JP6425520B2 - マーキングフィルム用基材フィルム及びマーキングフィルム - Google Patents

マーキングフィルム用基材フィルム及びマーキングフィルム Download PDF

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Description

本発明は、マーキングフィルム用基材フィルム、及び、このマーキングフィルム用基材フィルムを用いたマーキングフィルムに関する。
従来から、着色された塩化ビニル系樹脂フィルム等の基材フィルムの一面に接着剤層が積層されているマーキングフィルムが、装飾用途における塗装代替品として様々な分野で使用されている。
このようなマーキングフィルムを構成する基材フィルムは、意匠性を付与するために、表面をエンボス加工面とすることが行われている(例えば、特許文献1参照)。
エンボス加工は、例えば、カレンダー成形により塩化ビニル系樹脂フィルムを製膜した直後に、得られたフィルムをエンボスロールとゴムロールとで挟み込み、エンボスロールの凹凸をフィルムに転写することにより行われる。
一方、基材フィルムでは、作製されたフィルムにフィッシュアイと称される微細な欠陥が生じていたり、作製したフィルムにエアー抜き用の穴として微細な貫通孔を形成したりすることがある。このようなフィッシュアイや貫通孔は、意匠性を損なうおそれがあることから目立たないことが望まれている。
また、基材フィルムでは、意匠性を付与するために、表面に高い光沢度が求められることもある。
特開2012−56133号公報
上述したように、マーキングフィルムに用いられる基材フィルム(マーキングフィルム用基材フィルム)では、フィルムに生じたフィッシュアイやフィルムに形成した貫通孔を目立たなくすることが要求されている。このような要求を満足するための方策として、エンボス加工面の凹凸を大きくする(深度の深い凹凸とする)ことが考えられた。
一方、上述したようにマーキングフィルム用基材フィルムは、その表面に高い光沢度が求められることがある。しかしながら、マーキングフィルム用基材フィルムに形成されたエンボス加工面の深度が深くなるほど、そのエンボス加工面の光沢度は低下する傾向にある。
そのため、マーキングフィルム用基材フィルムにおいて、フィッシュアイやフィルムに形成した貫通孔を目立たなくすべくエンボス加工面の凹凸の深度を深くしつつ、そのエンボス加工面において高い光沢度を確保することは困難であった。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、マーキングフィルム用基材フィルムの表面を、特定の凹凸形状を有するエンボス加工面とすることにより、深度の深い凹凸と高い表面光沢度を両立することができるとともに、単にエンボス加工面の凹凸の深度を深くした場合に比べて、フィッシュアイや貫通孔がより目立ちにくいエンボス加工面となることを見出し、本発明を完成した。
第1の本発明のマーキングフィルム用基材フィルムは、塩化ビニル系樹脂組成物からなり、片面にエンボス加工が施されたエンボス加工面を備えたマーキングフィルム用基材フィルムであって、
上記エンボス加工面は、十点平均粗さRzが2.0〜4.0μmで、かつ、60°グロス値が27〜37であり、
上記エンボス加工面を、凹凸の最大高低差の中央値をしきい値として凹部と凸部とに区分けした場合、上記凹部に区分けされる領域の個数が500μm四方あたり、6〜25個であることを特徴とする。
第1の本発明のマーキングフィルム用基材フィルムでは、上記エンボス加工面において、上記凹部に区分けされる領域の平均面積が5.0×10〜2.5×10μmであることが好ましい。
第1の本発明のマーキングフィルム用基材フィルムにおいて、上記塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂、可塑剤、アクリル系加工助剤及びカーボンブラックを含有することが好ましい。
第2の本発明のマーキングフィルム用基材フィルムは、塩化ビニル系樹脂組成物からなり、片面にエンボスロールを用いたエンボス加工が施されたエンボス加工面を備えたマーキングフィルム用基材フィルムであって、
上記エンボス加工面は、十点平均粗さRzが2.0〜4.0μmで、かつ、60°グロス値が27〜37であり、
上記エンボスロールの表面は、十点平均粗さRzが9.5〜12.0μmで、かつ、60°グロス値が75〜110であることを特徴とする。
第3の本発明のマーキングフィルムは、第1又は第2の本発明のマーキングフィルム用基材フィルムと、上記マーキングフィルム用基材フィルムの片面に積層された接着剤層とを備えることを特徴とする。
第1及び第2の本発明のマーキングフィルム用基材フィルムによれば、十点平均粗さRzが2.0〜4.0μmとなる深度の深い凹凸と高い表面光沢度とを両立するともに、エンボス加工面の凹凸形状が所定の形状を有しているため、マーキングフィルム用基材フィルムにフィッシュアイが生じたり、貫通孔が形成されたりしてもその貫通孔が目立ちにくいとの優れた効果を奏する。
第3の本発明のマーキングフィルムは、本発明のマーキングフィルム用基材フィルムを備えるため、優れた意匠性を有する。
(a)は従来のエンボスロールの表面形状の一例を模式的に示す断面図であり、(b)は第2の本発明で用いるエンボスロールの表面形状の一例を模式的に示す断面図である。 (a)は表面を研磨する前の従来のエンボスロールの表面の一部の写真であり、(b)は、表面を研磨した後のエンボスロールの表面の一部の写真である。 第2の本発明のマーキングフィルム用基材フィルムのエンボス加工面と、このエンボス加工面を形成するためのエンボスロールを模式的に示す断面図である。 実施例1のマーキングフィルム用基材フィルムの形状測定レーザーマイクロスコープによる観察画像の1つである。 比較例1のマーキングフィルム用基材フィルムの形状測定レーザーマイクロスコープによる観察画像の1つである。 (a)は、貫通孔が形成された比較例5のマーキングフィルム用基材フィルムの写真であり、(b)は、貫通孔が形成された実施例1のマーキングフィルム用基材フィルムの写真である。
まず、第1の本発明のマーキングフィルム用基材フィルム(以下、単に第1発明の基材フィルムともいう)について説明する。
第1発明の基材フィルムは、塩化ビニル系樹脂組成物からなり、片面にエンボス加工が施されたエンボス加工面を備えたマーキングフィルム用基材フィルムであって、
上記エンボス加工面は、十点平均粗さRzが2.0〜4.0μmで、かつ、60°グロス値が27〜37であり、
上記エンボス加工面を、凹凸の最大高低差の中央値をしきい値として凹部と凸部とに区分けした場合、上記凹部に区分けされる領域の個数が500μm四方あたり、6〜25個であることを特徴とする。
第1発明の基材フィルムは、塩化ビニル系樹脂組成物からなるフィルムであり、その片面にエンボス加工面を備えている。
上記エンボス加工面は、十点平均粗さRzが2.0〜4.0μmで、かつ、60°グロス値が27〜37である。第1発明の基材フィルムは、十点平均粗さRzで2.0μmを超えるような深度の深い凹凸を有するエンボス加工面で、60°グロス値で27〜37という高い表面光沢度を有していることが特徴の1つである。
上記十点平均粗さRzは、JIS B 0601(1994)に準拠して測定された値である。
上記エンボス加工面の十点平均粗さRzの上限は、4.0μmである。上記Rzが4.0μmを超えると、60°グロス値で27を超えるような高い表面光沢度との両立が困難となるからである。
一方、上記Rzが2.0μm未満では、そもそも高い光沢度を達成する困難性に乏しく、また、フィッシュアイや貫通孔を目立ちにくくする効果に劣る。
上記エンボス加工面の(受光角)60°グロス値は、エンボス加工面の光沢の度合を示す指標であり、上記エンボス加工面の60°グロス値が27〜37であると、マーキングフィルム用基材フィルムとして、光沢感の高いマーキングフィルム用基材フィルムとなる。
上記60°グロス値は、JIS Z 8741に準拠して測定された値である。具体的には、例えば、光沢度計(株式会社村上色彩技術研究所社製、GMX-102)により測定することができる。
第1発明の基材フィルムでは、上記エンボス加工面を、凹凸の最大高低差の中央値をしきい値として凹部と凸部とに区分けした場合、上記凹部に区分けされる領域の個数が500μm四方あたり、6〜25個である。
この場合、上記エンボス加工面の凹部に着目すると、各凹部が比較的大きな平面視形状(底部)を有していることとなる。そのため、上記フィッシュアイや貫通孔が上記凹部に位置しやすく、凹部に位置した場合は上記フィッシュアイや貫通孔がより目立ちにくくなる。
一方、上記凹部に区分けされる領域の個数が、6個未満では凹凸の間隔が広くなりすぎるため、また、25個を超えると凹凸が細かくなりすぎるため、何れの場合でも、高い光沢度を維持しつつ、フィッシュアイや貫通孔が目立たなくなる効果を享受できなくなる。
上記エンボス加工面において、凹凸の最大高低差の中央値をしきい値として凹部と凸部とに区分けした場合に上記凹部に区分けされる領域の500μm四方あたりの個数は、レーザ顕微鏡を用いて計測することができる。
これについて、以下に詳述する。
ここでは、キーエンス社製、形状測定レーザーマイクロスコープVK−X200を使用する場合を例に説明する。
まず、上記基材フィルムのエンボス加工面の所定の領域(500μm×500μm)の表面形状を観察する。
次に、観察領域内の最も高い部分と最も低い部分とを特定し、その後、両者の高さの中点(中央値)を算出する。
次に、上記中央値をしきい値として、エンボス加工面の所定の領域内の上記中央値よりも高い部分を凸部に、上記中央値よりも低い部分を凹部に区分し、その周囲を凹部又は測定領域の外縁に囲まれた連続した部分を1個の凹部としてカウントする。
このような手法を用いることにより、上記エンボス加工面において、上記凹部に区分けされる領域の500μm四方あたりの個数を計測することができる。
ここで、しきい値の設定、凸部と凹部との区分け、及び、凹部のカウントは市販の解析ソフト(例えば、キーエンス社製、VK Analyzer(Ver.3.3)等)を使用して行ってもよい。
第1発明の基材フィルムのエンボス加工面において、上記凹部に区分けされる領域の平均面積は、5.0×10〜2.5×10μmが好ましい。
上記凹部に区分けされる領域の平均面積が5.0×10μm未満では、凹凸が細かくなり、一方、2.5×10μmを超えると凹凸の間隔が広くなりすぎるため、何れの場合も、高い光沢度を維持しつつ、フィッシュアイや貫通孔を目立たなくする効果を享受できなくなることがある。
第1発明の基材フィルムは、塩化ビニル系樹脂組成物からなる。
上記塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル樹脂を含有する。
上記塩化ビニル系樹脂としては、例えば、塩化ビニルの単独重合体、塩化ビニルとこれと共重合可能な他の単量体との共重合体等が挙げられる。
上記共重合可能な他の単量体としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、エチレン、プロピレン、スチレン等のオレフィン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジエチル等のマレイン酸ジエステル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジエチル等のフマル酸ジエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記共重合可能な他の単量体の共重合体における含有量は、通常、50重量%以下であり、好ましくは10重量%以下である。
上記塩化ビニル系樹脂の平均重合度は特に限定されないが、800〜1500であることが好ましい。
なお、本発明において、塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、JIS K 6721「塩化ビニル樹脂試験方法」に準拠して測定した平均重合度を意味する。
上記塩化ビニル系樹脂組成物は、可塑剤を含有してもよい。
上記可塑剤としては特に限定されず、従来から塩化ビニル系樹脂組成物に使用されているものを用いることができ、具体例としては、例えば、フタル酸オクチル(ジ−2−エチルヘキシルフタレート)、フタル酸ジブチル、フタル酸ジノニル等のフタル酸ジエステル、アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジオクチル等の脂肪族二塩基酸ジエステル、トリクレジルホスフエート、トリオクチルホスフエート等のリン酸トリエステル、エポキシ化大豆油やエポキシ樹脂等エポキシ系可塑剤、高分子ポリエステル可塑剤等が挙げられる。
上記高分子ポリエステル可塑剤としては、例えば、フタル酸のポリエチレングリコールジエステル、ポリプロピレングリコールジエステル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールジエステル等のポリアルキレングリコールジエステルや、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族二塩基酸のポリエチレングリコールジエステル、ポリプロピレングリコールジエステル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールジエステル等のポリアルキレングリコールジエステルが挙げられる。
これらの可塑剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記可塑剤の含有量は、上記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、5〜100重量部が好ましく、10〜60重量部がより好ましい。
上記可塑剤の含有量が5重量部未満では、フィルムが硬く、加工性が悪くなる場合があり、一方、100重量部を超えると、柔らかすぎて加工がしにくい場合がある。
塩化ビニル系樹脂組成物は、加工助剤を含有していてもよい。
上記加工助剤としては、例えば、アクリル系加工助剤、ポリエステル系加工助剤等が挙げられる。
これらのなかでは、アクリル系加工助剤が好ましい。その理由は、フィルムの表面状態が特に良好になるためである。
上記アクリル系加工助剤としては、例えば、アクリル酸−n−ブチル/メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸−2−エチルヘキシル/メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸−2−エチルヘキシル/メタクリル酸メチル/メタクリル酸−n−ブチル共重合体、等が挙げられる。
上記アクリル系加工助剤の含有量は、上記塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、0.2〜5.0重量部が好ましい。
上記アクリル系加工助剤の含有量が、0.2重量部未満では、フローマークの目立ちが大きくなる。一方、5.0重量部を超えると、例えば、上記基材フィルムをカレンダー加工にて製膜する場合に、カレンダー表面がべたついて加工が出来ないことがある。
第1発明の基材フィルムは、黒色であることが好ましい。マーキングフィルムとして黒色の要望が高く、かつ、本発明の効果を享受するのに適した色だからである。
上記基材フィルムが黒色の場合、上記塩化ビニル系樹脂組成物は、カーボンブラックを含有することが好ましい。
上記カーボンブラックとしては特に限定されず、チャンネルブラック、ファーネスブラック等の従来公知のカーボンブラックを用いることができる。
上記塩化ビニル系樹脂組成物は、必要に応じて、安定剤、帯電防止剤、着色剤、紫外線吸収材、滑剤、改質剤、充填剤、希釈剤等の塩化ビニル樹脂系樹脂組成物に一般的に使用される各種添加剤を更に含有してもよい。
第1発明の基材フィルムの厚さは特に限定されず、マーキングフィルムの使用目的等に応じて適宜選択することができるが、通常、その厚さは、0.05〜0.15mmであることが好ましい。0.05mm未満では、フィルムの耐久性が低くなり、フィルムが破損しやすくなることがある。一方、0.15mmを超えると、180°折り返して使用する場合に、折り返し部がシワになりやすくなる。
第1発明の基材フィルムは、片面に所定の形状のエンボス加工面を備えたフィルムである。
上記エンボス加工面は、例えば、上記塩化ビニル系樹脂組成物を従来公知の方法で製膜した後、得られた樹脂フィルムを、表面に所定の凹凸が形成されたエンボスロールとバックロールとの間に挿入して上記樹脂フィルムにエンボス加工を施すことにより形成することができる。
上記エンボスロールとしては、上述した所定の形状のエンボス加工面を形成することができるものであればよく、具体的には、例えば、後述する第2の本発明マーキングフィルム用基材フィルムのエンボス加工面の形成に用いられるエンボスロール等を用いることができる。
上記塩化ビニル系樹脂組成物の製膜は、例えば、塩化ビニル系樹脂組成物の構成成分(塩化ビニル系樹脂、可塑剤、及び、必要に応じて配合される添加剤)を各所定量、連続混練機、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機等を用いて溶融混練して塩化ビニル樹脂組成物とした後、この塩化ビニル樹脂組成物をカレンダー成形、押出成形、射出成形等によって製膜する方法により行うことができる。
この場合、カレンダー成形により製膜することが好ましい。樹脂フィルムの厚さを均一にし易く、塩化ビニル樹脂組成物の組成を問わず製膜することができ、更に大きいサイズ等種々のサイズの基材を製膜するのにも適しており、加えて小ロットへの対応も容易だからである。
また、カレンダー成形で塩化ビニル系樹脂組成物を製膜した場合、製膜直後に樹脂フィルムをエンボスロールに導くことが好ましい。カレンダー成形による製膜直後の樹脂フィルムは、まだカレンダーロールの熱で柔らかくなっており、エンボスロールの表面の凹凸を転写するのに適しているからである。
上記カレンダー成形に用いられるカレンダー形式としては、例えば、逆L型、Z型、直立2本型、L型、傾斜3本型等が挙げられる。
また、カレンダー成形時のロール温度は、塩化ビニル樹脂組成物の組成に応じて適宜選択すれば良く、通常、140〜190℃であり、好ましくは160〜180℃である。
なお、第1発明の基材フィルムにおいて、上記エンボス加工面と反対側の面は、平滑面であっても良いし、エンボス加工等が施された面であってもよい。
次に、第2の本発明のマーキングフィルム用基材フィルム(以下、単に第2発明の基材フィルムともいう)について説明する。
第2発明の基材フィルムは、塩化ビニル系樹脂組成物からなり、片面にエンボスロールを用いたエンボス加工が施されたエンボス加工面を備えたマーキングフィルム用基材フィルムであって、
上記エンボス加工面は、十点平均粗さRzが2.0〜4.0μmで、かつ、60°グロス値が27〜37であり、
上記エンボスロールの表面は、十点平均粗さRzが9.5〜12.0μmで、かつ、60°グロス値が75〜110であることを特徴とする。
第2発明の基材フィルムもまた、第1発明の基材フィルムと同様、塩化ビニル系樹脂組成物からなるフィルムであり、その片面にエンボス加工面を備えている。
第2発明の基材フィルムにおいて、上記エンボス加工面の十点平均粗さRz及び60°グロス値は、第1発明のエンボス加工面と同様である。
よって、第2発明の基材フィルムもまた、十点平均粗さRzで2.0μmを超えるような深度の深い凹凸を有するエンボス加工面が、60°グロス値で27〜37という高い表面光沢度を有していることとなる。
第2発明の基材フィルムのエンボス加工面は、所定の表面形状を有するエンボスロールを用いたエンボス加工により形成された面であり、上記エンボスロールの表面は、十点平均粗さRzが9.5〜12.0μmで、かつ、60°グロス値が75〜110である。
このようなエンボスロールを用いることにより、深い深度の凹凸と高い表面光沢度とを両立するともに、マーキングフィルム用基材フィルムにフィッシュアイが生じたり、貫通孔が形成されたりしてもその貫通孔が目立ちにくいとの優れた効果を奏する基材フィルムとすることができる。
一方、上記エンボスロールの表面の十点平均粗さRzが9.5μm未満では、転写したフィルム(第2発明の基材フィルム)の表面の凹凸が浅くなり、グロスが高くなりすぎる、及び/又は、フィッシュアイや貫通孔が目立ってしまう。
一方、上記十点平均粗さRzが12.0μmを超えると、転写フィルム(第2発明の基材フィルム)の凹凸が深くなりすぎ、フィルム表面のグロス値が下がってしまう。
上記エンボスロールの表面の好ましい十点平均粗さRzは、9.5〜12.0μmである。
上記エンボスロールの表面の十点平均粗さRzは、JIS B 0601(1994)に準拠して測定された値である。
また、上記エンボスロールの表面の60°グロス値が75未満では、転写したフィルム(第2発明の基材フィルム)のグロスが低くなりすぎる。
一方、60°グロス値が110を超えると、転写したフィルム(第2発明の基材フィルム)のグロスが高くなりすぎる。また、エンボスロールの十点平均粗さRzが9.5μm未満となるおそれもある。
上記エンボスロールの表面の好ましい60°グロス値は、75〜110μmである。
上記エンボスロールの表面の60°グロス値は、JIS Z 8741に準拠して測定された値であり、例えば、光沢度計(株式会社村上色彩技術研究所社製、GMX-102)により測定することができる。
このような十点平均粗さRz及び60°グロス値を有するエンボスロールについて詳述する。
図1(a)は従来のエンボスロールの表面形状の一例を模式的に示す断面図であり、(b)は第2の本発明で用いるエンボスロールの表面形状の一例を模式的に示す断面図である。
図2(a)は表面を研磨する前の従来のエンボスロールの表面の一部の写真であり、(b)は、表面を研磨した後のエンボスロールの表面の一部の写真である。
エンボスロールは、例えば、竹中鐵工株式会社製の筒状体の表面に、ガラスビーズを用いたサンドブラスト処理を施した後、その表面にめっき処置を施し、めっき膜(Znめっき膜)を形成して製造する。
このような方法で製造したエンボスロールは、その表面が、図1(a)に模式的に示したエンボスロール11や図2(a)に示した写真のように、平坦部がない凹凸形状を有している。
そして、このような凹凸形状を有するエンボスロールでは、表面の十点平均粗さRzを9.5〜12.0μmとすると、表面の60°グロス値を75〜110とすることが困難であるのが通常である。
そこで、十点平均粗さRzが9.5〜12.0μmで、表面の60°グロス値が75〜110であるエンボスロールは、例えば、上述した方法で製造したエンボスロール11の表面に対し、凸部の頂点をバフ研磨等により削り落とす研削処理を施す。これにより、図1(b)、図2(b)に示すような凸部の頂点の平坦な凹凸形状を有するエンボスロール12とすることができる。
このとき、例えば、十点平均粗さRzが15.0〜20.0μmで、表面の60°グロス値が115以上のエンボスロール11を出発材料とし、このエンボスロール11に上記研削処理を施すことにより、十点平均粗さRzが9.5〜12.0μmで、表面の60°グロス値が75〜110であるエンボスロール12とすることができる。
第2発明の基材フィルムのエンボス加工面は、このようなエンボスロール12を用いてエンボス加工が施された面である。
図3は、第2発明の基材フィルムのエンボス加工面と、この基材フィルムのエンボス加工面を形成するためのエンボスロールを模式的に示す断面図である。
図3に示すように、エンボスロール12を用いてエンボス加工を行った場合、基材フィルム21の表面には、凸部21a及び凹部21bを有するエンボス加工面が形成される。
このとき、エンボス加工面の凹部21bには平坦な底部が形成され、従来のエンボスロールを用いてエンボス加工面を形成した場合に比べて、凹部の占める割合が増大することとなる。
そして、このような凹凸形状のエンボス加工面を有する、エンボスロール12を用いてエンボス加工が施された第2発明の基材フィルムは、深い深度の凹凸と高い表面光沢度とが両立されるともに、マーキングフィルム用基材フィルムにフィッシュアイが生じたり、貫通孔が形成されたりしてもその貫通孔が目立ちにくい基材フィルムである。
第2発明の基材フィルムは、塩化ビニル系樹脂組成物からなるものであり、上記塩化ビニル系樹脂組成物としては、第1発明の塩化ビニル系樹脂組成物と同様のものを用いることができる。
第2発明の基材フィルムの好ましい厚さは、第一発明の基材フィルムと同様である。
第2発明の基材フィルムは、所定のエンボスロールを用いてエンボス加工を施すことにより、エンボス加工面を形成する以外は、第1発明の基材フィルムと同様の方法により製造することができる。
次に、第3の本発明のマーキングフィルムについて説明する。
上記マーキングフィルムは、第1又は第2の本発明のマーキングフィルム用基材フィルムと、上記マーキングフィルム用基材フィルムの片面に積層された接着剤層とを備えることを特徴とする。
上記接着剤層としては特に限定されず、マーキングフィルムに使用される従来公知の接着剤を用いて形成されたものであればよく、上記接着剤としては、例えば、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤等が挙げられる。
上記マーキングフィルムは、上記接着剤層の上記基材フィルムと反対側の面に、更にセパレータが積層されていてもよい。
上記マーキングフィルムは、製品に意匠を付与するためのマーキングフィルムとして好適に使用することができ、例えば、自動車等の車両の内装品、床材や壁材等の建築部材、
電化製品等、その表面に模様や図柄、文字などの意匠で加飾された種々の加飾成形品に使用することができる。
以下、本発明について実施例を掲げてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1〜3及び比較例1〜5)
塩化ビニル系樹脂(株式会社カネカ社製、S−1001N:平均重合度1050)100重量部に対し、可塑剤(株式会社ADEKA社製、PN7535)2000重量部、アクリル系加工助剤(三菱レイヨン株式会社製、P−530)1.0重量部及びカーボンブラック(日弘ビックス株式会社製、BW1752ブラック)5.0重量部を配合し、バンバリーミキサーで溶融混錬し、塩化ビニル系樹脂組成物を調製した。その後、逆L型カレンダー装置の各ロール(ロール温度、170〜190℃)を通して厚さ0.10μmの樹脂フィルムを製膜し、続いて、得られた樹脂フィルムを所定のエンボスロールとバックロールとの間に挿入し、樹脂フィルムの片面にエンボス加工面を形成し、マーキングフィルム用基材フィルムを完成した。
各実施例及び比較例で使用したエンボスロールは以下の通りである。
実施例1:株式会社樽井鉄工製作所製の筒状体の表面に、ガラスビーズ(100μm及び150μm)を用いたサンドブラスト処理を施した後、その表面にめっき処置を施し、厚さ10〜20μmのZnめっき膜を形成し、未研磨のエンボスロールを作製した(十点平均粗さRzが15.0〜20.0μm、60°グロス値が115以上)。
次に、上記未研磨のエンボスロールにバフ研磨により凸部の頂点を削り落とすように研削処理を施し、十点平均粗さRzが10.4μm、60°グロス値が103のエンボスロールを作製した。
実施例2:研削条件を変更した以外は、実施例1と同様にして、十点平均粗さRzが11.8μm、60°グロス値が82のエンボスロールを作製した。
実施例3:研削条件を変更した以外は、実施例1と同様にして、十点平均粗さRzが9.7μm、60°グロス値が108のエンボスロールを作製した。
比較例1:研削条件を変更した以外は、実施例1と同様にして、十点平均粗さRzが13.2μm、60°グロス値が36のエンボスロールを作製した。
比較例2:研削条件を変更した以外は、実施例1と同様にして、十点平均粗さRzが11.6μm、60°グロス値が65のエンボスロールを作製した。
比較例3:研削条件を変更した以外は、実施例1と同様にして、十点平均粗さRzが8.5μm、60°グロス値が83のエンボスロールを作製した。
比較例4:研削条件を変更した以外は、実施例1と同様にして、十点平均粗さRzが7.8μm、60°グロス値が102のエンボスロールを作製した。
比較例5:研削条件を変更した以外は、実施例1と同様にして、十点平均粗さRzが5.3μm、60°グロス値が90のエンボスロールを作製した。
(エンボス加工面の形状測定)
(1)十点平均粗さRz
株式会社ミツトヨ製SJ−310を使用したJIS B 0601(1994)に準拠して測定により、マーキングフィルム用基材フィルムのエンボス加工面の十点平均粗さRzを測定した。結果を表1に示した。
(2)60°グロス値
光沢度計(株式会社村上色彩技術研究所社製、GMX-102)を使用し、60°グロス値を測定した。結果を表1に示した。
(3)エンボス加工面の凹凸形状
(3−1)凹部に区分けされる領域の個数
(3−2)凹部に区分けされる領域の平均面積、
(3−1)〜(3−2)の計測は、キーエンス社製、形状測定レーザーマイクロスコープVK−X200を用いてエンボス加工面を観測し、得られた観測結果を解析ソフト(キーエンス社製、VK Analyzer(Ver.3.3))で解析することにより行った。結果を表1に示した。
このとき、(3−1)〜(3−3)の各計測において、1回の計測領域は、500μm×500μmの領域とした。また、各評価サンプル(マーキングフィルム用基材フィルム)につき、計測箇所は、3箇所とした。
また、図4には、実施例1のマーキングフィルム用基材フィルムについて、上記(3−1)〜(3−3)の評価に使用した観察画像の1つを示した。
さらに、図5には、比較例1のマーキングフィルム用基材フィルムについて、上記(3−1)〜(3−3)の評価に使用した観察画像の1つを示した。
(4)貫通孔の視認性
実施例及び比較例のそれぞれのマーキングフィルム用基材フィルムに、レーザ加工機を用いて、直径0.05μmの貫通孔を形成した。その後、各マーキングフィルム用基材フィルムに形成された貫通孔の視認性を下記の基準で評価した。結果を表1に示した。
○:日照下及び垂直に当てた投光下で痕跡が全く視認できない
×:日照下及び垂直に当てた投光下で痕跡が視認できる
また、図6(a)には、貫通孔を形成した比較例5のマーキングフィルム用基材フィルムの写真を、図6(b)には、貫通孔を形成した実施例1のマーキングフィルム用基材フィルム写真を、それぞれ示した。
表1に示した結果の通り、本発明に係るマーキングフィルム用基材フィルムでは、深い深度の凹凸と高い表面光沢度とが両立されるともに、貫通孔が形成されてもその貫通孔が目立ちにくいことが明らかとなった。
11、12 エンボスロール
21 マーキングフィルム用基材フィルム
21a 凸部
21b 凹部

Claims (6)

  1. 塩化ビニル系樹脂組成物からなり、片面にエンボス加工が施されたエンボス加工面を備えたマーキングフィルム用基材フィルムであって、
    前記エンボス加工面は、十点平均粗さRzが2.0〜4.0μmで、かつ、60°グロス値が27〜37であり、
    前記エンボス加工面を、凹凸の最大高低差の中央値をしきい値として凹部と凸部とに区分けした場合、前記凹部に区分けされる領域の個数が500μm四方あたり、6〜25個であることを特徴とするマーキングフィルム用基材フィルム。
  2. 前記エンボス加工面において、前記凹部に区分けされる領域の平均面積が5.0×10〜2.5×10μmである請求項1に記載のマーキングフィルム用基材フィルム。
  3. 前記塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂、可塑剤、アクリル系加工助剤及びカーボンブラックを含有する請求項1又は2に記載のマーキングフィルム用基材フィルム。
  4. 塩化ビニル系樹脂組成物からなり、片面に十点平均粗さRzが2.0〜4.0μmで、かつ、60°グロス値が27〜37であるエンボス加工面を備えたマーキングフィルム用基材フィルムを製造する方法であって、
    表面に凹凸が形成されたエンボスロールとバックロールとの間に、前記塩化ビニル系樹脂組成物からなる樹脂フィルムを挿入し、当該樹脂フィルムにエンボス加工を施す工程を含み、
    前記エンボスロールの表面は、十点平均粗さRzが9.5〜12.0μmで、かつ、60°グロス値が75〜110である
    ことを特徴とするマーキングフィルム用基材フィルムの製造方法
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載のマーキングフィルム用基材フィルムと、前記マーキングフィルム用基材フィルムの片面に積層された接着剤層とを備えることを特徴とするマーキングフィルム。
  6. マーキングフィルム用基材フィルムと、前記マーキングフィルム用基材フィルムの片面に積層された接着剤層とを備えるマーキングフィルムを製造する方法であって、
    請求項4に記載の製造方法によってマーキングフィルム用基材フィルムを製造した後、前記マーキングフィルム用基材フィルムの片面に接着剤層を積層するマーキングフィルムの製造方法。
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