JP6425907B2 - リンドープ酸化亜鉛及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、リンドープ酸化亜鉛及びその製造方法に関する。
酸化亜鉛膜は、透明導電膜、太陽電池、LED等の用途への利用及び応用が期待されている。酸化亜鉛膜の製造方法としては、スパッタリング法、分子線エピタキシー法、有機金属気相成長法、イオンプレーティング法、反応性プラズマ蒸着法等の気相法が挙げられる。しかしながら、これらの手法は非常に高価な装置を要し、その成膜にも長時間を要することから、コストや成膜時間等の点で更なる改善が望まれる。
一方、亜鉛化合物水溶液に基板を浸漬して所定時間反応させることにより、基板上に酸化亜鉛膜を成膜する方法等の液相法がある。この液相法は、気相法に比べ製造コストが安く、環境負荷も低く、低温プロセスであるという点において有利といえる。
例えば、特許文献1(特開2004−315342号公報)には、亜鉛イオンを含む出発溶液に基板を浸漬することによって、基板上にZnO結晶薄膜を生成させる方法において、浸漬する基板に対してc軸が垂直に配向した緻密な微細構造の高密度柱状ZnO結晶膜体が得られるように該出発水溶液中の亜鉛イオン濃度を調整することを特徴とした、高密度柱状ZnO結晶膜体の製造方法が開示されている。また、特許文献2(特開2006−096591号公報)には、規則的な結晶配向構造を有する金属含有材料を含む結晶面を有する基板を金属酸化物が析出可能な反応溶液中に浸漬させて該金属含有材料を含む結晶面に金属酸化物結晶を析出させることを特徴とする金属酸化物構造体の製造方法が開示されている。
また、特許文献3(特許4906550号公報)には、亜鉛源として亜鉛イオンと、ドーパント源としてMg、La及びCeからなる群より選ばれた1種又は2種以上の元素の金属イオンとをそれぞれ含みかつpHが6以上に調整された水溶液に、予め亜鉛と酸素を含有する化合物からなるシード層が表面に存在する基材を浸漬することによって、前記基材上にドーパントを含んだ酸化亜鉛機能膜を自己組織的に析出させる、酸化亜鉛機能膜の製造方法が開示されている。この文献では、ドーパントを含む水溶液のpHは6〜10が好ましいとされている。
特開2004−315342号公報 特開2006−096591号公報 特許4906550号公報
しかしながら、特許文献1に開示される方法では、溶液法により緻密な酸化亜鉛膜が得られているが、その電気的特性については明らかになっていない。また、特許文献2に開示される方法では、緻密な膜は作製できておらず同じく電気的特性については明らかになっていない。その上、異種元素をドープすることによるキャリア増加の検討も行われておらず、透明導電膜やLED等の用途に対応可能な酸化亜鉛膜は得られていない。特に、酸化亜鉛は過剰亜鉛や酸素空孔をドナー起源としてn型になりやすいため、これらの文献のようにホールを生成するような異種元素をドープしていない場合、p型を示す酸化亜鉛膜を得ることは難しい。特許文献3においては酸化亜鉛膜中にMg、La及びCe等の元素をドーパントとして含ませることが提案されているが、リン(P)をドーパントとして添加させるための手法は開示されていない。
本発明者らは、今般、リンが所望の濃度でドープされた酸化亜鉛柱状結晶を、望ましくは緻密化された膜形態で、極めて簡便かつ安価な手法で製造及び提供できることを知見した。
したがって、本発明の目的は、リンが所望の濃度でドープされた酸化亜鉛柱状結晶を、望ましくは緻密化された膜形態で、極めて簡便かつ安価な手法で製造及び提供することである。
本発明の一態様によれば、リンが0.01at%以上の濃度でドープされた酸化亜鉛柱状結晶からなる、リンドープ酸化亜鉛が提供される。
本発明の別の一態様によれば、
亜鉛イオンからなる亜鉛源と、リン酸イオン、リン酸水素イオン、リン酸二水素イオン及びリン酸からなる群から選択される少なくとも一種のリン源とを含有する、pHが11.0よりも高い原料水溶液を用意する工程と、
基板を前記原料水溶液に浸漬して、前記基板上にリンドープ酸化亜鉛柱状結晶を析出させる工程と、
を含んでなる、リンドープ酸化亜鉛の製造方法が提供される。
例2において試料1を膜上方から観察したSEM画像である。 例2において試料1を膜側面から観察したSEM画像である。 例2において試料1について膜深さ方向に測定された濃度プロファイルである。 例2において試料1について測定されたXRDプロファイルである。 例2においてLiを添加した試料14について膜上面から測定されたSCM像(p/n極性像)である。
リンドープ酸化亜鉛
本発明のリンドープ酸化亜鉛は、リンが0.01at%以上の濃度でドープされた酸化亜鉛柱状結晶からなるものである(以下、このようにドープされた酸化亜鉛柱状結晶を単に「酸化亜鉛柱状結晶」と称する)。本発明のリンドープ酸化亜鉛は、所望の特性を阻害しない程度であるかぎり微量の異相やその他の不純物を含有していてもよいが、好ましくはリンドープ酸化亜鉛柱状結晶のみから実質的になる(又はのみからなる)。リン(P)は酸化亜鉛にドープされることによりp型半導体特性を示すとの報告があるように、上記のような濃度でリンがドープされた酸化亜鉛膜はp型を示し、既に多く報告されているn型酸化亜鉛と併せてLEDとしての利用が期待できる。特に、本発明のリンドープ酸化亜鉛は、亜鉛源とリン源とを含有する所定pHの水溶液に基材を浸漬させるだけという低温プロセスで極めて簡便な方法で作製することができる。すなわち、本発明のリンドープ酸化亜鉛は、高価な装置を必要とする気相法に対しコストや環境負荷の側面から有利な手法で合成できることから、本来的に安価な材料であるという酸化亜鉛の利点とも相まって、p型特性を示しうる安価な膜として幅広い工業的応用が期待できる。
酸化亜鉛柱状結晶におけるリンの濃度は、0.01at%以上であり、好ましくは0.01〜10at%であり、より好ましくは0.05〜5at%であり、さらに好ましくは0.1〜1.0at%である。このような量でリンを含有することで結晶性を損なうことなくp型半導体特性を示すことが期待される。ここで、本発明におけるリンの濃度は、SEM−EDX(エネルギー分散型X線分光法)を用いた定量分析によりZn、O及びPの各測定値(at%)を取得し、これら3元素の測定値の合計を100at%とした際のPの濃度(at%)、すなわちP/(Zn+O+P)の値として定義される。
リンドープ酸化亜鉛はリチウムを含んでいてもよい。リチウムイオン(Li)は酸化亜鉛の結晶構造である4配位では亜鉛イオン(Zn2+)とほぼ同じイオン半径となることからドープされやすいと考えられる。また、亜鉛イオンの2価に対しリチウムイオンは1価であることから、ホールを生成しp型を示す可能性がある。酸化亜鉛柱状結晶におけるリチウムの濃度は、1.0×1017atoms/cm−3以上であり、好ましくは1.0×1017〜2.0×1021atoms/cm−3である。このような量でリンに加えリチウムを含有することで結晶性を損なうことなくp型半導体特性を示すことが期待される。ここで、本発明におけるリチウムの濃度は、D−SIMSを用いた定量分析により測定したが、測定方法については特に限定されない。
酸化亜鉛柱状結晶は、縦方向に成長した柱状の形態を有する酸化亜鉛結晶であり、典型的には2〜1000のアスペクト比を有し、より典型的には3〜500、さらに典型的には5〜100のアスペクト比を有する。酸化亜鉛柱状結晶は、柱の直径が典型的には0.01〜10μm、より典型的には0.02〜5μm、さらに典型的には0.03〜2μmであり、柱の高さが典型的には0.1〜20μm、より典型的には0.5〜10μm、さらに典型的には1〜5μmである。
本発明のリンドープ酸化亜鉛は、酸化亜鉛柱状結晶を複数備えてなり、これら複数の酸化亜鉛柱状結晶が、同一の基底面上に略垂直に且つ略同一の高さで形成されてなるのが好ましい。この基底面は、典型的には、酸化亜鉛柱状結晶が形成されるべき基板によって与えられる。このような形態であると、複数の酸化亜鉛柱状結晶の集合体が膜又はそれに近い形態あるいはそうでなくとも整然とされた形態となりうるため、素子化しやすくなる。より好ましくは、複数の酸化亜鉛柱状結晶が、全体として膜を構成するように互いに密に集合してなる。この「全体として膜を構成するように互いに密に集合してなる」状態は、酸化亜鉛柱状結晶が形成された基板上方からリンドープ酸化亜鉛をSEM観察し、その微構造写真から気孔面積とリン含有酸化亜鉛との面積比を算出することにより評価することができ、酸化亜鉛柱状結晶の膜が、基板上の成膜されるべき表面に、表面の面積の90%以上を被覆するように形成されてなるのが好ましく、より好ましくは95%以上であり、さらに好ましくは約100%である。
上記集合体又は膜形態のリンドープ酸化亜鉛は、基底面に対して垂直方向に傾斜するリンの濃度勾配を有しているのが好ましい。このようなリンの濃度傾斜により膜厚方向でのキャリア濃度を変化させることができるとの利点が期待される。
上記集合体又は膜形態のリンドープ酸化亜鉛は、酸化亜鉛柱状結晶のc軸が基底面又は基板に対して垂直に配向してなるのが好ましい。本発明において、「c軸が基底面又は基板に対して垂直」とは、酸化亜鉛柱状結晶の膜上方からXRD回折測定した際のベースラインを除いた(002)面回折ピーク強度が、同じくベースラインを除いた酸化亜鉛のc面以外の回折強度に対して5倍以上である状態として定義される。このようなc軸配向を有することで、リンドープ酸化亜鉛の結晶性など膜質等の性能が向上し、より一層素子化に適したものとなる。
製造方法
本発明のリンドープ酸化亜鉛はいかなる方法によって製造されたものであってもよいが、液相法を用いた以下に述べる本発明の製造方法により製造されるのが好ましい。すなわち、この製造方法は、亜鉛源及びリン源を含有する所定のpHの原料水溶液に基板を浸漬して、基板上にリンドープ酸化亜鉛柱状結晶を析出させることを含んでなる。このような本発明の方法は、亜鉛源とリン源とを含有する所定pHの水溶液に基材を浸漬させるだけという低温プロセスで極めて簡便な方法である。したがって、本発明のリンドープ酸化亜鉛は、高価な装置を必要とする気相法に対しコストや環境負荷の側面から有利な手法で合成できることから、本来的に安価な材料であるという酸化亜鉛の利点とも相まって、p型特性を示しうる安価な膜として幅広い工業的応用が期待できる。
本発明の方法に用いる原料水溶液は、亜鉛イオン(Zn2+)からなる亜鉛源と、リン酸イオン(PO 3−)、リン酸水素イオン(HPO 2−)、リン酸二水素イオン(HPO4−)及びリン酸(HPO)から選択される少なくとも一種のリン源とを含有する。亜鉛源の添加は、亜鉛イオン(Zn2+)を供給可能な塩を水又は水溶液に溶解させることにより行えばよく、そのような塩の好ましい例としては、酢酸亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛等が挙げられ、より好ましくは硝酸塩である。リン源の添加は、リン酸イオン(PO 3−)、リン酸水素イオン(HPO 2−)及びリン酸二水素イオン(HPO4−)から選択さ れる少なくとも一種を供給可能な塩又はリン酸(HPO)を水又は水溶液に溶解させることにより行えばよく、そのような塩の好ましい例としては、リン酸二水素アンモニウム(NHPO)、リン酸水素二アンモニウム(NHHPO、リン酸アンモニウム((NHPO)が挙げられるが、より好ましくはリン酸二水素アンモニウムである。
原料水溶液中における、亜鉛源のモル濃度に対するリン源のモル濃度の比、すなわち(PO 3−+HPO 2−+HPO4−+HPOの合計モル濃度)/(Zn2+のモル濃度)の比は0.01〜5であるのが好ましく、より好ましくは0.05〜4であり、さらに好ましくは0.1〜3である。また、原料水溶液は、0.01〜0.5mol/Lの亜鉛イオン濃度を有するのが好ましく、より好ましくは0.02〜0.4mol/Lであり、さらに好ましくは0.05〜0.3mol/Lである。
本発明の方法に用いる原料水溶液は、リチウムイオン(Li)を含むリチウム源をさらに含有してもよい。リチウム源の添加は、リチウムイオン(Li)を供給可能な塩を水又は水溶液に溶解させることにより行えばよく、そのような塩の好ましい例としては、酢酸リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウム、塩化リチウム、水酸化リチウム等が挙げられ、より好ましくは硝酸塩及び水酸化物である。
本発明の方法に用いる原料水溶液は、pHが11.0よりも高いものであり、好ましくは11.1以上、より好ましくは11.3以上、より好ましくは11.5〜13.5、さらに好ましくは11.7〜13.3、最も好ましくは12.0〜13.0である。このように原料水溶液のpHを上記範囲内に調整することで、複数の酸化亜鉛柱状結晶を互いに密に集合させて析出及び成長させることができ、それにより膜又はそれに近い形態、望ましくは膜を形成することができる。このようなpH調整は原料水溶液にNaOH、KOH、LiOH、アンモニア水溶液等の塩基性物質を溶解させることにより行えばよい。したがって、原料水溶液はNaOH、KOH、LiOH、NHOH等の塩基性物質を含みうる。
上記のようにして得られた原料水溶液に基板を浸漬して、基板上にリンドープ酸化亜鉛柱状結晶を析出させる。リンドープ酸化亜鉛柱状結晶の析出は、25〜100℃で行われるのが好ましく、より好ましくは40〜100℃であり、さらに好ましくは50〜95℃である。このように本発明の方法は原料水溶液に基材を浸漬させるだけという低温プロセスで極めて簡便な方法であるといえる。基板の材質は、酸化亜鉛柱状結晶の析出及び成長を阻害しないものであれば特に限定されず、好ましい例としては、サファイア、ガラス、酸化亜鉛、窒化ガリウム、酸化マグネシウム等が挙げられる。原料水溶液への基板の浸漬時間は0.5時間以上、好ましくは1〜10時間である。こうして得られたリンドープ酸化亜鉛はイオン交換水等の純粋で少なくとも1回、好ましくは複数回洗浄されるのが望ましい。
上記のようにして得られたリンドープ酸化亜鉛を熱処理してもよい。熱処理を行うことにより、ドナー電子を生成しやすい酸素欠損や格子間亜鉛等の欠損を回復することができる。熱処理雰囲気としては、酸素欠損の生成を抑制するため酸素を含有する雰囲気が好ましく、例えば酸素雰囲気や大気雰囲気が挙げられる。熱処理温度は低すぎると欠損が回復せず、高すぎると逆に欠損が生成することから、例えば300〜800℃が好ましく、熱処理時間としては0.5〜5時間が好ましい。
あるいは、リンドープ酸化亜鉛を高温で熱処理した後、酸素を含有する雰囲気で熱処理する2段階熱処理を行ってもよい。1段目の高温での熱処理は膜に含まれるリンを活性化してp型特性を強めるために実施される。1段目の熱処理が行われる雰囲気は特に限定されず、NやArなどの不活性雰囲気や、酸素雰囲気や大気雰囲気等であってよい。1段目の熱処理温度は、ドーパントを活性化させるため、例えば500〜1000℃といった高温で熱処理することが望ましい。もっとも、長時間で温度を維持した場合には、ドーパントであるリンが揮発したり酸素欠損や格子間亜鉛の欠損が生成しやすくなるため、温度の維持時間は短いほうが望ましく、例えば10〜300秒が好ましい。一方、2段目の熱処理は、1段目の熱処理で生成した酸素欠損や格子間亜鉛などの欠損を回復するために行うことが狙いであり、酸素を含有する雰囲気で行うことが望ましく、例えば酸素雰囲気や大気雰囲気が挙げられる。2段目の熱処理温度は低すぎると欠損が回復せず、高すぎると逆に欠損が生成することから、例えば300〜800℃が好ましく、熱処理時間としては0.5〜5時間が好ましい。
本発明の好ましい態様によれば、上記基板がその表面に酸化亜鉛からなるシード層を備え、それによりシード層上にドープ酸化亜鉛柱状結晶が膜状に析出される。シード層はスパッタリング法により形成された酸化亜鉛層からなるのが好ましいが、これに限らず、公知の任意の製法によって製造されたものであってよい。例えば、ゾルゲル法等を用いて酸化亜鉛の前駆体をスピンコーティング等により成膜させた後、熱処理することで酸化亜鉛を形成してもよい。いずれの手法にしても、基板上にシード層を設けることにより、酸化亜鉛柱状結晶の析出及び成長を好都合に制御しやすくなる。特に、シード層における酸化亜鉛の密度を制御することで、析出される酸化亜鉛柱状結晶の形状や密度を制御することが可能となる。
本発明を以下の例によってさらに具体的に説明する。
例1:リンドープ酸化亜鉛の作製
リンドープ酸化亜鉛試料1〜15を以下の手順で作製した。
(1)基板の準備
基板として、市販のc面サファイア基板(純度:99.99%)及びガラス基板を用意した。酸化亜鉛からなるシード層を作製するため、純度99.999%の酸化亜鉛焼結体スパッタターゲットを用いて、高周波(RF)マグネトロンスパッタリングにより、サファイア基板又はガラス基板上に酸化亜鉛シード層を形成した。このスパッタリングは、出力:100W、ガス圧:1Pa、ガス流量比:Ar/O=4/1の条件で15分間行った。こうしてシード層付基板を得た。
(2)原料水溶液の準備
市販のZn(NOをイオン交換水に溶かし、0.1mol/LのZn(NO水溶液を作製した。また別に、市販のNaOHを同じくイオン交換水に溶かし、表1の初期pHになるように所定の濃度のNaOH水溶液を作製した。Zn(NO水溶液とNaOH水溶液をそれぞれ100mlずつ採取して混合した。この混合溶液に、市販のNHPOを表1に示されるNHPO/Zn(NOモル比となるような量で投入して、試料14及び15についてはさらに市販のLi(NO)を表1に示されるLi(NO)/Zn(NOモル比となるような量で投入して、原料水溶液を得た。
(3)成膜
原料水溶液を作製後、すぐにシード層付基板を溶液内に浸漬した。この原料水溶液をホットプレート上に乗せて溶液温度が90℃(試料1〜10)又は80℃(試料11〜15)になるように調整して2時間静置した。
(4)取り出し
2時間経過後、基板を取り出し、基板ごとリン含有酸化亜鉛膜をイオン交換水にて洗浄した。この洗浄は2回実施した。こうして、リンドープ酸化亜鉛試料1〜10及び14を得る一方、試料11〜13及び15については後続の工程にさらに付した。
(5)熱処理
試料11〜13及び15については熱処理をさらに行った。試料11及び12については、大気雰囲気にて600℃(試料11)又は700℃(試料12)で1時間熱処理を行う一方、試料15については大気雰囲気にて400℃で3.5時間熱処理を行った。試料13については、N雰囲気にて600℃/minで昇温した後、600℃で30秒間保持した後、600℃/minで降温し、その後、大気雰囲気にて550℃で3.5時間熱処理を行った。こうして、熱処理されたリンドープ酸化亜鉛試料11〜13及び15を得た。
例2:リンドープ酸化亜鉛の評価
(1)微構造観察
試料1の微構造をSEMにより観察したところ、図1A及び1Bに示されように膜状のリンドープ酸化亜鉛が確認された。図1Aは膜上方から観察した画像であり、図1Bは膜側面から観察した画像である。SEM観察の結果から、試料1は、直径約0.05〜0.3μm、高さ約1.5μm、アスペクト比2〜1000の柱状結晶が高密度に集合した微構造を有していることが分かった。また、SEM写真を見る限り、ほぼ全面がリンドープ酸化亜鉛で覆われており、基板の被覆面積は約100%であることが分かった。なお、試料2〜5、8及び11〜15について同様の観察を行ったところ、いずれも基板面積の90%以上をリン含有酸化亜鉛が被覆していることが分かった。これに対し、試料6、7、9及び10については粒状もしくは柱状の結晶が基板表面にまばらに存在しており、膜状に形成されておらず基板の被覆面積は90%未満であることが分かった。これらの結果を表1に示す。
(2)リン濃度等の測定
試料1〜15について、膜上方からSEM−EDXによる定量分析を行った。この定量分析によりZn、O及びPの各測定値(at%)を取得し、これら3元素の測定値の合計を100at%とした際のPの濃度(at%)、すなわちP/(Zn+O+P)の値を算出した。その結果を表1に示す。各試料におけるリンの濃度は0.01at%以上であったが、試料6、9及び10のリン濃度は10at%以上と非常に大きな値であった。
また、試料1についてダイナミックSIMS測定を行ったところ、図2に示される濃度プロファイルが得られた。なお、ダイナミックSIMS測定は同じ酸化亜鉛中にあらかじめリン濃度のわかっている試料を標準試料としてリン濃度を求めた。図2において横軸は基板からの深さを示しており、0の値が膜表面に対応し、その値が大きいほど基板側であることを意味する。一方、縦軸は、標準試料で換算したリン濃度を示す。この結果より、試料1のリン含有酸化亜鉛膜は膜表面から基板にかけてリンの濃度傾斜があり、基板側ほどその濃度が高いことが判明した。
また、試料14及び15についてはLi濃度も測定した。Li濃度は、ダイナミックSIMSを用いた定量分析によりLiの測定値(atoms/cm−3)を取得し求めた。リンと同じく、あらかじめリチウム濃度のわかっている試料を標準試料としてリチウム濃度を求めた。
(3)結晶構造
試料1について、XRD測定装置に用いてX線回折による結晶構造の解析を行った。X線回折の測定条件はCuKα、50kV、300mA、2θ=20−80°とした。試料1について得られた結果を図3に示す。図3に示されるように、34°付近に強い回折ピークが観測され、これはZnOのc面である(002)面を示す回折ピークと推測される。それ以外は、同じくc面である(004)面を除いて、殆ど回折ピークが観測されなかったことから、本サンプルはc軸が基板に対して垂直に配向していることがわかった。試料2〜5、8及び11〜15についても同様の測定を行い、各サンプルがc軸配向していることを確認した。試料6及び9については、c軸配向していたが、その強度は弱く、試料7及び10についてはZnO以外の化合物と見られる異相が数多く検出され、リン含有酸化亜鉛は形成しなかった。
(4)pn測定
試料11について、SCM(スキャニングキャパシタンス顕微鏡)装置にてリンドープ酸化亜鉛柱状結晶のpn測定を行った。測定は室温、大気中で行い、試料はAgペーストで固定し、変調電圧1V(〜100kHz)、DCバイアス電圧0Vとし、dC/dV信号を測定した。その結果、基板近傍にて相対的にp型を強く示す部分が観察された。この基板近傍の部分をD−SIMS測定にて組成分析したところ、リン濃度が0.18at%のほかに、不可避不純物として偶発的に混入したとみられるリチウムの濃度が1.0×1018atoms/cm−3と局所的に増加する部分が確認された。これを受けて意図的にLiを添加した試料14について膜上面から同様にSCM測定を実施したところ、図4のように10μm×10μmの視野範囲においてp型を示す像が多数部で見られた。このことから、リチウムが共存することによりリンドープ酸化亜鉛柱状結晶にてリチウムの添加がp型化に有効に働くことが示唆された。
以上の結果から、試料1〜5、8及び11〜15は、リンが0.01at%以上含まれ、結晶構造もZnOがc軸に配向し、柱状の結晶が高密度に集合した膜状のリン含有酸化亜鉛であることが分かった。一方、pH11.0以下で合成した試料6、7、9及び10については、基板上に膜が得られず、試料6及び9はc軸配向が確認されたもののその強度が弱く、試料7及び10においてはZnO以外の結晶構造(異相)も見られており、高品位のリンドープ酸化亜鉛を得ることができなかった。

Claims (19)

  1. リンが0.01at%以上の濃度でドープされた酸化亜鉛柱状結晶を複数備えてなり、該複数の酸化亜鉛柱状結晶が、同一の基底面上に略垂直に且つ略同一の高さで形成されてなり、前記複数の酸化亜鉛柱状結晶が、全体として膜を構成するように互いに密に集合してなる、リンドープ酸化亜鉛。
  2. 前記リン濃度が0.01〜10at%である、請求項1に記載のリンドープ酸化亜鉛。
  3. 前記酸化亜鉛柱状結晶にリチウムが1.0×1017atoms/cm−3以上の濃度でドープされてなる、請求項1又は2に記載のリンドープ酸化亜鉛。
  4. 前記リチウム濃度が1.0×1017〜2.0×1021atoms/cm−3である、請求項3に記載のリンドープ酸化亜鉛。
  5. 前記酸化亜鉛柱状結晶が2〜1000のアスペクト比を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のリンドープ酸化亜鉛。
  6. 前記基底面に対して垂直方向に傾斜するリンの濃度勾配を有している、請求項1〜5のいずれか一項に記載のリンドープ酸化亜鉛。
  7. 前記酸化亜鉛柱状結晶のc軸が前記基底面に対して垂直に配向してなる、請求項のいずれか一項に記載のリンドープ酸化亜鉛。
  8. 前記酸化亜鉛柱状結晶の膜が、基板上の成膜されるべき表面に、該表面の面積の90%以上を被覆するように形成されてなる、請求項のいずれか一項に記載のリンドープ酸化亜鉛。
  9. 亜鉛イオンからなる亜鉛源と、リン酸イオン、リン酸水素イオン、リン酸二水素イオン及びリン酸からなる群から選択される少なくとも一種のリン源とを含有する、pHが11.0よりも高い原料水溶液を用意する工程と、
    基板を前記原料水溶液に浸漬して、前記基板上にリンドープ酸化亜鉛柱状結晶を析出させる工程と、
    を含んでなる、リンドープ酸化亜鉛の製造方法。
  10. 前記原料水溶液が、リチウムイオンを含むリチウム源をさらに含有してなる、請求項9に記載の方法。
  11. 前記原料水溶液のpHが11.5〜13.5である、請求項又は10に記載の方法。
  12. 前記基板がその表面に酸化亜鉛からなるシード層を備え、それにより該シード層上に前記リンドープ酸化亜鉛柱状結晶が膜状に析出される、請求項11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 前記原料水溶液中における、前記亜鉛源のモル濃度に対する前記リン源のモル濃度の比が、0.01〜4である、請求項12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 前記シード層がスパッタリング法により形成された酸化亜鉛層からなる、請求項12又は13に記載の方法。
  15. 前記原料水溶液が、0.01〜0.5mol/Lの亜鉛イオン濃度を有する、請求項14のいずれか一項に記載の方法。
  16. 前記リンドープ酸化亜鉛柱状結晶の析出が50〜100℃で行われる、請求項15のいずれか一項に記載の方法。
  17. 前記原料水溶液がNaOHを含む、請求項16のいずれか一項に記載の方法。
  18. 前記リンドープ酸化亜鉛柱状結晶を、酸素を含有する雰囲気にて300〜800℃で熱処理する工程をさらに含んでなる、請求項17のいずれか一項に記載の方法。
  19. 前記リンドープ酸化亜鉛柱状結晶を500〜1000℃で熱処理した後、酸素を含有する雰囲気にて300〜800℃で熱処理する工程をさらに含んでなる、請求項17のいずれか一項に記載の方法。
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