。つまり、電力伝送通信装置100Aは、電力供給が通信に及ぼす影響が抑えられている。なお、図18の縦軸は、アイソレーション特性(S31)を示し、横軸は、交流電源60から供給する交流電力の周波数を示す。
電力伝送通信装置100Aは、図19に示すように、通信伝送特性(S34)が、2GHz帯付近において、概ね15dB以下である。つまり、電力伝送通信装置100Aは、電力供給が通信に及ぼす影響が抑えられている。また、電力伝送通信装置100Aは、2GHz帯付近においてフラットな通信伝送特性が得られている。なお、図19の縦軸は、通信伝送特性(S34)を示し、横軸は、信号入出力回路50から出力する電気信号の周波数を示す。
電力伝送通信装置100Aは、図20に示すように、通信反射特性(S33)が、広帯域に渡り、0.5以下である。以下の表4には、電力伝送通信装置100Aの送電通信ユニット1Aと受電通信ユニット1Bとの間隔dごとに、通信反射特性(S33)が0.5以下となる周波数帯域と比帯域とを示している。また、比較例として、スロットアンテナ40を単体で用いた場合における周波数帯域と比帯域とを示している。表4によれば、電力伝送通信装置100Aは、距離(間隔)dが200mmにおいて、スロットアンテナ40単体の比帯域(38%)よりも比帯域が広くなっている。また、電力伝送通信装置100Aは、間隔dが20mmの場合を除いて、実施形態1の電力伝送通信装置100よりも比帯域を広くすることができる。なお、図20の縦軸は、通信反射特性(S33)を示し、横軸は、信号入出力回路50から出力する電気信号の周波数を示す。
以上のように、変形例に係る電力伝送通信装置100A及び電力伝送通信ユニット2は、スロットアンテナ40の給電点41cがスリット41の長辺41aの中央Qに設けられる。これにより、電力伝送通信装置100A及び電力伝送通信ユニット2は、給電点41cがオフセットされた実施形態1の電力伝送通信装置100及び電力伝送通信ユニット1よりも、概ね通信周波数の帯域を広くすることができ、最大の通信周波数の帯域を得ることができる。
〔実施形態2〕
次に、実施形態2に係る電力伝送通信装置100B及び電力伝送通信ユニット3について説明する。電力伝送通信装置100Bは、スロットアンテナ40の代わりにU字型折返しモノポールアンテナ(UFMA:U-shaped Folded Monopole Antenna)80を備える点で実施形態1と異なる。電力伝送通信装置100Bは、実施形態1の電力伝送通信装置100と同じ構成には同一符号を付し、詳細な説明を省略する。図21は、実施形態2に係る電力伝送通信装置の構成例を示す斜視図である。図22は、実施形態2に係るU字型折返しモノポールアンテナの構成例を示す斜視図である。
電力伝送通信ユニット3は、電界結合により電力を伝送すると共に、無線通信を行うものである。電力伝送通信ユニット3は、図21に示すように、基材10と、第1電極20と、第2電極30と、インダクタ21,31と、電線22,32と、UFMA80と、信号線42a,42bと、信号入出力回路50とを備えている。
UFMA80は、電波を送信又は受信するものであり、第1電極20又は第2電極30の少なくとも一方に形成される。本実施形態2では、UFMA80は、第1電極20の角部に形成され、Z軸方向から見た場合に第1電極20内に位置している。UFMA80は、図22に示すように、グランド板である第1電極20と高さhだけ離間して対向して配置されると共に側端の一部が第1電極20に電気的に接続されて接地された第1素子部81と、第1電極20と高さhだけ離間して対向して配置され、第1素子部81に連続する折返部82と、折返部82に連続し、第1電極20と間隔saだけ離間して対向して配置され、終端が第1電極20に電気的に接続された第2素子部83と、第1素子部81と第1電極20との接続部に信号入出力回路50から高周波数の電気信号を出力するための給電点81aと、を備えている。第1素子部81、折返部82及び第2素子部83は、Z軸方向から見た場合、U字型(コの字型)に形成された金属板である。
1GHzの周波数で通信するUFMA80は、第1及び第2素子部81,83のY軸方向における長さlaが94mmであり、第1素子部81の幅wa2が40mmであり、第2素子部83の幅wa1が4mmであり、第1素子部81と第2素子部83との間隔saが4mmであり、第1素子部81が第1電極20に接続される部分の長さwfが40mmであり、UFMA80の高さhが36mmであり、第1電極20の厚みfplが4mmである。2GHzの周波数で通信するUFMA80は、1GHzの周波数で通信するUFMA80の半分のサイズである。つまり、2GHzの周波数で通信するUFMA80は、第1及び第2素子部81,83のY軸方向における長さlaが47mmであり、第1素子部81の幅wa2が20mmであり、第2素子部83の幅wa1が2mmであり、第1素子部81と第2素子部83との間隔saが2mmであり、第1素子部81が第1電極20に接続される部分の長さwfが20mmであり、UFMA80の高さhが18mmである。なお、第1電極20の厚みfplは、4mmである。
電力伝送通信ユニット3は、電力を送電する送電通信ユニット3A、又は、電力を受電する受電通信ユニット3Bとして機能する。送電通信ユニット3Aと受電通信ユニット3Bとは、電力伝送通信装置100Bを構成する。
電力伝送通信装置100Bにおいて、送電通信ユニット3Aの第1電極20及び第2電極30と、受電通信ユニット3Bの第1電極20及び第2電極30とは、電力伝送可能に対向し、Z軸方向に所定の間隔Dを有して配置されている。
電力伝送通信装置100Bにおいて、送電通信ユニット3AのUFMA80と、受電通信ユニット3BのUFMA80とは、通信可能に対向されている。例えば、送電通信ユニット3AのUFMA80の第1及び第2素子部81,83と受電通信ユニット3BのUFMA80の第1及び第2素子部81,83とは、XY平面に対して平行に配置され、かつ、XY平面座標において同じ位置に配置されている。また、送電通信ユニット3Aの第1及び第2素子部81,83と受電通信ユニット3Bの第1及び第2素子部81,83とは、Z軸方向に所定の間隔d1を有して配置されている。間隔d1は、第1電極20同士の間隔DからUFMA80のZ軸方向におけるそれぞれの高さhを引いた長さである(d1=D−2h)。
電力伝送通信装置100Bは、交流電源60と負荷70とを備えている。交流電源60は、送電通信ユニット3Aの第1電極20に電線22とインダクタ21とを介して接続され、第2電極30に電線32とインダクタ31とを介して接続されている。交流電源60は、送電通信ユニット3Aの第1及び第2電極20、30に交流電力を供給する。
負荷70は、受電通信ユニット3Bの第1電極20に電線22とインダクタ21とを介して接続され、第2電極30に電線32とインダクタ31とを介して接続されている。負荷70は、受電通信ユニット3Bの第1及び第2電極20、30から交流電力を受電する。
次に、電力伝送通信装置100Bの動作例について説明する。送電通信ユニット3Aは、交流電源60から交流電力が供給されると、電界結合により受電通信ユニット3Bに非接触で交流電力を供給する。受電通信ユニット3Bは、送電通信ユニット3Aから供給された交流電力を受電して、蓄電池である負荷70に蓄電する。
送電通信ユニット3Aは、信号入出力回路50から電気信号が出力されると、UFMA80から受電通信ユニット3BのUFMA80に電波を送信する。受電通信ユニット3Bは、送電通信ユニット3Aから送信された電波をUFMA80により受信し、電気信号を信号入出力回路50に出力する。また、受電通信ユニット3Bは、信号入出力回路50から電気信号が出力されると、UFMA80から送電通信ユニット3AのUFMA80に電波を送信する。送電通信ユニット3Aは、受電通信ユニット3Bから送信された電波をUFMA80により受信し、電気信号を信号入出力回路50に出力する。
次に、電力伝送通信装置100Bの動作特性について説明する。図23は、実施形態2に係る30MHz帯の電力伝送特性(S21)を示す図である。図24は、実施形態2に係る1GHz帯の通信通過特性(S43)を示す図である。図25は、実施形態2に係る1GHz帯の通信反射特性(S33)を示す図である。図26は、実施形態2に係る30MHz帯の通信反射特性(S33)を示す図である。図27は、実施形態2に係る1GHz帯のアイソレーション特性(S31)を示す図である。図28は、実施形態2に係る30MHz帯のアイソレーション特性(S31)を示す図である。図29は、実施形態2に係る1GHz帯の電力反射特性(S11)を示す図である。図30は、実施形態2に係る30MHz帯の電力反射特性(S11)を示す図である。
この例では、UFMA80から送信する電波の周波数を1GHz帯とする。また、送電通信ユニット3Aと受電通信ユニット3Bとにおける第1電極20同士の間隔DをD=100mm(d1=28mm)、D=150mm(d1=78mm)、D=200mm(d1=128mm)又はD=300mm(d1=228mm)とする。
電力伝送通信装置100Bは、図23に示すように、電力伝送特性(S21)は、30MHz周辺の周波数において90%以上となることが確認できる。つまり、電力伝送通信装置100Bは、送電通信ユニット3Aの第1電極20と受電通信ユニット3Bの第1電極20とにUFMA80を設けても、電力伝送特性に影響がないことが確認できる。なお、図23の縦軸は、電力伝送特性(S21)を示し、横軸は、交流電源60から供給する交流電力の周波数を示す。
電力伝送通信装置100Bは、図24に示すように、通信通過特性(S43)が1GHz帯付近において、概ね15dB以下である。つまり、電力伝送通信装置100Bは、電力供給が通信に及ぼす影響が抑えられている。また、電力伝送通信装置100Bは、0.5GHz〜0.9GHz帯付近においてフラットな広帯域特性が得られている。なお、図24の縦軸は、通信通過特性(S43)を示し、横軸は、信号入出力回路50から出力する電気信号の周波数を示す。
電力伝送通信装置100Bは、図25及び図26に示すように、通信反射特性(S33)が、1GHz帯において広帯域に渡って0.5以下である。以下に示す表5には、送電通信ユニット3Aと受電通信ユニット3Bとにおける第1電極20同士の距離(間隔)Dごとに、通信反射特性(S33)が0.5以下となる周波数帯域と比帯域とを示している。また、比較例として、UFMA80を単体で用いた場合における周波数帯域と比帯域とを示している。表5によれば、電力伝送通信装置100Bは、UFMA80単体の比帯域より若干減少するが、実施形態1のスロットアンテナ40を用いた場合よりも比帯域が広くなることが確認できる。特に、電力伝送通信装置100Bは、間隔Dが広い場合に比帯域が広くなり有効であることが確認できる。なお、図25及び図26の縦軸は、通信反射特性(S33)を示し、横軸は、信号入出力回路50から出力する電気信号の周波数を示す。
電力伝送通信装置100Bは、図27及び図28に示すように、電力供給が通信に及ぼす影響を示すアイソレーション特性(S31)が、20dB以上である。つまり、電力伝送通信装置100Bは、電力供給が通信に及ぼす影響が抑えられている。なお、図27及び図28の縦軸は、アイソレーション特性(S31)を示し、横軸は、交流電源60から供給する交流電力の周波数を示す。
電力伝送通信装置100Bは、図29及び図30に示すように、1GHz帯及び30MHz帯において反射特性(S11)が0.5よりも小さくなり、反射波を抑制できることが確認できる。
次に、UFMA80から送信する電波の周波数を2GHz帯とする例について説明する。図31は、実施形態2に係る30MHz帯の電力伝送特性(S21)を示す図である。図32は、実施形態2に係る2GHz帯の通信通過特性(S43)を示す図である。図33は、実施形態2に係る2GHz帯の通信反射特性(S33)を示す図である。図34は、実施形態2に係る30MHz帯の通信反射特性(S33)を示す図である。図35は、実施形態2に係る2GHz帯のアイソレーション特性(S31)を示す図である。図36は、実施形態2に係る30MHz帯のアイソレーション特性(S31)を示す図である。図37は、実施形態2に係る2GHz帯の電力反射特性(S11)を示す図である。図38は、実施形態2に係る30MHz帯の電力反射特性(S11)を示す図である。
電力伝送通信装置100Bは、図31に示すように、電力伝送特性(S21)が、30MHz周辺の周波数において90%以上となることが確認できる。つまり、電力伝送通信装置100Bは、送電通信ユニット3Aの第1電極20と受電通信ユニット3Bの第1電極20とにUFMA80を設けても、電力伝送特性に影響がないことが確認できる。なお、図31の縦軸は、電力伝送特性(S21)を示し、横軸は、交流電源60から供給する交流電力の周波数を示す。
電力伝送通信装置100Bは、図32に示すように、周波数が1GHzよりも2GHzのほうがフラットな広帯域特性が得られている。なお、図32の縦軸は、通信通過特性(S43)を示し、横軸は、信号入出力回路50から出力する電気信号の周波数を示す。
電力伝送通信装置100Bは、図33及び図34に示すように、通信反射特性(S33)が2GHz帯において広帯域に渡って0.5以下である。以下に示す表6には、送電通信ユニット3Aと受電通信ユニット3Bとにおける第1電極20同士の距離(間隔)Dごとに、通信反射特性(S33)が0.5以下となる周波数帯域と比帯域とを示している。また、比較例として、UFMA80を単体で用いた場合における周波数帯域と比帯域とを示している。表6によれば、周波数が2GHzの電力伝送通信装置100Bは、周波数が1GHzの電力伝送通信装置100Bよりも比帯域が広くなることが確認できる。また、電力伝送通信装置100Bは、間隔Dが狭い場合でも比帯域が広くなり有効であることが確認できる。なお、図33及び図34の縦軸は、通信反射特性(S33)を示し、横軸は、信号入出力回路50から出力する電気信号の周波数を示す。
電力伝送通信装置100Bは、図35及び図36に示すように、電力供給が通信に及ぼす影響を示すアイソレーション特性(S31)が、一部の帯域(950MHz±50MHz)を除いて、2GHz帯、30MHz帯の両方で30dB以上確保されている。つまり、電力伝送通信装置100Bは、電力供給が通信に及ぼす影響が抑えられている。なお、図35及び図36の縦軸は、アイソレーション特性(S31)を示し、横軸は、交流電源60から供給する交流電力の周波数を示す。
電力伝送通信装置100Bは、図37及び図38に示すように、1GHz帯及び30MHz帯において反射特性(S11)が0.5よりも小さくなり、反射波を抑制できることが確認できる。
以上のように、実施形態2に係る電力伝送通信ユニット3は、第1電極20又は第2電極30の少なくとも一方に形成されたU字型の金属板を介して電波を送信又は受信するU字型折返しモノポールアンテナ(UFMA)80を備える。電力伝送通信ユニット3は、従来のように、通信モジュールを電力伝送モジュールと同一平面上の別の場所に追加する必要がないので、小型化することができる。また、電力伝送通信ユニット3は、電力供給が通信に及ぼす影響を抑制することができ、通信が電力供給に及ぼす影響を抑制することができる。つまり、電力伝送通信ユニット3は、第1電極20とUFMA80を一体化しても、電力供給と通信とが干渉することを抑制できる。また、電力伝送通信ユニット3は、実施形態1の電力伝送通信装置100と比較して、概ね通信帯域を広くすることができる。
また、実施形態2に係る電力伝送通信装置100Bは、送電通信ユニット3Aの第1電極20及び第2電極30と、受電通信ユニット3Bの第1電極20及び第2電極30とを電力伝送可能に対向させ、かつ、送電通信ユニット3AのUFMA80と受電通信ユニット3BのUFMA80とを通信可能に対向させて配置する。これにより、電力伝送通信装置100Bは、送電通信ユニット3Aと受電通信ユニット3Bとの間で、電力伝送及び通信を行うことができる。
〔参考例〕
次に、参考例に係るスロットアンテナについて説明する。参考例では、スロットアンテナを第1及び第2電極20,30に形成せずにスロットアンテナ単体で用いる例について説明する。図39は、参考例に係る反射特性(S11)を示す図である。図40は、参考例に係る反射特性(S11)を示す図である。図41は、参考例に係る通信反射特性(S33)を示す図である。図42は、参考例に係る通信反射特性(S33)を示す図である。
図示しないスロットアンテナは、給電点がスリットの長辺の中央に設けられる。スロットアンテナは、スロットアンテナ単体で用いられる場合においても、給電点のオフセット量を変化させると共振周波数は上昇するものの広帯域化しており、給電点のオフセット量を0mmとすることで最大の帯域幅を得ることができる(図39及び図40参照)。
また、図41に示すように、1GHzの実測結果においてもシミュレーション結果と同様に、給電点のオフセット量を0mmとすることで最大の帯域幅が得られることを確認できる。また、周波数を1GHz、2GHz、3GHzと変化させた場合の通信反射特性(S33)は、図42に示すように、通信反射特性(S33)が0.5以下となる帯域が、2GHzの周波数を除いて30%前後の比帯域であった。これにより、周波数に応じて変化するスリットの長辺の長さは、通信反射特性(S33)に対してはあまり影響を与えないことが分かる。なお、図41の縦軸は、通信反射特性(S33)を示し、横軸は、交流電源60から供給する交流電力の周波数を示す。図42の縦軸は、通信反射特性(S33)を示し、横軸は、交流電源60から供給する交流電力の周波数を示す。
以上のように、参考例に係るスロットアンテナは、給電点がスリットの長辺の中央に設けられるので、スロットアンテナ単体で用いても通信周波数の帯域を広くすることができる。
〔実施形態3〕
次に、実施形態3に係る電力伝送通信装置100C及び電力伝送通信ユニット4について説明する。電力伝送通信装置100Cは、スロットアンテナ40Aに短絡部としての短絡ストリップ43を備える点で実施形態1と異なる。電力伝送通信装置100Cは、実施形態1の電力伝送通信装置100と同じ構成には同一符号を付し、詳細な説明を省略する。図43は、実施形態3に係る電力伝送通信ユニットの構成例を示す斜視図である。
スロットアンテナ40Aは、図43に示すように、スリット41Aにおける一方の長辺41aと他方の長辺41aとを電気的に接続する短絡ストリップ43を1つ有する。短絡ストリップ43は、矩形状(正方形を含む)に形成された導体であり、スリット41Aの長辺41aと直交する方向に沿って設けられる。この例では、短絡ストリップ43は、正方形に形成され、各辺の長さがスリット41Aの短辺41bの長さswと等しい長さである。短絡ストリップ43は、例えば、第1電極20と同じ素材で形成され、第1電極20のスロットアンテナ40Aと一体成型される。なお、短絡ストリップ43は、スロットアンテナ40Aに一部品として組み付けられてもよい。短絡ストリップ43は、例えば、スリット41Aの長辺41aの中央Qよりも端部側(短辺41b側)に位置する。つまり、短絡ストリップ43は、スリット41Aの長辺41aの半分(1/2)の位置よりも端部側に位置する。好ましくは、短絡ストリップ43は、長辺41aの半分のさらに半分の位置よりも端部側に位置する。より好ましくは、短絡ストリップ43は、長辺41aの中央Qから端部までの長さが75mmの場合、長辺41aの中央Qから端部側に60mm離れた場所に位置する。つまり、短絡ストリップ43は、長辺41aの中央Qから端部までの距離を「1」としたとき、中央Qから端部側に「4/5」離れた場所に位置する。なお、短絡ストリップ43は、スリット41Aの端部側に位置することが好ましいが、スリット41Aの短辺41bと電気的に接続されない。
電力伝送通信ユニット4は、電力を送電する送電通信ユニット4A、又は、電力を受電する受電通信ユニット4Bとして機能する。送電通信ユニット4Aと受電通信ユニット4Bとは、電力伝送通信装置100Cを構成する。
電力伝送通信装置100Cにおいて、送電通信ユニット4Aの第1電極20及び第2電極30と、受電通信ユニット4Bの第1電極20及び第2電極30とは、電力伝送可能に対向し、Z軸方向に所定の伝送距離(間隔)D1を有して配置されている。
また、電力伝送通信装置100Cにおいて、送電通信ユニット4Aのスロットアンテナ40Aと、受電通信ユニット4Bのスロットアンテナ40Aとは、通信可能に対向されている。例えば、送電通信ユニット4Aと受電通信ユニット4Bとは、各スロットアンテナ40Aが対向し、各スロットアンテナ40Aの短絡ストリップ43がスリット41Aの同じ端部側に位置している。なお、送電通信ユニット4Aと受電通信ユニット4Bとは、対向した状態で、各短絡ストリップ43が同じ端部側に位置することに限定されない。
次に、電力伝送通信装置100Cの動作特性について説明する。この例では、第1電極20の短辺20bの長さw1は、107.8mmとし、第1電極20の長辺20aの長さw2は、250mmとする。同様に、第2電極30の短辺30bの長さw1は、107.8mmとし、第2電極30の長辺30aの長さw2は、250mmとする。スロットアンテナ40Aは、スリット41Aの長辺41aの長さslを150mmとし、短辺41bの長さswを1mmとする。WPT(Wireless Power Transfer;無線電力伝送)帯域は、0MHz〜50MHzの範囲とし、NFC(Near Field radio Communication;近距離無線通信)帯域は、0.5GHz〜2.5GHzの範囲で解析を行った。また、スリット41Aの長辺41aの中央Q(0mm)から見て、長辺41aの一方側をプラスの長さとし、長辺41aの他方側をマイナスの長さとする。つまり、スリット41Aの中央Q(0mm)から見て、長辺41aの一方側を0mm〜75mmの長さとし、長辺41aの他方側を0mm〜−75mmの長さとする。この場合、短絡ストリップ43の位置sofを−10mm〜−60mmの範囲で変更し、給電点41cのオフセット量sfを0mm〜60mmの範囲で変更する。また、伝送距離D1を10mm〜200mmの範囲で変更する。
図44は、実施形態3に係る短絡位置変更におけるWPT帯域の電力反射特性(S11)を示す図である。図45は、実施形態3に係る短絡位置変更におけるWPT帯域の電力伝送特性(S21)を示す図である。図46は、実施形態3に係る短絡位置変更におけるWPT帯域の通信反射特性(S33)を示す図である。図47は、実施形態3に係る短絡位置変更におけるWPT帯域の通信通過特性(S43)を示す図である。図44の縦軸は電力反射特性(S11)を示し、図45の縦軸は電力伝送特性(S21)を示し、図46の縦軸は通信反射特性(S33)を示し、図47の縦軸は通信通過特性(S43)を示し、図44〜図47の横軸は、WPT帯域の周波数を示す。この例では、WPT帯域において短絡ストリップ43の位置sofを−10mm〜−60mmの範囲で変更する。また、スリット41Aの長辺41aの中央QからY軸方向にオフセットされる給電点41cのオフセット量sfを0mmとし、伝送距離D1を10mmとしている。
電力伝送通信装置100Cは、図44、図45、図46、図47に示すように、WPT帯域において短絡ストリップ43の位置sofを−10mm〜−60mmの範囲で変更しても電力反射特性(S11)、電力伝送特性(S21)、通信反射特性(S33)、通信通過特性(S43)にほとんど変化が見られなかった。これにより、電力伝送通信装置100Cは、短絡ストリップ43の位置sofがWPT帯域における動作特性にほとんど影響を及ばさないことが分かる。
図48は、実施形態3に係る給電位置変更におけるWPT帯域の電力反射特性(S11)を示す図である。図49は、実施形態3に係る給電位置変更におけるWPT帯域の電力伝送特性(S21)を示す図である。図50は、実施形態3に係る給電位置変更におけるWPT帯域の通信反射特性(S33)を示す図である。図51は、実施形態3に係る給電位置変更におけるWPT帯域の通信通過特性(S43)を示す図である。図48の縦軸は電力反射特性(S11)を示し、図49の縦軸は電力伝送特性(S21)を示し、図50の縦軸は通信反射特性(S33)を示し、図51の縦軸は通信通過特性(S43)を示し、図48〜図51の横軸は、WPT帯域の周波数を示す。この例では、WPT帯域において給電点41cのオフセット量sfを0mm〜60mmの範囲で変更する。また、短絡ストリップ43の位置sofを−60mmとし、伝送距離D1を10mmとしている。
電力伝送通信装置100Cは、図48、図49、図50、図51に示すように、WPT帯域において給電点41cのオフセット量sfを0mm〜60mmの範囲で変更しても電力反射特性(S11)、電力伝送特性(S21)、通信反射特性(S33)、通信通過特性(S43)に変化がほとんど見られなかった。これにより、電力伝送通信装置100Cは、給電点41cのオフセット量sfがWPT帯域における動作特性にほとんど影響を及ばさないことが分かる。
図52は、実施形態3に係る伝送距離変更におけるWPT帯域の電力反射特性(S11)を示す図である。図53は、実施形態3に係る伝送距離変更におけるWPT帯域の電力伝送特性(S21)を示す図である。図54は、実施形態3に係る伝送距離変更におけるWPT帯域の通信反射特性(S33)を示す図である。図55は、実施形態3に係る伝送距離変更におけるWPT帯域の通信通過特性(S43)を示す図である。図52の縦軸は電力反射特性(S11)を示し、図53の縦軸は電力伝送特性(S21)を示し、図54の縦軸は通信反射特性(S33)を示し、図55の縦軸は通信通過特性(S43)を示し、図52〜図55の横軸は、WPT帯域の周波数を示す。この例では、WPT帯域において伝送距離D1を10mm〜200mmの範囲で変更する。また、給電点41cのオフセット量sfを0mmとし、短絡ストリップ43の位置sofを−60mmとしている。
電力伝送通信装置100Cは、図52に示すように、WPT帯域において伝送距離D1を10mm〜200mmの範囲で変更しても所定の帯域で電力反射特性(S11)を0.5以下に抑えることができた。また、電力伝送通信装置100Cは、WPT帯域において伝送距離D1を10mm〜200mmの範囲で変更しても図53に示す電力伝送特性(S21)が図3における短絡ストリップ43を有しない電力伝送通信装置100の電力伝送特性(S21)とほとんど変化が見られなかった。これにより、短絡ストリップ43や給電点41cのオフセット量sfは、WPT帯域における電力伝送特性(S21)にほとんど影響を及ばさないことが分かる。また、電力伝送通信装置100Cは、図54、図55に示すように、WPT帯域において伝送距離D1を10mm〜200mmの範囲で変更しても通信反射特性(S33)、通信通過特性(S43)に変化がほとんど見られなかった。これにより、電力伝送通信装置100Cは、伝送距離D1がWPT帯域における通信特性にほとんど影響を及ばさないことが分かる。
図56は、実施形態3に係る短絡位置変更におけるNFC帯域の電力反射特性(S11)を示す図である。図57は、実施形態3に係る短絡位置変更におけるNFC帯域の電力伝送特性(S21)を示す図である。図58は、実施形態3に係る短絡位置変更におけるNFC帯域の通信反射特性(S33)を示す図である。図59は、実施形態3に係る短絡位置変更におけるNFC帯域の通信通過特性(S43)を示す図である。図60は、実施形態3に係る短絡位置と比帯域との関係を示す図である。図56の縦軸は電力反射特性(S11)を示し、図57の縦軸は電力伝送特性(S21)を示し、図58の縦軸は通信反射特性(S33)を示し、図59の縦軸は通信通過特性(S43)を示し、図56〜図59の横軸は、NFC帯域の周波数を示す。図60は、縦軸が比帯域を示し、横軸が短絡ストリップ43の位置sofを示し、通信反射特性(S33)が0.5以下となる帯域幅と、通信通過特性(S43)が最大値から−3dBまでの帯域幅との関係を示す。この例では、NFC帯域において短絡ストリップ43の位置sofを−10mm〜−60mmの範囲で変更する。また、給電点41cのオフセット量sfを0mmとし、伝送距離D1を10mmとしている。
電力伝送通信装置100Cは、図56、図57に示すように、NFC帯域において短絡ストリップ43の位置sofを−10mm〜−60mmの範囲で変更しても電力反射特性(S11)、電力伝送特性(S21)にほとんど変化が見られなかった。これにより、電力伝送通信装置100Cは、短絡ストリップ43の位置sofがNFC帯域における電力特性にほとんど影響を及ばさないことが分かる。
電力伝送通信装置100Cは、図58に示すように、通信反射特性(S33)の結果から1GHz帯と1.7GHz帯で多周波共振が得られていることが分かる。また、電力伝送通信装置100Cは、短絡ストリップ43の位置sofをスリット41Aの長辺41aの中央Qから端部側に遠ざけるに従って帯域幅(0.5≧S33)が広くなることが分かる。また、電力伝送通信装置100Cは、図59に示すように、通信通過特性(S43)の最大値から−3dBの帯域幅を確認すると、短絡ストリップ43の位置sofをスリット41Aの長辺41aの中央Qから端部側に遠ざけるに従って帯域幅が広くなることが分かる。このように、電力伝送通信装置100Cは、図60に示すように、短絡ストリップ43の位置sofをスリット41Aの長辺41aの中央Qから端部側に遠ざけるに従って比帯域を大きくすることができる。電力伝送通信装置100Cは、短絡ストリップ43の位置sofが−60mmのときに最大帯域を得ることができ、このときの比帯域は59.6%であった。また、電力伝送通信装置100Cは、短絡ストリップ43の位置sofの距離に応じて比帯域が単調に増加するので、短絡ストリップ43の位置sofにより帯域幅を微調整することができる。
図61は、実施形態3に係る給電位置変更におけるNFC帯域の電力反射特性(S11)を示す図である。図62は、実施形態3に係る給電位置変更におけるNFC帯域の電力伝送特性(S21)を示す図である。図63は、実施形態3に係る給電位置変更におけるNFC帯域の通信反射特性(S33)を示す図である。図64は、実施形態3に係る給電位置変更におけるNFC帯域の通信通過特性(S43)を示す図である。図65は、実施形態3に係る給電位置と比帯域との関係を示す図である。図61の縦軸は電力反射特性(S11)を示し、図62の縦軸は電力伝送特性(S21)を示し、図63の縦軸は通信反射特性(S33)を示し、図64の縦軸は通信通過特性(S43)を示し、図61〜図64の横軸は、NFC帯域の周波数を示す。図65は、縦軸が比帯域を示し、横軸が給電点41cのオフセット量sfを示し、通信反射特性(S33)が0.5以下となる帯域幅と、通信通過特性(S43)が最大値から−3dBまでの帯域幅との関係を示す。この例では、NFC帯域において給電点41cのオフセット量sfを0mm〜60mmの範囲で変更する。また、短絡ストリップ43の位置sofを−60mmとし、伝送距離D1を10mmとしている。
電力伝送通信装置100Cは、図61、図62に示すように、NFC帯域において給電点41cのオフセット量sfを0mm〜60mmの範囲で変更しても電力反射特性(S11)、電力伝送特性(S21)にほとんど変化が見られなかった。これにより、電力伝送通信装置100Cは、給電点41cのオフセット量sfがNFC帯域における電力特性にほとんど影響を及ばさないことが分かる。
電力伝送通信装置100Cは、図63、図64に示すように、給電点41cがスリット41Aの長辺41aの中央Qに近いほど通信反射特性(S33)及び通信通過特性(S43)の帯域幅が広い。これにより、電力伝送通信装置100Cは、図65に示すように、給電点41cをスリット41Aの長辺41aの中央Qに設定することにより、比帯域を大きくすることができる。なお、通信反射特性(S33)において、比帯域の最大値は、82.3%であり、給電点41cのオフセット量sfが0mmではなく15mmの場合であった。これは、短絡ストリップ43の追加によって乱れた整合が15mmのオフセット位置で最良となるためと考えられる。
図66は、実施形態3に係る伝送距離変更におけるNFC帯域の電力反射特性(S11)を示す図である。図67は、実施形態3に係る伝送距離変更におけるNFC帯域の電力伝送特性(S21)を示す図である。図68は、実施形態3に係る伝送距離変更におけるNFC帯域の通信反射特性(S33)を示す図である。図69は、実施形態3に係る伝送距離変更におけるNFC帯域の通信通過特性(S43)を示す図である。図70は、実施形態3に係る伝送距離と比帯域との関係を示す図である。図66の縦軸は電力反射特性(S11)を示し、図67の縦軸は電力伝送特性(S21)を示し、図68の縦軸は通信反射特性(S33)を示し、図69の縦軸は通信通過特性(S43)を示し、図66〜図69の横軸は、NFC帯域の周波数を示す。図70は、縦軸が比帯域を示し、横軸が伝送距離D1を示し、通信反射特性(S33)が0.5以下となる帯域幅と、通信通過特性(S43)が最大値から−3dBまでの帯域幅との関係を示す。この例では、NFC帯域において伝送距離D1を10mm〜200mmの範囲で変更する。また、短絡ストリップ43の位置sofを−60mmとし、給電点41cのオフセット量sfを0mmとしている。
電力伝送通信装置100Cは、図66、図67に示すように、NFC帯域において伝送距離D1を10mm〜200mmの範囲で変更しても電力反射特性(S11)、電力伝送特性(S21)にほとんど変化が見られなかった。これにより、電力伝送通信装置100Cは、伝送距離D1がNFC帯域における電力特性にほとんど影響を及ばさないことが分かる。
電力伝送通信装置100Cは、図68に示す通信反射特性(S33)、図69に示す通信通過特性(S43)によれば、電力供給が通信に及ぼす影響が抑えられ、フラットな通信特性が得られており帯域幅が広くなっている。電力伝送通信装置100Cは、上述した電力伝送通信装置100Aと同様の特性を示しているが、図17に示す電力伝送通信装置100Aの通信反射特性(S33)と比較すると共振点が新たに生じたことが分かる。電力伝送通信装置100Cは、図70に示すように、伝送距離D1を変更しても比帯域が大きく変化しなかった。
以上のように、実施形態3に係る電力伝送通信装置100Cは、スロットアンテナ40Aが、スリット41Aにおける一方の長辺41aと他方の長辺41aとを電気的に接続する短絡ストリップ43を有する。これにより、電力伝送通信装置100Cは、帯域幅を微調整することができると共に比帯域を大きくすることができる。
また、電力伝送通信装置100Cは、短絡ストリップ43が、スリット41Aの長辺41aと直交する方向に沿って設けられ、スリット41Aの長辺41aの中央Qよりも端部側に位置する。これにより、電力伝送通信装置100Cは、短絡ストリップ43がスリット41Aの長辺41aの中央Qに位置する場合よりも比帯域を大きくすることができる。
〔参考例〕
次に、参考例に係る短絡ストリップ43Bを有したスロットアンテナ40Bについて説明する。スロットアンテナ40Bは、上述した電力を伝送する第1及び第2電極20,30に設けられず、スロットアンテナ単体で用いられる点で実施形態3と異なる。スロットアンテナ40Bは、図71に示すように、矩形状の金属板101に形成され、上述のスロットアンテナ40Aと同様に構成される。例えば、スロットアンテナ40Bは、スリット41Bにおける一方の長辺41aと他方の長辺41aとを電気的に接続する短絡ストリップ43Bを1つ有する。短絡ストリップ43Bは、矩形状(正方形を含む)に形成された導体であり、スリット41Bの長辺41aと直交する方向に沿って設けられる。この例では、短絡ストリップ43Bは、正方形に形成され、各辺の長さがスリット41Bの短辺41bの長さswと等しい長さである。短絡ストリップ43Bは、例えば、金属板101と同じ素材で形成され、スロットアンテナ40Bと一体成型される。なお、短絡ストリップ43Bは、スロットアンテナ40Bに一部品として組み付けられてもよい。短絡ストリップ43Bは、例えば、スリット41Bの長辺41aの中央Qよりも端部側(短辺41b側)に位置する。つまり、短絡ストリップ43Bは、スリット41Bの長辺41aの半分(1/2)の位置よりも端部側に位置する。好ましくは、短絡ストリップ43Bは、長辺41aの半分のさらに半分の位置よりも端部側に位置する。より好ましくは、短絡ストリップ43Bは、長辺41aの中央Qから端部までの長さが75mmの場合、長辺41aの中央Qから端部側に60mm離れた場所に位置する。つまり、短絡ストリップ43Bは、長辺41aの中央Qから端部までの距離を「1」としたとき、中央Qから端部側に「4/5」離れた場所に位置する。
次に、スロットアンテナ40Bの動作特性について説明する。この例では、金属板101の短辺20bの長さw1は、107.8mmとし、金属板101の長辺20aの長さw2は、250mmとする。スロットアンテナ40Bは、スリット41Bの長辺41aの長さslを150mmとし、短辺41bの長さswを1mmとする。NFC帯域は、0.5GHz〜3.0GHzの範囲で解析を行った。また、スリット41Bの長辺41aの中央Q(0mm)から見て、長辺41aの一方側をプラスの長さとし、長辺41aの他方側をマイナスの長さとする。つまり、スリット41Bの中央Q(0mm)から見て、長辺41aの一方側を0mm〜75mmの長さとし、長辺41aの他方側を0mm〜−75mmの長さとする。この場合、短絡ストリップ43Bの位置sofを−10mm〜−70mmの範囲で変更し、給電点41cのオフセット量sfを0mm〜70mmの範囲で変更する。
図72は、参考例に係る短絡位置変更におけるNFC帯域の通信反射特性(S11)を示す図である。図72の縦軸は通信反射特性(S11)を示し、図72の横軸は、NFC帯域の周波数を示す。この例では、NFC帯域において短絡ストリップ43Bの位置sofを−10mm〜−70mmの範囲で変更する。また、給電点41cのオフセット量sfを0mmとしている。スロットアンテナ40Bは、図72に示すように、NFC帯域において短絡ストリップ43Bの位置sofを−10mm〜−70mmの範囲で変更した場合、短絡ストリップ43Bの位置sofをスリット41Bの長辺41aの中央Qから端部側に遠ざけるに従って帯域幅(0.5≧S11)が広くなる傾向を有することが分かる。スロットアンテナ40Bは、短絡ストリップ43Bの位置sofが−60mmのときに最大帯域を得ることができ、このときの比帯域は61.3%であった。
図73は、参考例に係る給電位置変更におけるNFC帯域の通信反射特性(S11)を示す図である。図73の縦軸は通信反射特性(S11)を示し、図73の横軸は、NFC帯域の周波数を示す。この例では、NFC帯域において給電点41cのオフセット量sfを0mm〜70mmの範囲で変更する。また、短絡ストリップ43Bの位置sofを−60mmとしている。スロットアンテナ40Bは、図73に示すように、NFC帯域において給電点41cのオフセット量sfを0mm〜70mmの範囲で変更した場合、スロットアンテナ40Bは、給電点41cがスリット41Bの長辺41aの中央Qに近いほど通信反射特性(S11)の帯域幅が広くなった。これにより、スロットアンテナ40Bは、給電点41cをスリット41Bの長辺41aの中央Qに設定することにより、比帯域を大きくすることができる。
以上のように、参考例に係るスロットアンテナ40Bは、スロットアンテナ40B単体で構成され、スリット41Bにおける一方の長辺41aと他方の長辺41aとを電気的に接続する短絡ストリップ43Bを有する。これにより、スロットアンテナ40Bは、帯域幅を微調整することができると共に比帯域を大きくすることができる。
また、スロットアンテナ40Bは、短絡ストリップ43Bが、スリット41Bの長辺41aと直交する方向に沿って設けられ、スリット41Bの長辺41aの中央Qよりも端部側に位置する。これにより、スロットアンテナ40Bは、短絡ストリップ43Bがスリット41Bの長辺41aの中央Qに位置する場合よりも比帯域を大きくすることができる。また、スロットアンテナ40Bは、給電点41cがスリット41Bの長辺41aの中央Qに設けられるので、比帯域を大きくすることができる。