JP6429326B2 - 溶融金属処理機器およびその製造方法ならびに保護皮膜およびその製造方法 - Google Patents

溶融金属処理機器およびその製造方法ならびに保護皮膜およびその製造方法 Download PDF

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Description

この発明は、溶融金属処理機器およびその製造方法ならびに保護皮膜およびその製造方法に関し、例えば、溶融アルミニウム、溶融亜鉛等の溶融金属と接触する金属基材を含む金属溶解槽、溶融金属めっき槽、熱電対保護管等の各種の溶融金属処理機器に適用して好適なものである。
アルミニウム、亜鉛等の金属の溶解・鋳造に必要な機器としては、金属を溶融する溶融炉および保持炉が使用されるほか、溶融金属を保持炉から金型等に搬送するラドル(ladle)や、保持炉内の溶融金属の表面に浮くノロ(スラグ)を除去するノロ掻き、溶融金属を掬い取る柄杓、のように繰り返し溶融金属浴に浸漬されて使用される部材があり、温度測定用の熱電対を挿入する保護管のように、溶融金属中に浸漬された状態で使用される部材もある。
このような部材においては、一般的に、アルミニウム溶融鍋または溶融槽は鋳鉄、鋳鋼の基材で、熱電対保護管はステンレス鋼の基材で、ラドルおよびノロ掻きは炭素鋼の基材で、亜鉛溶融鍋または溶融槽は普通鋼の基材で構成され、その表面にコーティング剤および溶融金属離型剤を塗布することによって、溶融金属中への溶解を抑制し、さらに、溶融金属の固着を防止する。
しかしながら、鋳鉄、鋳鋼の基材で構成された溶融鍋の内面は溶融アルミニウム合金により、普通鋼の基材で構成された溶融鍋の内面は溶融亜鉛合金により湯溶浸食されて、基材の厚さが減少し(以下、基材の厚さが減少することを「減肉」と言うこともある。)、外面は高温酸化により劣化するという問題があった。さらに、溶融および保持時には、鋳鉄、鋳鋼および普通鋼の鉄成分が溶融金属中へ溶出し、アルミニウム合金および亜鉛合金の有害元素となることから、溶融金属への鉄の溶出の低減が望まれている。
溶融鍋、溶融槽、熱電対保護管、ラドル、ノロ掻き、柄杓等の保護膜として従来より提案されているものは、セラミックス系コーティング被覆と金属系皮膜とに大別される。
このうちセラミックス系コーティング被覆の形成技術は特許文献1〜5に提案されている。特許文献1には、溶融アルミニウムへの溶解が少ないセラミックス製外套で熱電対保護管を保護することが提案され、従来のステンレス製保護管を炭化ケイ素質の保護管で覆い、溶融アルミニウムとステンレス製保護管とが互いに直接接触しないようにしている。特許文献2には、セラミックからなる両端開口した筒状の本体部の一端側の開口内に、薄く、熱伝導性に優れたセラミックからなる栓部を挿着したセラミック製筒体を熱電対保護管として用いることにより、熱電対保護管を溶融金属(Fe,Al,Zn等) に浸漬したときに、溶融金属が内部に侵入しないようすることが提案されている。特許文献3には、一旦封じの二重管構造とし、内側はサーメット製保護管、そして外側は耐火物製の保護スリーブとした取鍋用連続測温プローブが提案されている。特許文献4には、保護シースを耐熱金属酸化物と黒鉛とにより構成する技術が提案されている。特許文献5には、ステンレス鋼の表面にMgAl2 4 をゾル・ゲル塗布および焼成により形成し、さらに、ステンレス鋼とMgAl2 4 層との間にFeCr2 4 層を酸化処理で形成することによって、溶融アルミニウムとステンレス鋼とが直接接触するのを抑制する方法が提案されている。
一方、金属系皮膜の形成技術は特許文献6〜8に提案されている。特許文献6には、金属基体表面にめっきで形成したニッケル−リン合金皮膜は、溶融アルミニウムおよび/または溶融亜鉛に対して優れた湯溶浸食性を示すことが記載され、このニッケル−リン合金皮膜を用いたアルミニウムおよび/または溶融用部材、該部材を備えたアルミニウムおよび/または亜鉛溶融炉、溶融アルミニウムおよび/または溶融亜鉛めっき設備が提案されている。特許文献7には、基材がチタンからなり、該基材表面にアルミニウムが溶融めっきされ、該めっき層が酸化処理されてアルミニウム酸化物皮膜が形成された、軽量で耐久性に優れた金属溶湯部材が提案されている。特許文献8には、チタンまたはチタン合金からなる基材の表面に、アルミニウムを溶融めっき後、チタンおよびアルミニウムの拡散を促進させてTi−Al金属間化合物層を形成する方法が提案され、特許文献7に記載の溶融めっき処理に比較して、より長時間の耐久性が得られることが報告されている。
特開平8−75563号公報 特開2013−19772号公報 特開2011−99840号公報 特開2006−53128号公報 特開2014−16216号公報 特開2003−239057号公報 特開平8−199322号公報 特開2013−36070号公報
H.Okamoto; Desk Handbook Phase Diagrams for Binary Alloys, ASM International ISBN 0-87170-682-2
しかしながら、特許文献1〜8に提案された上述の従来の技術では、以下のような問題がある。
(1)セラミックス被覆は基材との密着性に劣り、衝撃等によって容易に剥離することから、作業や取り扱いが難しい。
(2)セラミックス被覆は、剥離や亀裂が発生すると被覆と基材との界面から溶融金属が容易に侵入し、セラミックス被覆の剥離と湯溶浸出とによる基材の減肉が進行する。
(3)基材としてチタンを使用する場合、基材と溶融アルミニウムとが反応して、Ti−Al化合物層が成長し、それによってチタン基材の減肉が進行し、さらに、Ti−Al化合物層は脆弱であることから、容易に破損する。
(4)ニッケル−リン合金めっき皮膜は、高温雰囲気での耐酸化性に劣り、他方、溶融アルミニウム浴中では、ニッケル−リン合金めっき皮膜のニッケルはアルミニウム溶湯中に容易に溶出し、皮膜に欠損が生じると、その後は、基材の湯溶浸食が起こり、防食性を喪失する。
そこで、この発明が解決しようとする課題は、溶融アルミニウム、溶融亜鉛等の溶融金属の各種の処理に用いた場合に優れた耐高温酸化性および耐湯溶浸食性を兼備した溶融金属処理機器およびその製造方法ならびに溶融金属処理機器に用いて好適な保護皮膜およびその製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、溶融金属によって生じる湯溶浸食の機構とその防止法について鋭意検討を行った。一例として、金属基材が鉄(Fe)基材であり、このFe基材に溶融金属として溶融アルミニウム(Al)が接触する場合の湯溶浸食の進行過程を図1に模式的に示す。図1に示すように、Fe基材を溶融Al浴に浸漬すると、AlはFe基材と化合してFe−Al合金層を形成し、このFe−Al合金層が成長する。一方、Fe−Al合金層は、溶融Al浴側ではAl濃度の最も高い合金層、すなわちFeAl3 層となり、このFeAl3 層のFeが溶融Al浴に溶出する結果として、Fe−Al合金層の厚さは減少し、溶融Al浴のAlはFeを含むAl(Fe)となる。
以上の湯溶浸食の機構は、Fe基材と溶融Alとの組み合わせ以外の他の金属基材と溶融金属との組み合わせについても同様に成立する。すなわち、溶融金属による金属基材の減肉は、合金層の形成・成長と溶融金属浴に接する合金層の基材成分が溶融金属中へ溶解することにより合金層の厚さが減少する結果として進行するのである。さらに、その溶出した基材金属成分は溶融金属を汚染させる。湯溶浸食による合金層厚さの減少は、合金層中の溶融金属原子の拡散を助長し、合金層の成長を促進する、すなわち、金属基材の減肉速度を増大させる。
上述のように、金属基材の減肉を抑制するためには、合金層の成長抑制と基材元素の溶出抑制とが重要であり、さらに、溶融浴外の高温雰囲気では、部材を高温酸化から保護することもまた重要な課題である。
本発明者らは、高温酸化と湯溶浸食とのいずれにも優れた特性を有する保護皮膜の開発を目的に、上記の合金層の成長の抑制と合金層の溶融金属浴中への溶出の抑制とを可能とする方策について、高温酸化、拡散、状態図を基礎として理論的考察と実験による検証とを行い、これに基づいて鋭意検討を行った結果、この発明を案出した。
すなわち、上記課題を解決するために、この発明は、
金属基材と、
上記金属基材の、少なくとも処理しようとする溶融金属と接触する側の表面に設けられた保護皮膜とを有し、
上記保護皮膜は、
上記金属基材上の、上記金属基材を構成する元素の外部への拡散を抑制するための内層と、
上記内層上の、上記溶融金属への溶解度が1原子%以下の金属またはその化合物を含む外層と、
上記外層上の、上記溶融金属の溶融温度での耐酸化性および上記溶融金属に対する耐性を有する酸化物層と、
を有する溶融金属処理機器である。
この発明において、保護皮膜は、金属基材の、少なくとも処理しようとする溶融金属と接触する側の表面に設けられていればよいが、好適には、金属基材の、溶融金属と接触する側と反対側の表面にも設けられ、より好適には、金属基材の表面全体に設けられる。こうすることで、溶融金属と接触する部分だけでなく、溶融金属と接触しない部分を含めて金属基材を保護することができる。金属基材は、例えば、鉄鋼材料(Fe基合金)、非鉄金属材料、Fe、CoおよびNiからなる群より選択された少なくとも一種の元素とWとCrとを含有する合金等であるが、これに限定されるものではない。鉄鋼材料は、例えば、軟鋼、炭素鋼、鋳鉄、鋳鋼、ステンレス鋼等であるが、これに限定されるものではない。非鉄金属材料は、例えば、チタン、耐熱チタン合金(チタン−アルミニウム合金等)等であるが、これに限定されるものではない。Fe、CoおよびNiからなる群より選択された少なくとも一種の元素とWとCrとを含有する合金は、優れた拡散バリア能を有しているだけでなく、Wの添加は、強度を高める効果もある。このFe、CoおよびNiからなる群より選択された少なくとも一種の元素とWとCrとを含有する合金は、例えば、Cr−W系合金層、Cr−W−Ta系合金層、Cr−W−Mo系合金層、Cr−W−Ta−Mo系合金層、Cr−W−Ta−Mo−Re系合金層等であるが、これに限定されるものではない。より具体的には、Fe、CoおよびNiからなる群より選択された少なくとも一種の元素とWとCrとを含有する合金は、Fe−Cr−W系合金では、Wを10原子%以上21原子%以下、Crを23原子%以上53%原子以下、Feを25原子%以上66原子%以下含有するもの(総和で100原子%)、Wを30原子%以上45原子%以下、Crを10原子%以上40原子%以下、Feを30原子%以上59原子%以下含有するもの(総和で100原子%)、Wを35原子%以上45原子%以下、Crを0.1原子%以上50原子%以下、Feを15原子%以上64原子%以下含有するもの(総和で100原子%)、Wを0.1原子%以上20原子%以下、Crを70原子%以上99原子%以下、Feを0.1原子%以上29原子%以下含有するもの(総和で100原子%)、Wを77原子%以上99原子%以下、Crを0.1原子%以上20原子%以下、Feを0.1原子%以上2原子%以下含有するもの(総和で100原子%)等であり、Co−Cr−W系合金では、Wを0.1原子%以上3原子%以下、Crを52原子%以上65原子%以下、Coを30原子%以上54原子%以下含有するもの(総和で100原子%)、Wを3原子%以上25原子%以下、Crを30原子%以上65原子%以下、Coを25原子%以上55原子%以下含有するもの(総和で100原子%)、Wを25原子%以上35原子%以下、Crを20原子%以上40原子%以下、Coを30原子%以上50原子%以下含有するもの(総和で100原子%)、Wを30原子%以上55原子%以下、Crを0.1原子%以上50原子%以下、Coを20原子%以上60原子%以下含有するもの(総和で100原子%)、Wを0.1原子%以上25原子%以下、Crを65原子%以上99原子%以下、Coを0.1原子%以上25原子%以下含有するもの(総和で100原子%)、Wを75原子%以上99原子%以下、Crを0.1原子%以上25原子%以下、Coを0.1原子%以上3原子%以下含有するもの(総和で100原子%)等であり、Ni−Cr−W系合金では、Wを2原子%以上20原子%以下、Crを40原子%以上65原子%以下、Niを30原子%以上40原子%以下含有するもの(総和で100原子%)、Wを0.1原子%以上20原子%以下、Crを70原子%以上99原子%以下、Niを0.1原子%以上30原子%以下含有するもの(総和で100原子%)、Wを80原子%以上99原子%以下、Crを0.1原子%以上20原子%以下、Niを0.1原子%以上3原子%以下含有するもの(総和で100原子%)等である。
内層は、例えば、素地金属中に、金属炭化物が分散し、または、金属炭化物からなる連続層を含むものである。内層が連続層を含む場合、この連続層の厚さは1μm以上20μm以下である。金属炭化物は、例えば、チタン炭化物、ニオブ炭化物、タングステン炭化物およびアルミニウム炭化物からなる群より選ばれた少なくとも一種であるが、これに限定されるものではない。
外層を、溶融金属への溶解度が1原子%以下の金属またはその化合物を含むもの、とした理由は下記の通りである。すなわち、外層を構成する元素の溶融金属浴への溶出を抑制するためには、これらの元素の溶融金属への溶解度が小さいことが望まれる。また、図1に関連して説明した合金層の成長速度を抑制するためには、合金層の元素の拡散が遅いこと、すなわち、融点の高い化合物が望まれる。例えば、一例として溶融金属が溶融アルミニウムである場合を考える。非特許文献1に基づいて、各種Al系合金の各種元素の溶融Alへの溶解度(800℃)、溶融Alと隣接する合金相とその融点をまとめた結果を表1に示す。表1にはさらに、溶解度と融点から予想される「溶融Alへの耐性」を、優れている(◎)、良好(○)、劣る(×)の三段階で表した。
表1より、金属元素では、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、非金属元素では、炭素(C)、燐(P)、硼素(B)、窒素(N)が溶融アルミニウムに対する耐湯溶浸食性に優れている、と予想される。例えば、溶融アルミニウム用部材への適用を指向するとき、基材は鉄基合金とチタン合金が候補となることから、チタン、ニオブ、タンタルおよびそれらの炭化物が望ましく、より望ましくは、チタンとチタン炭化物(TiC)である。
例えば、溶融亜鉛に対する耐湯溶浸食性に優れている金属元素としては、モリブデン、ニオブ、タンタル、タングステンおよびそれらの炭化物が望ましく、より望ましくは、モリブデンとモリブデン炭化物である。
一般的には、外層が含む金属またはその化合物は、チタン、ニオブ、タンタル、モリブデンおよびそれらの炭化物からなる群より選ばれた少なくとも一種である。特に溶融金属が溶融アルミニウムである場合には、外層は、好適には、チタンおよびアルミニウムのうちの少なくとも一種を含有し、これらのチタンおよびアルミニウムの総和は好適には50原子%以上95原子%以下、より好適には60原子%以上90原子%以下である。あるいは、特に溶融金属が溶融亜鉛である場合には、外層は、少なくともモリブデンを含有し、モリブデンの総和は好適には60原子%以上、より好適には60原子%以上90原子%以下である。
酸化物層は、例えば、チタン酸化物およびアルミニウム酸化物のうちの少なくとも一種を含むが、これに限定されるものではない。酸化物層は、必要に応じて、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、マンガン、ニオブ、タンタル、タングステン、ホウ素およびケイ素(シリコン)からなる群より選ばれた少なくとも一種の元素の酸化物をさらに含む。
溶融金属は、例えば、溶融アルミニウム、溶融亜鉛等であるが、これに限定されるものではない。
溶融金属処理機器は、何らかの形で溶融金属を処理するものであれば、特に限定されない。ここで、処理は、最も広義に解し、金属を溶融すること、溶融金属を用いてめっきすること、溶融金属を貯留すること、溶融金属を搬送すること、溶融金属の表面の浮遊物を除去すること等、あらゆるものが含まれる。また、機器には、機械、器械、器具等、あらゆるものが含まれる。溶融金属処理機器は、具体的には、例えば、金属溶解槽、金属溶融鍋、金属めっき槽、熱電対保護管、溶融金属掻き混ぜ棒、溶融金属を搬送するためのラドル、溶融金属の表面に浮かぶノロを掬い取るためのノロ掻き、溶融金属を掬うための湯掬い鍋、溶融金属を掬うための柄杓等であるが、これに限定されるものではない。
また、この発明は、
金属基材の、少なくとも処理しようとする溶融金属と接触する側の表面に設けられた保護皮膜であって、
上記金属基材上の、上記金属基材を構成する元素の外部への拡散を抑制するための内層と、
上記内層上の、上記溶融金属への溶解度が1原子%以下の金属またはその化合物を含む外層と、
上記外層上の、上記溶融金属の溶融温度での耐酸化性および上記溶融金属に対する耐性を有する酸化物層と、
を有する保護皮膜である。
この保護皮膜の発明においては、溶融金属処理機器の発明に関連して説明したことが成立する。
また、この発明は、
金属基材の表面に金属炭化物を含むスラリー状粉末を塗布した後、第1の温度で加熱溶融することにより、素地金属中に、金属炭化物が分散し、または、金属炭化物からなる連続層を含む内層を形成する工程と、
上記内層上にチタン、ニオブ、タンタルおよびモリブデンからなる群より選ばれた少なくとも一種を含むスラリー状粉末を塗布した後、上記第1の温度より低い第2の温度で加熱溶融することにより、処理しようとする溶融金属への溶解度が1原子%以下の金属またはその化合物を含む外層を形成する工程と、
上記外層上に、上記溶融金属の溶融温度での耐酸化性および上記溶融金属に対する耐性を有する酸化物層を上記第1の温度および上記第2の温度以下の第3の温度で形成する工程と、
を有する溶融金属処理機器の製造方法である。
ここで、酸化物層の形成方法は特に限定されず、外層の表面を第3の温度で酸化処理することにより酸化物層を形成してもよいし、外層上に化学気相成長(CVD)法、真空蒸着法、スパッタリング法等により酸化物層を形成してもよい。酸化物層は、外層の形成と同時に形成することもできる。第1の温度、第2の温度および第3の温度、これらの温度での加熱時間、加熱時の雰囲気等は、使用する金属基材、金属炭化物等に応じて適宜選択される。例えば、第1の温度は1000℃以上1300℃以下、第2の温度は900℃以上1200℃以下である。第3の温度は、酸化物層の形成方法により異なるが、外層の表面を酸化処理する場合には例えば850℃以上1150℃以下、CVD法、真空蒸着法、スパッタリング法等により形成する場合には例えば室温以上400℃以下である。
また、この発明は、
0.1重量%以上の炭素を含有する金属基材の表面に金属を含むスラリー状粉末を塗布した後、第1の温度で加熱溶融することにより、素地金属中に、金属炭化物が分散し、または、金属炭化物からなる連続層を含む内層を形成する工程と、
上記内層上にチタン、ニオブ、タンタルおよびモリブデンからなる群より選ばれた少なくとも一種を含むスラリー状粉末を塗布した後、上記第1の温度より低い第2の温度で加熱溶融することにより、処理しようとする溶融金属への溶解度が1原子%以下の金属またはその化合物を含む外層を形成する工程と、
上記外層上に、上記溶融金属の溶融温度での耐酸化性および上記溶融金属に対する耐性を有する酸化物層を上記第1の温度および上記第2の温度以下の第3の温度で形成する工程と、
を有する溶融金属処理機器の製造方法である。
ここで、0.1重量%以上の炭素を含有する金属基材としたのは、0.1重量%以上、より望ましくは0.2重量%以上の炭素を含有する金属基材であれば、その上に金属を含むスラリー状粉末を塗布した後、第1の温度で加熱溶融することにより、その金属と金属基材中の炭素とが反応して金属が炭化される結果、金属炭化物が形成されるためである。これに対して、先に説明した溶融金属処理機器の製造方法においては、金属基材の表面に金属炭化物を含むスラリー状粉末を塗布するため、金属基材中の炭素の有無あるいは炭素濃度は特に問題にならず、0.1重量%以上の炭素を含有する金属基材は勿論、0.1重量%未満の炭素しか含有しない金属基材であっても使用することができる。この溶融金属処理機器の製造方法の発明においては、上記以外のことについては、先に説明した溶融金属処理機器の製造方法の発明に関連して説明したことが成立する。
また、この発明は、
金属基材の表面に金属炭化物を含むスラリー状粉末を塗布した後、第1の温度で加熱溶融することにより、素地金属中に、金属炭化物が分散し、または、金属炭化物からなる連続層を含む内層を形成する工程と、
上記内層上にチタン、ニオブ、タンタルおよびモリブデンからなる群より選ばれた少なくとも一種を含むスラリー状粉末を塗布した後、上記第1の温度より低い第2の温度で加熱溶融することにより、処理しようとする溶融金属への溶解度が1原子%以下の金属またはその化合物を含む外層を形成する工程と、
上記外層上に、上記溶融金属の溶融温度での耐酸化性および上記溶融金属に対する耐性を有する酸化物層を上記第1の温度および上記第2の温度以下の第3の温度で形成する工程と、
を有する保護皮膜の製造方法である。
また、この発明は、
0.1重量%以上の炭素を含有する金属基材の表面に金属を含むスラリー状粉末を塗布した後、第1の温度で加熱溶融することにより、素地金属中に、金属炭化物が分散し、または、金属炭化物からなる連続層を含む内層を形成する工程と、
上記内層上にチタン、ニオブ、タンタルおよびモリブデンからなる群より選ばれた少なくとも一種を含むスラリー状粉末を塗布した後、上記第1の温度より低い第2の温度で加熱溶融することにより、処理しようとする溶融金属への溶解度が1原子%以下の金属またはその化合物を含む外層を形成する工程と、
上記外層上に、上記溶融金属の溶融温度での耐酸化性および上記溶融金属に対する耐性を有する酸化物層を上記第1の温度および上記第2の温度以下の第3の温度で形成する工程と、
を有する保護皮膜の製造方法である。
上記の二つの保護皮膜の製造方法の発明においては、先に説明した二つの溶融金属処理機器の製造方法の発明に関連して説明したことが成立する。
この発明によれば、内層により、金属基材から外層への基材構成元素の拡散や外層から金属基材への元素の拡散を抑制することができ、外層により、外層自身の構成元素の溶融金属への溶出を抑制することができる結果、基材構成元素の溶出を防止することができ、酸化物層により、高温酸化に対する保護性および溶融金属に対する耐性(安定性)を得ることができる。このため、溶融アルミニウム、溶融亜鉛等の溶融金属の各種の処理に用いた場合に優れた耐高温酸化性および耐湯溶浸食性を兼備した各種の溶融金属処理機器を実現することができる。
溶融Alに接触したFe基材の減肉および湯溶浸食の進行過程を説明するための略線図である。 この発明の一実施の形態による溶融金属処理機器を示す断面図である。 実施例1の内層形成後の試料の断面構造を示す図面代用写真および試料の断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。 実施例1の外層形成後の試料の断面構造を示す図面代用写真および試料の断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。 実施例1の酸化物層形成後の試料の断面構造を示す図面代用写真および試料の断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。 実施例2の内層形成後の試料の断面構造を示す図面代用写真および試料の断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。 実施例2の外層および酸化物層形成後の試料の断面構造を示す図面代用写真および試料の断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。 実施例3の中間層形成後の試料の断面構造を示す図面代用写真および試料の断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。 実施例4の内層および外層形成後の試料の断面構造を示す図面代用写真および試料の断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。 実施例5の内層、外層および酸化物層形成後の試料の断面構造を示す図面代用写真および試料の断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。 実施例6の内層、外層および酸化物層形成後の試料の断面構造を示す図面代用写真および試料の断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。 各種金属基材のAl合金溶湯への浸漬試験の結果を示す略線図である。 各種金属基材のAl合金溶湯への浸漬試験の結果を示す略線図である。 各種金属基材のAl合金溶湯への浸漬試験の結果を示す略線図である。 各種金属基材のAl合金溶湯への浸漬試験後の断面組織を示す図面代用写真および各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。 各種金属基材のAl合金溶湯への浸漬試験後の断面組織を示す図面代用写真および各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。 各種金属基材のAl合金溶湯への浸漬試験後の断面組織を示す図面代用写真および各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。 各種金属基材のAl合金溶湯への浸漬試験後の断面組織を示す図面代用写真および各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。 各種金属基材のAl合金溶湯への浸漬試験後の断面組織を示す図面代用写真および各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。 SUS310からなる金属基材の表面に外層形成用のスラリー状原料粉末を塗布したものをアルミナ粉末に埋没して加熱した際に形成された試料のAEM−EDAXによる表面組織の観察結果を示す図面代用写真である。
以下、発明を実施するための形態(以下、単に「実施の形態」と言う。)について説明する。
[溶融金属処理機器]
図2はこの発明の一実施の形態による溶融金属処理機器を構成する金属基材の一部の断面図を示す。図2に示すように、この溶融金属処理機器においては、金属基材100上に内層200、外層300および酸化物層400が順次積層され、これらの内層200、外層300および酸化物層400により保護皮膜が形成されている。
金属基材100は、例えば、先に例示したものの中から、溶融金属処理機器の用途、要求される機能、内層200の形成方法等に応じて適宜選択することができ、鉄鋼材料、非鉄金属材料のいずれからなるものであってもよく、炭素の含有の有無あるいは含有濃度も特に限定されない。具体的には、例えば、溶融金属処理機器が金属溶融鍋、金属溶解槽、熱電対保護管、掻き混ぜ棒、ノロ掻き等である場合には、金属基材100の材料は、費用対効果の観点から、一般的には鉄鋼材料であり、望ましくは、軟鋼、炭素鋼、鋳鋼、ステンレス鋼等である。これに対して、例えば、溶融金属処理機器が湯掬い、柄杓等である場合には、金属基材100の材料は、高比強度の観点から、チタン材料、望ましくはα−チタン、耐熱チタン合金等である。金属基材100の炭素含有量により、内層200の形成方法として異なる方法を採用することができる。すなわち、詳細は後述するが、例えば、金属基材100が高炭素含有基材(炭素含有量が0.1重量%以上)である場合は、この金属基材100に含有される炭素を利用して直接、金属炭化物を形成することができるのに対して、低炭素含有基材(炭素含有量が0.1重量%未満)では、金属基材100の炭素を利用することができないので、内層200の形成に際し、金属炭化物を形成するための炭素源をコーティングする必要がある。
金属基材100の具体例を表2に示す。
内層200は、金属基材100を構成する元素の外層300への拡散および外層300を構成する元素の金属基材100への拡散を抑制するためのものであり、素地金属中に、金属炭化物が分散し、または、金属炭化物からなる連続層を含むものである。素地金属中に金属炭化物が分散した形態では、内層200の厚さに特に制限はないが、一般的には厚さを1μm以上とするのが望ましい。これに対して、内層200が金属炭化物からなる連続層を含む場合、この連続層の厚さは1μm以上20μm以下、望ましくは3μm以上10μm以下である。この連続層の厚さが1μm未満であると拡散障壁として機能が不十分であり、20μmを超えると、外層300との密着性が劣り、外層300が剥離しやすくなる。金属炭化物は、例えば、好適には、チタン炭化物、ニオブ炭化物、タングステン炭化物およびアルミニウム炭化物からなる群より選ばれた少なくとも一種であるが、そのほか、鉄炭化物、クロム炭化物、タンタル炭化物、モリブデン炭化物、ケイ素炭化物等であってもよい。内層200に含まれる金属炭化物は、金属基材100の構成元素の外層300への拡散および外層300の構成元素の金属基材100への拡散を抑制する機能を有し、外層300の長寿命化に寄与する。例えば、溶融金属処理機器の稼働中に仮に、酸化物層400がその保護性を喪失すると、外層300は溶融金属と反応して合金相に変化し、内層200がなければ、続いて金属基材100との合金化に移行する。しかしながら、このとき、炭化物を含有する内層200は、この溶融金属の原子の拡散を阻止する機能を有する。この場合、内層200に含まれる金属炭化物が連続的であることが、より効果的である。したがって、内層200は合金層の成長による金属基材100の減肉を抑制するのに効果的である。具体例を挙げると、溶融金属が溶融アルミニウムである場合、チタンは溶融アルミニウムに対して優れた耐性を有するため、好適には、金属炭化物としてチタン炭化物が用いられる。加えて、チタンは溶融アルミニウムに対して優れた耐性を有するチタン酸化物を形成し、チタン酸化物は良好な耐酸化性を有する。
外層300は、溶融金属への溶解度が1原子%以下の金属またはその化合物を含むものであり、これらの金属またはその化合物は、例えば、チタン、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステンおよびそれらの炭化物からなる群より選ばれた少なくとも一種である。外層300は、自身の構成元素の溶融金属への溶出を抑制することができる結果、溶融金属と接触したとき、金属基材100の構成元素の溶出を防止することができる。例えば、溶融金属が溶融アルミニウムである場合には、外層300に含まれる金属またはその化合物は、望ましくは、チタン、ニオブ、タンタルおよびそれらの炭化物であり、さらに望ましくは、チタンおよびチタン炭化物である。これらの金属および炭化物は溶融アルミニウムへの溶解度が1原子%以下と小さく、外層300の溶融アルミニウムへの溶出を効果的に抑制することができ、金属基材100の構成元素による溶融アルミニウムの汚染を軽減できる。溶融金属が溶融亜鉛である場合には、外層300に含まれる金属またはその化合物は、望ましくは、モリブデン、ニオブ、タンタル、タングステンおよびそれらの炭化物であり、さらに望ましくは、非特許文献1によると、モリブデンおよびモリブデン炭化物である。モリブデンは溶融亜鉛への溶解度が1原子%以下と小さく、外層300の溶融亜鉛への溶出を軽減し、それによって溶融亜鉛の汚染を防止することができる。また、例えば、溶融金属が溶融アルミニウムである場合において、酸化処理により外層300の表面に酸化物層400を形成する場合には、外層300は、チタンおよびアルミニウムを含有していることが望ましい。特に、雰囲気での高温酸化に曝される部位の金属基材100上の酸化物層400にはチタンに加えてアルミニウムを含有することが望ましい。チタンおよびアルミニウムの酸化により形成されるチタン酸化物およびアルミニウム酸化物は、耐湯溶浸食に対して優れた特性を有し、アルミニウム酸化物皮膜は雰囲気での高温酸化に対する保護膜として作用する。酸化物層400中のチタンおよびアルミニウムの総和は望ましくは50原子%以上95原子%以下、より望ましくは、60原子%以上90原子%以下である。チタンおよびアルミニウムの総和が50原子%未満の場合には多孔質なチタン・アルミニウム合金になり、溶融アルミニウムが混入し、95原子%を超えるとチタン・アルミニウム合金が脆弱となり、剥離しやすくなる。また、溶融金属が溶融亜鉛である場合において、酸化処理により外層300の表面に酸化物層400を形成する場合には、外層300は、モリブデンを含有していることが望ましい。モリブデンは、耐亜鉛湯溶浸食に対して優れた特性を有する。モリブデンの濃度は、60原子%以上で、望ましくは、60原子%以上90原子%以下である。濃度が60原子%未満の場合、多孔質なモリブデン含有合金になり、溶融亜鉛が混入するため、耐湯溶浸食性に劣り、濃度が90原子%を超えると、スラリーの加熱処理において、緻密なモリブデン合金が形成されにくく、脆弱であり、剥離しやすくなる。
酸化物層400は、溶融金属の溶融温度での耐酸化性(高温酸化に対する保護性と言い換えることもできる)および溶融金属に対する耐性を有するものであり、先に例示したものの中から必要に応じて選択されるが、望ましくは、チタン酸化物(TiO2 )またはアルミニウム酸化物(Al2 3 )である。アルミニウム酸化物は高温雰囲気での耐酸化性および溶融アルミニウムに対する優れた安定性を有し、チタン酸化物は溶融アルミニウムに対して安定であるという特性を有する。酸化物層400は、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、マンガン、ニオブ、タンタル、タングステン、ホウ素およびケイ素からなる群より選ばれた少なくとも一種の元素の酸化物を含むことがある。これらの酸化物を構成する元素は外層300の組織を緻密化するために添加されることがあるものであり、外層300の表面に酸化処理により酸化物層400を形成する工程で外層300から酸化物層400に混入するものである。酸化物層400は、溶融アルミニウム浴では、Alと反応し、金属に還元されて、酸化物としての機能を喪失する。溶融亜鉛に対しても、アルミニウム酸化物およびチタン酸化物は優れた効果を発揮する
[溶融金属処理機器の製造方法]
まず、金属基材100を用意する。金属基材100の形状、厚さ等は、製造しようとする溶融金属処理機器によって異なる。
次に、金属基材100上に、素地金属中に、金属炭化物が分散し、または、金属炭化物からなる連続層を含む内層200を形成する。例えば、金属基材100の表面に金属炭化物を含むスラリー状粉末を塗布した後、第1の温度で加熱溶融することにより、内層200を形成する。スラリー状粉末の作製に使用される原料粉末およびスラリー液の例を表3に示す。
具体的には、表3に示した原料粉末を秤量し、乳鉢で混練した後、表3のスラリー液に投入し、スラリー状混合粉末を作製した。スラリーの粘性はエタノール添加により調整した。このスラリー状混合粉末を金属基材100の表面に塗布する。例えば、金属基材100の全体をスラリー状混合粉末中に浸漬した後、引き上げることにより金属基材100の表面全体にスラリー状混合粉末を塗布することができる。次に、こうしてスラリー状混合粉末を塗布した金属基材100を例えば60〜80℃に加熱した電熱オーブンに入れて乾燥した後、加熱する。加熱方法は特に制限はないが、減圧雰囲気(油回転ポンプによる排気) および不活性ガス雰囲気の電気炉による加熱、ならびに、燃焼ガスフレームによるいわゆるフュージョン処理が望ましい。後述の実施例では、減圧雰囲気および不活性ガス(Ar)雰囲気で、電気炉による加熱方法を採用した。加熱温度は例えば1050℃以上1270℃以下、望ましくは1100℃以上1250℃以下、加熱時間は例えば1分以上10時間以下、望ましくは5分以上4時間以下である。加熱温度が1050℃未満、加熱時間が1分未満の場合はスラリーの溶融・焼結が不十分であり、多孔質となり密着性に劣り、加熱温度が1270℃を超え、加熱時間が10時間を超えると、金属基材100も過大に溶融されてしまうおそれがある。この加熱処理の結果、金属炭化物が分散状態または連続層となることによって、内層200が形成される。
金属基材100が炭素含有量0.1重量%未満の低炭素含有基材の場合には、上記の工程の前処理として、炭素および高融点金属を含む中間層を形成する。この中間層を形成する方法および条件は上記の工程に準じる。炭素源としては金属炭化物が挙げられるが、望ましくはタングステン炭化物、ニオブ炭化物、タンタル炭化物であり、さらに望ましくはタングステン炭化物である。
金属基材100が炭素含有量0.1重量%以上の高炭素含有基材の場合には、金属炭化物の代わりに金属を含むスラリー状混合粉末を金属基材100の表面に塗布し、こうしてスラリー状混合粉末を塗布した金属基材100を上記と同様にして乾燥し、加熱することにより内層200を形成するようにしてもよい。こうすることで、金属炭化物が分散状態または連続層として形成され、内層200が形成される。
次に、内層200上に、処理しようとする溶融金属への溶解度が1原子%以下の金属またはその化合物を含む外層300を形成する。例えば、内層200上にチタン、ニオブ、タンタルおよびモリブデンからなる群より選ばれた少なくとも一種を含むスラリー状粉末を塗布した後、第1の温度より低い第2の温度で加熱溶融することにより、外層300を形成する。具体的には、表3に示した原料粉末を秤量し、乳鉢で混練した後、表3のスラリー液に投入し、スラリー状混合粉末を作製した。スラリーの粘性はエタノール添加により調整した。このスラリー状混合粉末を内層200の表面に塗布する。例えば、金属基材100の全体をスラリー状混合粉末中に浸漬した後、引き上げることにより内層200の表面全体にスラリー状混合粉末を塗布することができる。次に、こうして内層200上にスラリー状混合粉末を塗布した金属基材100を例えば60〜80℃に加熱した電熱オーブンに入れて乾燥した後、加熱する。加熱方法は特に制限はないが、減圧雰囲気(油回転ポンプによる排気) および不活性ガス雰囲気の電気炉による加熱、ならびに、燃焼ガスフレームによるいわゆるフュージョン処理が望ましい。後述の実施例では、減圧雰囲気および不活性ガス(Ar)雰囲気で、電気炉による加熱方法を採用したが、アルミナ粉末に埋没させて加熱してもよい。加熱温度は例えば950℃以上1170℃以下、望ましくは1000℃以上1150℃以下、加熱時間は例えば10分以上4時間以下、望ましくは30分以上2時間以下である。加熱温度が950℃未満、加熱時間が10分未満の場合はスラリーの溶融・焼結が不十分であり、多孔質となり密着性に劣り、加熱温度が1170℃を超え、加熱時間が4時間を超えると、内層200も過大に溶融されてしまうおそれがある。アルミナ粉末に埋没させて加熱すると、外層300の表面にはアルミナを混合したサーメットを形成することができ、後述の酸化物層400の一部を形成する。
酸化物層400は、外層300を形成した後、その表面を第1の温度および第2の温度以下の第3の温度で酸化処理したり、その表面にCVD法、真空蒸着法、スパッタリング法等により形成したりすることにより形成してもよいし、外層300の形成時に同時に形成してもよい。外層300を形成した後、その表面を第1の温度および第2の温度以下の第3の温度で酸化処理する場合、第3の温度、すなわち加熱温度は、例えば800℃以上1170℃以下、望ましくは900℃以下1150℃以下、加熱時間は例えば10分以上4時間以下、望ましくは30分以上2時間以下である。酸化物層400は、外層300を形成した後、引き続き高温に加熱した状態で、減圧雰囲気または不活性ガス雰囲気に空気を導入して、外層300に含まれている元素の高温酸化反応を利用して外層300の表面に形成することもできる。また、外層300をフュージョン処理により形成する場合、フュージョン処理は大気中で行われることが一般的であるから、外層300の表面に酸化物層400が同時に形成される。減圧雰囲気に導入する空気および/または酸素の圧力を調整することによって、酸化時の酸素活量を制御することができる。空気導入量が少量の時は、いわゆる低酸素雰囲気での酸化となり、緻密な酸化物層400をゆっくりと成長させることができる。空気導入量が多量の時は、酸化物層400を厚く成長させることができる。外層300を酸化処理することにより酸化物層400を形成する場合、外層300にチタン、チタン炭化物、アルミニウム等が含まれると、これらが酸化されて、チタン酸化物およびアルミニウム酸化物が形成されるが、これらの酸化物と外層300との界面は凹凸状であり、酸化物層400が外層300に強固に密着しているので望ましい。
以上により、目的とする溶融金属処理機器が製造される。
以下、実施例に基づいて、より詳細に説明する。
〈コーティング皮膜の組織観察と元素分析について〉
(1)蛍光X線装置(日本電子株式会社製エレメントアナライザー)を用いて、皮膜表面の元素分析を行った。なお、本測定では、酸素、窒素、炭素、ホウ素等の軽元素の分析は行っていない。
(2)走査型電子顕微鏡(SEM)とエネルギー分散型元素分析装置(EDAX)を用いて、金属基材100とコーティング皮膜との断面組織を観察し、各元素の濃度分布を測定した。なお、本測定手法では、炭素とホウ素の存在は確認できるが、定量的にそれらの濃度を測定することは困難であった。したがって、ここでは、炭素とホウ素が検出された相を炭化物とホウ化物と表記している。
〈溶融アルミニウム合金への浸漬試験について〉
実施例に使用した金属基材の材料は、鉄(Fe)、普通鋼(SS400)、炭素鋼(S45C)、高炭素鋼(SKD−11)、ステンレス鋼(SCH430、SUS304、SUS413、SUS310)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)である。比較のため、コーティングなしの金属基材についても浸漬試験を実施した。アルミナ坩堝に溶解したAl−Si系合金(ADC12)浴中に試験片を挿入し、種々の時間経過後に取り出して観察に供した。温度700℃では最長100時間、800℃では22時間の浸漬試験を行った。
湯溶浸食の程度は、浸漬試験後の金属基材を面に垂直に切断して、金属基材の厚さをデジタル光学顕微鏡で測定し、減肉量として評価した。
〈実施例1〉
実施例1では、含有炭素量が高い (炭素含有量が0.1重量%以上) 金属基材として鋳鋼(SCH−2)からなる金属基材を用いた。
工程(1)
上記の金属基材の表面に、チタンおよびニッケルを含有するスラリー状混合粉末(85重量%Ti+15重量%Ni)を塗布・乾燥した後、減圧雰囲気(油回転ポンプによる排気) で加熱し、内層を形成した。加熱温度および時間は1200℃、1時間である。
図3に金属基材および内層の断面の走査型電子顕微鏡写真およびEDAXを用いて測定した各元素の濃度分布(図3に示す写真の分析線LG1に沿っての濃度分布)の測定結果を示す(以下同様)。表4は図3に示した各元素の濃度をまとめた分析表であり、図3の写真中に示す分析線上に示した括弧で囲んだ数字は、分析表の分析点に対応している(以下同様)。
図3および表4より、金属基材の表面にTiCが連続層として形成されていることが分かる。TiC層の外側には、65原子%Tiを含有する合金層が形成されている。なお、このTiCは鋳鋼(SCH−2)からなる金属基材に含まれている炭素(C)が表面側に拡散して、スラリ−のチタンと反応して形成されたものである。このように、金属基材の炭素を利用して、TiCを形成することができることが特徴である。なお、図3および表4では、炭素濃度は除いて表示してあるため、TiCはTiが100%と表示されている(以下同様)。
工程(2)
工程(1)でTiCの内層を形成した後、工程(2)では、チタン含有スラリーを内層上に塗布し乾燥し、さらにアルミニウム含有スラリーを重ね塗りした後、乾燥して加熱処理を行い、外層を形成した。
図4に金属基材、内層および外層の断面の走査型電子顕微鏡写真およびEDAXを用いて測定した各元素の濃度分布(図4に示す写真の分析線LG1に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。表5は図4に示した各元素の濃度をまとめた分析表である。図4および表5より、工程(1)で形成したTiCの連続層の外側にTi−Al合金層が形成されており、その表面側にはTiCの析出物が見られることが分かる。これらの結果から、内層(TiC)/外層(Ti−Al合金+TiC)のコーティングが形成されることが実証された。外層のAlの濃度(50〜60原子%)は内層のTiC層で急減し、金属基材側への侵入は僅少であることが分かる。すなわち、内層のTiCはAlの金属基材側への拡散の障壁として機能していることが実証された。
工程(3)
工程(2)に引き続き、減圧雰囲気に空気を導入し、1100℃、10時間の条件で酸化処理を行い、外層の表面に酸化物層を形成した。
図5に金属基材、内層、外層および酸化物層の断面の走査型電子顕微鏡写真およびEDAXを用いて測定した各元素の濃度分布(図5に示す写真の分析線LG1に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。表6は図5に示した各元素の濃度をまとめた分析表である。図5および表6より、TiCの内層とTi−Al系の外層と酸化物層との三層構造のコーティングが形成されていることが分かる。酸化物層はTiO2 とAl2 3 との混合相であり、外層のAlの濃度は内層のTiC層で急減し、金属基材側への侵入は僅少である。すなわち、内層のTiCはAlの金属基材側への拡散の障壁として機能していることが実証された。
〈実施例2〉
実施例2では、含有炭素量が高い (炭素含有量が0.1重量%以上) 金属基材として炭素鋼(S45C)からなる金属基材を用いた。
工程(1)
実施例1と同様に工程(1)を実行し、内層を形成した。
図6に金属基材および内層の断面の走査型電子顕微鏡写真およびEDAXを用いて測定した各元素の濃度分布(図6に示す写真の分析線LG2に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。表7は図6に示した各元素の濃度をまとめた分析表である。
図6および表7より、工程(1)の実行後は、金属基材の表面に、TiCの連続層が形成され、その外側には50原子%以上のTiを含有する素地金属とTiCの分散した組織となっていることが分かる。
工程(2)
工程(1)に引き続き、減圧雰囲気(油回転ポンプによる排気) に空気を導入し、1100℃、1時間の条件で酸化を行った。
図7に金属基材、内層および酸化物層の断面の走査型電子顕微鏡写真およびEDAXを用いて測定した各元素の濃度分布(図7に示す写真の分析線LG2に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。表8は図7に示した各元素の濃度をまとめた分析表である。図7および表8より、TiCの内層とTi−Al系の外層と酸化物層との三層構造のコーティングが形成されていることが分かる。なお、酸化物層は、短時間の酸化処理で、その厚さは数μm以下であるが、酸化物として、TiO2 とAl2 3 とが確認された。外層のAlの濃度は徐々に低下し、内層TiC層で一定になっているが、数原子%Alの金属基材側への侵入が認められる。これは、内層の厚さが数μm以下であることから、Alの金属基材側への拡散侵入がみられたものと考えられる。一方、金属基材の構成元素の鉄(Fe)の外層中への侵入が完全に阻止されている。内層のTiCの厚さとしては、数μm以上(例えば3μm以上) であることが望ましい。
〈実施例3〉
実施例3では、含有炭素量が低い (炭素含有量が0.1重量%未満) 金属基材としてステンレス鋼(SUS310)からなる金属基材を用いた。この金属基材では、この金属基材の炭素を利用して、TiCを形成することができない。
工程(1)
タングステンおよびタングステン炭化物を含有するスラリー状混合粉末(40重量%Co基自溶合金+40重量%W+20重量%WC)を金属基材の表面に塗布・乾燥した後、減圧雰囲気(油回転ポンプによる排気) で、加熱した。加熱温度および時間は1250℃、2時間である。
図8に金属基材および中間層(内層の一部を構成)の断面の走査型電子顕微鏡写真およびEDAXを用いて測定した各元素の濃度分布(図8に示す写真の分析線LG1に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。表9は図8に示した各元素の濃度をまとめた分析表である。図8および表9より、金属基材の表面には、タングステンを含有する中間層(W−Cr−Fe−Co合金)が形成されていることが分かる。この組織からは、炭化物の存在は確認されなかった。したがって、炭素は中間層に固溶しているものと理解される。
工程(2)
工程(1)で中間層(内層の一部を構成)を形成した後、タングステン、クロムおよびタングステン炭化物を含有するスラリー状混合粉末(40重量%Co基自溶合金+30重量%W+10重量%Cr+20重量%WC)にチタンを含有させたものを金属基材の表面に塗布・乾燥し、その上にさらにタングステン、クロムおよびタングステン炭化物を含有するスラリー状混合粉末(40重量%Co基自溶合金+30重量%W+10重量%Cr+20重量%WC)にアルミニウムを含有させたものを重ね塗りして乾燥し、減圧雰囲気(油回転ポンプによる排気) で、加熱処理した。加熱温度および時間は1150℃、1時間である。
図9に金属基材、内層および外層の断面の走査型電子顕微鏡写真およびEDAXを用いて測定した各元素の濃度分布(図9に示す写真の分析線LG2に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。表10は図9に示した各元素の濃度をまとめた分析表である。図9および表10より、金属基材の表面に、Cr−W−Fe−Co系合金相とFe−Co−Cr系合金相との混合相からなる内層およびAl濃度が40原子%以上の外層が形成され、外層にチタン・アルミニウム化合物が析出していることが分かる。
〈実施例4〉
実施例4では、実施例3と同様に、ステンレス鋼(SUS310)からなる金属基材を用いた。
まず、実施例3の工程(1)と同様の工程を実行し、金属基材の表面に中間層(内層の一部を構成)を形成した後、タングステン、タンタルおよびタングステン炭化物を含有するスラリー状混合粉末(40重量%Co基自溶合金+30重量%W+10重量%Ta+20重量%WC)にチタンを含有させたものを金属基材の表面に塗布・乾燥し、その上にさらにタングステン、タンタルおよびタングステン炭化物を含有するスラリー状混合粉末(40重量%Co基自溶合金+30重量%W+10重量%Ta+20重量%WC)にアルミニウムを含有させたものを重ね塗りして乾燥し、減圧雰囲気(油回転ポンプによる排気)
で、加熱処理した。加熱温度および時間は1150℃、1時間である。
図10に金属基材、内層および外層の断面の走査型電子顕微鏡写真およびEDAXを用いて測定した各元素の濃度分布(図10に示す写真の分析線LG3に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。表11は図10に示した各元素の濃度をまとめた分析表である。図10および表11より、金属基材の表面に、Alを約40原子%含有するFe−Cr−Co系合金相とCr−W−Ta−Co系合金相との混合相からなる内層およびTiCの析出物とTiとTaとAlとを含有する合金相からなる外層が形成されていることが分かる。さらに、外層の最表面には、酸化物層が薄く形成されていることも分かる。このように、工程(2)の段階でも、減圧雰囲気ではTiおよびAlの酸化は可能であり、不可避的にμm程度の厚さの酸化物層は形成される。
〈実施例5〉
実施例5では、実施例3と同様に、ステンレス鋼(SUS310)からなる金属基材を用いた。
まず、実施例3の工程(1)と同様の工程を実行し、金属基材の表面に中間層(内層)を形成した後、タングステン、ニオブ、モリブデンおよびタングステン炭化物を含有するスラリー状混合粉末(40重量%Co基自溶合金+30重量%W+5重量%Nb+5重量%Ta+20重量%WC)にチタンを含有させたものを金属基材の表面に塗布・乾燥し、その上にさらにタングステン、ニオブ、モリブデンおよびタングステン炭化物を含有するスラリー状混合粉末(40重量%Co基自溶合金+30重量%W+5重量%Nb+5重量%Ta+20重量%WC)にアルミニウムを含有させたものを重ね塗りして乾燥し、減圧雰囲気(油回転ポンプによる排気) で、加熱処理した。加熱温度および時間は1150℃、1時間である。
図11に金属基材、内層および外層の断面の走査型電子顕微鏡写真およびEDAXを用いて測定した各元素の濃度分布(図11に示す写真の分析線LG1に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。表12は図11に示した各元素の濃度をまとめた分析表である。図11および表12より、金属基材の表面に、W、Cr、Fe、NbおよびMoを含有する合金層からなる内層および約50原子%のAlを含有する外層が形成されていることが分かる。内層のAl濃度は無視できる程度である。また、外層の表面側にチタンが存在している。さらに、外層の最表面には、酸化物層が薄く形成されていることも分かる。このように、工程(2)の段階でも、減圧雰囲気ではTiおよびAlの酸化は可能であり、不可避的にμm程度の厚さの酸化物層は形成される。
次に、溶融金属処理部材の試験片のアルミニウム合金溶湯への浸漬試験を行った結果について説明する。
〈浸漬試験〉
対象金属:鉄、SKD−11、SCH430、SUS304、SUS413、SUS310、チタン、タンタル
上記の各種金属を長方形板(長さ50mm、幅7mm、厚さ1mm)に切断した後、表面研磨と脱脂洗浄したAl−Si合金(ADC12)をアルミナ坩堝に溶解し、浸漬は80℃、大気中で行った。浸漬時間は15分である。
図12は各種金属の金属基材の減肉量および金属基材の表面に残存しているAl合金層の厚さを示す。図12に示す結果から、減肉量はFe、SKD11(15分で試験片厚さが消失) からステンレス(SCH430、SUS304、SUS413、SUS310)の順に低下し、チタンとタンタルが最も減肉量が少ないことが分かる。さらに、減肉量は残存するAl合金層の厚さに比較して、桁違いに大きいことが分かる。すなわち、Al合金層は金属基材側に成長するが、Al溶湯への溶出が非常に速いため、Al合金層は薄く観察されている。したがって、湯溶浸食の程度は、Al合金層の成長速度ではなく、Al合金層が溶湯中に溶出する速度に支配されることが分かる。図2で説明した考え方から、チタンとタンタルはAl溶湯への溶出が少ないことを予想したが、図12の結果によりそれが実証された。
〈各種金属の湯溶浸食に対するコーティングの効果〉
普通鋼(SS400)、炭素鋼(S45C)またはステンレス鋼(SUS310)からなる試験片にコーティング皮膜を形成し、溶融Al−Si合金(ADC12)に浸漬し、減肉量を測定した。図13は浸漬試験温度700℃、図14は浸漬試験温度800℃での結果を示す。図13および図14には、金属基材、内層と外層との二層コーティング、さらに、内層と外層と酸化物層との三層構造のコーティングについて、それぞれ測定した結果を示す。
図13に示す結果から、コーティングなしの金属基材の減肉速度は、金属の種類(□:SS400、○:S45C、◇:SUS310)による差異は小さく、4時間の浸漬で減肉量は約0.4mmである。一方、三層構造のコーティングを形成した試料(斜線を施した△)では、100時間までの浸漬で減肉量は50μm程度であり、コーティング(平均150μmの厚さ)が残存しており、金属基材の浸食は観察されない。なお、二層コーティング(酸化物層がない場合:△) では、局部的にコーティング皮膜が破壊され、金属基材が浸食されているのが観察された。これより、二層コーティング皮膜は顕著に湯溶浸食を抑制し、さらに、酸化物層を形成した三層コーティング皮膜とすることによって、より効果的に機能していることが明らかとなった。
図14に示す結果から、コーティングなしの金属基材の減肉速度は、金属の種類(□:SS400、○:S45C、◇:SUS310)による差異は小さく、1時間の浸漬で減肉量は約0.5mmである。一方、三層構造のコーティングを形成した試料(斜線を施した△)では、12時間までの浸漬で減肉量は100μm程度であり、コーティング(平均150μmの厚さ)が残存しており、金属基材の浸食は観察されない。しかし、浸漬時間22時間では、コーティング層が喪失し、基材の浸食が生じていた。なお、内層と外層との複層コーティング皮膜(△)では、浸漬時間4時間ですでに、局部的にコーティング皮膜が破壊され、金属基材が浸食されているのが観察された。これより、コーティング皮膜は顕著に湯溶浸食を抑制し、酸化物皮膜はより効果的に機能していることが明らかとなった。
また、以上のことから、同じ減肉量で比較すると、コーティング皮膜の寿命は金属基材の寿命の約10倍であり、700℃では50倍以上になると考えられる。
〈浸漬試験後の断面組織と各元素の濃度分布〉
図15は、SS400からなる金属基材の表面に内層、外層および酸化物層を形成した試験片の溶融Alへの浸漬試験後の走査型電子顕微鏡写真およびEDAXを用いて測定した各元素の濃度分布(図15に示す写真の分析線LG1に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。浸漬は大気中、800℃、4時間45分の条件で行った。表13は図15に示した各元素の濃度をまとめた分析表である。図15および表13より、内層のチタン炭化物は連続層として残存しており、酸化物層はチタン酸化物(TiO2 )として存在している。基本的には、浸漬試験前後で、コーティング構造には変化はない。このことから、チタンの酸化により形成されるTiO2 は溶融Alに対して安定であることが実証された。
図16は、S45Cからなる金属基材の表面に内層、外層および酸化物層を形成した試験片の溶融Alへの浸漬試験後の走査型電子顕微鏡写真およびEDAXを用いて測定した各元素の濃度分布(図16に示す写真の分析線LG1に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。浸漬は大気中、800℃、4時間の条件で行った。表14は図16に示した各元素の濃度をまとめた分析表である。図16および表14より、内層のチタン炭化物は連続層として残存しており、酸化物層はチタン酸化物(TiO2 )として存在している。基本的には、浸漬試験前後で、コーティング構造には変化はない。また、チタン酸化物層に、Al溶湯からのAlの侵入は見られない。このことから、TiO2 は溶融Alに対して安定であることが実証された。
図17は、SUS310からなる金属基材の表面に内層、外層および酸化物層を形成した試験片の溶融Alへの浸漬試験後の走査型電子顕微鏡写真およびEDAXを用いて測定した各元素の濃度分布(図17に示す写真の分析線LG1に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。浸漬は大気中、800℃、12時間の条件で行った。表15は図17に示した各元素の濃度をまとめた分析表である。図17および表15より、外層の表面は(Fe,Ni)Al合金に変化していたが、Alの侵入は内層のW−Ta−Nb−Ti系合金層で阻止されており、金属基材への侵入は認められない。
図18は、SUS310からなる金属基材の表面に内層、外層および酸化物層を形成した試験片の溶融Alへの浸漬試験後の走査型電子顕微鏡写真およびEDAXを用いて測定した各元素の濃度分布(図18に示す写真の分析線LG1に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。浸漬は大気中、700℃、25時間の条件で行った。表16は図18に示した各元素の濃度をまとめた分析表である。図18および表16より、Al2 3 系酸化物層が残存し、コーティング皮膜の構造にも変化は認められない。Alの侵入は内層のW−Ta−Nb−Ti系合金層で阻止されており、金属基材への侵入は認められない。
図19は、SS400からなる金属基材の表面に内層、外層および酸化物層を形成した試験片の溶融Alへの浸漬試験後の走査型電子顕微鏡写真およびEDAXを用いて測定した各元素の濃度分布(図19に示す写真の分析線LG3に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。浸漬は大気中、700℃、25時間の条件で行った。表17は図19に示した各元素の濃度をまとめた分析表である。図19および表17より、Al2 3 系酸化物層が残存し、コーティング皮膜の構造にも変化は認められない。Alの侵入は内層のNb−Ti−W系合金層で阻止されており、金属基材への侵入は認められない。
図20は、SUS310からなる金属基材の表面に外層形成用のスラリー状原料粉末を塗布したものをアルミナ粉末に埋没して加熱した際に形成された試料のSEM−EDAXによる表面組織の観察結果を示す。また、表18は図20に示す各点における元素分析の結果を示す。SUS310からなる金属基材の表面に外層形成用のスラリー状原料粉末を塗布したものをアルミナ粉末に埋没して加熱すると、コーティングの表層はアルミナ粒子とチタニア粒子とを含んだサーメットが形成されることを見出した。図20および表18より、Al2 3 粒子とチタン含有の酸化物とが表面を被覆していることが確認された。以上のことから、アルミナ粉末に埋没させて加熱処理することによって、外層の表層に合金と酸化物の混合相、いわゆるサ−メット層を形成することができることが分かった。その理由は、スラリーに含まれているチタンによって、アルミナが部分分解されるものと推定される。このサーメット層は高温酸化と湯溶浸食の抑制に効果的である。
〈浸漬試験のまとめ〉
(1)金属・合金の減肉速度は鋼種に依存せず、ほぼ類似の時間依存性を示し、1mmの肉厚の減少に要する浸漬時間は700℃では2.6時間、800℃では1時間である。
(2)コーティングした金属・合金の減肉速度は、内層と外層と酸化物層との三層構造のコーティングは、鋼種に依存せず、ほぼ類似の時間依存性を示し、700℃では100時間浸漬後も、コーティング層が残存しており、金属基材の湯溶浸食には至っていない。800℃では約22時間後に、コーティング層が溶出分解される。コーティングの効果は、金属基材に比較して、700℃では50倍以上、800℃では10倍以上である。内層と外層から構成される複層コーティング(酸化物層がない場合) では、鋼種に依存せず、ほぼ類似の時間依存性を示し、良好な耐湯溶浸食性を示しているが、局部的に浸食が進行するのが観察される。
(3)本発明では、チタンを含有する外層を提案したが、このチタンは良好な湯溶浸食性を有することが確認された。酸化物層として、チタン酸化物は溶融Al−Si合金に対して安定であり、チタン酸化物はアルミニウムが外層から内層へ拡散侵入するのを効果的に阻止することが明らかとなった。
以上、この発明の一実施の形態および実施例について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施の形態および実施例に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
なお、この発明の保護皮膜は、溶融金属に接触する金属基材の表面に形成するだけでなく、雰囲気での高温酸化に晒される各種の金属基材に適用することが可能である。例えば、航空機のジェットエンジンの大幅な軽量化に有効とされるチタン−アルミニウム合金からなる金属基材により構成されるタービン翼にこの発明の保護皮膜を適用することが可能であり、これによりタービン翼、ひいてはジェットエンジンの長寿命化を図ることができる。
100…金属基材、200…内層、300…内層、400…酸化物層

Claims (17)

  1. 金属基材と、
    上記金属基材の、少なくとも処理しようとする溶融金属と接触する側の表面に設けられた保護皮膜とを有し、
    上記保護皮膜は、
    上記金属基材上の、素地金属中に金属炭化物が分散し、または、金属炭化物からなる連続層を含み、上記金属炭化物は、チタン炭化物、ニオブ炭化物、タングステン炭化物およびアルミニウム炭化物からなる群より選ばれた少なくとも一種である内層と、
    上記内層上の、チタン、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステンおよびそれらの炭化物からなる群より選ばれた少なくとも一種を含む外層と、
    上記外層上の、チタン酸化物、または、チタン酸化物およびアルミニウム酸化物を含む酸化物層と、
    を有し、金属溶解槽、金属溶融鍋、金属めっき槽、熱電対保護管、溶融金属掻き混ぜ棒、溶融金属を搬送するためのラドル、溶融金属の表面に浮かぶノロを掬い取るためのノロ掻き、溶融金属を掬うための湯掬い鍋または溶融金属を掬うための柄杓である溶融金属処理機器。
  2. 上記金属基材は鉄鋼材料、非鉄金属材料またはFe、CoおよびNiからなる群より選択された少なくとも一種の元素とWとCrとを含有する合金からなる請求項1記載の溶融金属処理機器。
  3. 上記鉄鋼材料は軟鋼、炭素鋼、鋳鉄、鋳鋼またはステンレス鋼であり、上記非鉄金属材料はチタンまたは耐熱チタン合金である請求項2記載の溶融金属処理機器。
  4. 上記内層が上記連続層を含む場合、上記連続層の厚さは1μm以上20μm以下である請求項1〜3のいずれか一項記載の溶融金属処理機器。
  5. 上記外層はチタンおよびアルミニウムを含有する請求項1〜4のいずれか一項記載の溶融金属処理機器。
  6. 上記チタンおよび上記アルミニウムの総和が50原子%以上95原子%以下である請求項5記載の溶融金属処理機器。
  7. 上記チタンおよび上記アルミニウムの総和が60原子%以上90原子%以下である請求項6記載の溶融金属処理機器。
  8. 上記外層はモリブデンを含有し、上記モリブデンの総和が60原子%以上である請求項1〜4のいずれか一項記載の溶融金属処理機器。
  9. 上記モリブデンの総和が60原子%以上90原子%以下である請求項8記載の溶融金属処理機器。
  10. 上記酸化物層は鉄、コバルト、ニッケル、クロム、マンガン、ニオブ、タンタル、タングステン、ホウ素およびケイ素からなる群より選ばれた少なくとも一種の元素の酸化物をさらに含む請求項1〜9のいずれか一項記載の溶融金属処理機器。
  11. 上記溶融金属は溶融アルミニウムまたは溶融亜鉛である請求項1〜10のいずれか一項記載の溶融金属処理機器。
  12. 金属基材の、少なくとも処理しようとする溶融金属と接触する側の表面に設けられた保護皮膜であって、
    上記金属基材上の、素地金属中に金属炭化物が分散し、または、金属炭化物からなる連続層を含み、上記金属炭化物は、チタン炭化物、ニオブ炭化物、タングステン炭化物およびアルミニウム炭化物からなる群より選ばれた少なくとも一種である内層と、
    上記内層上の、チタン、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステンおよびそれらの炭化物からなる群より選ばれた少なくとも一種を含む外層と、
    上記外層上の、チタン酸化物、または、チタン酸化物およびアルミニウム酸化物を含む酸化物層と、
    を有する保護皮膜。
  13. 金属基材の表面に金属炭化物を含むスラリー状粉末を塗布した後、第1の温度で加熱溶融することにより、素地金属中に金属炭化物が分散し、または、金属炭化物からなる連続層を含む内層を形成する工程と、
    上記内層上にチタン、ニオブ、タンタルおよびモリブデンからなる群より選ばれた少なくとも一種を含むスラリー状粉末を塗布した後、上記第1の温度より低い第2の温度で加熱溶融することにより、処理しようとする溶融金属への溶融温度での溶解度が1原子%以下の金属またはその化合物を含む外層を形成する工程と、
    上記外層上に、上記溶融金属の溶融温度での耐酸化性および上記溶融金属に対する耐性を有する酸化物層を上記第1の温度および上記第2の温度以下の第3の温度で形成する工程と、
    を有する、金属溶解槽、金属溶融鍋、金属めっき槽、熱電対保護管、溶融金属掻き混ぜ棒、溶融金属を搬送するためのラドル、溶融金属の表面に浮かぶノロを掬い取るためのノロ掻き、溶融金属を掬うための湯掬い鍋または溶融金属を掬うための柄杓である溶融金属処理機器の製造方法。
  14. 0.1重量%以上の炭素を含有する金属基材の表面に金属を含むスラリー状粉末を塗布した後、第1の温度で加熱溶融することにより、素地金属中に金属炭化物が分散し、または、金属炭化物からなる連続層を含む内層を形成する工程と、
    上記内層上にチタン、ニオブ、タンタルおよびモリブデンからなる群より選ばれた少なくとも一種を含むスラリー状粉末を塗布した後、上記第1の温度より低い第2の温度で加熱溶融することにより、処理しようとする溶融金属への溶融温度での溶解度が1原子%以下の金属またはその化合物を含む外層を形成する工程と、
    上記外層上に、上記溶融金属の溶融温度での耐酸化性および上記溶融金属に対する耐性を有する酸化物層を上記第1の温度および上記第2の温度以下の第3の温度で形成する工程と、
    を有する、金属溶解槽、金属溶融鍋、金属めっき槽、熱電対保護管、溶融金属掻き混ぜ棒、溶融金属を搬送するためのラドル、溶融金属の表面に浮かぶノロを掬い取るためのノロ掻き、溶融金属を掬うための湯掬い鍋または溶融金属を掬うための柄杓である溶融金属処理機器の製造方法。
  15. 上記外層を形成した後、上記外層の表面を上記第3の温度で酸化処理することにより上記酸化物層を形成する請求項13または14記載の溶融金属処理機器の製造方法。
  16. 金属基材の表面に金属炭化物を含むスラリー状粉末を塗布した後、第1の温度で加熱溶融することにより、素地金属中に金属炭化物が分散し、または、金属炭化物からなる連続層を含む内層を形成する工程と、
    上記内層上にチタン、ニオブ、タンタルおよびモリブデンからなる群より選ばれた少なくとも一種を含むスラリー状粉末を塗布した後、上記第1の温度より低い第2の温度で加熱溶融することにより、処理しようとする溶融金属への溶融温度での溶解度が1原子%以下の金属またはその化合物を含む外層を形成する工程と、
    上記外層上に、上記溶融金属の溶融温度での耐酸化性および上記溶融金属に対する耐性を有する酸化物層を上記第1の温度および上記第2の温度以下の第3の温度で形成する工程と、
    を有する保護皮膜の製造方法。
  17. 0.1重量%以上の炭素を含有する金属基材の表面に金属を含むスラリー状粉末を塗布した後、第1の温度で加熱溶融することにより、素地金属中に金属炭化物が分散し、または、金属炭化物からなる連続層を含む内層を形成する工程と、
    上記内層上にチタン、ニオブ、タンタルおよびモリブデンからなる群より選ばれた少なくとも一種を含むスラリー状粉末を塗布した後、上記第1の温度より低い第2の温度で加熱溶融することにより、処理しようとする溶融金属への溶融温度での溶解度が1原子%以下の金属またはその化合物を含む外層を形成する工程と、
    上記外層上に、上記溶融金属の溶融温度での耐酸化性および上記溶融金属に対する耐性を有する酸化物層を上記第1の温度および上記第2の温度以下の第3の温度で形成する工程と、
    を有する保護皮膜の製造方法。
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