以下、本技術の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。
1.第1二次電池(角型)
1−1.負極とセパレータとの間に形成された難燃層
1−2.正極とセパレータとの間に形成された難燃層
1−3.負極とセパレータとの間に形成された難燃層および正極とセパレータとの間に形成された難燃層
1−4.正極と負極との間に形成されたセパレータ(難燃層として機能するセパレータ)
2.第2二次電池(円筒型)
2−1.負極とセパレータとの間に形成された難燃層
2−2.正極とセパレータとの間に形成された難燃層
2−3.負極とセパレータとの間に形成された難燃層および正極とセパレータとの間に形成された難燃層
2−4.正極と負極との間に形成されたセパレータ(難燃層として機能するセパレータ)
3.第3二次電池(ラミネートフィルム型)
3−1.負極とセパレータとの間に形成された難燃層
3−2.正極とセパレータとの間に形成された難燃層
3−3.負極とセパレータとの間に形成された難燃層および正極とセパレータとの間に形成された難燃層
3−4.正極と負極との間に形成された電解質層(難燃層として機能する電解質層)
4.二次電池の用途
4−1.電池パック(単電池)
4−2.電池パック(組電池)
4−3.電動車両
4−4.電力貯蔵システム
4−5.電動工具
<1.第1二次電池(角型)>
<1−1.負極とセパレータとの間に形成された難燃層>
まず、本技術の一実施形態の第1二次電池(以下、単に「二次電池」または「本技術の二次電池」という。)について説明する。なお、本技術の一実施形態の「二次電池用電極」に関しては、以下で併せて説明する。
[二次電池の全体構成]
図1および図2は、いずれも二次電池の断面構成を表しており、図2では、図1に示したII−II線に沿った断面を示している。図3は、図2に示した電池素子20の詳細な構成を表している。図4は、図3に示した電池素子20の一部を模式的に表している。図5は、参考例の電池素子20の構成を模式的に表しており、図4に対応している。
ここで説明する二次電池は、電極反応物質の吸蔵放出により負極22の電池容量が得られる二次電池であり、いわゆる角型の電池構造を有している。
「電極反応物質」とは、電極反応に関わる物質であり、例えば、リチウム(Li)の吸蔵放出により電池容量が得られる二次電池(リチウムイオン二次電池)では、リチウムである。以下では、本技術の二次電池がリチウムイオン二次電池である場合について説明する。
この二次電池では、例えば、図1および図2に示したように、電池缶11の内部に電池素子20が収納されている。電池素子20は、セパレータ23および難燃層26を介して正極21と負極22とが積層されてから巻回されたものであると共に、電池缶11の形状に応じて扁平状である。この電池素子20には、電解液が含浸されている。
電池缶11は、角型の外装部材である。この角型の外装部材とは、図2に示したように、長手方向における断面が矩形型または略矩形型(一部に曲線を含む)の形状を有しており、矩形状だけでなくオーバル形状を有していてもよい。すなわち、角型の外装部材は、矩形状または円弧を直線で結んだ略矩形状(長円形状)の開口部を有する有底矩形型または有底長円形状型の器状部材である。なお、図2では、電池缶11が矩形型の断面形状を有する場合を示している。
この電池缶11は、例えば、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)およびそれらの合金などの導電性材料のいずれか1種類または2種類以上により形成されており、電極端子として機能する場合もある。中でも、充放電時に固さ(変形しにくさ)を利用して電池缶11の膨れを抑えるために、アルミニウムよりも固い鉄などが好ましい。なお、電池缶11が鉄製である場合には、その電池缶11の表面に、ニッケル(Ni)などの金属材料が鍍金されていてもよい。
また、電池缶11は、一端部が開放されると共に他端部が閉鎖された中空構造を有していると共に、その一端部(開放端部)に取り付けられた絶縁板12および電池蓋13により密閉されている。絶縁板12は、電池素子20と電池蓋13との間に配置されていると共に、例えば、ポリプロピレンなどの絶縁性材料により形成されている。電池蓋13は、例えば、電池缶11と同様の材料により形成されており、その電池缶11と同様に電極端子として機能してもよい。
電池蓋13の外側には、正極端子となる端子板14が設けられており、その端子板14は、絶縁ケース16を介して電池蓋13から電気的に絶縁されている。この絶縁ケース16は、例えば、ポリブチレンテレフタレートなどの絶縁性材料により形成されている。電池蓋13のほぼ中央に貫通孔が設けられており、その貫通孔には、正極ピン15が挿入されている。この正極ピン15は、端子板14と電気的に接続されていると共に、ガスケット17を介して電池蓋13から電気的に絶縁されている。ガスケット17は、例えば、絶縁性材料により形成されており、そのガスケット17の表面には、例えば、アスファルトが塗布されている。
電池蓋13の周縁付近には、開裂弁18および注入孔19が設けられており、その開裂弁18は、電池蓋13と電気的に接続されている。この開裂弁18は、内部短絡、または外部からの加熱などに起因して二次電池の内圧が一定以上になると電池蓋13から切り離されるため、その内圧を開放する。注入孔19は、例えば、ステンレス鋼球などの封止部材19Aにより塞がれている。
正極21の端部(例えば、内終端部)には、アルミニウムなどの導電性材料により形成された正極リード24が取り付けられていると共に、負極22の端部(例えば、外終端部)には、ニッケルなどの導電性材料により形成された負極リード25が取り付けられている。正極リード24は、正極ピン15の一端に取り付けられていると共に、端子板14と電気的に接続されている。負極リード25は、電池缶11に取り付けられていると共に、その電池缶11と電気的に接続されている。
[正極]
正極21は、例えば、図3に示したように、正極集電体21Aの両面に正極活物質層21Bを有している。ただし、正極21は、正極集電体21Aの片面だけに正極活物質層21Bを有していてもよい。
正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)またはステンレスなどの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上により形成されている。
正極活物質層21Bは、正極活物質として、リチウムを吸蔵放出可能である正極材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、正極活物質層21Bは、さらに、正極結着剤および正極導電剤などの他の材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
正極材料は、リチウム含有化合物であることが好ましい。高いエネルギー密度が得られるからである。このリチウム含有化合物は、例えば、リチウム遷移金属複合酸化物およびリチウム遷移金属リン酸化合物などである。リチウム遷移金属複合酸化物は、リチウムと1または2以上の遷移金属元素とを構成元素として含む酸化物であり、リチウム遷移金属リン酸化合物は、リチウムと1または2以上の遷移金属元素とを構成元素として含むリン酸化合物である。中でも、遷移金属元素は、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)および鉄(Fe)などのうちのいずれか1種類または2種類以上であることが好ましい。より高い電圧が得られるからである。その化学式は、例えば、Lix M1O2 またはLiy M2PO4 で表される。式中、M1およびM2のそれぞれは、1種類以上の遷移金属元素である。xおよびyのそれぞれの値は、充放電状態に応じて異なるが、通常、0.05≦x≦1.10、0.05≦y≦1.10を満たす。
リチウム遷移金属複合酸化物の具体例は、LiCoO2 、LiNiO2 、および下記の式(20)で表されるリチウムニッケル系複合酸化物などである。リチウム遷移金属リン酸化合物の具体例は、LiFePO4 およびLiFe1-u Mnu PO4 (u<1)などである。高い電池容量が得られると共に、優れたサイクル特性も得られるからである。
LiNi1-z Mz O2 ・・・(20)
(Mは、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、バナジウム(V)、スズ(Sn)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、イッテルビウム(Yb)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、バリウム(Ba)、ホウ素(B)、クロム(Cr)、ケイ素(Si)、ガリウム(Ga)、リン(P)、アンチモン(Sb)およびニオブ(Nb)のうちの少なくとも1種であり、zは、0.005<z<0.5を満たす。)
この他、正極材料は、例えば、酸化物、二硫化物、カルコゲン化物および導電性高分子などのうちのいずれか1種類または2種類以上でもよい。酸化物は、例えば、酸化チタン、酸化バナジウムおよび二酸化マンガンなどである。二硫化物は、例えば、二硫化チタンおよび硫化モリブデンなどである。カルコゲン化物は、例えば、セレン化ニオブなどである。導電性高分子は、例えば、硫黄、ポリアニリンおよびポリチオフェンなどである。ただし、正極材料は、上記以外の材料でもよい。
正極活物質層21Bは、複数の粒子状の正極活物質(正極活物質粒子)を含んでいる。これに伴い、正極活物質層21Bは、例えば、塗布法および焼成法(焼結法)などのうちのいずれか1種類または2種類以上の方法により形成されている。塗布法とは、例えば、正極活物質と正極結着剤などとの混合物を有機溶剤などの溶媒に分散または溶解させてスラリーとしたのち、そのスラリーを正極集電体21Aに塗布する方法である。焼成法とは、例えば、塗布法を用いてスラリーを正極集電体21Aに塗布したのち、正極結着剤などの融点よりも高い温度で熱処理する方法である。この焼成法は、例えば、雰囲気焼成法、反応焼成法およびホットプレス焼成法などのうちのいずれか1種類または2種類以上である。
正極結着剤は、例えば、合成ゴムおよび高分子化合物などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。合成ゴムは、例えば、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴムおよびエチレンプロピレンジエンなどである。高分子化合物は、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリル酸およびポリイミドなどである。
正極導電剤は、例えば、炭素材料などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。この炭素材料は、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラックおよびケチェンブラックなどである。なお、正極導電剤は、導電性を有する材料であれば、金属材料および導電性高分子などでもよい。
[負極]
負極22は、例えば、図3に示したように、負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bを有している。ただし、負極22は、負極集電体22Aの片面だけに負極活物質層22Bを有していてもよい。
負極集電体22Aは、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)およびステンレスなどの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上により形成されている。この負極集電体22Aの表面は、粗面化されていることが好ましい。いわゆるアンカー効果により、負極集電体22Aに対する負極活物質層22Bの密着性が向上するからである。この場合には、少なくとも負極活物質層22Bと対向する領域において、負極集電体22Aの表面が粗面化されていればよい。粗面化の方法は、例えば、電解処理を利用して微粒子を形成する方法などである。この電解処理とは、電解槽中において電解法を用いて負極集電体22Aの表面に微粒子を形成することで、その負極集電体22Aの表面に凹凸を設ける方法である。電解法により作製された銅箔は、一般的に、電解銅箔と呼ばれている。
負極活物質層22Bは、負極活物質として、リチウムを吸蔵放出可能である負極材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、負極活物質層22Bは、さらに、負極結着剤および負極導電剤などの他の材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。負極結着剤および負極導電剤に関する詳細は、例えば、正極結着剤および正極導電剤と同様である。
ただし、充電途中において意図せずにリチウム金属が負極22に析出することを防止するために、負極材料の充電可能な容量は正極21の放電容量よりも大きいことが好ましい。すなわち、リチウムを吸蔵放出可能である負極材料の電気化学当量は正極21の電気化学当量よりも大きいことが好ましい。
負極材料は、例えば、炭素材料のうちのいずれか1種類または2種類以上である。リチウムの吸蔵放出時における結晶構造の変化が非常に少ないため、高いエネルギー密度および優れたサイクル特性が得られるからである。また、炭素材料は負極導電剤としても機能するからである。この炭素材料は、例えば、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素および黒鉛などである。ただし、難黒鉛化性炭素における(002)面の面間隔は0.37nm以上であることが好ましいと共に、黒鉛における(002)面の面間隔は0.34nm以下であることが好ましい。より具体的には、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素繊維、有機高分子化合物焼成体、活性炭およびカーボンブラック類などである。このコークス類は、ピッチコークス、ニードルコークスおよび石油コークスなどを含む。有機高分子化合物焼成体は、フェノール樹脂およびフラン樹脂などの高分子化合物が適当な温度で焼成(炭素化)されたものである。この他、炭素材料は、約1000℃以下の温度で熱処理された低結晶性炭素でもよいし、非晶質炭素でもよい。なお、炭素材料の形状は、繊維状、球状、粒状および鱗片状のいずれでもよい。
また、負極材料は、例えば、金属元素および半金属元素のうちのいずれか1種類または2種類を構成元素として含む材料(金属系材料)である。高いエネルギー密度が得られるからである。この金属系材料は、単体、合金および化合物のいずれでもよいし、それらの2種類以上でもよいし、それらの1種類または2種類以上の相を少なくとも一部に有していてもよい。なお、合金には、2種類以上の金属元素からなる合金に加えて、1種類以上の金属元素と1種類以上の半金属元素とを含む合金も含まれる。また、合金は、非金属元素を含んでいてもよい。その組織には、固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物、およびそれらの2種類以上の共存物などがある。
上記した金属元素および半金属元素は、例えば、リチウムと合金を形成可能である金属元素および半金属元素のうちのいずれか1種類または2種類以上である。具体的には、例えば、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)および白金(Pt)などである。中でも、ケイ素およびスズのいずれか一方または双方が好ましい。リチウムを吸蔵放出する能力が優れているため、高いエネルギー密度が得られるからである。
ケイ素およびスズのいずれか一方または双方を構成元素として含む材料は、ケイ素の単体、ケイ素の合金、ケイ素の化合物、スズの単体、スズの合金およびスズの化合物のうちのいずれでもよいし、それらの2種類以上でもよいし、それらの1種類または2種類以上の相を少なくとも一部に有していてもよい。なお、単体とは、あくまで一般的な意味合いでの単体(微量の不純物を含んでいてもよい)であり、必ずしも純度100%を意味しているわけではない。
ケイ素の合金は、例えば、ケイ素以外の構成元素として、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ケイ素の化合物は、例えば、ケイ素以外の構成元素として、炭素(C)および酸素(O)などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。なお、ケイ素の化合物は、例えば、ケイ素以外の構成元素として、ケイ素の合金に関して説明した元素のいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
ケイ素の合金およびケイ素の化合物の具体例は、SiB4 、SiB6 、Mg2 Si、Ni2 Si、TiSi2 、MoSi2 、CoSi2 、NiSi2 、CaSi2 、CrSi2 、Cu5 Si、FeSi2 、MnSi2 、NbSi2 、TaSi2 、VSi2 、WSi2 、ZnSi2 、SiC、Si3 N4 、Si2 N2 O、SiOv (0<v≦2)、およびLiSiOなどである。なお、SiOv におけるvは、0.2<v<1.4でもよい。
スズの合金は、例えば、スズ以外の構成元素として、ケイ素(Si)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。スズの化合物は、例えば、スズ以外の構成元素として、炭素および酸素などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。なお、スズの化合物は、例えば、スズ以外の構成元素として、スズの合金に関して説明した元素のいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
スズの合金およびスズの化合物の具体例は、SnOw (0<w≦2)、SnSiO3 、LiSnOおよびMg2 Snなどである。
特に、スズを構成元素として含む材料は、例えば、スズ(第1構成元素)と共に第2および第3構成元素を構成元素として含む材料であることが好ましい。第2構成元素は、例えば、コバルト、鉄、マグネシウム、チタン、バナジウム(V)、クロム、マンガン、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム(Ga)、ジルコニウム、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、銀、インジウム、セシウム(Ce)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ビスマスおよびケイ素などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。第3構成元素は、例えば、ホウ素、炭素、アルミニウムおよびリン(P)などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。第2および第3構成元素を含むことで、高い電池容量および優れたサイクル特性などが得られるからである。
中でも、スズ、コバルトおよび炭素を構成元素として含む材料(SnCoC含有材料)が好ましい。このSnCoC含有材料では、例えば、炭素の含有量が9.9質量%〜29.7質量%、スズおよびコバルトの含有量の割合(Co/(Sn+Co))が20質量%〜70質量%である。高いエネルギー密度が得られるからである。
SnCoC含有材料は、スズ、コバルトおよび炭素を含む相を有しており、その相は、低結晶性または非晶質であることが好ましい。この相は、電極反応物質と反応可能な反応相であるため、その反応相の存在により優れた特性が得られる。この反応相のX線回折により得られる回折ピークの半値幅(回折角2θ)は、特定X線としてCuKα線を用いると共に挿引速度を1°/minとした場合において、1°以上であることが好ましい。電極反応物質がより円滑に吸蔵放出されると共に、電解液との反応性が低減するからである。なお、SnCoC含有材料は、低結晶性または非晶質の相に加えて、各構成元素の単体または一部が含まれている相を含んでいる場合もある。
X線回折により得られた回折ピークが電極反応物質と反応可能な反応相に対応するものであるか否かは、電極反応物質との電気化学的反応の前後におけるX線回折チャートを比較すれば容易に判断できる。例えば、電極反応物質との電気化学的反応の前後において回折ピークの位置が変化すれば、電極反応物質と反応可能な反応相に対応するものである。この場合には、例えば、低結晶性または非晶質の反応相の回折ピークが2θ=20°〜50°の間に見られる。このような反応相は、例えば、上記した各構成元素を含んでおり、主に、炭素の存在に起因して低結晶化または非晶質化しているものと考えられる。
SnCoC含有材料では、構成元素である炭素のうちの少なくとも一部が他の構成元素である金属元素または半金属元素と結合していることが好ましい。スズなどの凝集または結晶化が抑制されるからである。元素の結合状態に関しては、例えば、XPSを用いて確認可能である。市販の装置では、例えば、軟X線としてAl−Kα線またはMg−Kα線などが用いられる。炭素のうちの少なくとも一部が金属元素または半金属元素などと結合している場合には、炭素の1s軌道(C1s)の合成波のピークが284.5eVよりも低い領域に現れる。なお、金原子の4f軌道(Au4f)のピークは、84.0eVに得られるようにエネルギー較正されているものとする。この際、通常、物質表面に表面汚染炭素が存在しているため、その表面汚染炭素のC1sのピークを284.8eVとして、そのピークをエネルギー基準とする。XPS測定において、C1sのピークの波形は、表面汚染炭素のピークとSnCoC含有材料中の炭素のピークとを含んだ形で得られる。このため、例えば、市販のソフトウエアを用いて解析することで、両者のピークを分離する。波形の解析では、最低束縛エネルギー側に存在する主ピークの位置をエネルギー基準(284.8eV)とする。
このSnCoC含有材料は、構成元素がスズ、コバルトおよび炭素だけである材料(SnCoC)に限られない。このSnCoC含有材料は、例えば、スズ、コバルトおよび炭素に加えて、さらにケイ素、鉄、ニッケル、クロム、インジウム、ニオブ、ゲルマニウム、チタン、モリブデン、アルミニウム、リン、ガリウムおよびビスマスなどのうちのいずれか1種類または2種類以上を構成元素として含んでいてもよい。
SnCoC含有材料の他、スズ、コバルト、鉄および炭素を構成元素として含む材料(SnCoFeC含有材料)も好ましい。このSnCoFeC含有材料の組成は、任意である。一例を挙げると、鉄の含有量を少なめに設定する場合は、炭素の含有量が9.9質量%〜29.7質量%、鉄の含有量が0.3質量%〜5.9質量%、スズおよびコバルトの含有量の割合(Co/(Sn+Co))が30質量%〜70質量%である。また、鉄の含有量を多めに設定する場合は、炭素の含有量が11.9質量%〜29.7質量%、スズ、コバルトおよび鉄の含有量の割合((Co+Fe)/(Sn+Co+Fe))が26.4質量%〜48.5質量%、コバルトおよび鉄の含有量の割合(Co/(Co+Fe))が9.9質量%〜79.5質量%である。このような組成範囲において、高いエネルギー密度が得られるからである。なお、SnCoFeC含有材料の物性(半値幅など)は、上記したSnCoC含有材料の物性と同様である。
この他、負極材料は、例えば、金属酸化物および高分子化合物などのうちのいずれか1種類または2種類以上でもよい。金属酸化物は、例えば、酸化鉄、酸化ルテニウムおよび酸化モリブデンなどである。高分子化合物は、例えば、ポリアセチレン、ポリアニリンおよびポリピロールなどである。
負極活物質層22Bは、複数の粒子状の負極活物質(負極活物質粒子)を含んでいる。これに伴い、負極活物質層22Bは、例えば、塗布法および焼成法(焼結法)などのうちのいずれか1種類または2種類以上の方法により形成されている。
この二次電池では、上記したように、充電途中において負極22にリチウム金属が意図せずに析出することを防止するために、リチウムを吸蔵放出可能である負極材料の電気化学当量は、正極の電気化学当量よりも大きいことが好ましい。また、完全充電時の開回路電圧(すなわち電池電圧)が4.25V以上であると、4.20Vである場合と比較して、同じ正極活物質を用いても単位質量当たりのリチウムの放出量が多くなる。これに伴い、高いエネルギー密度を得るために、正極活物質の量と負極活物質の量とが調整されている。
[セパレータ]
セパレータ23は、正極21と負極22とを隔離することで、両極の接触に起因する電流の短絡を防止しながらリチウムイオンを通過させるものである。このセパレータ23は、例えば、合成樹脂およびセラミックなどの多孔質膜であり、2種類以上の多孔質膜が積層された積層膜でもよい。合成樹脂は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンおよびポリエチレンなどである。
特に、セパレータ23は、例えば、上記した多孔質膜(基材層)の片面または両面に高分子化合物層を有していてもよい。正極21および負極22に対するセパレータ23の密着性が向上するため、電池素子20の歪みが抑制されるからである。これにより、電解液の分解反応が抑制されると共に、基材層に含浸された電解液の漏液も抑制されるため、充放電を繰り返しても抵抗が上昇しにくくなると共に、二次電池が膨れにくくなる。
高分子化合物層は、例えば、ポリフッ化ビニリデンなどの高分子化合物を含んでいる。物理的強度に優れていると共に、電気化学的に安定だからである。ただし、高分子化合物は、ポリフッ化ビニリデン以外の化合物でもよい。この高分子化合物層を形成する場合には、例えば、高分子化合物が分散または溶解された溶液を準備したのち、その溶液を基材層に塗布する。なお、溶液中に基材層を浸漬させてから乾燥させてもよい。
[電解液]
電池素子20に含浸されている電解液は、溶媒および電解質塩を含んでいる。ただし、電解液は、さらに、添加剤などの他の材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
溶媒は、有機溶媒などの非水溶媒のいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。非水溶媒を含む電解液は、いわゆる非水電解液である。
非水溶媒は、例えば、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、ラクトン、鎖状カルボン酸エステルおよびニトリルなどである。優れた電池容量、サイクル特性および保存特性などが得られるからである。環状炭酸エステルは、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレンおよび炭酸ブチレンなどであり、鎖状炭酸エステルは、例えば、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチルおよび炭酸メチルプロピルなどである。ラクトンは、例えば、γ−ブチロラクトンおよびγ−バレロラクトンなどである。鎖状カルボン酸エステルは、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチルおよびトリメチル酢酸エチルなどである。ニトリルは、例えば、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリルおよび3−メトキシプロピオニトリルなどである。
この他、非水溶媒は、例えば、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、燐酸トリメチルおよびジメチルスルホキシドなどでもよい。同様の利点が得られるからである。
中でも、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチルおよび炭酸エチルメチルのいずれか1種類または2種類以上が好ましい。より優れた電池容量、サイクル特性および保存特性などが得られるからである。この場合には、炭酸エチレンおよび炭酸プロピレンなどの高粘度(高誘電率)溶媒(例えば比誘電率ε≧30)と、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチルおよび炭酸ジエチルなどの低粘度溶媒(例えば粘度≦1mPa・s)との組み合わせがより好ましい。電解質塩の解離性およびイオンの移動度が向上するからである。
特に、溶媒は、不飽和環状炭酸エステル、ハロゲン化炭酸エステル、スルトン(環状スルホン酸エステル)および酸無水物などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。電解液の化学的安定性が向上するからである。不飽和環状炭酸エステルとは、1または2以上の不飽和結合(炭素間二重結合)を有する環状炭酸エステルであり、例えば、炭酸ビニレン、炭酸ビニルエチレンおよび炭酸メチレンエチレンなどである。ハロゲン化炭酸エステルとは、1または2以上のハロゲンを構成元素として含む環状または鎖状の炭酸エステルである。環状のハロゲン化炭酸エステルは、例えば、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンおよび4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンなどである。鎖状のハロゲン化炭酸エステルは、例えば、炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)および炭酸ジフルオロメチルメチルなどである。スルトンは、例えば、プロパンスルトンおよびプロペンスルトンなどである。酸無水物は、例えば、無水コハク酸、無水エタンジスルホン酸および無水スルホ安息香酸などである。ただし、溶媒は、上記以外の材料でもよい。
電解質塩は、例えば、リチウム塩などの塩のいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、電解質塩は、例えば、リチウム塩以外の塩を含んでいてもよい。このリチウム以外の塩は、例えば、リチウム以外の軽金属の塩などである。
リチウム塩は、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 )、過塩素酸リチウム(LiClO4 )、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6 )、テトラフェニルホウ酸リチウム(LiB(C6 H5 )4 )、メタンスルホン酸リチウム(LiCH3 SO3 )、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3 SO3 )、テトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl4 )、六フッ化ケイ酸二リチウム(Li2 SiF6 )、塩化リチウム(LiCl)および臭化リチウム(LiBr)などである。優れた電池容量、サイクル特性および保存特性などが得られるからである。
中でも、LiPF6 、LiBF4 、LiClO4 およびLiAsF6 のいずれか1種類または2種類以上が好ましく、LiPF6 がより好ましい。内部抵抗が低下するため、より高い効果が得られるからである。ただし、電解質塩は、上記以外の塩でもよい。
電解質塩の含有量は、特に限定されないが、中でも、溶媒に対して0.3mol/kg〜3.0mol/kgであることが好ましい。高いイオン伝導性が得られるからである。
[難燃層]
正極21と負極22との間には、中間層である難燃層26が配置されていると共に、その難燃層26の一部は、正極21および負極22のうちの一方または双方に入り込んでいる。
ここでは、例えば、図3に示したように、正極21と負極22との間にセパレータ23が介在しており、難燃層26は、セパレータ23と負極22との間に配置されている。これに伴い、「難燃層26の一部は負極22に入り込んでいる」とは、負極22の表面よりも内側(負極22の内部に向かう方向)に難燃層26の一部が存在することを意味している。この「入り込んでいる」の詳細に関しては、後述する(図4参照)。
言い替えれば、二次電池用電極である負極22では、活物質層である負極活物質層22Bに、表面層である難燃層26が設けられており、その難燃層26の一部は、負極活物質層22Bに入り込んでいる。
難燃層26は、負極22(負極活物質層22B)の表面を被覆するように形成されている。ただし、難燃層26は、負極22の表面のうちの一部だけを被覆していてもよいし、全部を被覆していてもよい。前者の場合には、負極22の表面に複数の難燃層26が存在していてもよい。なお、難燃層26は、単層でもよいし、多層でもよい。
この難燃層26は、難燃性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。より具体的には、難燃層26は、ポリリン酸塩、メラミン塩、下記の式(1)で表されるメラミン誘導体(以下、単に「メラミン誘導体」という。)、金属水酸化物、および金属水和物などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
(R1〜R6のそれぞれは、水素基、1価の炭化水素基、1価の水酸基含有炭化水素基、1または2以上の1価の炭化水素基と1または2以上の酸素結合とが全体として1価となるように結合された基、1または2以上の1価の水酸基含有炭化水素基と1または2以上の酸素結合とが全体として1価となるように結合された基、およびそれらの2種類以上が全体として1価となるように結合された基のうちのいずれかである。)
難燃性材料を含む難燃層26が正極21と負極22との間に配置されているのは、二次電池が高温環境中に晒されても、その難燃性材料により、リチウムイオンの移動を阻害せずに、熱暴走などの異常発生が抑制されるからである。これにより、充放電を繰り返しても、放電容量が低下しにくくなると共に、二次電池の発火および破裂などの不具合が発生しにくくなる。よって、放電容量特性およびサイクル特性などが確保されると共に、優れた安全性も得られる。
ポリリン酸塩は、例えば、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸マグネシウム、ポリリン酸バリウム、ポリリン酸亜鉛、ポリリン酸塩ニッケル、ポリリン酸アルミニウムおよびポリリン酸メラミンなどのうちのいずれか1種類または2種類以上である。ポリリン酸メラミンは、ポリリン酸塩に含まれると共に、メラミン塩およびメラミン誘導体から除かれる。ただし、ポリリン酸の塩であれば、上記以外の塩でもよい。
メラミン塩は、例えば、メラミンシアヌレートおよび硫酸メラミンなどのうちのいずれか1種類または2種類以上である。ただし、メラミンの塩であれば、上記以外の塩でもよい。
メラミン誘導体に関する式(1)において、R1〜R6のそれぞれの種類は、上記した水素基などのうちのいずれかであれば、特に限定されない。なお、R1〜R6のそれぞれは、同じ種類でもよいし、異なる種類でもよい。また、R1〜R6のうちの一部が同じ種類でもよい。メラミン誘導体が式(1)に示したメラミン型の骨格を有していることで、R1〜R6のそれぞれの種類に依存せずに、上記した利点が得られるからである。このメラミン誘導体には、メラミン(R1〜R6の全てが水素基である場合)も含まれる。
「1価の炭化水素基」とは、炭素(C)および水素(H)により構成される1価の基の総称であり、直鎖状でもよい、1または2以上の側鎖を有する分岐状でもよい。また、1価の炭化水素基は、飽和炭化水素基でもよいし、不飽和炭化水素基でもよい。なお、炭素数は、特に限定されない。
中でも、1価の炭化水素基は、アルキル基であることが好ましく、より具体的には、炭素数=1〜5のアルキル基であることが好ましい。炭素数が多すぎないため、メラミン誘導体の相溶性などが確保されるからである。具体例は、メチル基(−CH3 )、エチル基(−C2 H5 )、プロピル基(−C3 H7 )、ブチル基(−C4 H9 )およびペンチル基(−C5 H11)である。
「1価の水酸基含有炭化水素基」とは、上記した1価の炭化水素基と水酸基(−OH)とが全体として1価となるように結合された基である。
中でも、1価の水酸基含有炭化水素基は、ヒドロキシアルキル基であることが好ましく、より具体的には、炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基であることが好ましい。炭素数が多すぎないため、メラミン誘導体の相溶性などが確保されるからである。具体例は、−CH2 −OH、−C2 H4 −OH、−C3 H6 −OH、−C4 H8 −OHおよび−C5 H10−OHである。
「1または2以上の1価の炭化水素基と1または2以上の酸素結合とが全体として1価となるように結合された基(以下、「第1結合基」という。)」とは、上記した1価の炭化水素基の途中に1または2以上の酸素結合が導入された基である。
中でも、第1結合基は、炭素数=1〜5のアルキル基の途中に1または2以上の酸素結合が導入された基であることが好ましい。炭素数が多すぎないため、メラミン誘導体の相溶性などが確保されるからである。具体例は、−CH2 −O−CH3 、−C2 H4 −O−CH3 、−C3 H7 −O−CH3 、−C4 H8 −O−CH3 、−CH2 −O−C2 H5 、−CH2 −O−C3 H7 および−CH2 −O−C4 H9 などである。
「1または2以上の1価の水酸基含有炭化水素基と1または2以上の酸素結合とが全体として1価となるように結合された基(以下、「第2結合基」という。)」とは、上記した1価の水酸基含有炭化水素基の途中に1または2以上の酸素結合が導入された基である。
中でも、第2結合基は、炭素数=1〜5のヒドロキシアルキル基の途中に1または2以上の酸素結合が導入された基であることが好ましい。炭素数が多すぎないため、メラミン誘導体の相溶性などが確保されるからである。具体例は、−CH2 −O−CH2 −OH、−C2 H4 −O−CH2 −OH、−C3 H6 −O−CH2 −OH、−C4 H8 −O−CH2 −OH、−CH2 −O−C2 H4 −OH、−CH2 −O−C3 H6 −OHおよび−CH2 −O−C4 H8 −OHなどである。
メラミン誘導体の具体例は、メラミンおよび式(1−1)〜式(1−4)のそれぞれで表される化合物などのうちのいずれか1種類または2種類以上である。ただし、メラミンの誘導体であれば、上記以外の誘導体でもよい。
「金属水酸化物」とは、上記したように、陰イオンとして1または2以上の水酸化物イオン(OH- )を含む金属塩の総称である。陽イオンの種類は、1または2以上の金属イオンであれば、特に限定されない。ただし、組成式が相同する金属酸化物の水和物は、ここで説明する「金属水酸化物」に含まれる。
金属水酸化物の具体例は、水酸化アルミニウム(Al(OH)3 )、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2 )、タルク(滑石:Mg3 Si4 O10(OH)2 )、およびイモゴライト(Al2 SiO3 (OH))などのうちのいずれか1種類または2種類以上である。ただし、金属水酸化物であれば、上記以外の金属化合物でもよい。
「金属水和物」とは、上記したように、1または2以上の水分子(H2 O)を含む金属化合物の総称である。金属化合物の種類は、1または2以上の金属元素を構成元素として含む化合物であれば、特に限定されない。ただし、「金属水酸化物」と「金属水和物」との混同を避けるために、上記した「金属水酸化物」に該当する金属化合物は、ここで説明する「金属水和物」から除かれる。
金属水和物の具体例は、ベーマイト(Al2 O3 ・H2 O)、ハイドロタルサイト(Mg6 Al2 (CO3 )(OH)16・4H2 O)、セピオライト(海泡石:Mg9 Si12O30(OH)6 (OH2 )4 ・6H2 O)、セリサイト(K2 O・3Al2 O3 ・6SiO2 ・2H2 O)、サポナイト((Ca/2,Na)0.33(Mg,Fe2+)3 (Si,Al)4 O10(OH)2 ・4H2 O)、アダパルジャイト((Mg,Al)2 Si4 O10(OH)・6H2 O)、およびモンモリロナイト((Na,Ca)0.33(Al,Mg)2 Si4 O10(OH)2 ・nH2 O:nは1以上の整数)などのうちのいずれか1種類または2種類以上である。ただし、金属水和物であれば、上記以外の金属化合物の水和物でもよい。
なお、難燃性材料が粉末状(複数の粒子状)である場合には、その難燃性材料の平均粒径(メジアンD50)は、特に限定されない。中でも、平均粒径は、0.1μm〜10μmであることが好ましい。平均粒径が小さすぎると、熱暴走などの異常発生を抑制しにくくなるからである。一方、平均粒径が大きすぎると、難燃性材料の粒子間の隙間が狭くなるため、リチウムイオンが難燃層26を通過しにくくなるからである。
特に、難燃層26は、単に負極22(負極活物質層22B)の表面を被覆しているだけでなく、上記したように、難燃層26の一部は、負極22(負極活物質層22B)の内部まで入り込んでいる。
詳細には、図4に示したように、負極活物質層22Bの内部には、複数の粒子状の負極活物質22BRが存在していると共に、隣り合う負極活物質22BR間には、隙間22BKが形成されている。難燃層26は、負極活物質層22Bの表面を被覆している。しかも、難燃層26の一部(侵入部分26P)は、負極活物質層22Bに入り込んでいる。すなわち、少なくとも2つの負極活物質22BRの頂点Xを結ぶことで規定される負極活物質層22Bの表面位置Yを基準とした時、侵入部分26Pは、表面位置Yよりも負極活物質層22Bの内側(負極活物質層22Bの内部に向かう方向)に存在している。図4では、表面位置Yを破線で示している。
なお、図4では、図示内容を簡略化するために、負極活物質層22Bおよび難燃層26のそれぞれの構成を模式的に示している。このため、図4に示した負極活物質層22Bの構成、より具体的には、複数の負極活物質22BRの個数および配列状態などは、あくまで一例である。また、図4では、負極活物質22BR以外の構成要素(負極結着剤など)の図示を省略している。
難燃層26の一部が負極活物質層22Bに入り込んでいるか否かを調べるためには、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)などの顕微鏡を用いて、負極22および難燃層26の断面を観察すればよい。顕微鏡写真中において、表面位置Yよりも下側(負極活物質層22Bの内部に向かう方向)まで難燃層26が存在しているということは、その難燃層26の一部(侵入部分26P)が負極活物質層22Bの内部まで入り込んでいることを表している。
難燃層26の一部が負極活物質層22Bに入り込んでいる理由は、以下の通りである。
難燃層26の形成方法として後述する塗布法および加圧法などを用いていない場合には、図5に示したように、難燃層26が負極活物質層22Bの表面に隣接しているにすぎない。この場合には、単に難燃層26が負極活物質層22Bの表面を被覆しているだけであるため、その難燃層26の一部は負極活物質層22Bの内部に入り込まない。これにより、熱暴走などの異常発生の要因である高活性の負極活物質22BRの近傍に難燃性材料が存在し得ないため、その難燃性材料が異常発生を十分に抑制することは困難である。また、負極活物質層22Bに対する難燃層26の密着性が十分でないと、充放電時において負極活物質層22B中に生じる応力の影響を受けて、その難燃層26が負極活物質層22Bから脱落しやすくなる。
これに対して、難燃層26の形成方法として塗布法および加圧法などを用いた場合には、図4に示したように、難燃層26の一部(侵入部分26P)が負極活物質層22Bの内部に入り込む。これにより、難燃性材料の一部が負極活物質層22Bの内部まで入り込む。この場合には、高活性の負極活物質22BRの近傍に難燃性材料が存在し得るため、その難燃性材料が異常発生を十分に抑制可能である。しかも、アンカー効果により、負極活物質層22Bに対する難燃層26の密着性が著しく向上するため、充放電時において発生した応力の影響を受けても、その難燃層26が負極活物質層22Bから脱落しにくくなる。よって、熱暴走などの異常発生が安定に抑制されるため、安全性がより向上する。
侵入部分26Pが負極活物質層22Bの内部に入り込んでいる距離(深さ)、言い替えれば、侵入部分26Pが負極活物質層22Bの内部にどこまで入り込んでいるかは、特に限定されない。充放電反応に関わる負極活物質層22Bの内部に難燃性材料が入り込んでさえいれば、上記した利点が得られるからである。このため、侵入部分26Pは、図4に示したように、負極活物質層22Bの表面近傍に存在する隙間22BKの一部に存在していてもよいし、隙間22BKを埋設するように存在していてもよいし、隙間22BKを埋設するだけでなくさらに負極活物質層22Bの内部まで存在していてもよい。中でも、上記した深さは、できるだけ大きいことが好ましいため、侵入部分26Pは、できるだけ負極活物質層22Bの奥深くまで入り込んでいることが好ましい。負極活物質層22Bの奥深くまで難燃性材料が入り込むため、より高い効果が得られるからである。
なお、後述するように、電解液は電池素子20に含浸されている。このため、難燃層26は、セパレータ23とは異なる二次電池の構成要素であると共に、そのセパレータ23とは異なる役割を果たしている。
これに伴い、難燃層26は、上記した難燃性材料と一緒に、高分子化合物などの他の材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。塗布法を用いて負極活物質層22Bの表面に難燃層26を形成する場合には、その負極活物質層22Bに対する難燃層26の密着性が向上するからである。また、加圧法を用いる場合には、塗布法を用いてセパレータ23の表面に難燃層26を形成することで、そのセパレータ23に対する難燃層26の密着性が向上するからである。
この高分子化合物の種類は、例えば、上記した負極結着剤の種類と同様である。中でも、高分子化合物の種類は、負極結着剤として用いる高分子化合物の種類と同一であることが好ましい。負極活物質層22Bに対する難燃層26の密着性がより向上するからである。なお、充放電時における負極活物質層22Bの膨張収縮に起因して侵入部分26Pが破損(崩壊および脱落など)することを抑制するために、高分子化合物の種類および負極活物質層22B中における高分子化合物の含有量などは、適宜設定されることが好ましい。
難燃層26の厚さは、特に限定されないが、中でも、1μm〜30μmであることが好ましい。厚さが小さすぎると、熱暴走などの異常発生を抑制しにくくなるからである。一方、厚さが大きすぎると、二次電池の内部において負極活物質層22Bなどの占有体積が減少すると共に、リチウムイオンが正極21と負極22との間を移動しにくくなるため、電池容量などが低下し得るからである。ここで説明する「厚さ」とは、上記した表面位置Yと難燃層26の最表面との間の距離、すなわち図4に示したTにより規定される厚さとする。
[二次電池の動作]
この二次電池は、例えば、以下のように動作する。充電時には、正極21からリチウムイオンが放出されると、そのリチウムイオンが電解液を介して負極22に吸蔵される。一方、放電時には、負極22からリチウムイオンが放出されると、そのリチウムイオンが電解液を介して正極21に吸蔵される。
[二次電池の製造方法]
この二次電池は、例えば、以下の手順により製造される。
正極21を作製する場合には、最初に、正極活物質と、正極結着剤および正極導電剤などとを混合して、正極合剤とする。続いて、正極合剤を有機溶剤などに分散または溶解させて、ペースト状の正極合剤スラリーとする。最後に、正極合剤スラリーを正極集電体21Aの両面に塗布したのち、その正極合剤スラリーを乾燥させて、正極活物質層21Bを形成する。こののち、ロールプレス機などを用いて、正極活物質層21Bを圧縮成型してもよい。この場合には、正極活物質層21Bを加熱しながら圧縮成型処理を行ってもよいし、圧縮成型処理を複数回繰り返してもよい。
負極22を作製する場合には、上記した正極21と同様の作製手順により、負極集電体22Aの両面に負極活物質層22Bを形成する。具体的には、負極活物質と負極結着剤および負極導電剤などとが混合された負極合剤を有機溶剤などに分散または溶解させて、ペースト状の負極合剤スラリーとする。続いて、負極合剤スラリーを負極集電体22Aの両面に塗布してから乾燥させて負極活物質層22Bを形成したのち、ロールプレス機などを用いて負極活物質層22Bを圧縮成型する。
負極22の表面に難燃層26を形成する場合には、いくつかの方法を選択可能である。
塗布法を用いる場合には、最初に、難燃性材料と、高分子化合物などとを混合したのち、その混合物を有機溶剤の溶媒などに分散または溶解させて、スラリーとする。続いて、スラリーを負極活物質層22Bの表面に塗布したのち、そのスラリーを乾燥させて、難燃層26を形成する。この場合には、溶媒中に分散または溶解された状態で難燃性材料が負極活物質層22Bの表面に供給されるため、その難燃性材料の一部が負極活物質層22Bの内部に浸透する。これにより、難燃層26の一部(侵入部分26P)が負極活物質層22Bの内部に入り込む。
浸漬法を用いる場合には、スラリー中に負極活物質層22Bを浸漬させてから引き上げて、その負極活物質層22Bを乾燥させる。この場合においても、塗布法を用いた場合と同様の理由により、難燃層26の一部が負極活物質層22Bの内部に入り込む。
加圧法を用いる場合には、セパレータ23の表面にスラリーを塗布したのち、そのスラリーを乾燥させて、難燃層26を形成する。続いて、セパレータ23に形成された難燃層26を負極22(負極活物質層22B)に対向させたのち、そのセパレータ23を負極22に加圧する。この場合において、難燃層26は負極22およびセパレータ23の双方に密着するが、セパレータ23に対する難燃層26の密着強度(または接着強度)は、負極22に対する難燃層26の密着強度よりも大きいことが好ましい。より高い効果が得られるからである。
なお、密着強度の大小関係を調べるためには、例えば、完成後の二次電池を解体して、密着状態にある負極22、難燃層26およびセパレータ23を取り出したのち、そのセパレータ23を負極22から剥離させればよい。剥離後において、難燃層26の大部分がセパレータ23に付着している場合には、セパレータ23に対する難燃層26の密着強度が負極22に対する難燃層26の密着強度よりも大きいことを表している。一方、難燃層26の大部分が負極22に付着している場合には、セパレータ23に対する難燃層26の密着強度が負極22に対する難燃層26の密着強度よりも小さいことを表している。この剥離後の付着に着目しながら密着強度の大小関係を調べる手順は、以降においても同様である。
この加圧工程の詳細は、例えば、以下の通りである。最初に、後述する手順により、電池素子20を作製する。この電池素子20では、難燃層26が負極22に密着している。続いて、ラテックス製の袋に電池素子20を入れたのち、その袋を脱気封口する。続いて、加温状態の静水圧下において電池素子20を加圧(油圧プレス)する。この加圧工程では、加圧時の圧力の影響を受けて、負極活物質層22Bに難燃層26の一部(侵入部分26P)が食い込むため、その隙間22BKに難燃性材料の一部が入り込む。これにより、難燃層26の一部が負極活物質層22Bの内部に入り込む。加圧時の圧力などの条件は、難燃層26の一部を隙間22BKに食い込ませることが可能な条件であれば、特に限定されない。
加圧工程では、加圧時の圧力を受けて難燃層26の一部が負極活物質層22Bに食い込むため、侵入部分26Pが形成される。この場合には、塗布法を用いる場合と比較して、侵入部分26P中における難燃性材料の密度が高くなるため、異常発生がより抑制されると共に、負極活物質層22Bに対する難燃層26の密着性がより向上する。
なお、加圧法を用いる場合には、セパレータ23の表面にスラリーを塗布する代わりに、プラスチック板またはガラス板などの支持板の表面にスラリーを塗布してもよい。この場合には、スラリーを乾燥させて難燃層26を形成したのち、その難燃層26を支持板から剥離することで、あらかじめシート状の難燃層26を準備する。このシート状の難燃層26を負極活物質層22Bに重ねたのち、そのシート状の難燃層26を加圧する。これにより、難燃層26の一部が負極活物質層22Bに食い込む。
中でも、塗布法および浸漬法を用いることが好ましい。難燃層26の形成工程において、負極活物質層22Bの奥深くまで難燃性材料が入り込みやすいからである。
また、侵入部分26Pの物理的強度を確保するために、難燃層26自体の物理的強度は十分に高いことが好ましい。具体的には、塗布法を用いて負極活物質層22Bの表面に難燃層26を形成する場合には、二次電池を解体して負極22とセパレータ23とを分離した際に、その難燃層26の大部分が負極活物質層22Bの表面に固着(残存)していることが好ましい。加圧法を用いる場合には、塗布法を用いてセパレータ23の表面に難燃層26を形成することで、二次電池を解体して負極22とセパレータ23とを分離した際に、その難燃層26の大部分がセパレータ23の表面に固着(残存)していることが好ましい。シート状の難燃層26を用いる場合には、加圧後に難燃層26を負極22から分離した際に、その難燃層26が破損(崩壊など)しないことが好ましい。
電池素子20を作製する場合には、溶接法などを用いて正極集電体21Aに正極リード24を取り付けると共に、溶接法などを用いて負極集電体22Aに負極リード25を取り付ける。続いて、セパレータ23および難燃層26を介して正極21と負極22とを積層させたのち、その積層体を長手方向に巻回させて、巻回体を形成する。続いて、扁平な形状となるように巻回体を成型する。
二次電池を組み立てる場合には、最初に、電池缶11の内部に電池素子20を収納したのち、その電池素子20の上に絶縁板12を載せる。続いて、溶接法などを用いて正極リード24を正極ピン15に取り付けると共に、溶接法などを用いて負極リード25を電池缶11に取り付ける。この場合には、レーザ溶接法などを用いて電池缶11の開放端部に電池蓋13を固定する。続いて、溶媒に電解質塩が分散された電解液を注入孔19から電池缶11の内部に注入して、その電解液を電池素子20に含浸させる。最後に、注入孔19を封止部材19Aで塞ぐ。
[二次電池の作用および効果]
この角型の二次電池によれば、難燃性材料を含む難燃層26が正極21と負極22との間に配置されていると共に、その難燃層26の一部(侵入部分26P)が負極活物質層22Bの内部に入り込んでいる。この場合には、上記したように、リチウムイオンの移動が阻害されずに、熱暴走などの異常発生が抑制されるため、充放電を繰り返しても、放電容量が低下しにくくなると共に、二次電池の発火および破裂などの不具合が発生しにくくなる。よって、電池特性と安全性とを両立させることができる。
<1−2.正極とセパレータとの間に形成された難燃層>
図3に対応する図6に示したように、セパレータ23と負極22との間に形成された難燃層26に代えて、セパレータ23と正極21との間に形成された難燃層27を用いてもよい。
図6に示した電池素子20の構成および形成方法は、セパレータ23と負極22との間に難燃層26が形成されていない代わりに、セパレータ23と正極21との間に難燃層27が形成されていることを除き、図3に示した電池素子20の構成および形成方法と同様である。
すなわち、正極活物質層21Bおよび難燃層27のそれぞれの構成は、上記した負極活物質層22Bおよび難燃層26のそれぞれの構成と同様である。詳細には、二次電池用電極である正極21では、正極活物質層21Bに、中間層である難燃層27が設けられている。図4に示したように、正極活物質層21B中に複数の正極活物質21BRおよび隙間21BKが存在している場合において、難燃層27は、例えば、塗布法、浸漬法および加圧法などにより形成されている。これにより、難燃層27の一部(侵入部分27P)は、正極21(正極活物質層21B)の内部に入り込んでいるため、難燃性材料の一部は、正極活物質層21Bの内部に入り込んでいる。「難燃層27の一部は正極21に入り込んでいる」とは、正極21の表面よりも内側(正極21の内部に向かう方向)に難燃層27の一部が存在することを意味している。
この難燃層27においても、難燃層26と同様の作用が得られるため、電池特性と安全性とを両立させることができる。なお、難燃層27の形成方法として加圧法を用いる場合には、その難燃層27は正極21およびセパレータ23の双方に密着するが、セパレータ23に対する難燃層27の密着強度は、正極21に対する難燃層27の密着強度よりも大きいことが好ましい。より高い効果が得られるからである。
<1−3.負極とセパレータとの間に形成された難燃層および正極とセパレータとの間に形成された難燃層>
図3に対応する図7に示したように、セパレータ23と負極22との間に形成された難燃層26(第2中間層)に加えて、セパレータ23と正極21との間に形成された難燃層27(第1中間層)を用いてもよい。
図7に示した電池素子20の構成および形成方法は、新たにセパレータ23と正極21との間に難燃層27が形成されていることを除き、図3に示した電池素子20の構成および形成方法と同様である。すなわち、図4に示したように、難燃層26の一部(侵入部分26P)は、負極活物質層22Bの内部に入り込んでいるため、難燃性材料の一部は、負極活物質層22Bの内部に入り込んでいる。また、難燃層27の一部(侵入部分27P)は、正極活物質層21Bの内部に入り込んでいるため、難燃性材料の一部は、正極活物質層21Bの内部に入り込んでいる。
この難燃層26,27の双方において、上記した異常発生の抑制作用などが得られるため、熱暴走などの異常発生が著しく抑制される。よって、より高い効果を得ることができる。なお、難燃層26,27の形成方法として加圧法を用いる場合には、難燃層26は負極22およびセパレータ23の双方に密着すると共に、難燃層27は正極21およびセパレータ23の双方に密着する。この場合において、セパレータ23に対する難燃層26の密着強度は、負極22に対する難燃層26の密着強度よりも大きいことが好ましい。また、セパレータ23に対する難燃層27の密着強度は、正極21に対する難燃層27の密着強度よりも大きいことが好ましい。より高い効果が得られるからである。
<1−4.正極と負極との間に形成されたセパレータ(難燃層として機能するセパレータ)>
図3に対応する図8に示したように、セパレータ23および難燃層26に代えて、難燃層として機能するセパレータ123を用いてもよい。このセパレータ123は、難燃層として機能しないセパレータ23とは異なり、難燃層としての機能を兼ねるものである。
図8に示した電池素子20の構成および形成方法は、難燃層26が形成されていないと共に、セパレータ23に代えてセパレータ123が用いられていることを除き、図3に示した電池素子20の構成および形成方法と同様である。セパレータ123は、その内部に、上記した難燃性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいることを除き、セパレータ23と同様の構成を有していると共に、難燃層26と同様の方法(加圧法)により形成される。これに伴い、図4に示したように、難燃層として機能するセパレータ123の一部(侵入部分123P)は、負極活物質層22Bの内部に入り込んでいるため、難燃性材料の一部は、負極活物質層22Bの内部に入り込んでいる。また、セパレータ123の一部(侵入部分123P)は、正極活物質層21Bの内部に入り込んでいるため、難燃性材料の一部は、正極活物質層21Bの内部に入り込んでいる。
このセパレータ123においても、難燃層26と同様の作用が得られるため、電池特性と安全性とを両立させることができる。
<2.第2二次電池(円筒型)>
<2−1.負極とセパレータとの間に形成された難燃層>
図9は、第2二次電池の断面構成を表しており、図10は、図9に示した巻回電極体40の詳細な構成を表している。以下では、既に説明した角型の二次電池の構成要素を随時引用する。
[二次電池の全体構成]
ここで説明する二次電池は、リチウムイオン二次電池であり、いわゆる円筒型の電池構造を有している。
この二次電池では、例えば、図9に示したように、中空円柱状の電池缶31の内部に、一対の絶縁板32,33と、巻回電極体40とが収納されている。巻回電極体40は、例えば、セパレータ43および難燃層47を介して正極41と負極42とが積層されてから巻回されたものである。
電池缶31は、例えば、一端部が閉鎖されると共に他端部が開放された中空構造を有しており、例えば、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)およびそれらの合金などのうちのいずれか1種類または2種類以上により形成されている。この電池缶31の表面には、ニッケル(Ni)などが鍍金されていてもよい。一対の絶縁板32,33は、巻回電極体40を挟むように配置されていると共に、その巻回電極体40の巻回周面に対して垂直に延在している。
電池缶31の開放端部には、電池蓋34、安全弁機構35および熱感抵抗素子(PTC素子)36がガスケット37を介してかしめられているため、その電池缶31は密閉されている。電池蓋34は、例えば、電池缶31と同様の材料により形成されている。安全弁機構35および熱感抵抗素子36は、電池蓋34の内側に設けられており、その安全弁機構35は、熱感抵抗素子36を介して電池蓋34と電気的に接続されている。この安全弁機構35では、内部短絡、または外部からの加熱などに起因して内圧が一定以上になると、ディスク板35Aが反転するため、電池蓋34と巻回電極体40との電気的接続が切断される。熱感抵抗素子36は、大電流に起因する異常な発熱を防止するものであり、その熱感抵抗素子36の抵抗は、温度の上昇に応じて増加する。ガスケット37は、例えば、絶縁材料により形成されており、そのガスケット37の表面には、アスファルトが塗布されていてもよい。
巻回電極体40の巻回中心には、例えば、センターピン44が挿入されている。ただし、センターピン44が挿入されていなくてもよい。正極41には、例えば、アルミニウムなどの導電性材料により形成された正極リード45が接続されていると共に、負極42には、例えば、ニッケルなどの導電性材料により形成された負極リード46が接続されている。正極リード45は、例えば、安全弁機構35に溶接されていると共に、電池蓋34と電気的に接続されている。負極リード46は、例えば、電池缶31に溶接されており、その電池缶31と電気的に接続されている。
[正極、負極、セパレータ、難燃層および電解液]
図10に示したように、正極41は、例えば、正極集電体41Aの両面に正極活物質層41Bを有していると共に、負極42は、例えば、負極集電体42Aの両面に負極活物質層42Bを有している。正極集電体41A、正極活物質層41B、負極集電体42Aおよび負極活物質層42Bのそれぞれの構成は、正極集電体21A、正極活物質層21B、負極集電体22Aおよび負極活物質層22Bのそれぞれの構成と同様である。
セパレータ43の構成は、セパレータ23の構成と同様である。また、巻回電極体40に含浸されている電解液の組成は、円筒型の二次電池に用いられた電解液の組成と同様である。
難燃層47の構成は、難燃層26の構成と同様である。すなわち、難燃層47は、正極41と負極42との間、より具体的には、セパレータ43と負極42との間に配置されている。また、難燃層47は、難燃性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。この難燃層47の一部(侵入部分)は、負極42(負極活物質層42B)に入り込んでいるため、難燃性材料の一部は、負極活物質層42Bの内部に入り込んでいる。
[二次電池の動作]
この二次電池は、例えば、以下のように動作する。充電時には、正極41からリチウムイオンが放出されると、そのリチウムイオンが電解液を介して負極42に吸蔵される。一方、放電時には、負極42からリチウムイオンが放出されると、そのリチウムイオンが電解液を介して正極41に吸蔵される。
[二次電池の製造方法]
この二次電池は、例えば、以下の手順により製造される。
最初に、正極21および負極22と同様の作製手順により、正極41および負極42を作製する。この場合には、正極集電体41Aの両面に正極活物質層41Bを形成すると共に、負極集電体42Aの両面に負極活物質層42Bを形成する。こののち、溶接法などを用いて正極集電体41Aに正極リード45を取り付けると共に、溶接法などを用いて負極集電体42Aに負極リード46を取り付ける。
続いて、セパレータ43および難燃層47を介して正極41と負極42とを積層してから巻回させて巻回電極体40を作製したのち、その巻回中心にセンターピン44を挿入する。続いて、一対の絶縁板32,33で挟みながら巻回電極体40を電池缶31の内部に収納する。この場合には、溶接法などを用いて正極リード45の先端部を安全弁機構35に取り付けると共に、溶接法などを用いて負極リード46の先端部を電池缶31に取り付ける。続いて、電池缶31の内部に電解液を注入して、その電解液を巻回電極体40に含浸させる。最後に、ガスケット37を介して電池缶31の開口端部に電池蓋34、安全弁機構35および熱感抵抗素子36をかしめる。
なお、二次電池を製造する場合には、難燃層26と同様の手順により、塗布法、浸漬法および加圧法などを用いて難燃層47を形成する。
[二次電池の作用および効果]
この円筒型の二次電池によれば、難燃性材料を含む難燃層47が正極41と負極42との間に配置されていると共に、その難燃層47の一部(侵入部分)が負極活物質層42Bの内部に入り込んでいる。よって、角型の二次電池と同様の理由により、電池特性と安全性とを両立させることができる。
この円筒型の二次電池に関しても、図6〜図8に示した角型の二次電池に関する他の態様を適用可能である。
<2−2.正極とセパレータとの間に形成された難燃層>
具体的には、図10に対応する図11に示したように、セパレータ43と負極42との間に形成された難燃層47に代えて、セパレータ43と正極41との間に形成された難燃層48を用いてもよい。図11に示した巻回電極体40の構成および形成方法は、セパレータ43と負極42との間に難燃層47が形成されていない代わりに、セパレータ43と正極41との間に難燃層48が形成されていることを除き、図10に示した巻回電極体40の構成および形成方法と同様である。すなわち、正極活物質層41Bおよび難燃層48のそれぞれの構成は、上記した負極活物質層42Bおよび難燃層47のそれぞれの構成と同様である。これにより、難燃層48の一部(侵入部分)は、正極活物質層41Bの内部に入り込んでいるため、難燃性材料の一部は、正極活物質層41Bの内部に入り込んでいる。
この難燃層48においても、難燃層47と同様の作用が得られるため、電池特性と安全性とを両立させることができる。
<2−3.負極とセパレータとの間に形成された難燃層および正極とセパレータとの間に形成された難燃層>
図10に対応する図12に示したように、セパレータ43と負極42との間に形成された難燃層47(第2中間層)に加えて、セパレータ43と正極41との間に形成された難燃層48(第1中間層)を用いてもよい。図12に示した巻回電極体40の構成および形成方法は、新たにセパレータ43と正極41との間に難燃層48が形成されていることを除き、図10に示した巻回電極体40の構成および形成方法と同様である。すなわち、難燃層47の一部(侵入部分)は、負極活物質層42Bの内部に入り込んでいるため、難燃性材料の一部は、負極活物質層42Bの内部に入り込んでいる。また、難燃層48の一部(侵入部分)は、正極活物質層41Bの内部に入り込んでいるため、難燃性材料の一部は、正極活物質層41Bの内部に入り込んでいる。
この難燃層47,48の双方において、上記した異常発生の抑制作用などが得られるため、熱暴走などの異常発生が著しく抑制される。よって、より高い効果を得ることができる。
<2−4.正極と負極との間に形成されたセパレータ(難燃層として機能するセパレータ)>
図10に対応する図13に示したように、セパレータ43および難燃層47に代えて、難燃層として機能するセパレータ143を用いてもよい。このセパレータ143は、難燃層として機能しないセパレータ43とは異なり、難燃層としての機能を兼ねるものである。
図13に示した巻回電極体40の構成および形成方法は、難燃層47が形成されていないと共に、セパレータ43に代えてセパレータ143が用いられていることを除き、図10に示した巻回電極体40の構成および形成方法と同様である。セパレータ143は、その内部に、上記した難燃性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいることを除き、セパレータ43と同様の構成を有していると共に、難燃層47と同様の方法(加圧法)により形成される。これに伴い、難燃層として機能するセパレータ143の一部(侵入部分)は、負極活物質層42Bの内部に入り込んでいるため、難燃性材料の一部は、負極活物質層42Bの内部に入り込んでいる。また、セパレータ143の一部(侵入部分)は、正極活物質層41Bの内部に入り込んでいるため、難燃性材料の一部は、正極活物質層41Bの内部に入り込んでいる。
このセパレータ143においても、難燃層47と同様の作用が得られるため、電池特性と安全性とを両立させることができる。
<3.第3二次電池(ラミネートフィルム型)>
<3−1.負極とセパレータとの間に形成された難燃層>
図14は、第3二次電池の斜視構成を表しており、図15は、図14に示したXV−XV線に沿った巻回電極体50の断面構成を表している。図16は、図15に示した巻回電極体50の詳細な構成を表している。以下では、既に説明した角型の二次電池の構成要素を随時引用する。
[二次電池の全体構成]
ここで説明する二次電池は、リチウムイオン二次電池であり、いわゆるラミネートフィルム型の電池構造を有している。
この二次電池では、例えば、図14および図15に示したように、フィルム状の外装部材59の内部に巻回電極体50が収納されている。この巻回電極体50は、例えば、セパレータ55、電解質層56および難燃層58を介して正極53と負極54とが積層されてから巻回されたものである。正極53には正極リード51が取り付けられていると共に、負極54には負極リード52が取り付けられている。巻回電極体50の最外周部は、保護テープ57により保護されている。
正極リード51および負極リード52は、例えば、外装部材59の内部から外部に向かって同一方向に導出されている。正極リード51は、例えば、アルミニウムなどの導電性材料のいずれか1種類または2種類以上により形成されている。負極リード52は、例えば、銅(銅)、ニッケル(Ni)およびステンレスなどの導電性材料のいずれか1種類または2種類以上により形成されている。これらの導電性材料は、例えば、薄板状または網目状である。
外装部材59は、例えば、図14に示した矢印Rの方向に折り畳み可能なフィルムであり、その外装部材59の一部には、巻回電極体50を収納するための窪みが設けられている。この外装部材59は、例えば、融着層と、金属層と、表面保護層とがこの順に積層されたラミネートフィルムである。二次電池の製造工程は、融着層が巻回電極体50と対向するように外装部材59が折り畳まれたのち、対向する融着層の外周縁部同士が融着される。ただし、外装部材59は、2枚のラミネートフィルムが接着剤などを介して貼り合わされたものでもよい。融着層は、例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのフィルムである。金属層は、例えば、アルミニウム箔などである。表面保護層は、例えば、ナイロンおよびポリエチレンテレフタレートなどのフィルムである。
中でも、外装部材59は、ポリエチレンフィルムと、アルミニウム箔と、ナイロンフィルムとがこの順に積層されたアルミラミネートフィルムであることが好ましい。ただし、外装部材59は、他の積層構造を有するラミネートフィルムでもよいし、ポリプロピレンなどの高分子フィルムでもよいし、金属フィルムでもよい。
外装部材59と正極リード51および負極リード52との間には、例えば、外気の侵入を防止するために密着フィルム58が挿入されている。この密着フィルム58は、正極リード51および負極リード52に対して密着性を有する材料により形成されている。この密着性材料は、例えば、ポリオレフィン樹脂などであり、より具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンおよび変性ポリプロピレンなどである。
[正極、負極、セパレータ、難燃層および電解液]
図15に示したように、正極53は、例えば、正極集電体53Aの両面に正極活物質層53Bを有していると共に、負極54は、例えば、負極集電体54Aの両面に負極活物質層54Bを有している。正極集電体53A、正極活物質層53B、負極集電体54Aおよび負極活物質層54Bのそれぞれの構成は、正極集電体21A、正極活物質層21B、負極集電体22Aおよび負極活物質層22Bのそれぞれの構成と同様である。セパレータ55の構成は、セパレータ23の構成と同様である。
難燃層58の構成は、難燃層26の構成と同様である。すなわち、難燃層58は、正極53と負極54との間、より具体的には、セパレータ55と負極54との間に配置されている。また、難燃層58は、難燃性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。この難燃層58の一部(侵入部分)は、負極54(負極活物質層54B)に入り込んでいるため、難燃性材料の一部は、負極活物質層54Bの内部に入り込んでいる。
[電解質層]
電解質層56は、電解液および高分子化合物を含んでおり、その電解液は、高分子化合物により保持されている。すなわち、電解質層56は、いわゆるゲル状の電解質である。高いイオン伝導率(例えば、室温で1mS/cm以上)が得られると共に、電解液の漏液が防止されるからである。この電解質層56は、さらに、添加剤などの他の材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
高分子化合物は、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリフッ化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレンおよびポリカーボネートなどのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。この他、高分子化合物は、共重合体でもよい。この共重合体は、例えば、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロピレンとの共重合体などである。中でも、単独重合体としては、ポリフッ化ビニリデンが好ましいと共に、共重合体としては、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロピレンとの共重合体が好ましい。電気化学的に安定だからである。
電解液の組成は、例えば、角型の二次電池に用いられた電解液の組成と同様である。ただし、ゲル状の電解質である電解質層56において電解液の溶媒とは、液状の溶媒だけでなく、電解質塩を解離させることが可能なイオン伝導性を有する材料まで含む広い概念である。よって、イオン伝導性を有する高分子化合物を用いる場合には、その高分子化合物も溶媒に含まれる。
なお、ゲル状の電解質層56に代えて、電解液をそのまま用いてもよい。この場合には、電解液が巻回電極体50に含浸される。
[二次電池の動作]
この二次電池は、例えば、以下のように動作する。充電時には、正極53からリチウムイオンが放出されると、そのリチウムイオンが電解質層56を介して負極54に吸蔵される。一方、放電時には、負極54からリチウムイオンが放出されると、そのリチウムイオンが電解質層56を介して正極53に吸蔵される。
[二次電池の製造方法]
ゲル状の電解質層56を備えた二次電池は、例えば、以下の3種類の手順により製造される。
第1手順では、正極21および負極22と同様の作製手順により、正極53および負極54を作製する。すなわち、正極53を作製する場合には、正極集電体53Aの両面に正極活物質層53Bを形成すると共に、負極54を作製する場合には、負極集電体54Aの両面に負極活物質層54Bを形成する。続いて、電解液と、高分子化合物と、有機溶剤などの溶媒とを含む前駆溶液を調製したのち、その前駆溶液を正極53および負極54に塗布して、ゲル状の電解質層56を形成する。続いて、溶接法などを用いて、正極集電体53Aに正極リード51を取り付けると共に、負極集電体54Aに負極リード52を取り付ける。続いて、セパレータ55、電解質層56および難燃層58を介して正極53と負極54とを積層してから巻回させて巻回電極体50を作製したのち、その巻回電極体50の最外周部に保護テープ57を貼り付ける。続いて、フィルム状の外装部材59を折り畳み、その外装部材59の内部に巻回電極体50を収納したのち、熱融着法などを用いて外装部材59の外周縁部同士を接着させて、その外装部材59の内部に巻回電極体50を封入する。この場合には、正極リード51および負極リード52と外装部材59との間に密着フィルム61を挿入する。なお、二次電池を製造する場合には、難燃層26と同様の手順により、塗布法、浸漬法および加圧法などを用いて難燃層58を形成する。
第2手順では、正極53に正極リード51を取り付けると共に、負極54に負極リード52を取り付ける。続いて、セパレータ55および難燃層58を介して正極53と負極54とを積層してから巻回させて、巻回電極体50の前駆体である巻回体を作製したのち、その最外周部に保護テープ57を貼り付ける。続いて、外装部材59の内部に巻回体を収納したのち、熱融着法などを用いて一辺の外周縁部を除いた残りの外周縁部を接着させて、袋状の外装部材59の内部に巻回体を封入する。続いて、電解液と、高分子化合物の原料であるモノマーと、重合開始剤と、さらに重合禁止剤などの他の材料とを混合して、電解質用組成物を調製する。続いて、袋状の外装部材59の内部に電解質用組成物を注入したのち、熱融着法などを用いて外装部材59を密封する。続いて、モノマーを熱重合させて、高分子化合物を形成する。これにより、高分子化合物に電解液が含浸され、その高分子化合物がゲル化するため、電解質層56が形成される。この手順においても、難燃層26と同様の手順により、塗布法、浸漬法および加圧法などを用いて難燃層58を形成する。
第3手順では、高分子化合物が両面に塗布されたセパレータ55を用いることを除き、上記した第2手順と同様に、巻回体を作製して袋状の外装部材59の内部に収納する。このセパレータ55に塗布する高分子化合物は、例えば、フッ化ビニリデンを成分とする重合体(単独重合体、共重合体および多元共重合体)などである。具体的には、単独重合体は、例えば、ポリフッ化ビニリデンである。共重合体は、例えば、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとを成分とする二元系の共重合体などである。多元共重合体は、例えば、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとクロロトリフルオロエチレンとを成分とする三元系の共重合体などである。なお、フッ化ビニリデンを成分とする重合体と一緒に、他の1種類または2種類以上の高分子化合物を用いてもよい。続いて、電解液を調製して外装部材59の内部に注入したのち、熱融着法などを用いて外装部材59の開口部を密封する。続いて、高分子化合物を介してセパレータ55を正極53および難燃層58に密着させる。これにより、高分子化合物に電解液が含浸され、その高分子化合物がゲル化するため、電解質層56が形成される。この手順においても、難燃層26と同様の手順により、塗布法、浸漬法および加圧法などを用いて難燃層58を形成する。
この第3手順では、第1手順よりも二次電池の膨れが抑制される。また、第3手順では、第2手順よりも高分子化合物の原料であるモノマーまたは溶媒などが電解質層56中にほとんど残らないため、高分子化合物の形成工程が良好に制御される。このため、正極53、負極54、セパレータ55および難燃層58と電解質層56とが十分に密着する。
[二次電池の作用および効果]
このラミネートフィルム型の二次電池によれば、難燃性材料を含む難燃層58が正極53と負極54との間に配置されていると共に、その難燃層58の一部(侵入部分)が負極活物質層54Bの内部に入り込んでいる。よって、角型の二次電池と同様の作用により、電池特性と安全性とを両立させることができる。
このラミネートフィルム型の二次電池に関しても、図6〜図8に示した角型の二次電池に関する他の態様を適用可能である。
<3−2.正極とセパレータとの間に形成された難燃層>
具体的には、図16に対応する図17に示したように、セパレータ55と負極54との間に形成された難燃層58に代えて、セパレータ55と正極53との間に形成された難燃層59を用いてもよい。図17に示した巻回電極体50の構成および形成方法は、セパレータ55と負極54との間に難燃層58が形成されていない代わりに、セパレータ55と正極53との間に難燃層59が形成されていることを除き、図16に示した巻回電極体50の構成および形成方法と同様である。すなわち、正極活物質層53Bおよび難燃層59のそれぞれの構成は、上記した負極活物質層54Bおよび難燃層58のそれぞれの構成と同様である。これにより、難燃層59の一部(侵入部分)は、正極活物質層53Bの内部に入り込んでいるため、難燃性材料の一部は、正極活物質層53Bの内部に入り込んでいる。
この難燃層59においても、難燃層58と同様の作用が得られるため、電池特性と安全性とを両立させることができる。
<3−3.負極とセパレータとの間に形成された難燃層および正極とセパレータとの間に形成された難燃層>
図16に対応する図18に示したように、セパレータ55と負極54との間に形成された難燃層58(第2中間層)に加えて、セパレータ55と正極53との間に形成された難燃層59(第1中間層)を用いてもよい。図18に示した巻回電極体50の構成および形成方法は、新たにセパレータ55と正極53との間に難燃層59が形成されていることを除き、図16に示した巻回電極体50の構成および形成方法と同様である。すなわち、難燃層58の一部(侵入部分)は、負極活物質層54Bの内部に入り込んでいるため、難燃性材料の一部は、負極活物質層54Bの内部に入り込んでいる。また、難燃層59の一部(侵入部分)は、正極活物質層53Bの内部に入り込んでいるため、難燃性材料の一部は、正極活物質層53Bの内部に入り込んでいる。
この難燃層58,59の双方において、上記した異常発生の抑制作用などが得られるため、熱暴走などの異常発生が著しく抑制される。よって、より高い効果を得ることができる。
<3−4.正極と負極との間に形成された電解質層(難燃層として機能する電解質層)>
図16に対応する図19に示したように、電解質層56および難燃層58に代えて、難燃層として機能する電解質層156を用いてもよい。この電解質層156は、難燃層として機能しない電解質層56とは異なり、難燃層としての機能を兼ねるものである。
図19に示した巻回電極体50の構成および形成方法は、難燃層58が形成されていないと共に、電解質層56に代えて電解質層156が用いられていることを除き、図16に示した巻回電極体50の構成および形成方法と同様である。この電解質層156は、正極53と負極54との間に配置されている。より具体的には、電解質層156は、セパレータ55と正極53との間に配置されていると共に、セパレータ55と負極54との間に配置されている。電解質層156は、上記した難燃性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいることを除き、電解質層56と同様の構成を有していると共に、その電解質層56と同様の方法により形成される。これに伴い、難燃層として機能する電解質層156の一部(侵入部分)は、負極活物質層42Bの内部に入り込んでいるため、難燃性材料の一部は、負極活物質層42Bの内部に入り込んでいる。また、電解質層156の一部(侵入部分)は、正極活物質層41Bの内部に入り込んでいるため、難燃性材料の一部は、正極活物質層41Bの内部に入り込んでいる。
この電解質層156において、上記した異常発生の抑制作用が得られるため、熱暴走などの異常発生が著しく抑制される。よって、より高い効果を得ることができる。この場合には、特に、4層(2つの電解質層156および難燃層58,59)を要せず、2層(2つの電解質層156)で済むため、巻回電極体50の構成を簡略化すると共に、その巻回電極体50の厚さを小さくできる。
なお、図19では、2つの電解質層156を設けているが、必要に応じて、2つの電解質層156のうちのいずれか一方だけを設けてもよい。この場合においても、同様の効果を得ることができる。
この他、ここでは具体的に図示しないが、ゲル状の電解質層56に代えて電解液がそのまま用いられる場合には、図8を参照しながら説明したように、難燃性材料を含むセパレータ55、すなわち難燃層としての機能を兼ねるセパレータ55を用いてもよい。この場合には、難燃層として機能するセパレータ55の一部(侵入部分)が正極活物質層53Bおよび負極活物質層54Bのそれぞれの内部に入り込むため、難燃性材料の一部は、正極活物質層53Bおよび負極活物質層54Bのそれぞれの内部に入り込む。よって、この場合においても、難燃層58,59と同様の作用が得られるため、電池特性と安全性とを両立させることができる。
<4.二次電池の用途>
次に、上記した二次電池の適用例について説明する。
二次電池の用途は、その二次電池を駆動用の電源または電力蓄積用の電力貯蔵源などとして利用可能な機械、機器、器具、装置およびシステム(複数の機器などの集合体)などであれば、特に限定されない。電源として使用される二次電池は、主電源(優先的に使用される電源)でもよいし、補助電源(主電源に代えて、または主電源から切り換えて使用される電源)でもよい。二次電池を補助電源として使用する場合には、主電源の種類は二次電池に限られない。
二次電池の用途は、例えば、以下の通りである。ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、携帯電話機、ノート型パソコン、コードレス電話機、ヘッドホンステレオ、携帯用ラジオ、携帯用テレビおよび携帯用情報端末などの電子機器(携帯用電子機器を含む)である。電気シェーバなどの携帯用生活器具である。バックアップ電源およびメモリーカードなどの記憶用装置である。電動ドリルおよび電動鋸などの電動工具である。着脱可能な電源としてノート型パソコンなどに用いられる電池パックである。ペースメーカおよび補聴器などの医療用電子機器である。電気自動車(ハイブリッド自動車を含む)などの電動車両である。非常時などに備えて電力を蓄積しておく家庭用バッテリシステムなどの電力貯蔵システムである。もちろん、上記以外の用途でもよい。
中でも、二次電池は、電池パック、電動車両、電力貯蔵システム、電動工具および電子機器などに適用されることが有効である。優れた電池特性が要求されるため、本技術の二次電池を用いることで、有効に性能向上を図ることができるからである。なお、電池パックは、二次電池を用いた電源であり、いわゆる組電池などである。電動車両は、二次電池を駆動用電源として作動(走行)する車両であり、上記したように、二次電池以外の駆動源を併せて備えた自動車(ハイブリッド自動車など)でもよい。電力貯蔵システムは、二次電池を電力貯蔵源として用いるシステムである。例えば、家庭用の電力貯蔵システムでは、電力貯蔵源である二次電池に電力が蓄積されているため、その電力を利用して家庭用の電気製品などを使用可能になる。電動工具は、二次電池を駆動用の電源として可動部(例えばドリルなど)が可動する工具である。電子機器は、二次電池を駆動用の電源(電力供給源)として各種機能を発揮する機器である。
ここで、二次電池のいくつかの適用例について具体的に説明する。なお、以下で説明する各適用例の構成はあくまで一例であるため、適宜変更可能である。
<4−1.電池パック(単電池)>
図20は、単電池を用いた電池パックの斜視構成を表しており、図21は、図20に示した電池パックのブロック構成を表している。なお、図20では、電池パックを分解した状態を示している。
ここで説明する電池パックは、1つの二次電池を用いた簡易型の電池パック(いわゆるソフトパック)であり、例えば、スマートフォンに代表される電子機器などに内蔵される。この電池パックは、例えば、図20に示したように、ラミネートフィルム型の二次電池である電源111と、その電源111に接続される回路基板116とを備えている。
電源111の両側面には、一対の粘着テープ118,119が貼り付けられている。回路基板116には、保護回路(PCM:Protection・Circuit・Module )が形成されている。この回路基板116は、電源111の正極リード112および負極リード113に対して一対のタブ114,115を介して接続されていると共に、外部接続用のコネクタ付きリード線117に接続されている。なお、回路基板116が電源111に接続された状態において、その回路基板116は、ラベル120および絶縁シート121により上下から保護されている。このラベル120が貼り付けられることで、回路基板116および絶縁シート121などは固定されている。
また、電池パックは、例えば、図21に示しているように、電源111と、回路基板116とを備えている。回路基板116は、例えば、制御部121と、スイッチ部122と、PTC123と、温度検出部124とを備えている。電源111は、正極端子125および負極端子127を介して外部と接続可能であるため、その電源111は、正極端子125および負極端子127を介して充放電される。温度検出部124は、温度検出端子(いわゆるT端子)126を用いて温度を検出可能である。
制御部121は、電池パック全体の動作(電源111の使用状態を含む)を制御するものであり、例えば、中央演算処理装置(CPU)およびメモリなどを含んでいる。
この制御部121は、例えば、電池電圧が過充電検出電圧に到達すると、スイッチ部122を切断させることで、電源111の電流経路に充電電流が流れないようにする。また、制御部121は、例えば、充電時において大電流が流れると、スイッチ部122を切断させて、充電電流を遮断する。
この他、制御部121は、例えば、電池電圧が過放電検出電圧に到達すると、スイッチ部122を切断させることで、電源111の電流経路に放電電流が流れないようにする。また、制御部121は、例えば、放電時において大電流が流れると、スイッチ部122を切断させることで、放電電流を遮断する。
なお、二次電池の過充電検出電圧は、例えば、4.20V±0.05Vであると共に、過放電検出電圧は、例えば、2.4V±0.1Vである。
スイッチ部122は、制御部121の指示に応じて、電源111の使用状態(電源111と外部機器との接続の可否)を切り換えるものである。このスイッチ部121は、例えば、充電制御スイッチおよび放電制御スイッチなどを含んでいる。充電制御スイッチおよび放電制御スイッチは、例えば、金属酸化物半導体を用いた電界効果トランジスタ(MOSFET)などの半導体スイッチである。なお、充放電電流は、例えば、スイッチ部122のON抵抗に基づいて検出される。
温度検出部124は、電源111の温度を測定して、その測定結果を制御部121に出力するものであり、例えば、サーミスタなどの温度検出素子を含んでいる。なお、温度検出部124による測定結果は、異常発熱時において制御部121が充放電制御を行う場合や、制御部121が残容量の算出時において補正処理を行う場合などに用いられる。
なお、回路基板116は、PTC123を備えていなくてもよい。この場合には、別途、回路基板116にPTC素子が付設されていてもよい。
<4−2.電池パック(組電池)>
図22は、組電池を用いた電池パックのブロック構成を表している。この電池パックは、例えば、プラスチック材料などにより形成された筐体60の内部に、制御部61と、電源62と、スイッチ部63と、電流測定部64と、温度検出部65と、電圧検出部66と、スイッチ制御部67と、メモリ68と、温度検出素子69と、電流検出抵抗70と、正極端子71および負極端子72とを備えている。
制御部61は、電池パック全体の動作(電源62の使用状態を含む)を制御するものであり、例えば、CPUなどを含んでいる。電源62は、1または2以上の二次電池(図示せず)を含んでいる。この電源62は、例えば、2以上の二次電池を含む組電池であり、それらの二次電池の接続形式は、直列でもよいし、並列でもよいし、双方の混合型でもよい。一例を挙げると、電源62は、2並列3直列となるように接続された6つの二次電池を含んでいる。
スイッチ部63は、制御部61の指示に応じて電源62の使用状態(電源62と外部機器との接続の可否)を切り換えるものである。このスイッチ部63は、例えば、充電制御スイッチ、放電制御スイッチ、充電用ダイオードおよび放電用ダイオード(いずれも図示せず)などを含んでいる。充電制御スイッチおよび放電制御スイッチは、例えば、金属酸化物半導体を用いた電界効果トランジスタ(MOSFET)などの半導体スイッチである。
電流測定部64は、電流検出抵抗70を用いて電流を測定して、その測定結果を制御部61に出力するものである。温度検出部65は、温度検出素子69を用いて温度を測定して、その測定結果を制御部61に出力する。この温度測定結果は、例えば、異常発熱時において制御部61が充放電制御を行う場合や、制御部61が残容量の算出時において補正処理を行う場合などに用いられる。電圧検出部66は、電源62中における二次電池の電圧を測定して、その測定電圧をアナログ−デジタル変換して制御部61に供給するものである。
スイッチ制御部67は、電流測定部64および電圧検出部66から入力される信号に応じて、スイッチ部63の動作を制御するものである。
このスイッチ制御部67は、例えば、電池電圧が過充電検出電圧に到達した場合に、スイッチ部63(充電制御スイッチ)を切断して、電源62の電流経路に充電電流が流れないように制御する。これにより、電源62では、放電用ダイオードを介して放電のみが可能になる。なお、スイッチ制御部67は、例えば、充電時に大電流が流れた場合に、充電電流を遮断する。
また、スイッチ制御部67は、例えば、電池電圧が過放電検出電圧に到達した場合に、スイッチ部63(放電制御スイッチ)を切断して、電源62の電流経路に放電電流が流れないようにする。これにより、電源62では、充電用ダイオードを介して充電のみが可能になる。なお、スイッチ制御部67は、例えば、放電時に大電流が流れた場合に、放電電流を遮断する。
なお、二次電池では、例えば、過充電検出電圧は4.20V±0.05Vであり、過放電検出電圧は2.4V±0.1Vである。
メモリ68は、例えば、不揮発性メモリであるEEPROMなどである。このメモリ68には、例えば、制御部61により演算された数値や、製造工程段階で測定された二次電池の情報(例えば、初期状態の内部抵抗など)などが記憶されている。なお、メモリ68に二次電池の満充電容量を記憶させておけば、制御部61が残容量などの情報を把握可能になる。
温度検出素子69は、電源62の温度を測定すると共にその測定結果を制御部61に出力するものであり、例えば、サーミスタなどである。
正極端子71および負極端子72は、電池パックを用いて稼働される外部機器(例えばノート型のパーソナルコンピュータなど)や、電池パックを充電するために用いられる外部機器(例えば充電器など)などに接続される端子である。電源62の充放電は、正極端子71および負極端子72を介して行われる。
<4−3.電動車両>
図23は、電動車両の一例であるハイブリッド自動車のブロック構成を表している。この電動車両は、例えば、金属製の筐体73の内部に、制御部74と、エンジン75と、電源76と、駆動用のモータ77と、差動装置78と、発電機79と、トランスミッション80およびクラッチ81と、インバータ82,83と、各種センサ84とを備えている。この他、電動車両は、例えば、差動装置78およびトランスミッション80に接続された前輪用駆動軸85および前輪86と、後輪用駆動軸87および後輪88とを備えている。
この電動車両は、例えば、エンジン75またはモータ77のいずれか一方を駆動源として走行可能である。エンジン75は、主要な動力源であり、例えば、ガソリンエンジンなどである。エンジン75を動力源とする場合、そのエンジン75の駆動力(回転力)は、例えば、駆動部である差動装置78、トランスミッション80およびクラッチ81を介して前輪86または後輪88に伝達される。なお、エンジン75の回転力は発電機79にも伝達され、その回転力を利用して発電機79が交流電力を発生させると共に、その交流電力はインバータ83を介して直流電力に変換され、電源76に蓄積される。一方、変換部であるモータ77を動力源とする場合、電源76から供給された電力(直流電力)がインバータ82を介して交流電力に変換され、その交流電力を利用してモータ77が駆動する。このモータ77により電力から変換された駆動力(回転力)は、例えば、駆動部である差動装置78、トランスミッション80およびクラッチ81を介して前輪86または後輪88に伝達される。
なお、図示しない制動機構を介して電動車両が減速すると、その減速時の抵抗力がモータ77に回転力として伝達され、その回転力を利用してモータ77が交流電力を発生させるようにしてもよい。この交流電力はインバータ82を介して直流電力に変換され、その直流回生電力は電源76に蓄積されることが好ましい。
制御部74は、電動車両全体の動作を制御するものであり、例えば、CPUなどを含んでいる。電源76は、1または2以上の二次電池(図示せず)を含んでいる。この電源76は、外部電源と接続され、その外部電源から電力供給を受けることで電力を蓄積可能になっていてもよい。各種センサ84は、例えば、エンジン75の回転数を制御すると共に、図示しないスロットルバルブの開度(スロットル開度)を制御するために用いられる。この各種センサ84は、例えば、速度センサ、加速度センサおよびエンジン回転数センサなどを含んでいる。
なお、電動車両がハイブリッド自動車である場合について説明したが、その電動車両は、エンジン75を用いずに電源76およびモータ77だけを用いて作動する車両(電気自動車)でもよい。
<4−4.電力貯蔵システム>
図24は、電力貯蔵システムのブロック構成を表している。この電力貯蔵システムは、例えば、一般住宅および商業用ビルなどの家屋89の内部に、制御部90と、電源91と、スマートメータ92と、パワーハブ93とを備えている。
ここでは、電源91は、例えば、家屋89の内部に設置された電気機器94に接続されていると共に、家屋89の外部に停車された電動車両96に接続可能である。また、電源91は、例えば、家屋89に設置された自家発電機95にパワーハブ93を介して接続されていると共に、スマートメータ92およびパワーハブ93を介して外部の集中型電力系統97に接続可能である。
なお、電気機器94は、例えば、1または2以上の家電製品を含んでおり、その家電製品は、例えば、冷蔵庫、エアコン、テレビおよび給湯器などである。自家発電機95は、例えば、太陽光発電機および風力発電機などのうちのいずれか1種類または2種類以上である。電動車両96は、例えば、電気自動車、電気バイクおよびハイブリッド自動車などのうちのいずれか1種類または2種類以上である。集中型電力系統97は、例えば、火力発電所、原子力発電所、水力発電所および風力発電所などのうちのいずれか1種類または2種類以上である。
制御部90は、電力貯蔵システム全体の動作(電源91の使用状態を含む)を制御するものであり、例えば、CPUなどを含んでいる。電源91は、1または2以上の二次電池(図示せず)を含んでいる。スマートメータ92は、例えば、電力需要側の家屋89に設置されるネットワーク対応型の電力計であり、電力供給側と通信可能である。これに伴い、スマートメータ92は、例えば、外部と通信しながら、家屋89における需要・供給のバランスを制御することで、効率的で安定したエネルギー供給を可能とする。
この電力貯蔵システムでは、例えば、外部電源である集中型電力系統97からスマートメータ92およびパワーハブ93を介して電源91に電力が蓄積されると共に、独立電源である自家発電機95からパワーハブ93を介して電源91に電力が蓄積される。この電源91に蓄積された電力は、制御部90の指示に応じて電気機器94および電動車両96に供給されるため、その電気機器94が稼働可能になると共に、電動車両96が充電可能になる。すなわち、電力貯蔵システムは、電源91を用いて、家屋89内における電力の蓄積および供給を可能にするシステムである。
電源91に蓄積された電力は、任意に利用可能である。このため、例えば、電気使用料が安い深夜に集中型電力系統97から電源91に電力を蓄積しておき、その電源91に蓄積しておいた電力を電気使用料が高い日中に用いることができる。
なお、上記した電力貯蔵システムは、1戸(1世帯)ごとに設置されていてもよいし、複数戸(複数世帯)ごとに設置されていてもよい。
<4−5.電動工具>
図25は、電動工具のブロック構成を表している。この電動工具は、例えば、電動ドリルであり、プラスチック材料などにより形成された工具本体98の内部に、制御部99と、電源100とを備えている。この工具本体98には、例えば、可動部であるドリル部101が稼働(回転)可能に取り付けられている。
制御部99は、電動工具全体の動作(電源100の使用状態を含む)を制御するものであり、例えば、CPUなどを含んでいる。電源100は、1または2以上の二次電池(図示せず)を含んでいる。この制御部99は、図示しない動作スイッチの操作に応じて、電源100からドリル部101に電力を供給する。
本技術の具体的な実施例について、詳細に説明する。
(実験例1−1〜1−30)
以下の手順により、図9および図10に示した円筒型の二次電池(リチウムイオン二次電池)を作製した。
正極41を作製する場合には、最初に、正極活物質(LiNi0.77Co0.20Al0.03O2 )94質量部と、正極結着剤(ポリフッ化ビニリデン)3質量部と、正極導電剤(黒鉛)3質量部とを混合して、正極合剤とした。続いて、正極合剤を有機溶剤(N−メチル−2−ピロリドン)に分散させて、正極合剤スラリーとした。続いて、正極合剤スラリーを正極集電体41A(20μm厚の帯状アルミニウム箔)の両面に塗布したのち、その正極合剤スラリーを乾燥させて、正極活物質層41Bを形成した。この場合には、正極集電体41Aの片面における正極活物質層41Bの面積密度を40mg/cm2 とした。最後に、ロールプレス機を用いて正極活物質層41Bを圧縮成型した。
負極42を作製する場合には、最初に、負極活物質(ケイ素)80質量部と、負極結着剤(ポリフッ化ビニリデン)8.5質量部と、負極導電剤(黒鉛)11.5質量部とを混合して、負極合剤とした。続いて、負極合剤を有機溶剤(N−メチル−2−ピロリドン)に分散させて、負極合剤スラリーとした。続いて、負極合剤スラリーを負極集電体42A(15μm厚の帯状銅箔)の両面に塗布したのち、その負極合剤スラリーを乾燥させて、負極活物質層42Bを形成した。この場合には、負極集電体42Aの片面における負極活物質層42Bの面積密度を6mg/cm2 とした。最後に、ロールプレス機を用いて負極活物質層42Bを圧縮成型した。
電解液を調製する場合には、溶媒(炭酸エチレンおよび炭酸ジメチル)に電解質塩(LiPF6 )を溶解させた。この場合には、溶媒の組成を重量比で炭酸エチレン:炭酸ジメチル=50:50、電解質塩の含有量を溶媒全体に対して1mol/kgとした。
二次電池を組み立てる場合には、最初に、正極集電体41Aにアルミニウム製の正極リード45を溶接すると共に、負極集電体42Aにニッケル製の負極リード46を溶接した。続いて、セパレータ43(5μm厚のポリエチレンフィルム)および難燃層47を介して正極41と負極42とを積層してから巻回させて巻回電極体40を作製したのち、その巻回電極体40の巻回中心にセンターピン44を挿入した。続いて、一対の絶縁板32,33で挟みながら巻回電極体40を電池缶31の内部に収納した。この場合には、正極リード45の先端部を安全弁機構35に溶接すると共に、負極リード46の先端部を電池缶31に溶接した。続いて、電池缶31の内部に電解液を注入して、その電解液を巻回電極体40に含浸させた。最後に、ガスケット37を介して電池缶31の開口端部に電池蓋34、安全弁機構35および熱感抵抗素子36をかしめた。
この二次電池を作製する場合には、以下の手順により、難燃層47を形成した。
塗布法を用いて難燃層47を形成する場合には、最初に、難燃性材料50質量部と、高分子化合物(ポリフッ化ビニリデン)5質量部とを混合したのち、その混合物を有機溶剤(N−メチル−2−ピロリドン)に分散させて、難燃剤スラリーとした。この難燃性材料としては、ポリリン酸アンモニウム(PPA)、メラミンシアヌレート(MC)、ポリリン酸メラミン(PPM)、メラミン(MEL)、式(1−1)に示したメラミン誘導体(MMEL)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3 )、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2 )、ベーマイト(Al2 O3 ・H2 O)、およびタルク(TAL)を用いた。なお、必要に応じて、2種類の難燃性材料(PPA+MC)を混合した。この場合には、混合比を重量比でPPA:MC=50:50とした。続いて、バーコータを用いて負極42(負極活物質層42B)の表面に難燃剤スラリーを塗布したのち、その難燃剤スラリーを乾燥させて、難燃層47を形成した。この場合には、難燃層47の厚さを10μmとした。
加圧法を用いて難燃層47を形成する手順は、以下の通りである。第1に、負極42の代わりにセパレータ43に難燃剤スラリーを塗布して難燃層47を形成したのち、その難燃層47を負極42の表面に加圧した。第2に、難燃性材料が内部に含有されているセパレータ43を準備して、そのセパレータ43を負極42の表面に加圧した。この場合には、セパレータ43の形成過程において、その形成材料(後述するポリエチレン)に難燃性材料を添加した。第3に、あらかじめシート状に成型された難燃層47を準備して、その難燃層47を負極42の表面に加圧した。加圧時の圧力は、5MPaとした。この場合には、支持板の表面に難燃剤スラリーを塗布したのち、その難燃剤スラリーを乾燥させて難燃層47を形成してから、その難燃層47を支持板から剥離させた。この加圧法(油圧プレス)に関する詳細は、上記した通りである。
なお、比較のために、難燃層47を形成しなかった。また、難燃層47を形成する代わりに、難燃性材料を正極合剤、負極合剤および電解液のそれぞれに含有させた。
この他、比較のために、酸化アルミニウム(Al2 O3 )を用いて難燃層47を形成した。また、加圧しなかったことを除き、上記した加圧法を用いた場合(3通りの手順)と同様の手順により難燃層47を形成した。
二次電池の電池特性として初回充放電特性、放電容量特性およびサイクル特性を調べると共に、安全性として高温耐久性を調べたところ、表1および表2に示した結果が得られた。表1および表2に示した「セパ」とは、セパレータを表しており、後述する表4および表5においても同様である。
初回充放電特性を調べる場合には、最初に、電池状態を安定化させるために、常温環境中(23℃)において二次電池を1サイクル充放電させた。続いて、同環境中において二次電池をさらに1サイクル充電させて充電容量(mAh)を測定したのち、その二次電池を放電させて放電容量(mAh)を測定した。この結果から、初回効率(%)=(2サイクル目の放電容量/2サイクル目の充電容量)×100を算出した。充電時には、電流=0.2C、上限電圧=4.2Vとして定電流定電圧充電すると共に、放電時には、電流=0.2C、終止電圧=2.7Vとして定電流放電した。なお、「0.2C」とは、電池容量(理論容量)を5時間で放電しきる電流値である。
放電容量特性を調べる場合には、上記した2サイクル目の放電容量(mAh)を測定した。
サイクル特性を調べる場合には、上記した手順により電池状態を安定化させた二次電池を常温環境中(23℃)において充放電させて、放電容量を測定した。続いて、同環境中においてサイクル数(充放電回数)の合計が300サイクルになるまで二次電池を充放電させて、放電容量を測定した。この結果から、容量維持率(%)=(300サイクル目の放電容量/2サイクル目の放電容量)×100を算出した。充放電条件は、初回充放電特性を調べた場合と同様である。
高温耐久性を調べる場合には、上記した手順により電池状態を安定化させた二次電池を充電させたのち、その充電状態の二次電池を恒温槽中に投入した。続いて、恒温槽中の温度を昇温させたのち、その昇温後の温度を1時間維持して、二次電池の状態(発火および破裂の有無)を観察した。二次電池の状態に変化がない場合には、恒温層中の温度を5℃ずつ昇温させてから観察を行う手順を繰り返すことで、二次電池の状態に変化が生じない限界温度(最高温度:℃)を調べた。
なお、SEMを用いて負極42の断面を観察して、難燃層47の一部が負極活物質層42Bの内部に入り込んでいるか否か(侵入部分が存在しているか否か)を調べた。その結果も表1および表2に併せて示した。
難燃層47の有無およびその構成に応じて、電池特性および安全性は大きく変動した。以下では、難燃層47が形成されていない場合(実験例1−18)の結果(初回効率、放電容量、容量維持率および最高温度)を比較基準とする。
難燃層47は難燃性材料を含んでいるが、その難燃層47の一部が負極活物質層42Bの内部に入り込んでいない場合(実験例1−22〜1−28)には、上記した基準と比較して、初回効率はほぼ同等であり、最高温度も場合によっては僅かに上昇したが、ほとんどの場合において放電容量および容量維持率は減少した。
難燃層47を形成せずに、難燃性材料を正極合剤などに含有させた場合(実験例1−19〜1−21)には、上記した基準と比較して、初回効率、放電容量、容量維持率および最高温度のうちの一部は同等以上であったが、残りは減少または低下した。
なお、酸化アルミニウムを用いた場合(実験例1−29,1−30)には、その酸化アルミニウムが根本的に難燃性を有していないため、難燃層47が熱暴走などの異常発生を抑制する機能を発揮できなかった。よって、難燃層47の有無および侵入部分の有無に応じて電池特性および安全性が変化しなかった。
これに対して、難燃層47が難燃性材料を含んでおり、その難燃層47の一部が負極活物質層42Bの内部に入り込んでいる場合(実験例1−1〜1−17)には、上記した基準と比較して、初回効率、放電容量および容量維持率は場合によっては僅かに減少したが、最高温度は大幅に上昇した。この結果は、難燃性材料を含む難燃層47の一部が負極活物質層42Bの内部に入り込んでいると、初回効率、放電容量および容量維持率の減少を最小限に抑えつつ、最高温度が著しく上昇することを表している。
(実験例2−1〜2−5)
表3に示したように、難燃層47の厚さを変更したことを除き、同様の手順により二次電池を作製すると共に電池特性および安全性を調べた。
難燃層47の厚さを変更した場合(表3)においても、表1および表2と同様の結果が得られた。すなわち、難燃層47が難燃性材料を含んでおり、その難燃層47の一部が負極活物質層42Bの内部に入り込んでいる場合(実験例2−1〜2−5)には、初回効率、放電容量および容量維持率は僅かに減少したが、最高温度は大幅に上昇した。
(実験例3−1〜3−30)
以下の手順により、図14、図15および図19に示したラミネートフィルム型の二次電池(リチウムイオン二次電池)を作製した。
正極53を作製する場合には、最初に、正極活物質(LiCoO2 )91質量部と、正極結着剤(ポリフッ化ビニリデン)3質量部と、正極導電剤(黒鉛)6質量部とを混合して、正極合剤とした。続いて、正極合剤を有機溶剤(N−メチル−2−ピロリドン)に分散させて、正極合剤スラリーとした。続いて、正極合剤スラリーを正極集電体53A(20μm厚の帯状アルミニウム箔)の両面に塗布したのち、その正極合剤スラリーを乾燥させて、正極活物質層53Bを形成した。この場合には、正極集電体53Aの両面における正極活物質層53Bの合計の面積密度を30mg/cm2 とした。最後に、ロールプレス機を用いて正極活物質層53Bを圧縮成型した。
負極54を作製する場合には、最初に、負極活物質(人造黒鉛)90質量部と、負極結着剤(ポリフッ化ビニリデン)10質量部とを混合して、負極合剤とした。続いて、負極合剤を有機溶剤(N−メチル−2−ピロリドン)に分散させて、負極合剤スラリーとした。続いて、負極合剤スラリーを負極集電体54A(10μm厚の帯状銅箔)の両面に塗布したのち、その負極合剤スラリーを乾燥させて、負極活物質層54Bを形成した。この場合には、負極集電体54Aの両面における負極活物質層54Bの合計の面積密度を16mg/cm2 とした。最後に、ロールプレス機を用いて正極活物質層54Bを圧縮成型した。
塗布法を用いて電解質層156を形成する場合には、最初に、溶媒(炭酸エチレンおよび炭酸プロピレン)に電解質塩(LiPF6 )を溶解させて、電解液を調製した。この場合には、溶媒の組成を重量比で炭酸エチレン:炭酸プロピレン=60:40、電解質塩の含有量を溶媒全体に対して0.8mol/kgとした。続いて、電解液90質量部と、高分子化合物(フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体)10質量部とを混合したのち、その混合物に難燃性材料を加えた。この場合には、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの重合比を重量比でフッ化ビニリデン:ヘキサフルオロプロピレン=93.1:6.9とした。難燃性材料の種類および含有量(重量%)は、表4および表5に示した通りである。続いて、混合物に有機溶剤(炭酸ジメチル)を加えて、前駆溶液を調製した。この場合には、前駆溶液の粘度を50mPa・sとした。続いて、バーコータを用いて正極53(正極活物質層53B)および負極54(負極活物質層54B)のそれぞれの表面に前駆溶液を塗布したのち、その前駆溶液を乾燥させて、難燃性材料を含むゲル状の電解質である電解質層156を形成した。この場合には、電解質層156の厚さを10μmとした。続いて、正極集電体53Aにアルミニウム製の正極リード51を溶接すると共に、負極集電体54Aにニッケル製の負極リード52を溶接した。続いて、セパレータ55、電解質層156を介して正極53と負極54とを積層してから巻回させて巻回電極体50を作製したのち、その巻回電極体50の最外周部に保護テープ57を貼り付けた。続いて、2枚のフィルム状の外装部材59の間に巻回電極体50を挟み込んだのち、その外装部材59の外周縁部同士を熱融着して、巻回電極体50を外装部材59の内部に封入した。この場合には、正極リード51および負極リード52と外装部材59との間に密着フィルム58(ポリエチレンフィルム)を挿入した。
なお、比較のために、表5に示したように、円筒型の二次電池を作製した場合と同様に電解質層156の形成方法などを変更した。
二次電池の電池特性として初回充放電特性、放電容量特性およびサイクル特性を調べると共に、安全性として短絡時状況を調べたところ、表4および表5に示した結果が得られた。
初回充放電特性、放電容量特性およびサイクル特性を調べる手順は、円筒型の二次電池を調べた場合と同様である。
短絡時状況を調べる場合には、二次電池の外部において短絡を発生させたのち、その二次電池の表面温度(℃)の最高値を測定した。この場合には、外装部材59が開裂して、二次電池内の熱分解反応に起因するガス噴出が発生したかどうかも調べた。
難燃性材料を含む電解質層156を用いたラミネートフィルム型の二次電池(表4および表5)においても、難燃性材料を含む難燃層47を用いた円筒型の二次電池(表1および表2)と同様の結果が得られた。
詳細には、電解質層156が形成されていない場合(実験例3−18)の結果(初回効率、放電容量、容量維持率、表面温度およびガス噴出)を比較基準とする。
電解質層156は難燃性材料を含んでいるが、その電解質層156の一部が負極活物質層54Bの内部に入り込んでいない場合(実験例3−22〜3−28)には、表面温度は同等であったが、初回効率は軒並み減少し、放電容量および容量維持率も場合によっては減少してしまった。
電解質層156を形成せずに、難燃性材料を正極合剤などに含有させた場合(実験例3−19〜3−21)には、初回効率、放電容量、容量維持率および表面温度のうちの一部は同等以上であったが、残りは減少または低下した。
それどころか、上記した一連の場合には、いずれの場合においても二次電池の内部において激しい熱分解反応が発生したため、ガス噴出が発生した。
なお、酸化アルミニウムを用いた場合(実験例3−29,3−30)には、電解質層156の有無および侵入部分の有無に応じて電池特性および安全性が変化しなかった。
これに対して、電解質層156が難燃性材料を含んでおり、その電解質層156の一部が負極活物質層53Bの内部に入り込んでいる場合(実験例3−1〜3−17)には、初回効率、放電容量および容量維持率は僅かに減少したが、表面温度は大幅に低下した。しかも、二次電池の内部において熱分解反応がほとんど発生しなかったため、ガス噴出が発生しなかった。この結果は、難燃性材料を含む電解質層156の一部が負極活物質層53Bの内部に入り込んでいると、初回効率、放電容量および容量維持率の減少を最小限に抑えつつ、表面温度が大幅に低下すると共にガス噴出の発生が抑制されることを表している。
(実験例4−1〜4−6)
表6に示したように、電解質層156における難燃性材料の含有量(重量%)を変更したことを除き、同様の手順により二次電池を作製すると共に電池特性および安全性を調べた。
電解質層156における難燃性材料の含有量を変更した場合(表6)においても、表4および表5と同様の結果が得られた。すなわち、電解質層156が難燃性材料を含んでおり、その電解質層156の一部が負極活物質層54Bの内部に入り込んでいる場合(実験例4−1〜4−6)には、初回効率、放電容量および容量維持率の減少を最小限に抑えつつ、表面温度が大幅に低下すると共にガス噴出の発生が抑制された。
特に、難燃性材料の含有量が5重量%〜30重量%であると、初回効率、放電容量および容量維持率がより増加すると共に、表面温度がより低下した。
表1〜表6に示した結果から、難燃層が特定の難燃性材料を含んでいると共に、その難燃層の一部が正極および負極のうちの一方または双方に入り込んでいると、電池特性を確保しつつ、安全性が大幅に向上した。よって、電池特性と安全性とが両立された。
以上、実施形態および実施例を挙げながら本技術を説明したが、本技術は、実施形態および実施例において説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、電池構造が円筒型、ラミネートフィルム型および角型であると共に、電池素子が巻回構造を有する場合を例に挙げて説明したが、これらに限られない。本技術の二次電池は、コイン型およびボタン型などの他の電池構造を有する場合や、電池素子が積層構造などの他の構造を有する場合に関しても、同様に適用可能である。
また、電極反応物質は、ナトリウム(Na)およびカリウム(K)などの他の1族元素や、マグネシウムおよびカルシウムなどの2族元素や、アルミニウムなどの他の軽金属でもよい。本技術の効果は、電極反応物質の種類に依存せずに得られるはずであるため、その電極反応物質の種類を変更しても同様の効果を得ることができる。
なお、本明細書中に記載された効果は、あくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
本技術は、以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
正極と、
負極と、
電解液と、
前記正極と前記負極との間に配置され、ポリリン酸塩、メラミン塩、式(1)で表されるメラミン誘導体、金属水酸化物、および金属水和物のうちの少なくとも1種を含む中間層と
を備え、
前記中間層の一部は、前記正極および前記負極のうちの少なくとも一方に入り込んでおり、
前記中間層は、前記電解液と前記電解液を保持する高分子化合物とを含む電解質層である、
二次電池。
(R1〜R6のそれぞれは、水素基(−H)、1価の炭化水素基、1価の水酸基含有炭化水素基、1または2以上の1価の炭化水素基と1または2以上の酸素結合(−O−)とが全体として1価となるように結合された基、1または2以上の1価の水酸基含有炭化水素基と1または2以上の酸素結合とが全体として1価となるように結合された基、およびそれらの2種類以上が全体として1価となるように結合された基のうちのいずれかである。)
(2)
前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータを備え、
(A)前記中間層は、前記正極と前記セパレータとの間に配置されていると共に、その中間層の一部は、前記正極に入り込んでおり、
または、(B)前記中間層は、前記負極と前記セパレータとの間に配置されていると共に、その中間層の一部は、前記負極に入り込んでおり、
または、(C)前記中間層は、前記正極と前記セパレータとの間に配置された第1中間層と、前記負極と前記セパレータとの間に配置された第2中間層とを含み、
前記第1中間層の一部は、前記正極に入り込んでいると共に、前記第2中間層の一部は、前記負極に入り込んでいる、
上記(1)に記載の二次電池。
(3)
前記(A)において、前記セパレータに対する前記中間層の密着強度は、前記正極に対する前記中間層の密着強度よりも大きく、
または、前記(B)において、前記セパレータに対する前記中間層の密着強度は、前記負極に対する前記中間層の密着強度よりも大きく、
または、前記(C)において、前記セパレータに対する前記第1中間層の密着強度は、前記正極に対する前記第1中間層の密着強度よりも大きいと共に、前記セパレータに対する前記第2中間層の密着強度は、前記負極に対する前記第2中間層の密着強度よりも大きい、
上記(2)に記載の二次電池。
(4)
前記1価の炭化水素基は、炭素数=1〜5のアルキル基であり、
前記1価の水酸基含有炭化水素基は、炭素数=1〜5のヒドロキシアルキル基である、
上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の二次電池。
(5)
前記ポリリン酸塩は、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸マグネシウム、ポリリン酸バリウム、ポリリン酸亜鉛、ポリリン酸塩ニッケル、ポリリン酸アルミニウムおよびポリリン酸メラミンのうちの少なくとも1種を含み、
前記メラミン塩は、メラミンシアヌレートおよび硫酸メラミンのうちの少なくとも1種を含み、
前記メラミン誘導体は、メラミンおよび式(1−1)〜式(1−4)のそれぞれで表される化合物のうちの少なくとも1種を含み、
前記金属水酸化物は、Al(OH)
3 、Mg(OH)
2 、Mg
3 Si
4 O
10(OH)
2 、およびAl
2 SiO
3 (OH)のうちの少なくとも1種を含み、
前記金属水和物は、Al
2 O
3 ・H
2 O、Mg
6 Al
2 (CO
3 )(OH)
16・4H
2 O、Mg
9 Si
12O
30(OH)
6 (OH
2 )
4 ・6H
2 O、K
2 O・3Al
2 O
3 ・6SiO
2 ・2H
2 O、(Ca/2,Na)
0.33(Mg,Fe
2+)
3 (Si,Al)
4 O
10(OH)
2 ・4H
2 O、(Mg,Al)
2 Si
4 O
10(OH)・6H
2 O、および(Na,Ca)
0.33(Al,Mg)
2 Si
4 O
10(OH)
2 ・nH
2 O(nは1以上の整数)のうちの少なくとも1種を含む、
上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の二次電池。
(6)
リチウムイオン二次電池である、
上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の二次電池。
(7)
上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の二次電池と、
その二次電池の動作を制御する制御部と、
その制御部の指示に応じて前記二次電池の動作を切り換えるスイッチ部と
を備えた、電池パック。
(8)
上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の二次電池と、
その二次電池から供給された電力を駆動力に変換する変換部と、
その駆動力に応じて駆動する駆動部と、
前記二次電池の動作を制御する制御部と
を備えた、電動車両。
(9)
上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の二次電池と、
その二次電池から電力を供給される1または2以上の電気機器と、
前記二次電池からの前記電気機器に対する電力供給を制御する制御部と
を備えた、電力貯蔵システム。
(10)
上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の二次電池と、
その二次電池から電力を供給される可動部と
を備えた、電動工具。
(11)
上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の二次電池を電力供給源として備えた、電子機器。
(12)
活物質層と、
その活物質層に設けられ、ポリリン酸塩、メラミン塩、式(1)で表されるメラミン誘導体、金属水酸化物、および金属水和物のうちの少なくとも1種を含む表面層と
を備え、
前記表面層の一部は、前記活物質層に入り込んでおり、
前記表面層は、電解液と前記電解液を保持する高分子化合物とを含む電解質層である、 二次電池用電極。
(R1〜R6のそれぞれは、水素基(−H)、1価の炭化水素基、1価の水酸基含有炭化水素基、1または2以上の1価の炭化水素基と1または2以上の酸素結合(−O−)とが全体として1価となるように結合された基、1または2以上の1価の水酸基含有炭化水素基と1または2以上の酸素結合とが全体として1価となるように結合された基、およびそれらの2種類以上が全体として1価となるように結合された基のうちのいずれかである。)