JP6430409B2 - ガラス板の製造方法及びガラス板 - Google Patents

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Description

本発明は、ガラス板の製造方法及びガラス板に関する。
従来、ガラス板に対し、その用途に適した特性を付与する目的で、様々な表面処理が行われている。例えば、耐摩耗性等の高い機械的強度を有するガラス板を得るために、ガラス板の表面を緻密化するような表面処理も開示されている。例えば、特許文献1には、ガラス転移点以上の温度を有するガラス表面に、酸性の水溶液又は該水溶液から発生する蒸気を接触させることによって、緻密な表面構造を有するガラスを得る表面処理方法が提案されている。
特開平11−278875号公報
本発明者らの鋭意研究により、従来の表面処理方法によって形成された緻密構造を有するガラス板に対し、例えば一般的なソーダライムガラスの風冷強化温度(約650℃)で熱処理が施されると、その緻密構造が維持されないという課題が存在することが明らかになった。すなわち、緻密構造によって得られていたガラス板の特性が、熱処理によって大きく変化してしまうという課題があった。
そこで、本発明は、緻密構造を有するガラス板であって、熱処理が施された場合でもその緻密構造を維持することが可能なガラス板を提供することを目的とする。なお、以下、説明の便宜上、熱処理によっても緻密構造が維持されることを、緻密構造が耐熱性を有するとの内容で表現することがある。
本発明は、
改質された表面を有するガラス板を製造する方法であって、
ガラス板の少なくとも一方の主面に対して、フッ化水素(HF)ガス、塩化水素(HCl)ガス及び水蒸気を接触させるガス接触工程を含み、
前記ガス接触工程で使用される前記フッ化水素(HF)ガスを含むガスにおいて、フッ化水素(HF)ガスに対する水蒸気の体積比(水蒸気の体積/HFガスの体積)が8以上である、
ガラス板の製造方法を提供する。
本発明は、さらに、
少なくとも一方の主面に緻密構造を有するガラス板であって、
50℃、0.1質量%のフッ化水素酸をエッチング液として用いた場合の前記主面のエッチングレートを熱処理前ER(nm/min)とし、
前記ガラス板を、前記主面の温度が室温から前記ガラス板のガラス転移点+95℃になるまで220秒間かけて加熱し、その直後に室温で自然冷却した後に、50℃、0.1質量%のフッ化水素酸をエッチング液として用いた場合の前記主面のエッチングレートを熱処理後ER(nm/min)とし、かつ、
熱処理による前記主面のエッチングレートの変化量をΔER(nm/min)とした場合に、
熱処理前ER<1.5(nm/min)、及び
ΔER=熱処理後ER−熱処理前ER<4.0(nm/min)
を満たす、ガラス板を提供する。
本発明の製造方法では、ガス接触工程により、ガラス板の少なくとも一方の主面に対し、緻密構造を形成するための処理と、その緻密構造の耐熱性を高めるための処理との両方を実現することができる。したがって、本発明の製造方法によれば、少なくとも一方の主面に緻密構造を有しており、熱処理が施された場合でもその緻密構造を維持することが可能なガラス板を製造することができる。
本発明のガラス板は、少なくとも一方の主面に緻密構造を有しており、その主面は緻密構造によって、熱処理が施される前の状態で1.5nm/min未満の低いエッチングレートを有している。さらに、本発明のガラス板の前記主面は、熱処理前後でのエッチングレートの変化量が小さく抑えられている。すなわち、本発明のガラス板は、熱処理が施された後でも、その主面に設けられている緻密構造を維持できる。
本発明のガラス板の製造方法を実施できる装置の一例を示す模式図である。 実施例及び比較例で用いた装置を示す模式図である。 実施例1のガラス板の表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。 実施例4のガラス板の表面のSEM写真である。 比較例6のガラス板の表面のSEM写真である。 比較例7のガラス板の表面のSEM写真である。
(実施形態1)
本発明のガラス板の製造方法の実施形態について説明する。本実施形態のガラス板の製造方法は、改質された表面を有するガラス板を製造する方法であって、ガラス板の少なくとも一方の主面に対して、フッ化水素(HF)ガス、塩化水素(HCl)ガス及び水蒸気を接触させるガス接触工程を含む。なお、ガス接触工程で使用されるHFガスを含むガスは、HFガスに対する水蒸気の体積比(水蒸気の体積/HFガスの体積)が8以上となるように調整されている。
本実施形態の製造方法におけるガス接触工程によれば、HFガスを接触させたガラス板の前記主面に、平滑な脱アルカリ層が形成される。さらに、このガス接触工程では、HFガスと共に、HFガスの8倍以上もの体積を有する水蒸気もガラス板の前記主面に接触させる。このような、HFガスに対する水蒸気の体積比が高いガスを前記主面に接触させることにより、脱アルカリ層が形成されている部分に緻密構造を形成できる。このようなガスの接触によってガラス板の表面に脱アルカリ層及び緻密構造が形成されるメカニズムについては、後述する。
ガス接触工程の第1の例について説明する。
ガス接触工程の第1例において用いられるガスは、HFガス、HClガス及び水蒸気を含む混合ガスである。すなわち、ガス接触工程において、ガラス板の少なくとも一方の主面に対して、HFガス、HClガス及び水蒸気を含む混合ガスを接触させる。混合ガスは、ガラス板の表面と1回だけ接触させてもよいし、複数回に分けて接触させてもよい。
混合ガスに含まれるHFガスの濃度は、0.5〜6vol%が好ましく、1〜5vol%がより好ましい。なお、混合ガスに含まれるHFとして、反応途中でHFになる物質、すなわち結果としてHFを生成する物質も用いることができる。混合ガスにおけるHFガスの濃度が高すぎると、ガラス板の表面において凹凸形状の形成が促進され、緻密構造の形成が困難となる場合がある。一方、混合ガスにおけるHFガスの濃度が低すぎると、緻密構造の形成に寄与する脱水縮合(詳細は後述する)が十分に促進されない場合がある。
混合ガスに含まれるHClガスの濃度は、0.1〜15vol%が好ましく、0.2〜5vol%がより好ましく、0.25vol%以上とすることがさらに好ましい。HClガスの濃度が高すぎると、混合ガスの取り扱いに注意を要するようになったり、設備にダメージを与えたりする。一方、混合ガスにおけるHClの濃度が低すぎると、耐熱性の改善が得られにくくなる場合がある。なお、混合ガスに含まれるHClとして、反応途中でHClになる物質、すなわち結果としてHClを生成する物質も用いることができる。
混合ガスは、さらに水蒸気を含んでいる。混合ガスは、HFガスに対する水蒸気の体積比(水蒸気の体積/HFガスの体積)が8以上となるように、水蒸気を含む必要がある。水蒸気の体積がHFガスの体積の8倍以上である混合ガスを用いることにより、ガラス板の表面に凹凸形状を形成することなく、平滑な緻密構造(緻密化層)を形成することができる。混合ガスとガラスとの接触によって、ガラスに含まれるアルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンと、混合ガス中の水蒸気や雰囲気中の水分に起因するプロトン(H)、水(HO)及びオキソニウムイオン(H)等とのイオン交換が行われる。そして、プロトン(H)、水(HO)及びオキソニウムイオン(H)等の種々の状態でガラス中に入り込んだ水蒸気は、その後、脱水縮合によってガラスから抜け出す。水蒸気の量をHFガスの量の8倍以上とすることにより、HFによるガラスのエッチング反応が抑制され、その結果、ガラス板の表面に平滑な緻密構造が形成される。なお、混合ガスにおける水蒸気の濃度は特には限定されないが、水蒸気の量がHFガスの量の8倍未満であれば、HFによるガラスのエッチング反応が進み、結果として、ガラス板の表面に凹凸が形成される場合がある。このような凹凸がガラス板の表面に存在すると、汚れがガラス板の表面に付着する原因となったり、また、アルカリパシベーションが低下してガラス板の内部からアルカリが流出しやすくなったりする。混合ガスにおいて、酸性ガスを除いた残りの全てを水蒸気としてもよい。上述のとおり、HFガス及びHClガスの最小濃度は、それぞれ、0.5vol%及び0.1vol%であることが好ましいので、HFガスに対する水蒸気の体積比を198.8(99.4/0.5=198.8)以下とすることができる。
混合ガスは、HFガス及びHClガス以外のガスを含んでいてもよい。例えば、希釈ガスとしてNやアルゴン等の不活性ガスが含まれていてもよい。
本発明者らは、ガラス板の表面に上記混合ガスを接触させることによって、上記のようにガラス板の表面に緻密構造を形成し、かつ、その緻密構造の耐熱性を強化させることができる理由について、次のように考察している。
HF、HCl及び水蒸気を含む混合ガスをガラス板の表面に接触させると、イオン交換により、混合ガス中の水蒸気や雰囲気中の水分が、プロトン(H)、水(HO)及びオキソニウムイオン(H)等の種々の状態で、ガラス中に入り込みやすくなる。
HFは、ガラスの表面に接触すると、ガラスの基本構造であるSi−O結合を切断したり(以下の反応式(1−1)及び(1−2))、脱アルカリ反応を生じさせたりする(以下の反応式(2)及び(3))。この脱アルカリ反応によって、ガラス板の表面に脱アルカリ層が形成される。なお、これらの反応では、ガラスの浸食や再析出等の現象も複雑に生じる。
≡Si−O−Si≡ + HF ⇔ ≡Si−OH + F−Si≡ (1−1)
4HF + SiO(glass) ⇔ SiF↑ + 2HO (1−2)
HF + HO ⇔ H + F (2)
≡Si−ONa+ H+ F ⇔ ≡Si−OH + HO + NaF (3)
混合ガスの供給が停止した後、ガラス中に生成したシラノール基が脱水されて結合していく脱水縮合反応(以下の反応式(4))が起きていると考えられる。本実施形態の製造方法において用いられる混合ガスには、HFガスの体積の8倍以上もの体積を有する水蒸気が含まれているので、HFによるガラスのエッチング反応が抑制され、凹凸形状の形成よりも緻密構造の形成が支配的となり、その結果、ガラス板に形成された脱アルカリ層に緻密構造が形成される。
≡Si−OH + HO−Si≡ ⇒ ≡Si−O−Si≡ + HO (4)
ここで、上記の緻密構造形成のメカニズムから、本実施形態でガラス板の主面に形成される緻密構造を、「ガラス板がその主面に緻密構造を有するとは、ガラス板の主面から厚さ方向に20nmの深さまでの範囲(以下、主面付近)において、Siに対するプロトンの比(プロトン比)の平均値が10未満であることである」と特定することも可能である。上記メカニズムによれば、HFの作用によりガラスの基本構造であるSi−O結合が切断されて、ガラス板の主面付近にシラノール基が増加し、その結果、主面付近のプロトン数が増加すると考えられる。上記のとおり、緻密構造はシラノール基の脱水縮合が促進されることによって形成されるので、主面付近の脱水縮合が促進されるほど、すなわちプロトン比が小さいほど緻密度合が高いと判断できる。したがって、プロトン比で緻密度合を表すことが可能であり、ここでは、主面付近のプロトン比の平均値が10未満であることを、ガラス板の主面が緻密構造を有するとする。以下の緻密構造についても同様である。なお、プロトン比の平均値は、次の方法で求められる。まず、SIMS(2次イオン質量分析法)によって、深さ方向におけるシリコンの強度に対するプロトンの強度比を求める。分析には、ION−TOF社製の「TOF−SIMS 5」を用いることができる。1次イオンにはBi3+イオンを用い、スパッタリングには、Csイオンを用いる。Csピーク面積をプロトンの強度とし、CsSiピーク面積をシリコンの強度とする。深さは、触針式段差計によりスパッタリング後の深さを測定し、スパッタ時間から換算して求める。次に、シリコンの強度に対するプロトンの強度比の深さ方向のプロファイルから、最表面から深さ20nmまでの平均値を求める。
混合ガス中のHClガスの触媒作用によって、ガラス板の表面部分に形成された脱アルカリ層の脱水縮合反応がさらに促進されて、強固なSiO骨格が形成される。その結果、ガラス板の緻密構造が形成されている表面の耐熱性が向上すると考えられる。
次に、ガス接触工程の第2の例について説明する。第2の例では、HFガスとHClガスとを別々に、ガラス板の表面に接触させる。すなわち、ガス接触工程が、HFガス接触工程と、HClガス接触工程とを含む。HFガス接触工程では、HFガスを含みかつHFガス以外の酸性ガスを含まない第1ガスを、ガラス板の少なくとも一方の主面に対して接触させる。HClガス接触工程では、HClを含みかつHClガス以外の酸性ガスを含まない第2ガスを、前記ガラス板の少なくとも一方の前記主面に対して接触させる。HFガス接触工程とHClガス接触工程との順番は特には限定されない。HFガス接触工程の後にHClガス接触工程を実施してもよいし、HClガス接触工程の後にHFガス接触工程を実施してもよい。また、HFガス接触工程及びHClガス接触工程の回数も、特には限定されない。したがって、例えば、HFガス接触工程→HClガス接触工程→HClガス接触工程の順で実施されてもよい。
ガラス板の表面に第1ガスを接触させることによって、ガラス板の表面に脱アルカリ層を形成し、かつ、その脱アルカリ層の表面部分を緻密構造とすることができる。そのメカニズムは、第1の例の場合と同様であると考えられる。すなわち、反応式(1−1)、(1−2)、(2)、(3)及び(4)の反応、さらにこれらの反応において複雑に生じるガラスの浸食や再析出等の現象によって、ガラス板の表面に、緻密構造を有する脱アルカリ層が形成されると考えられる。
第1ガスに含まれるHFガスの濃度は0.5〜6vol%が好ましく、1〜5vol%がより好ましい。なお、第1ガスに含まれるHFとして、反応途中でHFになる物質、すなわち結果としてHFを生成する物質も用いることができる。第1ガスにおけるHFの濃度が高すぎると、ガラス板の表面の凹凸形状の形成が促進され、緻密構造の形成が困難となる場合がある。一方、第1ガスにおけるHFの濃度が低すぎると、脱アルカリ反応が十分に進行しない場合がある。
第1ガスは、さらに水蒸気を含んでいる。第1ガスは、HFガスに対する水蒸気の体積比(水蒸気の体積/HFガスの体積)が8以上となるように、水蒸気を含む必要がある。水蒸気の体積がHFガスの体積の8倍以上である第1ガスを用いることにより、ガラス板の表面に凹凸形状を形成することなく平滑な緻密構造(緻密化層)を形成することができる。第1ガスとガラスとの接触によって、ガラスに含まれるアルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンと、第1ガス中の水蒸気や雰囲気中の水分に起因するプロトン(H)、水(HO)及びオキソニウムイオン(H)等とのイオン交換が行われる。そして、プロトン(H)、水(HO)及びオキソニウムイオン(H)等の種々の状態でガラス中に入り込んだ水蒸気は、その後、脱水縮合によってガラスから抜け出す。水蒸気の量がHFガスの量の8倍以上となると、HFによるガラスのエッチング反応が抑制され、凹凸形状の形成よりも緻密構造の形成が支配的となり、その結果、ガラス板の表面に平滑な緻密構造が形成される。なお、第1ガスにおける水蒸気の濃度は特には限定されないが、水蒸気の量がHFガスの量の8倍未満であれば、HFによるガラスのエッチング反応が進むため、ガラス板の表面に凹凸が形成される場合がある。このような凹凸がガラス板の表面に存在すると、汚れがガラス板の表面に付着する原因となったり、また、アルカリパシベーション性が低下してガラス板の内部からアルカリが流出しやすくなったりする。第1ガスにおいて、酸性ガスを除いた残りの全てを水蒸気としてもよい。上述のように、HFガスの最小濃度は0.5vol%であることが好ましいので、HFガスに対する水蒸気の体積比を199(99.5/0.5=199)以下とすることができる。なお、HFがガラスの表面に接触することによって起こる反応は、第1の例の場合と同様である(上記反応式(1−1)、(1−2)、(2)及び(3))。
第1ガスは、HFガス及び水蒸気以外のガスを含んでいてもよい。例えば、希釈ガスとしてNやアルゴン等の不活性ガスが含まれていてもよい。
HClガス接触工程は、HFガス接触工程で形成される緻密構造の耐熱性を高めるための工程である。ガラス板の少なくとも一方の主面に、第2ガスを接触させることによって、第2ガスに含まれるHClガスの作用によりガラス板の表面に設けられる緻密構造の耐熱性を高めることができる。
第2ガス中のHClガスの作用について説明する。HFガス接触工程でガラス板の表面に形成される緻密構造は、シラノール基(≡Si−OH)を多く含んだ弱いガラス骨格を有すると想像される。HFガス接触工程とは別に実施されるHClガス接触工程で用いられるHClガスにより、この緻密構造部分の脱水縮合が促進されて強固なSiO骨格が形成され、その結果、緻密構造の耐熱性が向上すると考えられる。詳細に説明すると、ガラス板の表面にHFを接触させると、SiOからなるガラス骨格がエッチングされるモードと、ガラス中のNaとH(又はH)がイオン交換するモードとが進行する。HFとの接触が終了した後は、ガラス板の表面では、生成されたシラノール基(≡Si−OH)が、脱水縮合により≡Si−O−Si≡骨格を形成していく(上記反応式(4))。しかしながら、シラノール基は完全には脱水縮合されないため、第1ガスとだけ接触したガラス板の表面は、シラノール基を多数残したガラス構造、言い換えれば、水をたくさん含んだガラス骨格を有していると考えられる。HClガスには脱水縮合反応の触媒的作用があると考えられる。したがって、ガラス板の表面をHClガスに曝すことで、より短時間で効率的に脱水縮合反応が進んで緻密構造の耐熱性が向上すると考えられる。
第2ガスに含まれるHClガスの濃度は、0.1〜15vol%が好ましく、0.2〜5vol%がより好ましく、0.25vol%以上とすることがさらに好ましい。HClガスの濃度が高すぎると、第2ガスの取り扱いに注意を要するようになったり、設備にダメージを与えたりする。一方、第2ガスにおけるHClの濃度が低すぎると、耐熱性の改善が得られにくくなる場合がある。なお、第2ガスに含まれるHClとして、反応途中でHClになる物質、すなわち結果としてHClを生成する物質も用いることができる。
第2ガスは、水蒸気を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。ただし、水蒸気の量によっては、ヘイズ値が高くなる場合がある。したがって、目的のガラス板に求められるヘイズ値等の特性に応じて、第2ガス中の水蒸気の量を適宜調整することが望ましい。また、第2ガスは、HClガス以外の酸性ガスを含まなければ、HClガス及び水蒸気以外のガスを含んでいてもよい。例えば、希釈ガスとしてNやアルゴン等の不活性ガスが含まれていてもよい。
なお、上述のとおり、HClガス接触工程は、HFガス接触工程よりも前に実施されてもよいし、後に実施されてもよい。例えば、先にHClガス接触工程を実施して、その後にHFガス接触工程を実施した場合でも、HClガス接触工程において接触させた第2ガスにおけるHClガスのガラス板の表面への影響は、HFガス接触工程でガラス板の表面に緻密構造が形成された後も残ると考えられる。したがって、この場合でも、HClガス接触工程によってHFガス接触工程で形成される緻密構造の耐熱性を向上させることができる。ただし、HClガス接触工程が、HFガス接触工程よりも前に実施されると、脱水縮合が先に開始されることになるので、HClガス接触工程が、HFガス接触工程よりも後に実施する場合と比較して緻密構造が形成されにくくなる場合があるとの理由から、HClガス接触工程はHFガス接触工程よりも後に実施されることが好ましい。
ガス接触工程の第1の例及び第2の例では、共に、HFガス及びHClガスを接触させるガラス板の温度はガラス転移点+40〜ガラス転移点+120℃の範囲内であることが好ましく、ガラス転移点+70〜ガラス転移点+100℃の範囲内とすることがより好ましい。ガス接触時のガラス板の温度をより高く設定することにより、より高い耐熱性を有する緻密構造をガラス板の表面に形成できる。
ガス接触工程の第1の例及び第2の例では、ガスとガラス材料との接触時間は、特には限定されないが、例えば2〜8秒が好ましく、3〜6秒がより好ましい。接触時間が長すぎると、混合ガス又は第1ガスに含まれるHFガスにより、ガラス板の表面の凹凸形状の形成が促進され、緻密構造の形成が困難となる場合がある。一方、接触時間が短すぎると、HFガスによる脱アルカリ反応が不十分であったり、HClガスによる脱水縮合の促進が不十分であったりするため、緻密構造の形成が不十分となる場合がある。従って、これらの事情を考慮して、ガスとガラス材料との接触時間を決定することが望ましい。例えば混合ガスを複数回に分けてガラス板の表面に接触させる場合は、その処理の合計時間を例えば上記時間範囲内とするとよい。
ガス接触工程を経たガラス板を冷却することにより、ガラス板を得ることができる。冷却方法は、特には限定されず、公知のガラス板の製造方法によって実施される冷却方法を用いることができる。
本実施形態の製造方法によって製造されるガラス板は、緻密構造と高い耐熱性との両方を備えている。したがって、製造されたガラス板に対してさらなる熱処理が施された場合でも、緻密構造が維持される。
本実施形態のガラス板の製造方法は、例えばフロート法によるガラス板の製造に適用することが可能である。すなわち、本実施形態のガラス板の製造方法のガス接触工程は、溶融金属上で板状に成形された状態のガラス板の主面の少なくとも一方に、ガスを接触させることによって、実施してもよい。これは、例えば図1に示す装置を用いて実現できる。以下、本実施形態のガラス板の製造方法を、フロート法によるガラス板の製造に適用した例について説明する。
フロート窯11で溶融されたガラス材料(溶融ガラス)は、フロート窯11からフロートバス12に流れ出し、ガラスリボン(ガラス材料が板状に成形されたものであり、本実施形態のガラス板の製造方法における「ガラス板」に相当する。)10となって溶融錫(溶融金属)15上を移動して半固形となった後、ローラ17により引き上げられて徐冷炉13へと送り込まれる。徐冷炉13で固形化したガラスリボンは、図示を省略する切断装置によって所定の大きさのガラス板へと切断される。
溶融錫15上の高温状態のガラスリボン10の表面から所定距離を隔てて、所定個数の吹付部16(図示した装置では3つの吹付部16a,16b,16c)が、フロートバス12内に配置されている。これらの吹付部16a〜16cの少なくとも1つの吹付部から、ガラスリボン10上に連続的にガス(HFガス及びHClガスを含む混合ガス、HFガスを含む第1ガス、又は、HClガスを含む第2ガス)が供給される。吹付部16a〜16cの付近を通過する溶融錫15上のガラスリボン10の温度は、450〜630℃の範囲内に設定されている。
図1に示す装置においては、ガラス板を冷却する工程は徐冷炉13で実施される。
ガラス板には、フロート法が適用可能なガラス組成を有する公知のガラス材料を用いることができる。例えば一般的なソーダライムガラス及びアルミノシリケートガラス等を用いることができ、一般的にナトリウムが成分として含まれている。例えば、一般的なクリアガラスや低鉄ガラスなどを用いることができる。また、成形される板状のガラス材料の厚さは、製造するガラス板の厚さに応じて適宜決定されるため、特には限定されない。最終的に得られるガラス板の厚さは、特には限定されないが、例えば0.3〜25mmの厚さとできる。
本実施形態の製造方法によれば、ガラス板の表面に、特定のガスを接触させるという非常に簡便な処理を実施するだけで、耐熱性が向上した、緻密構造を有する脱アルカリ層を備えたガラス板を製造できる。また、本実施形態の製造方法は、上述のとおり、ガラス板の連続製造方法であるフロート法の製造ラインを利用して実施することも可能である。このように、本発明の製造方法によれば、従来の方法と比較して、製造効率を大幅に低下させることなく、かつ製造コストの上昇を低く抑えながら、より簡便に、緻密構造を有する脱アルカリ層を備えたガラス板を提供することができる。
ガス接触工程の第1の例及び第2の例では、ガラス板の一方の主面に対してガスの接触工程を行ったが、これに限定されず、ガラス板の両面に対して行ってもよい。この場合、両主面に緻密構造を有し、かつ、熱処理が施された場合でもその緻密構造を維持することが可能なガラス板を製造することができる。
(実施形態2)
本発明のガラス板の実施形態について説明する。本実施形態のガラス板は、少なくとも一方の主面に緻密構造を有している。この緻密構造は、例えば、実施形態1の製造方法によってガラス板の表面に形成され得る構造であり、高い耐熱性を有する。したがって、例えば風冷強化等の目的で熱処理が施される場合でも、緻密構造を維持できる。なお、緻密構造及びそれが形成されるメカニズム、さらには緻密構造の特定については、実施形態1で説明したとおりであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
本実施形態のガラス板について、50℃、0.1質量%のフッ化水素酸をエッチング液として用いた場合の前記主面のエッチングレートを熱処理前ER(nm/min)とする。また、本実施形態のガラス板を、前記主面の温度が室温から前記ガラス板のガラス転移点+95℃になるまで220秒間かけて加熱し、その直後に室温で自然冷却した後に、50℃、0.1質量%のフッ化水素酸をエッチング液として用いた場合の前記主面のエッチングレートを熱処理後ER(nm/min)とする。また、熱処理による前記主面のエッチングレートの変化量をΔER(nm/min)とする。このとき、本実施形態のガラス板は、
熱処理前ER<1.5(nm/min)、及び、
ΔER=熱処理後ER−熱処理前ER<4.0(nm/min)
を満たす。すなわち、本実施形態のガラス板は、熱処理が施された後でもエッチングレートが低い表面状態、すなわち緻密構造を維持する。
従来の方法で表面に形成された緻密構造を有する従来のガラス板は、その後に施される熱処理等で高温に曝されると、その緻密構造を維持することができない。これに対し、本実施形態のガラス板は、表面に形成された緻密構造を維持し得る程度の高い耐熱性を有している。したがって、本実施形態のガラス板は、熱処理が施される熱処理用のガラス板としての使用が可能であるので、その用途が広い。
ここでいう熱処理は、例えば風冷強化のための熱処理であってもよい。
本実施形態のガラス板は、様々な用途へ適用することが可能である。例えば、化学強化用ガラス板(化学強化処理が施されるガラス板)、高耐候性ガラス板、機能膜生成用ガラス板(表面に機能膜が生成されるガラス板)、シャワーブース用ガラス板、船舶用ガラス板等への適用が可能である。
例えば、化学強化用ガラス板には、アルカリイオン置換による化学強化処理によって生じる反りの抑制が求められる。本実施形態のガラス板は、その表面に緻密構造を有する脱アルカリ層を有していることにより、化学強化時の反りの発生を抑制することができる。
また、ヤケが発生しにくいことが求められる高耐候性ガラス板、シャワーブース用ガラス板及び船舶用ガラス板を得る場合、これらの用途のガラス板は、ガラス板の表面に緻密構造が形成されている本実施形態のガラス板であって、かつ、同一厚さ及び同一組成を有しかつ表面に緻密構造が形成されていないガラス板と比較してアルカリ溶出量が少ないものとするとよい。また、このようなガラス板は、アルカリ溶出量が少ないことから、機能膜生成用ガラス板としても好適である。ここで、機能膜の生成は、特に限定されないが、公知のスパッタリング法又は熱CVD法により生成することができる。この方法を用いて生成できる機能膜の一例として、低放射膜、熱線反射膜、光触媒膜、低反射膜、透明導電膜、電波遮蔽膜や紫外線/赤外線カット膜を、ガラス板の主面上に生成することができる。上記機能膜の一例のうち、低放射膜はガラス板の強化が可能であるため、このような機能膜が生成されたガラス板は、例えば、強化基準が設けられた建築用のガラス板に用いることができる。なお、強化した低放射膜の生成は、例えば、700℃付近の温度で3〜5分間加熱した後に、常温で急冷することで生成される。
実施形態2では、ガラス板の一方の主面が所定の緻密構造を有するガラス板についてのみ説明したが、これに限定されず、用途に応じてガラス板の両主面が緻密構造を有するガラス板とすることも可能である。すなわち、両主面において、熱処理前ER<1.5(nm/min)、及び、ΔER=熱処理後ER−熱処理前ER<4.0(nm/min)が満たされるガラス板を提供することも可能である。
以下、本発明について実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明は、本発明の要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
[ガラス板の製造方法]
(実施例1〜4)
フロート法によって、厚さ4mmのガラス板を製造した。まず、主なガラス組成が、質量%で、SiO:70.4%、Al:2.0%、CaO:8.6%、MgO:3.9%、NaO:13.6%、KO:1.2%、となるように調合したガラス材料を溶融し、フロートバスの溶融錫上で溶融したガラス材料をガラスリボンへと成形した。なお、このガラス材料のガラス転移点は555℃であった。本実施例では、ガラスリボンを切断して得た厚さ4mmのガラス板の一方の主面に対し、ガラス板製造ラインとは別のラインで、HFガス及びHClガスを別々にガラス板の表面に吹付けた。すなわち、HFガス及び水蒸気を含みかつHClガスを含まない第1ガスと、HClガスを含みかつHFガスを含まない第2ガスとを別々に、オフラインでガラス板に吹付けた。ガスの吹付け順は、第1ガス→第2ガスの順であった。本実施例におけるガスの吹付けには、図2に示すような、ガラス板を搬送する搬送機構21と、搬送されているガラス板22の表面にガスを吹付けることができる吹付部23とを備えた装置20を用いた。装置20には、搬送されるガラス板22を加熱できる加熱機構(図示せず)が設けられていた。ガラス板22は、所定の温度(630〜660℃の範囲内)に加熱された状態で、180℃に暖められたガスと所定の時間接触した。実施例1〜4における処理条件(吹付けたガスの成分)、HFガスに対する水蒸気の体積比(HO/HF)、ガス接触時のガラス板の温度、ガスの接触時間を表1に示す。なお、吹付けた各ガスには、希釈ガスとしてNガスが用いられた。すなわち、表1に示したガスの成分以外の残部は、全てNガスであった。HClガスには99.99%のHClガスを用いた。HFガスは、55質量%のフッ化水素酸を気化させたものであった。
(実施例5〜11)
実施例1〜4と同じ方法で作製したガラス板に対して、同じ装置20を用いてガスの吹付けを行った。ただし、実施例5〜11では、第1ガス及び第2ガスではなく、HFガス、HClガス及び水蒸気を含む混合ガスを吹付けた。なお、吹付けた各ガスには、希釈ガスとしてNガスが用いられた。すなわち、表1に示したガスの成分以外の残部は、全てNガスであった。HClガスには99.99%のHClガスを用いた。HFガスは、55質量%のフッ化水素酸を気化させたものであった。
(比較例1〜12)
実施例1〜11と同じ方法で作製したガラス板に対して、同じ装置20を用いてガスの吹付けを行った。ただし、比較例12のガラス板にはガスの吹付けを行わなかった。実施例1〜11と同様に、ガスの吹付けが行われた。各比較例における処理条件(吹付けたガスの成分)、HFガスに対する水蒸気の体積比(HO/HF)、ガス接触時のガラス板の温度、ガスの接触時間を表1に示す。なお、吹付けた各ガスには、希釈ガスとしてNガスが用いられた。すなわち、表1に示したガスの成分以外の残部は、全てNガスであった。HClガスには99.99%のHClガスを用いた。HFガスは、55質量%のフッ化水素酸を気化させたものであった。
[評価方法]
(熱処理前後のエッチングレートの測定)
実施例1〜11と、比較例1〜5及び8〜12のガラス板について熱処理を実施し、熱処理前後のエッチングレート(熱処理前ER(nm/min)及び熱処理後ER(nm/min))を測定し、エッチングレートの変化量(ΔER(nm/min))を算出した。結果を表1に示す。ガラス板に対して実施した熱処理の方法、及び、エッチングレートの測定方法は、以下のとおりである。
まず、熱処理について説明する。雰囲気温度を760℃に設定可能な電気炉に、50mm×50mmに切断されたガラス板のサンプルを、10枚セットした。ガラス板の表面温度は、炉に投入された直後から上昇した。サンプルのガラス板を、その表面温度が室温から650℃(ガラス板のガラス転移点(555℃)+95℃)に至るまで220秒間かけて加熱し、その直後に室温で自然冷却した。なお、ガラス転移点+95℃は、風冷強化温度を想定して設定された温度である。
次に、ガラス板の主面のエッチングレートの測定方法について説明する。50℃、0.1質量%のフッ化水素酸をエッチング液として用いた。このエッチング液にガラス板を浸漬し、5分毎のエッチング深さを測定した。エッチング深さ20nmを通過する時間を、前後2点のエッチング深さデータの内挿から求めた。求められた時間で20nmを割って、20nm到達時点のエッチングレート(nm/min)を算出した。このエッチングレートの測定は、熱処理前のガラス板及び熱処理後のガラス板の両方の主面に対して実施した。なお、エッチング量の測定は、エッチング前のガラス板の一部に耐フッ酸性のマスク剤を塗布し、エッチング後に形成される段差を測定することによって行った。段差の測定には、膜厚計(KLAテンコール社製、「アルファステップ500」)を用いた。
(熱処理前のヘイズ率)
実施例1〜11及び比較例1〜12のガラス板について、熱処理前に、ガードナー社製「ヘイズガードプラス」を用い、C光源を用いてヘイズ率を測定した。結果を表1に示す。
Figure 0006430409
本発明の製造方法の条件を全て満たしている実施例1〜11の製造方法によって製造されたガラス板は、熱処理前のエッチングレートが1.5nm/min未満と低く、表面に緻密構造が形成されていた。実施例1及び4のガラス板については、その表面のSEM写真(図3:実施例1のガラス板、図4:実施例4のガラス板)でも、表面が平滑な緻密構造を有していることが確認された。さらに、実施例1〜11のガラス板は、熱処理によるエッチングレートの変化量を4.0nm/min未満と小さく抑えることができた。すなわち、実施例1〜11の製造方法によって製造されたガラス板は、緻密構造を有し、かつ、熱処理後でもその緻密構造を維持できるガラス板であった。実施例1のガラス板について、実施形態1で説明した方法により主面付近のプロトン比の平均値を測定したところ、プロトン比の平均値は10未満であった。
一方、本発明の製造方法の条件を満たしていない比較例1〜12の製造方法によって製造されたガラス板は、主面に緻密構造を有さないガラス板、又は、熱処理前は主面に緻密構造を有しているものの熱処理によってその緻密構造が維持されないガラス板であった。
以下に、実施例及び比較例の結果をより詳しく考察する。
実施例1と比較例1、実施例4と比較例2とは、それぞれ、ガラス板へのHClガスの接触の有無以外は全て同じ条件であった。HClガスを接触させなかった比較例1及び2のガラス板は、実施例1及び4のガラス板よりも、熱処理後のエッチングレートが熱処理前よりも大きく上昇した。これは、HClガスを接触させなかったことにより、緻密構造の耐熱性を向上させることができなかったためであると考えられる。なお、実施例6及び7のガラス板と比較例8のガラス板との比較、並びに、実施例8のガラス板と比較例9のガラス板との比較でも、同様のことが確認できる。
なお、実施例2のガラス板では、接触させるHClガスの濃度が実施例1よりも低かったが、エッチングレートの変化量は実施例1とほぼ同じであり緻密構造の耐熱性を実現できた。また、実施例1と実施例3の比較によれば、HClガスを含むガスにおける水蒸気の有無は、ガラス板の耐熱性には大きな影響を及ぼさないと考えられる。
ガス接触時のガラス板の温度は、より高い方が望ましい。これは、660℃のガラス板にガスを接触させた実施例6のガラス板の方が、630℃のガラス板にガスを接触させた実施例8のガラス板よりもエッチングレートの変化量が小さいことからもわかる。また、ガラス板の温度がガラス転移点+40〜ガラス転移点+120℃の範囲を満たす実施例8のガラス板の方が、前記温度範囲を満たさない実施例9のガラス板よりも、エッチングレートの変化量が小さかった。
比較例6及び7では、HFガスを含むガスにおいて、水蒸気の体積がHFガスの体積の8倍を下回っていた。その結果、比較例6及び7のガラス板は、図5及び6に示すSEM写真(図5:比較例6のガラス板、図6:比較例7のガラス板)からも確認できるように、平滑な表面を有しておらず、また、比較例7のガラス板はヘイズ率も高かった。なお、比較例6及び7のガラス板については、平滑な表面を有していなかったため、エッチングレートの測定は実施しなかった。
本発明のガラス板は、熱処理が施された後でも、その主面に設けられている緻密構造を維持できる。本発明のガラス板は、例えば化学強化用ガラス板、耐候性ガラス板、機能膜生成用ガラス板、シャワーブース用ガラス板、船舶用ガラス板等の様々な用途に用いることが可能である。また、本発明のガラス板は、例えば風冷強化等の目的で熱処理が施される、熱処理用のガラス板としても好適である。

Claims (12)

  1. 改質された表面を有するガラス板を製造する方法であって、
    ガラス板の少なくとも一方の主面に対して、フッ化水素(HF)ガス、塩化水素(HCl)ガス及び水蒸気を接触させるガス接触工程を含み、
    前記ガス接触工程で使用される前記フッ化水素(HF)ガスを含むガスにおいて、フッ化水素(HF)ガスに対する水蒸気の体積比(水蒸気の体積/HFガスの体積)が8以上である、
    ガラス板の製造方法。
  2. 前記ガス接触工程は、ガラス転移点+40〜ガラス転移点+120℃の範囲内の温度を有するガラス板に対して実施される、
    請求項1に記載のガラス板の製造方法。
  3. 前記ガス接触工程において、前記ガラス板の少なくとも前記一方の主面に対して、フッ化水素(HF)ガス、塩化水素(HCl)ガス及び水蒸気を含む混合ガスを接触させる、請求項1に記載のガラス板の製造方法。
  4. 前記ガス接触工程が、フッ化水素(HF)ガス接触工程と、塩化水素(HCl)ガス接触工程とを含み、
    前記フッ化水素(HF)ガス接触工程では、フッ化水素(HF)ガス及び水蒸気を含みかつフッ化水素(HF)ガス以外の酸性ガスを含まない第1ガスを、前記ガラス板の少なくとも前記一方の主面に対して接触させ、
    前記塩化水素(HCl)ガス接触工程では、塩化水素(HCl)ガスを含みかつ塩化水素(HCl)ガス以外の酸性ガスを含まない第2ガスを、前記ガラス板の少なくとも前記一方の主面に対して接触させる、
    請求項1に記載のガラス板の製造方法。
  5. 少なくとも一方の主面に緻密構造を有するガラス板であって、
    50℃、0.1質量%のフッ化水素酸をエッチング液として用いた場合の前記主面のエッチングレートを熱処理前ER(nm/min)とし、
    前記ガラス板を、前記主面の温度が室温から前記ガラス板のガラス転移点+95℃になるまで220秒間かけて加熱し、その直後に室温で自然冷却した後に、50℃、0.1質量%のフッ化水素酸をエッチング液として用いた場合の前記主面のエッチングレートを熱処理後ER(nm/min)とし、かつ、
    熱処理による前記主面のエッチングレートの変化量をΔER(nm/min)とした場合に、
    熱処理前ER<1.5(nm/min)、及び
    ΔER=熱処理後ER−熱処理前ER<4.0(nm/min)
    を満たす、ガラス板。
  6. 前記ガラス板は、熱処理が施される熱処理用ガラス板であり、
    前記熱処理が風冷強化のための熱処理である、
    請求項5に記載のガラス板。
  7. 前記ガラス板は、化学強化処理が施される化学強化用ガラス板であり、
    前記ガラス板の少なくとも前記主面に脱アルカリ層が形成されており、
    前記脱アルカリ層の表面に前記緻密構造が形成されている、
    請求項5に記載のガラス板。
  8. 前記ガラス板は、高耐候性ガラス板であり、
    同一厚さ及び同一組成を有しかつ表面に緻密構造が形成されていないガラス板と比較してアルカリ溶出量が少ない、
    請求項5に記載のガラス板。
  9. 前記ガラス板は、前記主面上に機能膜が生成される機能膜生成用ガラス板であり、
    同一厚さ及び同一組成を有しかつ表面に緻密構造が形成されていないガラス板と比較してアルカリ溶出量が少ない、
    請求項5に記載のガラス板。
  10. 前記機能膜は、スパッタリング法又は熱CVD法により生成される、
    請求項9に記載のガラス板。
  11. 前記ガラス板は、シャワーブース用ガラス板であり、
    同一厚さ及び同一組成を有しかつ表面に緻密構造が形成されていないガラス板と比較してアルカリ溶出量が少ない、
    請求項5に記載のガラス板。
  12. 前記ガラス板は、船舶用ガラス板であり、
    同一厚さ及び同一組成を有しかつ表面に緻密構造が形成されていないガラス板と比較してアルカリ溶出量が少ない、
    請求項5に記載のガラス板。
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