JP6425907B2 - リンドープ酸化亜鉛及びその製造方法 - Google Patents
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Description
亜鉛イオンからなる亜鉛源と、リン酸イオン、リン酸水素イオン、リン酸二水素イオン及びリン酸からなる群から選択される少なくとも一種のリン源とを含有する、pHが11.0よりも高い原料水溶液を用意する工程と、
基板を前記原料水溶液に浸漬して、前記基板上にリンドープ酸化亜鉛柱状結晶を析出させる工程と、
を含んでなる、リンドープ酸化亜鉛の製造方法が提供される。
本発明のリンドープ酸化亜鉛は、リンが0.01at%以上の濃度でドープされた酸化亜鉛柱状結晶からなるものである(以下、このようにドープされた酸化亜鉛柱状結晶を単に「酸化亜鉛柱状結晶」と称する)。本発明のリンドープ酸化亜鉛は、所望の特性を阻害しない程度であるかぎり微量の異相やその他の不純物を含有していてもよいが、好ましくはリンドープ酸化亜鉛柱状結晶のみから実質的になる(又はのみからなる)。リン(P)は酸化亜鉛にドープされることによりp型半導体特性を示すとの報告があるように、上記のような濃度でリンがドープされた酸化亜鉛膜はp型を示し、既に多く報告されているn型酸化亜鉛と併せてLEDとしての利用が期待できる。特に、本発明のリンドープ酸化亜鉛は、亜鉛源とリン源とを含有する所定pHの水溶液に基材を浸漬させるだけという低温プロセスで極めて簡便な方法で作製することができる。すなわち、本発明のリンドープ酸化亜鉛は、高価な装置を必要とする気相法に対しコストや環境負荷の側面から有利な手法で合成できることから、本来的に安価な材料であるという酸化亜鉛の利点とも相まって、p型特性を示しうる安価な膜として幅広い工業的応用が期待できる。
本発明のリンドープ酸化亜鉛はいかなる方法によって製造されたものであってもよいが、液相法を用いた以下に述べる本発明の製造方法により製造されるのが好ましい。すなわち、この製造方法は、亜鉛源及びリン源を含有する所定のpHの原料水溶液に基板を浸漬して、基板上にリンドープ酸化亜鉛柱状結晶を析出させることを含んでなる。このような本発明の方法は、亜鉛源とリン源とを含有する所定pHの水溶液に基材を浸漬させるだけという低温プロセスで極めて簡便な方法である。したがって、本発明のリンドープ酸化亜鉛は、高価な装置を必要とする気相法に対しコストや環境負荷の側面から有利な手法で合成できることから、本来的に安価な材料であるという酸化亜鉛の利点とも相まって、p型特性を示しうる安価な膜として幅広い工業的応用が期待できる。
リンドープ酸化亜鉛試料1〜15を以下の手順で作製した。
基板として、市販のc面サファイア基板(純度:99.99%)及びガラス基板を用意した。酸化亜鉛からなるシード層を作製するため、純度99.999%の酸化亜鉛焼結体スパッタターゲットを用いて、高周波(RF)マグネトロンスパッタリングにより、サファイア基板又はガラス基板上に酸化亜鉛シード層を形成した。このスパッタリングは、出力:100W、ガス圧:1Pa、ガス流量比:Ar/O2=4/1の条件で15分間行った。こうしてシード層付基板を得た。
市販のZn(NO3)2をイオン交換水に溶かし、0.1mol/LのZn(NO3)2水溶液を作製した。また別に、市販のNaOHを同じくイオン交換水に溶かし、表1の初期pHになるように所定の濃度のNaOH水溶液を作製した。Zn(NO3)2水溶液とNaOH水溶液をそれぞれ100mlずつ採取して混合した。この混合溶液に、市販のNH4H2PO4を表1に示されるNH4H2PO4/Zn(NO3)2モル比となるような量で投入して、試料14及び15についてはさらに市販のLi(NO3)を表1に示されるLi(NO3)/Zn(NO3)2モル比となるような量で投入して、原料水溶液を得た。
原料水溶液を作製後、すぐにシード層付基板を溶液内に浸漬した。この原料水溶液をホットプレート上に乗せて溶液温度が90℃(試料1〜10)又は80℃(試料11〜15)になるように調整して2時間静置した。
2時間経過後、基板を取り出し、基板ごとリン含有酸化亜鉛膜をイオン交換水にて洗浄した。この洗浄は2回実施した。こうして、リンドープ酸化亜鉛試料1〜10及び14を得る一方、試料11〜13及び15については後続の工程にさらに付した。
試料11〜13及び15については熱処理をさらに行った。試料11及び12については、大気雰囲気にて600℃(試料11)又は700℃(試料12)で1時間熱処理を行う一方、試料15については大気雰囲気にて400℃で3.5時間熱処理を行った。試料13については、N2雰囲気にて600℃/minで昇温した後、600℃で30秒間保持した後、600℃/minで降温し、その後、大気雰囲気にて550℃で3.5時間熱処理を行った。こうして、熱処理されたリンドープ酸化亜鉛試料11〜13及び15を得た。
(1)微構造観察
試料1の微構造をSEMにより観察したところ、図1A及び1Bに示されように膜状のリンドープ酸化亜鉛が確認された。図1Aは膜上方から観察した画像であり、図1Bは膜側面から観察した画像である。SEM観察の結果から、試料1は、直径約0.05〜0.3μm、高さ約1.5μm、アスペクト比2〜1000の柱状結晶が高密度に集合した微構造を有していることが分かった。また、SEM写真を見る限り、ほぼ全面がリンドープ酸化亜鉛で覆われており、基板の被覆面積は約100%であることが分かった。なお、試料2〜5、8及び11〜15について同様の観察を行ったところ、いずれも基板面積の90%以上をリン含有酸化亜鉛が被覆していることが分かった。これに対し、試料6、7、9及び10については粒状もしくは柱状の結晶が基板表面にまばらに存在しており、膜状に形成されておらず基板の被覆面積は90%未満であることが分かった。これらの結果を表1に示す。
試料1〜15について、膜上方からSEM−EDXによる定量分析を行った。この定量分析によりZn、O及びPの各測定値(at%)を取得し、これら3元素の測定値の合計を100at%とした際のPの濃度(at%)、すなわちP/(Zn+O+P)の値を算出した。その結果を表1に示す。各試料におけるリンの濃度は0.01at%以上であったが、試料6、9及び10のリン濃度は10at%以上と非常に大きな値であった。
試料1について、XRD測定装置に用いてX線回折による結晶構造の解析を行った。X線回折の測定条件はCuKα、50kV、300mA、2θ=20−80°とした。試料1について得られた結果を図3に示す。図3に示されるように、34°付近に強い回折ピークが観測され、これはZnOのc面である(002)面を示す回折ピークと推測される。それ以外は、同じくc面である(004)面を除いて、殆ど回折ピークが観測されなかったことから、本サンプルはc軸が基板に対して垂直に配向していることがわかった。試料2〜5、8及び11〜15についても同様の測定を行い、各サンプルがc軸配向していることを確認した。試料6及び9については、c軸配向していたが、その強度は弱く、試料7及び10についてはZnO以外の化合物と見られる異相が数多く検出され、リン含有酸化亜鉛は形成しなかった。
試料11について、SCM(スキャニングキャパシタンス顕微鏡)装置にてリンドープ酸化亜鉛柱状結晶のpn測定を行った。測定は室温、大気中で行い、試料はAgペーストで固定し、変調電圧1V(〜100kHz)、DCバイアス電圧0Vとし、dC/dV信号を測定した。その結果、基板近傍にて相対的にp型を強く示す部分が観察された。この基板近傍の部分をD−SIMS測定にて組成分析したところ、リン濃度が0.18at%のほかに、不可避不純物として偶発的に混入したとみられるリチウムの濃度が1.0×1018atoms/cm−3と局所的に増加する部分が確認された。これを受けて意図的にLiを添加した試料14について膜上面から同様にSCM測定を実施したところ、図4のように10μm×10μmの視野範囲においてp型を示す像が多数部で見られた。このことから、リチウムが共存することによりリンドープ酸化亜鉛柱状結晶にてリチウムの添加がp型化に有効に働くことが示唆された。
Claims (19)
- リンが0.01at%以上の濃度でドープされた酸化亜鉛柱状結晶を複数備えてなり、該複数の酸化亜鉛柱状結晶が、同一の基底面上に略垂直に且つ略同一の高さで形成されてなり、前記複数の酸化亜鉛柱状結晶が、全体として膜を構成するように互いに密に集合してなる、リンドープ酸化亜鉛。
- 前記リン濃度が0.01〜10at%である、請求項1に記載のリンドープ酸化亜鉛。
- 前記酸化亜鉛柱状結晶にリチウムが1.0×1017atoms/cm−3以上の濃度でドープされてなる、請求項1又は2に記載のリンドープ酸化亜鉛。
- 前記リチウム濃度が1.0×1017〜2.0×1021atoms/cm−3である、請求項3に記載のリンドープ酸化亜鉛。
- 前記酸化亜鉛柱状結晶が2〜1000のアスペクト比を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のリンドープ酸化亜鉛。
- 前記基底面に対して垂直方向に傾斜するリンの濃度勾配を有している、請求項1〜5のいずれか一項に記載のリンドープ酸化亜鉛。
- 前記酸化亜鉛柱状結晶のc軸が前記基底面に対して垂直に配向してなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載のリンドープ酸化亜鉛。
- 前記酸化亜鉛柱状結晶の膜が、基板上の成膜されるべき表面に、該表面の面積の90%以上を被覆するように形成されてなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載のリンドープ酸化亜鉛。
- 亜鉛イオンからなる亜鉛源と、リン酸イオン、リン酸水素イオン、リン酸二水素イオン及びリン酸からなる群から選択される少なくとも一種のリン源とを含有する、pHが11.0よりも高い原料水溶液を用意する工程と、
基板を前記原料水溶液に浸漬して、前記基板上にリンドープ酸化亜鉛柱状結晶を析出させる工程と、
を含んでなる、リンドープ酸化亜鉛の製造方法。 - 前記原料水溶液が、リチウムイオンを含むリチウム源をさらに含有してなる、請求項9に記載の方法。
- 前記原料水溶液のpHが11.5〜13.5である、請求項9又は10に記載の方法。
- 前記基板がその表面に酸化亜鉛からなるシード層を備え、それにより該シード層上に前記リンドープ酸化亜鉛柱状結晶が膜状に析出される、請求項9〜11のいずれか一項に記載の方法。
- 前記原料水溶液中における、前記亜鉛源のモル濃度に対する前記リン源のモル濃度の比が、0.01〜4である、請求項9〜12のいずれか一項に記載の方法。
- 前記シード層がスパッタリング法により形成された酸化亜鉛層からなる、請求項12又は13に記載の方法。
- 前記原料水溶液が、0.01〜0.5mol/Lの亜鉛イオン濃度を有する、請求項9〜14のいずれか一項に記載の方法。
- 前記リンドープ酸化亜鉛柱状結晶の析出が50〜100℃で行われる、請求項9〜15のいずれか一項に記載の方法。
- 前記原料水溶液がNaOHを含む、請求項9〜16のいずれか一項に記載の方法。
- 前記リンドープ酸化亜鉛柱状結晶を、酸素を含有する雰囲気にて300〜800℃で熱処理する工程をさらに含んでなる、請求項9〜17のいずれか一項に記載の方法。
- 前記リンドープ酸化亜鉛柱状結晶を500〜1000℃で熱処理した後、酸素を含有する雰囲気にて300〜800℃で熱処理する工程をさらに含んでなる、請求項9〜17のいずれか一項に記載の方法。
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