JP6427442B2 - Fe基焼結用硬質粉末およびそれを用いた耐摩耗性の優れたFe基焼結体 - Google Patents
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(1)質量%で、C:0.5〜2%、Si:0.5〜2%、Mn:2〜10%、Mo:30〜50%、Cr:15%以下、NiとCoのうちの1種または2種の合計:5%未満、WとVとNbのうちの1種または2種以上の合計:5%以下、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とするFe基焼結用硬質粉末。
(3)前記(1)に記載のFe基焼結用硬質粉末を5〜50質量%と焼結体の基地となるFe系粉末とを混合し、焼結してなることを特徴とする耐摩耗性の優れたFe基焼結体にある。
本発明における最大の特徴は、Mo系炭化物による耐摩耗性改善と同時に、積極的にNi、Coを減じることで硬質粉末のマトリックスのフェライト化を促進し、かつ、このフェライト中にSiを固溶させることにより酸化しやすくし、耐摩耗性を改善したことである。さらに、Siにはフェライトを安定化させる効果も認められる。したがって、本発明における硬質粉末の組成は、Mo、C、Siを必須元素として含むと同時に、オーステナイト化元素であるNiとCoの合計の上限を厳しく規制することを特徴とする。このように、本発明は硬質粉末のマトリックスを積極的にフェライト化する点において、上述した特許文献1、2と本発明は大きく視点が異なる。
C:0.5〜2%
本発明においてCは、硬質粉末中にMo系炭化物を生成し耐摩耗性を改善するための必須元素である。しかしながら、過度に添加すると硬質粉末が脆くなり、バルブシート形状への機械加工時に脱落しやすくなる。0.5%未満の添加では耐摩耗性が十分でなく、2%を超えて添加すると脆くなる。好ましくは0.7%〜1.8%、より好ましくは0.8%〜1.5%である。
本発明においてSiは、硬質粉末マトリックスのフェライトを安定化させるとともに酸化しやすくし、耐摩耗性を改善するための必須元素である。また、マトリックスに固溶することで硬質粉末の硬さを増加させる。しかしながら、過度に添加すると硬質粉末が脆くなる。0.5%未満の添加では耐摩耗性が十分でなく、2%を超えて添加すると脆くなる。好ましくは0.7%〜1.8%、より好ましくは0.8%〜1.5%である。また、Moは炭化物形成元素であるとともに、珪化物も比較的形成しやすい元素であるが、Mo系珪化物は比較的脆い特徴を有する。したがって、C添加量とSi添加量の比率において、Si添加量の比率が高いと、Mo系珪化物を生成しやすくなる。したがって、本発明における硬質粉末成分範囲におけるSi/C比の最大値は4であるが、好ましくは3以下、より好ましくは2以下である。
本発明においてMnは焼結時に硬質粉末と基地の密着性を改善する効果を有する元素であり、2%未満の添加では基地との密着性が悪く機械加工時に表面の硬質粉末の脱落面積率が大きく、10%を超えて添加すると、基地への拡散が大きくなり過ぎて硬質粉末の形状を保てなくなり、かえって密着性が低下する。好ましくは3%〜8%、より好ましくは5%〜7%である。
本発明においてMoは、硬質粉末中にMo系炭化物を生成し耐摩耗性を改善するための必須元素である。しかしながら、過度に添加すると硬質粉末が脆くなり、バルブシート形状への機械加工時に脱落しやすくなる。30%未満の添加では耐摩耗性が十分でなく、50%を超えて添加すると脆くなる。好ましくは34%〜46%、より好ましくは38%〜42%である。
本発明においてCrは硬質粉末の硬さをわずかに増加させる効果を有する元素であり、必要に応じて添加することができる。しかしながら、15%を超えて添加すると機械加工時に硬質粉末が脱落しやすくなる。好ましくは1%〜13%、より好ましくは3%〜11%である。
本発明においてNiとCoは、いずれも硬質粉末マトリックスをオーステナイト化させてしまう元素であるため、その合計量の上限を厳しく制限する必要がある。その合計量が5%未満においてはオーステナイト化の効果が小さいが、5%以上ではオーステナイト化が進み、硬質粉末が酸化しにくくなり、耐摩耗性が低下する。好ましくは3%以下、より好ましくは無添加である。
本発明においてW、V、Nbは硬質な炭化物を形成する元素であり、必要に応じて添加することができる。しかしながら、その合計量が5%を超えて添加すると炭化物がCを多く消費し、結果としてMo系炭化物の生成を阻害する。したがって、W、V、Nbの合計量は、好ましくは0.1%〜3%、より好ましくは0.5%〜2%である。なお、本発明に係る硬質粉末は残部Feであり、このFeは本発明の硬質粉末において最も添加量の多いMoと比較し、低コスト、低融点である。したがって、原料コストと製造時の溶解性を考慮すると、35%を超え、60%未満が好ましく、45%を超え、55%未満がより好ましい。
硬質粉末は基本的に混合量が増加するとともに耐摩耗性が向上する。5%未満では添加の効果が小さく、50%を超えて添加すると金型に充填して加圧成形した際、形状が安定しない。
上述した焼結体の基地となるFe系粉末は、例えば内燃機関のバルブシート等の用途に使用する場合には、Fe99%以上、残部を不可避的不純物からなる還元鉄粉またはアトマイズ鉄粉を用いるが、特にこの粉末に限定されるものではない。
(硬質粉末の作製)
表1、2に示す成分組成となるよう秤量した原料を用い、ガスアトマイズ法により粉末を作製し、これを210μm以下に分級し、硬質粉末として用いた。
上記表1、2に示す組成および混合量の硬質粉末、黒鉛粉末を添加し、残部をFeとして混合し、その混合粉を金型に充填して加圧成形したのち、焼結を行って試験片を作製した。なお、Feは還元鉄粉(180μm以下)、Cは鱗状黒鉛粉(平均粒径25μm)を使用した。
図1に示すバルブシート耐摩耗試験機を用い焼結合金の耐摩耗性を評価した。この試験機ではプロパンガスバーナー1を加熱源として用い、前記の様に作製した焼結合金からなる試験片であるリング形状のバルブシート2と、バルブ3のバルブフェース4との摺動部をプロパンガス燃焼雰囲気とした。バルブフェース4はSUH35材である。バルブシートフェース5の温度を300℃に制御し、スプリング6によりバルブシートフェース5とバルブフェース4との接触時に245Nの荷重を付与して3250回/分の割合で接触させ、8時間の摩耗試験を行った。比較例33の摩耗深さを1とした摩耗量比にて、耐摩耗性を評価した。
作製したバルブシートのバルブとの当たり面を実体顕微鏡で撮影し、5mm2分の視野における脱落した硬質粉末の面積率で評価した。
2 バルブシート
3 バルブ
4 バルブフェース
5 バルブシートフェース
6 スプリング
出願人 山陽特殊製鋼株式会社 他1
代理人 弁理士 椎 名 彊
Claims (3)
- 質量%で、
C:0.5〜2%、
Si:0.5〜2%、
Mn:2〜10%、
Mo:30〜50%、
Cr:15%以下、
NiとCoのうちの1種または2種:5%未満、
WとVとNbのうちの1種または2種以上:5%以下、
残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とするFe基焼結用硬質粉末。 - 請求項1に記載のFe基焼結用硬質粉末と焼結体の基地となるFe系粉末とを混合し、焼結してなることを特徴とする耐摩耗性の優れたFe基焼結体。
- 請求項1に記載のFe基焼結用硬質粉末を5〜50質量%と焼結体の基地となるFe系粉末とを混合し、焼結してなることを特徴とする耐摩耗性の優れたFe基焼結体。
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